.


マスター:牛男爵
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
参加人数:25人
サポート:6人
リプレイ完成日時:2014/06/13


みんなの思い出



オープニング

「ねえ、ちょっと! 今日の最高気温33度だって! 33度よ!? これはもう、真夏と言っていいんじゃない!?」
 いつものテンションで、矢吹亜矢が騒ぎだした。
「それがどうしたんだ?」
 冷静に、チョッパー卍が応じる。
「あんたバカ!? 夏といったら海! 海水浴よ!」
「俺たち、わりと一年中海に行ってる気がするんだがな……」
「いつもいつも、海産物退治ばっかりでしょ! そんなイカくさい……じゃなくて血なまぐさいことじゃなくて、純粋に海をたのしみたいのよ!」
「まぁたしかに……思い返してみりゃ、まっとうな海水浴なんて行った覚えねぇな」
「でしょ? 今日こそ、リベンジのときよ! イカ天とか相手にするのは、もうウンザリなの!」
「なんのリベンジだか知らんが、まぁ勝手にやれよ」
「なに言ってんの! あんたも来るのよ! ついでに、ヒマな連中も集めて盛大に繰り出すわよ!」

 というわけで、ヒマな学生たちが集まって海へ行くことになったのであった。



リプレイ本文




「夏でござる! 海でござる! となれば、やることはひとつ!」
 のっけからハイテンションで登場したのは、エイネ アクライア(jb6014)
 おもいきり空気を吸いこんでから、彼女は海に向かって叫ぶ。
「うぅーみぃーっ!!」
 意味不明だが、これが彼女の儀式なのだ。
 儀式に意味などない!
「それでは、さっそく泳ぐでござるよ! ひゃっはー!」
 どぼーん、と海に飛びこむエイネ。
 そのまま潜水すると、じきにエイネは魚をつかまえて浮上した。
「お魚げっとー! にござるー!」
 それフグだから、気をつけたほうがいいよ。



「ふむ……見慣れた海ですね。では早速、あらたに覚えた技を……」
 エイルズレトラ マステリオ(ja2224)は、召喚獣を呼び出した。
 ダイヤという名のストレイシオンだ。
「さぁ行きましょう」
 ダイヤにつかまって、海へダイブするエイルズ。
 でもクライムないから、あっというまに振りほどかれる。
 おまけに、むこうのほうから巨大なウニ型ディアボロ登場。
「あれは僕ひとりでは勝てそうにありませんね。潔く逃げるとしましょう」
 冷静に判断すると、人が多そうなほうに向かってエイルズは走りだした。



 浜辺の片隅。
 佐渡乃明日羽の前に、月乃宮恋音(jb1221)、愛須・ヴィルヘルミーナ(ja0506)、深森木葉(jb1711)の3人が並んでいた。
「えぇと……こっちの白スク水は、恋音と愛須ちゃんね?」
 と言いながら、明日羽は用意した水着をふたりに手渡した。
「おお……ありがとうございますぅ……」
「あ、ありがとうです……」
 恋音と愛須は、おどおどと頭を下げた。
「でも、そんなの私に頼まなくても手に入るよね?」
 詰問口調で明日羽が問いかけた。
「そ、それは、そのぉ……」
 恋音は答えられず、愛須も顔を伏せるばかり。
「まぁいいけどね? 私を使い走りにした代償は高いよ?」
「うぅぅ……」
 とんでもない目に遭う予感を感じて、恋音と愛須は顔を見合わせた。

「あの……あたしも『代償』ですぅ……?」
 上目づかいで問いかける木葉は、水着でなく白襦袢を着ていた。
「ん? 木葉ちゃんは大丈夫だよ? それとも、なにか払いたい?」
「そういうわけでは……! ただ、あたしも衣装を注文してしまった気がするのですぅ……」
「木葉ちゃんの注文は『私の好きな水着』でしょ? それは私にしかできないことだから、許してあげるよ? はい、これね?」
 明日羽は、自分の着ている制服を脱いで手渡した。
「こ、これは水着じゃないです!」
「え? 私が水着だって言うんだから水着だよね? そうそう、これは襦袢と交換だからね?」
「にぇぇ……っ!?」
 というわけで、木葉は素肌の上から制服一枚だけを羽織ることに。
 大丈夫! サイズが大きいから膝まで隠れるよ!

 そんな経緯のあと、3人は浮き輪を持って沖へ出た。
 いや、恋音が持ってるのは『天然の浮き』……すなわちおっぱいだ。
 そして、3人そろってクラゲみたいに波間をぷかぷか。
 こうして、日ごろの戦闘の疲れを癒し……って、あんまり戦ってるところ見たことないな、この子ら。


 そのころ。鬼灯アリス(jb1540)は、念入りに日焼け止めを塗っていた。
 身につけているのは、白のワンピース水着。
「どうせヒマだし、たまにはこういうのもアリよね」
 と言いながら、浮き輪を装備して海に突撃。
 どぼーん!
 泳ぐというより浮いてるだけだが、ある意味ただしい『海水浴』である。
「ふぅ……気持ちいいわ」
 波に揺られていると、沖のほうに愛須と恋音の姿を発見。
「どうせなら一緒に遊ぼうかしら」と、泳ぎだす。

 そこへ、突如襲いかかるイカ天!
「ええっ!?」
 あわてて光纏するアリスだが、すでに海面下から忍び寄っていた触手が彼女の脚を絡め取った。
「ひぁぁ……っ」
 弱点の内腿を攻められて、力が抜けてしまうアリス。
 だが、異変に気付いた愛須たちが浮き輪で泳いできて加勢した。
 おお、撃退士が4人もいれば、ディアボロ1匹ぐらい楽勝だ!
 ……と言いたいところだが、駆けつけた3人は何故か光纏もせず触手に捕まってしまった。
 そして始まる触手プレイ。
 6月の爽やかな海に、少女たちの嬌声がこだまする。
 だが、そこにエイルズの連れてきたウニボロが!
 ばこぉぉぉぉん!
 以上!
 えっちなのはいけないと思います!



「暇ではないのですが、せっかくのお誘いですし……」
 黒井明斗(jb0525)は亜矢の誘いに乗って、スイカ割り特訓を企画した。
「まず、割り手と投げ手にわかれます。割り手は、目隠しに木刀で所定の位置へ。そこに投げ手がスイカを投げるという……暗闇での戦闘に慣れるための訓練です」
 冗談みたいだが、明斗はマジだった。
 用意されたスイカの山を見て、撃退士たちが集まってくる。
「では先輩。後輩たちのため、割り手の手本をおねがいします」
「はぁ!?」
「大丈夫、先輩ほどの手練なら軽いものですよ」
「ま、まぁスイカぐらい楽勝よね」
 という流れで、亜矢は目隠し&木刀でバッターボックスへ。
「では投げますよ」
『では』の辺りで、スイカを全力投球する明斗。
 ゴシャアアッ、と大玉スイカが亜矢の顔面に砕けた。
「ちょ、ちょっと待って?」
「もっと投げて? 了解です」
 鼻血をおさえる亜矢に向けて、明斗は次のスイカを投げつけた。
 ゴスウウッ!
 さらに三発目。
 ドシャアアッ!
 とどめに、もう一発。
 ドグシャアアッ!
 ひとつも打ち返せないまま、亜矢は沈んだ。
「……と、こんな感じです。お手本ありがとうございました」
 スイカと血で真っ赤になった亜矢をヒールする明斗。
 にっこり笑いながら、彼は言う。
「タコ焼き中毒呼ばわりされたことは、少ししか気にしてません。……ええ、ほんの少しですよ?」


 そのころ。別の場所でも報復が行われようとしていた。
「あの……卍さん、すこしOHANASHIが……」
「OHANASHI?」
「はい……うかがいますけど、ゴリラがかわいいものなら何が私にピッタリなんですか?」
「聞いてたのか!?」
「口は災いの門です……」
 闘気解放して、すばやく卍の腹部を殴る雫(ja1894)
「ぐはっ!」
「陰口は良くありません……」
 倒れた卍を物陰に引きずってゆく雫。
 周囲を見回しながら、暗い笑みを浮かべて雫は卍を簀巻きにした。そのまま頭だけ出して砂に埋め、猿ぐつわを噛ませてスイカのかぶりものをかぶせる。そしてスイカ割り特訓をしている連中のところへ行き、こう言った。
「あっちに丈夫なスイカがあります。訓練にいかがですか?」
「「おう!」」
 なんの疑念も持たずに応じる撃退士たち。
 それを見て、雫が問いかける。
「亜矢さんも参加しますか? だまっていてくだされば、良い音を出さずに済みますが……」
「もちろん参加するわよ!」
 即答だった。
「ありがとうございます。聞いたところ、これは対暗闇用の訓練だとか。がんばりましょう」
 一転して、すがすがしい笑顔を浮かべる雫。
 しかし、そこにエイルズとウニボロが!
 ばこぉぉぉん!



「海といったら、やっぱり海の家ですよね! というわけで、私は海の家を開店します!」
 わりと無茶なことを言い出して、久遠寺渚(jb0685)は海の家をオープンした。
 資金はどこから……と思うが、コメディだから何とかなる! かわいい子なら明日羽が援助してくれるし! マジ女の子でよかった!
「というわけで、海の家『まー君』開店です!」
 白い花柄水着にエプロン+ビーチサンダルを装備した渚は、みごとな看板娘だった。
 メニューは──

・ヤキソバ
・ラーメン
・カレー
・カキ氷(イチゴ・メロン・レモン・ブルーハワイ・宇治金時)
・焼き鳥
・焼きもろこし(焼きたて)
・各種ドリンク(ソフト・アルコール・ノンアルコール)

 ……等。
 カキ氷は、闘刃武舞で削り出し。
 使用回数? 何ですか、それ?
 と言いたいが、ルールは破れないので3回まで。
 価格は全て300久遠。
 ほかに店がないので、当然客は集まる。
『海の家がないなら海の家を建てればいいじゃない』と言わんばかりの、見かけによらずパワフルな渚であった。



「暑いから海へ行く……オーケー、理にかなってるわ」
『まー君』で買ったアイスクリームを舐めながら、芹沢秘密(jb9071)がやってきた。
 眼鏡のふちを指先で押し上げつつ、彼女は言う。
「……だけど氷の魔女たる私としては、それじゃあまだ足りない。もっと冷えてなきゃだめ。……30度? そんなの、人が生きられる環境じゃないわよね。おそらく日本がこれだけ暑いってことは、逆側はキンキンに冷えてるハズ」
 たしかに、南半球は冬である。
 そこで秘密が考え出したのは、『ひたすら地面を掘って反対側とつなげる』という手段!
「普通なら勝手にそのへん掘ったりしたらマズイだろうけど、砂浜なら文句を言う人も少ないでしょう」
 と言いながら、シャベルでざかざか掘り始める秘密。
 いや……いくらコメディでもそれは無理じゃないかな……ほら、地球の核って6000度ぐらいあるし……って、そういう問題じゃない気もするけど……。
「そうね。無事開通した暁には、『麗しき氷の女王の隧道』と名付けようかしら。夏に真正面から打ち勝ってこそ、人は人であるのよ」
 一心不乱に穴を掘り続ける秘密は、あっというまに姿が見えなくなった。
 反対側まで行けたかどうかは、ギャンブル神のみぞ知る。



「今日こそ、あの鮫にリベンジです!」
 高らかに宣言すると、楯清十郎(ja2990)はボートを漕いで沖へ出ていった。
 ある程度岸から離れたところで、瓶に詰めてきた血液を海にまく。さらに、その血に対してタウント!
「さあ、いつでも来い!」
 はたから見ると理解困難な行動だが、彼は去年釣り逃がした鮫を捕まえようとしているのだ。
 前回の失敗を教訓として、釣竿は使わない。両手をフリーにして、つかみどりだ!
「来たな。さぁいくぞ!」
 ゆらりと近寄ってきたのは、体長7mのホオジロザメ。
 巨大な顎を開けて、正面から鮫が襲いかかる。
 清十郎は冷静にシールドで防御したものの、肩口から鮮血が流れ出す。
 しかしこれは作戦どおり。意図的に生命力をへらして、火事場の馬鹿力を発動だ。
「今度こそ僕の勝ちですっ!」
 髪芝居で鮫を縛り上げ、一気に担ぎ上げて──
 と思った直後、もう一匹の鮫が出現!
「ま、まさか! 血の匂いで他の鮫が!? ……いや、両肩に一匹ずつ担げば問題ありません!」
 無茶なことを言いだす清十郎だが、三匹目の鮫までご登場。
「なんの! こいつは股に挟んで……!」
 実演できたかどうかは、判定をご覧ください。



「一年前の忘れ物を取りにきた……!」
 ここにも、復讐を誓う者がいた。
 歌音テンペスト(jb5186)。彼女は一年前、ゴジ●型ディアボロとの死闘に敗れた。
「今日こそ、雌雄を決するとき!」
 いや、そのシユーとかいうのは一年前に決してるんだ。
 それはともかく、純白ブラ&パンツって格好は一体……。
 などと言ってる間に、海へダイブする歌音。
 やがて浜辺に上がってきたときには、下着がスケスケに!
 ブラにはイクラ的な赤さ、パンツにはワカメ的な黒さが!
 ちょっとゴジ●さーん! 早いところ、この歩く蔵倫違反を撃退してくださーい!
 呼ばれて飛び出て、「あんぎゃあああ!」とか咆えながら、松……ゴジ●登場!
 何度も言うけど、これが海産物って強引すぎるぞ!
「来たわね! 5億年の叡智を賭けて、いざ1年ぶりに勝負!」
 鈍器スレイプニルに騎乗して、インビジミストをまといながら迫る歌音。
「ゴジ●ハリウッド化第2弾による著作権の厳しさと、妄想力をかきたて蔵倫にも優しいスケスケ濡れ下着による至高のエロスをこめて……くらえ! 絆・連想撃!」
 去年同様、性懲りもなく釘バットを敵のケツに突き刺す歌音。
 まぁ結果は判定のとおり。
 で、このゴジ●どうすんのよ……。



 そんな騒ぎの中。
 砂浜の片隅で、ビーチバレーが行われようとしていた。
「人数が半端だなぁ。……ま、適当にチーム分けしようぜ」
 Caldiana Randgrith(ja1544)は、迷彩柄のビキニ+ホットパンツ姿で、手には久遠ヶ原特製バレーボールを持っていた。
「せっかくのゲームだぁ。本気で楽しもうや」
 立てた指の上でボールをクルクルまわし、にやりと微笑むCaldiana。
 なお、『本気』と書いて『ガチ』と読む。

「あー、その、だな……できるだけ、怪我しないで帰りたいもの、だな……」
 そっと目をそらすのは、アスハ・ロットハール(ja8432)
「あぁ? なに眠たいこと言ってんだ!? やるからにはヤる! ったりめぇだろぉ、なぁ!?」
「そ、そうだな……。ビーチバレーで重体なんて、あるはずないよな。ははは……」
 アスハの笑顔は歪んでいた。

「いったいロットハールさんは、何に怯えてるんだろうね? ただのビーチバレーなのに」
 神喰茜(ja0200)が、首をかしげた。
「怯えてるわけじゃない。……ただ、ちょっと、な。イヤな予感が、な……」
 どうにも歯切れの悪いアスハ。
「大丈夫、大丈夫! ただのビーチバレーで病院送りとか、ありえないから! 今日は夏を先取りして、たのしく遊ぼう! ついでに親睦とか深めればいいじゃない。……あ、でもボールが耐えられるのかな。まぁ耐えられるとしたら、逆に私たちのほうが心配だけど……」
 こうして、アスハの死亡フラグは着々と立てられていった。

 そこへ、エルネスタ・ミルドレッド(jb6035)が、妹のErie Schwagerin(ja9642)に引きずられるようにやってきた。
「ふふん♪ どぉ〜? 海に行くっていうから、新しい水着を買っちゃったのよぉ。エルネと一緒に買いに行ったんだからぁ」
 そう言って、Erieは水着を見せびらかした。
 白を基調とした花柄のビキニ+スカートだ。抜群のスタイルも相俟って、周囲の男子+一部の女子からの視線を釘付けである。
 一方、エルネスタは丈の長いパーカーを着こんで、ひざから下しか見えてない。
「エルネ? いま気付いたけど、なんでパーカー着てるの? 脱ぎなさいよ、暑苦しいわねぇ……」
 Erieがパーカーを脱がしにかかった。
「ちょっと! やめてってば!」
 顔を赤くして抵抗するエルネスタ。
 しかしErieは有無を言わさず強制的にキャストオフ!
 パーカーの下から現れたのは、ホルターネックの黒ビキニ!
「「おおーー!」」
 周囲から歓声が湧いた。

「そうそう。そのほうがずっといいわよぉ」と、Erie。
「うぅ……買わなければ良かった……」
「大丈夫よぉ。すごく似合ってるわぁ」
「そう……?」
「私がお世辞を言うと思うのぉ……?」
「まぁ、たしかに……」
 そこでようやく冷静になったエルネスタは、あらためて参加メンバーに挨拶した。
「初対面の方は初めまして。エリーの姉のエルネスタよ。よろしく」

 というわけで、初対面の者同士で挨拶が交わされると、チーム分けはどうするかという話になった。
「私はエリーと一緒がいいな……」
 エルネスタが言い、Erieも同意したので、まずはこのチームが確定。
 Erieと組みたかったキイ・ローランド(jb5908)は、残念そうだ。
 ちなみに服装は、薄手のパーカー+トランクスタイプの水着である。
「じゃあ自分は補欠で、回復要員にまわるよ」
 戦いの匂いをかぎとって、冷静に対処するキイ。
 なにより、まちがってもErieの敵になりたくないのだ。

「なんで回復要員が必要なんだ……?」
 疑問を口にしたのは、生駒カコ(jb9598)
 だが、だれもその疑問に答えない。
 ただCaldianaだけが、『察しろ』と言わんばかりに微笑みかける。
 こうして、たのしいビーチバレーが始まった。


● 第一回戦:Caldiana&アスハ vs Erie&エルネスタ

「いまさらだけど、ビーチバレーってどんなルールなのぉ? 普通のバレーと変わらない感じぃ? 強烈なスパイクで相手を潰せば良いんだっけぇ……?」
 Erieが問いかけた。
 だが、これまた誰も答えない。
 もしや、だれもルールを知らないのでは。
「スパイクで相手を……って、それはドッジボールでは……?」
 と、エルネスタ。
 しかし、言ってはみたが久遠ヶ原なら納得だとうなずいてしまう。
「よくわからないけどぉ……ま、怪我したら回復してあげるわぁ。キイくん限定でねぇ……?」
 Erieの言葉に、キイは顔をほころばせた。
 が、そんなほのぼのタイムは即終了。

「さて、殺ろうかぁ?」
 当然のようにボールをキープして、Caldianaがコートの端に立った。
「いくぜ、殺人サーブ!」
 初手から本気モードのCaldianaは光纏してボールを放り上げると、跳躍から精密殺撃サーブ!

 バシィィッ!
 ズドォォォン!

 大砲みたいな一撃が、Erieを直撃した。
 ……と思いきや、エルネスタが割って入り、みごとレシーブしている。
 ボールは、彼女の遙か頭上へ。
「……ふふふ、いいわ。私の可愛い妹に手を出すのなら……!」
 エルネスタの中で、なにかのスイッチが入った。
 ブリザードのようなオーラをまきちらし、ぎらりと敵陣を睨みつけるエルネスタ。
「ちょ……ちょっと落ち着こう、か? 目がマジにしか見えないんだが……?」
 アスハがなだめた。
 しかしエルネスタは聞いてない。
「Amor vincit omnia!(愛は全てに打ち勝つ!)」
 彼女は全力でジャンプすると、自らの打ち上げたボールをそのままスパイク!

 ドゴオオオン!
「グワーーッ!」

 とばっちりで致命打を受けたアスハは、盛大に地面を転がって動かなくなった。
 水着姿とか、見てるヒマもなかったぜ!
 このプレーにより、アスハは戦闘不能。エルネスタはドリブルの反則で退場。
「ぼ、僕の出番が……」
 死亡フラグをきっちり回収して、がくりと意識を失うアスハ。
 とりあえず、Erie側にキイ、Caldiana側に茜が入って、試合再開!

「おらぁ! 次いくぜぇ!」
 サービス権は移動せず、Caldianaが再び殺人サーブを発動した。
「ここは自分にまかせて!」
 キイがErieの前に飛び出し、すかさずシールドを……と思ったが、魔具魔装で受けたら反則なので発動できない! ならば防壁陣を……と思ったものの、これまた魔具魔装がないと受けられない! それなら銀の盾を……などと言ってるうちに、バレーボールという名の殺人兵器がキイの胸部を撃ち抜いた。
「ぐは……っ!」
 血を吐いて吹っ飛ぶキイ。
「な……っ! キイくん!?」
 血相を変えて駆けつけるErie。
「えりーちゃんを守って死ねるなら、本望だよ……」
 口元から血を流しつつ、Erieの腕の中でキイは斃れた。

「……ビーチバレーって、こんな競技だったか……?」
 壮絶きわまる試合を前に、カコは呆然と呟いた。
 久遠ヶ原だし、すこしぐらいのケガなら……と気楽に考えていたものの、あまりにひどい。まさにビー血バレーだ。ぶっちゃけ、凶器をぶつけあうだけの殺しあいである。
「そこのあなた、チームに入ってねぇ……? ゲーム続行よぉ……?」
 悪鬼の形相で、Erieが呼びかけた。
「……帰ってもいいか?」
「駄目よぉ……あなたがいないと試合できないし、キイくんの仇を討てないでしょぉ……?」
「……やるしかない、か……」
 逃げられる雰囲気ではないと察して、カコは諦めた。

「殺人サーブを喰らいやがれぇ!」
 宣言どおり、Caldianaが上空から凶弾をぶっぱなした。
 でも怒ったErieが怖いので、狙いはカコである。
「ちょ、ちょっと待て! こんなの絶対おかしい! 受けられるわけないだろ!」
 あわてて逃げるカコ。
 ボールは砂浜に突き刺さり、どばーんと砂を巻き上げた。
 衝撃で転倒するカコ。
 これで、Caldianaチームは3ポイント獲得。

「逃げても無駄だぜ! オラァ!」
 Caldianaの手から、4発目のサーブが放たれた。
「だから無理だって……!」
 なす術もなく逃げるカコ。
 その背中に、凶器が命中!
「こんなのビーチバレーじゃない……! ていうか、私の想像してた海水浴はどこに……!?」
 こうしてカコもリタイア。

「まだキイくんの仇を討ってないのよぉ……? ねぇアスハくん、チームに入ってぇ……?」
 血まみれで倒れているアスハを、Erieが引きずり起こした。
「見てのとおり、僕は大怪我してるんだが、な……」
「ただの人数あわせよぉ……コートで寝てるだけでいいからぁ……。ライトヒールもかけてあげるしぃ……」
 なかば無理やりコートへ引きずられるアスハ。
 たのしいビー血バレーは、こうして全員の生命力が尽きるまで続いたという。



「はァ……こんな感じに堕落を貪り喰らうのも、たまにはいいわねェ……♪」
 喧噪から遠く離れた浜辺で、黒百合(ja0422)はのんびりと日光浴をたのしんでいた。
 ビーチパラソルの下。日焼け止めを塗り、サングラスをかけて、デッキチェアに寝そべりながらフローズンダイキリを飲む黒百合。身につけているのは、なぜか白のスクール水着だ。ちゃんとゼッケンも付けて『くろゆり』って書いてあるぞ!
「……ん? なぜかって、水着ネタだと定番中の定番でしょォ? なにかおかしいかしらァ……?」
 地の文のツッコミに答える黒百合。
 いや、たぶん独り言だな。うん。
 完全休業状態でバカンスをたのしみにきた彼女は、戦闘をする気などまったくない。無駄に体力を使って泳いだりするのもウンザリだ。
 なので、騒ぎに巻きこまれる可能性のある場所からは距離を離してある。
 ときおりゴジ●の雄叫びが聞こえるが、それも波の音に掻き消されてしまうほどだ。
 乱痴気騒ぎ大好きで戦闘狂の黒百合さんだが、たまには休息をとりたいときもあるらしい。
「ふゥ……今日も久遠ヶ原は平和ねェ……♪」



「せっかくやから、うちはビーチフラッグス大会開くで! 優勝者には、明日羽クンからの賞品つきや! もちろんルール無用!」
 黒神未来(jb9907)は、大声で宣伝した。
 身につけているのは、黒ビキニ。自慢のDカップを見せつけるハラだ。
 が、しかし! 未来より大きいのは、ぎょうさんおるでぇ!
 まず確実に、というか圧倒的に勝ってるのは、紅貴子(jb9730)
 紅と黒のビキニにパレオを巻いた立ち姿は、モデルも裸足で逃げだす勢いだ。
「びーちふらっぐす、でござるか? おもしろそうでござるな! 拙者も参加するでござる!」
 さんざん泳いできたエイネは、疲れを見せずに参加。
 見たところ、未来と同等以上のバストはありそうだ。
「ビーチフラッグですか……。砂浜で脚力トレーニング、いいですわね」
 長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)は、白ビキニで参戦。
 バストサイズは……
 くっ、わからん! でもDぐらいはあるだろ! あるはず!

 ほかの参加者は、イカ天と戯れて疲労困憊の木葉。スイカ割りで血まみれの亜矢。そして、女性陣の水着姿が目的で参加した袋井雅人(jb1469)だ。
 というか、冷静にまわりを見てみれば、雅人以外は全員女子!
 実際リア充だよな、雅人って。爆発しろ。……いやごめん、しょっちゅう爆発してたわ。
「は、はずかしいですわ……あまりじろじろ見ないでくださいませ!」
 遠慮なく視姦する雅人を、みずほがシャドーボクシングで威嚇した。
「これは失礼しました。見ていることがわからないよう、サングラスをかけますね」
 まじめな顔で言う雅人だが、解決になってない。

「あのぉ……まだ参加できますか……?」
 小声で問いかけたのは、ブランシュ・リゴー(jb9976)
 麦わら帽子が似合う中学生だ。
「できるで! ただし、V兵器もスキルもアリの久遠ヶ原ルールや!」
 未来が答えた。
 それを聞いたとたん、ブランシュは尻込みしてしまう。
「ええと……、すみません。やっぱり参加は辞退で……私は新米なので……みなさん頑張ってください。……あ、でも見学させてもらえたら嬉しいです……」
「好きにしてええよ。せや、ついでに号砲係やってくれへん?」
「あ、はい。私でよければ」
 というわけで、参加者はそろった。

1:雅人
2:木葉
3:みずほ
4:未来
5:エイネ
6:貴子
7:亜矢

「ふふふ……かわいいお嬢さんたちの水着姿は眼福ものね」
 怪しい視線で参加者たちを見つめる貴子。
「恋音、愛須さん、応援おねがいしますね!」
 さわやかに振り向く雅人だが、恋音も愛須もイカ天のおかげでグッタリぎみだ。
「ではみなさん、スタート位置についてください……」
 ブランシュが言い、7人の選手たちは旗に背を向けてうつぶせになった。
 ちなみに旗はひとつだけ。いきなり決勝戦だ。何度もやるほど字数はない!

「では、用意……スタート!」
 パーンと号砲が鳴らされた、次の瞬間。
 まず、みずほがFLB(縮地)を発動した。
 同時にエイネも磁滑(磁場形成)を使用。
 移動力が上昇したところで貴子のアイスウィップが地面すれすれに薙ぎ払われ、全員まとめてスッころんだ。
 ちなみに木葉はオリジナル技『ドジッ娘』を発動して、鞭をくらう前から勝手にコケている。
「みんな、油断しすぎよ」
 貴子は一人で悠々と走りだした。
 その後頭部に、亜矢の影手裏剣が突き刺さる。
「はう……っ!」
 盛大に砂の上をころがる貴子。
 結果、ほとんど全員横並びのスタートに。
 移動力だけ見れば、磁滑を使ったエイネが一番早い。次がみずほだ。
 が、これはルール無用のサバイバルビーチフラッグ。
 どこかのカートレース同様、完走できるかさえ怪しい。

「なんぴとたりとも、うちの前は走らせへんで!」
 未来の魔眼(ゴーストバレット)が飛び、エイネの足下の砂をえぐった。
 つづいて、亜矢の影手裏剣烈が発動。先頭集団を全員ふっとばして、彼女がトップに。
「あはははは! あたしを呼んだのは間違いだったわね!」
「なんも間違っとらんで!」
 未来は冷静に二発目の魔眼を撃ち込んだ。
 足下の砂とかぬるいことは言わず、亜矢の背中に直撃だ。
「アイエエエ!」
 悲鳴を上げて倒れる亜矢。
 想像すればわかるが、この手のレースでは前を走るほうが不利だ。

 が、そこで足を止めたりする連中ではない。
「貴族の誇りにかけて、旗はいただきますわ!」
 みずほがエイネをさしおいて、トップに立った。
 その誇りは、もっと別のものにかけたほうが……。たとえば天魔退治とか……。
「負けぬでござるー!」
 エイネが後を追い、貴子と雅人が並んで続いた。
 木葉は、妨害も受けてないのに3回ころんでビリッケツ。

 そして、みずほとエイネがほぼ同時に旗へ飛びかかった。
 一瞬遅れて、貴子が襲いかかる。──旗ではなく、みずほとエイネに向かって。
 そう、これは勝利を捨てたラッキースケベ狙い!
 狙って飛びかかるのをラキスケと呼べるのか!?
「な、なにをなさるんですの!?」
「狼藉者でござるぅぅ!」
 抗議の声をあげる二人だが、貴子は聞こえないフリして胸を揉んだり尻を撫でたり。
 旗を前にして、予想外の(?)キャットファイトが始まる。

「これは絶好の機会!」
 雅人が目の色を変えてダッシュした。
 無論、旗を横取りする機会という意味ではない。おっぱいを揉む機会という意味だ。
「よっしゃ、チャンスや!」
 未来は真剣に旗を狙っている。
 猛然と駆け寄り、サッと手をのばして旗を……旗を……?
 なぜか、その手にあるのはみずほの白ビキニだった。
 事態に気付き、ハッと我に返るみずほ。
 次の瞬間、絶叫とともに拳風が荒れ狂った。
「いやぁ〜! やめて〜! 見ないで〜!」
 なぜか雅人が真っ先に殴り飛ばされ、次に未来とエイネと貴子と亜矢が一斉に吹っ飛ばされた。

 数秒後、旗の前には胸を隠して真っ赤になったみずほの姿が。
「お、お嫁に行けませんわ……」
 羞恥のあまり、脳天から煙を噴き上げて倒れるみずほ。
 そこへ木葉がトタトタ走ってきて、旗をゲットしたのであった。
「はわわ……勝っちゃったですぅ」
 まさに漁夫の利!
「あの……ケガをした方はこちらへ……」
 負傷者にライトヒールをかけながら、参加しなくてよかったと思うブランシュだった。


「木葉ちゃんが優勝? じゃあ賞品あげるね?」
 明日羽がやってきた。
「わあい。賞品もらうのですぅ〜」
 無邪気に喜ぶ木葉。
 その背後から、イカ天とタコ天の触手が迫る!
「む! ジャマはさせへんで!」
 未来は雅人をつかまえると、「人身御供や!」と言いながらイカ天めがけて放り投げた。
「なぜ私があああ……っ!?」
 触手に絡まれてデロデロにされてしまう雅人。
 だが、それでおとなしく帰るような敵ではない。
「だったら、こっちや!」
 未来は例の錠剤を取り出すと、恋音の口へ放り投げた。

 ずどおおおおん!

 巨大化して周囲を押しつぶす、恋音のおっぱい。
 となりにいた愛須とアリスが、当然のごとく巻きこまれる。
 それでも2匹の天魔は退かない。
「く……っ。これでも駄目なんか!」
 ぎりっと歯噛みする未来。
 そりゃまぁ、撃退士に天魔を召喚する力なんてないし……。
「じゃあみんなには天魔と遊んでもらって……木葉ちゃんは、こっちにおいで?」
 明日羽はニッコリ微笑むと、木葉をつれて立ち去った。
 残された美少女撃退士たちを、無数の触手が襲う!
 しかし、そこへ!
 ウニボロをつれたエイルズが!

 どかあああん!

「少々やりすぎましたか……?」
 触手まみれな死屍累々の海岸を見て、エイルズは呟いた。
 しかし、ウニはまだ生きている。コメディにおいては無双の敵を、エイルズひとりで倒せるのか?
 と思っていると、海から亜音速で突っ込んでくるダツ型ディアボロ!
「あれを誘導してウニに突き刺せば、任務終了ですね」
 狙いどおり、ダツはウニに突き刺さってダブルKO。


 こうして、海に静寂が取りもどされたのであった。
 取りもどされたのであった!
 うしろのほうでゴジ●っぽい何かが大暴れしてるけど、見なかったことにしよう! な!
「おんぎゃああああ!」とか物凄い咆哮が聞こえるけど、聞かなかったことにしよう! な!
 砂浜が大炎上してるけど、キャンプファイヤーだと思おう! な!

 以上!
 たのしい海水浴でした!




依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 奇術士・エイルズレトラ マステリオ(ja2224)
 道を切り開く者・楯清十郎(ja2990)
 勇気を示す背中・長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)
 主食は脱ぎたての生パンツ・歌音 テンペスト(jb5186)
 ゆるふわ森ガール?・紅 貴子(jb9730)
 とくと御覧よDカップ・黒神 未来(jb9907)
重体: 道を切り開く者・楯清十郎(ja2990)
   <釣った鮫にまた喰われた>という理由により『重体』となる
 主食は脱ぎたての生パンツ・歌音 テンペスト(jb5186)
   <またゴジ●に踏み潰された>という理由により『重体』となる
面白かった!:12人

血花繚乱・
神喰 茜(ja0200)

大学部2年45組 女 阿修羅
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
ロリ巨乳・
愛須・ヴィルヘルミーナ(ja0506)

中等部1年1組 女 ディバインナイト
笑みを流血に飾りて・
Caldiana Randgrith(ja1544)

大学部5年22組 女 インフィルトレイター
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
道を切り開く者・
楯清十郎(ja2990)

大学部4年231組 男 ディバインナイト
蒼を継ぐ魔術師・
アスハ・A・R(ja8432)

卒業 男 ダアト
災禍祓う紅蓮の魔女・
Erie Schwagerin(ja9642)

大学部2年1組 女 ダアト
鉄壁の守護者達・
黒井 明斗(jb0525)

高等部3年1組 男 アストラルヴァンガード
未到の結界士・
久遠寺 渚(jb0685)

卒業 女 陰陽師
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
能力者・
空木 アリス(jb1540)

卒業 女 バハムートテイマー
ねこのは・
深森 木葉(jb1711)

小等部1年1組 女 陰陽師
勇気を示す背中・
長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)

大学部4年7組 女 阿修羅
主食は脱ぎたての生パンツ・
歌音 テンペスト(jb5186)

大学部3年1組 女 バハムートテイマー
災禍塞ぐ白銀の騎士・
キイ・ローランド(jb5908)

高等部3年30組 男 ディバインナイト
撃退士・
エイネ アクライア (jb6014)

大学部8年5組 女 アカシックレコーダー:タイプB
燐光の紅・
エルネスタ・ミルドレッド(jb6035)

大学部5年235組 女 アカシックレコーダー:タイプB
花唄撫子・
芹沢 秘密(jb9071)

大学部3年253組 女 アカシックレコーダー:タイプA
揺れる炎に道を探して・
生駒 カコ(jb9598)

大学部2年247組 女 アストラルヴァンガード
ゆるふわ森ガール?・
紅 貴子(jb9730)

大学部6年308組 女 ルインズブレイド
とくと御覧よDカップ・
黒神 未来(jb9907)

大学部4年234組 女 ナイトウォーカー
伝説を撮えた少女・
ブランシュ・リゴー(jb9976)

大学部1年107組 女 アストラルヴァンガード