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マスター:牛男爵
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/10/20


みんなの思い出



オープニング


 静岡県某所。
 深い山の中に、古めかしい神社があった。恋愛成就の御利益がある社として、このあたりでは有名だ。
 10月上旬。
 秋の行楽シーズンとあって、境内は多くのカップルや夫婦連れで賑わっていた。
 どこを見ても、無駄にイチャつくカップルばかり。まちがって非モテ男が一人で足を踏み入れようものなら、「す゛み゛ま゛せ゛ん゛て゛し゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」とか絶叫して土下座しながら切腹して走り去るところだ。
 それほど、この空間は非モテにとって厳しい。一般人がゲート内部に入ったときぐらいのダメージを受けそうだ。

 だが、そこへ。
 ひとりの非モテ野郎が、堂々と現れた。
 ボサボサの髪。泥まみれの作業着。2mの巨体のくせして、5頭身の寸胴短足フォルム。
 そして、顔にはホッケーマスク。手にはチェーンソー!

「きゃああああああああ!」
「非モテだああああああ!」
「非リアだああああああ!」
「変態よおおおおおおお!」
「きもいいいいいいいい!」
「くさいいいいいいいい!」

 思い思いの罵倒を浴びせながら、逃げまどうカップルたち。
 ホッケーマスクの男は、心ない罵倒に泣き叫びながらチェーンソーを振り上げる。
「リア充ゥゥゥゥゥゥ!!」
 一見ただのトチ狂った男だが、お察しのとおり彼は天魔なのである。
 分類としてはディアボロに含まれるが、そこらのディアボロとは格が違う。
 生前、おそろしいほどの非モテ非リアだった彼は、30歳DTになっても魔法が使えなかったという現実に苛まれつつ、不運にも悪魔に殺された。だが、彼は自分を殺した悪魔を恨むことさえなく、死んでもなおリア充たちを恨みつづけた。その怨念の凄まじさを見た悪魔が、彼をディアボロに仕立て上げたのである。
 その理不尽な怨念パワーは、あらゆるリア充撃退士の力を凌駕する。
 現に、彼はただのディアボロにもかかわらず、これまでに撃退士たちの攻撃を二度に渡って退けているのだ。自らが崖下に転落したり、湖底に沈むという慎み深い形で!

 それはさておき、彼は頭が悪かった。
 カップルたちがあっちこっちへ逃げるのを見て、どれを殺そうかな、あいつかな、こいつかな……などと迷ってるうちに、境内には人っ子ひとりいなくなってしまったのである。
「リア充ゥゥゥゥゥゥ!」
 自分の失敗を棚に上げて、怒り狂うホッケーマスク男。
 10ヶ月もかけて崖下から舞い戻ってきたのに、戦果はゼロである。
 ならば神社の外へ……と彼が振り向いたとき。階段の下から、4人の撃退士が駆け上がってきた。

「学園から緊急連絡を受けて来てみれば……なんだ、この昭和時代の殺人鬼みたいなヤツは」
「キモイ! ひたすらキモイわね! ああキモイ!」
「ただのディアボロごとき、4人でかかれば秒殺でしょう」
「待ってくれ、みんな。これは噂に聞くホッケ男では!?」
「ホッケ男?」
「以前、報告書で見たことがある。噂によると、彼はリア充に対して無類の耐久力を誇るとか……。脅かすわけではないが、甘く見ないほうがいい」
「じゃあアンタが戦えば?」
「名案ですね。彼ほどの非モテ非リアは、そういませんし。噂が本当なら、簡単に勝てるのでは?」
「よし行け、アンコー。おまえにまかせた!」

 という会話によって、ひとりの男が先陣を切ることに……というか、ひとりっきりで戦うことになった。
 まるでイジメだが、そういうわけではない。彼らはただ、合理的な判断をしただけだ。
 事実、この4人パーティーで非モテ非リアなのは、アンコーただひとり。ほかの3人が戦えば、苦戦は免れないだろう。

「……わかった。任務である以上、私は己の務めをまっとうする。皆、さがっててくれ」
 カッコつけて言うアンコーだが、3人はとっくにずーーっと後ろまでさがってる。
 言い知れない恥辱を受けながらも、光纏して剣を抜き放つアンコー。
 彼は正真正銘の非モテブサメンだが、撃退士としての実力は確かだ。
「行くぞ、ホッケ男! どちらが非モテか、いざ尋常に勝負!」
 悲しいセリフとともに、アンコーは深い闇を身にまとい、ホッケ男めがけて剣を叩きつけた。
 どう見てもブサメンとしか言いようのない彼の攻撃に対して、ホッケ男は『リア充ゥゥゥ!』と叫ぶこともできず、無言のままチェーンソーで受け止める。
 回転するチェーンがギャリギャリギャリッと音をたてて、火花を散らした。
 そのまま腕力だけでアンコーの剣をねじり伏せ、ホッケ男がチェーンソーを振り上げる。
「うお……っ!」
 避けきれず、アンコーの脇腹から血が噴き出した。
 だが無論、この程度で倒れる彼ではない。
 体勢を立てなおすと、クロスグラビティで『重圧』を与えてからのDDD(Dangerous Driver Debu)!
 グシャアアアッ!
 脳天から地面に落下して、ホッケ男はよろめいた。
 しかし、なんの躊躇もなく彼はチェーンソードロップキックで反撃する。
 ドゴオオッ!
 今度はアンコーが吹っ飛んで、背中を地面に打ちつけた。
「く……っ。私でも苦戦するのか!? ……はっ、もしや私はホッケ男よりは充実してる!?」
 阿呆なことを言ってる間に、チェーンソーブーメランがアンコーの胸を切り裂いた。
「グワーッ!」
 血煙を上げて倒れるアンコー。

「なにやってんのよ! このDT!」
「しっかりしろ、おまえ以上の非モテなんか学園にいないんだぞ! おまえが最初で最後の砦なんだ!」
「こんな見苦しい戦い、さっさと終わらせてくれないかしら……」

 外野の3人から、熱い声援が飛んだ。
 アンコーは血の涙を流しながら、剣を杖がわりにして立ち上がる。
 その間、ホッケ男は追撃してこなかった。
 それどころか、どこかやさしい目でアンコーを見つめているではないか。
 この瞬間、彼は悟った。
 もしや、自分にとって真の敵は天魔ではなくリア充なのではないかと。
 そう、思い返してみれば、彼の人生はリア充から馬鹿にされる日々の連続だった。
 まぁ大体自業自得なのだが、そんなことは関係ない。とにかく今のアンコーにとって、ホッケ男は『理解者』であり、外野の3人は『敵』だった。
 そして──彼は決意した。

「私は撃退士をやめるぞおおおおおお!」

 ドス黒い闇が、アンコーの全身から迸った。
 その闇を全身にまとわせて、アンコーはホッケ男と肩を並べながら撃退士たちへと斬りかかる。
「うおおおおおおおお! リア充爆発しろおおおおおお!!」
「リア充ゥゥゥゥゥゥゥ!」
「「アバーーーッ!」」

 最強の非リアタッグによるツープラトン攻撃を受けて、3人の撃退士は瞬殺KO。
 命まで奪わなかったのは、アンコーに残された唯一の良心だ。
 しかし、彼はもはや後戻りできなかった。なにしろ、仲間に剣を向けてしまったのだ。
 じきに、このしらせを受けた久遠ヶ原から討伐部隊が寄せられるだろう。
 それでも、アンコーは満足だった。いっそ、すがすがしいぐらいだ。
 そんな彼の肩を、ホッケ男がポンと叩いた。
 いま彼らは、まぎれもない戦友同士となったのだ。
 ちなみに、言うのを忘れてたがアンコーというのは彼のコードネームだ。
 由来は、顔がチョウチンアンコウに似てるから。ひでえ。




リプレイ本文



 撃退士たちが神社に着いとき、アンコーとホッケ男は意気投合して酒を酌み交わしていた。
 境内に奉納されていた一斗樽を開けて、ブサメン同士で挿しつ挿されつ。イヤな変換だな。

「撃退士を辞めて、天魔と酒を飲む男……。理解できないね」
 呟いたのは、Robin redbreast(jb2203)
 かつて暗殺組織に身を置き、思考や自我を禁じられていた彼女にとっては、嫉妬心など理解できない。恋人がほしいという情念も理解不能だし、そのために味方を裏切るなど、もはや未確認生物(UMA)にほかならない。Robinに言わせれば、任務こそ最優先。それが守れないなら、生きている価値はない。
「裏切り者は、消す」
 説得など無用とばかりに、Robinは光纏した。
 これまでも、裏切り者は作業のように抹消してきた彼女だ。ためらいはない。

 が、Robinと違う考えを持つ者もいる。
 無駄な戦いを避けて説得に成功すれば、それに越したことはないのだから。
 というわけで、説得に挑む一番手は長田・E・勇太(jb9116)

「裏切り者に、新兵教育を実施スル!」
 勇太は単身突撃すると、スレイプニルを召喚して超音波をぶちこんだ。
 これでスタンさせてから……って、ちょっと待て! 超音波にスタン効果はないぞ!
「なんのつもりだ?」と、アンコー。
 勇太は彼に指を突きつけて、某軍曹ばりの迫力で怒鳴りつける。
「ふざけるナ! 口でクソたれる前と後に『サー』と言エ! わかったか、グズ!」
「サ、サー。イエス・サー」
「ふざけるナ! 大声だセ! タマ落としたカ!」
「サー! イエス・サー!」
 映画ヲタクのアンコーにとって、これは条件反射みたいなものだった。
 勇太はノリノリで軍曹プレイをつづける。
「俺の使命は、おまえみたいな役立たずを刈り取ることダ! 仲間を裏切り足を引っ張る害虫を! わかったか、ウジ虫野郎! 爺ィの***ミテェな顔しやがって!」
「しかし私は……
「言いわけカ! 天魔の手先のお***豚メ! ブッ殺されたいか!?」
「サー! ノー・サー!」
「仲間を裏切るカス野郎! なにが撃退士をやめるゾだ!? モトからオマエは人間ではナイ! パパの**がシーツのシミになり、ママの***に残ったカスがおまえだ!」
「サー! イエス・サー!」
「反省したら、さっさと久遠ヶ原に戻レ! 再教育だ、スキン小僧! じっくりかわいがってヤル! 泣いたり笑ったりできなくしてヤル!」
「サー! 戻る気はありません! サー!」
「ナンだと!? そんなことだから女もできんのダ! DTめ!」
 スレイプニルがハイブラストを放った。
 が──
「私をDTと呼ぶなあああっ!」
 アンコーの怒りが爆発し、闇の刃が勇太を切り刻んだ。
「グワーッ!」
 説得失敗!



「では、僕が説得しよう」
 二番手に、咲魔聡一(jb9491)が名乗り出た。
「説得だと?」
「ああ。なにを隠そう、僕も非モテだ! 生まれて231年! 日本の時代区分になおすと、えっと……江戸時代から非モテだよ!」
 聡一は日本史が苦手なのだ。
 まぁ悪魔だしな。
「聞け! 冥界では汚物のように扱われた僕だが、久遠ヶ原で大切な友人や家族ができたさ! でも彼らは次々と『リア充』なる未知の領域へ進んでいった! それでも! 大切な人たちだから! 僕は一緒に喜ばなくてはいけないんだ! この孤独が! 焦燥が! 空虚さが! きみにわかるか!? わかるよなああ!?」
「そうか、同類か。気持ちはわかる」
 アンコーが言い、ホッケ男もうなずいた。
 それを見てブチ切れる聡一。
「哀れむなホッケェ! いくら卑賎な生まれで且つ非モテとはいえ! 僕はディアボロと同じところまで堕ちたつもりはないッ! だいたいアンコー! きみは一体どういう了見で、撃退士を捨てた!? 万に一でも、億に一でも! 可能性があれば突き進むのが人間だろう!? 将来モテる可能性もないとは言い切れないのに、なぜ諦める!? 体型がモテない理由なら、ダイエットに励め! ファッションなら勉強しろ! お肌のトラブルならスキンケアを万全に! そこまでしてから諦めろオオ!」
「そこまでしてもモテない場合は?」
「ぬぬ……」
 言葉に詰まる聡一。
 世の中いくら努力したって無駄なことはある!
「……ああ、良いよなカップルは! どうせ休日は手をつないでランデブーと洒落込むんだろ!? わざわざ見せびらかすかのように、昼食はお洒落なカフェのオープンテラスなんだろ!? 『はい、あーん♪』とかするんだろ!? 公園のベンチで膝枕したりされたりするんだろ……って僕に何を言わせるんだ馬鹿ァァァ!」
 赤面しながら絶叫すると、聡一はどこかへ逃げていった。



「旦那さまぁ、今日もおらは頑張っているっちゃ。だがら早く迎えに来てけろ」
 いつもどおりのマイペースさで、御供瞳(jb6018)が行動を開始した。
 今日も今日とて、旦那さま探しに余念のない瞳。
 200%美化された旦那様の肖像を体に刻んだ痛ボディペイントで愛の賛歌を奏でつつ戦う彼女は、イタコ戦士である。つまり霊の言葉から勝機を見出す人なのだが、これは死霊生霊を問わない。スキルを使えば瞳が言うところの旦那様の声が聞こえるので、きっと生きていると言うのが瞳の主張であったが、最近これがだんだん怪しくなってきたのである。1年たっても迎えに来ない旦那様ぁという現実を前にリア充の余裕は消え、いまじゃすっかりエア充(エア旦那様との結婚生活)のレッテルを張られている。こんなことではいかんと最近は探しかたを変えた。
 どうするかといえば、きっと旦那様は敵の手に落ちてイヤイヤ悪事を働かされているに相違ない。だから迎えに来れないという二段変格活用。そこで敵が現れたら、開口一番『おめさんはオラの旦那様だべか?』と聞くことにしているのだ。完璧! 無論YESと答えた者はいないが、これなら遠からず見つかるべと前途洋々な瞳であった。

 前説が長かったが、そういうわけで瞳はアンコーとホッケに質問した。
「おめさんはオラの旦那様だべか?」
「「……」」
 おもわず顔を見合わせる、非モテ2人。
 かわいい少女に旦那様かと問われて一瞬リア充化した(?)スキをついて、瞳が炸裂陣で攻撃!
 だが──
 バシュウウッ!
 一瞬早く、アンコーの剣が瞳を斬り伏せた。
「ひっかからなかったべか……」
「なにが旦那様だ! 既婚の中古など不要! でなおしてこい!」
 堂々と言い放つアンコー。
 彼がモテない理由が、よくわかる。
 それにしても、この撃退士たち。連携の『れ』の字もないな……。



 これで3人脱落だが、八種萌(ja8157)には秘策があった。
 アンコーを落とすために、ラブレターを書いてきたのだ。
「これ、読んでくださいっ!」
 顔を赤らめつつ、手紙を渡す萌。
 いかにも女の子っぽいピンクの封筒。かわいいハート型のシール。
「な、なに……?」
 おそるおそる封筒をあけるアンコー。
 ホッケ男も、興味津々で覗きこむ。
 と同時に、どこからともなく流れだす甘いBGM。
 手紙の内容はといえば、『ある依頼で戦うあなたを見て以来、目が離せなくなりました。お忘れかもしれませんが、あなたに助けてもらったことがあります。私が久遠ヶ原に来たのも、あなたを追いかけてのこと。もしよければおつきあいを……』などという、100%作り話の告白!

「苦節ウン十年……顔を馬鹿にされようが、罵られようが、耐えて耐えて耐えてきたアンコー。そんな彼にも、ついに春が……」
 英知之(jb4153)のナレーションが入った。
 動揺するアンコー。恋文など初めてだ。
 が、次の瞬間。
「……なんてことがあると思うかぁッ!」
 アンコーの背後から、雷龍槌がブチこまれた。
「グワーッ!?」
 ラブレターを抱えたまま、地面を転がるアンコー。
 そこへ、知之がバシッと言い放つ。
「僕にもまだ来てない春が、おまえに来るだろうかっ! いやこないっ!(反語)」
「き、貴様ぁ……!」
「ふ……、そう熱くなるな。じつはな、エリート(自称)の僕もおまえと同じだ。恋をしたことがない」
「なに……?」
「おまえと僕は仲間だ。一緒に今から変わろう。真摯に悔やみ、嫉妬を捨てて心身を鍛えれば、おまえに惹かれる娘も現れる! そう、今日はおまえの新しい誕生日だ! 醜い嫉妬などない、ニュー・アンコーの誕生だ!」
 きらきらと瞳を輝かせる知之。
 その真剣な顔に、つい気を許してしまうアンコー。
 だがしかし。
「……なんてことがあると思うかぁッ!」
 至近距離から、知之の雷龍槌が炸裂した。
「グワーッ!?」
 ふたたび吹っ飛ぶアンコー。
 知之は悪党っぽく眼鏡を光らせて高笑いする。
「はぁーはははは! ふん、再スタートォ? 新しい誕生日ぃ? くだらんなぁ! このエリート(自称)……最終的に勝てばよかろうなのだぁーっ!」
 だが、彼は敵を甘く見ていた。
 アンコーの力の源は、リア充への怒りと嫉妬! この世にリア充がいるかぎり、彼の心が折れることは多分ない!
「うおおおお! リア充爆発しろおおおっ!」
 血涙を流しつつ、アンコーは突撃した。
「僕をリア充と認定したか。たしかに僕には彼女などいない。しかし、学業と仕事が恋人! つまりリアルは充実! 勝負だアンコー! このエリート(自称)が相手に

 ちゅどおおん!
「アバーッ!」

 問答無用の爆発が、知之を華麗に吹っ飛ばした。
 ようやく連携したと思ったらコレだよ!


「このラブレターは嘘だったんだな……。すべて私をだますために……」
 アンコーは手紙を握りつぶした。
「嘘じゃありません! さっきのは自称エリートさんが勝手にやったことです! 私は本気でアンコーさんを……!」
 涙(目薬)をポロポロ流しながら、萌は必死の演技で訴えた。
「え……いや、あの……」
 少女の涙を見て、うろたえるアンコー。
「せっかく勇気を出して告白しようと思ったのに……信じてくれないんですか……?」
「し、信じる! 信じるとも!」
「でも、あなたは撃退士をやめたんですよね……嗚呼、まさか天魔に与するなんて! もう、昔のあなたには戻ってくれないの?」
 よよよ、と泣き崩れる萌。
 どう見ても大根芝居だが、いまのアンコーに正常な判断力はない。
 そして彼は決断した。
「私は撃退士をやめるのをやめるぞおおおっ!」



「改心したのはいいけど……結局『リアジュー』って、なに?」
 Robinが、純粋な眼差しで訊ねた。
 残酷な問いに、アンコーとホッケ男の心が抉られる。
「うぅん……説明が難しいですねぇ……」
 月乃宮恋音(jb1221)が困り顔になった。
 そこで、袋井雅人(jb1469)が説明を買って出る。
「リア充とは何か! それは僕たちのことです!」
 人目も憚らず、恋音をハグする雅人。
 その瞬間。

「リア充ゥゥゥゥ!」
 おとなしく酒を飲んでいたホッケ男が、突如チェーンソーを掲げて突進してきた。
「そういえば、こういうキャラでした!」
 思い出したように言う雅人。
「ともかく、前回同様に崖まで誘導しましょう……!」
 と、恋音が提案する。
 しかし、怒り狂うホッケ男の足は速く、とても崖まで辿りつけそうもない。

「アンコーさん、おねがいです! 足止めしてください!」
「承知した! いまこそ私の出番!」
 萌の言葉に、アンコーは奮起してホッケ男の前に立ちふさがった。
 さっきまで酒を飲み交わしていたブサメン同士が、いま再び戦いの火花を散らす!
「八種さん! 私が勝ったらデートををぶァーッ!」
 下心丸出しのアンコーは、あっけなく敗れた。

「最後まで私利私欲に走るとは……」
 まったく理解できないという顔で、Robinはヘルゴートを使いつつホッケ男めがけてナイトアンセムを撃ち込んだ。
 距離をとり、木々を遮蔽物にしつつ、遠距離攻撃でホッケ男の足を鈍らせるRobin。
 だが、彼は多少のダメージなど気にせず突っ込んでくる。
「リア充ゥゥ! 爆発シロォォ!」
「ん、わかった」
 うなずいて、Robinはファイアワークスをお見舞いした。
 ぜんぜん意味がわかってないのだ。
 その攻撃をものともせず、チェーンソーをブン投げるホッケ男。
「ぐ……っ」
 チェーンソーは20mほど飛んで、Robinを切り裂いた。
 これぞ、チェーンソー・ブーメラン!
「まさか投げてくるとは……」
 Robin、無念のリタイア。


 しかし、彼女らの犠牲の甲斐あって、雅人たちの誘導は成功した。
 どうにか、崖の突端まで辿りついたのだ。
「前回の因縁に、決着をつけましょう!」
 言うや否や、雅人は恋音を抱き寄せてキスした。
 そこから流れるように乳を揉み、尻を撫でまわして、手品みたいにパンツを抜き取る!
「パンツゥゥゥ!」
 鼻息を荒げながら、ホッケ男が襲いかかった。
 それをギリギリまで引きつけて、まず恋音が『瞬間移動』でホッケ男の背後へ。
 つづいて雅人も、ハイド&シークで潜行しつつ後ろへ回りこむ。

「いきますよぉ……!」
 恋音は距離をとったまま、マジックショットを連発した。
 これで崖下へ突き落とす狙いだが、ホッケ男は微動だにしない。
 そこへ、潜行解除した雅人が突撃する。
 その姿は、ブリーフ一丁に網タイツ。そして顔面に脱ぎたてパンツをかぶるというもの。
 さらに、平等院特製の薬物を利用してムキムキマッチョにパンプアップ。
「ふおおおおっ! これがラブコメ仮面バージョン3です! さあホッケ男君、いざ尋常に勝負ですよ!」
 ガシィッ!
 ふたりは正面から組み合った。
 ほとばしる汗!
 湧き上がる汗!
 流れる汗!
 輝く汗!
 見苦しさMAXの『変態VS変態』バトルだ!
「いきますよ、袋井流奥義・あんこォォ!?」
 破砕拳を繰り出す寸前、雅人はチェーンソー巴投げで崖下へ放り投げられてしまった。

「こうなれば、最後の手段ですよぉ……!」
 恋音は魔王モードを発動すると、躊躇なくテラ・マギカをぶっぱなした。
 崖ごと崩して落とす作戦だ。
 が、そう簡単に崖は崩れない。
「リア充ゥゥゥ!」
 チェーンソーブーメランが飛んで、恋音の胸元に命中した。
 だが、こんなこともあろうかと! 胸には鉄板を仕込んである!
 おかげで無事に切り抜けた……と思いきや、なぜか膨張して自ら鉄板を吹き飛ばしてしまう、荒ぶるおっぱい。
「はわぁ……っ!?」
 あわてて胸を隠す恋音。
 ホッケ男の目は釘付けだ。
「うぅぅ……今度こそ、本当に最後の手段ですぅ……!」
 恋音は覚悟を決めると、OP薬を飲んだ。

 カ……ッ!
 ズドドドドドド……!

 人知を超えたサイズに巨大化したおっぱいが、なにもかもを押しつぶした。
 崖は崩壊し、恋音もホッケ男も落下する。
 なんという自爆技。




 やがて崩落が終わったとき、あたりの地形は一変していた。
 無事に残ったのは、萌ひとり。
「ふぅ……すごい戦いでした……」
 呆然と息をつく萌。
 だが、忘れてはいけない。ホッケ男は死んだわけではないことを。
 あと、アンコーも死んだわけではないことを。




依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 拭えぬ後悔を未来へ代えて・八種 萌(ja8157)
 大祭神乳神様・月乃宮 恋音(jb1221)
 そして時は動き出す・咲魔 聡一(jb9491)
重体: −
面白かった!:7人

拭えぬ後悔を未来へ代えて・
八種 萌(ja8157)

大学部1年2組 女 アストラルヴァンガード
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
籠の扉のその先へ・
Robin redbreast(jb2203)

大学部1年3組 女 ナイトウォーカー
エリート(自称)・
英 知之(jb4153)

大学部7年268組 男 ダアト
モーレツ大旋風・
御供 瞳(jb6018)

高等部3年25組 女 アカシックレコーダー:タイプA
BBA恐怖症・
長田・E・勇太(jb9116)

大学部2年247組 男 阿修羅
そして時は動き出す・
咲魔 聡一(jb9491)

大学部2年4組 男 アカシックレコーダー:タイプB