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マスター:剣崎宗二
シナリオ形態:シリーズ
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/04/23


みんなの思い出



オープニング

 それは権力、財力、何でも良い。
 力を持つ家族が、避けては通れない障害は一つ。

 ――『跡継ぎ争い』である。

 往々にして、力を得た人間は、まず人間の基本的な欲求から満たそうとする。
 そしてその一つは、『性欲』である。
 それ故に、力を持つ者は往々にして多くの愛人を作り、そして多くの隠し子が存在するのだ。

 ――人は聖賢に非ず。
 力を独占したいのは、誰もが根底に持つ欲望。
 例え子供たちにその気がなくとも、その親はこの幸福を願い、子に少しでも多くの幸せを残そうとする。
 故に。故に分けられる分を減らすため、他の子の滅亡を望む者もまた、存在しない訳ではない。

 ――そう。例え、当事者である子が、それを望まなかったとしても――


●後見人

「何故だ‥‥セバス!」

 杖を突いた老人の前で、八卦が――『天』であるヴァニタスの少年は。問う。
 その目にあるのは、怒りのみではない。僅かに。僅かばかりに含まれるのは、悲しみ。

「セバス‥‥いや、今ここだけは、昔のように呼ばせてもらおう。‥‥何故だじいや!何故、我が王弟を殺害したッ!!」
 咆哮の如く叫び。獣の咆哮の如く押し寄せる音の壁に、しかしじいやと呼ばれた老人は、微動だにともしない。

「大きくなりましたな、カインぼっちゃま。このじいや、うれしく思いますぞ。‥‥それに、如何なる形であろうと、このじいやの前に帰ってこれるとは‥‥」
 目の前に見える少年の姿。それは、自身が知る少年と、まったく同じ。
 なのに、その姿が昔より限りなく大きく見えるのは。恐らくは少年の纏う『風格』。幾つもの事件を経験し。怒り、悲しみ。喜び。――そう。『成長した』姿なのだろう。

「余は信じたくなかった‥‥我らの祖父のようだった貴方が、この様な事をしたのが」
 傲慢不遜である彼が、『貴方』等と言う呼称を用いた事からも、この老人が、彼にとってどれほど尊敬しており、どれ程慕っていた存在であったかが分かる。

「‥‥答えろじいやッ!余は‥‥貴方の口から聞きたい!何故貴方は、我が王弟を殺害した!!」
 そんなヴァニタス――カインの激情とは対照的に、老人は、飽くまでも淡々とした口調で、語りかける。

「世に二人の王は存在できませぬ」

「――そうか」
 それだけで全てを悟ったカイン。落胆の表情は僅か一瞬。直ぐに目を閉じ、口調もまた平坦な物になる。
「何故余に相談しない。余はその様な事を望んでいなかった」

「カインぼっちゃまは反対したでしょう。‥‥ですが、それでは、誰にも平穏は訪れませぬ。‥‥ファウスト家に大恩あるこのセバス、家が二つに引き裂かれる事だけは、何としても防げねばなりませんでした」
「‥‥」
「‥‥例えカインぼっちゃまに恨まれ、孫のようだったレオンぼっちゃまを、この手に掛けようとも‥‥!」

「そう言う事ならば‥‥」
 カッ。と、カインが目を見開く。
「覚悟は出来ているのだろうな、じいや‥‥いや、セバスッ!!」

「はい‥‥レオンぼっちゃまを手に掛けたその時から、この時はいずれ来ると思っておりました。‥‥最後に、カインぼっちゃまの壮健な姿を拝見できた‥‥それだけでも、このセバスは幸せでございました」
 目を閉じる老人。まるで、その運命を受け入れるかのように。
 だが――

「そうは――させん!」
 目の前で『天魔』に一般人を殺傷させるほど、この撃退士たちは甘くはない。間一髪で滑り込み、一撃を受け止める。

「また貴様らか、賊人共よ!!」
 カインの全身から力が噴出し、展開されるは重力操作の極致『王の宮殿』。更に一点に重力を最大限に集中させる事で、彼は撃退士たちが入ってきた門を崩壊させ、脱出口を塞ぐ。
「王の前に、逃げ道はないと思え!!」

 その目に宿る怒りと悲しみを、全て重力と化し。カインは、交戦を開始した。

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リプレイ本文

●切り込み

「お年寄りを虐めるなんて!」
 キンッ。
 打ち出された重力球を、大剣の一振りで地へと受け流し。コマのように三回転して衝撃を受け流して構え直す。
「今日からあんたを裸の王様って言ってやるんだから!」
「ふん、では貴様らは何だ? おおそうだ、言わせて貰おう。‥‥偽善の賊共よ、去れ!」
 雪室 チルル(ja0220)の魔力を乗せた挑発に、カインもまた薄ら笑いを浮かべたまま、皮肉を返すと共に、重力場――『王の宮殿』を展開する。

 残った撃退士の内、メンナクこと命図 泣留男(jb4611)と中津 謳華(ja4212)の二人は、先ほど瓦礫に塞がれた入り口の方に向かい。残る5人は、そのままチルルの増援の為、カインの方へと駆ける。

「相変わらずのめちゃくちゃさですね‥‥」
 ゆっくりと、一歩ずつ大地にヒビを入れるようにして踏みながら。アクセル・ランパード(jb2482)が、呟く。
 王の宮殿の力は、離れる際のみに作用する牢獄ではない。カインに近づく際も、同様に機動力を低減させる。
 故に、彼とカルマ・V・ハインリッヒ(jb3046)は、中々セバスに近づけずにいた。
「後一寸か‥!」
 フィオナ・ボールドウィン(ja2611)と浪風 悠人(ja3452)は、後僅かでセバスに届かず。

「潰れろ!」
 放たれる重力球。それはチルルの氷で覆われた大剣とカンッ、と一度ぶつかり、その後するりと盾の横をすり抜け、彼女の脇腹を抉る!
「っ‥‥痛いわよ!」
 地にその大剣を突き立てた瞬間。即座にそこから流れ込む冷気が傷を覆い、氷の結晶を形成してチルルの傷を塞ぐ。
 だが、完全なる回復が成される前に、チルルの大剣自体で自身を彼女の視線から隠すように、低姿勢でカインが彼女に肉薄する。
「守勢のみならば――貴様を集中的に排除するまで!」
 片腕でチルルの大剣を持っている方の腕を弾き、反対の腕に重力を纏い体の中心へ叩き込む。
 後ずさるチルルの僅かな隙を突いて、その拳を振り上げ、目を閉じたセバスの頭部を狙い――

「たわけ。我を待たずして事を始めるとは何事か」
 身を挺しそれを受け止め、フィオナのカウンターの大上段からの振り下ろしが、彼に叩き込まれる。


●王の在り方

 重力を制御し、強烈な重圧を載せたフィオナの一撃は、カインの注意を引くには十分であった。
「‥‥ふん。重力使いは貴様一人ではないぞ」
「‥‥余の技を学習したか」
 他に何を盗み学ばられたかは分からない。それを警戒し、僅かにカインの行動が鈍る。

「同じ王として、貴様の怒りは分からなくともない。‥‥だが、死は逃げだ。そんな楽な真似、我がさせると思うか?」
 直剣を交差させ、油断無くカインを睨みながら、フィオナは語る。
「‥‥賊共が望む結末など与えてやるものか。例えそれが死であってもだ。‥‥故に、我は貴様を止める」
「それが、貴様が思う王の在り方か?」
「ああ」
 それを聞き、カインの顔に、楽しげな表情が浮かぶ。まるで――そう。好敵手と相対した時かのように。
「ならばその在り方、余が力ずくで叩き潰そう!」
 振り下ろされる腕。広がる重圧。
 咄嗟にセバスを突き飛ばしたフィオナだが、そのせいで防御の展開が遅れる。
「がっ‥‥!」
 強烈な重力な元で、剣を地面に突き刺すフィオナ。だが、膝はつかない。王としての誇りが、彼女に膝をつかせる事を拒否させている。
 そこを目掛け、更に腕を振り下ろすカイン。この距離では、セバスをも巻き込みかねない――!


●ブレイクウォール

 一方。カインを無視し、壁へと接近していたメンナクと謳華。
「急げ、俺のダークソウルッ!」
 奔る勢いそのままに、体がすーっと僅かに透け始めるメンナク。そのまま、壁に激突するようにして――すり抜ける。
「舞い上がれ、ダークウィング!」
 その黒の身嗜みと対照的な光の翼が、メンナクの背中から広がる。そのまま空中へと舞い上がり――
「準備はいいかい、ブラザー!」
「ああ」
 息を整え、静かに気を練っていた謳華が答える。
「「いくぞっ!」」

「道がないなら‥‥作るまでだ‥‥!」
 謳華の突きが、壁の一点を貫き、円柱型の穴を開ける。
 そこへメンナクの魔力が流れ込み、穴が大きく広がり――人一人が通れるような通路が、元の入り口の上方に完成する。

「これでこっちはOKだ。急げよ、ブラザーたち‥‥!」
 再度物質透過で屋内へと戻ると共に、カインの方へと駆け出すメンナク。
 瓦礫を蹴るように加速し、謳華もまた、その後に続く。


●救われたく無き者

 ドン。
 砂煙が舞った後には、セバスの体が横たわって――居なかった。
「何ッ!?」
「‥‥何とか間に合いましたね」
 白き翼が、そこにいたセバスを包み込んでいた。
 翼が広がり、消えると、そこにはセバスを守るようにして悠人と――翼の主、アクセルが居た。

「ランパードか。よくやった」
 立ち上がるフィオナが、更なる追撃を防ぐようにして両剣を突き出し、カインに防御を迫る。
 両腕でそれをそれぞれ受け止めたカインが、更に反撃しようとすれば――
「させませんよ」
 銀光が、辺りを舞う。
 カルマ・V・ハインリッヒ(jb3046)の剣閃が、無数の銀の軌跡となって襲い掛かる。
 直撃は無いものの、カインを守勢に回らせるには十分であった。
 銀光を纏い、更に前かがみの姿勢から突撃し、一撃を狙うが――
「調子に乗るなよ、下郎がッ!!」
 足元への『王の鉄槌』によって前進を阻まれてしまう。
「相も変わらず厄介なお方です。ですが」
 フィオナから一歩遅れて接近していた、マキナ・ベルヴェルク(ja0067)が、背後からそのタイミングでで仕掛ける。拳打がカインの肩を抉り。逆の手刀が頬を掠める。
「次から次へと‥‥!!」
 後ろに回り込める前に、重力の拳がマキナを捉える。返すは防御を無意味と断じる理曲げの一撃。それは確かに、重力波の障壁である『王の威厳』を貫いたかに見えたが――
(割合軽減の類、ですか)
 想定していた程の効果を得られていない。恐らくこの重力波の防御は、攻撃の量を減らすのではなく、除算する類の物だろう。

「何故私を助ける?」
「この状況を招いた原因の一端は貴方方にあります」
「故に私は、カインぼっちゃまに殺されるべき――」
「ここで勝手に討たれて、自己満足で全てを終わらせようとしないでください!」
 一方。
 アクセルの怒声が、セバスの言葉を遮る。
「ここで死んで犯した罪が償われると本当に思ってるんですか?」
 冷静に、悠人もまたセバスに語りかける。

「責任を持つならば、それこそ生きて‥‥生きて全てを見届けるべきなのではないですか?」
「何をかね?」
 冷たく返すセバス。
「ファウスト家の断絶は、最早両跡継ぎの死によって確定しました。私にできるのは、死んであの世で‥‥先代のご主人様にお詫びする事のみです」
「貴方の知っているカインは死にました。そこに居るのは悪魔に魂を売った復讐鬼です。それでも殺されて満足です?」
 最後の希望を賭けた、悠人の問い。
 だが――
「‥‥はい。このセバスの死を以ってして、ぼっちゃまの怒りが晴れるのでしたら。私は喜んで、この身を捧げましょう」

 ‥‥最早、語る言葉はないようだ。
 アクセルと悠人は目線を交わし、次の手段を取る事にする。
「失礼します‥‥! ハッ!!」
 悠人の気合の声。
 ――俗に『気当たり』とも呼べるこの技は、本来は恐怖を感じさせる事によって成立する技である。
 だが、撃退士たちのそれは、純粋にアウルを放つことで、一般人の動きを停止させる技。
 動きが止まったセバスを担ぎ上げ、悠人は先ほどメンナクと謳華が開けた出口へと向かっていく。

「逃げるか、セバスッ!」
 意識をカルマとフィオナ、そしてマキナによる猛攻に取られていたカインは然し、彼らが脱出を始めたのを見て、目標を切り替える。
「坊ちゃま‥‥このじいやからの最後の一言です!『王は、冷静にあれ!』」

「余所見等させん!」
 その言葉に僅かに動きが止まったカインへ、重力を纏ったフィオナの一撃が、再度その頭上から振り下ろされる。
 だが、彼はそれを受けもせずに、頭で『受け止めた』。
 物理攻撃を軽減させる『王の威厳』を以ってしても、フィオナの威は相殺しきれず。
 頭から流れる血が、目に滴り、まるで目が血に染まったようなカインは然し、強引にその腕を振り下ろす。
「確かにその教え、承ったぞセバス!! ――そしてこれが返礼だ。受けよ、王の鉄槌を!!」

 ドン。ドン。
 二発の鉄槌が、アクセル、悠人、そしてセバスを襲う。
「っ‥‥!」
 強引に、アクセルが白の翼を広げ。自分とセバスの分の重圧を引き受ける。
 悠人は強引に、自らワイヤーで、自分に向けられた一撃を受け止める。
「これなら‥‥!」
 先の戦闘で、アクセルが三人分のダメージを引き受けたが故に倒れたために考案されたこのパターン。効果は上々であり、アクセルのダメージはそれ程高くはない。
 だが、問題は意外な所で発現した。

「追いつけない‥‥!」
 アクセルの移動力は、悠人のそれに大きく劣る。ましてや彼が跳躍までも使い距離を稼いでいるのならば尚更である。
 どうする?全力移動を使うか?だがそれでは前回の二の舞になる可能性もある。
 振り向いたアクセルが見たのは、拳を振り下ろそうとするカイン。


●バックアンドフォース

 チルルが体勢を立て直したのは、その瞬間。
「退かせるよ!」
 腕から冷気が逆巻き、巨大な氷塊が武器を巻き込んで構築される。
「これで、ホームランよ!」
 バットのようにそれを横に振り、猛然とカインに叩き付ける!
「ぐぁっ‥‥!」
 ダメージは『王の威厳』で減らせても、衝撃力を減らせるわけではない。
 大きく後ろへ滑った事により、王の鉄槌は悠人に届かず、空を切る。

「先ずは貴様を倒さねばならんか‥‥!」
 チルルを狙うのは、逆手の『王の鉄槌』。
 初期から前線にて闘い続けていた故に、彼女の回復の要――氷による傷癒しの包帯は、もうそこを付いていた。
 強引に氷結晶で剣を覆い一撃を受け止めたものの――
(「‥‥後一撃耐えられるかどうかだわ」)

 一方、強引な跳躍とダッシュの組み合わせで、入り口までたどり着いた悠人。跳躍して、その入り口から出ようとする。然し――
「ぐっ!?」
 届かない。
 超重力によって、上方への跳躍の高度は、大きく低減していた。
 若しもカインをそのまま壁までノックバックできていたのならば、王の宮殿の範囲外となり、問題なかったのかも知れない。
 然し、チルル一人がノックバックを行っている状況では、それはままならなかったのである。

 この絶望的状況を打開したのは、一人の男であった。
「最早言えることは‥‥ありませんので。‥‥俺はただ、貴方を斬るだけです」
 鞘に刃を収め、込めるは最後の一筋の銀閃。
 今までの二発が何故外れたか。目を閉じ、そのイメージを脳内で『当てるイメージ』に変換する。
「――斬る」
 その目が見開かれた時。カルマの神速の一閃が、カインの腰を捉え。衝撃がその意識を刈り取った。

 カインの意識が失われる。それは、一つに、『王の宮殿』の解除を意味する。
「よし‥‥!」
 足に全力を込め、動かないセバスを背負ったまま、悠人が瓦礫を越えて外へと転がり出る。
 ここに、作戦の主要目標は完遂に限りなく近くなった。


●代償

「がぁぁぁぁぁ!!」
 意識を失ったがために、王の宮殿の解除と引き換えに。カインの重力の力が、あたりを無差別に蹂躙する。
 これが任務遂行の代償に相応しかったのかを断じることは出来ない。事実としてあるのは、振り下ろされる重力の鉄槌の連打により、既に体力が減っていたチルルとアクセルが倒れた事。
「くっそぉ、動け、俺のダークウィング――!」
 回復役であるメンナクは、外周から味方を回復すべくから接近しようとするが――重力場が停止してから4連鉄槌が振り下ろされるまでは、それ程の時間的猶予はない。スキルを切り替えながらの急行では――間に合わなかったのだ。

 そして、重力場が復活する。
 それは、カインが意識を取り戻した証。
「貴様!王への二度の無礼――許しはせん!」
 怒りの表情を浮かべ、叩き下ろすような拳がカルマを狙う。それを滑るような動きで横にかわすカルマ。だが、拳に纏った重力波は、突如消える。

「ふんっ!!」
「‥‥!」
 逆の拳がめり込んだのは、マキナの腹部。
「幾度も幾度も後ろを狙えば、パターンを読まれるのが道理」
 ぐり、と拳を捻る。
「王であろうと、我が求道を阻む事能わず――!」
 マキナの両手の指が、カインの腕に食い込む。
 その指は狼牙の如く。魂を貪るかのように、その力を吸い取る。
「その執念、流石と言わせてもらおう。だが――!」
 振り下ろされる、鉄槌。
「王の前に、平伏せぇぇい!」
 元よりマキナは攻撃に傾倒している故に、防御面はそれ程高くはない。
 攻撃力を最大限に生かした『吸収』の戦法も、『王の威厳』に阻まれている。
 メンナクの回復が届いていれば、あるいは――


●更なる戦果を狙うために

「厳しい‥‥ですか」
 相対する者は今は二人。
 後退し、かく乱のための雷撃を次々とカインに投射するカルマ。
 だが、閃光で視界を偶に覆えど、大きな効果は生み出せず。
「メンナク、中津!味方を回収して下がれ!」
 手に黄金の聖剣を掲げ、フィオナが叫ぶ。

「貴様は逃げぬのか?」
「‥‥我は端から脱出を以っての戦術的勝利などとは考えておらぬ‥‥貴様を退かせる事を以って勝利とする」
「殊勝な事だ」
 カインもまた、重力を両の拳に展開し直す。
 これ以上の言葉は、最早要らない。
 神速の突進を以ってして、聖剣は金の光閃と化し、襲い掛かる。
 迎え撃つは、漆黒の拳。
 お互いに、己の身を守ろうとする意思はなく――刃が、カインの胸に斜め一文字の傷を刻むと共に。重力球はフィオナの頭を挟み込むようにしてその意識を刈り取った。

「――貴様は向かってこないのか?」
「一人では不利なのは分かっていますからね。決着は――また、次の機会に」
 フィオナを担ぎ上げ、カルマもまた、撤退した。


●Epilogue

「俺の一族は人を殺して殺して殺しぬいた一族だ。だがな、そんなくそったれの一族の末裔だから言える事がある」
 自らの命を顧みなかったセバスに、謳華の怒りが爆発する。
「信念を以って殺したのなら生きろ。死は贖罪ではない。永久の眠りにつくまで罪を背負い、見届け尽くし続けるのが殺した者の責務だ。それを放棄する事は殺した者への侮辱…その所業を俺は許さん‥‥!」
「何を見届けるのです?既に私の役割は終わりました。老兵は‥‥黙って去るのみ」
「っ‥‥!」
 掴んだ襟元を離し、突き飛ばす。
「これ以上は聞き出させそうにないですね。始まりとなった一件も、あれが事件の全てだと言っていましたし」
「ああ、けど‥‥どんな形にしろ、俺たちは命を一つ、救った。それでいいんじゃないか」


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 『天』翔ける魔盾・アクセル・ランパード(jb2482)
 セーレの友だち・カルマ・V・ハインリッヒ(jb3046)
重体: −
面白かった!:3人

撃退士・
マキナ・ベルヴェルク(ja0067)

卒業 女 阿修羅
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
『天』盟約の王・
フィオナ・ボールドウィン(ja2611)

大学部6年1組 女 ディバインナイト
おかん・
浪風 悠人(ja3452)

卒業 男 ルインズブレイド
久遠の黒き火焔天・
中津 謳華(ja4212)

大学部5年135組 男 阿修羅
『天』翔ける魔盾・
アクセル・ランパード(jb2482)

大学部6年298組 男 ディバインナイト
セーレの友だち・
カルマ・V・ハインリッヒ(jb3046)

大学部8年5組 男 阿修羅
ソウルこそが道標・
命図 泣留男(jb4611)

大学部3年68組 男 アストラルヴァンガード