○開幕!
実験の為、集められた有志を前に、大貫薫(jz0018)は宣言する。
「集まってくれてありがとう! 調理時間とかで多少のばらつきが出ると思うから、出来たのから順番に角で触らせてもらうわね。 さあ、どちら様も準備はいーい?」
輝く角、沸き立つ一同、そしてはじまる大オカルト料理実験!
●アフロな玉子焼き
「無理して食べなくていいんだから‥‥な?」
フライパンの上で蠢く、黄色い物体を制御しながら柊 夜鈴(
ja1014) は、応援し続けてくれる義妹Rehni Nam(
ja5283) を心配そうに顧みた。無論フライパンから注意が逸れる。
「あ、お義兄ちゃん余所見ダメですよ!?」
慌てたRehniの言う通り。目を離した一瞬を突いて、黄色い物体は風船状に膨れ上がり、ボカンと破裂。調理場の一部を煙が覆う。
晴れた後に現れたのは――
「う〜ん‥‥アフロ型卵焼き、ですか」
まるでアフロカツラのようなふんわりもっさり玉子焼き。
「あ、まだ角使ってもらってな――」
止める夜鈴をよそに、Rehniは果敢に口へ運んでしまう。
「――!」
直後、見開かれるRehniの眼。喉にでも詰まらせたのか言葉が出ない。
「ど、どうした!?」
とにかく意識の無事を示し、どうにか飲み込んでから一言。
「く、口の中で突然増量して、タイヘンでした‥‥」
「増えるアフロ‥‥。つ、次こそはもうちょっとまともなの作るから!」
それでも味はよかった方です、と夜鈴をフォローし、Rehniは残りのアフロ焼きを平らげるべく箸を進める。
――あらら、全部食べられてしまったので検証できず。兄妹愛にあたしが負けた!
●チキン南蛮・黒と緑の競演
「とりあえず普通に作ればいいんですゆね! がんばりますなのー☆」
極めて普通の材料と調理方法で挑むは鳳 優希(
ja3762) 。でもちょっと普通でないところもあって。
「チキン味付〜甘酢一本! タルタルに〜はピクルス大盛りぃ〜♪」
そんな歌を口ずさみながら、揚げたての黒い塊に真緑の物体を乗せて完成!
勇み足で愛しの夫の元へ出来立てをお届け。
「おお、出来たか‥‥って、これは‥‥なんだ?」
鳳 静矢(
ja3856)は、妻優希が「チキン南蛮」を作るとは聞いていた。しかしどうみても何かが違う。
「愛妻料理ですよー☆ 角もちゃんと触れさせましたから安心してどうぞ!」
笑顔が眩しい。きっと何か確信があってだろう、静矢は覚悟を決め口へ――
「――‥‥う、むぅ‥‥」
なんとも言えない複雑な表情。額に薄ら滲む汗。とりあえず租借した分は飲み込んだ。口の中がぱさつく。
「うー? どうしたのー?」
「まぁ‥‥優希も、ほれ」
怪訝な表情で窺う優希へ、静矢は黒い塊を一切れ差し出した。
「はぁい☆ あーん‥‥っ!? こ、これは――」
差し出されるままぱくりと口の中へ。直後表情を凍らせる優希。もはや言葉は要らないだろう。
「かたにが、ってこれ炭ぃぃいいい!!」
――完全に炭化していたみたい。美味しい炭と不味い炭があるなら証明出来そうだけど‥‥これは判定不可能、っと。
●最凶の臭気料理
多くのものが昏倒する中で、無明 行人(
ja2364) はひとり決断を迫られていた。
「確かに変わったモノを探してはいましたがね!? これは流石に食べませんよ!? 食いもんのニオイしてないでしょーよー!?」
「いいえ、これは強い臭気があるだけで、とても美味しいものです。さあ、是非ひとくち」
どうぞ、と無慈悲無表情に一切れの肉を差し出す雫(
ja1894) 。
「そ、それならまずあなたが味見を――」
「いえ、私ダイエット中でして、残念ながら食べることに協力できませんのです。と、いうことでどうぞ」
行人の振りも雫には無効。さらりとかわされてしまった。
そこへ狙ったようにやってくるレポート隊。こなくていいのに。
「このニオイは――薫ちゃん、近接にはガスマスク推奨です。危険注目度Aということで」
白衣を羽織った雀原 麦子(
ja1553) はカレーを食べる手を止め、薫に注意を促した。
「むしろその位じゃないと面白――いえ、効果の有無がはっきりしないわ!」
「ちょ、いま面白そうとか言いかけませんでした!? こっちは今本気で嗅覚の危機――ぐぁ!」
哀れ行人。よそに注意を向けている場合ではなかった。突っ込みを入れるため大口を開けたのが運の尽き。
雫は素早い動きで焼肉を行人の口の中へ放り込む。
コンマ数秒。自然の動作で閉じた口の中に広がる臭気に、ばったり昏倒する行人。
「――腐敗はしてないはず、なんですけど‥‥」
ぽつり呟く雫。多分美味しい美味しくない以前の問題で何らかのショックがおきたのではないかと推測される。
「被験者‥‥ドーコーが開いてるわ――。これはもうダメね。遊夜くん、至急保健室に搬送を」
麦子は手早く行人の状態を確認するや、同じく薫の手伝いに付いていた麻生 遊夜(
ja1838)に救護指示。
「了解、っと。お、結構軽いな」
抱えあげてそのまま教室の外へ。そして道中思う。
(ああ、彼女が参加してなくてよかった――そして俺も回避できた。この先も死なない程度にがんばるとしましょうかね)
遊夜は保健室に行人を預けると、再び瘴気漂う実験場へ足早帰還するのであった。
――味はともかく、臭いに効果がないっぽいと証明された瞬間ね! 無明先輩の犠牲は決して無駄にしないわ!
●策士に死角無し
「これには毒とか入ってないよ、よかったらどうたい? 雀原さんも美味しそうに食べてくれてたし」
試食台の上には普通の香り立つカレーと一杯の水。鴉乃宮 歌音(
ja0427) は久遠 仁刀(
ja2464) に自らの料理を推薦する。
「ん、確かに美味しそうなカレーだな。出来れば流し込める系がいいとも考えていた――頂こう」
少なくとも見た目で心折れないように無難なものから、と探していた仁刀にも願ったり叶ったり。断る理由はない。
(香りは普通。生っぽい食材も入っていない、米も国産だろう)
「そんな疑わずとも大丈夫だ。私がひとくち――ほら、なんともない」
訝しんでかカレーを見つめる仁刀へ安全性を示すよう、歌音は同じ皿のカレーをひとくち食べて見せた。なんともない。
「なるほど。――確かに普通に美味いカレーだ!」
それでは、と仁刀もスプーンを伸ばし、数分で平らげた。
「おかわりもあるぞ? よそうから水でも飲んでいてくれ」
「ああ、すまない頼――うっ!」
差し出された水を一気に煽って、突如呻く仁刀!
「な、なんか、痺れ――!」
どうにか痺れる舌でからがら言葉を紡ぐ。
「カレーには何も? この水の方さ。いやー、大貫さん、カレーには触れさせていったけど水は見落としてったみたいだね」
上機嫌にほくそ笑み、歌音は語る。誰もタダの水に細工されよう等と考えていなかった。計算高い悪戯。
「う‥‥うかつだった。ぐは」
倒れる仁刀。彼も遊夜によって保健室へ搬送。
――策士がいた! ただの水だと思って見逃したわ‥‥久遠先輩、ごめんね!? でもカレーは美味しかった、と。
●おかしなおかしBOX
男女問わず甘いもの好きという人は多いわけで。
「クッキー焼けました♪ 隠し食感にはアーモンド〜。あとは冷ませばできあがり、っと」
エルレーン・バルハザード(
ja0889)が作りあげたのは、かわいらしい模様の施されたクッキー。毒々しさの欠片もない。
「クッキーですかー。自分はプリンですよー。今冷蔵庫で冷やし中。出来上がったらお互い試食しませんかー?」
冷蔵庫前にいた櫟 諏訪(
ja1215)がオーブントレイの上のクッキーに気付き声を掛けた。
「うん。それも、おいしそう」
甘いお菓子で心回復とばかり、エルレーンと諏訪はしばし談義。
その隣では誘闇 師羽(
ja7595) がアボカドに様々な花を盛り付け中。見た目は極めてデザート風の仕上がり。
だから――
「花もいいが、スイーツにするならもっと果物と生クリームが必須だろう、どうだ」
と、興味から特大バケツパフェ製作中の影野 恭弥(
ja0018)がアドバイスを投げてきた。
「いえいえ、みなさんと同じものになっちゃってもあれだと思うの。だから私はこうしようかな、って」
師羽は控えめにリンゴとさくらんぼの存在をアピール。でもやっぱりアボカドが目立つ。
「まあまあ。そんなに生クリームがよければこれなんてどう? ヘビイチゴたっぷりのパフェだよ」
恭弥と同じくパフェを作っていた双城 燈真(
ja3216) が合いの手を差し伸べる。恭弥のものに比べればとてもこじんまり――ではなくて普通サイズのものだが。
「そうか‥‥ならば試食の際に頂くとしよう。交換だな」
「え、あ‥‥さすがにそのバケツパフェを食べきる自信はないんですけど――はい」
そうしてやってくる試食タイム。大丈夫、大変だったけど全部に角を触れさせた。
見た目はいづれも華やかで甘い香りも漂う普通の空間。
「‥‥や、やっぱりこれ全部は無理ですって――」
燈真はやはり断念した、バケツ一杯のプリンを完食することを。味にはまったく問題ない。ただ、量が多すぎて食べきれないだけ。
「ふむ。リタイアか、それはよくない。残りは俺が食べよう」
と、淡々。ヘビイチゴパフェを難なく平らげていた恭弥が、まだバケツ半分以上残るパフェへと手を伸ばす。
「ぇえ!? 他の人にも応援頼んだ方が」
「いや、問題ない。むしろ俺が食べたい」
理由は至極単純。そうして大量の甘味は恭弥の胃に納まっていくのであった。
「これはなんて料理ですか? 綺麗ですけど――みたことのない料理ですね」
珍しいものがないかと見て歩いていた二上 春彦(
ja1805) は、師羽のアボカド料理に目をつける。
「これは私の創作料理なんです。美味しくできてると思うんですが」
影ひとつない健康的な笑顔でにんまり応じる師羽。
「食材は――ああ、そういうのを使ってるんですね。なるほどなるほど」
食べようとして色々気付く春彦。あれだ、美しい花には毒がある。
(まあ、以前この手のものも散々食べたことありますし、問題ないでしょう。角の効果がガセでも)
と、特に気にすることなく口に運んで租借。
「どうですか?」
「んー、他にもいくつか食べてきましたが美味しい方ですよ。よく出来ています、誘闇君も食べてはいかがです?」
と、料理を差し出す春彦。
(‥‥あれ? 私の料理に角、使ってもらってなかったんだけど‥‥ま、いっか)
それではいただきます、と調理人師羽もひとくち。
「――あぅ!」
砕いて混ぜたサクランボ種のせいでなんか口の中が痛い。歯の詰め物が取れてしまって探しているのに似た感覚。
「おや、そういうのは一気に飲み込まないと大変ですよ?」
春彦から食べ方指南を受けつつ、師羽はふたりでそれの皿を明かす。
ちょっとあちこち痺れるけど普通に食べられた、とのこと。
「ありがたくいただきますっ!」
貴布禰 紫(jz0049)は諏訪に誘われ、手製の紅茶プリンを食していた。
「はい、とっても、いい味付けだと思います、プリン」
エルレーンも舌鼓。彼女のクッキーも同じ卓に並んで好評中。
「それはよかったですよー。はいはい、まだまだありますのでどうぞどうぞー」
複数のプリンを卓上に並べる諏訪。微妙な色をしているものも混じっているが気にしない。
「こうやって食べられる機会に食べておきませんとね。こっちのプリン、私も頂きます」
今のところトンデモ料理に出会っていないのか、先ほどまでクッキーを齧っていた氷雨 静(
ja4221)は、不安感ひとつない笑顔でひとつのプリンを手に取る。
「‥‥うっすら緑色をしてますね‥‥?」
お茶はお茶でも緑茶かな、とスプーンですくい――
「ぎゃふっ」
むせた。お茶どころか野菜そのままに青臭かったから。
「あ、それはほうれん草をまぜてみましたー」
さわやか笑顔の諏訪。毒性はないし食べられるものではあるが、ほんのり臭みが残っていた。
静は頑張ってプリンを喉の奥に流し込んだ。せめて抹茶なら――と虚ろに呟きながら。
そんなやり取りをみておののくのは大谷 知夏(
ja0041) 。
(はっ!? 諏訪先輩のお菓子だからと安心してたっすが、これは危険な予感っすよ!?)
知夏の目の前にあるのもプリン。一応色は真っ当。
(だ、誰もみてないっすよね! 紫ちゃん先輩のと交換っす!!)
無情。知夏は紫食べかけ形状に似せてプリンを削ると、光速で皿ごとすり変えた。大丈夫、気付かれていない。
「それじゃ、知夏もいただくっすよー!」
と、口に運んで、反応に困る。
「‥‥諏訪先輩、これ紅茶プリンなんっすよね‥‥なんか、こう、変な味――」
「ええっと、あ、それはー。あれです、カレー粉入りーどうして知夏ちゃんのところにそれが」
知り合いにはまともなものを出したはずなのに、と皿から識別して首を傾げる諏訪。
尚、差し替えられた皿のプリンを食べた紫は――盛大に咽た。岩塩を口に含んだかの如く、すごくしょっぱかったらしい。隠し味は教えてもらえなかった。
――スイーツ系には効果あり? ユニコーンは女の子に優しいっていうものね。
――でも、ほうれん草とかカレー粉とか異物混入は嫌い? まあ、その方がユニコーンっぽい気もするけど。
●癒しのハンバーグ
「料理に必要なのはなんといっても愛情さー♪」
与那覇 アリサ(
ja0057)監修の元、ハンバーグ作りに励むのは紅葉 公(
ja2931) と暮居 凪(
ja0503) 。
「私も料理への愛情なら自信はあるんですけど。お菓子以外のお料理はちょっと‥‥」
自信がない、と合挽き肉をこねる公。
「わ、私も同じく〜。料理本見ても難しいよね。なんでか本通りにならないし」
フライパンを熱しながら、凪。
用意されている材料は至って普通のもの。それでも上手に作れないと悩む乙女たち。
「大丈夫さー、ふたりとも上手にできているぞ!」
「や、焼くときもちょっと心配で」
「それなら初めは見てるといいぞ!」
心配で仕方がないという様子の公に、アリサは笑顔で提案する。
公が形付けたハンバーグを手に、凪の熱したフライパンの前に立つ。
「いいかー? 注意はこげごげだぞー? 適度に焼いて、中は蒸すのが安泰さー」
そうして観察しながら待つこと数分、ぱかっと蓋を開けると周囲に食欲そそる香ばしい香がふわりと舞った。
「にごった汁とかが出てこないよう注意さー。あんまりぎしぎし押しちゃだめだぞ?」
これでアリサ流愛情ハンバーグ完成!
「そういえば、この料理ならユニコーンの角必要なさそう、よね?」
毒々しい気配がないことに気付く凪。病気を起こす要素も、呪いを振りまく可能性もなさそうだ。それでも実験だから仕方がない、角は使われる。
「まあ、たべてみるさ! 絶対おいしいぞー!」
自信たっぷりに薦めるアリサ。ソースも手製だ。
公と凪は待ってましたとばかりに、出来立てを口に運んで――
「お、おいし〜♪」
「私、普段1割くらいしかまともなの作れないんだけど‥‥こんなに美味しくできたの初めて!」
もしかして効果があったのかも、と囁きつつ完食。大変よくできました。
――おおっと! もしかしなくて初めての成功例よね!? ゲテゲテしてないから断言は難しいけど成功成功、っと。
●シンジュウのソテー
「さくらソテー神獣仕立てです! 会心作ですよ、暖かいうちにどうぞ!」
権現堂 幸桜(
ja3264)が試食テーブルに運んできたのはソテー料理。肉の上にヤングコーンが角の見立て乗せられている。これが神獣の象徴だろう。
「では頂くとしようか。――む、ふ!? ‥‥こ、この味は!?」
最初に口に運んだのは金鞍 馬頭鬼(
ja2735)。どうすれば馬蹄付きの馬足手袋で、そんな上手にナイフフォークを使えるやら。疑問は尽きない。
突然苦しみだす馬頭鬼。何故か涙も流れてたり。
「ん、どうしたんや金鞍さん。そんな悶絶したりして――」
見た目に難はないが、何か問題でもあったのかと宇田川 千鶴(
ja1613)も恐る恐る一口。
「そんなことないない! すっごい美味しいけぇ!」
瞳を輝かせながら、既に己の分を完食してしまった水城 秋桜(
ja7979) が、千鶴の言を否定しながら歓喜した。
千鶴も遅れて頷く。
「うん、確かにそやな。あれは慌てて喉にでも詰まらせたんやろ」
「美味しかったけぇ、権現堂さん! よけりゃぁおかわりいただけんか?」
馬頭鬼はともかく、砕けた秋桜の好評を受けて幸桜は是を返すのだった。
「おかえりなさい。その様子だと好評だったようですね」
調理場で幸桜を迎えたのはカタリナ(
ja5119)。
凛々しく堅物そうな印象をもたれやすい彼女だが、今はフリルのエプロン姿。戻ってきた相方を暖かく迎える。
「はい、おかわりも頼まれて。もう一回につくろ!」
すぐ隣に駆け寄っては、身をカタリナに摺り寄せる幸桜。一見仲の良い姉妹のようにも見えるが、幸桜は男性であり、ふたりは恋人同士だったりする。
「そんなにくっついたら作れるものもつくれな――」
「だってリナのエプロン姿とっても可愛くって‥‥」
一頻りいちゃついた後、ようやく調理に掛かる。
「せっかくだから先ほどとは違う味付けにしよう」
浄化効果が本物ならこの程度問題でないはずだ、と額に汗して下準備から再開するカタリナと幸桜。
最後に発酵したニシンの塩漬けを角に見立てて乗せれば完成。眩暈のする臭気が一室を襲う――が他所も他所で異臭を放つモノが在った為変化は微小。
「さて、今度は一緒に持っていくとしよう」
と、ふたりは完成品を手に調理場を後にする。
――明らかにこれはおかしいじゃけぇ!
やってきたおかわり版を一目見るや、秋桜は冷や汗が流れるのを感じた。
「‥‥な、なんか特製品の気配やな‥‥ともかく頂くんやけど」
「う、うむ」
立ち直った馬頭鬼と共に、千鶴は新たな料理に挑む。合言葉は、角があるから(多分)大丈夫☆
が、口に含んだ途端、ふたりは椅子ごと後方にばったり倒れた。同時に、しかも食器を握ったままの姿勢で。
「あわ、わわ‥‥これはただ事じゃなけ――」
事態を目の当たりにした秋桜は、逃げ出そうとした!
「あら、どこにいかれるんですか? まだ食されていませんよね」
だがカタリナに道を塞がれ、さらには押さえ込まれた!
「はい、リナ特製心中仕立てのソテーですよ。たんと召し上がれー」
止めに幸桜の必中攻撃!
「まって、なんかイントネーション違うし!? うちはもう、お腹いっぱ――」
待てません、と見事なコンビネーションにより、秋桜の口に運ばれるおかわり。結果前例に同じく轟沈。
「‥‥あ、そうそう。お気づきと思いますが『さくら』は馬肉のことですのであしからず」
最後に、カタリナがメイン素材の解説を加えると、倒れたままの馬頭鬼が口から泡を吹き出していた。
――金鞍先輩は馬肉アレルギーとかなのかしら?
――1品目は成功みたいだけど、2品目は臭気負けかも知れないから不明ね。
●激辛劇震
(俺にとっては至極普通の味付けだが、他だとどうだろうなぁ)
九重 棗(
ja6680) は真っ赤な香辛料群を使って、カレーの下準備をしながらそんなことを考えていた。
ふと上げた視線の先には、笑顔でケーキの素をかき混ぜている天音 みらい(
ja6376)の姿 。
さぞ大衆の味覚に合うものを作ろうとしているのだろう、極めて一般的な素材が揃っている。
(実験だしな‥‥調味料を入れ替えさせてもらおう)
棗はみらいの用意していた甘味調味料を己の細工した激辛調味料とすり替えた。臭い、色の擬態も問題ない、準備は万全だ。
「ここで砂糖をたっぷり加えて更に攪拌‥‥っと」
予定通りみらいは異常事態に気付くことなく、生地素材の中にそれを大量に注ぎ込む。
結果は完成してのお楽しみ。棗は人知れずニヤ付くのであった。
「これはカレーでしょ? 美味しそうだけど――香辛料のニオイがかなりきついわね」
出来上がってきた棗カレーを前に、高虎 寧(
ja0416) は唸り声を上げた。カレーならよっぽど料理下手な人間でも失敗することは稀。
「ああ、美味いぜ! 是非食べてくれ!」
「ええっと‥‥棗くんのは‥‥角の効果はともかく、苦手な人には、あれな味付けかも、だから――よければこっちでも」
定番カレーとパウンドケーキを前に、寧は、
「どっちかっていうと薄味の方が好みだから、カレーはパスさせてもらおうかな。こっち、ひとつ頂くわね」
ひょいっとバスケットの中から小さなマフィンを摘み取る寧。そのまま口へ――
「‥‥むみゃ!?」
運んで咽る。
「えぇええ!? う、うち何か失敗しちゃったですか!? ちょ、ちょっと味見を――」
寧が悶える姿を見るや、みらいは慌てた。分量も素材も全て完璧。間違うはずがない、と味見――して察した。
「にゃ、にゃづめぐぅんでじょ!? こんな辛いのうちつくってないよぉ〜」
溢れる涙、痺れる喉、搾り出す声。みらいはコトの元凶・棗に飛び掛る。なんだか鼻水も出てきた。
「あっはっは! さっすが俺仕様! 美味くて涙がでるだろう?」
当の棗は腹を抱えて大笑い。彼自身の実験はこの上なく成功のようだ。
「辛味に角の効果はなさそう‥‥っと。食べなくてよかったです」
レポート手伝いの為、様子を窺っていた逸宮 焔寿(
ja2900)は経過をメモ。
「それでは次の確認にいきましょう♪」
焔寿の腰元で白いウサギのポシェットが揺れた。
――むむ、お菓子に味補正がかからないのはほぼ確定か‥‥。このユニコーン好き嫌い激しいのね。
●春の和膳
「解毒作用を真に確認するなら、やっぱりそのまま毒が一番だとおもうんだよね」
と語るのは雪平 暦(
ja7064) 。ぐつぐつと小気味良い音を立てる鍋の前で灰汁取りをしていた。
「あ、ボクも同意です。フグを用意してもらったわけですが、もちろんその辺の処理はなしってことで」
さらりと怖いことを言う清清 清(
ja3434)は、終始笑顔で新鮮なフグを捌いていく。
「うわぁ‥‥ふたりとも積極的だね。あたしはとりあえず食べられそうなの作ってはいるけど」
染 舘羽(
ja3692)は、まともに料理したことがないけど、と注意文言を加えてたけのこの皮を剥ぐ。
「家からいっぱい送られてきちゃって、ちょっと処理に困ってたんだ」
「山菜‥‥ですか? 色々時間かかって大変ですよね〜」
そうして出来上がってきたのが、 『山菜満載たけのこご飯』『まるごとフグ刺〜毒を残して〜』『毒草仕立ての独創スープ』の3品。
調理風景を知らず、名も知らない者が見れば、いづれもまともでおいしそうな料理だ。
「どんな料理が出てくるか心配してたけど、これは美味しそうだな」
のほほんと笑顔でやってきた被験体――もとい参加者桐生 直哉(
ja3043) は舘羽らの料理を前に涙する。なにかあったのだろうか?
「自信(のない)作なんですが、よければ!」
誰か食べてくれる人はいないものかとうずうずしていた舘羽。
「どれどれ、って‥‥すっごい油ぎってる気がするのは気のせいだよな? てか炊き込みご飯がなんでこんな‥‥」
直哉は、まるで油で炊いたような光沢を放つ米へ第一感想を漏らす。が、一度手にとってしまった物を戻すのは気が引ける。丁寧に手を合わせていただきます! と覚悟の試食。
「――べちょべちょ‥‥だな。なんか、これ、たけのこの皮も入ってるし‥‥硬いんだけど」
「オリーブオイルは万能だってテレビで言ってたの思い出して。たけのこはどこまで剥いていいかわからなかった」
聞けば聞くほど突込みどころがたくさん出てきが、それでも「食べ物を残したらいけない」という祖母の言葉を思い出し、再び黙々と口を動かすのであった。臭気がないだけマシだ、と。
また、
「あ、以前はお世話になりまして。よければいかがです、お刺身」
ふらふら試食場をうろついていた紫に、フグを勧める清。
口直しを探していた紫は喜んで飛びつき、食した。直後の反応としてはなんともなし、美味しそうだ。清はメモする。
「大丈夫そうですが、毒抜きしてないんで、1時間くらいは体調変化に注意しておいてくださいね」
角の効果で毒が消えたならいいが、それでなければ後から響くはず、と言葉を添えて。
「これ‥‥一応材料聞いてもいいだろうか?」
天風 静流(
ja0373) は、見た目は普通、中身は非情な液体を、口に運んでから製作者暦にレシピを確認した。
「一般的に言われる毒草と毒キノコだよ。平気へーき! 毒があったって普通に食用されてるのもあるんだし」
「それは理解しているが――そうだな。せめてもう少し味の方向性をまとめた方がだな」
あまりにも味がなさすぎる、と静流は味付け講座を開始するのであった。毒については‥‥なんか問題ないっぽい。
卒倒するような料理に遭遇しなかったことだけを安堵した。
――む、喜んだのもつかの間。焔寿助手の報告も合わせてみると、ちょっと怪しくなってきたわね。
――一応毒は平気みたいだけど‥‥味に補正はない、みたい‥‥?
●地獄と天国の境界線
「ユニコーンの角ってどんな料理になるんだろうね。豚足とか牛骨みたいに煮込むのかな?」
ユニコーンの角自体を調理するものと、犬乃 さんぽ(
ja1272) はそもそも盛大な勘違いをしていた。
ここは、学園の一部で好評を博するラーメン職人・道明寺 詩愛(
ja3388)による実験卓。前評判もあってか、既に多くの生徒が待ち構えていた。
「俺は以前偶然ひどい出来のラーメンを食べたことがあるが、今回は伝承名高い角がある。はずれないと信じる、ああ、信じてる」
ただ待たされるだけというのは大変怖いもので、と自己暗示に専念するのは久遠 栄(
ja2400) 。
「まあまあ、今回は渾身の特別製といってらっしゃいましたし、楽しみにしましょうよ〜」
アーレイ・バーグ(
ja0276)は、なにも怖がることはない、と陽気な笑顔で諭した。
さて、そうしている間に調理場では詩愛が最後の仕上げに取り掛かっていた。
「ラーメン研究会の真髄をみせるところですね」
揺れるポニーテール。中華麺とトッピングは極々普通。何も細工なんてされてはいない。
「普段は自重してますけど――今日こそコレを試すとき‥‥」
これでもかというほど真っ赤な素材の山々が光り輝く。作るは噂の道明寺謹製ホットソース――全然謹んでないけど。
素材の相乗効果か、どんぶりへと注がれた赤々しい液体は、まるで血の池のよう、ぐつぐつと煮えたぎって見えた。
完成したそれを盆に載せ、揚々と調理場を後にする詩愛。
その背を見送るのは佐藤 としお(
ja2489) 。
「‥‥これから皆には地獄の試練が待っているわけか――。俺が救ってあげよう、口直しの準備だ」
製作過程を知っているからこそ想像できる先の叫喚風景。としおはひとり、詩愛の残した食材と、赤くない食材を使って新たなラーメン作りに取り掛かる。
「見た目はすごい毒――いや、劇物的なんやけど‥‥これ、ほんま大丈夫なんよね」
「う〜ん、角じゃなかったかぁ。と、いうことはこの赤いのは血、なのかな??」
運ばれてきた詩愛命名「血の池地獄ラーメン」を前に、震撼するのは亀山 淳紅(
ja2261) 。これでもオトコノコ。
さんぽの反応は相変わらず。
「ぷはぁ〜。大丈夫ですよー。ちょっと濃い味ですど、普通に美味しいですよ?」
応じるのは既に1杯目を完食してしまったアーレイ。それ、大盛りだったはず。
「つまり、これは、期待できる! ‥‥頂きますっ!」
なんとなく刺激臭が少ないことに感動した栄はさっそく口へ運んだ。――そこに関しては他所の料理で鼻が麻痺している感が否めないが。直後、
「ぐぁっ! 辛い! 辛い!!」
全身から滝のように汗が噴出する栄。制御できない、体中の水分が逃げ出していく!
「ち、ちが! 辛いじゃない!! 痛い!!」
同じく叫ぶ若杉 英斗(
ja4230)。タダでご馳走が食べられると勇み足でやってきた彼は、早々断崖絶壁に立たされた。
一瞬で唇がたらこの様に浮腫んでしまった。何か言いたいようだが上手く言葉にならず、必死に身振り手振り。
最初に詩愛を指し、次にどんぶりを示し、己が唇を示す。
結果、
「あ、おかわりですね! わかりました! 今もってきます!」
全力で誤解された。
出されたものは完食がルール、英斗は第二の試練に涙するのだった。
「今のところ――男の方が悲鳴を上げ、女の方は悲鳴を上げていない。これはつまり、ユニコーンは乙女の味方」
だったらボクは大丈夫、と桐原 雅(
ja1822) は結論した。元々ユニコーンが加護するのは乙女だし。
いざ挑戦。見た目で挫ける前に一気に運ぶ!
「‥‥‥‥う、うん‥‥美味しい、よ‥‥? 多分」
完全に味覚が逃走した。舌が感じるのを止めたようだ。前例と同じく汗は噴出すし口の中は痛い。けれども『礼』が大事。黙々と機械的に、何も考えないで雅は頑張った。
時々普段は見せないように努めている光纏オーラが現れては消えを繰り返していた――。
「た、食べない方が正解のきがするんやけど――、ダメやよね」
全員の反応を待ってから食べようとしていた淳紅は手を振るわせる。これは明らかにダメな代物だ。それでも必死に挑んで――ごちそうさまと同時に机に倒れ込むのであった。
「大貫さんも如何――って、あら? 先ほどまでいらっしゃったはずなのに」
おかわりを運んできた詩愛は辺りを見渡して首を傾げる。良ければ試食してもらおうと思ったのに、と。
「あー‥‥やっぱりこうなったかぁ。皆生きてる?」
死屍累々、己が作ったラーメンを手に、としおは悲壮感漂う試食場に現れた。
「うぅ、その白いラーメンは‥‥?」
香辛料の刺激か、瞳を潤ませて、さんぽは呟く。
「お、意識残ってたか。血の池の次はやっぱり蓮の池かなと考えたんだ。ガッツリ食べて回復だっ!」
としおが用意してきたのは、トンコツ鶏ガララーメン。大葉や小梅等口直しにちょうどいいさっぱり系を盛って。
意識がない者には、とりあえずスープをスプーンでひとくちずつ注いでいくとしお。そのうち胃もたれまで回復したとか。さすが胃薬入り。
――判定結果! レッドというかデッド! これはダメだわ! あたしは逃げる。みんなゴメンネ、頑張って‥‥!
●ツンドラ鍋
東城 夜刀彦(
ja6047) はこんな言葉が真っ先に浮かんだという。
『俺はどうやら今日そちらに旅立つようです。待っていてください、お母さん達』
どこの事件も調理場で起きている。
「ジャガイモは芽を取って‥‥皮をむいて‥‥灰汁抜き、っと」
エミーリア・ヴァルツァー(
ja6869) はジャガイモを水にさらした。その間に他の作業をしよう。小さな調理台を右へ左へ駆け回る。
「あっれ〜、エミリってばいつの間にこんな手際よくなったのかなぁ?」
にやにやと笑みを浮かべて、フェリス・マイヤー(
ja7872) はエミーリアに絡みつく。
「べ、別に誰かに食べさせたいとかじゃなくて、料理は淑女の嗜みというか――」
ごにょごにょ。頬を染めてしどろもどろのエミーリア。
フェリスはそんな挙動不審の隙を突いて、謎の液体をジャガイモが浸されている水に、一滴垂らした。
(お手伝いお手伝いっと♪)
気付かれなかったことに安堵、他の作業に戻り――十数分。
「あとは煮込めばいいだけ。ファリス、鍋を見ててもらえますか? 食器を選びたくて」
「はい、お任せを。料理自体は不得手ですが見守るだけなら適いましょう」
応じたのはファリス・メイヤー(
ja8033) 。表情を引き締め、さながら番人のように鍋の前に立つ。
「じっくり煮込むほど時間がないのが残念ですが‥‥」
エミーリアが鍋を離れたのを見て、ファリスは動く。鍋の蓋を開けると、真っ白な湯気に視界を奪われた。
(‥‥フェリスにこの調味料を入れて欲しいといわれたが‥‥どのくらい入れればいいのだろうか?)
ファリスはポトフを見たことがなかった。味も材料も知らない。この調味料が何かすら。
故に目分量――のつもりで「あ」、っと全部入った。
「何かありまし‥‥!? ああっ、吹き零れて、火をもっと弱めて――って、泡が!? まさか灰汁抜き不十分!?」
ファリスの「あ」に反応し、顔を上げたエミーリアが慌てる。鍋が大惨事を起こしていたのだ。
そんな様子を、フェリスはにやにや眺めつつも、エミーリアが用意した皿にちょっと小細工。大丈夫、誰も気に留めている余裕はない。
そうして慌しくも、ヴァルツァー流ポトフはどうにか完成。
義姉が見守る中、夜刀彦は料理と対峙する。
具材の形状は見事だ、これだけなら100点。しかしこの香はなんだ?
「た、食べるね‥‥?」
胃袋には自信がある、と意を決し、夜刀彦は一口大に刻んだ野菜を口に運ん――意識がとんだ。
遠くで声が聞こえる。
「ど、どうですか!?」
「おやぁ? 顔色が悪いぞ〜?」
「ユニコーンの角は浸した、問題ないはずだ」
茶化すフェリスはともかく、エミーリアもファリスも自信ありそうだ。
が、これは生命の危機。哀れ、夜刀彦は復帰叶わずリタイアとなる。
角をあてにしてはいけない、他の同志にそれを伝えられなかったことだけが悔やまれた。
数刻後、意識が戻るとファリスに膝枕され介抱されていたとかいないとか。
――ああ、もう。怪しい化学物質までまざっちゃって!? 調味料の持ち込み確認もらしたぁあ!
●期限突破の極限シチュー
――おーけい。大丈夫。
――ええ、もうわかってるわ。角の効果はうそっぱち。うん、本当ゴメン‥‥あたしも闘うから許して――
「こちら、よろしければ味見していただけますか?」
ほんわり湯気の立つシチューを皿に注ぎ、神月 熾弦(
ja0358) は目の前の男ふたりに差し出した。
「がははは! タダで女の子の手料理が食べられる‥‥とは! 生きててよかったわ〜!」
「おお、おっさんもそう思うか! 実は私もだ。是非頂かせて貰う」
久我 常久(
ja7273) 、ラグナ・グラウシード(
ja3538) 両名は熾弦の手から直接皿を受け取ると、これでもかとばかりに礼を尽く、いただきます! とほぼ同時に口へ。
(な、ななんあ、なんだこの食感は!? べちょべちょに柔らかく崩れる具材‥‥!)
しかし常久も男。目の前で感想を待っている可憐な女性を悲しませるようなことを言うつもりは毛頭ない。痺れる舌を落ち着かせ――尋ねる。
「お、おおおおお、お嬢さん、と、とても美味しくいただだけました、が! 何か特別な調理法でも!?」
だが舌がおぼつか無く、台詞は締まらなかった。
熾弦は気にする様子もなく、穏やかな笑顔で質問に応じる。
「特別、とすればユニコーンの角でしょうか? 他は、ちょっと調理室の冷蔵庫でしなびていたり、水っぽくなっていた野菜を使わせて頂きましたくらいです」
え、それって期限切れのアウト品じゃ?
「あと、賞味期限が2週間ほど経過していた牛乳を。おふたりとも大丈夫そうなので安心しました。角の効果はあったようですね」
うん、それはきっとそろそろ来るね、牛乳。
「ああ、とっても美味しかった、ありがとう」
具材がどうであれ構わない。ラグナはこの後に来るだろう惨事には目を瞑り、これ以上ない爽やかな笑顔で熾弦に感謝する。少なくとも手料理が食べられた。多少の賞味期限切れなんて、コンビニ飯でもよくあることさ。
「わ、わしはちょっと急用が出来た、ちょ、ちょっと失礼する!」
異常発生か、額に脂汗を浮かべ常久はそそくさと教室から出て行った。次いで
「ああ、私も急用だ。最後まで食べられなくてすまない」
とても紳士的に騎士的に、ラグナも立ち上がるや、常久の後を追うのであった。
後に、学園のとある手洗い場で真新しい殴り書きが発見されることとなる。
『せめてもっとイチャこきたかった!』――と。
○閉幕!
教職室でくつろぐライゼの元に、麦子と焔寿の手でレポートが届けられた。
薫は――結局詩愛に捕まり、残ったラーメンと格闘中。
「ねえライゼちゃん、あれってホントにユニコーンの角だったの?」
「うん、焔寿もそれ気になるの。お馬さん、存在するの?」
死屍累々を見る限り明らかに効果はない、レポートにもそのように結果が記載されている。一部にはディアボロやサーバントのモノではないかと疑う者も。
そんな疑問にライゼは誠意応じる。
「正直出所は不明ですわ。しかし、奉仕種族どものなら形が残ることはなく。仮にディアボロのものでも本来の姿に戻る。こうして今形があるということは、そのどちらでもない存在である、と断言できましてよ?」
「それってつまり‥‥ニセモノ?」
いいえ。そうとも言えません。この人間――現代に残る効能自体が伝承です。例えこれが、本物であろうと偽物であろうと――」
ユニコーンと呼ばれる生物の角に、そんな万能効果があると誰が証言できようか?
知る術はないのだから――。
「ともあれお疲れ様でした。所々拝見させて頂きましたが、皆様楽しそうでなによりでしたわ」
最後、ライゼは茶目っ気たっぷりに微笑んだ。