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マスター:カナモリ
シナリオ形態:イベント
難易度:やや易
形態:
参加人数:25人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2013/06/03


みんなの思い出



オープニング

「皆さんこんにちは。三度登場、ふわっと演劇トレーニングのお時間がやって参りました。ナビゲーターの西島ですどうも」

 久遠ヶ原学園の教職員、低体温美形の西島は、いつもながら全くナビゲーター感のない無表情で撃退士の皆に向けそんな事を言った。

「今回も皆さんには、久遠ヶ原学園研究職員の成瀬とかいう頭おかしい先生が開発したV兵器を装備しつつ、ふわっとした演劇を楽しみ、トレーニングを積んで貰おうと思います。そのV兵器はこちら、ちっちゃい本のキーホルダーみたいになってるこれです」
 ぶらんぶらんとまさしくキーホルダーのようなそれを掲げながら、西島は説明を続ける。
「こちらの兵器は、開発者の方曰く、演劇してるだけで何かがこう活性化してなんやかんやになってどうのこうのになってトレーニング効果が出るよってことなんで、まあどっかに身につけておいて演劇して貰えればと思います。
 最悪どこも活性化しなくてもV兵器なので、装備してるだけでアウルを送り続けないと駄目な時点でトレーニングになるんじゃないかなって先生なんかは思います。
 で、今回の演劇のテーマですが」

 とか言った途端、西島の背後で流れだすドラムロール。
 デコデコデコデコデコデコ。ジャジャン!

「はい。えー今回はあれです「アラジンと魔法のランプ」とかいう話です」
 完全にドラムロールの勢いスルーした感じで西島は言う。
「こちらはアラブだか何だかが舞台のお話ですが、まーそれなりに知ってる人もいるのではないでしょうか。もちろん、今回も「え、いやアラジンなんて知らない! 誰! むしろ何!」なんて方でもお楽しみ頂けるようになっていますのでご安心くださいね。重要なのは、あなたがどんな役をやりたいのか、そして何をしたいのかです。裏方の方々はいつでもあなたの奇想天外に全力で対応出来るようスタンバっていますので、素敵に出演者として暴れ回って下さい。それではみなさん頑張って。レッツふわっと演劇〜」



リプレイ本文





●とある劇場にて。
 深森 木葉(jb1711)がもぎりの人をしていた。
「本日の上演はアラジンとなっておりま〜す」
 っていう背後で物凄い暇そーにチュロス食ってるフレイヤ(ja0715)。
「あれ? フレイヤさんって今日出演なさってるんじゃないんですかぁ〜??」
「んーまだ出番ないから」
「ちなみにどんな役を?」
「私はー【闇の秘密結社ボンバーサイクロンの四天王でなおかつ総帥の孫娘で日夜労働基準法に違反しつつ残業していたんだけどこんな現状は良くないと思って魔法の洞窟でいっちょトレジャーハントしちゃおっかなって思ってる20歳成人女性(未婚)(彼氏いない歴=年齢)(白馬に乗ったイケメン募集中)】を演じるのだわ!」
 チェロスを天に向かって掲げ、大声を上げるフレイヤ。
「あそうですかお疲れ様ですぅ〜」
 相手にしない方がいいと思ったのか、木葉は意外とあっさりと流した。で、チケットをもぎもぎしていく。
「だってアラジン知らないんだからしょうがないだろ! だいたいアラジンって何だよ! 魔法のランプかよ! 知るかよ! ふわっとだからって何だってやりゃいいってもんじゃねえんだよ! 普通もっとみんなが知ってる童話とかにするだろJK! だからもうこうなったら色黒男子に期待するしかないのだわ! 色黒男子のストリップショーに期待するしかないのだわ! はい! 皆さんご一緒に〜! アラジン知らないなら色黒セクシーマッチョに期待すればいいじゃなーい! 色黒マッチョのビッグウルフに魅惑の騎z」
「コルラァァァァ!!」
 そこにずさあああと滑りこんでくる、憲兵姿の如月 敦志(ja0941)。
 敦志は床を滑りながら雷鳴の魔法書を広げた。そして、フレイヤの頭に向かって雷の矢のようなもの(物理)を思いっきり投げた(物理)。
「ま、魔法書を広げた意味が……一切ない……だと!?!?」
 そこに、赤いマフラーをなびかせながら、警官の制服姿の千葉 真一(ja0070)が登場。顔にはもちろん今日も彼の代名詞であるヒーローマスク。その姿はまるでロボット刑事K……。
「ぎゃああああああ!!」
 間にも、頭から血を噴き出し白目向いてぶっ倒れてるフレイヤ。
「ふう。アホなMSをディスるのはいいが、いきなり下ネタぶちかましてくるとは。肝が冷えたぜ」
 雷の矢(非魔法)を引っこ抜きながら、汗を拭う敦志。
「逮捕が遅れていたらリプレイ公開停止の惨事だったな。良かった」
 それに頷いた真一は、キャスターとパトランプありの小型の檻(どっかで見たことあるぞ)にフレイヤをぶっこみ、がしゃん、と戸を閉めた。
 そして二人は顔を見合わせ深く頷き合いうと、ガシッと肩を組み合った。
 カメラ目線に決められる笑顔(ノーマスクの敦志のみ)。
「「良い子のみんなあぁ! エリュシオンは全年齢対象の健全なゲームだよ〜!」」
 そんな事を言いながら組んだ肩をあの夕日に〜みたいにして揺らす二人の後ろで、突然ざわめきだす新崎 ふゆみ(ja8965)の木。
「だからこの物語もファンシーで健全なんだよ〜☆★☆ きっとこの後愛と魔法と大冒険に溢れた素敵なアラジンが始まるんだよ〜☆★ きっと始まるんだよ〜☆ミ」
「い、何時の間に!!!」
 余りの自然な混じり具合に驚く真一と敦志。
「ふふふふふ☆ 今日も安定の木の役、ふゆみだよ☆★ そう! プレイングの内容が消失してもふゆみは懲りない! ふゆみはめげない! ふゆみはあきらめない☆★☆!! 今日も最初から最後まで舞台のどっかに居てざわざわしちゃうんだよっ(・∀・)★」
 バッサバッサバッサバッサバッサ。バッサ。
 そして両手に持った木の枝をサンバのリズムで揺らすふゆみ。この堂々たる木の枝ばさばさっぷり。安定過ぎる木の役っぷり。むしろだんだん、木以外のふゆみさんを想像できなくなってきているくらいの安定っぷり。
「それは困るよ〜☆★」
 バッサバッサバッサバッサ。

「っていうか、あ、あたしただもぎりをしてただけなのに……いきなり何なんですかこのカオスぅ……」
 劇場でもぎりの人をやってたって設定だったはずの木葉は、この意味不明過ぎる展開におろおろ。
「ああ、一歩遅かったのです!」
 そこへ登場したのは、今日もフツーにかわゆいRehni Nam(ja5283)。所轄署の刑事さん設定らしい、私服っぽいスーツ姿で刑事手帳をパカッしてます。
「私は女刑事レフニーじぇす!」
 菊○怜のモノマネしつつ言ったレフニーは、一旦菊○怜のモノマネはやめて普通に話しだした。
「カオスな展開に驚かれている方もいるようですが、皆さん、落ち着いて下さい。こののっけからのカオスっぷり。それらは全て、ここに仕掛けられたアドリブ爆弾が爆発してしまったせいなのです!」
「アドリブ爆弾?!」
「アドリブ爆弾?!」
「アラジン何処行ったんだ?!」
「とにかく、私と同僚のジュンちゃん刑事は、その爆弾犯Kを追って西へ東へと移動している最中だったのです。でも一足遅かった……」
 そしてまた菊○怜のモノマネで、相棒の刑事を呼ぶレフニー。「ジュンちゃん刑事、ジュンちゃん刑事! もう爆弾は爆発してしまったようじぇす!!」
「くっそーあいつ、絶対捕まえたるからなーー!!」
 関西弁のアルトボイスが聞こえて、「え」と一同が振り向くとそこには。
「え! 誰!」
「髪型! 髪型おかしい!」
「後ろにそりこみ入ってるゥー! 後ろにそりこみ入ってるゥー!!(笑)」
 散発失敗中らしーあたまの相棒刑事、亀山 淳紅(ja2261)の姿が。
「お! 今回はわりと無難な登場の仕方できて良かったですね! ジュンちゃん刑事!」
「うんやっぱりさらし巻いて来たんが良かったんかな」
 そしてどん、と自分の胸を叩く『もうブラの人だなんて呼ばせない』亀山 淳紅。
「さすがジュンちゃんですね!」
 惚れ直しましたてへへ。なんつっていちゃつきだす刑事二人。いやさ、今はただのジュンちゃんとレフニー@恋人同士。
 だが。
 ここで筆者は今一度問いたくなるのだった。
 え、そんなことでいいんですか、と。
 そんないくらブラ事故起こしたくないからってさらしとか巻きだしちゃう男でいいんですか、そんな「ベッドシーンに細心の注意を払う女優」みたいな乙女な小細工してくる男でいいんですか、これもう着々とメンタル的に女性化が進んじゃってるってことで間違いないですよいいんですか、と。
 筆者は今、レフニーちゃんに問いた……。
「ハッッ! 今またマイルドにディスられた気がする!!! こんのー! 誰のせいや誰の!! 誤解を招くような言い方すんな!! 人権侵害人権侵害!!」
 そして何もない空をふわふわと見上げながら、叫び声を上げつつ走りだす淳紅@ウーマンアクター(笑笑)
「あっ! 待ってくださーいジュンちゃーん!」
「やれやれ全く何処の居酒屋なんだか」
 なんてやってる間にも、檻から逃げ出しているフレイヤ。
「ハッ何時の間に!」
「じゃあ皆さん。私、いずれ訪れるであろう世界の終焉を食い止めなきゃいけないんで失礼するんだわっ」
「こらこら待て待て〜!」
 赤いマフラーをなびかせつつ、檻ガラガラ押しつつ走っていく真一。でも、途中でああんこれめんどくせぇ!! ってなって、滑る小型檻の天井に腹ばいになってピンを手を横に伸ばしてみたら、まあ何ということでしょう! まるで真一が飛ぶヒーロー! 風になったヒーローみたいになったではありませんか。
「新しい!」
 スピードが落ちる度に、スケボー漕ぐみたいに地面を蹴ってまた腹ばいになる真一。ご苦労様です。
「とりあえず私はアラジン×ジー○ーかーらーのー……ジャ○ァーの寝取りに期待、超期待してるんでマジで!!」
「こら黙れーー!! ネズミの国が怒ってくんだろーがネズミの国が!! ネズミの国がよ!」
 ちょネズミの国連呼するのやめてください。連呼するのはやめてください本気で怒られますやめて下さい敦志さん。
「あ! ふゆみも、ふゆみも行くんだよ〜☆ また次のシーンでもざわざわしちゃうんだよ〜っ☆ミ」
 バッサバッサバッサバッサ。
 そうして画面上(?)からはけていく役者(?)のみなさま。
「ご……ご来場の皆様は……」
 そんな背中を見送った木葉は、カメラ(?)の方に顔を向け、呟いたのだった。
「カオスにご注意……下さい……ですぅ〜……」




●そして幕を開ける久遠ヶ原お昼の愛の劇場 第38話「アラジン! 美少女とランプ、どっちが大事なんだよ!」は。
 ぱららぱっぱらぱららぱっぱらぱらららぱっぱら〜。
「しっかしフレイヤの奴一体どこいっちまったんだ」
 木の役ふゆみがぽちっとなってタイミングで流す新喜劇的なあのメロディの中を、敦志がきょろきょろしながら歩いていた。
 横をガラガラガラガラーッつって通り過ぎて行く真一。
「かーらーのージャイアントジャーンプ!!」
 新しい技の練習をしつつ消えていく真一。

「つかどうにかアイツ楽に捕まえらんないかなー」
 っていうそれをスルーして、頭に被ったターバンをいじくりつつ敦志は呟いた。
「捕まえるつっても、面倒臭いよな実際」
 そんなまだ序盤なのにやる気なさ半端ない文句を言いつつ、ターバンの宝石のあたりをごしごし。
 するとまあ、なんということでしょう!
 その宝石飾りの辺りから、栗原 ひなこ(ja3001)の精霊が現れたではありませんか。
「はぁーい、ご主人様! お望みのものはな・ぁ・に?」
 きゃぴーん。
 と、黒髪のポニーテールを揺らしながら敦志を見つめるひなこ。
「誰にも毟られない髪の毛? どんなに毟られても生えてくる髪の毛? それとも、あ・た・し?」
 そして指先を自らのぷるんとした唇にボーイ・ミーツ・ガール。
 したものの、すぐにひなこはケロっといつもの顔に戻ってみせた。
「なーんて冗談」
「ふーん。キミを望むのありなんだ?」
 けれど敦志は何処か意地悪い笑みを浮かべ彼女の頬に自分の掌をボーイ・ミーツ・ガールした。
「じゃあ俺はひなこを望むよ」
「あ、敦志くん……こ、こんな所で恥ずかしいよ……だって……そう、フレイヤ! フレイヤさんは!」
「しっ。ほらもう黙れよ。あんな中二病患者なんかどうでもいいさ。今の俺には、キミしか見えない……」

 え、キスしちゃうの! キスしちゃうの! とふゆみの木がざわめきだす中、シーンを盛り上げるかのようにあのメロディが。

<おほーぬーわーああーー>

「きゃー☆★ ロマンティックなんだよ〜ふゆみだよ☆★ アラジンと言えば魔法だよ☆ これからカップルの二人に素敵な魔法演出しちゃうぞ☆★ あそれっ、ぴゅーん☆ミ」
 そしてふゆみの木は流れ星魔法(ロケット花火)を二人に向け発射。
「あっち、あっちあぶ、あぶねえええええええ!!!」
「げへへのへ〜(・∀・)」※よいこのみんなは例えいちゃつくリア充相手でも絶対に真似しないで下さい。あたしは良い子じゃないからやらせたけどな! ハッ!

「オーウ、ジャス○ン! アジアンビューーーーーーーーーテーーーーーーィ」
 そこにずさーと、方膝ついた格好で滑りこんでくる、マイケル=アンジェルズ(jb2200)。
「拙者はアラジン! 黒髪美少女は世界の宝デース☆ 姫は長い黒髪に美しい瞳の美女のハズデース☆ まさにそう汝のヨウデース☆ 拙者が幸せにするのデース☆」
 銀幕の世界を惜しまれつつ引退した大スター(自称)の大ぶりなアクションが、演技で観客(どっかに居る!)の注目を一手に集める。
「なんだと貴様ー! 俺の彼女に向かって何を!」
「と、ロリコン」
 ぺッと舞台上に唾を吐きだすマイケル。
「ろ、ろろろろ、ロリコンちゃうわ!!」
「そうだよ! あたしはこう見えても高等部なんだよ! 高等部3年5組なんだよ!」
「オウ、拙者ちょっと日本語わっかりマセーンね☆ とにかく黒髪美少女にハグするデース!」
「させるかー!」
「じゃああたしはその隙に、とりあえずよしこさん捕まえよっかな」
「よ、よよよよ、よしこさんちゃうわ!!」
 なんて言葉にまんまと誘き出されて、サンバの腰つきでツイストしながらしゃしゃり出てくるフレイヤ。
「あ、出たな! 田中良子(フレイヤ)!!」
「ゴルラァアァ! かっこがきにするなあああああ!! 私はフレイヤなの! いずれ訪れるであろう世界の終焉を食い止めるため降臨した女神の生まれ変わりなの!」
「またそんな世迷言言って、中二病とかいう疫病を蔓延させるつもりだね! 成敗してやるゥー!」
 メタルシールド片手に突っ込んで行く、ひなこ。
「やめろ! 俺のために争うな!」
 フレイヤよりよっぽど世迷言な世迷言を叫ぶ敦志。
「黒髪美少女にハグぅぅぅぅぅー」
 を押さえこみながら、血走った目で叫ぶ、マイケル。


 ぱららぱっぱらぱららぱっぱらぱらららぱっぱら〜。
 ほんわちゃずっちゃほんわちゃずっちゃ。
 そこにまたあの新喜劇的なメロディが流れだし、どったんばったんやってる一同を背後にひらひらと一人の踊り子が出てきた。
 藤咲千尋(ja8564)だった。
「ハーイ千尋です!! 私の踊りでアラビアンなムードを盛り上げちゃうよ〜!!」
 腹ちらどころか、腹見せ全開のせくしーな衣装で、世にも不思議な踊りを踊る千尋。
「フニャラ〜フニャララ〜アーッメm」
「おっと分かった分かりましたよー? だからそこまでにしときましょー千尋ちゃーん?」
 そんなエキセントリックな彼女の姿に慌てて飛び出してくる楽士役櫟 諏訪(ja1215)。
 と思ったらどうやら彼女のエキセントリック踊りに慌てたんじゃなくて、恋人の余りのセクシーさ及び可愛さに慌てたようで、それは次の言葉が証明していた。
「もー千尋ちゃんの踊り子姿、美人さん過ぎですよー。踊っている姿、すごいかわいかったでしたよー? ひやひやしますよー?」
「ほめられちゃってあばばば!!」
 目ん玉ひんむいた世にも「あばばばばば」な顔でおろおろする千尋。
「あははは、かわい過ぎるですよー」
 どこまで本気なのか、そんな彼女の姿を見てもほわんほわん微笑んでいる諏訪。

「オーウ、ジャス○ン! アジアンビューーーーーーーーーテーーーーーーィ」
 ずさあああ。
 そこへ再び膝立ちになって滑りこんで来た、マイケル。
「拙者の心は汝の黒髪にジャストミートデース!」
 最早黒髪なら何でもいいのか。その惚れっぽすぎるアメリカンハートはもうどうにもならないのか。
 しかし、そんな溢れんばかりの存在感を放つマイケルが割り込んでも、千尋と諏訪のいちゃいちゃは止まらないのだった。
 夜のコンビニ前で喋ってる学生みたいにそこに座り込み、思い出話などを始める二人。
「いやーほんとあのMSさんのアルバイト依頼の時のことを思い出しますよー」
「え? あの月夜の砂漠の依頼のこと?」
「なんだか懐かしいですよねー? あの依頼のしばらく後に恋人になって、あっという間でしたねー?」
「うんあの時はまだ彼氏さんじゃなくてお友達だったけどね!!」
「うん自分は違いましたけどねー」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………うん!!」
「なんていう恋人が可愛くて可愛くてたまりません、可愛くて可愛くて可愛くてたまりませんどうしたらいいんで」
「知るかーーーーーーーーーーっ!!」
 どっしーんん!!!
 そこに角突き出した牛のようにも見える何かが凄い勢いで地面を滑りこんで来て、そのまま勢い余って諏訪に激突した。
「アァーーーーーーーーーッ!!」
 いえない所に言えないものが言えない感じで突き刺さり、悶絶する諏訪。
「きゃー、すわくーーーん! そんなキャラじゃないのにーーー!」

「そう俺は……ランプのまじん」
 なんていう惨事なムードは一切読まずに、渋く名乗りを上げるリンド=エル・ベルンフォーヘン(jb4728)@ランプのまじん。
「な……なぜこのタイミングで……ま、まさかよその依頼の話をしたから嫌がらせ……され……」
「えー?! このやろーそんなちっちゃいMSは死んじゃえー!」
「全くくだらん。人間は総じてみなくだらん生き物だ。そう思うだろアラジン殿」
「拙者は黒髪美少女の姫を探してマース☆ まじんならとっとと美少女出すデース☆」

「うん。もうこれはあれだな」
 端っこの方で事の行く末を見守りながらチェロス食ってるフレイヤ、敦志、ひなこの三人。
「何もかもが間違ってるってことしか分からないな」
「だね……」
「まあだいたいいつもこんなもんなのだわ」


「ばかやろーーーーー!」
 っていう間にもリンドがマイケルの頬に右ストレートを炸裂させていた。
「はうわ!」
 ずさああああああ、と地面に頬を擦りつけぶっ飛んで行くマイケル。辿りついたところで蹲り、口から血をだぼだぼ出した。
 さすが銀幕の世界を惜しまれつつ引退した大スター(自称)である。迫真の演技だった。
「なんてスパルタな魔人なの?!」
 戦慄する、皆さん。
「凡俗め、何の苦労も無しに黒髪美少女など手に入れられるものか! 男ならば内面を磨け! これだから人間は!」
「オオウ! 拙者目が覚めたデース! こうなったらさっきのもぎりの木葉さんにアターックしてくるデース☆」
「一切目が覚めてない?!」
「よし、行ってこい! そして玉砕してこい! 木端微塵になっ!!」
「そしてまじんはスパルタ通り越して、ドS?!」
「Oh! 拙者の黒髪美少女は何処ですか〜☆」
「ちょ、待て! それはさすがに待てマイケル! やめろ落ち着け! 木葉とじゃ見た目的に犯罪だ!」
 思わず慌てて飛び出してくる敦志に羽交い絞めにされるマイケル。
「Oh! 拙者の黒髪美少女ォォォ〜」
 手を伸ばしての断末魔の悲鳴(死んでない)

 なんてムードはまたも一切読まずに、リンドは語りだすのだった。
「俺がマイケル殿に拾われてから一年。思えばいろいろあったな……例えば俺の尻尾薙ぎ払いでぶっ飛ばしたりとか、角部っ刺し頭突きでぶっ飛ばしたりとか、必殺目潰しでぶっ飛ばしたりとか」
「基本DVしかされてない?!」
「全く何故だろうな……どれもこれもくだらん思い出だが思い出してみると酷く懐かしいものだ……」
 そして脳裏に過る、二人のおもひで。


 演劇開始前に、楽屋で眠りこけていた一人の男子に偶然拾った長い黒髪のカツラを被せた。
 意外と似合っていたので、俺はとりあえず無言で写メっておくことにした。


「え?! 何の記憶?!!?!?!?」
「あ、すまん、間違えた。これ劇開始前の黄昏ひ」
「それ以上言うてはならーーーーーーーーーん!!!」
 こーーーーん!
 そこでいきなりなんかまるで狐のような鳴き声がするなって思って一同が振り返ると、やっぱり狐が立っていました。っていうか人面狐が立っていました。
「なんという……なんという胸のでかさだっ!」
 フレイムクレイモア片手に目を見張らせるリンド。
 まるで顔つきから何から戦闘のワンシーンみたいでしたが、良く良く考えてみると言ってることが中学生でした。

 そんなリンドにお得意の胸振りダンス(随分昔に流行ったダッダーンボヨヨンボヨヨンのあれ)を高速(一秒に約5回)で繰り出しつつ、危機迫った顔つきで迫っていく狐珀(jb3243)。
 呪いなのか魔法なのか、むしろそのどれでもなくてただの外見的な威圧感のせいなのか、リンドはもうそこから一歩も動けず固まる。
「胸よりこの自慢の毛並みを褒めるのじゃーーくらえー! ボヨヨンボヨヨンかーらーのツイスt○×▽……cリ△○rスッッ!!!」
 最後気合い入れ過ぎてブレイクしまくりの何らかの必殺技名っぽいことを叫びつつ、リンドに飛びかかる狐珀姉さん。
 ごろんごろんもみくちゃになって、気付いた時にはリンドの上に狐珀姉さんが馬乗りになっていた。
「?!」
「いいか! 今日は黄昏ひりょ(jb3452)殿は体調不良で欠席じゃ。今日きとるのはひりょ殿の遠縁の親戚の黄昏ユキ殿(jbが女装3452)じゃ。今度ひりょ殿の名前出したら承知せんぞ! どうするかといえばそうじゃの。お前をもふもふしてやるからの……私のこの魅惑の毛並みでもふもふしてやるからの……ふふふふ」
 リンドの腹の上でベリーダンスなウェストをツイストしつつ意味深に微笑む姉さん。
「姉さん姉さん。ちょ、ちょっと落ち着きましょう。良い子のみんなが見てますよ。あと、思いっきり名前連呼してます」
 見るに見かねて思わずその肩を叩くユキ。
「おおひ……ユキ殿! いやあ、ちょっと熱くなり過ぎてしまったようじゃのう。コンコンコンコン」
「あ、風邪ですか」
「笑うておる」
「いやひりょ殿だろ?」
「いえユキです! 役について前日までいろいろ考えていた結果、今日は風邪を引いてしまったひりょさんの異国の神官役に変わり、私ユキが異国の巫女さんをやらせて頂きます……」
 口元を巫女服の袖で覆いながら、もごもごと喋るユキ。
「いやあれはどう見てもひりょど」
「しつこーーーい!! 言うてはならんと言うておろーがーーーーーーっ!!!」
 ダーンと体当たりからの華麗なるもふもふを決め、自慢の毛並みの腹にリンドの顔を押しつける狐珀姉さん。
「しかしあれは俺が被せた……カツ……ラ」
「全く人の心の分からぬ奴よの。分かってやらぬか! 否定したにも関わらず余りに似合い過ぎて女装姿のまま舞台に上げられてしまったひりょ殿の気持ちを! 見よ、ひりょ殿のあの達観した切ない目を!」
「………………」
「………………」
 そこでちょっとシーンとして、撫で肩で佇む一人の人間の姿をじーっと見つめる悪魔二人。
「うん、可愛い」
「可愛いのゥ!」

「オオオオオオオウ!!! 拙者とうとう見つけましたデース!!!」
 そこに三度ずさああああと方膝を立て滑りこんできたのはマイケル。
 ぶわあさ、と邪魔そーな前髪を「こんどーです」風に振り上げ、茫然としているユキの前に薔薇の花を一輪差し出した。
「オーウ、ジャス○ン! 拙者のアジアンビューーーーーテーーーーーーィ」
「え?」
「汝は恋人いないデスネー! だったら拙者のジャス○ンになるデース! 決定デース!」
「えちょ、うわあああ!」
 マイケルは強引なアメリカンハートで、それに比べりゃ何もかもが繊細な造りのジャパニーズハートをお姫様だっこした。
 小天使の翼で、ズウゥゥゥゥゥゥンと上空に。
「ひ、ひィぃィィィ、よ、酔」
 上昇するエレベーターなんて目じゃない勢いに顔面蒼白になるユキっていうかもはやひりょ。
 でもぜーんぜん気にしてないアメリカンハートはとっても楽しそうに歌い出した。

 そらとぶじゅうたんがなくても
 拙者の足にくっつけておけばノープロブレムデ〜ェス☆
 ランプの精とはマブダチになれる予感デス☆
 スキヤ〜キ〜〜〜で一杯やるデ〜ェス☆ 相棒のサルは肩に乗せて可愛がるデス☆
 おほーーーぬーーーわーーーー☆
 バナナ食べる〜〜〜デス☆ オ・ウ・ムも肩に、乗せ〜えて可愛がるデス☆
 おほーーーぬーーーわーーーー☆
 わ・る・い奴は、一緒に、懲らしめる〜〜〜ゥデ〜ェス〜〜☆(無理矢理あのメロディで)

「さあ共に行くデースユキミン! 拙者が幸せにしたるデース!」
「そんなピク○ンみたいな呼ばれ方嫌だー! ち、違うんです俺は! だ、誰か助けて〜姉さ〜ん」
 じったばったしながら全力で助けを求めるひりょ。
「うん! すまん! 無理!」
 何故かベリーダンスを踊りながら、あっさり全力拒絶してくる狐珀。
「なんでぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「俺もそれで世界が平和になるのなら……すまん」
「かかかかかか! 関係ないですから! 世界平和今一切関係ないですから!」
 果たしてこのままひりょは浚われてしまうのか。
 ある意味(┌(┌ ^o^)┐的には)それはそれでおいしいのか。
 そんな不安や期待にその場が包まれ出した時だった。

「コルラアアアア!!」
 真っ赤な盃に乗ってうんせうんせとやってくる女子が。
「ばかやろーーーー! いつになったら俺が閉じ込められてる洞窟に来んだよー!!! 待ちくたびれて俺の方から出向いちまったじゃねえかー!!」
 今日は魔法の絨毯役だったはずの石上 心(jb3926)が、ずりり、ずりり、と盃を漕ぎつつやってくる。
 せめてキャスター付にしとけばよかったのに、本当にまんま盃だったのでなんだかとっても重そうだ。
「手伝おうか……」
 見るに見かねたリンドが申し出ると、心はひゅーと盃から飛び出しくるんと一回転して着地した。
「へっ! ランプのまじんごときが! 魔法の絨毯を助けようなんて百年早いぜ! 魔法の絨毯はな! まじんの力なんざ必要ねぇんだよ!」
 途端にライバル心をむき出しにして、すちゃ、とアクアリウムを構える心。
 一体何にライバル心を燃やし、一体何と張り合いたいのかがいまいちよくわかってなかったが、リンドだって向かってくるというならば手加減はしない。
「よかろう、相手になってやる」
 フレイムクレイモアを構え、リンドは低く呟いた。「とーう!」
 そこから熾烈な戦闘が幕を開ける。
 と思われたその時、飛び上がったリンドの頭に、ぴょこん。と黒耳が。そして尻からにょろんと黒い尻尾が。
 同じく光る小型の魚のような物を呼びだそうとしていた心の頭や尻にもぴょこんにょろんと黒耳と尻尾が現れ出した。
 何事かと二度見するみなさん。

「ニャーッハッハッハ! 恐れおののくがいいですニャー!」
 すると突然、上の方からそんな声が聞こえ、皆は「え」とそちらの方を見た。
 のを待っていたかのようなタイミングで、黒い物体が「とぅっ!」と飛び上がり、くるくるっしゅたんっ! ってしなやかな猫のように地面へ着地した。
 と思ったらほんとに猫だった。
「いつもニコニコ現金払い! 悪の黒猫大魔道士ニャーディスッ!! ここに見参!」
 てじなーにゃ☆ っぽい決めポーズを取りながら、ふわんふわんと尻尾を揺らす黒猫。の着ぐるみ。
 といえば皆さんご存じ、カーディス=キャットフィールド(ja7927)である。
 いや今はニャーディス。ニャーディス=キャットフィールド(jaが着ぐるみ7927)だ。
「恐れ戦いたか! これぞレベル5の黒猫魔法「黒猫の耳としっぽが生えるマホー」ニャのだ! ニャハッハッハー」
 黒い尻尾をふわふわさせながら仁王立ちで笑うニャーディス。
「ど、どうしよう全然恐ろしくないどころかむしろ」
「むしろ可愛い!!」
「さあ! 私の魔法で世界を恐怖のどん底に陥れ、世界を黒猫征服シテヤルのです!」
 そうしてニャーディスは「目をらんらんさせによによしてる黒猫」の描かれた魔道書を掲げると!
「…………んしょ、んしょ」
 一ページ一ページ、丁寧にめくりだした。

「……………」

 健気だった。
 なんかめっちゃ健気だった。
「…………どうしよう……めっちゃ可愛い……」
「ぬぬぬぬおぬォれ〜。もふもふ度ならば負けておらぬというのにぃ」
「いや姉さん。問題はもふもふじゃなくて外見……」
「ふふ、もういっぺん言ってみィ、ひりょ殿……」
「ごふ、ご、ごごごご」
「ちなみにレベル1の魔法は相手の衣服へ黒猫のワンポイントを付与ですし、レベル2は黒猫のマスコットをそっと付けるですし、レベル3はこれ!」
 \ババーン/
 懐(どこだろう……)から黒いわりとでかめのぬいぐるみを取り出したニャーディスは、それを狐珀姉さんに押しつけた。
「こっそりと敵に黒猫大魔道士ニャーディス特製の黒猫のぬいぐるみを抱きしめさせ、戦いに集中できなくさせる!! の技なのです!!」
「わーいほんとじゃー可愛いのう。黒猫ぬいぐるみじゃっているかぁぁーー!」
 そぉい!
「わーーーー黒猫大魔道士ニャーディス特製の黒猫ぬいぐるみがぁー!!」
 私が毎晩ちくちくして頑張って作った黒猫のぬいぐるみがああ!!
「き、きにゃまぁああ! にゃっ、にゃににょにょにょるにょる!!!!」
「言えてない一切何も言えてないから! 落ち着いて! 落ち着いてカーディスさん!」
 しかしそんなそぉいされた黒猫のぬいぐるみを、ふらっとやって来た少女がそっと優しく拾い上げた。
 彼女は一体誰なのか。
 そんな視線が集まる中、彼女は「私のスト―キングが報われる日が来たのですね」と、物凄い淡々とした口調でエキセントリックな事を言った。
 そう彼女は、敵国の王子の陰謀により、ランプのまじんの魔法で自らの許嫁を黒猫に変えられてしまったので、現在は何とかして許嫁を元に戻して貰おうとランプのまじんをスト―キングする姫、雫(ja1894)だったのである。
「長ッ」
「たぶんこれで設定全部説明したつもりなんだろ」
「仕事が雑だよね、ほんと」
「だって諏訪くんのこと、つきさしたしね!!」
「いやー戦闘依頼なら死んでるところですよー? マジでー」
 あははははははー。
 なんつってチェロス齧りながら、端っこの方でひそひそ喋るフレイヤ、敦志、ひなこ、千尋、諏訪の五人。

「やっと貴方に会えました。カーディスさん」
 間にも雫が「用意されてる台詞なので読みます」くらいの甚だしい程の棒読みでそんな事を言っている。
「え」
「え」
「え、私?」
「貴方が黒猫に変えられてから、早三年。発狂して国から逃げ出して行った貴方を探し、同時にランプのまじんだけは絶対に逃がさないようスト―キングを続けて来た努力がついに報われる時が来たのです……さあ、ランプのまじんよ。この人を元の姿に」
「うんそれは無理!」
 ふか○りょ○体操っぽい動きをしながら、あっさりと却下してくるまじん@リンド。
「な、何故……何故ですか!」
「だって猫を人間に戻すなんて不可能だよね? ……だって、猫を人間に戻すなんて不可能だよね?」
「くー! なんか分かんないけどムカつく!!」
「つかお前らああああ!!」
 そこで全力の叫び声を上げたのは心だった。
 腰に手を当てた格好で真っ赤になった顔を突き出し(しかも猫耳)(そして尻尾)「つかその前にこの耳と尻尾なんとかしろよぉぉぉぉぉ!!」とまるでヤンデレのような発狂ぶりを見せた。
 そして懐から何かを取り出すと、それを振りかぶっ、投げたーーーーーー!!!
「心様特製、怪しい薬だ! こないだの休日に趣味で作ってやったもんだ! 実際何がどうなるかは俺にも分からんが、とにかくくらええええ!!!」
 やがてそれがばっしゃーとそれがカーディスに命中。
 しゅるしゅるしゅるーっと猫の着ぐるみが溶けていき。
「ぎゃあああああああ!!! 私の、私の着ぐるみゃあああああああ!!」
「大丈夫です! コメディです! コメディ依頼です! 嘘です! 全部嘘です! ちゃんと終わった頃には元に戻ってますよ! 落ち着いて! カーディスさん落ち着いて!!」
 中からははんと。
 カーディスが現れる!
 と思ったら、同じ眼鏡は眼鏡でも伊達ではない方の、眩しい方の、むしろメガネーンナッの方のクインV・リヒテンシュタイン(ja8087)が現れたのだった。

「ふははははははは! お呼びかな? この天才ダアトたる僕を!」
 くいくい、と眼鏡を押し上げながら、一同をちょっと高い位置から(箱の上とかから)見下ろすクイン。
 何が起こったか分からず、ちょっとシーンとする皆さん。
 とりあえず今一つだけ言えることがあるとすれば、無駄に煌く眼鏡が何だかとっても眩しいってことくらいだった。

「僕は眼鏡を拭くと現れる眼鏡の魔人! そう、キラーンオブザメガネーンッナッなのさ! 今確かに何処かの誰かが眼鏡を拭いたね! そして僕を呼んだ! 僕は眼鏡を拭く人の所にいつでも現れるのさ!」
 そんな一同の戸惑いをよそに、ぴょん、と箱から降りて皆の前をうろうろしながら話す、眼鏡の魔人@クイン。
 眼鏡くいくいされるたびに、きらきらって無駄にいらつく光が皆の目を射る。
 一体誰か眼鏡を拭いたのか。これも雑なMSの雑な登場のさせ方だったのか。
 何もかもが分からないが、とりあえずただ一つ言えることがあるとすれば、鬱陶しい、ということだけだった。
 懐から何かを取り出し、尚も喋り続けるクイン。

「実は僕にも、眼鏡も磨くと魔人が出てくる……なんて思ってたことがあってね。なに? 君もそうなのかい? ハハかわいいね。ならばそう思い続ければいいよ! 僕もそう思い続けた末にこうして魔人として出世することが出来たんだからねっ! 大丈夫さ。君の願いは必ず適う! だって今、君の眼鏡は最高に輝いているじゃないか! そうだよ! 美しい! 美しすぎる眼鏡だ! そう! 輝く眼鏡を手に入れるには日々のメンテナンスが大事って事なのさ! ああなんて素晴らしいんだ輝く眼鏡! 君も頑張れば僕のように眼鏡から光線を出せるようになるかもしれないね! アハハハハ」
 鏡を見つめ彼は笑った。
 そう彼は、彼自身に(あるいはその眼鏡に)ずっと語りかけていたのである。
「さあ今すぐにその眼鏡であの太陽を見上げてごらん! 眼鏡越しの世界! きっと素敵な世界が君を待ってるんだ! なに? 太陽が眩しすぎる? ハハハ。太陽にも眼鏡をかけておいたからかな。5割り増しで眩しくなってるかも知れない。でも大丈夫だよ! 何を隠そうその眼鏡はUVカット仕様だからね! どんな太陽にも負けないさ! おっとー。これじゃまるで盾と矛の話みたいだったね! アーッハッh」
「そろそろうるさい」
 パリン。
「ぎゃあああ!!」
 すかさず飛び出してきたフレイヤ辺りに眼鏡を割られ、のたうちまわる眼鏡の魔人@クイン。
「め、めめめめ、眼鏡を!! 眼鏡を割るなんて恐ろしい、恐ろしい人だよ君は!!」
 今回はほぼノーアドリブかつ、できるだけ人様にご迷惑をおかけしない形でお届けしたクインさんの眼鏡語りでしたが、一切眼鏡に興味がなかった一同には受け入れて貰えなかったようで、やっぱり今日も彼の眼鏡は割られようでした。
「い、いつか……いつか思う存分眼鏡を語れる日を夢見」
「それ以上言うと世界中の眼鏡割って回っちゃうけどいいかな!」
「いいともー!」
「い、イヤァー!! やめてぇぇこわれちゃうー、そんなにしたら僕の眼鏡壊れちゃうぅー!」
「や、やめたげてフレイヤ! それ以上はヤメたげて! この子意外とメンタルガラスのハートだから。ガラスレンズのメンタルだから!」

 そこですかさずざわめきだすふゆみの木。
 どかーん★きらきらの魔法(出演者達に向け打ち上げ花火を発射する悪の所業)を繰りだしながら、このカオスを纏めに入ろうと試みたのである。
「こうして雫姫はカーティス王子といつまでも幸せに暮らしましたとさ☆★! めでたしめでたし☆★ 以上、ふゆみの木がお送りしました〜☆★」
 うんいろいろ端折りまくりだけどね!
 いいよね!




「いいわけあるかーーー!!」
 そんな、中盤辺りまで書かれた報告書を読み、びっりびりに破り捨てると、淳紅は叫んだのだった。
「これ絶対アラジン知らんと書きよったオチやで、だってアラジン全く関係ないもん! あれ、レフニーちゃん、聞いてる?!」
「聞いてますが、ジュンちゃん刑事! そんな事より前を見て下さい!」
 ぷるぷると震える指で前方を指すレフニー女刑事。
 そこには。全身黒タイツのなんか。人間っぽい物体が片手にスマホ小脇にノートパソコン、片手に煙草を持って佇んでいる。
 すかさず、ブラストレイの発動に向け身構える淳紅。っていうかウーマンアクター。
「うるさあああい!! 覚悟せえや! こんのー度を過ぎたアドリブにプレイング無視! 人権侵害! なんしかえげつない罪の数々! 毎度毎度人をブラ呼ばわりしやがって! 今日こそお前を逮捕したるで〜!!」
「そうですそうです! もっと言ってやるのです、ジュンちゃん刑事!」
「だいたい、あの称号はなんや! カナモリアンて。カナモリアンて!!! あんなふざけたこっぱずかしい称号なんかつけられたら恥ずかしくて外出られへんやろ! あんなん歓迎とか書かれても嘘に決まってるやろ! 社交辞令やっちゅーねん分かれよそれくらい!!」
「フフフ……むしろあれは嫌がらせにつけるようなもの……あんなこっぱずかしー称号が密やかに一覧にあり続けるだけで他のMSさんに生温かい目で見られる苦痛(主に、私がな!!)に苦しむが……なにぃぃぃぃ!!!」
 そこでレフニーちゃんの称号欄に気付き、悲鳴を上げる黒タイツ。
「こんなふざけた称号をマイルドにつけてくれてる、だ……と?! そんなまさか! 何気な顔してレフニーちゃんがそんなエスプリ効いてる人だったとは……参った。参ったぜよ! ……あんた! あんたほんまにすっきりy」
「うっさい死ねええええええええ!!!」
「ぎゃああああああ!!!」
 ブラストレイの炎に炙られ、のたうちまわる黒タイツ。
「よーしせいぜい苦しめぇーい!」
 地面ごろごろしていく物体にぺッと唾を吐きつけて、淳紅は晴れ晴れとした顔で笑ったのだった。
「うん、日頃の鬱憤晴らし完了!」
 く。ば。ばk……ばかな……。なんということだ……。
 これでは地の文がか、書け、書けな……。
「それじゃあジュンちゃん刑事! これにて一件落着! ご飯でも食べに行きましょー!」





●「えー……そんなわけでぇ……地の文の人が正義の味方に成敗されてしまったためぇ……ここからは私、月乃宮 恋音(jb1221)がこの先の語り部として物語をお送りしていこうと思うわけですぅ……ま、まあ、正直荷が重いですが、これまでもその辺の悪ガキさん達と大してそう変わらない発想しかしないようなクズさんの書く文章でしたし、きっと大丈夫だと思うんですが……うぅ……そんなこんなで……月乃宮オブジャスティスアラジン、始まり……始まりィ……」

「\ちゃっちゃらっちゃっちゃーん/」
「自分はアラジン! 静馬 源一(jb2368)でござる!」
「あっしはそんなアラジンの旦那の子分、天険 突破(jb0947)ってぇしがねえ野郎ですぁ」
「ボクは犬乃 さんぽ(ja1272)! アラビアンニンジャの名諜報員、アリババだよ!」
「名諜報員なのに思いっきり正体明かしちゃっておりますがぁ……」
「ボクも一緒に、悪い魔法使いからお姫様を助けに行くよ!」
「しかも……全然聞いてらっしゃらないようですがぁ……」
「さあ! 魔法の絨毯に乗って出発するでござるるるるるっるるるるうるるるるるるる」
「おっ、さっそく魔法の絨毯を自由自在に操ってぇ、アラジンの旦那! さすがでやんすね!」
「め、目が、目が回るでござるぅぅぅぅぅぅ」
「ひゅーう♪ そんなぐるんぐるんしても大丈夫だとはぁ、さすがはアラジンの旦那ですぁ!」
「ひゃーーー、おち、落ちるでござるよぉぉぉぉぉぉ」
「いやあれ、確実に困ってるんじゃないかな」
「まさかまさか! あんなに魔法の絨毯に好かれ、乗りこなせる人ぁいませんぜ。ためしにアリババさんも乗ってみたら分かりやすって」
「そぉう? じゃあボクも乗ってみるよ♪」
「アラジンの旦那ー! アリババの姫様が魔法の絨毯に乗りたがってますぜー。降りて来てくだせー」
「はらほろひれはら……でござる」
「あれっ」
「え?」
「いやボク姫じゃないよ。アリババだよ」
「はあ、ですからアリババ姫様」
「姫じゃないよ、男だよ」
「え」
「え」
「え?」
「戦いますわ」
「ぬお!」
「たんまげたー、こりゃこりゃ長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)姫様じゃありやせんか」
「ええそうわたくしが姫。わたくしこそが姫。姫は二人も必要ありませんわ。何なら今すぐ戦って差し上げますわよ」
「い、いんや〜。あっしの誤解でして〜。アリババさんは姫ではなくて、ただのアリババの」
「ただのアリババじゃなくて、アラビアンニンジャの名諜報員だよ!」
「へー、名諜報員のアリババさんだったんでやんす」
「そう。なら良かったですわ。お姫様はわたくし一人で十分ですもの」
「へ、へえ。ですがみずほ姫は確か、悪い魔法使いにさらわれたんじゃなかったでやんすか……」
「そんなものとっくの昔に殴り倒してきましたわよ。わたくし、助けを待っているのは性に合いませんの」
「お、おう。分かりやした。分かりやしたから、すんごい勢いでシャドーボクシングするのや、やめて」
「そして私がそんなマイロードの指輪に宿る精霊、御堂・玲獅(ja0388)です。お呼びでしょうかマイロード」
「なんだかここはつまらないですわね。何処かに強い殿方でもいらっしゃらないかしら。連れて来て下さらない?」
「アズ・ユー・ウィッシュ」
「あ、いえちょっと待って! それよりももっと危機的状況にわたくしたちをワープさせて下さらないかしら。その方がきっと楽しいですわよね!」
「イエス・ヨア・ハイネス」
「わーいすごーい。魔法の絨毯ってたのしいんだね〜!」
「あう、アリババ殿! じ、自分より魔法の絨毯を乗りこなしているでござる!!! く、悔しいで御座るーーー」
「うぅ……それにしてもこの露出の多い服装……か、かなり恥ずかしいですねぇ……」

「「場面、チェンジです!!」」

「そして私はそんなアラジンの行動を阻害する山賊のかしら。ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)だ!」
「さ、ささささ、山賊でござる! 山賊でござるよ!」
「アラジンさん、アラジンさん後ろっす後ろっす。何処見てるんすか!」
「あ、なんだ。こっちでござったか。いやあ。びっくりしたで御座る」
「ほう……地の文を一切書かず話を進めるとはな。まさにカオスの所業……全く良い時代になったものだな……」
「いでででで、きりっ顔はいいっすけど、ジェラルドさん、足! 足踏んでるっす!」
「というよりも今、源一さんは一体何を見て驚かれたのでしょう?」
「いやあ。なんか後ろに大きな熊みたいな物体が居たでござるから、山賊かと思って」
「ええ、いますわよ、後ろに熊」
「え、熊?! くまああああああ?!!?!?」
「出たな熊め! さあアラジン、ここはボクに任せて先へ!」
「か、かたじけないでござる!!」
「あっれー何これ何これアッハッハ。もしかしてボクこれ全く無視されちゃってる系かなあ? んー? 熊ぁ? 熊ってなんだー?」
「あ、た、大変ですよぉ……じぇ、ジェラルドさんがいじけちゃってますよぉ……」
「……そういえばそこのキミ可愛いね☆ ねぇこれからどっか遊びに行こうよ、ねえ☆」
「ジェラルドさんジェラルドさん、現実逃避やめて、戻ってくるっす」
「ええ大丈夫それならわたくしがお相手しますわ」
「みずほさん!」
「いや〜そんな女性相手に本気になんてなれないって〜、駄目だよレディがそんな」
「いきますわよ」
「あっこの人話聞いてない!」
「くらえ、シャドーボクシーング!!」
「ぐあはあああ!!」
「みずほさんそれ、突破さん!!」
「知っています」
「知っててやったんですか?!」
「うぐぐ……ば、馬鹿な、あっしはただの手下だったはず」
「いやあそんな……イケメンのボクにお持ち帰りされたいだなんてそんな直球……」
「ジェラルドさんやめて戻って来て下さい……現実逃避やめて下さいよぉ〜……」
「ねえ御堂さん。わたくし良いことを思い付きましたの。このままですと尺もそろそろ尽きるでしょう。ですからこうなったらここは全員殴り倒して、残った方と姫が結婚するのが良い終わり方だと思いませんこと?」
「それは……」
「あ、あれなんですの。何故手にボクシンググローブ巻き始めてらっしゃいますの。ま、まさか御堂さん、このわたくしに逆らうおつもり……めぎょん!!」
「やり過ぎた主君をお諌めするのも、私の仕事なのです……どうかお許しを……」

「そこに流れだすあのメロデぃ〜……」

<<おほーーーぬーーわーああーー>>

「そしてすかさずふゆみの木はざわめきだしたんだよ☆ ふゆみの木だよ☆★ もう絶対纏まらないと思うけど頑張って纏めてみるよ☆」
「が、頑張って下さいねぇ〜……ふゆみさん……」
「えーっと。うん☆ えーこうして壮絶な殺し合いの末生き残った雫姫はカーティス王子といつまでも幸せに暮らしたんだってさ☆★! めでたしめでたし☆★ 以上、ふゆみの木がお送りしました〜☆★」
「それぇ……前の話の纏めですよね〜……」
「げっへへのへー(・∀・)」
「いやげへへではなくてですねぇ……」

「大丈夫だよ〜いつもこんなもんなんだよ〜☆ はい☆!
 それではみなさん御一緒に〜。あっそれ、なんでやねーん☆★!」







おしまい。







依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:20人

天拳絶闘ゴウライガ・
千葉 真一(ja0070)

大学部4年3組 男 阿修羅
サンドイッチ神・
御堂・玲獅(ja0388)

卒業 女 アストラルヴァンガード
今生に笑福の幸紡ぎ・
フレイヤ(ja0715)

卒業 女 ダアト
厨房の魔術師・
如月 敦志(ja0941)

大学部7年133組 男 アカシックレコーダー:タイプB
二月といえば海・
櫟 諏訪(ja1215)

大学部5年4組 男 インフィルトレイター
ヨーヨー美少女(♂)・
犬乃 さんぽ(ja1272)

大学部4年5組 男 鬼道忍軍
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
懐かしい未来の夢を見た・
栗原 ひなこ(ja3001)

大学部5年255組 女 アストラルヴァンガード
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
二月といえば海・
カーディス=キャットフィールド(ja7927)

卒業 男 鬼道忍軍
眼鏡は世界を救う・
クインV・リヒテンシュタイン(ja8087)

大学部3年165組 男 ダアト
輝く未来の訪れ願う・
櫟 千尋(ja8564)

大学部4年228組 女 インフィルトレイター
ひょっとこ仮面参上☆ミ・
新崎 ふゆみ(ja8965)

大学部2年141組 女 阿修羅
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
久遠ヶ原から愛をこめて・
天険 突破(jb0947)

卒業 男 阿修羅
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ねこのは・
深森 木葉(jb1711)

小等部1年1組 女 陰陽師
アメリカン☆ドリーム・
マイケル=アンジェルズ(jb2200)

大学部2年257組 男 ディバインナイト
正義の忍者・
静馬 源一(jb2368)

高等部2年30組 男 鬼道忍軍
久遠ヶ原のお洒落白鈴蘭・
狐珀(jb3243)

大学部6年270組 女 陰陽師
来し方抱き、行く末見つめ・
黄昏ひりょ(jb3452)

卒業 男 陰陽師
大いなる月の解放者・
石上 心(jb3926)

大学部2年221組 女 ダアト
勇気を示す背中・
長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)

大学部4年7組 女 阿修羅
誇りの龍魔・
リンド=エル・ベルンフォーヘン(jb4728)

大学部5年292組 男 ルインズブレイド