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マスター:新瀬 影治
シナリオ形態:シリーズ
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/12/22


みんなの思い出



オープニング


 廃病院。院長室だったと思われる、広くて薄暗い一室。
「おっと、動かないでもらえるかい? この魔法は本来であれば攻撃に使う風を変化させ、拘束用に用いているんだ。変に動くと、四肢が一瞬で吹っ飛ぶよ」
 そこでは、正宗との交戦中に誘拐された黒瀬信志と、正宗の主である男が面と向き合っていた。
「君の抱いている、罪の記憶という……君が君自身を抑制する切っ掛けとなっているその過去は、僕の実験に於いては途轍もない価値を持っている。君が以前の作戦で調査する事となった防壁型サーバントには、人が抱いている黒い感情に反応する特殊な加工を施してあってね。君のそれが引っ掛かったという訳さ」
「成る程、な……だから俺に狙いを定めてきたという訳か」
 薄ら笑いを浮かべながら言葉を続ける正宗の主を前にしようとも、信志は至って冷静な返答を示すが、彼は手足を特殊な風の魔法によって拘束されている為、身動きが取れていない。
「君は、一度仲間を斬っているね? 僕のような天使を、そして悪魔を一体残らずこの世から消し去りたいという強い意志を持っていたが故に、君はその罪を犯してしまったんだね?」
 正宗の主の言葉を聞いた信志は、まるでその言葉が真実だと肯定するかのように、黙って項垂れる。

「詳しく話してもらえるかい? どうせ君は此処から逃げる事は出来ない。大人しく僕の言葉に従った方が、君や僕にとっても好都合だと思うんだ」
「……そうだな。だが一つだけ聞かせてくれ、お前は何という名を持っているんだ?」
 拘束され、正宗の主という強力な敵を前にしている以上、信志は抵抗が無駄になると考え、出来る限り敵の情報を引き出すという選択を取った。
「僕は、そうだな……ムラマサ、とでも名乗っておこうか。正宗が名誉と勝利の為に技を振るう刀であるのならば、僕は誰かの狂気を増幅し、争いを増やすだけの妖刀だ。フフフッ……」
 ムラマサと名乗ったこの男は、不気味な笑みを浮かべた後、再び真っ直ぐ信志の方へと視線を向けて。
「では、聞かせてくれるね?」
「……かなり前の事だ。俺は、この腕を見込まれて危険な任務を遂行する事となった。その内容は、とある場所に出現した天使を、少数精鋭の部隊で速やかに抹殺するという内容の物だ」
 諦めたように、しかしそれでもまだ何かを聞き出そうとしているかのように、信志は己の過去を語り始める。

「俺はその作戦に参加する事を自ら望み、天魔をこの世から消し去ってやりたいという己の信念に基づいて、戦場に赴いた。だが、結局その時から全てが狂い始めていた訳だ」
 自分自身の事を嘲笑うかのように、そこまで言い終えた信志は、吐き捨てるように息を吐く。
「俺達が戦場に到着した途端、まるであいつらは俺達の動きを掌握していたかのようにして、一斉に襲いかかってきた。天使だけじゃない、サーバントも大量に居た……最初から迎撃の準備をしていたようにな」
 そこで彼が経験したのは、絶望的な戦闘。少数精鋭で編成されていた部隊では、あまりにも多い物量を前に太刀打ちする事が出来ず、完敗を喫する事となってしまった。
「あの戦闘で、俺は相棒を失った。目の前で、アイツが身体を引き裂かれて無残に死んでいく様を、俺はただ見ている事しか出来なかった。傷だらけになって、仲間に止められて、何も出来なかった……」
 ――だがそんな絶望的な状況に陥ろうとも、彼の胸の内に秘められている信念が燃え尽きる事は無かった。
「悔しさか何なのかは分からないが、その時俺は、何としてでもあの天使を斬り殺したい……仲間を殺されて、このまま食い下がる訳にはいかない、と強情を張った。あいつらを放っておけば、また悲劇は繰り返される。刺し違えてでも斬り殺してやる、ってな」
 そこまで言い終えた彼は、天井を見上げながら長く息を吐く。

「まぁ、俺以外の仲間も当然精鋭だった訳で、魔法を使用してでも俺の事を抑えようとしてきた訳だ。だが抑えられる側の俺は、天使を狩ろうとする俺の意志を妨げようとするのか、と激情に負けてな」
「それで、仲間を斬った……と?」
「そういう事だ。本来であればムラマサ、お前のような天使や悪魔に向けられる筈の狂気を、あの時ばかりは仲間に向けてしまった。俺が斬った仲間は一命を取り留めたが、自分で自分を赦せなくてな……俺はあの後、自らの意思で前線を離れる事を選んだ」
 彼の激情は天使を仕留めるには及ばず、最終的には全てが無駄になるという一番最悪な結末を辿る事になったが、信志の仲間達が彼の事を責める事は無かったという。
「考え抜いた結果、俺は自分なりの懺悔をする為に、こうして己の信念を封じて撃退士達のバックアップに専念するようになった訳だが……やはり、天魔を駆逐したいという意志を消し去る事は出来なかったみたいだな」
 ――そう彼が呟いた途端、彼の瞳は紅色に染まる。
「君は間違っていないと言う者も居るのかもしれないが、君を罪人だと呼ぶ者も居る。むしろ、その当時に限っては君を罪人と呼ぶ者の方が多かっただろう。仲間でもない仲間を斬っただけだと言うのに」
「罪は罪だ。俺は過ちを犯した、故に俺は――」
 ムラマサが信志の過去を肯定しようとしたその瞬間、信志は後悔からか言葉を返そうとするが、それと同時にムラマサはパチン、と指を鳴らす。

「……君の信念を妨げようとする者は、もはや仲間とは言えないだろう? それは仲間ではない、敵なのさ。それを斬った事を懺悔しようとする必要は無い、君は間違っていないんだからね」
「一つだけ、聞かせろ……ムラマサ、お前の目的はッ……」
 その紅い瞳は操られるような形でムラマサの方へ向けられ、彼の精神は少しずつ『罪の記憶』という弱点を突いて洗脳されつつあるが、最後に彼はムラマサにそう問いかけた。
「君のように、胸の内に黒い感情を抱いている撃退士に洗脳を行い、混乱を引き起こす。普通の撃退士には抵抗されてしまうが、弱点があれば操りやすい……そうだろう? それで、絶望の下にある人々の感情の移り変わりを観察する事が、僕の目的さ。まだこれは実験の第一段階に過ぎない」
 ムラマサの目的を聞き出す事に成功した信志ではあるが、とうとう敵の洗脳術に呑まれ、自我を失った。
「君を罪人と呼び、君をこのような姿にした愚かな人間達に、復讐をする時が来た。君の事を肯定していた撃退士達も、そんな人間達を守ろうとしている偽善者に過ぎないのさ。だから今こそ、その刃を撃退士達に向ける時だ……!」
 拘束から解放された信志は、ムラマサに操られるようにして、刀身が黒い刀を持ち、撃退士達を狩る為に歩み出す。
(情報は手に入れた……後は、俺の事を止めてくれる奴等を待つだけ……頼む、ぞ……)



●解説
 撃退士を狩る為に現れた使徒の一正宗、そして洗脳状態にある撃退士の黒瀬信志を迎え撃て。
 敵に関する重要情報を所持している黒瀬信志を奪還した後、正宗の撃退に努めよ。

●敵情報
・黒瀬信志は狂気解放を使用した状態で、通常攻撃主体の行動を行ってくる。

・一正宗は従来と同じタイプの行動を行う物と考えられるものの、信志との連携攻撃を行ってくる。

・また、本作戦では正宗の問答に応じるのではなく、自らの『生き方』を示す事が重要視される。

・黒瀬信志に一定のダメージを与えると洗脳状態が解除され、そのまま友軍として参戦する。


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リプレイ本文


 十二月某日。使徒の一正宗と、誘拐された筈の黒瀬信志が目撃されたというサービスエリア。
 晴れ渡った冬空の下、この場所へ赴いてきた八人の撃退士達は、その『敵』と対峙していた。
「見慣れた顔に並び、幾つかの見慣れぬ顔……ふむ、新手という訳か。何か知っているか?」
「…………」
 八人の撃退士を前にした正宗は、その面々を確認して信志にそう問いかけるが、彼は何も答えない。
 それは洗脳の副作用とも言える物であり、本来の意識を洗脳によって封じ込めている関係上、言葉を口にする事がほぼ無くなるのだ。
「あなた、誇りだの生き方だのを気にしておられたようですが……その後、何か良いことでも分かりましたか?」
 そんな正宗と信志の前に歩み出たのは、エイルズレトラ マステリオ(ja2224)。

「ほう、君は……。敢えて答えるのであれば、良い事は何も知る事が出来ていないという事だ」
 過去に一度戦った事のある彼の顔を覚えていたのか、正宗はエイルズレトラに対してそう答えるが、それを聞いたエイルズレトラは少し間を置いて。
「哲学を語るのは結構ですが、青臭すぎて僕のハートには届きません。肝心の刃の方は、果たして僕の心臓に届きますかね?」
「……これは、哲学とはまた違う話だ。剣士として、敵と刃を交える中で、己の生き方を見出そうとする。それも君には、分からないのだろうがな」
 煽るようなエイルズレトラの問いかけに答えた正宗は、ニヤリと笑いながら息を吐いた。
「だがこの場所に限っては、私は君達を狩りに行く。自分自身の仲間に刃を向けた事があるこの男と、狂気を従えて……な」
 正宗がそう言おうとも、信志は一切の反応を示そうとはしないが、彼がその身に纏う狂気は、徐々に強さを増していく。

「一介の事務員にすらこの闇かよ。いやー、ぞくぞくしちゃうね」
 だがそれを聞いて笑いを浮かべる、ラファル A ユーティライネン(jb4620)。
 様々な戦闘を経験してきている彼女からしてみれば、学園に関係している時点で多かれ少なかれ特殊な事情を抱えているという事も、全て織り込み済みなのだ。
 自分の闇に飲まれて自滅するなら背中を押し、助けを求めているなら助ける。
 そんな事は些細な理由に過ぎなくて、ただ単純に彼女は、高く留まった天魔共の心の折れる音が聞きたいだけなのだ。
「そのような感情を抱くとは……貴様は、中々に面白い事を言うものだな」
「さぁて、今日はどうやってどぶに沈めてやろうかね」
 ラファルが笑みを浮かべた理由はそんな内容なのだが、正宗にとってはそれが面白く感じたらしく、彼もまたニヤリと笑みを浮かべた。

「闇を抱えた撃退士達の洗脳実験……これを通じて撃退士達と刃を交える中で、退屈だと感じた事は無い。むしろ今も今で、また新たな面白みを感じている程だ」
 剣士として生きる事を許され、そして徐々に戦火の中へとのめり込んでいく正宗が抱く、今までとは違う感情。
 そこには剣士の誇りという物で縛り付けられる事の無い、正宗の『本音』が浮かび上がっていた。
「撃退士の洗脳実験か、人をモノ扱いしやがって……。他者を虐げるようなヤツは、俺が絶対許さないからな!」
 洗脳実験と聞き、正宗達を止める姿勢を見せた天羽 伊都(jb2199)。
「それが君の選ぶ道であるというのなら、私は正面から相手をしよう。武人である我々は刀を交える中で、それぞれの意思を確かめるものだ」
 そんな伊都の言葉を聞いた正宗は、その刀の柄に手をかけ、鋭い眼差しを彼の方へ向けた。

「君達は、何故我々との戦いを続けるのか。我々が君達に刃を向けるからか、それとも己の名誉の為か……この戦いの中で、問わせてもらおうか」
「憎いとか恨んでるとか、そんな理由は持っちゃいない。戦う理由なんざ、気に入らないってだけで十分だ」
 向坂 玲治(ja6214)が正宗に対してそう言うと、正宗は何かを察したように、再びニヤリと笑みを浮かべながら頷いた。
 単純で、飾り気の無い理由。
 されども、だからこそ一切の誤魔化しが効かない唯一の理由。
 そんな玲治の戦う理由を聞いたからこそ、正宗は彼と手合わせが出来るという事を、心の何処かで喜んでいるのかもしれない。

「……黒瀬をお願い。正宗は、出来るだけ抑える」
 湧き上がってくる怒りを抑える事も無く、バンカーを装備した橋場・R・アトリアーナ(ja1403)は、されども冷静に身構えて。
 彼女は、正宗達が撃退士の洗脳に成功している事が、とにかく不愉快だったのだろう。
 信志がどのような事をされたのかは分からない。だがそれでも、それは決して許せる事ではないという感情が、彼女を動かしているのかもしれない。
「戦の幕開けだ。その刃を、敵に向ける時が来た」
「…………」
 アトリアーナの姿を見た正宗が信志に声をかけると、彼は黙ってその黒い刀を構え、狂気を解き放った。

「浚われて洗脳されて登場って、まぁお約束な流れだよね」
 だがそんな信志を前にした砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)は、今までにも同じパターンの事件が複数発生しているからか、そう呟く。
「強敵登場ってやつね! 相手にとって不足はないんだから!」
 その一方で、純粋に戦う事だけと向き合う雪室 チルル(ja0220)。
「一対一であなたに勝てないとは思いませんが、試す意味もないので袋叩きにします」
「それもまた一興、というものだ。剣士として刀を振るい続けるという、己の生き方に基づき、迎え撃つ」
「自分の生き方が見つかったのなら、大いに結構。でも、僕には関係ないことなので、殺します」
 刀を構えた正宗がエイルズレトラの言葉に答えると、それを皮切りとして、撃退士達はそれぞれの力を解き放っていく。
 紅空我瞳、慧眼、白炎黒風。
 それぞれの『技』によって解き放たれた力を見た正宗は、腰を深く落として。

「この命果てるまで、私は剣士として戦場に在り続ける――!」
 そう言った正宗と信志は、正面から撃退士達との接触を試みる。
 だがそれと同時に、撃退士達は予め打ち合わせていた通りに、二つの班に分かれて正宗と信志の分断を試みる。
「……お前の相手は、ボクたちですの」
「成る程、我々の連携を断つ目的か。だがそれならそれで、好都合と言う物……!」
 アトリアーナ、エイルズレトラ、風架の三人が正宗の方へ詰め寄ると、それを見た正宗は、自ら信志との距離を取り始めたではないか。
 それによって必然的に正宗と信志は分断される事となったが、それと同時に、アトリアーナ達も信志を抑えている班との連携が取れなくなる。

「さて、これで何度目だろうな……? その度に生き方を問うているが、君は一切の退屈さを感じさせない」
「生き方なんて物は、ありません。自分が守られるだけでない事を主張するように、ただ前へ進むだけです」
 幾度と正宗と刃を交わしてきた、十三月 風架(jb4108)。
 刃を交える度にそれぞれの信念を交差させ、未だ決着の付かない勝負を続ける二人ではあるが、正宗はそんな風架との戦闘を、これからも続けていこうとしているようで。
「君が守られるだけの存在であると言うのなら、この世界はさぞ恐ろしい物になっていただろうさ。その主張、私が聞き届ける!」
 正宗が信志との間に距離を取っている関係上、必然的に三人は正宗を追いかけるような形になっていて。
 それを見た正宗は、瞬時に刀を振り抜き、三人の方へ竜巻を放った。
 しかし、即座にそれに反応した三人は、上手くその竜巻を回避して。

「後ろにいる者が傷つかないように。自分が守れなかった、命を奪った死者の弔いの為に……自分は戦い、生き続けます」
 風刃の発動には間に合わなかったものの、回避行動を終えた風架は、ワイヤーを用いて血針を放つ。
「いつ見ても面白い技だが、二度も同じ手を受ける私では無い……!」
 だが、血の針が正宗の身体を貫こうとしたその瞬間、彼は見切ったように擦れ擦れでその針を回避した、が。
「僕の人生とは、即ち戦いです。強さとは、何かを成す為の道具でしかありません」
「二人だと……? これはまさか、影分身か……!」
 正宗が風架の攻撃を回避したタイミングで、エイルズレトラは自身の分身と共に、正宗の事を左右から挟み込む。
 それによって正宗の足が止まった事を起点として、風架とアトリアーナも加わり、三人は正宗の事を完全に包囲した。

「……どんな相手でも撃ち抜くと、ボクは言いましたの。それが仲間に手出しする相手なら、必ず成し遂げますの」
「その攻撃の裏に秘められた強い意思……私は、それが見たい。正面から来るというのなら、私は正面からそれを受ける!」
 アトリアーナが正宗に正面から接近、バンカーを地面に突き立てると、それと同時に正宗は、刀を平らに構えて。
 その次の瞬間、アトリアーナがアウルの力によって出現させた巨大な獣の頭部が、正宗に正面から迫って行った。
「ッ――!」
 正宗は獣の牙を刀で受け止めようとしたが、その並外れた威力に負け、弾き飛ばされる。
「相変わらず、他の撃退士の攻撃とは比べ物にならない威力だ……。真っ向から受けてもこのザマとはな」
 その衝撃によって、正宗には少なくないダメージが通っているが、刀を構え直した彼は、ニヤリと笑みを見せる。

 ――この攻撃を放った彼女は、生き方という明確な物は持ち合わせていない。
 だがそれでも、正宗の生き方が平穏を乱す者達に与するのであれば、それを正面から撃ち抜く覚悟がある。
 アトリアーナが内心で叫んだその『意思』を、正宗は刃を通じて感じ取っていたのかもしれない。
「敢えて何も言うまい。私はただ、そのような意思を抱く者との戦いを望むだけだ」
 しかし構え直された刀が一瞬で振り抜かれるのと同時に、正宗を中心として瞬時に巻き起こされた竜巻。
 正宗を包囲していたが故の、裏を突いた唐突な攻撃。
 尋常ではない速度でそれに反応したエイルズレトラは、不要な装備品を核にして自分そっくりの人形を作り出し、それを回避する。
 そして彼の分身も軽い身のこなしで竜巻の外に退避したが、反応が間に合わなかったアトリアーナと風架は、宙に打ち上げられた。
 風架は被弾する直前にワイヤーを地面に打ち込んでいたが、それが何らかの効果を発揮する事は無くて。

「行くぞ、受けてみせろ!」
 風を伝い、アトリアーナの元に跳び上がった正宗は、風を纏った刀を振り抜く。
 一、二と振り抜かれる刀を、バンカーで受け止めようとするアトリアーナではあるが、刃が纏う強い風は、彼女の肌を切って。
 流れるように繰り出された三連撃の三発目、振り下ろされた刀をバンカーで受けたアトリアーナは、そのまま地面に叩き落された。
「強く自身が求めた、仲間を守るための力。持っているのは、流した血でさえ何かを傷つける力」
 だがアトリアーナが地面に叩き落されるのと同時に、打ち上げられていた風架は、自らの血で大蛇とも取れる大型の剣を生成して。
「だからこそ仲間の隣に、前に立つ。仲間が誰も傷つかないように、傷つけないように……!」
「上空でこの技か、大したものだ――!」
 咄嗟に刀を構え、風架が繰り出す渾身の一撃を受け止めようとする正宗ではあったが、もはや上空での抵抗は無意味に等しく。

 ――青の風は神殺の力、全てを封じ掻き消す力也。
 その言葉が意味するように、上空で繰り出された風架の一撃は、その迎撃を無力化して、正宗を地面に叩き落とした。
 正宗が風架の方へ視線を向けている間、アトリアーナの元に駆け寄ったエイルズレトラは、トランプを貼り付ける事で彼女の傷を癒す。
「相手が三人であるからこそ、こうして全力でぶつかり合える訳だが……しかし、これはさすがと言うべきか」
 風架に叩き落された衝撃から立ち直り、刀を構える正宗ではあるが、そんな彼の元に迫る、アトリアーナ。
 彼女は不屈の精神から、先程と同じように、アウルの力で巨大な獣の頭部を呼び出して。
「もはや受ける事は不可能、回避に転ずるしか無い……!」
 それを見た正宗は足元に風刃を放ち、その衝撃で回避を試みるが、獣の牙は正宗の足を掠めた。

 牙が掠めただけにも関わらず、足に比較的大きな傷を負う事となった正宗。
 それと同時に、獣の牙が吸収した生命力により、少しではあるがアトリアーナの傷が癒される。
「状況が転ずる事も無く、包囲網が再築される……。今一度、仕切り直しといったところか」
 三人は正宗を改めて包囲し直し、その言葉を聞いて、再び武器を構えた。
 そんな三人と同じように刀を構えた正宗もまた、何処か満足気な笑みを浮かべながら、戦いの続行を望んでいるようだった。

 正宗とアトリアーナ達が接戦を繰り広げている一方、信志の洗脳解除を目指す五人の撃退士達は。
「…………」
 信志がその狂気に満ちた紅い瞳で捉えているのは、伊都の姿。
 正宗と信志の分断が成功するや否や、彼は信志に対して、正面から斬り込みに行く。
 信志はそんな伊都の斬撃を刀で正面から受け止めようとするが、刃と刃がぶつかり合う衝撃により、彼の頬に一筋の切り傷が入った。
「一ちゃんは他の子に任せて、まずは黒瀬ちゃんをどうにかしましょ」
「何にしても、さっさと終わらせちまおうぜ」
 竜胆の呼びかけを聞き、信志の早期撃破を狙おうとする玲治。
 だがその時、信志は自身が包囲されかけている事に気付いた為か、伊都の刀を弾き返す衝撃を利用して、一気に後退しようとする。

 ――しかし、信志の事を抑えに来ている撃退士達は、精鋭揃い。
 それを肌で感じ取ったのか、もはや彼は逃げ切る事は出来ないと考え、刀を腰に下げるように構えながら、深く腰を落とす。
 そして次の瞬間に繰り出される、断罪。
 一瞬の内に再び伊都の正面に接近した信志は、その黒い刀を一閃させた。
「そうだ、そのまま打ち込んで来い!」
 伊都は正面からその一閃を刀で受け止め、信志の攻撃を自分に引きつけようとするが、刃と刃が衝突した衝撃で、軽い傷を受ける。
「ぎゃあぎゃあ喚かなくたって、きっちり無力化してやんぜー」
 しかし、伊都が信志の攻撃を受けているその間、ラファルが煙幕を散布し始めて。
「……?」
 それにより、信志は周辺状況の察知が困難な状況に陥った。

「負けてられないわね、一発かましてあげる!」
 そんな様子を見たチルルは、大剣の剣先にエネルギーを収束、力場を形成する。
 そこから彼女が大剣を突き出すと、真正面に向けて力場が開放され、吹雪のように白いエネルギーが発射された。
「……!」
 信志はそんなチルルの氷砲に反応、横方向に回避を試みるが、ラファルの煙幕によって反応が遅れ、その強烈なエネルギーが身体を掠める。
 氷砲が通り過ぎた後には氷結晶が残っており、それは日の光を受けてキラキラと輝きを放ちながら消え去っていく、が。
「その様子じゃ、避けるのも難しいだろ?」
「ッ――」
 信志が回避行動を取り、着地したその先で待ち構えていたのは、玲治。
 玲治が光の力を帯びた強烈な一撃を放とうとすると、信志は狂気を強めながら刀を振り抜き、真正面からその一撃を相殺させた。

「その隙に、その技も封じちゃうよ」
 だが、そのタイミングで信志の背後に回り込んでいた竜胆は、即座に封印の効果を持つ魔法陣を展開させて。
 玲治と攻撃を衝突させていた信志はそれに反応する事も出来ず、竜胆が展開したその魔法陣は、彼の技を封じ込めた。
「…………」
 それを受けた信志は即座に竜胆達と距離を取り、自分の手のひらを見つめる。
 既に解放されていた狂気が封じ込められる事こそ無かったものの、断罪等といった爆発力の高い技が封じ込められた事を、厄介に感じたのだろう。
「相手は俺だ、黒瀬さん!」
 しかし休む暇も与えないように、伊都は引き続き信志に対して、正面から斬り合いを挑みにいく。

 伊都は素早く三度、四度と刀を振り、信志はそれらを全て正面から弾き返すが、両者が一歩も譲らない状況が生み出される。
 そんな伊都に劣らぬよう、信志もまた連続で刀を振り抜くが、伊都もまたその斬撃を全て弾き返し、睨み合う。
 正面から幾度も刃を衝突させた事により、両者共に軽い傷を受けているが、どちらも一歩も引こうとはしない。
「背中がガラ空きだっての、釘付けにしてやんぜ」
 認識障害の影響が強く出ているのか、いとも簡単に信志の背後を取ったラファルは、アイビーウィップによる彼の拘束を試みる。
「!」
 伊都との斬り合いに完全に意識が向けられていたのか、ラファルの試みは成功し、信志はその場に釘付けにされた。

「これなら絶対に避けられなさそうね! なら、あたいの攻撃で吹き飛ばしちゃうんだから!」
 それを好機と見たチルルは、即座に先程と同じように大剣を構え、氷砲を放つ。
 束縛によってそれを回避する事も出来ず、もはや正面から受ける他に無いと考えた信志は、刀を構えて氷砲を正面から受ける。
 刀に狂気を集中させようとも、チルルの氷砲によって信志はかなりのダメージを受け、徐々に先程までとは違う行動が見え始めた。
 ――洗脳に抗おうとする、封じ込められた正気が浮かび上がり始めているようで。
 だがチルルの攻撃に続き、玲治が正面から信志に攻撃を試みると、玲治の一撃は信志の防御を崩し、その体勢までもを押し崩した。
「畳みかけるよ、もう正気を取り戻しそうだしね」
 そのチャンスを逃さないように、竜胆は信志の側面から月虹を直撃させ、彼の事を吹っ飛ばした。

 竜胆に吹っ飛ばされた信志は、地面を転がってからようやく正気を取り戻したように、その狂気を抑え込んで。
「一体、何が……君達は?」
「あ、休めると思ったら大間違いだから」
 正気を取り戻した信志は、駆け寄ってきた竜胆に一体何が起きていたのかを問いかけるが、竜胆はにっこりと笑みを浮かべながら、治療を始めたではないか。
「……まぁ、大体の察しはついた。休む暇も無いという訳だ」
「僕は『戦わせる』、キミがどんなに傷ついても。僕にはそれが出来るからね」
 そんな竜胆の様子を見て、まだ正宗という敵が残っている事を察した信志ではあるが、そう言った竜胆の横顔からは、何らかの考えが感じ取れるようで。

 ――癒し手という存在は、決して優しい存在ではない。
 仲間がどれだけ傷付こうとも、癒し手はそんな仲間の傷を癒し、再び戦場へ送り出すのだから。
 それを知っているからこそ、竜胆はそんな事を呟いたのだろう。
 優しさだけでは、癒し手はやっていけない。仲間を回復する事の意味を、知っているから。
「そういう事なら、俺はその言葉に応える。敵から聞き出した情報もあるが、先ずはあの剣士を抑えに行こう」
 だがそれでも、信志はそんな竜胆や他の撃退士達から受けた恩に報いる為に、その狂気を再び『敵』に向ける決意を固めた。

 竜胆やチルル、伊都といった五人の撃退士達が信志の奪還に成功したその頃、正宗とアトリアーナ達は。
「……洗脳が破られたという事か。いよいよ、この身も危うくなってきたな」
 分断を維持するべく、アトリアーナ達は正宗の包囲を続けていたが、信志を含めた六人の撃退士が此方に向かってきている事を知った正宗は、刀を平らに構えて。
「ならば私は、一人でも持っていく――!」
 そのまま風架の元へ即座に接近した正宗は、至近距離で竜巻を放ち、半ば強引に風架を宙に打ち上げた。
「貴方の強さを知っているからこそ、ただ前で戦い続ける……!」
「此処で私の技を凌ぎ切るか、それともこのまま落ちるか! 今一度、私は挑む!」
 打ち上げられた風架が上空で体勢を立て直すと、後を追うようにして跳び上がってきた正宗は、刀を振るう。
 それに対する風架は、血針による迎撃を行い、その一閃を上手く相殺する。
「落ちるのは、貴方です!」
 流れるように繰り出されようとしている二連撃目に対し、天叢雲凶蛇による全力の迎撃を試みる風架ではあった、が。

「剣士としての誇りを重んじる私であったのならば、その一撃を正面から受け止めていた事だろう。しかし――」
 そんな風架の攻撃を見た正宗は、即座に刀を引き、その一撃を受け流した。
「ただ今ばかりは、勝ちを取りに行く!」
 大技の反動によって身動きが取れなくなった風架は、振り下ろされた正宗の刃を受け止める事も出来ず、そのまま地面に叩き落されてしまった。
 風架はその衝撃によって意識を失い、正宗は彼に続いて地面に降り立とうとする。
「強さは、求めて極めたら悟りが開けるような物でもありません。よって、強さや闘いに生き方や誇りを求める者は、何か勘違いをしている」
 だがその瞬間を狙うように、エイルズレトラはアウルで無数のカードを作り出し、正宗の肉体を押さえつけたではないか。
「何だ、これは……?」
「強くなりたいなら、哲学に費やす暇があるなら、一戦でも多く戦った方が早い。僕は誰よりも強くなりたいから、誰よりも無駄な事を考えない」
 全身に貼り付いたカードに動きを阻害され、焦りを見せる正宗ではあるが、そんな正宗の背後に、エイルズレトラの分身が迫る。

「そして敵は殺す、それだけです」
「く、分身か……!」
 擦れ擦れで分身の攻撃に気付いた正宗は、咄嗟に反撃に出るが、分身の攻撃を完全に抑える事は出来ず、分身の振り抜いた刀が腕を掠めた。
 それと同時に、分身はその役目を終えたようにして消え去って行く。
「押し切られるか、私の刃が――」
 そんなエイルズレトラと入れ替わるように、絶対に回避する事の出来ないタイミングでアトリアーナは、死牙を放つ。
 呼び出された獣の牙は、受けるように構えられていた正宗の刀を押し切り、正宗自身を吹っ飛ばす。
 正宗の腕を喰らうとまでは行かずとも、そこから生命力を吸収した獣の牙は、主であるアトリアーナの傷を癒して。

「――俺は、人は生きている中で苦難や試練に晒されていると思っている。それらに対して真っ向から挑み、それを乗り越えるのが俺であり、それが俺を俺たらしめていると思っている」
 そしてアトリアーナ達の元へ駆け付けてきたのは、伊都を始めとする六人の撃退士達。
「だからこそ俺は、お前等に対しても真っ向からかち合って、乗り越えてみせる!」
 そう言い切った伊都が放つのは、封砲。
「私達を乗り越える、か……。武人としてのその生き方は、一体どこまで通じるのだろうな」
 自身の主を始めとする、特定の人物を思い浮かべた正宗は、伊都の放った封砲を受け止めようとする。
 だが正宗は、尋常ならざる威力を発揮するその封砲を完全に受け止める事は出来ず、全身に複数の傷を負う。
「休む暇は無いぞ、その罪を購ってもらおうか!」
 伊都の封砲に続き、信志は正面から正宗に対して断罪を試みる。
「罪、か……もはや私にとって、購える罪など存在しない!」
 正宗はそんな信志の斬撃を刀で弾き返し、再び刀を平らに構えた。

「そうだぜ、さっさと沈んじまえ」
 しかし、信志の攻撃に続いてラファルが刀を振り下ろす。
 それを見た正宗は、刀を使って彼女の攻撃を受け流そうとするが、負傷によって上手くいかず、その刃先が正宗の頬を掠めた。
「あたいは細かい事は分からないけど、最強になるつもりよ! だから、あんたも吹っ飛ばしてあげる!」
「単純、しかし真っ直ぐな理由だ。幼く見えるとは言え、油断は出来ない……か」
 チルルの言葉を聞くのと同時に、彼女が氷砲を放とうとしているところを見た正宗は、即座に刀を構え、受けの姿勢を取る。
 だがそれでも、正宗の肉体にはかなりのダメージが蓄積してきているらしく、その身に纏う風が徐々に緋色に変色し始めていた。

 ――最強になる事を目的とする、チルルの真っ直ぐな意思。
 幾多の敵と戦い、時に敗北を喫する事もあった彼女ではあるが、それでも自身の思い描く『最強』を目指して、これからも戦い続けるのだろう。
 未だに最強になる事は叶わない、そして最強に至るまでの道筋すらも見えていない。
 しかしそれでも、彼女はこんなところで立ち止まっている訳にはいかないというその意思に従って、自身の前に立ち塞がる『敵』を打ち破る。
 ――そして放たれた氷砲は、伊都が放ったそれと同じように、正宗の肉体に更なるダメージを蓄積させ、彼が纏う風を更に緋色に近付けさせていく。
「見た目だけで判断するもんじゃねえぜ、誰が相手でもよ」
「死風が吹き始めるとは……フッ、随分とやってくれたものだな」
 チルルの攻撃に続き、正宗に接近した玲治は神輝掌による追撃を行うが、正宗はそれを斬撃で相殺した。

 だが、斬撃で相殺しようとも玲治の攻撃の衝撃によって、正宗は更に消耗していく。
「それでも、容赦はしないよ」
 その時、正宗の側面から月虹による追撃を仕掛けようとする竜胆。
「一か八か、賭けてみる価値はある、か……!」
 しかし、正宗はそんな竜胆の大剣を全力で弾き返し、束縛を打ち破って、撃退士達との間に距離を取る。
「緋色の風、死風……まさか此処まで追い詰められるとは思ってもいなかったが、この一撃に懸ける」
 正宗が纏っている風は完全に緋色に染まり、それを確認した彼は、刀に『死風』を集中させ始めた。

 その一方で、正宗の奥義の構えを見たチルルもまた、己の奥義を発動しようとしていた。
 彼女が生み出すのは、氷嵐の支配者の名を冠した氷の突剣。
 一度振るうだけで簡単に消えてしまうものの、当たりさえすれば如何なる相手も容易く貫く、彼女の到達点の一つ。
 そんな突剣が生み出されるのと同時に、緋色の風を纏った刀を振り上げた正宗は、深く息を吐いて。
「死風が止む前に、その信念を打ち砕く――!」
 そして放たれる、緋色の真空波。
 それを迎え撃つのは、気絶してしまっている風架を除く、合計八人の撃退士。
 伊都の放つ封砲が真空波の威力を弱め、エイルズレトラ、ラファル、竜胆、信志が各々の武器を手に、その奥義を打ち破らんとする。
 アトリアーナと玲治はそれに続き、正宗本体へのカウンターを狙う。
 そして次の瞬間、奥義と奥義が衝突すると、緋色の真空波は消滅し、チルルの氷の突剣もまた、消え去って行った。

「……お前の生き方は認めたくないのです。主に従う生き方をするのなら、主のツケ、払っていくといいのです!」
 正宗の撤退を察したように、真空波が打ち破られたタイミングで正宗の元に迫る、アトリアーナ。
「撤退も許されぬ、か……。もはやこの刃、砕ける他に道は無し」
 正宗は最後の力を振り絞って刀を握り、アトリアーナの五連撃を全て凌ぎ切るが、その衝撃によって、刀は粉々に砕け散った。
「終わりにしようぜ、この辺でよ」
「フッ……」
 もはや正宗は抵抗する体力すら残っていないのか、カウンターを仕掛けようとする玲治を前に、満足気な笑みを浮かべた。
「風剣、薙ぎ払え」
 ――だがその時、正宗と玲治の間に姿を現したのは、白衣のような服を着た男。
 白髪に、紅い瞳。男が操る風の技は、玲治の攻撃を弾き返し、正宗への止めを阻止した。

「まさか正宗の死風が発動しようとは、僕も予想外だった。それを受けて急いで駆け付けた訳だけど、君達は……相当手馴れているね?」
 男はその手に持っていた刀を正宗に渡し、撃退士達にそう問いかけるが、そんな男の姿を見た信志は、即座に刀を構えて。
「何故、お前が此処に居る……!」
「君の洗脳が此処まで簡単に打ち破られる事も、完全予想外だったさ。それに、こうして君達の前に僕自身が姿を現す事も、全てが予想外だ」
 今この場所で起きている出来事全てが予想外であると言わんばかりに、その男は言葉を続ける。
「僕はムラマサ、この正宗の主だ。名乗る事ぐらいはしておこう、想定外の出来事を引き起こした君達への敬意だ」
 正宗を死亡寸前まで追い詰めた結果、撃退士達の前に直接姿を現す事となったムラマサ。
 刀を受け取った正宗はその場で立ち上がるが、もはや戦う体力は残っていなくて。

「敢えて此処では何も聞かないよ、撤退しよう。ただ一つ理解出来るのは、今回ばかりは僕達の負けという事だ」
 この戦闘に於いての負けを認めたムラマサは、正宗を連れ、風の技を操って何処かへと去っていく。
「……あの男が、俺に洗脳を施したムラマサという男だ。詳しい事は戻ってから話す、今はこの場所から撤退しよう」
 ムラマサが直接この場所に姿を現したという事の重大さを察した信志は、一先ずこの場所から撤退する事を、この場に立っている撃退士達に提案した。
 だがこの時この場所に於いて、正宗やムラマサという『敵』との間で発生した戦闘は、撃退士側の完全勝利で幕を下ろす――。


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