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マスター:神子月弓
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:12人
サポート:11人
リプレイ完成日時:2012/02/08


みんなの思い出



オープニング

●それは、水曜日午後6時半の某番組から始まった
 茨城県某所の海岸。干潮時にのみ陸と繋がる小さな孤島に、「原住民」が住んでいるという噂があった。
 その孤島(?)/半島(?)は、木々が生い茂り、ジャングルのようになっているらしい。
 でも、ちゃっかり電線が本土から繋がっていたりするので、その「原住民」たちも、文明の利器の恩恵を甘受しているようではあった。

「目撃! ダイちゃんのわくてか探検隊!」
 TVには、自称冒険家、河口大(かこう・だい)が映っている。今週はこの孤島というか、ジャングルを見て回るつもりのようだ。
 教員控室で、日直のマリカ先生(jz0034)は、昆布茶をすすりながら、TVに見入っていた。
 探検バラエティ番組らしく、やらせくさい演出が続く。
「こ、これは毒グモだ! 傷口をナイフで切り裂き、急いで口で毒を吸いだせ!」
 河口探検家が早速のピンチを迎える。よくできた玩具の毒グモにしか見えないが、信じやすいマリカ先生は、はらはらと応急処置のシーンを見つめていた。
 腕時計の跡だけ白い、日焼けした青年が現れ、腰みのを振りながら番組スタッフのインタヴューに応じている。

  ここには、「恵方丸太の祈祷」というものがあるんです。
  私たちは通称「非リア充民族」といいます。
  新たなる恋と出会いを求めて、私たちは海岸線に並び、
  そして「丸太」と呼ばれる極太チョコレートを持ち、
  その年の恵方とされる方角に向いて、かぶりつくのです。
  一口で食べ切れれば、その年のうちに「リア充民」となり、
  晴れてこの島を出ていけると信じられています。

 何か、何か色々と混ざっていませんか。
 というか、そんなことでリア充になれるんですか?

 しかし、河口探検家は、突っ込むことなく、「ほう!」と感心する。
「今年もその儀式は‥‥」
「勿論、しますとも! 今年こそ、念願のリア充になるために!」

 リア充って何かしら。マリカ先生は純粋すぎて、単語の意味を知らなかった。
 何か、新しい人生の一歩を踏み出す行為のようなものでしょうか、と考えを巡らせる。

「非リア充の皆さん。恵方丸太の儀式まで、あと僅かです。あなたも一緒に、いかがですか?」
 超・余計なお世話である。
 だが、真剣に河口探検家はカメラ目線で訴えてくる。
「私、‥‥行ってみようかしら」
 しかし、ここに一人、やらせ番組と気づいていない人がいた。

●先生、大丈夫?
「今日の美術の授業は、恵方丸太の儀式のお手伝いとします」
 いつものドレス姿ではなく、動きやすい服装で、安全第一と書かれたヘルメットをかぶり、マリカ先生は熱弁を振るった。
「昨日の探検番組を見ていた方ならわかるでしょう。リア充という民族になり、新たな人生のスタートとなる、大事な大事な儀式なのだそうです。是非、皆さんも参加しましょう!」
 流石にまだ寒いため、肌の露出は顔だけである。先生は軍手と長靴もしっかり用意していた。

 干潮を待ち、歩いて孤島に向かう。
(ジャングルで何かでたら危ないし、仕方がないなあ)
(単位落とすわけにいかないし、なんだかバカらしいけれど、しょうがないかぁ)
 生徒たちは半ばあきれ顔で、マリカ先生の後を追った。

「これが‥‥ジャングル?」
 普通の林に見えますね。

「これが‥‥原住民の集落、でしょうか」
 普通のアパートに見えますね。

「そしてあの‥‥この建物は?」
 チョコレート工場って看板が出ていますね。

 一瞬くらっとした先生だったが、そこは教師の意地で気を取り直し、工場の戸を叩いた。
「すみません。今年の儀式チョコ作りのお手伝いに伺ったのですが‥‥」
 すると、工場長は快く皆を迎え入れてくれた。
「今、お口で溶けて手で溶けないコーティングをしているところなんだ。試食していってよ」
 丸太と呼ばれるチョコがどーんと登場する。
 ‥‥確かに、丸太だった。これ、口に入るの?、人が乗れるんじゃない?、という太さ。
 試食用に出されたチョコの切れ端は、かなりビターで、大人の味わいだった。

●儀式に参加しよう!
 マリカ先生は、工場長からより詳しく、儀式のあらましを聞いていた。
「この丸太チョコを大勢で担いで、わっしょいわっしょいと集落をねり歩くんですね。その後、お口に入るサイズに切り分けて、非リア充の皆さんにお配りする、と。非リア充が何なのかはよくわかりませんが、年男、年女のようなものなのでしょうね」
 多少解釈が間違っているが、マリカ先生はそう覚えた。
「そして最後に、等間隔で海岸線に並んで、今年の恵方、北北西(壬)の方角を向いて、チョコを一気に食す訳ですね」

 儀式のあらましは分かった。
 マリカ先生は、引率してきた生徒に向き直ると、目をきらきらさせた。
 何故か画板とクロッキー帳、そしてカメラを準備している。
「さあ、皆さん。腹住民の皆さんと一緒に、儀式に参加いたしましょう! 私はその様子をカメラにおさめ、写生して、今後の美術の課題といたします。今回はレポートもありますよ!」

 えー。マジで儀式やるの? 
 っていうか、これ、本当に授業なの?
 なんだか訳がわからないよ!

 困惑する生徒たちに、「頑張ってくださいっ」と微笑むマリカ先生。
 既に、木炭がその手に握られている。儀式の様子を描きとめる気まんまんだ。
(これも単位のためか‥‥)
 生徒たちは、覚悟を決めた。


リプレイ本文

●本気と書いてマジと読む
 チョコレート工場から運び出された「丸太」は、ビターとミルクの2本だった。早々に、全員石鹸でよく手を洗い、アルコール消毒をして、その上から衛生的な使い捨て手袋を着用するように、との指令が、村長(=工場長)から回ってくる。
「‥‥ええと。‥‥帰っていいかな?」
 授業ゆえ駄目だと解ってはいるが、時迅 輝結(ja5143)はそう呟かずにおれなかった。心底からマリカ教員(jz0034)目を覚ませ、と念じてみる。
「単位のため単位のため単位のため‥‥」
 月詠 神削(ja5265)がぶつぶつと唱えながら自分を抑えている。
「あ、あのう、‥‥リア充ってなんですか?」
 おずおずと、皇 伽夜(ja5282)が村民に尋ねた。
「リアル(生活)が充実している人のことさ! 例えば、恋人や友達に恵まれていたり、仕事が上手くいっていたり、趣味に没頭出来たり‥‥まあ、この祭りは、主に恋愛運が上昇すると言われているけどね」
 なるほど、と伽夜、若菜 白兎(ja2109)、及びマリカ先生が納得する。輝結は突っ込みたい衝動に駆られたが、言われてみるとあながち間違ってもいないので、黙っていた。
「じゃあ、リア充になっちゃったら、来年はもうチョコ食べられなくなっちゃうんですね」
 寂しそうに白兎が呟いた。
「リア充になれる‥‥ふふふ、そんな風習があったとはな‥‥」
 普段は「リア充」「クリスマス」「カップル」という単語を見聞きするだけで「爆ぜろぉおぉ!」とツーハンデッドソードを振り回しかねないほどに激昂するラグナ・グラウシード(ja3538)がマジになっている。
「まぁ企画の趣旨についてはツッコミ所満載な気がするが、祭りってことなら皆で楽しまねぇとな!」
 軽く着崩した作業着に、赤いマフラーを巻いた千葉 真一(ja0070)が、そう言って、軽くラグナに怯えた白兎の隣を歩く。
「マリカ先生は天然さんって事だね。よし、ボク覚えた!」
 猫野・宮子(ja0024)が軽く苦笑した。先生は「はい?」と、解っていないような声を返す。だるそうに影野 恭弥(ja0018)が続き、高虎 寧(ja0416)と黒田 圭(ja0935)が、めいめいの位置取りについて話しながら、カメラチェックをしている。
 林の茂みで体中に軽い擦り傷を作りながら、超・露出の高い服を纏った四季 春緋(ja1954)が、マリカ先生の周りをくるくる歩き回った。
「先生、今のままだと、チョコ食べるところインパクトないよぉ?」
「え、そうですか?」
 きょとんとするマリカ先生に、畳みかける春緋。
「リア充って手に入れるの大変なんだよね? だったら、手に入れたい人は、もっとがんばってチョコ食べないとだよ? だからねぇ〜チョコ食べる人は【褌一枚で漢泣きしながら食べる】ってのはどうかなぁ? すっごいインパクトのある絵が描けると思うよぉ?」
「それでは、風邪をひいてしまいます。参加されるのは、男性だけではありませんし」
 考え込むマリカ先生。春緋はにやりと心の中で笑った。
「先生がGOって言えば、きっとみんな喜んでやるよ!」
「でも‥‥折角の伝統行事ですから、今までどおりがいいと思うのですが‥‥」

 お願い先生、騙されないで!! 耐えて! そこは負けちゃだめだーーー!!
 かぶりつき班の面々は、祈る気持ちで見守った。

「じゃあ、腰みのをお借りして、服の上からつけましょう! これでしたら女子も安心です!」
 ぽん、と手を叩き、にこにこするマリカ先生。合川カタリ(ja5724)がため息をついた。
「嫌な予感はしていましたが‥‥こんな事になるなら、普通に美術の授業受けたかったなぁ‥‥。まぁ気を取り直して楽しみましょうか。ひょっとしたら新しい発見もあるかもしれませんし‥‥」

●まずはワッショイ
「さぁて気合入れて行ってみようか!」
 真一がスカーフをなびかせながら、原住民たちと共に、丸太チョコを担ぐ。後方でさりげなくカタリが支えた。村長の朗々とした声でチョコ曳き歌が歌われる。
「ええ〜いやあ〜あ〜ヨイショ!」
「ワッショーイ!」
「ワッショーイ!!」
 合いの手のようにワッショイを連発する原住民たち。
「丸太チョコのお通りだ。そこ危ないぜー」
 真一は集落を練り歩きながら、(しかし本当に担いでても溶けないとは、やるもんだなぁ)と、コーティング技術の高さに感心していた。

 その様子を、恵方丸太の進路上の高台で待機していた圭がカメラにおさめようとする。
「お‥‥来たな。さぁ、気合の入った所みせてくれよ」
 望遠レンズで、出来るだけ多くの人々が入るよう、何度もシャッターを切る。
「む、高いところからの撮影いいなー‥‥って、今日のボクは魔法少女じゃないから我慢我慢っ」
 宮子は皆に近づいて、ひとりずつを低めのアングルから撮影したり、表情がよくわかるように顔のアップや、一人の全身のアップやらを撮影していく。
「皆いい笑顔だよ♪ はい、こっち向いて笑って〜♪ ん、このアングルは良さげかな?」
 宮子がある程度撮影を終わらせて、高台に移り写生を始めると、今度は寧が、圭と打ち合わせたとおりに、反対側の低い位置に陣取り、あおるようにシャッターを切り始める。

「ワッショーイ!!」
 無事に2本の丸太が海岸にたどり着いた。撮影班は素早く、思い思いの位置に場所を移した。
「よっしゃあ、とうちゃーく! お疲れ様でした!」
 ワッショイで打ち解けたのか、真一が村民たちと意気投合していた。意外と楽しめたようだ。

●次は切り分け
 さて、いよいよかぶりつき儀式の準備である。まずは、ビターとミルクのどちらかを選び、丸太の前に並んでもらう。人数が偏らないように皆、必死だ。人数が少ない丸太は、当然大きく切り分けられるため、一口で食べさせられるチョコの量がとんでもないことになってしまう。
「いくら好きでもチョコ食べ過ぎるなよ? 聞いたとこじゃ甘さ控えめらしいしな」
 すがすがしい表情で、真一が白兎に声をかける。白兎はうん、と小さく頷いた。
「はーい、では次は口のサイズを計ります。おーきくあーんしてくださいね」
 原住民の女性が呼びかけ、手際よくサイズを計っていく。
 これなら安心か、と思いきや、切り分け班に向かって、にっこり。
「限界サイズ+3ミリの直径でお願いします♪ あ、長さは丸太を人数で割って等分になるように」

 それ、結構きっついね。
 切り分け班は儀式の恐ろしさを垣間見た気がした。

「では‥‥」
 輝結が大太刀を構え、見事な剣閃で丸太を等分に切り分ける。
「フッ、こう切り分ければ文句ないだろう?」
 不遜に微笑む輝結。カメラにおさめ損ねた寧が、「もう一度お願い〜!」と頼み込む。
 再び見事な剣閃。
 圭は芸術的に切られるチョコに焦点を当て、わざと背景をぼかして撮った。
「あ、このミルクチョコうめぇ‥‥」
 やる気なさそうに、細かくダガーで丸太を切り分けていた恭弥だが、ミルク丸太の欠片を口にして少し表情を緩めた。が、すぐに面倒くさそうな顔に戻り、作業を続ける。
 がっつーん、がっつーんと包丁で、親の仇のように切り分けているのは春緋だ。
「あーこれって‥‥女子が切ったのを男子が食べるのは普通っぽいけど、男子が切ったのを男子が食べるときって‥‥気にならないのかなぁ?」
「え、‥‥何が、ですか?」
「ううん、なんでもない! きっと気にならないんだよね、アハハ! お祭りだもんね!」
 待ちきれなくて、切り分けの方へもお手伝いにきた白兎に、春緋は慌ててごまかした。
「力仕事ではお力になれませんが‥‥これくらいならお手伝いできそうですわね」
 たすきで着物の袖を押さえつつ、サバイバルナイフで力任せにチョコを整えているのは伽夜だ。切れ端がはじけ飛び、概ね白兎と恭弥の口に放り込まれる。
「ご、ごめんなさい‥‥私、不器用で‥‥」
 謝る伽夜。カタリが話しかけた。
「大丈夫です。私も切り分けを手伝おうとしましたが、不器用で上手く切れませんでした。私はチョコレートを配る役割に回ります」
「あ、では私も‥‥」
 カタリがビター、伽夜がミルクを配ることとなった。
「ん、いい絵が描けそうだよ。皆楽しそうにお願いだよ♪」
 さらさらさら。先生と一緒に、切り分け風景を写生している高台の宮子。
 輝結の剣さばきの表現に苦労しているうちに、丸太は薪チョコに切り分けられていた。

●恵方を見つめてかぶりつけ!
 ラグナの表情は真顔だった。
 わかってはいる。こんなもの、迷信に過ぎないことなんて。
 だが、何故だろう‥‥「単位のためだ」という至極実利的な思いより、むしろ「やらねばならない、やるべきだ」という焦燥感に追い立てられている。

 で。

「腰みの‥‥か‥‥」
 配られた腰みのを服の上に装着させられながら、海岸線に、等間隔で並ぶ。
 春緋が変なことを言わなければ、こんなオプションはなかったはずなのだが‥‥。
 でも、褌よりはマシ、と女子は思った。

 圭が膝まで海に浸かりつつ、海側から撮影を試みる。儀式が始まる前に、広角レンズで水平線をパシャリ。何枚か張り合わせてパノラマにできるよう、少しずつ位置をずらしてまたパシャリ。
(この島‥‥意外に綺麗な所なんじゃね? あとで島の一番の高台から風景撮影しておくか。PR用の写真を何枚か撮っておきたいし、ま、来年のイベントポスターにでも使えれば良いかもな)
 その間に、輝結は工場の実状や『原住民』の様子などを取材し、撮影し、記録に残そうとしていた。

「あの赤いブイが今年の恵方でございます。さあ、皆様、一口でチョコを平らげるのです!」
 村長の合図で、チョコを口に運びかけるかぶりつき班+原住民たち。
「そこで皆ストーップ! 描き終えるまで動かないでねっ」
 響き渡る宮子の声。

 え。
 これ、何の罰ゲーム?

 ぷるぷるしながら、かぶりつき班+原住民は、宮子を待った。
 白兎は瞳をうるうるさせ、とっても悲しそうな顔で待っている。
(儀式が始まらねえんじゃ、撮影できねーだろぉ!!)
 ぷるぷるしている人々の中に、海に足を浸して佇む圭も混じっていた‥‥。

「おっけー!」
 長い長い体感時間が流れた後、待ちに待った宮子の合図が来た。
「みゅ〜」
 白兎がおいしそうにもぐもぐしながら鳴いた。
 示された恵方に向かって、一気にラグナはチョコにかぶりつく!
 パシャリ、パシャリとシャッター音が響く。他の皆も食べ始めたようだ。
 ラグナの選んだビターチョコは、とても美味かった。遠い水平線だけを見つめながら、ただがつがつとチョコを喰う‥‥。
 
 リア充なんか嫌いだ。
 リア充なんか滅せよ。
 爆ぜてしまえ!
 普段からそう言っていながら、なぜここまで自分はこんなに真剣に‥‥?!

「‥‥っ!」
 ぼろぼろっ、と、突然、ラグナの目から大粒の涙が吹き出した。
 その理由をラグナは自覚していた。
 リア充を憎悪していながら、その癖に内心では焦がれるほどに憧れている自分! それが今のお前だ、と海面に映り込む自分が囁く。それは醜い矛盾ではないのか? 
「う‥‥っく、ううっ‥‥!」
 泣きながらチョコを食べ続けるラグナ。それをあおりアングルで撮影する寧。
(眠くなったから寝ます。これは労働の正当な対価です)
 真一があたたかい烏龍茶を用意しているところに移動し、寝袋を広げて、眠りにつく。
(まあ、男女の仲は成る様になれの流れが一番だと思うし、ひょんな処から縁が巡り合うのも有り得ると思うのです。思い込みも念じれば何れ要望の成就に行き着くだろうし、別に無駄な祭りではないとは思うけど‥‥)
 次第に微睡んでいく寧。
 撮影が終わっても、ラグナはまだ、泣いていた。

「大丈夫へふ。こうひへへも意外と大食漢な者へふはら‥‥」
 伽夜がもぐもぐしながら、まるまる1本を食べつくす。
 涙が邪魔したのか、ラグナのチョコが進まない。
 一気に完食する者、チョコが折れてしまい失格になる者、様々な結果が出始めていた。
「あー!」
 カタリが思わず息をのんだ。
 ラグナのチョコの先端にひびが入った。ゆっくりと傾き、そして、折れる。
 失格である。
 やはりラグナに春は来ないのか。
 リア充ライフを求める人々の背中に物凄い哀愁を感じるカタリ。
「こんなに寂しい背中は初めて見ました‥‥」
 その視界が涙でぼやける。と、突然大声が響いた。
「やってられるかぁ!」
 神削がチョコを放り出し、光纏して紫色のオーロラを纏い、激痛に全身を苛まれながら、皆を正座させた。
「‥‥俺、中学時代に幼馴染と恋仲だったんだが、そいつ俺と別れた後に親父とくっついて、十六歳になるなり結婚しやがったんだよ。しかもデキ婚で、子供は双子だ!」
 原住民や仲間が心配そうに見る中で演説を続ける。
「‥‥島民共よ、お前らに解るか? 元カノの幼馴染が義理の母になった上、自分の妹と弟を生んだ時の俺の気持ちが? ‥‥でもな。そんな俺でも、気になる女が居たら声を掛けるし、その人に振り向いてもらえるように自分を磨くんだ!」
 痛みに呻きつつ言葉を絞り出す。
「島民共。お前らの中に俺より酷い恋愛体験をしたことがある奴が居るなら、俺は土下座する。けど、そうじゃないなら、お前ら今すぐ俺に土下座しろ。そして、この島出て社会復帰しろ!」

 ‥‥‥‥

 原住民たちの不幸自慢が始まった。そのどれもが比較できないほど、ひどいものであった。
 神削は思わず涙ぐみ、光纏を解き、スライディング土下座した。

●レポート提出!
「何で俺リア充になれないんだ何で俺リア充になれないんだ何で俺」
 神削は肩を落とした。伽夜が続く。
「リア充って面白いようで面白くないものなんですね」
「今後は勉強だけでなく恋愛もバランス良く経験したいと思いました」
 これはカタリ。次は輝結。
「世の中に多種多様な風習・価値観が存在する事を再認識させられた」
「リア充に なったらこれが 食べ収め 終わりのチョコに 苦味覚えて」
 白兎のレポートは俳句調だ。続いて圭。
「偉大なる先人はこう言った『諦めたらそこで試合終了ですよ』と」
 次が寧、その次が真一だ。
「色々動き廻って良い汗かいたしあとで良く寝れそうです」
「独自の祭りをこれだけ手間暇掛けて実行するパワーに感服した」

「チョコを食した者たちのその後の結果はどうだったのか、具体的な数字が知りたい。この行事の真価が問われる」
「リア充ってなんなんだろ? あたしなんか、毎日充実してるけど‥‥大人ってそれじゃ満足できないんだ? 欲張りばっかだ。でも、今回のコレはただ単純にお祭りして騒ぎたいだけの様に感じたね。だったら普通に騒げば良いのに‥‥大人って‥‥」
「(見ている分には)とっても楽しい儀式で来年もまた(観客として)参加してみたいかな?」
「最近のやらせ番組は手の込んだことをするようだ。丸太チョコの製造工程が唯一気になった」
 ラグナと春緋、宮子、恭弥は字数オーバーで赤ペケをつけられた。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: 無念の褌大名・猫野・宮子(ja0024)
 地道な見守り・黒田 圭(ja0935)
 KILL ALL RIAJU・ラグナ・グラウシード(ja3538)
 釣りキチ・月詠 神削(ja5265)
重体: −
面白かった!:13人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
無念の褌大名・
猫野・宮子(ja0024)

大学部2年5組 女 鬼道忍軍
天拳絶闘ゴウライガ・
千葉 真一(ja0070)

大学部4年3組 男 阿修羅
先駆けるモノ・
高虎 寧(ja0416)

大学部4年72組 女 鬼道忍軍
地道な見守り・
黒田 圭(ja0935)

大学部7年36組 男 インフィルトレイター
撃退士・
四季 春緋(ja1954)

高等部3年19組 女 鬼道忍軍
祈りの煌めき・
若菜 白兎(ja2109)

中等部1年8組 女 アストラルヴァンガード
KILL ALL RIAJU・
ラグナ・グラウシード(ja3538)

大学部5年54組 男 ディバインナイト
戦う小説家・
時迅 輝結(ja5143)

大学部8年60組 女 阿修羅
釣りキチ・
月詠 神削(ja5265)

大学部4年55組 男 ルインズブレイド
遊びたい盛り・
皇 伽夜(ja5282)

高等部3年6組 女 ディバインナイト
スーパーモデラー・
合川カタリ(ja5724)

大学部5年112組 女 インフィルトレイター