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マスター:ガンマ
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/03/14


みんなの思い出



オープニング

●In The 家庭科室
 久遠ヶ原学園、とある家庭科室。
「完成したぞ……遂に……!」
 堕天使クリスティーナ・カーティスはいつになく昂揚した表情であった。その目はキラキラと光を発しているようで、笑みは抑えられずには居られないといった様子ですらあった。
 そんなクリスティーナの目の前に、巨大なプリンがある。
 そんじょそこいらの『巨大』なんかじゃあない、バケツどころでもない、本当に巨大で巨大な巨大プリンである。自らの重みで崩壊するんじゃないのかとかそんなツッコミはさておき――きっとクリスティーナの努力と友情で勝利したんだきっとそうだそういうアウルパワーでどうにかしたんだ奇跡なんだ――それは本当に巨大だった。
 消費した『プリンのもと』は数知れず。けれどクリスティーナは作り上げたのだ。この夢の城を。
 そう――クリスティーナには夢があった。

「一度でいいから物凄く巨大なプリンを食べてみたい」

 それが今、叶わんとしている。
 浮き立たざるを得ない。達成感、夢、浪漫、冒険心、トキメキ。あらゆる感情が天使の心臓を早打たせる。

「では……いただきます!」


●で
「一人では食べ切れなかったと」
 家庭科室にやってきた棄棄の目の前には、机に突っ伏し死んだようになっているクリスティーナと全然減ってないプリンの姿があった。
 全く、変なところで無邪気というか無垢というか。教師は苦笑を浮かべてクリスティーナの頭を撫でる。
「しゃあねぇ、俺も手伝ってやるよ」


●で
「くいきれませんでした」
 家庭科室にやってきた撃退士の目の前には、床に倒れて死んだようになっているクリスティーナとゾンビの様に項垂れた棄棄と全然減ってないプリンの姿があった。
「すいません手伝って下さいおねがいします」
 と、甘味の飽和で吐き戻しそうなゾンビ達はそう告げた。


リプレイ本文

●撃退士VSプリン01
 デェン。それはギガサイズプリンだった。
「あまーいぷりん、いただきまーすなのー♪ かがり、あまいの、だーいすきなのっ」
「せっかくスイーツとしてこの世に生を受けた(?)からには、美味しく食べてあげないと、ですねっ!」
 スプーン片手にハシャぐのは甘いの大好き末摘 篝(jb9951)とシャロン・エンフィールド(jb9057)。
「プリンお腹いっぱい食べて報酬貰えるとか、それなんて天国? 大食いなら自信あるの。任せておいて♪」
 蓮城 真緋呂(jb6120)はプリンを見――見上げ――遠い目になった。
「わあ……おおきい」
「プリンよく崩れないな……」
 真緋呂の棒読みにエルム(ja6475)も遠い目。
「一応二人で食べたはずなのに、全く減ってる形跡が無い辺りが少し怖いわね」
「食べる前に申請してたら、ギ■スブックにも載っちゃったりしたんですかね? そんなことしてたら賞味期限が過ぎちゃうかな」
「これは、本気モードで逝かn……もとい、行かねば」
 考え込むエルムに、ぐっと意気込む真緋呂であった。
「クリスたんってば、こんな可愛い夢を見てたのか。ホントに愛いヤツだなぁ」
 一方でテト・シュタイナー(ja9202)はグッタリしているクリスティーナをナデナデしてホッコリしていた。
「にしても。これ、完全に何かに挑んじゃってるよな。バベルの塔か? 天にまで登んの? 魂逝っちゃうぜ?」
「うぅ……私は無力だ……」
 更に項垂れる天使。シュルヴィア・エルヴァスティ(jb1002)がその背をそっと撫でて微笑んだ。
「クリス……気に病む事ないわ。こうゆうの夢見ない人は居ないもの。――でね? クリス。ちょっと質問。クリスのお腹は、どこかしら?」
「ここだ」
「えぇ、そうね。それじゃあ、胃は……ここら辺かしら? ……これぐらいの大きさね」
 まるで母が子をあやすような優しい声音で、笑んだシュルヴィアはクリスティーナの腹部に手を乗せる。
「クリス……見て? あのプリン。大きいわね。ね、貴女の胃より、ずっと、大きいような気が、するのよ……?」
 終始笑顔。言葉と共に天使の鳩尾をググッと地味に圧迫する手。変わらぬ笑みが逆に怖い。
「うぐっ!」
 逆流しかけて思わず口に手をやるクリスティーナ。シュルヴィアは、やっぱり微笑んだままだった。
「クリス? 今回の反省点を、六百字詰原稿用紙に書いて、明日私に提出する事。いいわね?」
「えっ」
「い、い、わ、ね? ク、リ、ス?」
「ハイ……」
 圧迫されて逆流しそうな気配と戦いながらクリスティーナは弱々しく頷いた。するとようやっとシュルヴィアは手を離し。
「よろしい。さ、プリンパーティーの始まりね」
「よーし! 頑張れ諸君!」
 遠巻きから完全に外野になろうとしていた棄棄が檄を飛ばす。シュルヴィアは振り返る事なくサラリと言った。
「貴方も食べるのよ」


●撃退士VSプリン02
 先ずは普通に食べてみよう。
「プリンを食べよう……以上でも以下でもないわね」
「……本当に大きいですね」
 スプーンではなく最早おたまでプリンを掬いながら、シュルヴィアとエルム。
「それでは……いただきます」

 ぱくぱく、もぐもぐ。

「へぇ、けっこうおいしいですね」
「……うん。普通にプリンね」
 ぷるんと蕩ける甘さ。エルムは目を瞬かせ、真緋呂はゆるりと頷いた。まぁ、甘い。Theプリン。ぶっちゃけ他にコメントが難しい味。
「わがしもだいすきだけど、ようがしもだいすきなのっ」
 底抜けの甘味好きである篝は大喜び。
「ぷるぷるなのー」
 スプーンで突っつけばふるふるぷるぷる。そうやって遊びながら、笑顔の篝はどんどんプリンを食べてゆく。
 シャロンは甘味との真っ向勝負だと、一生懸命プリンを食べる。
「甘い物は別腹って言いますけど、やっぱり最初から甘い物だけだと発動しないんでしょうか?」
「先生は甘いの好きだけど発動しなかったぜ……」
 ぐったり、応えた棄棄は物凄くチマチマ食べてゆく。
「うん、まぁ、プリンね」
 シュルヴィアが口に運ぶ量も多くはなかった。元来小食である彼女は余り戦力にはなれないかなと思いつつも、コーヒー片手にマイペースに食べている。

 そんなこんなで、ぱくぱく、もぐもぐ。

 最初の内こそ「美味しいねー」なんてプリン女子会は楽しげな雰囲気であったが。
「……プリンってさ、こんなにくどく感じる代物だったっけか?」
 開始15分と経たず。スプーンを置いたテトは重く息を吐いた。
「ごめん、飽きる」
「さすがに飽きてきますね」
 テトの言葉を切欠にエルムもスプーンを置いた。他の面子も手が止まり気味で会話の量も減ってきた。
「やっぱり、どんなに美味しいものでも一つの味がずっとっていうのは良くないですよね」
 シャロンが苦笑を浮かべる。
「それでも、プリンなんですからやっぱりプリンとして食べてあげたいと思います。という訳で――プリンアラモードとかどうでしょう」
「プリンアラモード?」
 顔を上げたクリスティーナにシャロンが頷く。
「そう。生クリーム乗っけたり、フルーツで飾ったり!」
「更に甘みを足す作戦だと……!? だがこのままただのプリンを食い続けるのも無理な話、と」
 テトは頷き、クリスティーナは目を輝かせる。
「そんなこともあろうかと!」
 待ってましたとばかりにエルムが身を乗り出した。
「ホイップクリームを持ってきました! コレをかければ、またおいしく食べられるハズ」
「かがりもみずがしもってきたの! あらもーどするなの!」
 続いて篝が取り出したのは、多量かつ多様な果物が入った籠だ。
「うー! こうばいさんで、かごにはいってたなのー」
「篝ちゃんそれお見舞い用……」
「え? 知らないなの」
 棄棄の言葉に無邪気100%。

 という訳で、皆でプリンに果物を飾り、クリームをホイップし。
 可愛くて目にも楽しいプリンアラモードができあがり!

「うー♪ くりーむふわふわで、みずがしがすっぱあまい、なのー。こっちのはまったりあまい、なのー。こっちはしゃくしゃくあまい、なのー」
 あまいあまい、と篝はほっぺを真ん丸にして幸せそうだ。
「ホイップと果物で豪華になるわねぇ」
「うん、オイシイですね」
 シュルヴィアとエルムは頷き合い、プリンアラモードを頬張っている。しかし棄棄とクリスティーナはほぼ手をつけていない状況のようで――エルムは二人へ向くと。
「棄棄先生やクリスティーナさんもいかがですか? 美味しいですよ」
「「いや、ちょっと……」」
「ああ、クリーム不足でしたか、すみません」
 イジメではなくマジメである。二人のプリンアラモードにホイップどーん。阿修羅の物理パワーを用いて全力で絞る。
「かがりのみずがし、わけてあげる、なのー。がんばるなの!」
 そこへ篝が更に果物をどーん! プリンアラモードのアラモードが完成だ!
「プリンパフェなんかもいいかもしれません。パフェにくっついてるウェハースとかって甘い物がくどくならないように口の中をリセットするものだそうですから、こういう時には良い筈です、うん」
 更にシャロンがウェハースをどーん! 最早これはプリンアラモードアラモードパフェ! 皆の力が一つになった!
「あ、りがとう諸君っ……!」
「いただき……ます」
 棄棄とクリスティーナの目から光が消えた。きっと空腹時なら凄く美味しかったろうに……。

 5分後。

「もう、飽きました。飽きたというか、おなかがいっぱいになってきました」
「なかなか、思ったよりも手強くなってきました……」
 エルムとシャロンがグッタリと項垂れた。
「け、けどそれでも、甘味として食べてあげたい、です、よね」
 力なく、突っ伏したシャロンが呟く。さてどうしたものか、これ以上甘みを足すのは厳しい。なので満腹な体に鞭打って、シャロンはクレープ生地を作り焼き始めた。
「プリンクレープで、味が中和される方向で頑張ってみたいと思います……」
 死んだ目と死んだ声。飲み物が欲しいけれどお腹に余裕を作る為、口を湿らし味を洗う程度に留める。
「勝負はこれからです」
 エルムもスプーンをしっかと離さず、新たに盛ったプリン皿を己の前に引き寄せた。

 撃退士のペースは完全に落ちきっている。

 そこでテトと真緋呂が立ち上がった。
「よし、いい機会だ。ここで、クリスたんに面白い事を教えてやろう」
 そう言うテトの手には、醤油!
「プリンにッ! 醤油を足してッ! ウニにするッ!」
「ええ、単調な味で飽きてきたら、一味加えて味に変化を。それがこのウニ作戦よ」
「あの高級食材の味を、お手軽な方法で楽しめる! すげぇ!」
 テトと真緋呂の言葉にクリスティーナは俄かに信じ難いといった様子だった。その目の前で二人はプリンに醤油を垂らしズッギャーンとウニを練成する。
「いける。こいつなら、まるでウニ丼の様に掻き込める気がするぜ!」

 それでは実食!

「ウニの味しない……」
 どんより呟いた真緋呂の言葉通りだった。無理でした。
「よく考えたらさ。ウニも、たくさん食えるような味じゃないよな……」
 テトは我に返って遠い所を眺めていた。しかしプリンは、かなり量を減らしたもののまだ残っている。
「こうなったら。舌に残る甘さを消し飛ばし、食欲を呼び覚ますアレを使うしかねぇか」
 諦める訳にはいかない、という訳でテトが鞄から取り出したのは、最終手段、超激辛デスっぽいソース!
「これは、超激辛マニアである俺様ですら躊躇する最終手段。良い子は真似しちゃダメだぜ?」
 言いつつ換気扇を回し、その下で蓋を開ける。真の激辛マニアはマナーをしっかりと守るのだ。これ匂いヤバイし。
「さぁ、逝くぜ!!」

 3、2、1――逝った!

「  」
 硬直。
「ぎゃー!」
 火を噴く。
「ウワー!」
 悶絶。
「  」
 3分静止。
「ウゥワアァアァアア」
 絶叫しつつ飛び起きる。
「お、OK、生まれ変わった気分だ!」
 涙目千鳥足で戻ってくるテト。「大丈夫か!?」とクリスティーナが思わずライトヒール。
「ああ、頑張るぜクリスたん。可愛い女の子の為なら、俺様は――!」

 ぱたり。

「シュタイナァアーーー!!」
 慟哭するクリスティーナの腕に抱かれ、テトは笑顔で力尽きた……。
「こうなったら、かがりもさいしゅーおーぎをつかうなの」
 と、散ったテトに引き続き篝も最終手段の発動である。取り出したのはタッパー一つ。
「かがりね、とっておきー、を、りょかんからもってきた、なの! じゃーん!」

 \はまぐり/

「どんな方法が来るのかと思えば予想の斜め上だったわ」
 真緋呂が神妙に頷いた。早速ご馳走になろうと一つ手に取り。
「……うん、はまぐりだわ」
 せやな。
「かいがらは、あとでかがりにかえして、なのー!」
 妖怪・貝児は貝殻大好き。ちょっとプリンそっちのけではまぐりを食べ始めたが篝なので許す!

「進退窮まりました……」
 一方。もうおなかいっぱいですとエルムは動かなくなってしまった。こんな時に死活すればまだ食べれたのだろうか。尤も未習得なので試せないが。万事休すかと諦めかけたが、ここでエルムは弾かれた様に顔を上げ。
「たくえつしたぎのうを持つ棄棄先生、私に妙案があります。運動したら、おなか減るんじゃないかな?」
「OKそれじゃスクワットだ!」
「はい!」

 イッチニ!
 サンシ!
 ゴォロク!
 シチハチ!

 3分後。

「食べた後に動いたら横っ腹が……」
「急に動いたから吐きそう……」
 蹲るエルムと教師。エルムは歯を食いしばって這う様に立ち上がるとスプーンを握り締めた。
「こうなったら無心で食べるしかないわ……!」
 雑念を捨てて、ただひたすらプリンを食べる! 食べる! 食べる! 死んだ魚の目になってひたすら食べ続ける! なんという勇姿!

 その間に真緋呂は他の調味料を試す事にしていた。
「きな粉を混ぜるとわらび餅の味がするんですって」
 雰囲気は悪くない。ぱくりと一口。
「……実物より甘い、かなぁ? でも醤油より美味しいかも」
 頬張りつつ手は止めない。カラメルソースに黒胡椒とバルサミコ酢を混ぜると、徐に横腹を痛そうにしている教師へ笑顔で差し出して。
「意外に合いますよ。甘さに飽きたらいいかもしれません。棄棄先生、どうですか?」
「ええと! 他にもレシピ教えてホシイナー!」
 苦し紛れに話題をそらす棄棄。
「食感を変えるとかですかね。トーストにプリン乗せて焼いてプリントーストにすれば温かいプリンが美味しいですし、逆に凍らせてジェラード風も良いかも。あとは牛乳やコーヒーに入れて混ぜたりで、プリンシェイク。飲むプリンですね」
 くるり、真緋呂は笑顔でクリスティーナへ向いた。
「カーティスさんは全部試してね☆」
 天使の動きが一瞬止まった。そう、アレンジにも問題はある。明らかに量が増えるという事だ。
(まあ私は飽きなければ食べ続けるので、残りは頑張るから遠慮なく散ってね!)
 真緋呂ちゃんマジ鬼畜。
「こういう食べ方もあるのねぇ。新鮮だわ」
 さまざまな食べ合わせに興味深そうにしつつ、シュルヴィアは皆の料理を味見していた。「で」と振り返る先には、屍となった棄棄の姿が。
「そこのゾンビ? 調子はどうなの? 胃薬いる? それともコーヒー? 水かミルクの方がいいかしら?」
「今は胃に何も入れたくないです……」
 棄棄が机に突っ伏したまま応えた。そう、と隣に座るシュルヴィアはプリンシェイクを飲んでいる。
「貴方も大概、世話焼きね」
「昔なら食えた……」
「ああそう。ま、嫌いじゃないけど。素敵なんじゃないかしら。あの子も、見ていて飽きないわ。あの行動力も、尊敬できるもの」
 でも、とシュルヴィアは一息吐き。
「貴方はもう少し、あの子への教え方を考えなさい」
「でも、こうやって皆とワイワイ出来る機会ができただろ?」
 顔を上げて悪びれずに笑う男。すると女も口角を吊り、
「カッコつけるのはプリンを完食してからにしてね?」
「はい……」

 しかし、だ。

 全員ギブアップ状態である。
 さてどうするか。残りは僅かではあるけども。
「そうね、これくらいの量なら凍らせてカタラーナっぽくしましょ。夜のデザートね」
 シュルヴィアの案に、もう何も食べられない一同は頷いた。凍らせて各自ちょっとずつ持ち帰れば、遂に皿は空っぽに!
「長い……戦いだった……」
 そして限界を超えたクリスティーナが力尽きる。シャロンもぐったり、もう動けない。
「ぁぅぅ、流石に食べるのが好きでもこの量は大変でした。甘い物は好きですけど、これだけ食べたら今日はもう甘い物はいいかも……」
 いやはや食べに食べたりプリンばかり――しかしシャロンが次の日には別腹だと甘い物を食べ始めるのは、また別のお話。
「それじゃー皆で」
 棄棄の声に皆が手を合わせた。

 ごちそうさまでした!



『了』


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:12人

穿剣・
エルム(ja6475)

卒業 女 阿修羅
爆発は芸術だ!・
テト・シュタイナー(ja9202)

大学部5年18組 女 ダアト
さよなら、またいつか・
シュルヴィア・エルヴァスティ(jb1002)

卒業 女 ナイトウォーカー
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
リアンの翼・
シャロン・エンフィールド(jb9057)

高等部3年17組 女 アカシックレコーダー:タイプB
『魂刃』百鬼夜行・
末摘 篝(jb9951)

中等部3年1組 女 陰陽師