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マスター:牛男爵
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
参加人数:10人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2016/02/29


みんなの思い出



オープニング


「終わった……今年のバレンタインデーは終わってしまったのね……」
 学園某所の購買で、店長レジ子はガクリとカウンターに突っ伏した。
 2016年2月15日・月曜日。時刻は午前0時。
 静かな店内には数人の客がいて、BGMには流行りのアイドルソングが流れている。
 購買にしては比較的──というより、無駄に広い店舗だ。平均的なコンビニの倍ぐらいスペースがある。

「どうしたのよ、グッタリして。そんなんじゃ客が逃げるわよ?」
 自動ドアをくぐって話しかけたのは、矢吹亜矢。
 自称『学園最強の忍者』だ。
「聞いて、亜矢。今年のバレンタインが、ついさっき終わったのよ」
「それがどうしたの? あ、炒飯まんひとつちょうだい」
「そんなものよりチョコを買って行って!」
「え? あたし今、炭水化物が食べたい気分なんだけど」
「大丈夫! チョコは糖質のかたまりだから炭水化物と同じよ!」
「そうなの? でもチョコレートなんて食べた気にならないし……」
「だったら1ダースぐらい食べればいいでしょ? いえ食べるべきよ!」
「なんでそんな必死なのよ……。中華まん買いに来た客にチョコレートを押し売りするって、おかしいでしょ」
 よりによって亜矢に『おかしい』とか言われるとは、相当である。
 だが、これには事情があるのだ。

「ちょっと、こっちに来て」
 レジ子はカウンターを出ると、お菓子コーナーのほうへ来るよう手招きした。
「とりあえず炒飯まん売ってほしいんだけどさぁ……」
 と言いながら、レジ子の言うとおりにする亜矢。
 するとそこには、山のように積まれたチョコレートタワーが。
 ポップには『新商品! 海産物シリーズ登場!』の一文。
「なにこれ……。スルメ味とか、イクラ味とか……こっちはシメサバ味? うわ、まずそう」
「決めつけないで! 実際に食べたらおいしいから!」
「でも売れ残りでしょ、これ全部」
「そう。しかもこれだけじゃないのよ。倉庫には120個入りの段ボールが10箱ぐらい残ってて……」
「はぁ!? バカじゃないの!?」
「でも食べてみておいしいと思ったの! これは売れると思ったのよ!」
「あんた前にも、イクラ味のアイスとか、海老酢味のビールとか仕入れてたでしょ。おなじパターンじゃない」
「あのアイスだって本当はおいしかったのに……」
「ないない。あんたの味覚、どうかしてるわよ」
「でも需要があるから商品化されたわけでしょう? この海産物チョコも同じよ。みんな第一印象だけで、まずいって決めつけるんだから。そういうのよくないよ? 撃退士なら冒険精神ってものが必要じゃない? 亜矢も一個でいいから買って食べてみてよ。本当においしいから」
「まぁひとつぐらいならいいけど……」

 レジ子の熱心さに押されて、仕方なく財布を出す亜矢。
 見ればラインナップはえらくバリエーション豊富で、うなぎ味、大トロ味、かにミソ味、塩辛味、クサヤ味など、トチ狂ってるとしか思えない商品名がずらり。
「開発者は、いっぺん病院で見てもらうべきだと思う」
 よりによって亜矢に言われるようでは(ry
「いいから選んで。初心者にはスルメ味がおすすめね。酒の肴にぴったりよ」
「あたし未成年なんだけど……じゃあまぁスルメ味にしようかしら」
「毎度!」
 その瞬間だけ、良い笑顔になるレジ子。
 そして──いざ実食!

「これは……(もぐもぐ)……さきイカにチョコレートをコーティングしてあるわけね……(むぐむぐ)……見かけによらず、甘いカカオの香りとスルメの潮の匂いがあわさって……(かみかみ)……予想以上においしい…………わけないでしょ!」
 口にスルメチョコを入れたまま、亜矢は怒鳴った。
「そんな! 嘘でしょ!?」
 真顔で問い返すレジ子。
「なんなのコレ! チョコレートは虫歯になりそうなぐらい甘ったるいし、イカは吐き気がするほど生臭いし……! しかもよく噛まないと飲み込めないから、よけいタチが悪い! 一体どこのバカが、こんなもの商品化したのよ! 売れるわけないでしょうが!」
「そんな……。よく味わってよ。スルメの深い味わいと、カカオの甘くて苦い香りが……」
「ないから! 返品するわよ、これ! クーリングオフ! クーリングオフ!」
「そんな制度ないから! ちゃんと最後まで食べて!」
「冗談じゃないわよ! なんなの、この罰ゲーム!」
 大声を張り上げる亜矢。
 なんの騒ぎかと、ヒマな生徒が集まってくる。
 静かだった深夜の購買は、たちまち活気づいた。

「あぁ……このチョコレート、近所のスーパーで山積みになってたよ。半額で」(生徒A)
「ここのメーカーって、ときどきゲテモノ出してくるよね。なにかの社会実験とか?」(生徒B)
「でも一部の人には需要があるんじゃない? 私はいらないけれど」(生徒C)
「そんなこと言わないで、みんな試しに買ってみてよ」(レジ子)
「1箱280久遠っていうのが微妙に高いよね。100久遠だったらジョークで買ってもいいけど」(生徒D)
「『新鮮な海の幸を豊富に使いました』って書いてあるけど……チョコの謳い文句とは思えないな」(生徒E)
「こんなものに280久遠も出すなら、炒飯まんを3つ買うわよ」(亜矢)
「「炒飯まん、おいしいよね!」」(生徒A、D)
「炒飯まんはいいのよ、ほっといても売れるんだから。ああ……この売れ残りチョコ、だれかどうにかしてくれないかな……」(レジ子)

 そんな会話が交わされる中、購買の夜はふけてゆく。
 これもまた、久遠ヶ原学園の日常風景。




リプレイ本文



 真夜中の購買では、騒ぎが続いていた。
 その元凶となっているのは、海産物チョコシリーズ。
 人間はおいしいものを語りたがる一方、まずいものについても語りたがるという特殊な性向を持つ動物なのである。

「なんだか騒がしいわね」
 そんな深夜の購買にやってきたのは、満月美華(jb6831)
 この時間帯というのに、小腹がすいて買い食いに来たのだ。
 なにしろ目立つ体格なので、レジ子もよく見知っている。亜矢は言わずもがな。
「いらっしゃいませー。海産物チョコいかがですかー」
 と、露骨に売れ残り商品を宣伝するレジ子。
「海産物チョコ?」
 美華は首をかしげた。
「そう! おいしいから、ぜひ食べてみて!」
「じゃあためしにひとつ……この『鯨ベーコン味』というのをいただこうかしら」
 よりによってそれを選ぶか……みたいな視線が周囲から注がれた。
 しかし美華はまるで気にせず、チョコを無造作に口へ放り込む。
「どう? おいしいでしょ?」
 レジ子が訊いた。
「う〜ん……ちょっとクセがあるけど食べれないわけじゃないわね〜」
 その感想に、「マジか!?」という声が湧き上がった。
 そう、美華は自他ともに認める悪食。食べ物の味など二の次で、とにかく腹が膨れればいいというエクストリームな思想の持ち主なのだ。
 あっというまに一箱たいらげて、彼女は言う。
「ほかの味もひととおり試してみようかしら」
「本当!?」
「ええ、なんだか売れ残って困ってるみたいですし」
「ありがとう! お客様は神様ね!」
 都合の良いときだけ客を神扱いするレジ子。
 そして、美華は猛烈な勢いで海産物チョコを食べはじめた。
 何味だろうと関係なく、次から次へと美華の胃袋へ消えて行く海産物チョコシリーズ。
 まるで何かの罰ゲームみたいだが、本人はおいしいと思っているので問題はない。
 だが、数十箱食べたところで美華の体に異変が起きた。
 一気に大量の糖分と塩分を摂取したために、体内のアウルが乱れて──
 ばふっ、という音とともに美華の腹が膨れあがった。
 腹だけではない。全身が膨張して風船みたいになっている。
「だれか助けて〜!」
 ふくれあがったおなかを抱えて、悶絶する美華。
 先日の養純水Vがまだ影響しているのかもしれない。いずれにせよ、このままでは購買から出るのも不可能だ。
「だれかぁ〜!」


「…………」
 騒々しい空気の中、ファーフナー(jb7826)は無言で購買を訪れた。
 ブラックスーツにロングコートという出で立ちの彼は、久遠ヶ原屈指のMr.ハードボイルドだ。彼が登場すると周囲の気温が一気に下がる。
 こんな深夜に彼がふらりとやってきたのは、もちろん海産物チョコを買うためなどではない。愛用の煙草を切らせてしまったため、補充に来たのだ。
「いらっしゃいませー」
 レジ子が声をかけた。
 が、ファーフナーはちらりとレジのほうを一瞥して、馬鹿騒ぎする生徒たちや肉達磨と化した美華の姿を認めると、興味なさそうに店の奥へ向かった。本当は煙草を買いに来ただけなのだが、騒ぎに関わりたくないと思ってのことだ。
 レジ前で大騒ぎするのはどうなのか、そもそも店員が率先して騒いでいるのは問題ではないのか、さっさとレジ打ちに戻ったらどうか……などと内心で呟きつつ、とりあえず来たついでに飲み物でも買っておこうかと棚を見てまわるファーフナー。
 面倒ごとは極力避けるのが、彼の処世訓だ。
 とはいえ、この学園ではいつハプニングに巻きこまれるかわからない。いきなり校舎ごと爆破されたりすることさえ有り得るのだ。まさに常在戦場。かたときも気を抜けないのが久遠ヶ原。
 そんな次第で、ファーフナーはレジの騒ぎに注意を払いながら飲み物を物色していった。
 そこでふと、山積みされた海産物チョコに目がとまる。
 これが騒ぎの原因か……と思いつつ、どう考えても普通には売れないだろうと冷静に評価するファーフナー。あるいは何かの罰ゲーム用や一発ネタ用としてなら一部に需要もありそうだが、それでもなお厳しかろうと思いつつ、彼なりに販売方法などを考えてもみるが、やはり関わり合いになると面倒そうなので黙っておくことにしてしまう。それが彼の人生訓なのだ。
 しかし、そんな具合に店内を一周してもレジ前の騒ぎはおさまりそうになかった。
 やむなく適当なミネラルウォーターを手に取り、やれやれとばかりにレジへ向かうファーフナー。
「これと、7番の煙草をくれ」
「毎度ありがとうございます。ご一緒に海産物チョコはいかがですか?」
『ご一緒にポテトはいかがですか?』みたいな感じで不良在庫をすすめるレジ子。
「あー……、I can't speak japanese」
 面倒なので、ファーフナーは日本語をしゃべれない外国人のフリをすることにした。
 だが、これは彼らしくもない失敗だ。
「え、今しゃべってましたよね? 『煙草をくれ』って」
「あー……、それだけ覚えてるんだ。いや、I can speak only
「ほら、しゃべれるじゃないですか!」
「あー……、see you, have a good night」
 冷静に取り繕うと、ファーフナーは煙草とミネラルウォーターの入ったレジ袋をつかんで購買をあとにした。
 真のハードボイルドには、レジ袋というアイテムさえ似合うのだ。



 こうして夜はふけてゆき──やがて朝が訪れた。
 午前8時。夜勤を終えて仮眠室に入るレジ子の代わりに、お手伝いとして参加したのは黒百合(ja0422)だった。
「きゃはァ、今日は購買のお手伝いだわァ……どんな人が買って行くのかしらねェ♪」
 などと言いながら、メイド服着用でレジに立つ黒百合。
 いつになく可愛らしい笑顔をふりまく彼女だが、猫をかぶってるのは言うまでもない。たぶん100匹ぐらいかぶってる。
 今日の彼女は、とても慈愛に満ちていた。
 バレンタインで1個もチョコをもらえなかった男には、慰めの言葉を。
 チョコを渡す相手がいなかった女には、励ましの言葉を。
 そのたびに『月下香の幽香』をこっそり使い、全身からフェロモンを発散して相手の反応をうかがう。
 そう、黒百合の目的は売れ残り品の販売を手伝うことなどではなく、バレンタインデー翌日という特別な日の人間観察をすることなのだ。
 それはともかく、この『月下香の幽香』なるスキルはなかなか恐ろしい。謎のフェロモンに加えて、脳内快楽物質や興奮物質、幻覚物質などをブレンドした芳香は、危険な香りで相手を誘惑するのだ。
 しかも可愛い女の子には容赦なく『快楽&興奮物質散布モード』を発動し、反応をたのしむという鬼畜百合プレイ。
 逃げようとする相手には『パララサスパンデミック』をぶちこんで神経を麻痺させ、動けなくなったところを『吸血幻想』にて首筋へ噛みつく! 逃げない相手には、普通に首筋へ噛みつく!
「あはァ……たまにはこういうお手伝いもいいわねェ……♪」
 口元の血をぬぐいつつ、犠牲者の山を背景に微笑む黒百合であった。
 そしてこのあと全ての接客は黒百合がおこなうので、まだ出番の来てない人は覚悟しろ。


 そんな状況とは知りもせず、高瀬里桜(ja0394)は登校するや否や購買に駆け込んだ。
 今日はバレンタイン翌日。売れ残りのチョコが値引きされてるに違いないと判断しての行動だ。
 実際その判断は正しい。この購買でも、海産物チョコをはじめとして何種類かのチョコがセールになっていた。
 その中から適当に選んでカゴに放り込み、レジへ向かう里桜。
「あらァ……海産物チョコは買わないのォ……?」
「!?」
 メイド姿の黒百合を見て、里桜は一瞬たじろいだ。
 なんせ、見るからにヤバいフェロモンをまきちらしているのだ。
 こんな人が購買の店員やっていいのかな……と思いつつも、敢然と立ち向かう里桜。
「そんなの買うわけないでしょ! このメーカーのゲテモノシリーズおいしくないし! 私の甘味マスター(自称)としての勘が絶対やめとくべきだって言ってる!」
「ふぅん……甘味マスターを名乗るなら、どんなお菓子でも一度は食べてみるべきじゃないのォ……?」
「う……っ。それは一理あるけど……」
「そうよォ……なにごとも体験してみないと、わからないでしょォ……?」
「じゃあ、せっかくだから私はこの『スジコ味』を選ぶよ!」
 なにが『せっかくだから』なのかわからないが、アドリブなので仕方ない。
 そして覚悟を決めた里桜は、パクッと一口。
 その直後、彼女は「うぶっ!」と口を押さえて床に突っ伏した。
「あらァ……言葉を失うほどおいしかったのォ……?」
 黒百合がくすくす笑った。
 それにもめげず、里桜はガバッと立ち上がる。
「なワケあるかー! こんなのチョコへの冒涜だー!」
「このおいしさがわからないなんてねェ……? それでも甘味マスターなのォ……?」
「ああ、そう。わかった、そこまで言うなら勝負しよう! 私とあなたのどちらの舌が正しいのか!」
「勝負……? もちろん受けて立つわァ♪」
 ということで、謎の勝負が行われることになった。
 里桜が持ち出したのは、定番がっかり義理チョコのチ●ル!
 これと海産物チョコを客に食べくらべてもらい、どちらがおいしいか選ばせるのだ。単純明快な勝負である。
「ルールはこれでいいよね? もし私が負けたら、チョコを買うお金で海産物チョコを買うよ! かわりにあなたが負けたらチョコ代おごってもらうからね!」
 すでに勝ったような顔で、里桜はビシッと指を突きつけた。
 だが黒百合は余裕の笑みだ。仮に負けてもチョコ代はレジ子に払わせるし、彼女は痛くも痒くもない。負けのありえない勝負なのだ。
「よーし、チョコ代はもらったぁー!」
 無駄にやる気満々で、いきなり光纏する里桜。
 そしてアーティストのスキルを駆使して『チョコレート対決実施中!』なるポスターやポップを作り、店内や廊下に宣伝するのだった。


 その宣伝に釣られたわけでもなく、龍崎海(ja0565)は普通に購買へ立ち寄った。
 彼もまた、バレンタインが終わったのでチョコが安売りされてないかと思って購買を覗いてみた一人だ。
 久遠ヶ原の生徒にしてはストイックな海だが、じつは依頼で疲れて帰宅したときなど相当な勢いでチョコを食べてしまうスイーツ派。今日のような日は買い溜めのチャンスなのだ。
「いらっしゃいませェ……海産物チョコ、いかがかしらァ……?」
「いまチョコレート勝負やってるの! 是非あなたの清き一票を! そして私に勝利のチョコ代を!」
 黒百合と里桜が同時に声をかけた。
『歴戦勇士』の称号を持つ海よりもなお深い撃退士歴を持つ二人の顔ぶれに、一体なにごとかと思う海。
「チョコレート勝負……? いや悪いけど海産物チョコはないなぁ。いくら値引きされてても、さすがにあれは……」
「そう言わず、ひとつ試してみてェ……? 見た目で判断したらダメよォ?」
『月下香の幽香』で無駄にフェロモンを漂わせる黒百合。
 だが、高レベルのアストラルヴァンガードである海には通用しない。
「というか、発売当日に買って食べてるんだ。ジャッジするまでもなくチ●ルの勝ちだね」
「だよね! 海産物チョコとかアタマおかしいよね! 産業廃棄物だよね!」
 里桜が全力で同意した。
「そこまでは言わないけど……それにしても凄い量の売れ残りだな。発注をまちがえたのかな?」
 悪気なく問いかける海。
「普通に売れるつもりで注文したらしいわよォ……。まァちょっとだけ在庫が残っちゃったみたいだけどねェ……?」と、黒百合。
「ちょっとどころじゃないだろ。バレンタインデーも終わったし、どうするんだ?」
「そうねェ……なにか名案はあるかしらァ……?」
「うーん……。正直なところ食べ物として売るのは難しそうだな……。学園支給品として買い取ってもらうとか? ほら、死のソースみたいなゲテモノもあるし」
「こんなの支給されても嬉しくないよ!」
 すかさず里桜が反論した。
「あぁそこは大丈夫、どうせ資金として売られるだけだ。食べ物として考えなければいいんだよ。微妙に値段が高いのも、かえって喜ばれる」
「それは確かに」
「あと、この海産物シリーズには色々なフレーバーがあるだろ? 全種コンプリートをめざしてコレクションする物好きもいるかもしれない。なんにでも需要はあるものさ」
 いたって真剣に助言する海。
 だが、彼自身は海産物チョコを買うつもりなど1ミリもないのであった。


「チョコレート勝負……? なんですかこれは。私は在庫処分と聞いて、海産物チョコを買いに来ただけなんですが」
 不可解そうに周囲を見まわしながら、雫(ja1894)がやってきた。
「いらっしゃァい……大歓迎よォ♪」
 フェロモンたっぷりの笑顔で迎える黒百合。
「何故あなたが購買に?」
「今日はお店のお手伝いってわけェ……。それで、海産物チョコいくつ買うのォ……?」
「そうですね……箱買いするので、いくらか値引きしてもらえませんか?」
「私はお手伝いだから、勝手に値引きできないわよォ?」
「役に立たない手伝いですね」
「なにか言ったァ……?」
「いいえ、なにも。では箱を持ってきてもらえますか」
 雫は迷わず要求した。
 彼女にも『月下香の幽香』は通じない。
 まったく、久遠ヶ原は化け物ばかりだ。もっとも最大の化け物が購買でレジ打ちやってるのだから恐ろしい。
 そこへ里桜が口をはさんだ。
「ちょっと待って! あのゲテモノを箱買いとか……正気なの!?」
「正気ですが、なにか?」
「正気だとしたら味覚がおかしいよ! あんなのを箱で買うなんて……舌か脳味噌がどうかしてる!」
「ずいぶん失礼ですね。こんなまずい物を食べるわけがないじゃないですか。明日おこなわれる清掃活動で、吐き捨てられたガムを除去するのに使うだけですよ。チョコレートにはガムを溶かす成分が含まれていますので。除光液やサラダ油でも溶かせるんですが、安くつくならチョコでも構いませんし」
「なんだ、そういうことなの。よかったぁー。もうすこしで黄色い救急車呼ぶところだった」
 ほっと胸を撫で下ろす里桜。
 どう考えてもサラダ油のほうが安く上がるはずなのだが……もしやこれは雫のカムフラージュで、本当は食べるために買ってるのか? 甘味系味覚障害の雫なら十分ありえる!
 すると、黒百合が箱をかかえて戻ってきた。
「おまたせェ……海産物チョコ120個入りよォ♪」
「お手数かけましたね。これだけあれば、明日の清掃活動ではガム取り放題です」
「これだけあれば、日本中を掃除できるんじゃないかしらァ……」
 そう言って、黒百合は意味深に微笑んだ。
 雫は一瞬かたい表情を見せるが、それだけだ。
「ところで雫ちゃん、このチョコを完売する名案とか、思いつかなァい……?」
「そうですね……たとえば一定額以上の買い物をした男性に、プレゼントと銘打って無料サービスするのはどうですか? 1日ぐらいのずれなら、義理チョコさえもらえなかったかわいそうな人たちが集まるかもしれません」
「それ名案ねェ♪ バレンタイン戦争で敗れた哀れな人たちに、かわいいメイド黒百合ちゃんが手ずからチョコをあげるなんて……まさに出血大サービスじゃなァい……?」
「出血するのは客のほうだと思いますけどね」
 あきれたように溜め息をつく雫。
 なんとなれば、彼女の言うとおり購買のレジカウンターには『吸血幻想』で血を吸い取られた女の子たちが死屍累々の山となっているのだった。
 なにやら大量殺人事件の現場めいた光景だが、気にせず話を進めよう。


「キュゥ♪」
 いつものラッコ着ぐるみで、鳳静矢(ja3856)が購買にやってきた。
「いらっしゃァい♪」
 無駄に愛想良く応じる黒百合。
「チョコレート勝負実施中でーす」
 里桜もやたら元気にチ●ルチョコを売ろうとしている。1個10久遠のチョコをここまで必死に販売する人も珍しい。
 だが、静矢にとってチョコレート勝負などどうでもよかった。というより最初から勝敗は決まっている。なにしろ彼は海産物チョコシリーズの愛好家なのだ。もしかして値引きされているのではと考えて、ふつうに買いに来たのである。
 ということでシズラッコが選んだのは──ラッコの主食、生ウニ!がたっぷり入ったチョコ!
『この懐かしい潮の香り……アラスカの海を感じる。……でも味の組み合わせはいまいち……』
 微妙な感想をホワイトボードに書く静矢。
 どうやら甘味の中に感じる豊かな塩の風味が、故郷アラスカの海を思い出させたようだ。
『この北海道利尻産のウニと、ベルギーチョコレートの幸せなマリアージュ……ほかには類のない味わいだ……。でも出来れば別々に食べたい……』
 震える文字で、静矢はウニチョコの感想を書き綴った。
 アラスカ産のラッコでも、この組み合わせはないらしい。
「そんなことないでしょォ……? ウニとチョコレートって相性抜群じゃなァい……?」
 無茶なことを言う黒百合。
「では口直しにチ●ルチョコをどうぞ!」
 ここぞとばかりに宣伝する里桜。
『実際に海産物チョコは売れ残っている……これが大衆の下した評価。チョコレートと海産物は絶望的に合わない……』
 静矢は冷酷な事実を突きつけた。
「でしょ! みんな黙ってチ●ルを買えばいいんだよ!」
 いつのまにか熱心なチ●ル支持者になっている里桜だが、アドリブなので仕方ない(
「チ●ルなんて、いつでもどこでも買えるでしょォ? 海産物チョコは今しか手に入らないのよォ……? すぐ販売終了になるに決まってるんだからァ……。そう考えたら、いつ買うか……いまでしょォ♪」
 黒百合もまた、やたら熱い海産物チョコの営業マンと化していた。
 実際、彼女の販売力のおかげで在庫は着々と減りつつある。
 黒百合ちゃんのかわいいメイド姿が拝めるのは今日だけ! というわけで、男も女も彼女のフェロモン攻撃にフラフラと吸い寄せられて前後不覚のままチョコを買ってしまうのだ。久遠ヶ原でなければ、警察か公正取引委員会の指導が入っているに違いない。
 だが、それでもなお海産物チョコの在庫は山ほど残っていた。
『このままでは確実に売れ残るだろう……。そこで提案だが、せっかくだから元になった海産物とのタイアップ商品にしてはどうかな?』
 在庫の山を見かねて、アラスカ産の静矢がホワイトボードでアドバイスした。
「タイアップって、どういう意味かしらァ……?」と、黒百合。
『つまり……ウニ味チョコには本物のウニを、塩辛味には本物の塩辛を組み合わせるのだ。いわゆる抱き合わせ商法?』
「それ面白そうねェ……さっそく発注してみようかしらァ♪」
 良い笑顔で発注書を手に取る黒百合。
 そこへ絶妙のタイミングでレジ子が駆け込んできた。
「ちょっと! なにしようとしてるの!?」
「抱き合わせ販売をしてみようかと思っただけよォ……。売り上げが一気に2倍になる、素敵な販売戦略だと思わなァい……?」
「在庫も一気に2倍よ!」
「商売にリスクはつきものでしょォ……?」
「購買は鮮魚店じゃないのよ!」
 案外まともなことを言うレジ子。
 PCが暴走するとNPCが冷静になるという、典型的な構図である。まぁ全部アドリブなんですけどね。
 ともあれ不良在庫の二重遭難は避けられた。
「まったく……ほうっておくと何するかわからないわね、ここの学生は」
 あきれたように呟くレジ子だが、こんなゲテモノを売れると信じて仕入れた人に言われたくないと学生たちも思うことだろう。


 ──さて。そんな騒ぎとまったく無縁の場所に、不知火あけび(jc1857)は立っていた。
 久遠ヶ原神社の境内である。学園から歩いてすぐの、縁結びの御利益があると言われる社だ。
 この日あけびが神社を訪れたのには、理由がある。
『私も一応女子高生、せっかくだし年に一度の行事に乗ってみよう』……そう考えて手作りの生チョコを用意したまではよかったが、渡す相手がいなかったのだ。渡す相手がいなかったんだよ! だいじなことなので二度(ry
 そこで、あけびは考えなおした。
『渡す相手がいないなら、日頃お世話になってる人たちにチョコを渡そう』……と。
 しかし、これも問題があった。
 というのも、作ったチョコは一袋だけなのだ。到底たりるわけがない。
 しかも一番チョコを渡したいと思っていた尊敬する人物は、なんと天使だったうえに現在行方不明という状態。
 そんなわけで、あけびのバレンタインデーは無惨に終わりを迎えたのであった。
 ──で、そんな彼女がなぜ神社に来ているのか。聡明な読者にはもうおわかりだろう。
 あけびは、こう考えたのだ。
『手作り生チョコを渡したい天使は行方不明』
『でも、いわゆる信仰の天使とは別とはいえ仮にも天使ならお供え物ができるかも』
『お供えと言えば仏壇だけど、うちにはないなー』
『……はっ、いっそ神社でもいいんじゃ……!』
『というわけでやってまいりました、久遠ヶ原神社♪』←いまここ
 なにか色々と和洋折衷ごちゃ混ぜ勘違い知識が発動しての結果だが、これが水平思考というやつか。(ちがいます)
「というわけで……届け、あの人に!」
 あけびは思いつめた表情で賽銭箱に手作りチョコを置き、パンパンと柏手を打った。
 はたから見れば少々……いやかなり意味不明な行動だが、彼女は真剣だ。
 バレンタインデーの翌日に、渡せなかった手作りチョコを現在消息不明の天使に捧げようと、神社を訪れて賽銭箱にチョコを供えて二礼二拍一礼するサムライ忍者ガール。
 一行でまとめると、そのカオスぶりがよくわかる。……うん、せめて教会に行こうか。それとも病院か。
 そんなあけびをからかうように、どこからともなく一羽のカラスが飛んできた。
 そのまま賽銭箱に置かれた手作りチョコを嘴にくわえて──と見えた瞬間、とっさに光纏して影手裏剣を放つあけび。
 ギャァアアアアア!
 ものすごい鳴き声をあげて、カラスはどこかへ逃げていった。
 たかが一羽のカラスに撃退士のスキルをぶちこむとは容赦ないにもほどがある。が、生き馬の目を抜く久遠ヶ原では慈悲の心を持つ者からゴートゥーヘルなのだ。ノーマーシィ!
『それに、あのカラスは一見単なる野生の烏に見えたけれど多分おそらく確実に、天魔だったに違いない。そうでなければ生粋の忍である私の隙をついてチョコレートを掠め取ることなど、できようはずがあろうか』
 当然のように結論しながら、地面に散らばったチョコを拾って食べるあけび。
 あきらかに3秒ルールを無視した反社会的行為だが、忍びの者にとって食糧を無駄にすることなど許されないのだ!
「うん、おいしい。さすが私。パティシエ忍者になるのも悪くないかも」
 だれにも渡せなかった手作りチョコは、こうして製作者本人の胃袋におさまった。
『来年のバレンタインには、渡す相手ができればいいな……』
 などと思いつつ、学園への帰途につくあけび。
 このあと購買を訪れた彼女は黒百合の毒牙にかかってしまうのだが、その内容は想像にまかせる。



「うぅん……? なにか見慣れた方が、見慣れない格好でレジに立っておりますねぇ……」
 購買を訪れた月乃宮恋音(jb1221)は、メイド衣装の黒百合を見て微かに震えた。
 先日とある新薬の試験依頼で『焼肉を食べすぎて重体に』なってしまった彼女は、翌日の退院をひかえて親しい友人たちと退院祝いを兼ねた女子会を計画しているところだ。今日は、そのパーティー料理のための買い出しである。
 すでに外傷は完治し、ぶくぶくに膨れあがった体型もようやく元に戻ってはいるが、まだ体内のアウルは不安定な状態だ。いつ何の拍子で特異体質が発動するか知れたものではない。黒百合のイタズラ好きな性質は重々承知しているから、注意は欠かせなかった。ついでに言うと、黒百合の分類は『タグ:百合』なのだ。
「あぅぅ……黒百合さんがいますよぉぉ……。ほかの購買に行きませんかぁぁ……?」
 恋音以上に震え声で言うのは、由利百合華。
 以前、花畑を荒らす犯人を探し出す依頼で、ひどい目に遭わされているのだ。
「でもこちらの購買には、ここでしか手に入らない食材が売られているのですよぉ……。たとえば、チョコレート味やバニラ味の五色そうめんですとか……」
「それ必要ですかぁぁ……!?」
「まぁ、それは冗談ですが……黒百合さんも、そんな無茶はしないと思いますよぉ……?」
「あれ見ても、そんなことが言えるんです!?」
 百合華がレジカウンターの奥を指差した。
 そこには、脳内麻薬物質や興奮剤で廃人になった女子が40〜50人ほど。いずれも床に転がってマグロみたいになっている。

「ああ、はい……あえて見なかったことにしておりましたけれど……やはりあれは現実のようですねぇ……うぅん……」
「どう見ても現実ですよぉ……『スケッチ』で描かれた絵とかじゃありませんん……」
 怯えて立ちすくむ百合華。
 その隣では、おなじく女子会に誘われた三条絵夢がウットリした顔で黒百合のほうを見つめている。
「あぁ……私もあれに混ざりたい……」
「お、おぉ……? 今なんとおっしゃいましたかぁ……?」
 恋音が聞きとがめた。
 すると絵夢は一言。
「私もいじめてほしいと言ったんです!」
「お、おぉぉ……!?」
 さすがに動揺する恋音。
 最近、絵夢は自らの性癖を隠すことをやめたのだ。
 そんな彼女を、尊敬の眼差しで見つめる百合華と恋音。じつは二人とも隠れマゾなのだ。もっとも隠れているつもりなのは本人だけで、周囲の誰もが知っていることなのだが。

 そこへレジ子が声をかけた。
「あら、いらっしゃい。海産物チョコを買いに来たの?」
「いえ、それは特に……。明日のパジャマパーティー用に、料理の食材を調達しようと思いましてぇ……」
「パジャマパーティー! いいわね、青春の1ページっぽくて! そんな想い出の彩りに、海産物チョコはいかが?」
「そ、それはまさか……いつかの依頼みたいに、在庫が余っているということでしょうかぁ……?」
「そのとおりよ!」
「うぅん……なにか私に、協力できることがあれば……。海産物チョコということですから、それを生かした塩味スイーツのレシピ開発など、いかがでしょうかぁ……?」
 困っている人を見過ごせない性格の恋音は、当然のように申し出た。
 それを百合華が止める。
「ダメですよぉ……いまは重体の身なんですからぁ……黒百合さんも怖いし、早く買い物して帰りましょうよぉ……」

「聞こえたわよォ……だれが怖いってのかしらァ……?」
 いつのまにか、黒百合が百合華の背後に忍び寄っていた。
「ひぃぃ……ッ!?」
 反射的に光纏し、呪縛陣をぶっぱなそうとする百合華。自分までも含めた周囲すべてにダメージを与えて束縛する、強烈な技だ。
 ──が、一瞬早く黒百合の牙が百合華の首筋を噛み裂いた。
「ぁはぅぅぅ……っ!?」
 一瞬で大量の血を失うと同時に麻薬物質で脳を犯されて、百合華は膝から崩れ落ちた。
 それを悠然と見下ろしながら、「危ないじゃないのォ……レジ子ちゃんは一般人なのよォ……?」と告げる黒百合。
 こう見えても(?)彼女はわりと良識があるのだ!
「ありがとう。お店も手伝ってくれるし、本当に良い子ね」
 レジ子が黒百合の頭を撫でた。
 どうやら、マグロと化した大勢の女子生徒のことは眼中にないらしい。そんな些細なことを気にしてたら、この久遠ヶ原で商売などやってられないのだ。

「うぅん……なにか色々と予想外な事態に、なってきましたぁ……」
 まぁとりあえず……と、恋音は百合華にライトヒールをかけた。
 その様子を見て、「ああ……私の血も吸ってほしい……」と呟く絵夢。
「ご希望なら、好きなだけ吸ってあげるわよォ……。どこを噛んでほしいか言ってみてェ……? そのかわり海産物チョコを買っていってねェ……?」
 己の欲望を満たした上に不良在庫まで売りつけようとする黒百合。
 彼女は撃退士などではなく、商売人になるべきだったのかもしれない。
 そこへ里桜が横槍を入れた。
「待って、どうせならついでにチ●ルも買って行って! そして正直な感想を聞かせて! 海産物チョコよりチ●ルのほうがおいしいって!」
「いいえ、私は黒百合さんの言うとおりにします。それともあなたは黒百合さんよりも激しく私をいじめてくれるんですか?」
 堂々と言い放つ絵夢。
 だが里桜もタダモノではない。なにしろ撃退士歴は黒百合よりも長く、『放火魔』なる不穏な称号の持ち主でもあるのだ。
「いじめてほしいなら、いじめてあげるよ♪」
「ほ、本当ですか? ああ、こんなふわふわしたお姉さんにいじめられちゃうなんて……」
 勝手にビクンビクンしながら恍惚の表情になる絵夢。
「あのぉ……では今夜の女子会に、黒百合さんと高瀬先輩のおふたりを誘うというのは、いかがでしょうかぁ……?」
 恋音も恋音で、恐ろしいことを言いだす。
「そ、それって……一晩中いじめられちゃいますよね! ぜひ! ぜひ呼びましょう! 呼ぶべきです! そのためなら海産物チョコでもチ●ルチョコでも、いくらでも買いますから!」
 鼻血をぼたぼたさせながら、絵夢は力強く主張した。
 念のため言っておくが、チョコの食べすぎで鼻血が出てるわけではない。ただの妄想過多だ。
「呼んでくれるなら、私はどこにでも行くわよォ♪」
「私だって! チ●ルは決して負けない!」
 黒百合と里桜は、張り合うように参加の意思を表明した。
「うぅん……なにか凄いパーティに、なりそうですねぇ……」
 予想だにしなかったコトのなりゆきに、ふるふると震える恋音。
 彼女たちにとって、2月15日の夜が始まるのはこれからだった。

 ちなみにこの日。黒百合の吸血メイドサービス(?)のおかげで、海産物チョコは大幅に在庫を減らすことに成功した。
 後日、販売手段に問題があったということでレジ子に厳しい指導が申し渡されたのは言うまでもない。




依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:14人

『三界』討伐紫・
高瀬 里桜(ja0394)

大学部4年1組 女 アストラルヴァンガード
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部9年1組 男 アストラルヴァンガード
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
チチデカスクジラ・
満月 美華(jb6831)

卒業 女 ルインズブレイド
されど、朝は来る・
ファーフナー(jb7826)

大学部5年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA
明ける陽の花・
不知火あけび(jc1857)

大学部1年1組 女 鬼道忍軍