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マスター:ガンマ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/05/13


みんなの思い出



オープニング

●護りたいものは
 アウルに覚醒したのは、多分小学6年生の時。
 僕は知っている。アウルの適正がある者は、久遠ヶ原学園に行った方がいい事を。
 その事を僕は駄目だとかは思わない。ちゃんと力の使い方を覚えて、撃退士になれば、皆を護る事ができる。
 分かってるし、知っている。
 でも、僕はアウルに目覚めた事をずっと隠していた。体育の授業もバレない様に手を抜いて、普段の生活で力を使わず、普通の人として生活してきた。
 だって、僕には家族がいて友達がいて、生まれたこの町が大好きで、この町に皆と一緒にいたかったから。
 だって、久遠ヶ原学園に行く事になったら、今通ってる学校にも町にも別れを告げなくちゃいけない。それは、長年の友達や家族と会えなくなってしまう事を意味する。
 一生会えない、一生戻れない、そんなワケじゃない事も分かってるけど、それでもほとんど会えなくなるだろう。まさか、皆に久遠ヶ原の近くに引っ越してなんて言える訳ないし。流石に我侭すぎるし。
 ……ちゃんとアウルを使いこなせて、皆を護れたら素敵だろう。それは分かる。
 でも、今のこの生活から、僕は離れたくなかった。僕一人が撃退士にならなかったからって、世界が滅んだりするだろうか? そんな訳はない。それに僕は喧嘩とか……戦いとかが、あんまり好きじゃない。戦いとか戦争は怖いと思う。怪我も痛みも怖いと思う。
 こんな事を誰かに言ったら、「臆病者」って笑われるだろうか?
 それでも僕は、昨日みたいな今日が、今日みたいな明日が、ずっとずっと続けばいいなって、思っていた。

 思っていた。
 僕は今。
 血を流して倒れている。

「け、健士!?」
 友達の声が聞こえた。幼稚園からずっと一緒の友達と、家が近所の友達と、中学から仲良くなった友達と。ああ良かった無事だったんだな……と僕は思った。
 いつもみたいに、学校の帰りに、帰路の公園でだらだら喋っている時だった。いつもと変わらぬ夕日を眺めて、いつもと変わらぬ僕らの町を眺めて、高校どうする? みたいな、漠然と進路の話をしたりして。そうしたらディアボロが現れたんだっけ。襲ってきたんだ。「やめろ」って僕は思った。友達の代わりに僕が傷を負って倒れていた。そうだ。そうなったんだった。お腹が裂けたらこんなに痛いんだなぁ。血ってこんなにあったかいんだなぁ。
「逃げて」
 血を吐いて、地を這って、僕は友達に言う。背後にディアボロの気配を感じながら。
「急いで、逃げて」
 蹌踉めきながら僕は立ち上がる。傷を治すのが、僕はちょっぴり得意だった。
「ちょっとだけ頑張ってみる。だから今の内に」
 なんて言ったけど、こんな深い傷を治した事なんかなくって。治りきっていないし、ふらふらするし。「すぐ助けを呼んでくる」と心配を押し殺した友達の声が聞こえた。足音が遠ざかる。それを追いかけようとしたディアボロの前に、僕はまた立ちはだかった。
 多分、僕は死ぬんだろう。
 と、思った。
 怖い。

●スクールのルーム
「諸君、急ぎの任務だ。ディアボロが2体出やがった。人を襲ってる。諸君の任務はディアボロを討ち、襲われている者を救出する事だ」
 急ぎだといった文字通りに、教師棄棄は集った生徒に一息でそう言った。
「どうも襲われている者はアウル覚醒者らしい。襲われて覚醒したかそれ以前に覚醒してたかまでは知らんが、丸腰で力の使い方を知らんであろう以上は、言っちゃ悪いが『ちょっと頑丈な一般人』みてぇなもんだ。早急に救助する必要がある。
 ……久遠ヶ原に連絡してきた中学生曰く、『大事な友達』なんだそうな。俺が食い止めてるから今の内に、って感じで逃がしてくれたんだとよ。連絡を寄越して来た者の保護は既に済んでいるから、諸君は撃退と救出に専念してくれたまえ」
 さぁ、今日も誰かの日常を護る為に。
 夕紅の中、撃退士達は頷いた。


リプレイ本文

●ゆうやけこやけ01
 綺麗な夕焼け。不気味な化物。赤い光。血溜まりの少年。
「友を助ける為に我が身を盾に、で御座るか。その大事な友達、死なせる訳にはいかぬで御座るな……!」
「身を呈して他人を助ける……馬鹿な真似ですが……ならばこそ、余計気合をいれて助けなきゃいけませんね」
「えぇ。皆まで言う必要は無いでしょう。すぐに助けましょう」
 転移装置によって到着した撃退士の気持ちは一つだった。エルリック・リバーフィルド(ja0112)、橋場 アイリス(ja1078)、長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)、3人が同時に光纏を行う。
「橋場さんはあちらを。わたくしはこちらを狙いますわ」
「わかりました。そちらはお願いします」
 二体のディアボロ、ドリルイヌとチェーンソーネコへそれぞれ飛び出したのは金と銀、みずほとアイリス。犬へは金が。猫へは銀が。
 突撃の勢いはそのままに。アイリスが抜き放った白黒の双剣が烈風の如くチェーンソーネコへ襲い掛かった。
 突撃の勢いはそのままに。右拳に込めた全アウルを爆発させるみずほのストレート『黄金の拳』が、金色の軌跡を描いてライフル弾の如くドリルイヌに突き刺さった。
 同時、かっ飛ばす8m。
「わたくしのリングはあちらですわ! さっさとお行きなさい!」
 ディアボロを殴り飛ばしたみずほが凛と声を張った。一方でアイリスは健士の傍らに立ち敵の射線を塞ぎつつ、少年の様子を確認した。息はあるようだ。意識も微かにあるらしい。
「よく頑張りました。ここからは撃退士に任せて治療に集中してなさい」
「……撃退、士?」
「はい。久遠ヶ原学園より出動しました」
「そうか……あー、良かったぁ……」
 はぁーっ、と安堵の大きな息。全身ひどい傷だが、それは本当にじわじわとだが治りつつある。アイリスはそれに少し驚きを見せた。 
「一般人と対して差はないとはいえ、回復はできるのですね」
「得意なんです。僕、こういうのしか、できないけど……」
 目が合った少年が力なく微笑んだ。
「俺に構わず先に行け、という台詞は、『死亡フラグ』と云うのだろう?」
 最中の声は、レアティーズ(jb9245)のもの。尊大に眼鏡を押し上げ、広げた翼により上空から全てを見下ろしつつこのドヤ顔である。人間界の知識なんて把握済さ、すごいだろう、ドヤァ……。
「そういう意識の高い台詞は、私のように実力をつけてから吐くべきだな」
 このように、とその手に生み出すのは五連の竜巻。手近なディアボロに発射する。終始尊大、格好をつけた態度。でも本当は友達なんていないボッチなのだ。だからもしレアティーズが健士と同じ状況に立たされたら、迷わず他人を囮にして逃げただろう。
(弱っちい人間の分際で、自らを犠牲にしてまで他人を助けるなんて馬鹿な奴……)
 心中で皮肉の溜息。決して、決して決して決して決して友情なんて羨ましくなんてないんだからね! 勘違いしないでよね!
「頑張ったね……、君は……俺達が守るからね……!」
 その間に、更に健士の護衛に付いたのは双城 燈真(ja3216)である。
「あ……、俺はハーフだからね……? 悪い天使と悪魔じゃないから安心して……」
「大丈夫……」
 掠れた声だが健士は撃退士に信頼の眼差しを向けていた。となれば、その無垢な信頼を裏切る事はできない。
(友達を守る為に残る……、そんな事易々と出来る事じゃないよね……。でもそんな勇気を持つ人を見捨てるなんて行為はしたくない……!)
 脳裏を過ぎる惨劇の記憶。救えなかった幼馴染。燈真は拳を握り締める。
(もう……、昔の俺とは違うんだ……!)
『よく言ったぜ燈真!』
 脳内で響いた声は燈真の裏人格、翔也のもの。頷き、燈真は仲間へ視線を送った。護衛の壁は十全。健士を安全圏まで下がらせねば。
「任せて」
 その役を買って出たのは、夕日の光の中に稲穂色の髪を靡かせる魔女、フレイヤ(ja0715)。『黄昏の魔女』を名乗る彼女にとって、夕紅に彩られたここは正に舞台として相応しい。悠然とした笑み――だがそこに隠されている本心は、

 未来あるショタを助ける
  ↓
 ショタが私に惚れる
  ↓
 ショタが成長してイケメンになる
  ↓
 結婚

(完璧な逆光源氏計画だわ……)
 そんな割とアレな内容なのだが、パッと見では分からないので良しとしよう。阻霊符を展開し、フレイヤは健士を抱き上げる。飛び下がる。ディアボロから距離をとる。なるべくうんと。そして木の影、ディアボロから見えない位置の柔らかい芝生の上に彼を下ろした。
「よく頑張ったね、健士君。もう怖くないよ」
 健士の顔を覗き込み、汗の浮かんだ額を優しく撫でてやる。そのまま伸ばした両手で、彼をぎゅっと抱き締めた。怖かっただろう、たった一人で。怖かっただろう、あんなバケモノを目の前にして。怖かっただろう、死ぬかもしれない目に遭って。怖かっただろう、友達を失うかもしれない可能性に晒されて。
「良かった……」
 伝わる体温、助かったという心地。生の実感。健士の長い吐息。うん、とフレイヤは頷き、もう一度彼の頭を撫でると箒片手にさっと立ち上がる。
「健士君。今までの自分の世界を壊すのが怖いのは当たり前。だから私はムリに撃退士になんてならなくても良いと思う。健士君が戦わなくたって他の誰かが戦ってくれるよ」
 視線の先、そこには不気味な駆動音を鳴り響かせるディアボロと、それに臆す事無く立ち向かう撃退士達。
「私だって本当は天魔と戦うのは怖いし、傷付けば痛くて泣きそうになる。こんな想いを健士君にはして欲しくない。でもその反面、誰かの為に戦う事で誰かを笑顔に出来る喜びを健士君に知って欲しいんだ」
 この事は皆にはナイショね、と苦笑した。フレイヤは『いずれ訪れるであろう世界の終焉を食い止めるため降臨した女神の生まれ変わり』、なんかではない。田中良子という名前の極普通の女の子。だから戦いも負傷も死も全部全部怖いのだ。本当は。今だってドレスの下の足は震えそうになっている。
 それでも。
 フレイヤは一歩、戦場へと。
「もし健士君が学園に来る事があれば連絡頂戴。私は貴方の友人として、いつでも迎えてあげるから――それじゃあ、いってくるね! そこで皆のこと応援してて頂戴!」
 颯爽、麗美な蒼のドレスを翻し。箒を振るえば、使い魔の猫。黄昏の光に微笑みを浮かべ、魔女は高らかに謳い上げた。

「――さぁさ我が名は黄昏の魔女! 逢魔時こそ我が時間! 躾のなってない子猫と子犬は何処かしら?」

●ゆうやけこやけ02
 健士は戦闘圏外に離脱し、その護衛も万全であれば、後は全力を以てディアボロを討つのみ。
「やぁやぁやぁ遠からん者は音にも聞け! 近くば寄って目にも見よ! これこそ久遠ヶ原学園が鬼道忍軍、エルリック・リバーフィルドよ!」
 忍びを捨てて大胆不敵に名乗り上げたのはエルリック。戦闘専念。狙った対象に付与するバッドステータスではなく、己自身にかけるグッドステータスである『注目』は、周囲全ての敵に作用する。ドリルイヌとチェーンソーネコの攻撃の矛先がエルリックの方に向いた。
 咆哮と駆動音と。彼女の周囲に目掛けて無差別に巻き込む様に、正に『手当たり次第』といった感じで振り回されたドリルとチェーンソー。けたたまし過ぎる爆音。ぐわんぐわんと騒音。
 その不快感に、或いは肌を抉り切られる感覚に顔を顰めつつ、アイリスは剣を天に掲げた。
「切り裂く、というのは……『こう』ですよ」
 頭上に展開するのはアウルで作り出された真紅の剣列。剣ノ雨<セヴィア・プロアイェ>。それはその名の文字通り、雨の如く絶え間なく斬撃を降り注がせる。赤い色。赤い軌跡。流血の如し。
「さあ、ここからが本番ですわ!」
 みずほは己の拳を搗ち合わせた。ぶつっ。脳内の中で何かが弾ける。赤く輝き血走った目、フーッと息を噴出す剥き出した歯列。清く正しく品のあるボクサーであるみずほには似つかわぬ――否、みずほの様な拳闘士であるからこそ、それは必然的に存在しているのだ。即ち、Killer Instinct<殺戮衝動>。暴走である。恐ろしい、出来る事なら使いたくない、とみずほ自身は思っている。けれど。己の都合で全力を出さなかった所為で誰かが傷ついたら? その方が――嫌だ。
「ガァあッ!」
 破壊的なスピードでイヌへ間合いを詰めるみずほ。すらりと長い手の、そのリーチで『助走』を付けて放たれるのは暴力的なまでの右ストレート。爆発する黄金のアウルが網膜を焼く。力の限り殴り飛ばす。吹き飛ばされたイヌが木にぶち当たり、勢いのままにその太い幹をへし折った。ばぎっ、ばさばさ。落ちる枝葉。
「さて、逃げられては困るからな。まぁ所詮は野良ディアボロ風情、逃げるほどの知能があるとは思えんが」
 上空から戦況を見守るレアティーズが皮肉る。風塵のリングで射程外から攻撃する予定だったが、ここまでディアボロの攻撃がきて焦った。ビビッた。というのは心の中だけにして、外っ面の彼はあくまでも常通りの傲慢さ。ここに攻撃が届いたとしても下りる気にはならなかった。『上』はいい。どんなに偉くてどんなに強い奴だって、『見下せる』。このちっぽけな自尊心を慰め程度に満たしてくれる。
「ここは通さない……!」
 少年は、護る為の剣。暴風の様に襲い掛かってくるドリルとチェーンソーが燈真の体に鮮血の花を咲かせても、彼は一歩も退かなかった。その手に持つ白い刃とチェーンソーがぶつかり合う。凄まじい火花。視界を焼く。拮抗。しかし踏み止まる足がジリッと下がる。
「くっ……!」
『あ〜! 防戦じゃなくてハデに暴れたいぜ! だが燈真には逆らえないからな! なぁ?』
 脳内で、まるで燈真を挑発するような翔也の言葉。
『燈真も力の発現がもう少し早ければウググ!』
 うるさい、と精神攻撃。もう一人の自分を黙らせると、燈真は剣を持つ手に力を込め直した。
「その物騒な武器……、切り落としてやる……!」
 払い除けると共に、一閃。白の剣閃。ディアボロのチェーンソーが一つ、刎ね飛ばされる。
 が、凶器の触腕はうじゃうじゃ大量に蠢いている。それは撃退士の装甲すら抉り穿ち切り裂き、弱くなったそこへ容赦のない乱れ切りを放ってくる。伸縮するそれの射程は長く、範囲も広い――構えた箒で防御しながら、フレイヤは常に後方彼方の健士に気を配っていた。彼のところまで今のところ攻撃は届いていないが、もし届いた場合はこの身を盾にする事も厭わない。我が身は省みない。
「全くうるわいわね……ご近所迷惑よ!」
 振るう箒。丸々と太った目つきの悪い黒猫の幻影。どこなく使用者をバカにしている気がするそれがぶにゃぁと鳴いて、同じネコへと襲い掛かった。
 激しい戦闘。されどエルリックの体に付いた傷は驚異的なまでに少ない。襲い来る攻撃を、まるでひらひら宙を舞う胡蝶の如く掻い潜る。光纏の狐九尾が彼女の動きに従って夕日の中で棚引いた。
「止まって見えるで御座るよ!」
 チェーンソーネコの四肢の下を滑り通り抜けながら、振るう双剣でそこを斬り付ける。同時にその影すらも縫い止め、ディアボロの動きを束縛した。
「アイリス殿! 今で御座る!」
「……了解です」
 応えた時にはもう、アイリスはチェーンソーネコとの間合いを零にしていた。まるで影の如く。心眼・真。それは百戦錬磨の超越した戦闘センス。ただ『殺傷力』に特化した動き。
 冥福も祈らない。声も発しない。表情を歪めたり激する事もなく。くしっ、と二本の剣をチェーンソーネコの首に突き刺した。そこからは容易い。文字通り赤子の手を捻る様に。僅かな動作だった。アイリスがディアボロの首を刎ね飛ばしたのは。
「残り一体、か。勝ったも同然だな」
 味気ない最後だ。レアティーズが風塵のリングを翳した。
「最後まで、全力で行くぞ!」
 雪村を構えた燈真が攻勢に出る。
「お仕舞いにしましょう。ご退場願うわ!」
 ひゅるん、とフレイヤが箒を奮った。
 隙間無き三連続の攻撃。立て続けにヒットするそれがドリルイヌを強烈に押しやった。そして――その目の前には、ファイティングポーズを取ったみずほが仁王の如く立っている。唸るディアボロがみずほに襲い掛かった。が、八方から迫るドリルはその全てがパンチで弾かれ流される。パーリングだ。
「ふふ、ふらついていますわね。このラッシュ、耐えられるかしら?」
 攻撃の最中は防御姿勢は取れない。つまり今ドリルイヌはガラ空きだ。ざんッ、と懐に踏み込む一歩。みずほは全身のアウルを一気に燃焼させる。外すリミット。噴出したアウルが蝶の群となって周囲を舞うその最中、中心で、みずほが繰り出したのは拳の乱舞。Butterfly Kaleidoscope。万華鏡のその名の通り、幾重にも閃く殴打ラッシュ。力強くも、拳と蝶の舞は破滅的に美しい――。
「『誰かを護る為に戦う事』。それは貴族として当然です」

 フィニッシュ。

●ゆうやけこやけ03
 ディアボロが倒れ、一帯には夕方に相応しい静寂が戻っていた。
 みずほは健士の傍にしゃがみ込む。
「具合は如何ですか?」
「死にはしないと、思います」
 最初に見た時よりは顔色はいい。が、それでも自力で立ち上がるのは無理そうだ。
「たぶんこのままだと健士君は天魔に狙われて周りの人を巻き込むことになる……、俺自身も似た境遇で大切な友達を巻き込んで死なせたから……」
 と、みずほの隣に燈真がやって来る。健士の目を異色の瞳でじっと見、言葉を続けた。
「離れたくないのはわかるけど……、それで失ったら一生後悔する事になる……。俺は守る為の剣になるのを選んだ……、君はどうする……?」
「あなたの言ってる事は、正しいと思います。でも、もし久遠ヶ原学園にいたら、僕は『あの時、あの場所に、友達と一緒に』居なかった。護れてなかったかもしれない。……なんて、『もしも』の話ですけどね」
 難しいよね、と空を見上げたままの声。
「僕、今、中三なんです。勝手なワガママなのは分かってるけど、中学にいる間だけは、生まれて育ったこの場所に、僕はいたい。その間にまた天魔に襲われたら、皆さんに頼る事になっちゃいますけど……」
 それは揺るがぬ意思なのだと、燈真は理解した。故に、「そうか」と。否定はせず、それ以上の言葉もかけず、ただ、微笑んだ。

 その後、健士はアイリスが手配した救急車に運ばれてゆく。
 丁度その時に、エルリックによって健士の無事の連絡を受けた友人達が息を切らせてやって来た。
 馬鹿野郎、心配した、無事でよかった、そんな声。その最中に、担架の上の健士が撃退士へ目をやった。小さな会釈。フレイヤはニコリと微笑み手を振った。レアティーズは視線を逸らし、知らん振りをした。
 そして遠ざかって行く救急車のサイレンに紛れて、天使は溜息と共に呟いたのだった。
「……やれやれ、手のかかることだ」


『了』


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:15人

銀と金の輪舞曲・
エルリック・R・橋場(ja0112)

大学部4年118組 女 鬼道忍軍
今生に笑福の幸紡ぎ・
フレイヤ(ja0715)

卒業 女 ダアト
踏みしめ征くは修羅の道・
橋場 アイリス(ja1078)

大学部3年304組 女 阿修羅
夜に光もたらす者・
双城 燈真(ja3216)

大学部4年192組 男 アカシックレコーダー:タイプB
勇気を示す背中・
長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)

大学部4年7組 女 阿修羅
能力者・
レアティーズ(jb9245)

大学部5年308組 男 ダアト