.


マスター:久生夕貴
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
形態:
参加人数:10人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/06/06


みんなの思い出



オープニング


 どうせなら、楽しみましょう。





「では、次の舞台へといきましょう」
 姿を現した悪魔マッド・ザ・クラウン(jz0145)の呼びかけで、撃退士達は歩み進む。
 ここは緩やかな上り坂。
 向かう先には頂上が見え。
 途中まで上ったところで、再び周囲が結界に覆われる。
「ここは……」
 先ほどの空間とは打って変わった有様に、撃退士達は惚けたように立ちすくむ。
 今度の舞台はまるで硝子細工。
 床も、壁も、天井も、全てがきらきらと輝くプリズムのように、虹色の光がかわるがわる踊る。
 その中で咲き誇る花水木と、道化の悪魔。

「少し、話をしましょうか」

 いつもの微笑をその口元にたたえて。
 わずかに細められた猫のような瞳には、光の色彩が映り込む。
「”世界は偶然で成り立っている”。これはある悪魔が、かつて私に言った言葉です」
 この世で起きる全ての事象は偶然の産物で。
 果てしない偶さかの積み重ねが、世界を創っているのだとしたら。
「私はある意味でこれは正しいと思っています。何を選ぶのも、何と出会うのも、何が起きるのもの、すべては偶然の帰結であるのでしょう」
「……じゃあクラウンさんは、運命とかそう言うのは信じてないってことですかー?」
 あほ毛が揺れる青年の問いに、クラウンはかぶりを振る。
「いいえ。世の中には運命と呼ぶべき歯車がある。私はその可能性もまた、信じています」
「うや? でもその二つはまるで反対の意味だよね?」
 きょとんとする翡翠のような瞳に、頷き返しながら。

「”偶然という運命”を、私は信じているのですよ」

 涼やかな声が、煌めく空間に溶け込んでゆく。
 演者も観客も。
 どこかで見ているあなたも。
 ここに集う全ての存在が、偶という必の下にめぐり会ったのだとしたら。

「とても面白いことだと思いませんか?」
 
 同じ時を生き、同じものを観て、同じ世界を知る。
 共にめぐる季節を愛で、流れる時を尊び、至高の瞬間を歓べば、これほど愉快なものはないと。
「……そうですね。俺もそう思います」
 長身の青年が微笑む。
 全てはまるで計算されたかのように。けれどやっぱり、それは自分たちが選んだ偶然でもあり。
 黒髪の少女が、やれやれと笑う。
「相変わらずあんたの考えることはわからないけど……ま、いいよ」
 考えたって仕方ないから。
「せっかくだもん、めいっぱい満喫してやろうじゃない!」

 つまりは、楽しんだもの勝ちなのだ。

「ふふ……では、そろそろ始めましょうか」

 クラウンが大きく袖を振ると同時、結界の中央に大きな真鍮色の物体が現れる。ハンチング帽を被った少女が、瞬きをし。
「この形……もしかしなくても」


 鍋。


 直径一メートルはあるだろう巨大鍋が、湯煙を上げながら鎮座している。
 彼らの視線は鍋の中に釘付け。

 だって。
 スープの色が。

「真っ黒……」

 眼帯を付けた少年の呟きに、クラウンはなぜか満足そうに頷きながら。
「私は食したことがありませんが、好きなものを入れて煮ると聞きました。大体こんな感じでしょう」
「えっとクラウンこれなんの味…」

「ああ、聞くのは野暮というものだ」

 そこで吸血鬼っぽい青年が愉快そうに遮る。
「闇鍋とは食してみるまでわからない。そうだろう? 道化殿」
「ええ、そうですね」
 互いにくすくすと笑いあう様を、たい焼きの龍魔は感心したように眺める。
「なるほど…これは噂のYAMINABEなのだな」
 感心している場合では無い気もするが、悪魔なので許して欲しい。

 道化は微笑う。
 光は舞う。

「では、第二ステージのテーマは『鍋』。あなた方はこれを使って私と勝負してもらいます」
 ごくり、と息を呑む音が響く。
 あの中に何が入っているのかという疑問と、いつ準備したんだこれという疑問と、どうしてこうなったという疑問で(一部を除く)撃退士の心中は混沌としていた。
「ああそうそう、忘れるところでした」
 クラウンがそう言った直後、突然結界の一部が開き何かが飛び込んでくる。
 現れたのは、同じ学園の撃退士。
「先ほど見かけたので、参加してもらうことにしたのです。鍋とやらはたくさんの人数で囲んだほうが面白いと聞きましたから」
 どうやら彼らは旅人と共に周辺の警戒にあたっていたらしい。
 念のため周辺へ被害が出ないようにとの事だったのだが――

 気が付くとここに放り込まれていました☆(ゝω・)v

「何という不自然で自然な合流!」
「わけがわからないよ!」
 結界内がカオス状態なりつつある中、一人が周囲を見渡し。
「……あれ、でもタビットは?」
 聞けば旅人だけはある理由から参加を逃れた(訂正線)見送ったのだという。
 ハンチング帽の少女は苦笑しながら肩をすくめ。
「なんだかよくわからないケど……ま、やるしかねえんダろ?」
「そうですねー? やるからには全力ですよー!」
 ここまで来て何もせずに帰る選択肢などない。メンバーたちの志気は上がる。
「うちらを甘く見ると痛い目見るんだからね!」
「ミスター覚悟するんだよ!」

 そうこれはフィナーレを迎える前のボーナスステージ。
 享楽に充ち満ちた声が響き渡す。

「大いに結構! 共に混沌の世界を愉しむとしようじゃないか」

 この瞬間は一度きり。


 謳歌するが、勝ち。




前回のシナリオを見る


リプレイ本文




 煌めくプリズム

 きらきら
 きらきら

 次に映るのはどんなもの?





「ヒーローの俺、参上!」

 突然結界内に放り込まれた小野友真(ja6901)は、早速きょろきょろと周囲を見渡した。
「凄いな花水木の万華鏡やな! めっちゃきれ」

 鍋。

 見間違いかと友真が目をこすると同時、高らかな嬌声が耳に届く。


「闇鍋、それは原初なりし混沌(カオス)の模倣」


 一人だけ全てを悟ったらしい元凶(訂正線)鷺谷 明(ja0776)の礼賛。
「深淵(アビス)から臨みしカルマの共演はまさに至極と呼ぶにふさわs」
「うわーい、鍋ー。肉体疲労時の栄養補給にピッタリだねー(棒読)」
 死んだ目で鍋を見つめる藤咲千尋(ja8564)の隣で、雨宮 祈羅(ja7600)も青ざめつつ。
「どう見てもやばい色してるけど…あれ、大丈夫なん…?」
「あ、千尋ちゃん怪我しているので無理はしないでくださいねー?」
 櫟 諏訪(ja1215)がさりげなく彼女を気づかいつつ。
「それにしても闇鍋ですかー…どう考えても、フラグ立ちそうな人がいる気がして仕方がないのですよー?(ちらっ」
「フッ…闇鍋こそ俺の舞台」
 加倉 一臣(ja5823)の自信に満ちた声。
「この勝負、受けて立ちましょう。後で泣かないでくださいよミスター!」
 だめな未来しか見えない宣言が響く中、マイペースぶりを発揮しているのが悪魔二名。
「ヨルくん闇鍋? なんかようわからんけど楽しみやなぁ」
 蛇蝎神 黒龍(jb3200)は大事な七ツ狩 ヨル(jb2630)との合流に、彼をもふってご機嫌。
「うん、闇鍋っておいしいよね。楽しみ」
 対するヨルには闇鍋経験がある。しかし偶然美味しい具を引き当ててしまい、以降闇鍋=美味しいものという残念な理解をしている。
「鍋ねぇ…別に大丈夫なンだケド、季節的にギリギリな感じじゃね?」
 前方の鍋をじっと見つめるのは、狗月 暁良(ja8545)。
「あの黒いスープ…あれが噂に聞く北欧風闇鍋の頂点、サルミアッキ鍋…って、ジョーダンジョーダン」
 彼女の全然冗談になっていない冗談に一部の人間が凍り付く。
「はははまさか黒い悪魔だとか」
「アンモニアとゴムの味がするスープとかそんなまさか」
 ここはクラウンの良識に期待したい。まともな人たちの切なる願いが結界内に満ちる。

 鍋の向こうに見える、悪魔の微笑。
 その前で煮えたぎる黒いスープと。

 何だか甘い匂いと。


 だめな予感しかなかった。



●第一幕:友真&縁 指定食材:サバ缶(諏訪)・ブロッコリー(千尋)※括弧内は投入者


「黒くて甘い匂い…ははーんチョコやな?」
 名探偵顔で友真が呟く横で、縁がクラウンをびしっと指さす。
「ミスター! ただの勝負だとつまらないんだね! 負けたら勝者の言うことを聞くなんてどうかなー?」
 聞いたクラウンはほんの少し考えた後、くすりと笑んだ。
「なるほど。いいでしょう」
 
 ※以下、出撃前のボディランゲージをお楽しみください※

(友真くん!(さっ)
(何や縁!(ぱっ)
(縁がミスターを抑えるので(ささっ)
(お前、俺を行かせようと…!(ぐっ)
(縁の屍をこえてゆけ!(ぐっ)
(その心、受け取ったり!(カッ)

 犠牲者が決まった所で試合開始。
「ヒーローとはここぞという時に引き当てるもの!」
 緑火眼で命中率を大幅アップさせた友真は鍋に向かって猛ダッシュ。
 先に鍋前へ辿り着くと、速攻でクラウンの箸とお椀を狙って精密狙撃!
「はっしまった、ミスターお箸とお椀隠してるし!」
 ならばと先に鍋へとお箸イン!
 しかしそこで、友真はある事に気が付いた。

「あれ…この匂い……」

 待って俺、この匂い凄く知ってる。
 むしろ何で今まで気付かへんかったんか不思議なレベル。
 そう、これは――

「考え事はよくありませんよ」

 いつの間にか目前に来ていたクラウンが、友真の箸をはじき飛ばす。
「待って俺の箸いいいい」
「ここは縁に任せるんだよー!」
 飛び出た彼女、いきなりクラウンに抱きつく。
「縁の力見せてあげるんだねー!」

 えにしは ほしのかがやきを つかった!

 まわりが あかるく なった!

 あんまり意味無かったが、そこはポジティブな二人。
「ナイスやで縁! 俺たちなんか光輝いてんで!」
 箸を取ってきた友真は、微笑したまま固まってるクラウンに同じく抱っこ攻撃。
「よし今度は俺がミスター抑えてる!」
「OK! レリゴー! なんだね! ……うやー?これは冥魔の新ゲートか何かかなー(棒読)」
 黒の迷宮に箸を突っ込んだ縁は、何かを掴む。
「ありのーままのー姿見せるのよー なんて…ズァー!」

 現れたものを見て、無言で戻す。

「友真くん選手交代なんだね!」
「え、そうか? なら頼んだで!」
 クラウンを抑えるのに必死だった友真は、素直に交代。
「にしてもミスター…まさかこれをスープに選んでるとはな…!」
 そういや確かにクラウンは言っていた。

 ――鍋とは好きなものを入れて煮ると聞きました。
 
「…遊園地のときの、気に入ってくれたんすね」
 そう、このスープは。

 まさかコーラやと思ってませんでした!!(号泣)

「こ、コーラも醤油なんかと一緒に煮れば美味しくなるって聞いたんだよ!」
「もちろん他の調味料など入れていませんよ」
 微笑むクラウン。
 微笑む縁。
 半泣きの友真。
「わかってる…ここでやらなヒーローの名がすたる…っ」
 勇気を出して鍋へと箸を突っ込む。何とか探し当てた食材――
 ブロッコリー。
「た…食べてみるで…!」
 二人の熱い視線を受けながら、緑の房を口に放り込む!※妨害は既に忘れ去られているようだ

「………!?」

 涙目になった友真は、口元を抑えて首をふるふる。

 これあかんやつあかんやつ。
 
 ブロッコリーの青臭さとコーラの甘みが織りなす、絶妙なハーモニー(笑)。
 クラウンはと言えば、その隙にサバ缶(の中身)を取ってもぐもぐ。
「これは結構いけますね」
 元々の味付けのおかげか、甘みは強くなっているものの意外と食べられる。
「うに、じゃあ縁もサバを頑張って食べるんだね! 友真くん友真くん! はい、あーん!」
 ブロッコリーをせっせと友真の口に運び(決して押しつけてなどいまs)、笑顔で提案。
「はっ、友真くん! 縁考えてたんだけどスープごと流し込めばいけるんじゃないかな?!」
「いやいやスープは飲むなて信仰してる神様が言うてるから!」
 だがしかし投入者(千尋)によって細かく房分けされたブロッコリーは、何度もその蠱惑的な味を堪能させてくれる。
 耐えきれず、友真は叫んだ。


「コーラ下さい流し込むからってこれスープがコーラやから!(ばぁん)」


 ※ただいま出演者が大変混乱しておりますので、しばらくお待ちください※


 結局、クラウンがサバを食べ終わった所で、友真がブロッコリーを縁がサバをそれぞれ完食。
「ふふ……負けてしまいましたね」
 全然残念そうに見えないのは気のせいだと思いたい。

 ちなみに縁が鍋の中に何を見たのかは、次で判明する事になる。


●第二幕:一臣&ヨル 指定食材:豆腐(暁良)・UNKNOWN


「……あの鍋、コーラだったんだね」
 本当はカフェオレを入れたかったんだけどな、とヨル。
「ミスターの好きなもの…ふ…なるほど、盲点だったよ」
 どういうわけか自信満々の、一臣。
 スタートダッシュで鍋に近付き、クラウンへ向けてマーキング。
「YESストーキング! NOタッチ!」
 どこかの犯罪者のような台詞だが気にしてはいけない。対するヨルは闇のオーラを発生させると、みるみるうちに鍋の周りを覆い尽くしていく。
「せっかくだし本当の闇鍋っぽいかなって思って」
 そこはまさに『ザ・闇鍋』状態。
 しかしここで、暗視鏡を装備した一臣は得意げに笑う。

「ふはははは、闇の中でも鍋もミスターもわかる! わかるぞ!」

 謎の自信の根拠はこれ。
 以前闇の中では例え悪魔でも視界が効きにくいと分かったが故の作戦だった。
 案の定、クラウンの動きがわずかに鈍ったのを見て、二人は一気に食材探しへ。
「……? カズオミレンズ真っ白だよ」
「ハハハ湯気で曇ったよねむしろ何も見えな」
「おっと手がすべりました」
 クラウンがうっかりスープをはねさせ一臣に直撃。悶絶する所をヨルが代わって鍋に突撃。
「…あれ? そういや俺、指定された食材見たこと無い気がする」
「おやあなたもですか。実は私もなのですよ」
 二人して妨害も忘れ真剣に悩む。その隙に頑張ってレンズを拭いた一臣が復活。

「よしこれで暗闇の中でもばっちり具材がさがs」

 箸で掴んだものと、目が合った。

 (^ω^)?

 にょろりとした体躯がスープから伸びている。
 先端に見える、吸盤型の口にびっしりと並ぶ無数のトゲと牙。
 その口で動物の身体にへばりつき血を吸うという――

 ヤツメウナギだった。※閲覧注意だよ!

「何なのこの異形生物ううううううう」

 楳●かずおもびっくりのホラー顔で一臣は叫ぶ。
「うむ、やはり闇鍋は蠢かなくてはな」
 入れた張本人の明は満足そうな頷き。ちなみに縁がうっかり箸で掴んだのもこれ。
「先ほどまでぴちぴちしていたから大丈夫。なに、味は美味だよ。スープに合うかはわからんがね」
 何が大丈夫なのか全くわからないが、一臣は震えながら思った。

 これ。

 もしかしなくても。


 見えない方がよかったんじゃね…?(戦慄)


「……? カズオミなんで震えてるの?」
 異形生物を見慣れた悪魔は、彼の嘆きがいまいち理解できない。
「グロはやばいですグロは」
「何を言っているのかわかりませんが」
 きょとんとするヨルとクラウンに、一臣絶望。
「これがっ……理解者がいない…っ…苦しみっ……」
 ヤツメウナギこっち見てる。

 ざわ……ざわ……

 俺にはわかる。
 俺は確実に試されている。

「……? カズオミなんで泣いてるの?」
「取ったものは食べるのが礼儀ですよ」
「わかりましたよ! 食いますよ!」
 一臣は半ばヤケクソで口に入れる。
「言ったでしょう、俺は覚悟を重ねてきtつらい」
 暗視鏡が涙で曇るつらい。
「これゎ…味ぢゃなぃ…心が痛ぃょ…」
「じゃあ俺はこっちを食べるね」
 一臣を完全スルーし、ヨルとクラウンは豆腐をもぐもぐ。
「…そう美味しいってわけじゃないけど、まずくもないかな」
「ええ、そうですね」
 冷静に味を批評する悪魔達を見て、一臣は悟る。
(くっ…悪魔には「豆腐には醤油かポン酢だろ」っていう概念がない…)
 自分と比べて抵抗がなさすぎる。
 ならば。

(…きこえますか…道化の…悪魔さん……闇鍋の精霊です…)

 霞声でクラウンの心に直接呼びかける。

(それは…雑巾の味です…いいですか…雑巾の味なのです……)※精神的ダメージを与えようとする大学5年生。

「ほう、これが雑巾の味ですか。ところで雑巾って何ですか」
 クラウンの問いにヨルはうーんと首を傾げ。
「雑巾は見たことあるけど…あれって食べられるんだ。カズオミはいつも食べてるんだね」
 一臣は広い宇宙で一人きりで戦っていると気付いた。


 ※※


「ごちそうさま」

 完食し、ヨルは手を合わせる。人界に来て教えられた、大切な習慣。
「ふふ…本物の『闇』鍋はなかなかよかったですよ」
「うん。食べてみたらヤツメウナギも結構美味しかったね」
 満足そうな悪魔達のそばで、慰められる大学五年生。


 結論:闇鍋は見えない方が幸せなこともある




●第三幕:諏訪&黒龍 指定食材:巨大たこ焼き(友真)・タコ(クラウン)


 スタート地点に立つマイペースな二人。互いに想い人をちらりと見やり。
「お互いいつもの相手とは違っちゃいましたけど、あーんしたかったですよねー?」
「それは後のお楽しみ…ってことで頑張りましょかー」
 始まった直後、諏訪は迷うことなくクラウンへ向けて妨害開始。フラッシュライトでの視界妨害は効果が薄そうなので、クィックショットに切り替える。
「これならどうですかー?」
 こちらはクラウンも警戒して、椀を袖に隠し後退。その間に黒龍が鍋へと突撃した。
「世界各国旅してきたからなぁ。好き嫌いは無いんやで」
 器用に箸を使い素早くタコを引き当てぱくぱく。
「甘いタコも…まぁ、こんなものと思えば。あ、そう言えばタコをこんだけ食べるのって日本人だけらしいで。他の国から見るとこれも『異形生物』なんやろなぁ」
 そんな蘊蓄を語れるほどに余裕だ。
 その頃、鍋前では諏訪とクラウンが困惑の表情を浮かべていた。
「えっと…これはたこ焼き…だったものですねー…?」
 煮詰まるコーラをふんだんに吸った物体。
 元が手のひらサイズだったがために、尋常では無い大きさに膨れあがっている。
「箸で持ち上げるのも難しそうですね」
 と言うか見た目、味、大きさ全ての意味でハードルが高い。そこでタコを食べ終えた黒龍がぽんと手を打ち。
「ボクええこと思いついた。金魚すくいの要領でハネさせてみたらどうやろか」
「ああ、いいですねー?」
 諏訪は箸をうまく使い、たこ焼きをジャンプさせる。
「行きましたよー! キャッチお願いしますねー?」


 たこ焼きは宙を舞った。


 お椀を持って黒龍が走った。
 クラウンが妨害しようと袖を振った。


 たこ焼きは大きく宙を舞った。


 クラウンがもう一度袖を振った。
 たこ焼きはさらに宙を舞った。


 諏訪の回避射撃で軌道が逸れた。


 友真に当たった。


「めっちゃ熱いんやけどおおおおお」
「あ、すみません手がすべったのですよー?」
 投入者への恨みではありません。断じてたぶん。
「それはあなたに差し上げます。遠慮はいりませんよ」
「え、ミスターちょっと待っ」
「すわくん、第二弾やで!」
 黒龍によってたこ焼きが再び宙を舞う。
 お椀を持った諏訪は今度は器用にたこ焼きをキャッチ。
「させませんよ!」
 クラウンが衝撃波を飛ばし、お椀が諏訪の手からはじき飛ばされる。しかしここは黒龍が飛翔。
「上空で食べる鍋もおつやろ?」
 たこ焼きを見事空中で捕獲。箸を片手に黒龍はにっこりと。
「我らが血となり肉となる食材に感謝を込めて」
 いざ、食す!
 
 ぱくぱく。
 もぐもぐ。

 …
 ……
 ………
 ……………どさり。

「あっ黒さんしっかりしてくださいよー?」
 諏訪が慌てて駈け寄ると、黒龍はどうみてもヤバイ目をして地に伏している。
「ヨル君……お花畑が見えるで……」
「そっちへ行っちゃ駄目ですよー!」

 好き嫌いは無い。
 けれど、不味いものは不味かった。

 笑顔のままカクカクする黒龍の耳に、愛する者の声が届く。
「あ、黒。気絶したらもう一緒に鍋食べられないよ」
 ヨルの声に、黒龍復活。
「ああ、ホルモン入りのたこ焼きってのも珍しいなあ。よく噛めば噛むほど味がしみ出て…」
「黒さんそれは味わっては駄目なやつですよー? 噛まずに飲み込んでくださいよー!」
 魂が抜けかけている黒龍を何とか現世にとどまらせ、諏訪はクラウンの動向を確認する。
 悪魔は鍋に浮く巨大たこ焼きを箸でつんつんしていた。
「分解すれば取りやすいかと思いまして」
 その姿に一部観客が悶絶するのを生暖かい目で見やり、諏訪は今のうちにと黒龍を応援。
「黒さんファイトですよー! ほらヨルさんが応援してますよー?」
「黒、頑張れ」 
「ヨル君見ててな! ボクはやれる。愛する人のためならば!」
 輝く笑顔でサムズアップ(しろめ)。ラストスパートに拍車がかかる。 

「我らが力になり敵を打ち倒す源とならん事を祈って!」


 ※※


 結局、黒龍の執念の完食により決着。
 息を吹き返した黒龍は、クラウンへ蘊蓄を伝授。
「ええこと教えるな。『アーンv』すると食材がさらに美味しくなるんやで」
「ほう。では後でこれ(=コーラ煮たこ焼き)を誰かに食べさせてみましょう」
「犠牲者が増えるフラグですねー…?(」
 あくまでマイペースな三人だった。


●第四幕:祈羅&千尋 指定食材:クリーム大福(縁)・みかん(ヨル)


 さて、ここで登場したのは今回唯一の女子ペア。
「さあ、千尋ちゃん頑張るよー!」
 やる気に満ちた祈羅が、手をわきわきさせる。千尋も怪我などものともせずにやる気十分。
「祈羅ちゃん、よろしくだよー!」
 全力移動で鍋前へと辿り着いた彼女、鍋に覆いかぶさるように腕をくの字に曲げる。
「カバディ!カバディ!カバディ!」
「千尋ちゃんカバディは攻撃側だよ!」
「あ、そうでしたてへぺろぺろ☆」
 千尋が鍋の守りに入ったのを見届け、祈羅はクラウンへと妨害開始。
「さっき縁ちゃんにぎゅってされて固まってたもんね。うちもやってやる!」
 瞬間移動すると、クラウンの背後にまわり。
(よし、完全背後取った!)
「覚悟!」
 思いっきり手を伸ばしたと同時、クラウンの身体を一瞬で黒煙が覆う。
「ふふ…この姿でも来られますか?」
 現れた長身の青年に、祈羅の動きが止まる。
「ぐぬ……さすがにこのビジュアルに抱きつくのは色んな意味でまずい…」
「うん、わたしもできないこれは仕方ない」
 千尋も力強く同意。
 乙女心をうまく突かれ、祈羅撃沈。くすくすと笑う悪魔に地団駄を踏み。
「くうううムカツクう〜〜! 絶対そのすました顔を台無しにしてやるんだからね!」
 クラウンは端正な顔立ちに微笑を刻むと、ここぞとばかりに大鎌を振りかぶる。
「では私からも行きますよ!」
 鎌からオーラが長く伸びる。向かう先には鍋を守る千尋。
「ディーフェンスディーフェンス!」
「千尋ちゃん危ない!」
 祈羅が追うが間に合わない。このまま千尋が捕まって飛ばされてしまうのかと身構えた時、彼女が手にしていた箸にオーラがくるりと巻き付いた。
「あっ!!」
 箸が千尋の手から離れ、そのままはじき飛ばされる。しかしここは祈羅が瞬間移動でキャッチ。
「おや、やりますね」
「いけ! 千尋ちゃん!」
「ありがとう祈羅ちゃん!!」
 箸をパスされた千尋はすかさず鍋へイン。
「必殺チョップスティーーック!! 見よ、純日本人の箸さばき!」
 ズババババ。
 見事な箸さばきを披露し、食材を探索!
「あっ!! 大福見つけt」

 取り出したモノを見て、千尋の笑顔は凍り付いた。

「こ…これは……」
 かつて大福だった物体は、凄まじい進化を遂げていた。
 熱によって溶け粘着力を発揮したもち部分には、あらゆる食材がまとわりついている。
 みかんやサバの切れ端、クリームコロッケの衣、そして――

「うわーすごーいヤツメウナギまでいるー(しろめ」

 これだめなやつだめなやつ。
 完全にグロの集合体と化した大福に、千尋はぷるぷると首を振る。
 好き嫌いはない。
 何でも食べるつもりだった。

 でも限度ってものがあると思んです!!!(乙女心)

「ある意味これが一番悲惨ですね」
 クラウンの的確な一言が、全てを物語っている。
 鍋を取り囲むタキシード姿の青年と、うら若き乙女。
 三人はただ黙って、モザイクがかかってもおかしくないモノを見た。
 じっと見た。
 さらに見た。
 クラウンは、二人にちらりと視線をやり。
「で、どうしますか?」
「たたたたべるよ! じゃないと勝負付かないもん!」
「ち、千尋ちゃんだけに食べさせるわけにはいかないよ、うちだって食べる!」
 千尋と祈羅の決心に、クラウンは切れ長の瞳を優美に細め。
「ふふ…いい覚悟です。では、私もそれに応えるとしましょう」
 全員大福をお椀に入れると、顔を見合わせうなずく。

「「「いざ、尋常に勝負!」」」


 ※彼女達の名誉のため、食事シーンはカットさせていただきます※


「はい、アイスコーヒー!」
 祈羅から手渡されたそれを、千尋は涙目で受け取った。
「ありがと!!」
 優勝者は千尋。猫舌を乗り越えての大奮闘だった。
「にしても、あんたほんと猫舌なんだね」
 笑いを堪え、祈羅はクラウンにはイチゴミルクを渡す。
「……否定はしません」
 唯一の弱点を知ったようで、女子二人はつい吹き出すのだった。



●第五幕:明&暁良 指定食材:カニクリームコロッケ(一臣)・トマト(黒龍)


 闇鍋。
 それは深淵(アビス)と混沌(カオス)の美しき融合。
 その紅い瞳に愉悦の色を宿し、明は宣言した。

「いいかね、ヒトには引いてはならぬ勝負があるのだよ」


 引いてはならない勝負=闇鍋


「これじゃない感がすげぇあるケド……」
 暁良は飄々とスタート地点に立ち、にやりと笑む。
「ま、いいゼ。どうせやるなら勝たねぇとナ」
「さあ、至極の晩餐へ!」
 二人は鍋に向かい猛然とダッシュ。
「とにかく全部食えば問題ないってコトだな」
「まさに。闇鍋はひたすら食してこそ、その真髄が味わえるというもの」


 さくせん=がんがん食おうぜ


 明は速攻で鍋の前に陣取ると、てこでも動かない姿勢を見せる。
「よいか、道化殿。この宴に妨害などは無粋である。貴様もヤミナベストならその箸を以て語るがいい!」
 ルールの根本を覆す事案発生。と言うかヤミナベストってなんだ。
「ふふ…いいでしょう。私もヤミナベストとして、その挑戦受けて立とうじゃありませんか!」
「要するに全部食えばいいってコトだな」
 だめだこの三人はツッコミが不在だ。危険だぞ!
 しかし彼らの暴走はとどまる所を知らず、更なる進化を遂げていく。

 彼らは食べた。
 どんどん食べた。

「むっ……このクリーミーで濃厚な味わい。本来さくさくのはずの衣は、甘いコーラをふんだんに吸い何とも言えない味わいを醸し出している」
 ぐだぐだになった衣とコーラ、そしてカニクリームが渾然一体となった絶望のハーモニー。
「どうだね、道化殿。このスープをふんだんに吸ったクリームコロッケを君も食してみるといい」
「(一口食べ)…………これは後で投入者(一臣)に食べさせることにしましょう。私はこれをいただきます」
 取り出したのはトマト。同じく暁良も挑戦中だ。
「……まあアリだな。熱でほとんど溶けてるが…」
 スィーツ用の甘露煮トマトと思えば割と美味しい部類だろう。
「うん? どうやら具材が足りんようだな」
 明は懐からヤツメウナギを取り出し投入。
「どうかね狗月君、これはなかなか美味であろう?」
「(無言で明のお椀に移す)」
「む、袋が破れていつの間にかウナギ脱走している。見たまえ、私の血が吸われているぞ!」
 明、モザイクで覆われる。
「これは……見るからにヤバイな」
 暁良は箸で掴んだどろっどろの大福を、みつめる。
 みつめる。
 みつめる。
 一応食べてみる。
 無言で明の椀に移す。
「これは大丈夫ですね」
 クラウンがコンニャクを食べる。暁良も食べる。
「さて、私の血を吸ったウナギを投入ry」
 どこからか狙撃され明、気絶。
 暁良と悪魔は黙々と食べ続ける。
「苺やみかんもまあイけるな」
「タコも食べられなくはありませんよ」
 暁良が巨大たこ焼きを見つめる。
「これはどう見てもヤバいな…」
「ああ、これも後で投入者(友真)に食べさせるとしましょう」
 場外での阿鼻叫喚が聞こえる中、意識を取り戻した明が復活。
「ふ…私はまだ終わらんよ」
 お椀に入れられた大福を頬張る。
「この戦、食い尽くすまで終われると思うな……うっ…」
 喉に詰まった。
「時よ止まるな、お前はあるがままが美しい」
 辞世の句を遺し明、再び気絶。


 ※場が大変混沌としておりますので、しばらくお待ちください※


 結局。
 彼らは鍋の中身を(一部は投入者に押しつけ)全て食べきった。
「ふふ…完食はいいことです」
 満足そうなクラウンに、暁良はふと。
「ところで……俺たちナンの勝負してたんだっけか」
 意識を取り戻した明が首を傾げながら。
「勝負? はて、そんなものもなかったような、ありもしないような」
 記憶も所々失っているような、ありもしないような。

 結論:勝負なんてなかった



●勝負の後の鍋は格別


 最終的に勝負は撃退士の圧勝に終わった。
 戦いの後は皆で普通の鍋を囲む(味付けや具材は撃退士が指定)。
 奇妙な晩餐の始まりだ。

「やっぱ、普通の鍋がいいナ」
 白菜を取ろうとする暁良を明の声が止める。
「それは私の白菜だ! …と言いたい所だが、君にも分け与えよう。私が育てた白菜だ」
「お、おう」
 白菜をむしゃむしゃしつつ明は道化姿に戻ったクラウンに切り出す。
「時に道化殿。私は意味のない話をしに来た。当然の如く価値の無い話をしよう。と言うわけで犬と猫とではどちらがもふもふしているだろうか」
「それはもちろん猫でしょう」
「ほう、何故そう思うのだね」
「犬に負けるつもりはありませんよ」
 何か今もの凄く大事なことを口走った気がするが、当然明は気にしない。
「む、そのスベスベマンジュウガニもらうよ」
 YES、猛毒生物。さらば特殊抵抗。
 明が泡を吹いている隣ではお砂糖が量産されている。
「はい、千尋ちゃんあーんですよー?」
「あばばば」
 諏訪のふいうちに、千尋はどぎまぎしながらぱくり。
「ひーひー恥ずかしいー!」
 真っ赤になる千尋を見て、暁良は修学旅行の時を思い出していた。
(そういや俺もあん時やったなー…)
 愛する者達とめいっぱい楽しんだひととき。相手が今傍にいない事にほんの少し寂しさを感じつつ。
 諏訪がふと。
「そう言えば旅人さん、無事に一人で帰れたのでしょうかー…?」
「あ、旅人さんね『僕には僕の役割があるから』って言ってたの。だからまだ近くにいるんじゃないかな」
 千尋はそう応えてから思い出したように、クラウンへと問いかける。
「あのね、クラウン。一個お願いがあるんだけど…タッパーにこのお鍋の中身、ちょっと入れていいかな」
 友だちに食べさせてあげたいと伝えると、了承が返ってくる。
「あとね…レックスは元気かな…」
「ええ」
「そ、そう…ならいいんだけど…」
 千尋の心配そうな表情に、クラウンはゆっくりと頭上を見上げ。
「今もどこかで見ているでしょう」
「え…?」
 千尋もきょろきょろとしてみるが、姿は見えない。

「お、これ美味しいんやで。はい、ヨルくんあーんな」
 黒龍とヨルは互いに食べさせ合いっこ。ちなみにヨルはその意味をあまりわかっていない。
「ありがとな、ヨルくんv」
 クラウンにもあーんしてみたかったけど、と笑いつつ。
「あ、そうそう。あのなクラウン。同じ鍋をつついた人達は、皆同胞になるんやて」
 だからこれからもよろしゅーにな? と意思疎通で伝える。
 対する悪魔の表情は、相変わらずの微笑で。
 二人のやりとりを見つつ、ヨルはぼんやりと感じていた。
(皆でこうして鍋を囲んでるとほんわかするな……)
 自分が見たかった風景は、こんな温かさが世界中に広まったような感じなのかもしれなくて。
「ねえ。クラウン」
「何ですか」
「クラウンが見つけていない最高の瞬間って、実はまだまだ沢山あるんじゃないかな」
「ええ、そうかもしれませんね」
「これからも探したいって思わないの?」
 ヨルの問いに、クラウンは微笑んだまま応えない。その瞳には一体何が映っているのだろう、とヨルは思う。
 そんな彼らを見て、一臣がしみじみと言う。
「そうやって皆で鍋を囲って食ってる姿、俺らと変わりませんねぇ」
「ふふ…人ごとき人ならざるもの…ですか?」
 その言葉に苦笑し。
「俺にはやっぱり人と悪魔の違いは、よくわかりませんよ」
「おや、ならこのヤツメウナギを」
「すみません嘘付きましたミ´;ω;」
「あ、俺帆立食べたいー!」
 友真はいそいそと帆立をよそうと、クラウンの椀にも入れる。
「俺これ好きなん。ミスターも食べてみ」
 クラウンは熱いのが苦手なので少し冷ましてから。
 そんな食事風景を、一臣は笑いながらカメラで撮る。
「記念撮影ですよ」
 これはあくまでも一枚目だから、と内心で呟き。
「なあ、ミスター」
 視線を上げるクラウンに、思いきって問いかける。
「もし俺に質問出すなら何やったん?」
 やっぱりどうしても、聞いておきたかった。
 クラウンは一旦沈黙してから、猫のような瞳を細めその問いを告げる。
「『あなたの”愛”を語ってください』ですよ」

 その頃、祈羅は半分ヤケ鍋のようにひたすら食べ続けていた。
「カップル率高くて寂しいっす、先生(」
 恋人は今別依頼中なのだ。
「まあ、そこは俺も同感だナ」
 暁良と握手しつつ、とりあえず元凶の悪魔にからんでおく。
「元々はあんたのせいなんだからね! …ねぇ、うちの探偵があんたを狙いすぎてね、ちょっとやきもちしたりする…どうしてくれるの?」
「それはお互い様なのではありませんか?」
「えっ…そうなのかな。…そう思う?」
「さあ、それは直接本人に聞いてみてください」
 くすくす笑うクラウンに、祈羅はむうと唸る。
「全くあんたはほんとに可愛くない…隙あり!」
 クラウンの頬を人差し指でぷにっとやると、悪戯っぽく笑う。
「油断大敵だよっ」

「ミスター! お鍋といえば締めは雑炊か麺なんだよー!」
「あ、俺卵落とす派ー!」
 縁と友真がキャッキャする中、クラウンがそう言えばと問う。
「勝負に勝ったらあなたは何を望むのです?」
「うや? あ、そういやそうだった!」
 完全に忘れていた縁、その場で必死に頭を捻る。
「ん、んんんー! あ!…ミスターのトランプが一枚欲しい! とかダメかなー? 記念品にしたいんだね!」
 それを聞いたクラウンは、どこか驚いたように瞬きをした後。
 やや苦笑めいた笑みを漏らし、その言葉を告げた。

「先に言われるとは思いませんでしたね」



●そして



 煌めくプリズム

 きらきら
 きらきら
 
 映るすべてが魂の輝き


「……さて」
 宴もたけなわになった頃、クラウンの涼やかな声が結界内に響いた。
「そろそろ最終ステージへと向かいましょうか」
 悪魔の言葉に全員の顔が一瞬で引き締まる。
「みんなでご飯食べて、しょうもない話をして、本気で戦う……か」
 何とも清々しいまでに馬鹿げた話。
「全ては喜劇へと帰結する。いかにも道化らしい舞台じゃないか」

 後戻りはできない。
 けれど彼らは迷わない。

 花が舞い、道化は咲む。
 近付く『終わり』の予感は、憂鬱と高揚が入り混じる媚薬のような甘さで。

 それはまるで、蝶が蜜に誘われるかのように。


 全ての終幕は、この先に。



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 紫水晶に魅入り魅入られし・鷺谷 明(ja0776)
 夜明けのその先へ・七ツ狩 ヨル(jb2630)
重体: −
面白かった!:14人

紫水晶に魅入り魅入られし・
鷺谷 明(ja0776)

大学部5年116組 男 鬼道忍軍
二月といえば海・
櫟 諏訪(ja1215)

大学部5年4組 男 インフィルトレイター
あなたの縁に歓びを・
真野 縁(ja3294)

卒業 女 アストラルヴァンガード
JOKER of JOKER・
加倉 一臣(ja5823)

卒業 男 インフィルトレイター
真愛しきすべてをこの手に・
小野友真(ja6901)

卒業 男 インフィルトレイター
撃退士・
雨宮 祈羅(ja7600)

卒業 女 ダアト
暁の先へ・
狗月 暁良(ja8545)

卒業 女 阿修羅
輝く未来の訪れ願う・
櫟 千尋(ja8564)

大学部4年228組 女 インフィルトレイター
夜明けのその先へ・
七ツ狩 ヨル(jb2630)

大学部1年4組 男 ナイトウォーカー
By Your Side・
蛇蝎神 黒龍(jb3200)

大学部6年4組 男 ナイトウォーカー