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マスター:文ノ字律丸
シナリオ形態:イベント
難易度:普通
形態:
参加人数:50人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2013/09/20


みんなの思い出



オープニング

●事件の発端
 銭湯の煙突が見える裏通り――。

 秋の匂いが風に混じり、少女達の髪をなで上げる。
 カシャリ。
 シャッター音が鳴った。
 盗撮だ。
 物陰に潜みながら、デジカメのメモリーを確認していた男達がその犯人。
 風呂上がり激写忍軍という『風呂上がりの少女達を盗撮する』変態集団だった。
「今日も良い成果でしたね。この長髪の女の子なんて、湿った髪の毛が風に舞い上がって」
「ばかだなぁ、ショートカットの娘の髪の毛なんて最高だろ」
「ボブカットあたりがちょうどいいんでない?」  
 彼らは全盛期こそ、それなりの数を抱えた大所帯だったが、とある日を境に一人また一人と変態から足を洗い、今では4人だけになってしまった。これでは集団とは呼べない。それに危機感を覚えていた軍団長は一つ妙案を思いつく。
「お前ら、いつもいつもこんな裏路地で盗撮を繰り返す日々に飽き飽きはしていないか?」
「なにを言い出すんですか軍団長。それが我々の存在意義ではないですか。それとも、軍団長も盗撮をやめたいなんて言い出すんじゃないですよね」
「こんなところで撮っていて楽しいか、と聞いているんだ」
「こんなところって、じゃあどこで撮るんですか?」
 軍団長は重くうなずいた後、少し間を取り口を動かす。
「メルトスプリングスワールドだ」
「あ、あそこはセキュリティが厳しくて、我々ではとても侵入できませんよ」
「そうだ、我々の力では無理だ」 
「まさか……」
「同盟会議を開く」

●同盟会議
 久遠ヶ原変態同盟、それは久遠ヶ原学園が創設される以前から存在していたとまことしやかに噂される変態的サークルの同盟だった。
 同盟会議とは、読んで字の通り、同盟の契りを結んだもの達が一堂に会する催し。
 互いに存在を知られてはいけない者達が、その存在の危機に陥った時にのみ開催される秘密の集会なのだ。

 ピンク色の鳩が空を飛び、学園の変態達は会議が開かれることを知った――。

 とあるビルの一室。
「では、点呼を取りたいと思う」
 会議は主催である団体の長が執り行うことと、古より定められている。
「裏裏裏天文部」
「覆面スカートめくりレンジャー」
「マゾサドストーカーズ」
「ペロリスト集団」
「ロリコンスペシャリスツ」
 それぞれの長は挙手をして呼びかけに答える。
「……これだけか。ずいぶんと減ったものだな」
 ほんの数年前までだったら、これの倍以上はいたはず……。
 それだけ規制が厳しくなったのだ。
 軍団長はめまいを覚えて、眉間のあたりを軽く揉んだ。
「では、今から、メルトスプリングスワールド侵入作戦を説明する。なお、この作戦は侵入するまでだ。それ以降は各々が自由に活動してくれて構わない」

●作戦決行当日
 メルトスプリングワールドの経営に携わっているイルミナ・ヴァイスハオプ(jz0235)の耳に、変態同盟侵入の一報が入ったのは午前10時。
 開園まであと1時間に迫っていた。
「なんと!? まさか、あのセキュリティを突破するとは。さすが変態、恐るべきと言ったところじゃな」
 そのバイタリティには笑うしかない。
「今さら閉園にしろじゃと? できない相談じゃ。どうするかって? 撃退士様に請い縋るしかないじゃろう」
 イルミナはふむとなにやら計算をしてから、にやりと笑った。
「報酬なら、ここのオーナー様がたんまりと弾んでくれるじゃろう。あの金持ちは現場なぞ知らんからな。それにうまくいけば、宣伝にもなるし、イリーにも臨時ボーナスが……」
 これは笑いが止まらない。
「では、撃退士をたくさん呼んでくれ。お客様という体で潜り込んでもらおう。その変態共を一網打尽にするのじゃ!」
 イルミナは、部下にそう指示を飛ばした。 


リプレイ本文

●メルトスプリングスワールド
「秋でも変態って多いんだ…」
「俺は変態に遭遇したくないけどな」
「ひーちゃん…まず水族館行きたい…」
「はいよ」

 白蝶柄の黒ビキニの上にパーカーを羽織った常塚 咲月(ja0156)は今、ペンギンの前でスケッチブックを広げていて、熱心にスケッチをしている。
 濃紺の地に龍がプリントされたサーフパンツを履いた鴻池 柊(ja1082)は苦笑を浮かべながら、咲月の分も依頼を果たそうと暗がりに目をやる。

 現れたのは……
 小太りの半裸の男に乗った女王様。

「おー」
 咲月は感嘆。

「……あいつら、本気で喜んでるな」
 ハッとした柊は、咲月の目を隠す。
「おー…む…ひーちゃん…見えないよ?」
「見えなくしてるんだ。無視して行くぞ」
 眉を寄せて言い聞かす。

「待ちなさい!」
 女王様が鞭を振るってきた。
 柊はその鞭を受け止めた。

「悪いけどな。俺はマゾじゃないんだよ」
 ヴァルキリーナイフ。
 空中に出現した刃物は、女王様に飛んでいく。
 攻撃を避けた上で、もう一度放つ。
 すると、女王様は地面に倒れたのだった。


「ぶひぶひ」
「ウザい…。――で…人数は…変態の…」 
 拳銃の銃口をぐりぐりと押しつける咲月。
 M男は、喜びに悶えていた。

 ――ピンポーン。
『マゾサドストーカーズ、残り2組』

 温泉に向かった二人が出会ったのは、ペロリスト集団。
 うげぇ……。
 二人はドン引きだった。
「うぅ…黒タイツだし、気持ち悪い…離れろ…」
「えぇ加減にせえよ…。─姉貴に訓示されとるんよな…【女尊男卑】【男の変態は使い物にならなくなるまで壊せ】…ってな」

 インパクト。
 強烈な一撃に、五月を囲んでいたペロリスト集団は一瞬で駆逐される。
「おー流石、ひーちゃん…」

「ひーちゃん…お腹減った」
「レストラン行くか」
 柊は呆れ笑いのようなものを浮かべてしまった。

●悪の秘密結社(自称)出動
 空色セパレート水着を着ている金髪美少女、イリス・レイバルド(jb0442)は更衣室から出るやいなや、
「ふぅはははー」
 と元気いっぱいに大声を出す。
 
 遅れて出てきた青色ワンピース、ジャル・ジャラール(jb7278)が、呆れたため息を吐くほどに。

「ジャルちゃん、急がないと全エリア制覇できないぞ」
「そうだのう」

 二人が走り出した後ろ。
 もう一つ、二人組がいた。

「悪には悪の美学があります。美学のない悪など、ただの犯罪者! 同列に扱われるのは許せません!」
 沙 月子(ja1773)は物陰から首だけを出して、走り出す二人を監視していた。

「さすがですねぇ。総司令」
 その頭上から覗かせるのは猫のライム。
 九十九(ja1149)の腹話術だった。

 メインエリアから、順繰りに回った二人組と二人組。

「流れる温泉なのだ!」
「これは面妖な魚だの」
「総司令、ゴーカートですねぇ」
「うう、目が回る〜」

 レストランエリアに着いた時――。
 奴らは現れた。

「ペロペロペロ」
 どこから沸いたかペロリスト集団!

 囮であるイリスと、ジャルは十数人の黒タイツに囲まれてしまった。
 だが、二人は、ふふふと不敵に笑う。

 どこからか、ぽろんぽろんという月琴の音が響き。
 琵琶の音へと転じる。

「わらわこそは魔界の大公女ジャル・ジャラールであるぞ! 頭が高い! 下郎どもめ! 痛い目を見てから縛につくがいい!」
 ジャルが名乗ると、

「天に星あり!青空―そら―に虹あり! そして地上にボクがある! 煌く七色、ボク参上!」
 イリスも名乗り上げる。

「悪の秘密結社(自称)参上!  総司令自らお相手しましょう!」 
 最期に、月子が啖呵を切った。

「ニャー」
 というのはライムの鳴き声だ。

 ペロリストも心優しい奴もいたものである。
「幼児は危ないから、離れて見ているペロ」

「わらわは幼児ではなーい!」
 ジャルは、ベルゼビュートの杖を振り回して、殴り倒す。
「……まったく、失礼な輩どもだ。女の魅力をなんと心得ているのであろうな」
 ほっぺたを膨らませて怒る。
 
「悪に値しない犯罪者が。教えてやんよっ、悪の美学ってヤツをなー! 」
 七色の粒子を纏ったイリスは、槌を全力で振り下ろす。
「愛の無い奴に悪を名乗る資格無し! ヘンタイ行為の免罪符にされるッ。愛や悪の気持ちがテメーらわかってたまるかー! 」
 次々になぎ倒していく。
「それとっ発育格差の差別的視線に晒されたボクとかの気持ちがわかってたまるかー! どんな慰めを貰っても、泣いてる子はいつだっているんだよッ!」
 非常な現実だった。

 カッターナイフ、バトルケンダマ、竹刀、金属バット、鉄パイプ、スタンガン、釘バット、デジタルカメラ、オイルライター――……。
「さあ、好きな(拷問)道具を選んで下さい♪」
 月子は狂気に満ちた微笑みで、戦意を喪失している変態に迫る。

「こちらがご所望ですか」
 金色に輝いた瞳で、逃げた男を捉えて。
 雷上動で射抜いた。

「さあ、あなたはどれがいいんですか?」
 
 ぎゃああああああ――。
 レストランエリアの隅っこからは、悲鳴がこだまし続けたという。


●スカートめくり野郎退治班出動
「よし、これで罠は仕掛け終わったかのう?」
 汗を拭った緋打石(jb5225)は、更衣室へと向かう。
「それから、拿捕したら一人くらいこっちにもらえないかな? ちょっとやりたいことがあるんじゃ」
 と、全員に連絡した。

 がちゃ。
「ツンテにゴスロリ、スパッツにノーパン、これこそ萌えの伝道師としての正装!」

 フフフと笑いながら、入口の付近で彼らの強襲を待った。 
 
 緋打石が囮としてうろつき始めた頃合いで、神雷(jb6374)も更衣室から出た。
「年間パスポートとか、おまけで配布しないかなぁ」
 温泉にウキウキしながら神雷はワンピースを着て、緋打石と一緒に入口付近でうろうろしていた。

「緋打石様、変態に出会ったら、膝でガッてやれば良いんですよね」
「そう、汚物は消毒じゃ☆」

 ……その時だった。

 筋肉アニキ達が緋打石のスカートを捲ったのだ。

 だが、そこにあるのはパンツではなく、スパッツ。
 緋打石はドヤ顔で笑む。
「ねえ、今どんな気持ち? 下着かと思ったらスパッツでどんな気持ち?」

「NOOOOOOOOOOOO!」
 逆上した男の一人が、囮である緋打石と、神雷に襲いかかった。
 身構える二人。


 だが、草陰から二人を庇うように誰かが飛び出し、男を吹き飛ばした。
 日下部 司(jb5638)。
 それはまさにヒーロー、英雄的行動!

「君達は間違っている!」
 言うことは少しおかしかった。

「見えそうだけどけど見えないチラリズムも合間って女性のスカートは男の目線を離さないんだ。 だからこそ男にとってスカートの中は不可視なる神聖な場所! 見たいと願うからであって自分の力で強制的に見るなんて言語道断だ! 恥を知れ!」

 神速。
 目にも留まらぬ攻撃で、男をオーバーキルしてから、首根っこを掴まえて、殴打!
 男は糸の切れた人形のように、すとんと落ちた。
「YESパンチラ! NOタッチ!」

 
 囮に釣られて出てきた男達を、挟み撃ちにしたのは、御神島 夜羽(jb5977)とグリムロック・ハーヴェイ(jb5532)の二人だった。
  
「やる気か……」
 ハーヴェイは呟く。
「うわ、筋肉ヤローは苦手だ」
 コキコキ、夜羽は首を鳴らした

 夜羽は、手をだらりと下げて重心を落とした。
 ハーヴェイはランタンシールドを取り出して、強行突破に備えた。

「だからよォ……加減できねェかもなァ!」
 
 夜羽は一気に距離を詰め、二人の男を次々に昏倒させる 
 しかし、一人が夜羽の攻撃の間を抜けて、突破を謀った。

 その突進を受けて立ったハーヴェイ。
 シールドにアウルを込める。

 ドンッ――。
 重みのある重低音が響く。

「…そうか。これが変態か。変態という者はこんなに力強いものなのか…都会は大変だな」

 ハーヴェイは、ガチムチ筋肉だるまの勢いを完全に殺した後、殴り飛ばした。
 それでも、まだ逃げようとしている男の顔を、夜羽が踏みつけた。
「往生際がわりぃなァ!」

「誰一人逃すなとの指示だ。大人しく縛につけ変態共」
 ハーヴェイの一言で、男達は沈黙する。


「ふむ、世の中には変わった趣味の方もおるようですな」
 虎綱・ガーフィールド(ja3547)は、高いところに壁走りで上り気配を消して隠れていた。
 
 出入り口付近に固まっている囮班と、それに対応する班を見て、
「ま、あちらは出る幕もないか」

 そして、その一団から逃げる影を見つけた。
「ま、女子を狙い布切れに発情する程度の変態だ。ああして尻尾を巻いて逃げるがお似合いさ」

 あちらの方向は、フラッペの索敵区域だ。
「逃がしはせんがね」
 トランシーバーの電源を入れ、フラッペに連絡を入れた。


『あーもしもし、フラッペ殿。そちらの方に一団から逃げた者が数人行ったようです』
『了解、オーケイ。ボクも出入り口の方に向かうのだ』

 フラッペ・ブルーハワイ(ja0022)が、残党と遭遇したのは、その打ち合わせからすぐだった。

「キミ達が今回のターゲットだね?」

 頭に血が上っている男達は、なにがなんでも突破しようとタックルを構えたのだが、フラッペはチッチッチと指を振るう。

「力任せ? …スマートじゃないのだ。布を捲る風は誰にも縛られぬ一瞬の奇跡――ボクが『風』の真髄を、見せてやるのだ!」

 男は攻撃が来るのかと身構えたが、フラッペは羽織っていたTシャツを脱ぎ、ビキニになる。
 武器を持っていないことのアピールだ。

 ふと、よぎったのは恋仲のみずほのことだった。
 殴られるかな?
 一瞬だけ考える。
 だが、スピード勝負が優先だ。

「つまり…スカートめくり勝負! キミたちもまた速度を尊ぶのなら、最速を目指すボクはスカートめくりでも最速を見せ付けるのだ! では、行くのだ!」

 光纏したフラッペは風を足に纏い、滑るように移動する。
 その速度はまさに最速!
 スカートが見る間に捲れ、パンツの花が咲き乱れる!

「どうだ見たか! …って、あれ?なんでみんな、怖い顔してるのだー…?」

 
 フラッペの背後に控えていた虎網は、入れ食い状態だった。
「はい。ほかーく」
 まるで半信半疑の顔をして、時には少し嬉しそうな顔をして、男共がうわの空で歩いてくる。

「Aaaaaaaaaaaaaaaaaa!」
 と、反抗する敵には容赦はしない。

 影縛りの術で縛り付けて、
「ちょっと黙ってろよ、変態」
 股間を蹴り上げる。
「あとは、向こう側に逃げた一派だけか」


『こちら、虎網。恵夢殿でござるか? そちらに逃げた一派を捕獲お願いします』
『やっと憂さ晴らしが出来るんだー了解』


 男が逃げた先にいたのは恵夢・S・インファネス(ja8446)。連絡を受けて待ち伏せをしていたのだ。くるりと回って、下着が見せる。

 男とは学習しないものである。
 スケスケのシースルーインナーが見えた途端、
 突撃をしたのだ。

「スカートに向かって飛び込んでくる顔面の正直線上、そこだー!」 
 フットスタンプ。
 サンダルを脱いだ裸足が屈強な男を倒す。
 
「いっぺん『見せて』あげたからさー……これで全然『卑怯』じゃないよねェー?」
 仁王立ちの恵夢。
 スカートが風にたなびく。
 シースルーのショーツは開けっぴろげ。
「だーららららららららららららららー!」
 怒濤のキックラッシュだった。
 男はもはや原形をとどめてない。
「よーし、さっぱりしたし、後は泳ごーっと」


 入口には覆面が山になっていた。
 ハーヴェイが光の翼を使い、一カ所に集めている。
 恵夢が捕まえた男を投げ込み、変態の山が完成する。

「テメェらの青春、ここで終わりにしてやるぜェ♪」
 夜羽の言葉で身震いをしている男達。

 一人の男が、錯乱したのか神雷のスカートを手に取った。
 捲る。
「きゃあ!」
 まあ、残念なことに……スク水。

「Oh,my god!」

「ガッ」
 神雷は半泣きで、頭を掴んで膝を入れた。
「こ、こ、この変態!」

「まあまあ、落ち着くのじゃ、神雷殿」
「ででも、緋打石様ぁ……」
「よしよし、これで全員じゃな、な?」

 緋打石は冷たい笑顔で、まだ意識のある男を振り返る。
「まだ痛い目見たいのかしら?」
 恵夢はゴキゴキと指を鳴らした。

「全員デス」


「うう……遊び尽くすのです!」
 さっきまで泣いていた神雷だが、もうすでに復活しアトラクションの方に走っていた。
「そうだねェー! みんなも遊ぼうー」
 恵夢は振り返って、班員に呼びかける。
 そうだな、と班員達は恵夢に追随したのだった。
 

●ペロリスト集団退治班
「えへへ♪ 温泉浸かれるのも役得って奴だよね?」
 ナハト・L・シュテルン(jb7129)はすっかり温泉の虜になっていた。

「うむ」
 うなづいたのは、中津 謳華(ja4212)。
 中津荒神流、女身整体術により女の体になっている。
 今の姿は、謳華ではなく闘華という。
 身につけているのは、褌と、さらしのみだ。
「だが、ぺろりすと……とはテロリストの亜種なのであろう?」

「どうせ、相手と接してるのに舐めるだけで満足するヘタレよ。まあ、面白そうだから相手してあげるけど」 
 百夜(jb5409)は、ちゃんとした水着を着けているはずなのに、謳華よりもみてはイケナイ感がするのはなんでだろう。
 
 そんな大人の色気に、ナハトは、はぁーとため息を吐くのだ。
 自分のおっぱいに触れてみる。
 AA。
 なんと侘びしいことか……。 
「。○(皆…胸大きいなぁ…僕運動してるのに…)」

 それから、三人はメインエリアをぐるりと回ってみることになる。

 ワイヤーを設置しながら歩くナハト。
 周囲を警戒しながら歩く闘華。
 火照った肌を冷ましながら歩く百夜。 

 その時――。

「ペロペロペロペロッ」
 どこから沸いたか、黒い全身タイツを身に纏った、ペロリスト集団。 

「行くぞ、ナハト」
「謳k…じゃなかった、闘華さんよろしくぅ♪」
 知っていてもつい間違えてしまうものだ。

 半身になって構える闘華。
 黒タイツを、ゼロ距離の打撃で倒し。
 ナハトは、その闘華の陰に隠れるようにして難を凌いだ。

 百夜の周りには、黒タイツ。
 舐められても、百夜はまったく動じない。

「良い男が、そんな恰好までしてこれだけ女に近づいて、やることが舐めるだけ? 真面目でいる事も出来ないくせに、変態も中途半端とかどんだけ度胸ないの? こんなくだらないことよりイイこと教えてあげる」
 百夜は、ナハト達を向く。
「私はこの子達にお仕置きをするから、ここからは別行動ね」


 ナハトと、闘華は、ワイヤーを見に行く。
 黒タイツが二人絡まっていた。
「よし、こいつでいいだろう」

 闘華は、黒タイツの一人の胸ぐらを掴み、起こすと、
「お前が知っていることを話してもらおう」
 だが、黒タイツは気丈に首を振る。

 話さない? ふむ……
「なら一つ、拷問といこうか」
 ――関節を一本づつ丁寧に折る
 ――生爪を剥がす
 ――剥いだ部分を湯に浸す
 闘華はプログラムを並び立てた。
「なに、人間そう簡単には死なん。気絶したらそら、水はそこら中にあるしな」

 
『あ、掛かった♪』
『もしもし、こちらカーディス。どなたでしょうか?』
『あ、ナハトですよぉ。そっちに、ペロリスト集団がいるそうなので気をつけてね♪』

「ヘンタイさんが1匹現れたら100匹はいるといいますからね! 即座に殲滅しなければねずみ算式に増えてしまうのです!!」 
 黒猫のぬいぐるみの上に水着という妖しさを画に描いたような出で立ちのカーディス=キャットフィールド(ja7927)は連絡を受けて、エントランスエリアで一番怪しい匂いがする場所へと向かった。
 それは、女子更衣室周辺。

「この辺りでしょうか?」

 カーディスは遁甲の術により気配を消すと、壁走りを使いながら、周辺を警戒する。
 猫のように。
 ……むしろ蜘蛛みたい?

 しゃかしゃか……
 しゃかしゃか……
「。O(あれ?…私の方が怪しい…?) 」

 黒い影が見えた。
 カーディスは気配を消して近づく。

 射程圏内に入ると、敵をなるべく範囲内に収めて影手裏剣・列を放つ! 
 無数に生まれた手裏剣が降り注ぐ――殲滅!

「さて、妖怪さん方、お縄についてもらいますよ」
「ぺろぺ……ろ」
 ……おや、情報を吐かせる前に力尽きてしまいましたか。

「仕方がないですね、エントランスをくまなく探してみましょう」
 カーディスが向かったのはお土産物さん。
「いやー美味しいお菓子や猫の形のお土産物欲しいですね」
 もちろん、警戒もしながらですよ。

『もしもし、六道さん?』
『ナハトさん、どうかしたんですか?』
『水族館の方に行くんだったら、注意してねぇ♪』


 六道 鈴音(ja4192)は、更衣室を出る。
「開園までには変態を捕縛したいな。あと1時間弱ってとこか」
 よし、と半ば駆け足で、水族館エリアを目指した。

 変態どもを成敗して「悪の秘密結社(自称)」の名声を轟かせる!
 それだけを胸に抱いて。

 巨大水槽やら、浄水システム、入り組みながらも整然とした通路。身を隠す物陰は豊富
 セキュリティを破るほどの変態がこの立地条件を見逃すはずがないだろう。 
 鈴音はそう考えて、水族館のエリアを巡回していた。

 感知スキルで、神経を研ぎ澄ませ。
 すると、黒タイツの集団を見つけたのだ。

「悪の秘密結社(自称)参上! 変態どもは速やかに殲滅よ!」
 そして、ふいに首筋を舐められる。
「ひゃ」
 振り返れば、そこにもペロリストがいた。
「あんた…ケシズミにされたいわけ!?」
 いつも以上の目力で睨みつける。
 手錠を掛け、蹴っ飛ばした。


『もしもし、新崎さん?』
『ナハトさんだよねっ☆ どうしたの?』
『アトラクションの方、注意した方が良いよぉ♪』
『はーいっ☆ミ あ、それより、うっうっ、ミワクのDカップなんだよっ(*´ω`)★』
『(くっ……)羨ましいよぉ♪』

「ぬう、ヘンタイ許すまじなんだよっ…ブッコロ★しちゃうよっ!」
 新崎 ふゆみ(ja8965)は、ピンクのビキニを揺らしながらお化け屋敷に向かった。

 しかし、こういうところだから、変態なら誰でも出てきそう。
 ふゆみはちょっと考えて、
「まいっか、変態なら変態なら誰でもいいやもう殺っちゃおう!」 
 
 少し開けたスペースで止まっていたふゆみは、何かに触れた気がして飛び退く。
 振り返ると、全身黒タイツが三人。

「ふゆみに触ったなぁ…えーい、シケイだよっ☆ミ」
 光纏の光の中からアンブルを取りだし、それで三人いっぺんに絡め取る。
 動きを封じた後、蹴る蹴る、なおも蹴る。
「わはー!ブッコロ☆タイムだよっ!」
 キックキック、念入りにキック。
 ……はい、オーバーキルです。

「やり過ぎちゃった……まいっか☆」 


「さて、湯にでも入り直すか。ナハトも来るか?」
 闘華は男の姿、謳華へと戻った。
「そうだねぇ♪」
 

●風呂上がり激写忍軍退治班
 メインエリアの湯気の中――。

「しかし、良いお湯ね、ここ」
 細身なのに豊満な胸の、その谷間を強調する蒼のホルターネックビキニを着た蓮城 真緋呂(jb6120)が呟いた。

 それにうなずいたのは、スカート付きワンピース水着の華愛(jb6708)。
「はい! 温泉温泉、なのです!」
 さきほどワイヤーの罠も張り巡らせながら、メインエリアの全てのアトラクションを制覇した華愛だったが、疲れは見えなかった。

 水着をすっぽりと隠すように、白濁湯の中に隠していたのは、雨宮 祈羅(ja7600)。
「歩ちゃんも見てるんだよね、風呂場。うう……作戦だから、さすがに見るなとは言えないけど……。うん……恥ずかしいっていうかやきもちするっていうか…。むむー…複雑」
 歩ちゃんに変態うつったら大変っ!
 だけど、うん、今は一生懸命頑張ろうっ。

 うふふ……
 ふふ……
「おっと涎が」
 三人の美少女をエロ親父のような視線で見ていた桜花(jb0392)は、じゅるりと涎をすすった。


「しかし、……ボクは今、どうしてここにいるんだろう」
 少し離れたところで、囮になっている四人の警護をしている、雨宮 歩(ja3810)は水着は黒のサーフパンツと赤のパーカーという姿。
 遠い目で、自分を客観視。
「囮にかかるのを待つためとはいえ、女の子を見続けるのも変な感じだねぇ」
 ゾクッ
 祈羅の嫌な視線を感じる。
 考えすぎだろうと、歩は苦笑した。
「……とりあえず頑張るとしようか、姉さん」


 しばらくして。
「って、あれ、姉さん?」
 さっきまで、温泉の中にいたはずなのにいつの間にか、祈羅が目の前に立っている。
「ちょっと湯中りしちゃいそうだったから」

 ふと、歩は気付く。
 パシャリ。
 シャッター音がした。
 祈羅に目標が食いついたのだ。
 歩はすぐに遁甲の術で気配を消し、壁走りで追跡。

 血の色に変化したアウル、翼の形に変化していく。
 歩は『道化舞台開幕』を使い、敵の目を引きつけた。
「間抜けな悪党が探偵から逃げられる道理はないってねぇ」
  
 忍軍の青年は戦う構えを取った。
「へぇ、やる気かい?」

 その時だった。
 その青年の足下から、無数の手が伸びて青年を絡み取り組み伏せたのだ。

「歩ちゃん! 大丈夫だった?」
「姉さん」
 祈羅が肩で息をしながら走ってきた。
 
 歩は倒れている青年を見る。
 もはや抗うこともやめて、カメラからも手を離していた。
 それを取ってデータを消去。

「姉さん」
「なに?」
「水着、似合ってるね」
 祈羅は顔を赤らめて、はにかんだのだった。


 その温泉サイドを歩いていたのは、黒羽 拓海(jb7256)。
「温泉で変態退治って…命の危険は無くても、別の危険が大きいだろ」

 その横には、パレオ付きのビキニを着た天宮 葉月(jb7258)。
「個人の趣味や嗜好をどうこう言うつもりは無いけれど、盗撮とか無理矢理とかの犯罪行為はダメだと思うの、うん」

 二人揃って大きなため息。

「仕方無い。速やかに変態共を抹殺…じゃなくて捕獲して安全を確保しよう」
「とりあえず、キツくお灸を据えてあげましょう」

 そして、拓海は呟く。
 …大事な幼馴染に妙な事をされるのも癪だしな。

「でも今は、楽しもう!」
「って、いきなり切り替え早いな」
「ほらほら、折角なんだから楽しまないと」

 拓海は、葉月に半ば強引に、温泉を巡らされる。
 スライダーでは無理やり押し込められて、死ぬかと思った。

 その時、ふいに気配を感じる。
 スライダーを組んでいる足場に、誰かがいる。
 アヴォーリオを構えた拓海は、躊躇も無く放った。
「うあああ」
 激写忍軍の一人が絡め取られて吊されている。

 怯んでいる隙に、小太刀二刀・氷炎 を顕現させて、
「命までは取らん、つもりだ」 
 と首元に当てる。
「……参りました」
 拓海は、小太刀をカメラに突き立てて破壊した。
 
 葉月がやってくる。
「君、ダメでしょ、盗撮なんて! だめだよ?」
 釘バットが、地面を穿つ。
「……ご、ご、ごめんなさい」
「そうそうわかればいいの。そうだ、手錠手錠。あ、雨宮さん!」
 葉月がキョロキョロしていると、祈羅と歩が連れ立って歩いているのが見えた。
「あ、天宮さん。手錠だねっ」
 祈羅はどこに持っていたのだろう手錠を取り出し、えいっと忍軍の青年にはめる。


「もしもし、桜花さん。こちら、玲花です。出没しそうな場所に目星を付けておきましたので、あとは予定通りに」
 
 楊 玲花(ja0249)はトランシーバーを切ると、ふうと息を吐く。
 考えていたのは、今回の依頼のことだ。
「……乙女の柔肌を激写しようとは許し難きヘンタイどもです。二度とそんな気を起こさぬように厳格に躾ける必要がありますね」
 ――徹底的に!

 完璧主義の彼女は燃えていた。
 撲滅、その二文字を胸に。
 そして、遁甲の術により姿を消した。

 
 更衣室。
 そこは虹色パラダイスだった。
 これは、
「眼福眼福」
 と出てきた桜花の感想だ。
 今、桜花は女子更衣室からいち早く出てきて、みんなを待っている。
 首にタオルシャツに短パンといかにも風呂上りな格好。
 妙に強調された胸の谷間が無防備だ。

 そして、女子更衣室から5人が水着から着替えて出てくる。
 この瞬間、エントランスエリアでの囮作戦が開始された。


 桜花は索敵スキルを発動させる。
 目標の盗撮野郎だ。
「まったく、下手な隠れんぼだなぁ。――あ、もしもし、こちら桜花。敵発見」
 
 気付かれないように距離を詰めて。
 建物の壁際に追い詰めた。 

 光纏、ショットガンを手にする。
 そして、――血の涙を流し始めた。
「気持ちはわかるけどさぁ! ホントわかるけどさぁ!! 犯罪はしちゃだめなのよ!!」 
 口にショットガンのバレルを突っ込む。

「んーんーッ!」
 すると、桜花は捕らえた忍軍に耳打ちする。
「ところでさぁ、あなた達の取った写真、何枚か私にくれない?」
 の瞬間、扇が飛んできて、カメラを破壊した。
「……あ、バレてた?」


 手元に戻った八卦翔扇を手にした玲花は、もう一人の忍軍の前に立ちはだかっていた。
「バレバレです……」
 ため息を一つ。

 その後、目の前の青年を睨む。
「あなたのカメラは、こちらで没収させていただきたいと思います」
「だ、ダメだ! これには俺達の撮りためた写真が」
「だからこそ、証拠能力があるのです」
「くそっ」
 
 青年は壁を走って逃げる。
 だが、壁走りにおいては、玲花の方が上手だった。 
 翔扇を飛ばして、青年の足を払い、地面に落とす。

「残念ながら、あなたの負けです」
 その影を縛って動きを封じた後、カメラを没収する。
「あなた方の団体は、全部で何人ですか?」
「……六人」
 青年はうなだれてそう呟いた。

 お土産物屋で華愛は、目を丸くしていた。
「はわわわ、猫の妖精さまなのです!」
 なんと二足歩行の(しかも背の高い)猫がお店の店先でお茶をすすっている!
 どうしようどうしようと、あわあわしているうちに、猫の妖精はどこかに行ってしまったのでした。
「友達になりたかったのです……」
 うなだれてもしかたない。
 思い直した華愛は、物陰に隠れてこちらを盗撮する人影を発見した。
「ヘンタイさまをとっちめるです!」
 華愛は、土産物を見るのもほどほどに、その場を退散しました。
 
 目指すは罠を張ってあるメインエリア。
 その境目付近で立ち止まっていると、その人影は自らメイン会場の方に足を踏み入れて。
「うわあああ!」
 悲鳴を上げて、吊されていた。

 ブラブラと揺れる蓑虫のような忍軍に近づいた華愛は、
「盗撮とか、め! なのです。…シメますよ?」
 にこりと微笑んだ。


 ほどいた三つ編みの濡れ髪を掻き上げて、色気を振りまいた真緋呂は、エントランスエリアを歩いていた。

 それにしても……。
「変態さんって色々いるのね…一つ勉強になったけど、えっちなのはいけないと思うなぁ」 

 だいたい湯上がりのどこが良いんだろう。
「私だったら、大盛りチャーシュー麺の方がいいけどな」
 
 シャッター音が聞こえる。
「あっちかな」
 
 磁場形成。
 滑るように移動する真緋呂を見てだろう、慌てて逃げ出した人影がある。
 真緋呂は、さらにスピードを上げる。
 回り込んだ。
 ――ふっと消える。

「消えた?」
 その時、あらぬ方向から炎の槍が飛び、カメラを焼き払った。
「残念、蜃気楼でした」
 真緋呂が現れた。

「さてと、あんた達の人数……ってこれはもう誰かが聞いていることだと思うから、私は別方向から責めたいと思います」
「えっ」
「お金をください」
「……えっ?」
「私は、このレストランでお腹いっぱい食べたいのです。そのためのお金をください。お礼にいいものを見せてあげるから」

 真緋呂はEカップもある胸を寄せ上げるようにして腕を持ってくると、意味ありげな目をその男に向ける。
「……わ、わかった」
「やったぁ」

「じゃあ、見せてあげるね、私のフードファイト!」
「え?」
 
 レストランエリアにて、
「メニューの全部ください♪ こっちのはおかわりで!」 
 という真緋呂の声が響いた時、湯上がり激写忍軍の討伐完了の知らせが班内に行き渡った。


 拓海はその報せを受け取った時、エントランスの捜索を打ち切った葉月に呟いた。
「…次は普通に遊びに来ような」
 葉月は静かにうなずく。 


●裏裏裏天文部討伐班
 討伐班はまずメインエリアから動き出した。
 淡い黄色のビキニの上に水色のパーカーを着た少女、春名 璃世(ja8279)は待ちぼうけているのか、少し退屈そうだ。

「璃世さーん、すみません! お待たせしました」 
 御崎 緋音(ja2643)が駆け寄ってくる。
 
 璃世は緑色の瞳をくりくりと動かしながら、じとっと緋音を見上げた。
 そして、くすりと笑う。

「緋音ちゃんってば、遅い」
「すみません、水着選びに……」
「似合ってるよ、ピンクのホルターネックのビキニ」

 璃世は、パーカーをつまみ上げてはにかんだ。
「お揃いだね」
 緋音は顔を真っ赤にしてうなずく。

「じゃあ、まずは遊ぼっか」
 璃世は緋音の手を引っ張って、スライダーへと直行する。

「これやるんですか?」
「うん、緋音ちゃんは、私の足の間に入って」
 緋音は璃世の体に背中を預ける格好になった。
「どう、私の胸の心地は?」
「やわらか……じゃなくて! そ、その」
 
 緋音が言い訳をしているそばから、璃世はスライダーの流れの中に進んでしまう。
 必然、前にいる緋音も一緒に。
 
 ザブンっ

 お湯の中に落ちた緋音と璃世は、二人の顔を見合って笑い合った。


『こちら、歌音です。メインエリアにいる方は、今から指示する場所へ向かってください』


 緋音と璃世は、そこへと急いだ。

「緋音ちゃん。私が誘い出すから、見張ってて」

 そして、和やかな談笑を続けながら、機を見て璃世はパーカーのファスナーに手を掛けた。
 ジジジ……
 ゆっくり下ろしていく。
 パーカーの下にはキャミソール。
 それをゆっくり、焦らすように脱いでいく。
 胸の谷間が見え……

「そこ!」

 雷帝霊符。
 緋音は、雷の刃を操り、高台の上にあった望遠レンズを狙い撃つ。
 悲鳴と共に、人影が落ちた。

 二人はその落下地点に移動する。

「たしか、この辺だったと思うんですけど」

 キラリ
 銃口が覗いた。
 
「璃世さん!」
 
 弾丸は、璃世のビキニの紐を引き裂き。
(「璃世さんは私が守るって約束したもんっ!」)
 緋音は慌てて手を当てて隠した。

 弾丸は今度、緋音の肩紐を狙った。
 
 ぽろり
 緋音のおっぱいがこぼれそうになる。

 怒った璃世は、タウントを発動。
「緋音ちゃんは私が守るんだから…! 変態さん、こっちを見なさいっ!!」
「だ、ダメです!」

 緋音は自分の胸も隠すように、璃世に抱きつく。

「きゃっ、緋音ちゃん、大胆!」
「わ、私だって恥ずかしいんです」

 ふふと笑った璃世は、聖火を使う。
 ――スパイク!
 抱き合った姿勢で放たれた銀色の炎は、乙女の怒りと恥じらいのビーチボール全力投球として、天文部の男を弾き飛ばした。

「終わったよ、緋音ちゃん」
 璃世の指さす方向には、男が伸びていた。


 メインエリアを抜けて水族館エリアに向かったのは二人。
 セパレートの水着にロングパレオを着た天ヶ瀬 紗雪(ja7147)と、褐色の肌に白ホルターネックビキニが眩しいソフィア・ヴァレッティ(ja1133)。
  
 ソフィアは、紗雪のパーカーを指して、
「そのパーカーって、旦那さんのだっけ?」
「そうですよー♪」

 なんとも幸せそうな顔。
 こんな人に変態の囮なんてやらせられない。
 ソフィアはそう思った。
「それじゃあ、囮役はあたし一人で」

「それはだめ。こんな危ないことを女の子一人だけにやらせるわけにはいけないですよーっ」
「でも」
「見えそうで見えないところにチラリズムー♪」
 紗雪はうふふと笑う。

 ソフィアはうなづく。
「何はともあれまずは見つけださないとだよね?」

 望遠レンズだろうか、螺旋階段の上で何かが光った。

『こちら、ソフィア変態発見、これから捕獲に移る』

 ソフィアは手を肩に乗せるような仕草で胸を寄せ、谷間を強調する
 と、同時。

「そんな高い所にいたら、落ちたりして危ないよ?」
 ――La Pallottola di Sole。
 ソフィアの顕現させたマライカMK-7が火を噴いた。
 太陽の弾丸が飛び、望遠鏡を破壊した。
 
 落下した男は、すぐに立ち上がって、逃げようとしていたが。
 それを追いかけたのは花びらの螺旋だった。
 
 ――La Spirale di Petali。
 それを喰らってもなお、まだ逃げようとしている。

 床から伸びたクレマチスの蔦が、男に絡みつき、動きを封じた。
「優しく出来なくてごめんなさいですよー」
 くすりと笑いながら、紗雪はアルギュロスの鞭を振るう。

 ソフィアは近づき、男の額に手を乗せる。
「残りの仲間はどこにいるの? ――そう、ありがとう」

「ヘンタイの集団を解散させますね?」
 パシン
 鞭が振るわれる。
「は……はい」
 
 男を捕縛した後、二人は一緒に水族館を軽く見て回った。
「おゆはんは、シーフードですかね?」
 紗雪はそんなことを呟いたのだった。  

 
 アトラクションエリアに来ていた三人組は、華桜りりか(jb6883)と、黄昏ひりょ(jb3452)と、ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)だった。

「あの……、えっと……」
「緊張しないでくださいね、りりかさん。討伐はどうやら順調のようですし」
 人見知り気味のりりかのフォローに回っているひりょは、彼女の緊張をどうにか和らげようとしていた。

「あの……、水着どうでしょう?」
「え? すごくかわいいですよ。ハハ」
「そ、そうですか……?」

 二人の会話を聞いていたジェラルドが途端に笑い出した。
「初々しいね☆」

「ジェラルドさん! 俺はただ」
「ただ?」
「男として、無様な姿は見せられないよなと」
「はいはい☆」 
 ひりょの言葉は、ジェラルドには届いていない様子だった。
 
「まあ、その前に」
 建設設計図で俯瞰できそうなポイントで目星を付けていたところに、人影がある。
 ジェラルドは縮地を使い、そこにいた天文部の男を一人を捕まえた。
「さ、覚悟してね☆」
 地面に転がした男を拷m……尋問するのだった。
「くくく…ボクのしもべにしてあげよう」

「お仕置きなの、です」
 炸裂符を翳したりりかも、意外にノリノリでそれに加わる。

 そして、確実な情報を得た三人は、誰も見回っていないレストランエリアへと向かった。


 ところ変わって、ここは水族館エリアとレストランエリアの境目。
 ふらふらと徘徊している少女がいる。

 歌音 テンペスト(jb5186)。
 着ているのは紐水着にエプロン……。
 まあ、これくらいなら個性だろう。

 だが……。
 涎を垂らす、目が虚ろ、あーうー唸る。
 それが今の歌音の姿だった。

 というのも、彼女は今、ヒリュウと視界を共有しているのだ。

 ……それならなぜ時折ウェヒヒと笑うのか。
 彼女が変態だから、ということは決して無いのだ!
 
「やっほー」
 木陰にいた、望遠鏡でノゾキをする裏裏裏天文部の青年に話しかける。
 これにはさすがの青年も驚いた。
「お、おいお前、変態が怖くないのか?」
「全然」

 ――よいしょ
 歌音は、自らエプロンを捲る。
 瞬間、青年は泡を吹いて、倒れた。 
「き……きの…………こ……」
「うん。キノコっておいしいわよね」

 ちなみに、エプロンの下に何があったのか……、
 まあ、それは措いておいて……。

「あなたたちは望遠鏡の使い方を間違ってるわ」
 望遠鏡を変態のおしりにズブリ……。
「アッー!」

 お仕置きというか
 去勢というか
 ともかく一仕事終えた歌音は、木陰から出てくる。

『手の空いている裏裏裏天文部討伐班は、レストランエリアに集合してください』
 ひりょからの一報が届いたのはそのすぐ後だった。 

 
 レストランエリア。
 そこではひりょ達と、天文部の総力戦が始まろうとしていた。
 すでに三人は、倍々の人数以上に囲まれている。

「さすがに、これは分が悪いですか?」
「むしろ、いっぺんに出てきてもらってラッキーでしょ☆」
「……あの、戦います、です」

 そして、ジェラルドが唐突に声を荒げる。
「今だっ!」

 その時――、
 天文部を囲むように、各地に散っていた班員がここに集まり、一斉攻撃を仕掛けた。

「行くよ☆」
 SweetDreams発動。
 赤黒い闘気を身に纏ったジェラルドは先陣を切って突撃した。
  
 それに追随するように、ひりょは飛び出し、マンティスサイスを振りかざす。
 次々に、望遠鏡を切り刻んだ。

 振り返って見ると、りりかがスクールアミュレットを構えて、放っていた。
 ひりょは離れすぎないように注意する。


 外と中からの挟み撃ち。
 あれだけいた天文部も一網打尽に崩れ去っていた。
 
「これで全員なんだね☆」
「は……はい。あのだから、蝋燭は、熱いのはもう」
「あはは、なにを言っているんだい♪ 今度は水責めが良いかな?」 


 討伐班のほとんどはアトラクションのお化け屋敷を訪れていた。
「……怖い」
「り、璃世さん」
「大丈夫だよ、緋音ちゃん。黄昏くんに守ってもらうから、緋音ちゃんも、りりかちゃんもまとめて」
「お、俺ですか?」


 そして、その頃、歌音テンペストは……周囲の女の子に欲情していた。
「あたしは変態じゃない…ド変態なの。うひゃひゃひゃ」
「きゃああああ」

 ――ガコン
 緋打石の仕掛けた盥落としの地雷が、本物の変態を倒したのだった。



●マゾサドストーカーズ退治班
 残り二組……。
 
 
 初心な恋人の距離を保ちながら、袋井 雅人(jb1469)と、ピンク色のビキニを着ている月乃宮 恋音(jb1221)。

「……う」
「どうかしましたか、恋音?」
「……ううん……」

 いやいや、青春だねぇ。
 ウェル・ラストテイル(jb7094)は、二人の後を追いかけながら索敵をしていた。

 着ている水着は青色ビキニとパレオ。
 面倒だったので旧式スク水を着ようと思ったら、色々ひどいことになったので、仕方なく。

「もっとあたしを見なさい、この愚民共!」
 女王様の声がした。
 振るわれる鞭。
 ウェルは危うくかわして距離を詰め、ハリセンで頭をひっぱたたく。
「きゃあっ」

『こちら、ウェル。目標を発見』 

 雅人と恋音は、ウェルからの連絡を受けて、すぐさまその現場に到着した。
「デートの邪魔してごめんなさい」
「いえ、依頼ですから」
「……はいですぅ……」

 ウェルは、怯えながら逃げる女王様を見て、
「そっちは任せるわ」
 と言い残して追いかける。

「ダメだよ、女王様? このウェルちゃんから逃げたら」 
 ウェルは攻撃を与え続ける。
 女王様はようやく膝を屈した。

「いやぁ、前々から試してみたいことがあったんだよね。Sって言うのはその実、責められてこそ本当の輝きみたいなものを見せるんじゃないか、ってさ」
 ウェルは痛打の一撃を与える。
「いたああああい!」

 パシン
「ひぎいッ」
「さぁ、もっと良い声で啼いてよ。ウェルちゃんが聞いてあげるからさ」
 
 
 雅人と恋音の前に残されたのは、M男だけだった。
 のっそりと逃げ出したそのM男に、恋音は雷の一撃を加えた。
 さすがのマゾ、耐え凌ぎ逃げようとする。
 雅人の一撃でようやく捕まえることが出来た。

 その場に倒れ込んだドM男に近づいた恋音は、首に巻いていたタオルを剥がし、首輪を露わにする。その際に後ろ手でメールを打つ。
『これから、足止め、及び捕獲に移る……』

「いいですか、恋音」
「……はい、ご主人様……」
「その白い肌が淡く染まるのは、すごく綺麗です」
「……あん、ご主人様、っんん、ご主人様ぁん……」
 …………。
 それから、二人はM男でも絶句するほどの超絶プレイを見せた。

 ――SMプレイとは信頼の証。
 それを見せつけられて、M男は自信喪失したらしく、ぴくりとも動かなくなっていた。

 それから、その男の口を割り(拷問的に)情報を引き出す。
「もう一組はアトラクションエリアに……」


 ヘンタイってなにー? 良くわかんないけどぉ、皆ぁ困ってるんだよねぇ。
 でも、この温泉スライダーってすごいおもしろーい!

 依頼の本分を忘れていそうな少女が一人。
 白野 小梅(jb4012)。
 流れる温泉などで移動しながら捜索、波の温泉で波にゆられながら捜索。
 けっして遊んでいるわけでは無い、たまたま楽しいだけ!

「次はアトラクションに行ってみようかな?」

 ゴーカートに乗って捜索中、長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)に出会った。

「みずほちゃんも一緒にゴーカートしよう?」
「あ、いえ、わたくしはこちらに目標がいらっしゃると聞いて」
「……目標?」
「依頼ですわ」

 噂をすれば何とやら。
 女王様と、中年M男のワンセットが現れた。

「虐めちゃダメー」
 女王様の執拗な鞭に驚いた小梅が、天使の翼を可視化して滑空。
 その変態達にタックルをお見舞いして、弾き飛ばした。
「いじめはダメなんだよー。え、いじめじゃないの……?」
 
「これが変態……。気持ち悪いですわ」
 みずほの『ですわ』口調にピンと来たらしいM男が、駆け足で寄ってきた。

「き、気持ち悪いですわ!」
 まずは一発殴る。
「こういうことはやめてくださいませ!」
 そして、殴る。
「話しを聞いてください!」
 殴る。
 だが、M男は嬉しそうに耐え続けている。

「んーよくわからないけど、みずほちゃんやっちゃえ!」
 小梅は呪縛陣で動きを封じ。
「た、倒れてくださいませ! い、いやぁっ!」
 みずほがたたみかける。

 カンカンカン――。
 KO、Winner『みずほ』
 
 
「君は女王様なんだね」
 物陰から現れたのは帯刀 弦(ja6271)。
 
「楽しいし、気持ちの良い事だ、わかるよ。でもそれが容認されるのは個人間だけでの事であってこういう公衆の場ではしてはいけない事なんだ。そもそも快楽というものは個人の範囲において楽しむものだ。誰しもそういった性癖を持っているからこそ他人には見せられたくないというものなんだよ、わかるかな。別に僕は君達を糾弾したい訳じゃあない、寧ろ逆さ、ただやり方が悪い、それが言いたいだけなんだよ。楽しむなら、人目につかない所で、それだけの話なのさ。 」
 にこりと微笑む。
 幽かな笑み。

「さあ、それじゃあ……僕と、人目につかない所に行こうか」
「なにをするの、この豚!」
「いいねえ。でも、イケナイ子だ。さあ――おしおきだ。君が僕にね」

 極上の悲鳴と快楽を。
 ――二人は暗闇に消えた。

 
「ごめんね、いくら依頼のためとはいえ」
「……いえ、面白かった、ですぅ……」
 さっきのプレイとは別人。
 まったりとした雰囲気の雅人と、恋音の姿があった。 

●ロリコン研究者退治班
「妾の引率者のふりをお願いできないか?」
 エントランスにいる緋打石の元を訪れたのは、八塚 小萩(ja0676)だった。
 園児服を着ているのは、撃退士ではないとカモフラージュするためらしい。
「さぁ変態狩りじゃ!」

 緋打石を連れた小萩はアトラクションエリアにいた。
『ももぐみ こはぎ』と書かれたゼッケン付のワンピース水着に着替えている。
「ほー、なんだか面白そうじゃな」
 そう言って、子供っぽく目を輝かせているのである。
 まさに園児の風格だった。

 アトラクションで遊んでいた時、
 小萩は、不意に気配を感じて振り返る。 
 白衣がチラリと見えたのだ。

 釣れた!

 小萩は緋打石を見上げる。
「ここまで、ありがとうなのじゃ」
「なら、後のことは頼むぞ」
 そうして緋打石の背中を見送った小萩は、
 もう一度、振り返る。 
 白衣はまだいた。

「ハギにゃんおしっこー!」

 そして、トイレを探す……ふりをする。
「ええーん、トイレが見つからないよー」

 小萩は物陰へ移動した。
「ここでいーや! 」
 水着を脱いでしゃがんだ……

「ロリっ娘の黄金水だとおおおお」
 さきほどの白衣が発狂して駆け寄ってくる。

 今だ!
 
 小萩は白衣に抱きついた。
「今、妾が『助けてー!』と叫んだら、どうなるか分かるであろう? 」

 白衣はなにも言えずにいる。
「さあ、汝等の人数を言え!」

 白衣は鼻血を出して倒れた。
「……これだからロリコンは」 
 小萩は情報が引き出せなかったことに落胆したのだった。

 メインエリアをうろついていたのは、焔・楓(ja7214)。
「とりあえずは…遊ぶのだ♪ そうしたらきっと寄ってくるよね♪ えっと、ロリ…なんとかかんとかっていうのー」
 まさに幼女の無邪気さで、温泉スライダーを連続で滑り続けている。

 ところで、楓が着ている水着は、「動きやすいように」布が少なめの紐。
 幼い少女にはあるまじき、過激な水着ファッションだった。
 これでは、例えロリコンではなくとも、目を引いてしまうというもの。

 と案の定、ロリコン研究者が、楓の前に現れた。
「お嬢ちゃん、僕と一緒に遊ばない?」
「おじさんだぁれ?」
「僕は幼女を愛する者だよ」
「あ、ロリなんとかって人? いいよ。遊んであげるのだ♪」

 楓は、んーと考えて、思いついたように口を開く。
「いいよ、鬼ごっこするのだ♪ 捕まえれたらお話聞くよー♪」
 
 それから、楓は白衣の男と鬼ごっこをして遊んだ。
 つかず離れずの距離を保ちながら走る。
「あ、上が無い! おっぱい丸見えー! ま、いっか♪」

 ぜーはーと息をする男。 
 楓は、くるりと振り返る。
 
「あー、疲れて来たのだ」
 男が追いついてきたところで、楓はジャンピング踵落とし。
 転んだ男の背中に馬乗りになった。
 手を縛って捕まえた。
「なんちゃって♪ まだまだあたしは元気なんだぞ♪ 一人捕獲完了♪」


 水族館で捜索に当たっていたのは、伽条院 リオ(jb6854)。
 どこからどう見ても女の子なのに、実は男だという、いわゆる男の娘。
 ワンピ型女児用水着の上には、大きめのシャツ。

「日本男児は金髪ツインテ少女に萌えるって聞いた事あるデス!」

 金髪ツインテの、水着幼女。
 ……まあ実際男なんですけどね。
 
「白衣判りやすいなぁ…」

 なるべく気付かれないように子供達の中に混ざって、水槽を見ていたリオだが、風変わりなコスプレにしかみえない白衣男は、嫌でも目に付いてしまう。

「よし、速攻で決めるデス!」
 リオは決意を声にすると、自ら近づいていく。

 ある程度近づくと、今度は泣きの演技。
「ぐすん」
 
 従業員を探すような足取りで、白衣の元に辿り着く。
「す、すみません。あ、あの…あたし、お母さんとはぐれちゃって…うっ、うぇぐ…!」
「幼女が、幼女が困ってる。僕を頼ってる……」
 男はあわあわとし始めた。
 
 そして、リオは男の股間を蹴り上げる。
「ここ痛いヨネ〜。何で知ってるかって? 残念、僕オトコなんだヨ☆」

 リオは男を見下ろした。
「反撃しないノ?」
 不気味に笑う白衣に、ぞぞぞ……と寒気がしたリオはすぐさまローブで雁字搦めにした。

「黒猫さんなのですぅ。にゃ〜ん」
「木葉のその格好、可愛らしいですね」
 エントランスエリアでは、仲睦まじく歩く、ミズカ・カゲツ(jb5543)と、黒猫のパーカーを着た深森 木葉(jb1711)の姿があった。
 二人の手は、恋人繋ぎ。
 指と指を絡ませながら、楽しそうに揺れている。

「ミズカちゃん、どうしたの〜?」
「え……私ですか?」

 指摘されるほどおかしなことをしたつもりはない。
 でも、木葉の目は心配そうにこちらを見ている。
 ミズカは微笑んだ。
「木葉に囮役をさせるのが少し……」

「なんだ〜。良かった。痛いトコでもあるのかと思っちゃったの。あたしは大丈夫、ミズカちゃんが守ってくれるでしょ〜。だから、ヘンタイさんにメッ! するのですぅ!」
「そうですね」

 二人は土産物売り場にやってきた。
「う〜ん、どれがいいかなぁ? 」
「ふむ、色々な品が置いてありますね」
「あ〜、あのぬいぐるみさんかわいい〜」

 色々と物色していると、木葉がふと慌てだした。
「あっ、お財布忘れちゃったぁ……」
「おや、財布を置いて来ましたか…ふむ。取ってきますから、少し待っていて下さい」
「お財布取ってきてくれるの?ありがとなの〜。ここで待ってるね〜」
 
 ミズカは財布を取りに行くふりをして木葉から離れると、少し離れた木陰に潜り込むように隠れた。
 物質透過の能力。
 そこから、木葉を警護する。

 しばらく、一人で土産物の中を、好奇心に駆られてうろうろしていると。
「お嬢ちゃん、一人かな」
 白衣を着た怪しげな男が話しかけてきた。

「そうなの〜」
「おじさんと一緒に来ない?」
「いいですよぉ」

 白衣の男は、ひとけの無い場所に木葉を連れてくると、誰もいないことを確認し、木葉の肩をがしりと掴む。
「おじさんといいことをしよう」
「きゃーだれかー!」

 合図だ!

 ミズカは、一本尾を見せるようなオーラの形を身に纏い、白衣の男の前に出た。
 その目は作戦でなければ殺している、とでも言いたげだ。
 男は「ヒィ」と呻き逃げ出した。

「――逃がしはしません!」
 神速で回り込むと建御雷を顕現させて、その刃を突きつける。
「ところで、先ほど木葉に触れていた様ですが、覚悟は良いですか?」
 単調な言い回しに、怒りがにじみ出る。

「ミズカちゃん、ダメなの〜」
「腕の一本や二本斬ったところで、死にはしません」
「死んじゃうの〜」

 それよりも、と木葉は白衣の男に尋ねる。
「ねぇ、おじさんのお友達、どこにいるの? 木葉に教えて?」

「答えなさい」
 ミズカの目に当てられた男は、震えながら口を開いた。
「レ、レストラン、フードコート……」


 そのレストランエリア、フードコート内、厨房――。
 ウェイター服に身を包んだ柘榴 今日(jb6210)は、うんうんとうなづきながら、妹の柘榴明日(jb5253)を見つめていた。
 対して、妹が兄を見る目は、暗く沈んでいる。

「何でメイド服ですか?! …………まあ泳げないのでいいですけど…」
「メイドさんが可愛いのか? 明日がかわいいのか? ……ふうむ」
「なにを言いやがってるんですか、この兄は」

 先ほど、エントランスの捜索を行っているミズカと木葉から、ここに敵が潜伏しているという伝達があり、それならば全員で探すことになった。
 もう少しで、ここにロリコン研究班が全員揃い踏みする手はずだ。

「兄ちゃん、そろそろ準備しないと」 
「そうッスね」
 
 明日は食事を運ぶワゴンにテーブルクロスを掛ける。
 上の段には食べ物を置く。
 と、その下に今日が隠れた。

「それじゃ、行きますよ?」
「お願いするッス」

 明日は、ガラガラとワゴンを引く。
 フードコートの中心ほどに、みんなが座っている席があった。
「お嬢様方、お菓子とお飲物です」

 キラキラとした五人の目が痛い。
 恥ずかしさが頂点に達しながらも明日は、無理やり取り繕って微笑む。
「な、何かありましたら、お気軽にお声かけください」
 明日は、再び無表情に戻りながら、近くのテーブルの拭き掃除をしている。

 突然、おしりを揉まれた。
「ひゃ」
 振り返れば白衣の上にロングコートを着た男達。
 
 嫌だ。
 こんなの……。

「お……お兄ちゃん」
 その小さな声が届いたのだろうか。

「妹に手を出すならあの世へ逝く覚悟でもしときな…カス共…」
 ワゴンを蹴飛ばすようにして、今日が立ち上がる。
「正義の味方、グラシナズ参上!」

 バッと掲げたのは、撮りためた幼女の写真。
 男達は、幼女の写真に食いついた。

 今日は、計画通りとほくそ笑む。
 妹と共謀し敵をボコる。これぞ共殺プレイ!
 後は、萌えの伝道師として師匠直伝の真の萌えを説き伏せれば……


「殺してやる……」
「へ?」
 尋常では無い殺気を感じて見ると。
 釘バットを装備した明日の姿が。

 スタンエッジ――。
 一瞬にして気絶した、男達。
 だが、明日は攻撃をやめようとしない。

「やめなされ、無益な殺生はやめなされ」
 今日は慌てて明日を止めたのだった。


 今日はその足でメインエリアへと向かう。
 
「明日!」
「きゃあ」
 
 ばしゃん
 お湯に落ちた明日は、ムッと今日を見上げる。
 その迫力といったら……。

「いや、明日でも足が付くから、大丈夫かと……ごめんなさい」
 今日はすぐに謝った。
「お詫びに、みんなに料理を振る舞うこといいですね?」
「はい」
 不甲斐ない兄を尻目に、明日はふっと呆れるのだった。


 緋打石のもとに今日から亀甲縛りにされたロリコンスペシャリスツが届き、全種類の変態が揃ったのだった。

「さて、君達はこれを覚えて帰ってもらうのじゃ。『変態的なサークルは解散しよう』――。なに、心配しなくても大丈夫。……これから体に覚えてもらうからのう」
 そして、緋打石はにんまりと笑う。



 本日も、メルトスプリングスワールドは、通常営業いたします♪


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:17人

蒼き疾風の銃士・
フラッペ・ブルーハワイ(ja0022)

大学部4年37組 女 阿修羅
双眸に咲く蝶の花・
常塚 咲月(ja0156)

大学部7年3組 女 インフィルトレイター
『九魔侵攻』参加撃退士・
楊 玲花(ja0249)

大学部6年110組 女 鬼道忍軍
●●大好き・
八塚 小萩(ja0676)

小等部2年2組 女 鬼道忍軍
幼馴染の保護者・
鴻池 柊(ja1082)

大学部8年199組 男 バハムートテイマー
太陽の魔女・
ソフィア・ヴァレッティ(ja1133)

大学部4年230組 女 ダアト
万里を翔る音色・
九十九(ja1149)

大学部2年129組 男 インフィルトレイター
エノコロマイスター・
沙 月子(ja1773)

大学部4年4組 女 ダアト
心に千の輝きを・
御崎 緋音(ja2643)

大学部4年320組 女 ルインズブレイド
世紀末愚か者伝説・
虎綱・ガーフィールド(ja3547)

大学部4年193組 男 鬼道忍軍
撃退士・
雨宮 歩(ja3810)

卒業 男 鬼道忍軍
闇の戦慄(自称)・
六道 鈴音(ja4192)

大学部5年7組 女 ダアト
久遠の黒き火焔天・
中津 謳華(ja4212)

大学部5年135組 男 阿修羅
骸への執心・
帯刀 弦(ja6271)

大学部5年84組 男 阿修羅
君との消えない思い出を・
駿河 紗雪(ja7147)

卒業 女 アストラルヴァンガード
パンツ売りの少女・
焔・楓(ja7214)

中等部1年2組 女 ルインズブレイド
撃退士・
雨宮 祈羅(ja7600)

卒業 女 ダアト
二月といえば海・
カーディス=キャットフィールド(ja7927)

卒業 男 鬼道忍軍
祈りの心盾・
春名 璃世(ja8279)

大学部5年289組 女 ディバインナイト
妖艶なる三変化!・
恵夢・S・インファネス(ja8446)

卒業 女 ルインズブレイド
ひょっとこ仮面参上☆ミ・
新崎 ふゆみ(ja8965)

大学部2年141組 女 阿修羅
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
肉欲の虜・
桜花(jb0392)

大学部2年129組 女 インフィルトレイター
ハイテンション小動物・
イリス・レイバルド(jb0442)

大学部2年104組 女 ディバインナイト
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
ねこのは・
深森 木葉(jb1711)

小等部1年1組 女 陰陽師
来し方抱き、行く末見つめ・
黄昏ひりょ(jb3452)

卒業 男 陰陽師
Standingにゃんこますたー・
白野 小梅(jb4012)

小等部6年1組 女 ダアト
勇気を示す背中・
長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)

大学部4年7組 女 阿修羅
ArchangelSlayers・
グレイシア・明守華=ピークス(jb5092)

高等部3年28組 女 アストラルヴァンガード
主食は脱ぎたての生パンツ・
歌音 テンペスト(jb5186)

大学部3年1組 女 バハムートテイマー
新たなる風、巻き起こす翼・
緋打石(jb5225)

卒業 女 鬼道忍軍
『楽園』華茶会・
柘榴明日(jb5253)

高等部1年1組 女 ダアト
暁光の詠手・
百夜(jb5409)

大学部7年214組 女 阿修羅
心重ねて奇蹟を祈る・
グリムロック・ハーヴェイ(jb5532)

大学部7年171組 男 ディバインナイト
銀狐の絆【瑞】・
ミズカ・カゲツ(jb5543)

大学部3年304組 女 阿修羅
この命、仲間達のために・
日下部 司(jb5638)

大学部3年259組 男 ルインズブレイド
能力者・
御神島 夜羽(jb5977)

大学部8年18組 男 アカシックレコーダー:タイプB
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
麗しの看板娘(女体化)・
柘榴 今日(jb6210)

大学部4年6組 男 アカシックレコーダー:タイプB
永遠の十四歳・
神雷(jb6374)

大学部1年7組 女 アカシックレコーダー:タイプB
竜言の花・
華愛(jb6708)

大学部3年7組 女 バハムートテイマー
撃退士・
伽条院 リオ(jb6854)

高等部3年17組 男 アカシックレコーダー:タイプB
Cherry Blossom・
華桜りりか(jb6883)

卒業 女 陰陽師
High-Roller・
ウェル・ウィアードテイル(jb7094)

大学部7年231組 女 阿修羅
希望を繋ぐ手・
ナハト・L・シュテルン(jb7129)

大学部2年287組 女 バハムートテイマー
シスのソウルメイト(仮)・
黒羽 拓海(jb7256)

大学部3年217組 男 阿修羅
この想いいつまでも・
天宮 葉月(jb7258)

大学部3年2組 女 アストラルヴァンガード
葡萄園の悪魔(食欲的な)・
ジャル・ジャラール(jb7278)

小等部5年3組 女 陰陽師