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マスター:由貴 珪花
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/01/07


みんなの思い出



オープニング


 久遠ヶ原学園――。
 それは異能の集まり。それは超人の住まう処。
 ひとたび走れば風のように、刃を振るえば炎のように。
 運命に選ばれた戦士達の、愛と希望と勇気と青春の、仁義なき学び舎である―――。


「ああめんどくさい――」
「先生がそれ言わないで下さいよ、こっちのセリフです」
 冬期講習。
 学園という体裁の上では避けて通れない、長期休暇の落とし穴である。
 一般的な学校では勿論、直前に迫る入試や年度末の進級を賭けて、真面目に取り組むものだが
 ここ久遠ヶ原では、どちらもほぼ縁のないものだ。
 久遠ヶ原から外の学校を受験するものは殆ど居ないし、留年したとしても戦闘能力があればやっていける。
 ゆえに。
「‥‥やっぱりめんどくさい」
「だから‥‥」
 教師も生徒も、さしてやる気はないのだ。
 そのくせ半強制的に出席させられる不条理感といったらない。
 まぁ、何故か冬期講習の担当にされたというこの教師――月摘紫蝶は、いつもやる気がないのだが。
「いっそ、体育や実技の講習なら喜んでやるのに――」
 ぽつりと、教室の片隅で誰かが呟いた。
 一瞬静まりかえる教室。普通の学校なら講習で実技なんて殆どないだろうが――ここは普通じゃない久遠ヶ原。
 ありえるかもしれない―――。
 ごくり。

「ふむ‥‥。――ちょっと自習していてくれ。職員室に行ってくる」


 30分後。
「雪がちらつく、このくそ寒い中だが――。ご要望通り、午後は外で演習を行うぞ」
 ざわっ、と教室が湧く。
 よっしゃぁ!と喜ぶものあり、誰だよ余計な事言った奴、と悪態つくものあり。
「今から午後の演習についてのプリントを配布する。参加は自由だから、参加する子はよく読んでおくんだね」



 ―――――――――――――――――――――――――――
      ◆◆ 新★春 書き初めデスマッチ2011 ◆◆
 ―――――――――――――――――――――――――――

<開催日>
 2012年1月2日

<場所>
 久遠ヶ原学園 第3グラウンド

<参加資格>
 和服であること

<ルール>
 1チーム4人の騎馬戦形式で、敵のゼッケンに漢字1文字の書き初めを行う。
 ゼッケンの裏表両方に書き初めをされたチームは失格。直ちに退場。
 また、複数のチームが書き初めに成功した場合、以下の基準で採点。

  ・文字の美しさ
  ・文字の難易度(主に画数など)
  ・文字の意味(より書き初めに適した言葉が高得点)
  ・ゼッケンの向き(表のほうが高難易度のため、高得点)

 目くらまし等、怪我をしない程度の妨害は可。
 馬役の選手同士によるボディコンタクト(タックル、足を引っ掛けるなど)は可。
 ただし、目などの急所へのアタックは、審判の判断によりチームごと失格になるため注意。
 騎馬が崩れても失格にも得点にはならないが、戦略的に自分達の騎馬を崩すなど悪質なものは失格。
 あくまで書き初めで勝負すること。

<審判・実況>
 アリス・ペンデルトン

<採点>
 月摘 紫蝶



リプレイ本文


 新春とはいえ雪がはらはらと舞う冬の空の元、今年の運と抱負とネタを筆に籠めて、グラウンドに集まる勇者達。
 ひゅうう、と漫画のように都合よく吹いた風に、ゼッケンが音を立ててはためく。
『皆の者、よくぞ集まったのぢゃ☆ やる気のないしちょー先生に代って、このアリス先生が審判を務めるゾ☆』
 上空にはどういう仕掛けか箒で宙に漂い、拡声器を持つアリスの姿。
 まさにプリンセスなんとかも驚きのイリュージョンである。
『では、各ちーむを紹介するゾ☆ え〜‥‥
 紫組!すばしっこいのぢゃ! 青組!でっかいのぢゃ! 緑組!ぼいんぼいんぢゃゾ!
 黒組!字が綺麗ぢゃ! 桃組!謎の紙袋がおるのぢゃ! 朱組!なんかでっかくて色っぽいゾ!』
 なんという適当ぶり。しかしそれもそのはず。
 真冬の吹きっ晒し、その上空。子供は風の子元気の子、など幻想である。

『という訳で、これより『新★春 書き初めデスマッチ2012』開催ぢゃ〜〜☆』



 話は小一時間程遡る。

「なーに、面白い事やってるじゃない! 参加参加ー!」
「デスマッチ…この響き、いいねっ!」
 珍妙な冬期講習の噂を聞いた市川 聡美(ja0304)は、一も二もなく教室に飛び込んだ。
 学園公認の馬鹿騒ぎだ。見逃せない。
 そして同じく目を輝かせるのは與那城 麻耶(ja0250)。
 彼女の場合はデスマッチという単語だけで、釣られるに足る理由である。

「えへへ、巫女服は初めてなのっ♪ 皆さん宜しくお願いしますねっなのっ!」
 早速着替えを済ませた椎野 つばさ(ja0567)は、はしゃぎながら挨拶に回る。
 誰が敵で誰が味方か、という事はつばさにとって些細でしかない。
 全力で楽しみ、全力でカオスに。笑顔で過ごす新年なんて素敵じゃないか。笑顔はよいものだ、が――。
 グラン(ja1111)のいでたちは、笑顔どころか見る者全員が二度見か吹くかの二択となった。
「成程、巫女服ってこうなってるんですねぇ」
 身長188cm、出入り口で頭を打つであろうサイズの巫女である。
 中性的な顔立ちと長い黒髪のお陰で、決して似合わない訳ではない。だからこその二度見。
 目を引く衣装はそれだけではない。
 主に男子生徒の視線を感じながら、御手洗紘人(ja2549)は隣の美女を見やる。
「えっと、大丈夫なんですか? その、色々と」
「あら、平気よ? 着崩せば機動力が落ちる事もないわ」
 紘人が言いたいのはそこではないが。目のやり所に困るとはこの事か。
 胸元も露わに着崩した真紅の振袖。色香と機動力。月臣 朔羅(ja0820)は、くノ一の戦い方を熟知していた。
 それに、見えているのではなく、見せているのだから――と。

「ん。こんな感じ、ですかね」
 準備時間はあと僅か。
 最後に、木ノ宮 幸穂(ja4004)が聡美の頭に、目出し帽ならぬ目だし紙袋をずぼっと被せた。
「う、うわぁ」
 予想通りの異様さ。予想通りの胡散臭さ。
 これはいける!思わず戦う前からガッツポーズ。
 情けは無用。容赦も無用。これはデスマッチなのだから。


 そして、戦いの火蓋は切って落とされた。



「よっしゃー!! 気合い入れていきましょーー!!」
 気合裂帛、頭崎 妖(ja4096)が気合を吐き出し、グランと朔羅が応と答える。
 やるからには全力。やるからには勝ちたい。当たり前だろ?
「青組が危ないと思うなのっ! 同じ長身には消えてもらうなのっ!」
 騎手のつばさは声で舵を取る。最初が肝心。邪魔な駒は潰すに限る。そしてキャラ被りなんて御免だ。
「ではまず青組の背後へ行きます!」
 グランの掛け声に、全員が了解!と叫び返した。
 190cm弱のグランを先頭に、170cm台の朔羅と妖が脇を固め、そして175cmのつばさが乗る朱組。
 全長3mを優に超える、さながら巨塔。

「その背中、いただきなのっ!!」
 しゅばばっ!
 朱色の墨が空を切る。青組の後ろゼッケンに大きく書かれた文字は【龍】。
「し、しまった!?――くそっ、しかし前はやらせん!」
 そう、このルールでは前ゼッケンの重要度が非常に高い。後ろは、捨て駒ならぬ捨てゼッケン。
 睨みあう両者。高さは僅かに桃が上か。しかし青の騎手はリーチがある。まともに組み合っては被弾必至。
 やるしかないのか。最初の敵から、最後の手段を。ごくりと唾を飲み込んで、つばさは巫女服の袖で胸元を隠した。
「覚悟っ!」
 案の定。ガードをこじ開けるべく両手で襲い来る青の騎手。
 ――今だ!
 巫女服の袖を払われる振りをしながら極自然に。ほんの少し、身体を前に押し出す。
 もにゅ。
「ひぅっ」
 つばさのもっちりとした胸が鷲掴みにされ、途端、両者の顔が紅くなる。
 青の騎手は慌ててバランスを崩し、騎馬が修正しようとおたおたするのだが。
 しかし無意識か。悲しい男のサガか。
 柔らかな果実を捉えた手は、目的を忘れたように離れない――っていうより揉んでる!
「てっ‥‥めぇ‥!ボクの胸を触るなんざ100万年はえーんだよ!!!」
 ぐらりと態勢を崩した青組は、ブチ切れたつばさに【恭】の文字を受けて色んな意味で崩れ落ちていった。
『おぉっと、青ちーむは失格ぢゃ☆ これは鮮やかなトラップぢゃのー』
 顔を染めるつばさを他所に、崩れた彼らを見てほくそ笑む朔羅と妖。
「うふふ、重心が高いと大変よね?」
「ま、自分達にも言えますけど。そこは連携力の差、ですね」
 そしてグランは一人無言で、頭上で行われた攻防に顔を赤らめるのだった。



 桃組は、予め朱組と結託していた。1対5よりも2対4の方が安全なのは明確だ。
 生き残る。それが何より勝利へ近づく。デスマッチと称される以上は綺麗事など無用なのだ。
 偶然にも全員が紫紺の馬乗り袴。そして全員サングラスである。
「作戦通り紫から行くよっ! 全速前進!」
 先頭の紙袋、聡美が叫ぶ。視界最悪、足元注意。油断をすると、積もった雪で傾倒必至。それはそれでオイシイが。
『みんな宜しくね☆』
「‥‥!」
 女装なのに男性袴という、最早性別不明となった『プリティ・チェリー』。男装男の娘という新ジャンル爆誕である。
 いつものピンクのヘアバンドに代って、額に鏡付き鉢巻。ポニーテールにまとめた銀色の髪を風に靡かせ、駆ける。
 その左で騎馬を務める麻耶は無言で大きく頷いた。今の彼女は喋れないのだ。

「わ、わ。‥‥思ったより揺れるなぁ」
『紫の正面から、いっくよー☆』
 片手に筆を、そしてもう片手は袖の中に隠している幸穂は、揺れる騎上で必死にバランスをとっていた。
 両手が塞がりしっかりと騎馬にしがみつけないが、今は辛抱。
 もう少し、もう少し近く。――今だ!
「えいっ!!」
 隠し持っていたそれを取り出し、パッと辺りが閃く。
 ――カメラだ。カメラのフラッシュ。
「うぉっ! まぶしっ!?」
 当然だ、何せ眼前50cmという至近距離。
 紫の騎手は残光でまともに前が見えないはずだ。その隙に。
「いっけーー!」
 聡美の掛け声と共に筆が鮮やかに滑り、紫組の懐には立派な【春】の一文字。
 一瞬の油断が勝敗を決する――。
「俺達が動くっ! お前は手を伸ばしていろっ!!」
 それは正に一瞬。桃組が書初め成功に喜ぶその間に。
 紫組の騎馬が頷き合い、目にも留まらぬ早さで背後に回りこんだ。機動力がウリなのは伊達じゃない。
 先頭騎馬が高さを調節し、朱組の背中に歪な【心】が記される――。
「見たか! ただでは転ばぬわ!!」
 が、それは罠。背を守る気は毛頭ない。
 長らく沈黙を守っていた麻耶の目がぎらりと光る――!!
 ぶしゅうううっ!
 毒霧。プロレス技の中でも禁止技とされているそれで、桃色の墨を吹きつけた。
「ぐぁっ!? な、なん――」
「やぁっと喋れた! グランド☆カブキの必殺毒霧だよっ!!」
 騎馬の足が覚束なくなり、今や隙だらけ。
『どうしたの? チェリーの魅力にメロメロになっちゃったかな?』
「一気に決めるよー!」
 既に紫組の視界は禄に機能していない。背後を取る事すら至極容易。
 幸穂は丁寧な【勉】の文字を贈り、桃組は次の戦いへ向かっていった。



『白熱しておるのう! 残るは4組ぢゃ!』
 青と紫が戦線離脱し、桃組と黒組が背中をやられている。
「さぁ、次は黒を落とすわよ?」
「うん。私達は緑狙いつつ囮、ですね」
 朔羅と幸穂の言葉に8人が一斉に頷く。協力プレイも作戦の内。小回りに強い桃が囮に、リーチのある朱が攻撃だ。
 警戒するのは一撃必殺の黒。書き初めで黒を選ぶ辺りが流石の正統派。
 逆に緑は胸の凹凸が注意であり、防御力に長けたチームである。それも書かれる事前提の。
「時間掛けずに、ばしばし行きましょうなのっ!」
 ――寒いからね。

 黒組は非常に慎重な集団だった。
 我らはひ弱でもやしな文化部。力勝負は明らかにフィジカル負けだ。
 唯一の方法は奇襲――。
『右から来るよ! ‥‥あ、あっぶなーい』
 が、虚しく回避され。そして、逃走。
 真横から飛び出してきた黒組をチェリーが察知し、桃の騎馬は寸での所で回避した。
 華麗に逃げた黒組はヒットアンドアウェイ作戦、のはずだったが。
「あっれ、簡単に追いついちゃった」
「君たち運動足りてないんじゃない? ってゲームばっかのあたしが言うのも変だけど」
 ‥‥いや。黒組の名誉の為に、常人と比較すれば勿論ぶっちぎりで早いという事は申し上げておこう。
 だがここは久遠ヶ原。撃退士基準では遅い部類だったようだ。
 後ろから迫り来る桃組から逃げる、逃げる。
 更に――。
「敵はそっちだけじゃないですよ」
 正面からは巨大な巫女――いやグランら朱組が接近し、つばさの筆が容赦なく前ゼッケンを襲う!
 マッチ一本火事の元。前方不注意、事故の元。
「隙だらけなのっ!」
「うわ、うわわわっ!」
 危機一髪――。
 黒の騎手は体を伏せ、何とかかつばさの筆を避ける。
 しかし、挟撃では息をつく暇ももない。走る勢いで朱組と桃組の位置が入れ替わり、再び黒の騎馬へ狙いを定める。
 更に緑組が漁夫の利を狙い参戦してきたが、朱組とチャージした瞬間にグランに微笑まれた。
「レディ、乱暴をして申し訳ない」
 ついでに演技ぶってみたり。
「やん、かっこいいお兄さん‥‥♪」
 こうかはばつぐんだ!
 一方黒組の正面となった桃組は旋回し、身を屈めながら黒の騎馬の周囲を走り回る。
 撹乱作戦だ。全員170cm以下、騎手の幸穂に至っては145cmと超小柄。体を伏せれば、前ゼッケンに隙はない。
(私達は囮‥‥。椎野さん、今のうち!)
 妖が地面の雪を器用に足で掬い上げ、蹴り上げる。黒の騎馬の顔面に冷たい泥雪がぶち当たり、怯んだ。
「今です!」
 つばさは手早く筆を走らせて【望】を書き記し、筆をふっと吹く。
「またつまらぬモノを書いてしまった‥‥なのっ」

 残る緑‥‥は、戦う前から勝利同然である。
 桃組と朱組はまたも挟撃の体勢なのだが。
「いやぁんっ、何か怖いんだけど〜〜!」
 騎手がこの有様だ。何故この大会に参加したのかと小一時間ほど問い詰めたい。
『さぁ、覚悟してよね☆ ‥‥胸の大きさで女の子の価値が決まる訳じゃないんだから!!』
「あら、ないよりは『適度』にはあるほうがいいわよ、ねぇ?」
 燃え上がるチェリーと、冷やかす朔羅。
 こちらもまたツッコミ所がズレているが。女心的には何か思う所があるらしい。片方性別不明だが。
「まぁ、えーっと。覚悟してくださいねー」
 大会も終盤だというのに、気の抜ける相手である。軽くやる気を失いつつ、前後同時に挟み撃つ。
「きゃぁああんっ! 助けてぇー!!」
 ――合掌。
 胸に朱色の【力】、後ろに桃色の【絆】。
「ふぅ、上手くいったー‥」
 あくまでサバイバルである。生き残った者が正義なのだ。



『漸く決勝ぢゃの! どちらも正々堂々悔い無く戦うのぢゃゾ☆』

 ――どこからともなく法螺貝の音が聞こえる。
 これより味方なし。正真正銘、最後の戦い。
「先手必勝ッ!!」
 騎馬3名が血気盛んな桃組が駆ける。もう出し惜しみする必要はない。一気に接近し、懐に潜り込む。
 真正面――聡美がグランの眼前へ迫ったその瞬間。
「木ノ宮さん! 今だ、袋をっ!」
 幸穂は思い切り、聡美の袋を引き上げた――!!
「ぶっ! ふっ、くくあはははっ」
 額に『牛乳』の筆文字、頬に渦巻き。立派なちょび髭にサングラス。あまりの間抜けさに力が抜ける。
 がくん、と桃組が右に傾くと、その衝撃で騎手のつばさが幸穂を覆う様に倒れた。
「幸穂ちゃん、やっちゃえー!」
 頷くが早いか飛び出すが早いか――幸穂はつばさの前ゼッケンに【賀】と記す。
 しかもそのまま組み付いて、脇腹をくすぐり出した。
「ぷわ、あははは、やあぁぁ、くすぐったいなの〜〜っ!」
 肩を震わせながら身を捩るつばさ。まずい、立て直さないと――!
 朔羅は素早く右旋回し、桃組の右後方‥‥チェリーの横へ。
 成功率は半々。性別も半々、いや女寄りか。されど迷っている時間は既に無い。
「ふふ、御手洗さん‥‥♪ そんな格好してても、オトコノコ、でしょ? 私の体、見てもい・い・の・よ?」
 ぴったりと体を、胸を密着させ耳元で囁く。それは紘人ならば有効だったろうが――。
 チェリーの中で、何かが切れた音がした。
『うふふ、男の娘ってな・に・か・し・ら☆ ‥‥女の価値は胸じゃないんだからーー!!』
 強タックルで押し返される朔羅と朱組。その弾みでくすぐり地獄から開放されたのだけは幸いか。
 残るは朱組の後ろゼッケンと桃組の前ゼッケン――。
 腹の探り合い。息の詰まる時間。
 いつの間にか雪が止んでいる。雲の隙間から覗かせた太陽の光を、幸穂の鏡つき鉢巻が反射しキラリと輝いた。
 両者がじりじりとにじり寄る。
 グランはつばさを高く持ち上げて防御し、麻耶は奥歯に仕込んだ第2の毒霧袋を噛み切ろうかというその瞬間。

『そこまでぢゃあ〜〜〜☆』



「判定の結果は‥‥両方優勝ぢゃなっ☆」
 ざわ、と生徒達がざわめく。デスマッチで両者優勝とはどういう事か。
 たまらず妖が飛び出し、問いただす。
「先生、どういう事ですか?」
「前ゼッケン5点。後ゼッケン3点。1画1点」
 問いの答えにならぬ答えを呟く紫蝶。はっ、とつばさは各組のゼッケンを見て計算し、そして気づく。
「ど、同点なの‥‥っ! 朱組と桃組、同点ですっなの!」
「計算が早いな。そう、どちらも57点だ。文字の美しさで――と思ったが、いい戦いだったからね。
 魔女どのと相談して、同点優勝という事にしたよ」
 うんうん、と大きく横で頷くアリス。背後で高らかに終業のチャイムが鳴り響き、冬期講習は終わりを告げた。
『さあさあ、授業はここまでぢゃ! ここからは遊びの時間ぢゃよ〜〜〜☆』

 そしてチャイムを合図に、引き続きルール無用の顔落書きサバイバルゲームが始まったのであった――。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: タオルマイスター・市川 聡美(ja0304)
 魅惑の対価・椎野 つばさ(ja0567)
 天つ彩風『探風』・グラン(ja1111)
重体: −
面白かった!:11人

バカとゲームと・
與那城 麻耶(ja0250)

大学部3年2組 女 鬼道忍軍
タオルマイスター・
市川 聡美(ja0304)

大学部4年299組 女 阿修羅
魅惑の対価・
椎野 つばさ(ja0567)

大学部1年186組 女 アストラルヴァンガード
封影百手・
月臣 朔羅(ja0820)

卒業 女 鬼道忍軍
天つ彩風『探風』・
グラン(ja1111)

大学部7年175組 男 ダアト
雄っぱいマイスター・
御手洗 紘人(ja2549)

大学部3年109組 男 ダアト
撃退士・
木ノ宮 幸穂(ja4004)

大学部4年45組 女 インフィルトレイター
雪華の守護・
頭崎 妖(ja4096)

大学部4年208組 男 鬼道忍軍