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マスター:カナモリ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2013/02/25


みんなの思い出



オープニング




 ある日、江藤の家に行くと、リビングのテーブルの上に、謎の白いディスクがケースに入れられた状態で、放置されていた。
 それを発見した荻原は、ソファに座った状態からじーっとそれを眺め、目を細めて眺め、距離を置いて眺め、やがて「ああこれはきっと怪しくもイヤラシイ系の映像か何かなのだな」と、結論つけた。
 しかも、この外見から察するに、モザイクがないだとか、ちょっと特殊であるとか、何らかの市販出来ない理由がある代物に違いないので、普通に女子やエロスに興味がある成人男性としては、「友人の家にそんなDVDがあるならとりあえず何でも観ておきたい」という好奇心に駆られ、部屋の持ち主である江藤が風呂に入っている事も相まって、こっそり内容をチェックしてみようと決めた。
 で、良さそうだったら借りて帰ってやろーとか思って、デッキに記録媒体をセットし、再生ボタンを押した。

 素人が録画したと思しき、粗い映像が何処かの会社の会議室のような場所を映し出す。
 おーっとこれなに盗撮系かーとか思ってたら、こんな事嫌でたまらない、恥ずかしくてたまらない、みたいな面持ちをした痩身の青年がフレームインしてきた。
 これから僕は一体どーなってしまうんだろーみたいに気まずげにきょろきょろと視線を彷徨わせ、そして、「えーっとあのー」
 と、少し照れくさそうに彼が喋り出した瞬間、荻原はなんかとりあえずリモコンの停止ボタンを押した。

 暗くなった画面を暫し茫然と見つめる。
「えー……」
 と、そこでタイミング良くというか悪くというか、下半身によれたジャージ上半身裸、みたいな姿の江藤がバスタオルで頭とか拭きながら現れて、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出しやってきて、ソファにかけられてあったTシャツ取って来て、荻原の隣にどかっと座って、「飲む?」
 なんて平気な顔してる江藤が、いつテーブルの上のDVDがない事に気付くかとか、明らかに操作してただろ、みたいな状態でそこに置かれているリモコンに気付くのかとか考えると、とっても気まずい。
 このまま用事思い出したとか言って帰ろーかしらくらいの事は考えた矢先「あ」と江藤がもー気付いた。
 冗談ではなく、体がぎくっと反応する。
「あれここにあったDVDは? あ、何お前見たの」
「えあうんそうね見たね、最初のとこだけだけど」
「丁度良かった。じゃあ続き再生すれば」
「えっ」
 と余りに予想外の言葉が来たので、あまりの驚きに荻原は、物凄い勢いでわりと常に従容としている江藤の顔を振り返った。「な、なんで」
「いや一緒に見ようと思って」
 そんな事を言った友人を、ちょっと危ない人を見るような目で、もっと言えば肉食動物に怯えるガゼルみたいな目で、見た。
 ちょっとソファの上を後退りする。
「ちなみにあれって何のDVDなの」
「そりゃあ……っていうか最初のとこ見たんだよな。ならお前、分かってんだろ」
 ってなんかすっかり江藤が意味ありげな流し目とかしてくるんだけどどうすれば、と荻原はすっかり途方に暮れた。
「いや、じゃあ俺……はなんかいいかなあ。あれは見なくても」
「何言ってんだよ、二人で見なきゃ意味ないじゃん」
「いやーそんなことは……ないだろー……」
 って言ってる間にもーソファの端っこで、気付いたらえー江藤が覆いかぶさってくるーっ。
 とか頭をかかえた荻原の隣で、何食わぬ顔でリモコンを手に取った江藤が、ポチ、と再生のボタンを押した。

「えー……。えっと、はい、えー撃退士のみなさんこんにちは、香川県警、庶務課の粕谷(かすたに)です」
 声が聞こえ、へ、と荻原は画面の方を振り返る。
 画面の中の青年がぺこっと頭を下げていた。
「うちの管轄内で、ちょっと変テコリな生物の情報が確認されましたので、久遠ヶ原学園の撃退士の皆さんに調査をお願いしたいと思いこんなビデオを用意しました。宜しくお願いします」
 そしてまた青年が頭を下げる。

「いやわかってたよ」
 と、荻原はもー言った。
「香川県警からの協力要請のビデオメッセージでしょ。だってほら、俺達って久遠ヶ原学園の卒業生だし、今はフリーの撃退士だし、学園に依頼とか紹介する仲介業とかもやってるわけだし。分かってたよ。そりゃそうじゃん。そんなわけないじゃん分かってたよ」
 何かを言われる前に、もーとにかくなんかまくしたてた。
「うんだろうね」
 と従容とした無表情で頷いた江藤が、「だからなんかほんとごめんね。ホモエロビデオとかじゃなくて」と、続ける。
「うんそうだよね、お前はそうやって人が自己嫌悪してるところを、更に痛めつけてくるような男だよね、俺、ちゃんと分かってたよ」






「そんなわけでどうやら、この古い日本家屋のお屋敷には、何らかの不審な生き物が住みついていたようなんですよ。偶然そこにこっそり不法侵入しようとした若者たちがそれを発見したわけなんですが。
 彼らは慌てて逃げたので、辛うじて無事だったわけですが、彼らが警察に駆け込んできてですね。バケモノを見たと。
 あれは人のような形はしていたけれども、間違いなく人ではなかった、とそう言うんですね。
 不法侵入に関しては、持ち主もなく、空き家と言ってもボロボロで放置されているような家ですからね、厳重注意とか所持品検査とかくらいで終わったようですが、とにかくそのバケモノは手の所が爆弾みたいな形だったと言ってですね。まあ何せ暗闇の中なので、はっきりとは認識出来ていないのですが、まあそういう形のように見えたというわけです。
さらに、声も聞いたと言っています。
「バク、ダンバクハツ、バクダング、ヘヘへ」
 このように良く分からない謎の言葉を発していたようです。聞き間違いかもしれないですが。
 この屋敷に住まう謎の生物が、人間なのか人間じゃないものなのかは定かではないのですが、放置しておくのもあれですし、屋敷の調査と、何らかの不審な生物が居た場合はその討伐をお願いします」


「ってこれはつまり今回は、敵を探し出して討伐すればいいって依頼なわけね」
 ビデオの再生が終わると、荻原は、言った。
「そう」とその言葉に頷いた江藤が、先を続ける。「敵を探し出して討伐すればいい。場所は古びた屋敷で、ボロボロとまでは言わないけれど、放置されてるからそれなりに劣化してる。一階建だけど、それなりに広さはあるよ。今回の敵は、ディアボロなのかサーバントなのかは分からないけど、余り優れた頭脳を持ってなさそうな感じからして、そのどちらかだと予想されるね。数は現時点では分からないけど、一般人の遭遇時の様子からして、余り多くなさそうだね。居ても二体くらいじゃないかな」
「ふーん。じゃあまあ、簡単そうだね」

 けれど彼らは知らない。
 実はディアボロだったこの不審な生物が、ヘンテコ爆弾を家中に仕掛けている爆弾マニアだということを。
 そしてその爆弾が、殺傷能力は皆無ながら、世にもおそろしーデリケート問題と疑心暗鬼の世界に、被害者達を陥れてしまう代物だということを。
 爆弾は人目に付かない場所に仕掛けられ、誰かが通れば途端にこっそりと静かに爆発する。
 ディアボロが討伐されない限り、今日もそのじみーにいやーな能力を持った爆弾は刻々と作り続けられ、猛威をふるうだろう。
 これをとめられるのはもう。
 撃退士。あなたしかいない。







リプレイ本文







●これは手が丸い爆弾の形したディアボロ×2を討伐する依頼です。
 とある場所にひっそりと佇む日本家屋。
 ふすまとかが崩壊しちゃってほぼ一つの和室、みたいになりつつその場所で、8人の撃退士達は敵の探索を開始していた。
 そんな戦士達のお姿がこちら。


「余りにもいい加減な造りをした敵のようですね。さっさと片付けてしまいしょう」
 と、今日もすっかりクールな無表情を通り越し、あれ? ちょっとなんか怒ってますか? みたいな表情で述べる雫(ja1894)。
 のさりげなく開いたワンピースのファスナーから、意外とセクシーだった黒レースインナーがチラリズム。
 っていう物凄いミラクルが目の前にあるのに、すっかりお化け屋敷みたいな日本家屋に気を取られ、
「むぅ。古びた日本家屋って歩くとギシギシ鳴って気味悪いよ」
 そういってちっちゃな猫みたいに小柄な体をびくびくさせながら氷河の深淵の如き澄んだ青で辺りを見回すクリス・クリス(ja2083)。
 の、「あれこれ大丈夫ですか、ロリ描写規制とかに引っ掛かりませんか大丈夫ですか」くらいの勢いで思いっきり全開に開いた制服の上下あらゆるところのファスナー。
 に全く気付かず、今日もものすごいイイ顔で笑ってるイケメン神父さんエルディン(jb2504)。
「おやおやおや、クリスさんは怖がりですねっ! ハハハハ」
 が笑う度に、思いっきりもっさああと漂う鼻毛感。高い鼻に漂う鼻毛感、鼻毛雰囲気、鼻毛フィーリング!
 だけではなくて、思いっきり落書きされたかのように飛び出してる金色のやつ、三本くらい。
 からそっと今日もハイライト消え気味ですみたいなぼーっとした目を逸らし、さすが外人さんは毛が濃いな……。と、妙な所に感心する山木 初尾(ja8337)。
 の念慮・ザ・ぐるぐるトリップはまだまだ止まらず、あれだけ鼻毛があればどんな埃も塵も絶対体内に入らないに違いないなとかどーでもいー納得をし、でもじゃあ自分の鼻毛もそうなればいいのかと言われれば嫌とかいーとかの前に、こんなに不健康で常に眠くて常に胃とか痛くて薬瓶が友達の自分の鼻毛があんな事になったら、鼻毛に生気という生気全部持ってかれるんじゃないのかとか絶対怖い気もして、でももしかしたら鼻毛が濃くなったらその日からいきなり元気マックス熱血少年になるのではないかとか、あの外人さんみたいに高らかに笑ったりするのではないかとかまー何でもいーけど最終的にやっぱり外人さんって凄い。
 と、またそこに戻ってきて、鼻毛だけであんなに濃いなら体毛はどうなってんだろー……とか別にどうでもいいのだけれど、金色のもっさもさした脛毛とか、ギャランドゥザエルディン。
 とかうっかり想像してしまってそんな自分の想像にすっかり打ちのめされ、目のハイライトを益々消失させる初尾。
 の後ろで、
「ふうんー、あゃしぃイキモノ、かあ。そんなのふゆみがちゃちゃっと倒してあげるんだからねっ☆彡」
 って初尾に分けて上げて欲しいくらいのはしゃぎっぷりで言った新崎 ふゆみ(ja8965)の頭から、「語尾にはいつでも☆彡とか☆とか★とかつけてねっ」ってフキダシが見えるけどどういうことなの何でなの目の錯覚なの何かのチャット機能とかなのどういうことなのあと思いっきり制服のファスナー全開だけどそれはいいのどういうことなの。
 っていうフキダシの下からにゅっと「フキダsあ間違えた! えー何だっけ、そうそうばくだんばくだん。だからあのーばくだんって、特定の食べ物じゃなくて、地域とかによって違うものをさすらしいな! 今日はどんなばくだんが食べられンのかな! 楽しみだな!」とかなんか言いながら大口開けた咲・ギネヴィア・マックスウェル(jb2817)がフレームインしてきて、「今日は食べ物の爆弾じゃないぞ」と、英 知之(jb4153)にもう指摘された。
 あ、間違えた。訂正。
 元中二病少年で現在はエリートを自称しつつ鼻毛出しまくりチャック開けまくりのスーツ姿で今日も真面目に眼鏡押し上げてる英 知之さん(笑)に指摘された。
「ふ、ふうん! 分かってたもんね! むしろ分かってたもんね! あの何だあれだよ! ディアボロの爆弾みたいに丸い手ぇんところが絶対あまそーとか思ってるって話だよ何だよ文句あんのかよつか見んなよこっち見んなよ!」
 いろんな意味で焦って(後述)手足をばたつかせる咲。
 にも気づかず、ハッとしたように上空を見上げ、ふわふわと辺りを見回し始める知之さん(病)
「い、いやそんな事より何だこれは、何処から物凄い悪意のある含み笑いを感じる……!」
 驚異的な敏感さを見せ、上空の辺りをふわふわと見回す知之さん(哀)(笑)(哀)
「誰だ! 俺を小馬鹿にしてるやつ誰だ!」
「えー誰もいないですよー。何処見てるんですか。もしかして……お化けでも見えるにゃ〜?」
 そんな知之さん(愁)と共に、辺りを見回す、今日もすっかり女子力高い女子猫宮ミント(jb3060)。
 のかんなり女子力高い、白いレースの付いた可愛らしいホワイトリボンインナー。っていうのはつまり、ストッキングどころか下着に上着をインしちゃってるミント。
 にも気づかず、やっぱりまだ辺りを見回してる知之さん(↑↑)

 と。
 ここまででおわかり頂けるように、彼らは戦いに赴く格好では全然なかった。見た目に緊張感がないっていうかむしろ何だったら絶対に戦いに赴いちゃいけない外見になっていた。
 どうしてこんなことになってしまったかと言えば、それはこの日本家屋の中に仕掛けられた世にもおそろしー爆弾の特殊な能力のせいで、尚且つ厄介なのは、自分の外見の変化については、どういうわけか自分ではほぼ気づけないということにあった。
 指摘するのも、されるのも気まずいが、その気まずさを乗り越えなければ仲間は救えないのである。
 ディアボロ二匹の討伐。
 しかし、彼らの最大の敵はそこにではなく、この爆弾がこっそり爆発してしまうことで起こる被害の方にあったのだ。
 そして。彼らの戦いはまだ始まったばかりなのである。



●それではみなさんに戦って頂きましょう。
 ところで咲と言えば何よりもまず、その食欲について思い浮かべる方も多いことだろう。
 彼女がその大口を開き、食べちゃいけない何かだって貪り食っている様子を見た人々は、「まるでなまはげのようだ」「なまはげが暴れているのかと思った」「むしろ赤鬼かと思った」などと、感想を述べる。
 そんなわけで彼女のイメージは今や、すっかりなまはg……じゃなかった大食いで、しかもエキセントリックかつ猛獣のような大食いなのだけれど、では食う意外の場面ではどうか、というと、これが実はやや乙女(笑)なのである。
 今まさに、咲はやや乙女の顔で追い詰められていた。
 鼻毛全開でイイ顔して笑うエルディンと、エリートを自称しつつ鼻毛出しまくりチャック開けまくりのスーツ姿で今日も真面目に眼鏡押し上げてる英 知之さん(笑)に挟まれ、追い込まれていた。
 彼女のキャラなら、「おめー! チャック開いてんぞー!」くらいのことは簡単に言いそうなのだけれど、実際の彼女は物言いが少々尊大で食欲がエキセントリックなだけの、小心者のビビリバビデビルなので、こういう時は一切エキセントリック力を発揮できない。
 咲は視線を泳がせ、泳がせ泳がせまくった挙句に近くに前に居た初尾の服を引っ張り、無言でわったわたしてジェスチャーで伝えた。あの人ら鼻毛とかチャックとか大変な事になってるぞ! だから頼む! 言ってくれよ〜!
 けれど、初尾の目にはそれは、なんかめっちゃそわそわしてるだけの、挙動不審な人に見えた。
 初尾はものすごーい迷惑そーに身を引きつつも、そんな咲を暫く眺め、「トイレに……行きたいなら……」と蚊の鳴くような声で呟いた。
 途端に、咲が全力で首を振る。むしろ、目を潤ませて歯を食いしばり、首を振る。いやんいやんする。赤い毛を振り乱していやんいやんする。
 あの人らの、あの人らの鼻毛とチャックを誰かーーーっ!
 いやだから……トイレに行きたいなら。とか思いながら初尾は、いちおー咲が指さしている方を向いてみることにした。
「…………」
 だからさっきも見たように、エルディンの鼻毛は出てるよ、確かに出てる。上に、歯に昆布がついてる。あ。増えてる……そうかあの人は何時の間に昆布を……やっぱり外人さんは凄いんだな……気付かない間におにぎりでも食べたんだろう……まああれはどうせそのうち取れるだろうし、あれで死ぬわけじゃないから……。
 いいか。
 初尾は無言で向き直り、わりとハイライトの消えた目で、咲を見た。
(で何すか、腕話して貰っていいすか)
 とそのぼーっとしている目に言われている気がして、咲はなんかもうむせび泣いた。


 その頃少し離れた場所に居る雫はびっくりするくらい嫌な匂いをかぎ取り、顔を顰めていた。
「む? 何でしょうこの……匂い」
 思わず匂いの発信源を辿りきょろきょろする。そしたら同じように嫌な匂いを嗅ぎ取り、きょろきょろとしていたクリスと目が、合った。
「あ」
「あ」
「えーっと……」
 雫は気まずげに口ごもる。自然由来の匂いなのか、人的な匂いなのかが分からず、むしろ人的な匂いである可能性が高そうな予感がして、「変な匂いがしますね」とは何となく言えないのである。
 と、彼女は気付いていないけれど、もちろんこれも屋敷に仕掛けられた爆弾がこっそり爆発した事による被害だ。しかし爆弾の存在を知らない彼女は、ここは先ほど生ゴミを踏んづけてしまったのですが平気ですか? なんて言って誤魔化そうかなとかなんか考え、
「さきほ……」
 意を決して雫がそれを口走ろうとした瞬間。
「あ。この体操着、この前部活でカメムシ退治したときのままだったー!」と、園芸部(かわいー)女子クリスがもー先に言ってしまった。
「えーこれまだ匂いが抜けてないのかなあ?」
 などと呟きながら、自らの体操着をくんくんしている。脇の下とか袖とかめっちゃくんくんしている。
 でも、くんくんしていーのは、クリスだからだ。彼女がやればくんくんもまた可愛い。むしろ、くんくんしてるのがかあいい。
「え、クサい? えへへ。ちょっとお洗濯サボったからカメムシの匂いが残ってるかも……ごめんねー」
 へて。
 で、これがまた可愛い。臭くても可愛い。というか、臭いのにかあいい。カメムシの匂いしてても可愛い。カメムシの退治なんかしちゃうなんて可愛いねと好感度がアップしてもいいくらい可愛い臭いのに。

「いやあそうでしたかクリスさんでしたか! ではクリスさんはまるであれですね! カメムシ・クリスさんですね! なんだか可愛い響きですね! アハハハハ」
 とか、傍でその一連の流れを見ていたらしいエルディンがとっても下らないことを言った。
 で、やっぱりイイ顔して笑って、咲とか初尾とかの方をめっちゃ勢い良く振り返った。
 輝く聖職者スマイル! サムズアップ!
 してる彼の若干シースルーになったカソック。

「えーーーー!!! どういうことーーーー!!」

 最早指摘し辛いとかの問題ではなく、咲はパニックになって叫んだ。
 後ろで初尾は、男に乳首があるのは何でだ……とか、またどうでもいいことを考えている。
「何を言ってる。全く可愛くないぞ。それに君だ。何故服をシースルにしているんだ! 全く君達は……これから戦いに赴くというのに不真面目にも程があるぞ!」
 ビシッ!
 と眼鏡を押し上げ、指摘するチャック全開鼻毛満開の知之さん(惨)
 しかもめっちゃ真面目に言ってるけど内容も若干おかしいよ、そんなシースルーを真面目に指摘してる人なんて見たことないよ、おかしいよ。みたいな所にちょっとハマっちゃったミントはにゃはにゃは笑い出した。
 で、笑うついでに、「そういえばさっきから、は、はにゃ、鼻毛が出てますよ! にゃははっ。あとちゃ、チャックチャックぜん、全開ですから! にゃははははははっ!」とかすごいーいざつーな指摘をした。
「何を言っているんだ君は……指の方向がおかしいだろ。僕はチャックなんて空けてないし鼻毛も出てい……な……ぃ」
 と、自らの鼻を触った瞬間、ホラー漫画の主人公みたいな、コントラストバッシバシの劇的かつ深刻な白黒顔になって固まる知之さん(怖)
 があんまり怖くてトラウマになりそうになる咲。
 せめて可愛いのを見て心を癒そうと、雫クリスふゆみのファスナー開き隊三人衆を見た。
 へヴィーなの見過ぎて、女子のファスナー開いてるくらいもう全然許したらいいんじゃないかって気がした。
 しかしそこでふゆみさんが後ろを向くと。
「パアオオオオオオン! (咲の今日の携帯着メロ@象)」
 そこには何ということでしょう。爆弾の被害によりめくれあがってしまったスカートの下から、一体何処に行けば購入できるのか彼氏はそれを何も言わないのか、あるいは彼氏にはやっぱり見せないのか、「お・で・ん」柄のおぱんつが現れたではありませんか。
 こうしてミントさんの女子力高いレースの付いた可愛いらしいパンツと並べてみると、何だか更に感慨深いものがあります。
「ぱ、ぱんつ」
「お二人とも……その、ぱ、パン……」
 いそいそっと近づいて行った雫が、ちょいちょい、と二人の足元を指さす。
「にゃはー!」
 と、一瞬驚きはしたものの、「うん今までにはない新しい感じで良いですね! 今日は私、これで行きましょうっ!」と全然直す気配のないミント。
 に対し、顔を真っ赤にして「ぎゃああお!」と叫んだふゆみは、そっこーでスカートの裾をなおし始めたという。
「こ、これはち、ち、違うんだよっ、これはふゆみのシュミじゃないんだよお、おかぁさんが近所のファッションセンターで買ってきたのを荷物で送ってきたやつなんだよ違うんだよこれは、これは見せちゃ駄目なやつなのにーっ!!」
 まるで見せていーパンツがあるみたいな言い方だった。
「うっうっ、ひどい目にあったのだ……次はもっとふつーの柄のおぱんつを送ってっておかぁさんに言お」
 まるで、次の時のために、と言い出しかねない勢いだった。



●そんなわけで、撃退士達はやっとこれはおかしい罠だ! 何かの罠だ! と気付き、またそこで丁度爆弾埋めてるディアボロを見つけたりして、叫んだのだった。

「これお前ら埋めたんかーーーーーっ!!」

 こくん。

 言葉が分かってんだか分かってないんだかなんだか分からないけどとにかく頷いたディアボロへ、撃退士達の怒りの制裁は加えられた。
 当然、ぼっこぼこにされた。
 こうして今日も無事、お仕事は終わったのだった。
「今日のことは忘れよう。お互いに……な。な?」(←自称エリート知之さん(泣)の言葉)
 皆の心に、少しの成長と多大なるトラウマを残して。



おしまい。







依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:12人

歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
アルカナの乙女・
クリス・クリス(ja2083)

中等部1年1組 女 ダアト
地道に生真面目・
山木 初尾(ja8337)

大学部5年139組 男 鬼道忍軍
ひょっとこ仮面参上☆ミ・
新崎 ふゆみ(ja8965)

大学部2年141組 女 阿修羅
『進級試験2016』主席・
エルディン(jb2504)

卒業 男 アストラルヴァンガード
べ、別にビビッてないし!・
咲・ギネヴィア・マックスウェル(jb2817)

大学部6年268組 女 阿修羅
猫は半身というより分身・
猫宮ミント(jb3060)

大学部5年67組 女 阿修羅
エリート(自称)・
英 知之(jb4153)

大学部7年268組 男 ダアト