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マスター:青鳥
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2012/04/13


みんなの思い出



オープニング

●封じられた都
「じゃあ、皆のことをよろしくね? すぐにお母さん、帰ってくるから」
 母ちゃんが、優しい掌で頬を撫でてくれたのはちょっと前のことだった。
 ちょっとどんくさい、優しい母ちゃん。
 よそのお母さんみたいになんでもできる訳じゃないし、頼りないし。
 でもどんなに怒ったときでも、お兄ちゃんだからって怒り方は絶対にしない。
 だから、オレはちゃんと言うんだ。
「わかってるよ。オレ、にいちゃんなんだから」
 母ちゃんに言われたんじゃなくて、ほんとに弟と妹が大事なんだ。
 だから、寂しいのだって我慢出来る。
 早く、帰ってきてなんて言わないけど。
 でもやっぱり早く帰ってきてほしい。
 京都から。
「ねえ、やっぱ怒られるんじゃないかなあ…」
 おそるおそるシャツの裾を掴んでくる弟。
「きょうとにおでかけ、いくー!」
 無邪気な顔でリュックにおやつを詰めているのは可愛い妹。
 そんな二人の手を掴んで、ぎゅ、と唇を噛む。
「だって、撃退士達なんか当てにならないだろ。オレ達が、母ちゃんを助けなきゃ。
 森を抜けて、バスに乗るんだ」
 そう言って見た先には不吉な程黒々と横たわる森がある。
 遠くで、狼のような獣の遠吠えが聞こえた、気がした。


●希望を伝えに
 結界からは外れた京都近辺。
 別荘地が立ち並ぶ閑静な一角に、ディアボロが現れたとの報が入った。
 正確には複数の群れに撃退士達が遭遇したものの、数体が仕留め切れずに別荘近くの森の方に逃げ込んだということらしい。
 撃退士達は先の戦いで負傷しながらも、周辺の住民を保護しに向かった。
 幸い、シーズンオフでもあり周辺に住むのは別荘の管理人一家しかいない。
 負傷した撃退士達と入れ替わりでの、一家の護衛とディアボロ退治が今回の依頼なのだが。
「……どうも、そのご一家の子供達の挙動が不審と言いますか。
 有体に申し上げますと、撃退士なんか信用できるかぺっ!みたいな感じですね」
 有体すぎる感じで淡々と説明する斡旋所の少女。
 子供達の母親は、京都の実家に寄った際に結界に巻き込まれ中で眠っている被害者の一人だという。
 それを知った子供達は、隙あらば母親を助けに京都まで行こうと父親の手を焼かせているらしい。
「ただでさえ面倒くさい状況なのに、ディアボロまで出てしまいましたので。
 うっかり目を離せば子供達まで被害に遭いかねません。
 健全な少年少女が犠牲になるのも心苦しいですし、私、彼らにこう伝えてもらっております」
 穏やかに笑い、少女は続ける。
「『京都のことは、撃退士達に任せておきましょうね。撃退士ってとっても凄くてとっても強いんですよ。
 それに歌ったり踊ったり、何でもできるんです。今から来る皆が、実地で示してくれますからね』
 ……という訳で、ちょっと懐柔とか頑張って来て下さいませ」
 わりと無茶ぶり、かつ丸投げ。そんな依頼だった。
 突っ込みをされる前にとでも言うのか、彼女は早口で伝える。
「彼らの行動次第では市民の混乱にもつながりかねませんし、他の事件を引き起こす可能性もあります。
 ですが、京都周辺の撃退士に余裕はありません。
 そちらに手を割いてしまえば、京都の事件にサポートが行える人員が減る危険性も考えられます。
 京都に少しでも多くの戦力が割けるかどうかは、皆様の完膚なきまでの解決にかかっているのです。
 そして何より、京都に赴く皆様の言葉と姿が彼らには希望となるのではないかと」


リプレイ本文

●お遊戯
「アクノシレイカーンよいざ尋常に御覚悟を!」
「正義と友情の力を見せてやる! 行くで!」
「応!!」
 マフラーをたなびかせ、レオナルド・山田(ja0038)がぬいぐるみを指差せば、小野友真(ja6901)が掛け声と共に駆ける!
 レオナルドは両手を重ねて踏み台を作り、小野が踏んで更に高く、高く、飛ぶ! レオナルドも地を駆ける!
「これが!!」
「正義と友情の!!」
「ファイナルアターック!!」
 二人が一点で交差すると途端に巻き起こる、大・爆・発!! …はなかったが。
 全力で遊ぶ高校生二人組はそれ故に大変輝いていた。
「すっげー!」
「さっきのもう一回やって!!」
 目を輝かせてヒーローズと戯れる兄弟。ヒーローごっこの誘いにこの年頃の子供が乗らないわけはない。
 最初は不信の目を見せてはいたものの次第に遊びに夢中になっていく。
「皆さん、そろそろ中に入りませんこと?」
 遊び疲れたタイミングを見計らってよくもここまで育てましたグッジョブ!な胸を殊更に揺らしながらと促すフランシスカ・フランクリン(ja0163)。
 お色気系王道ヒーローを狙う彼女の試みは、掴みでかなりオケっぽかった。子供達はガン見だ。
「おー、もうそんな時間ですか。じゃ、手洗い競争スタート!」
 小野がすかさず走り出すのにずるい!と慌てて追いかけていく信二。後には勇気が残される。
「どうですか? ヒーローごっこは楽しめまして?」
 ゆさ、と効果音のしそうな仕草でフランシスカが身を屈めて顔を覗き込む。
「え、あ、う……」
 赤面、硬直、そして逃亡。
「あら? 刺激が強すぎましたかしら」
「この年頃の少年は繊細なものですからな。照れているのでござりましょう」
 背を見送る少女とからからと笑うレオナルド。肩を並べ、二人は見回りへと歩き出す。

 一方、居間で晴菜は人形とのおままごとに飽きつつあった。そんな彼女の目の前に不意に現れたのはフランス人形。
 レースのドレスにボンネット。素敵な人形にぽかん、と顔を上げた先はジネット・ブランシャール(ja0119)。
「一緒に遊んでくれるかな?」
 人形を動かしながら聞くと、晴香の表情が明るくなる。
「あんねー、おにいちゃんおままごとしてくれないの。おひめさまごっこがしたいのよ」
 拙く訴える少女。男ばかりの環境ではとてつもなく嬉しい誘いなのだ。
「うん、いいよ。その子の名前おしえて?」
「マリー!」
「じゃあマリーちゃんと晴香ちゃんにおみやげ。お姫様のお菓子だよ」
 包みを開くと夢のように可愛らしいマカロンが並んでいた。
「晴香も、たべていいの?」
 勿論、と渡された菓子を頬張った瞬間、晴香の目がまんまるになる。
「おいしーねえ」
 魔法みたい、と少女は呟く。人形や、お菓子、素敵な物をなんでもジネットは出せるのだ。
 ならば、魔法使いではないのか。
 こうして、ジネットは魔法使いのお姉ちゃんの地位を確立していたのだった。



●撃退士と共に
 挽肉、玉葱、その他諸々。
 ボウルに入れて、捏ねる捏ねる。
 形を整えてフライパンに落とす傍ら、付け合わせも忘れない。
 リクエストに応えてハンバーグを作る男、笹鳴 十一(ja0101)の手際は芸術的だ。
「……おにーちゃんはなんでごはんつくるの?」
 肉の焼ける匂いに釣られてきたのは信二だ。
 撃退士とはテレビの向こうの人みたいに遠いものだった。なのに目の前で、ご飯を作っている。
「料理ぁ趣味でもあるし、趣味と実益兼ねられるって素敵じゃん?」
 ソースを混ぜながら、いかにも楽しげに答える人は普通のお兄さんのようで、とても不思議。
「よし、こんなもんかね。クリームは何がいい?」
「チョコレート!」
 焼き上がったスポンジを冷ましながら、妹と話していたカルム・カーセス(ja0429)の方も気になって信二が振り返ると、踊るような眼差しがちかりと瞬く。
「興味があるなら旅してた時の話を聞かせてやるよ」
「聞いてみるのもいいんじゃねぇかな。知らないことはいっぱいあるだろ?」
 背を押してくれる笹鳴に頷いて、テーブルに座る。
 彼が飄々とした語り口で話すのは、知らない世界の話。聞き入る信二にカルムは笑って見せる。
「世界は面白い事でいっぱいだ。 いつかオメーさんたちが自由に見に行けるように天魔なんざ俺たちがやっつけてやるさ。
 それまで、妹をしっかり守るのがオメーの使命だぜ」
 晴香の鼻についたクリームを拭ってやりながら、カルムは言う。
「出来たぜー。運ぶの手伝ってくれるかぁ」
 笹鳴が見せてくれたお皿には、とびきりおいしそうに湯気を立てるハンバーグ。
 大事に信二は皿を抱え、言葉の意味を考える。
 彼等がここに居てくれるという、意味を。


 ハンバーグにチョコケーキと紅茶。マカロンや差し入れのお菓子までが並ぶ居間でくつろぐひととき。
 エステル・ブランタード(ja4894)がおっとりと笑ってクッキーを勧めると、勇気は考え考え口を開く。
「撃退士って、どんなことができんの?」
 彼等は等身大の撃退士の姿を見ることが出来た。故に、知ろうとする段階に進んだのだ。
 それがエステルにも分かるから、まずは分かりやすいところから始める。
「撃退士はこういったこともできますね〜」
 胸に手を当て、意識を集中させると彼女の周囲に美しい輝きが生まれる。星のように眩しく、優しい光。
「うわ…、」
 すっげえ、と口の中で何度も呟く勇気。その横で、隙あらば膝によじ登ろうとしていた晴香がユリウス・ヴィッテルスバッハ(ja4941)を見る。見る、見る。
 凝視。
 期待に満ちた、眼差しだった。
「……分かった」
 子供あしらいに慣れていないユリウスは、だが邪険にはしない。指を翳し、ぼう、と炎を浮かび上がらせる。
「少々驚かせたか? まぁ、種も仕掛けも無い手品みたいなものだ」
 晴香がうっかり手を伸ばしてしまわないうちに炎を消しながら、なんでもないことのようユリウスが言う。
 すっかり夢中になって魔具から始まるエステルの撃退士講座に子供達は聞き入り始めた。
「何か聞かせてほしい話とかありますか〜?」
 質問は多い。撃退士の依頼経験や力の使い方、学園のこと等々。一通り聞き終わった頃には、正しい撃退士像を把握できたようだ。
「撃退士にオレもなれたら良かった。でもオレ、急ぐから」
 正しい理解と共に、今から目指しても間に合わないとは分かったのだろう。勇気の顔に焦燥が浮かぶ。
「やめておきなさい。少なくとも、今は」
 ユリウスが冷静に口を挟む。不服の色をいなして首を振り。
「大事な者を守ろうという気持ち自体は大切なものだよ。が、無茶をして、却ってその人を悲しませてしまっては元も子も無いだろう」
 痛いところをつかれた顔で勇気が黙り込む。言い返す言葉を、なんとか探して、けれど思いつかない。
「子供らは逞しくて良いが」
 様子を眺めていたカルムが、居間に来た父親に声をかける。
 実直そうな父親はお恥ずかしい、と眉を下げた。
「仕事を理由に子供は妻に任せきりで。距離が開いてしまってるです」
「だが、父親だろう。想いなんてなぁ、距離でなくなるもんじゃねぇだろうさ」
 己の指輪に触れ、凪いだ声で言う笹鳴。父親が家族を愛おしまない訳ではないと分かるからだ。
「ええ、大事です。あの子等は、僕と妻の宝だ」
 そればかりは強く、頷いて。
 もう一度子供と話してみます、と言いかけたとき。

 獣の吠え声が、聞こえた。


●ヒーローの戦い
「きましたわよ! 二体、庭で食い止めていますわ」
 見回りに出ていたフランシスカが鋭く玄関から報告すると撃退士が一斉に立ち上がり、行動を開始する。
「こっちに来て」
 ジネットが晴香を抱き上げる。すっかり懐いていた少女は抵抗もしない。
「俺さんとおいで、こっちだ」
 笹鳴は硬直して動けない兄弟の手をそれぞれ取って、移動。子供部屋のベランダはすぐそこだ。
 見下ろせば戦闘はもう開始していた。
「某をこの程度で打ち倒そうなど笑止千万。苦無の錆と散るがよろしかろう!」
 片手は腰に、もう片手で指に挟んだ苦無を翳し豪語するレオナルドはディアボロ二体に囲まれて、臆した様子を見せず挑発する。
「とう!!」
 襲いかかる狼を斜めに飛んで避けた次の瞬間、バク転で背後へと綺麗に着地。派手なアクション俳優のようだ。
 赤黒く口を汚す狼は却って戦闘意欲を掻きたてられたのか醜い唸り声を立てる。
 声にか怯え竦んだ少女を、ジネットは膝の上に抱き上げる。
「怖い化け物はおねーちゃん達がみーんな退治するから。そうしたらお母さんも帰ってくるよ」
 身体の全部で少女を抱き締めながら、指先は髪を撫でつづける。
「俺さんがこんなに平然としてんのぁさ…仲間を、撃退士を信じてるからだよ」
 年長の兄弟達にも笹鳴が語りかける。それで、恐怖を堪え彼等は階下へと視線を移す。
 折しも、仲間達がレオナルドに追いついたところだった。身が軽いといっても、狼の攻撃すべては交わしきれず爪痕がいくつも身体に刻まれている。
「怪我を、まず癒しましょう」
 エステルが手を翳すとレオナルドのアウルが活性化していく。傷が塞がっていく不思議に兄弟達は目を見張った。
 狼は多勢に無勢と悟ると無防備なベランダめがけて方向転換をしに駆けるようとする。
 身を撓め、一気に後ろ足が跳ね上がり。撃退士達の脇を抜けようとするが、ユリウスが無理矢理身体をねじ込む。同時に閃く黄金と威風堂々たる皇帝の姿。勢いを乗せた狼の爪は強固な護りに遮られ、届かない。
「悪いが、ここは通せないのでな。早々にご退場願うとしようか」
「家の中には入れさせませんよ」
 エステルもまたフォローにと回りこむ。横腹をワンドで打ち据え、かと思えば背面を狙い、常に気を惹く動作だ。
 二人の壁に遮られては、狼もそれ以上進行は出来ない。
 好機、と見てとったフランシスカがアウルを一気に解き放つと肉体を薄くレガースが覆っていく。今、このときは彼女の身体すべてが一つの武器となり。
 木を蹴る反動を利用して高く位置をとり、空中で一回転。勢いを乗せた身体は、山すら砕く凶器となりうる。
「これで、決めますわよ!」
 見事なラインを見せながらのヒップアタックに狼が地面に叩きつけられる。
 すげえ、と見とれる少年達の視線を背に感じながら、レイピアを引き抜いたユリウスが期を逃さず、前衛へと踊り出る。
「私に出来る事はこれしかないのでな。だから、出来る事をやるだけだ」
 流れるような切っ先は、狼の喉を真っ直ぐと貫いていた。

 もう一匹の狼が状況を悟ってか、ぐるりと首を巡らせる。撤退か、特攻かを迷う間隙。
「逃すかよ」
 カルムがそれを許すわけもなかった。広げたスクロールから迸る雷は宙を突き進み、狼を貫く。
 四肢をもつれさせ無様に狼が足掻く、身体の自由が効かないのだろう。
 そこをすかさず小野がワンモーションからの抜き撃ちに入る。
 腕が動いた時には既に狼の足が一本弾け飛んでおり、小野は顎を軽く上げて殊更ゆっくり銃を持つ腕をおろす。
 やばい、楽しいとかこっそり一人ごちてしまう小野。が、気を引き締めて。
 レオナルドが、小野を見て親指を立ててみせる。
「今ですぞ小野殿!」
 考えることは、互いに一つ。
「はぁぁぁ! 必殺、影手裏剣!!」
 レオナルドがアウルの塊を凝縮させ、派手なモーションで狼の鼻先を狙い投げ放つ。
「よし来た! ダブル必殺技やー!」
 タイミングを合わせて小野の手元から弾け飛ぶ、強烈な弾丸!
 午前中の再現のよう二人の攻撃は交差し、一点を完全に打ち砕く!

 
「言ったろ?撃退士ぁ何でもできる、ってさ」
 結果を見届けて、笹鳴は勇気の目を真っ直ぐ正面から捕らえる。
「見た事もない全部の撃退士を信じろとぁ言わねぇさ。だからせめて…ここにいる8人だけでも、信じてみちゃくれねぇかな? 両親だって子供の無事を何より願ってんだしなぁ」
 ジネットも何か言おうと口を開くと、代わりに涙が零れた。
 ただ腕の中の護れた命を、抱きしめて。
「……守れて、よかった。生きててくれてありがとう」
 それが一番、心の素直な言葉だった。失った痛み、失う恐怖、傷つきながら――でも、今確かに護れたものがここにあるのだと。
「……俺さんは、こんな風に泣く奴らだから信じずにはいられねぇのさ」
 穏やかな笹鳴の言葉を、誰もが噛み締め。促される侭、皆の元に歩きだす。



●希望の種
「カッコよかったやろ?」
 疲労もなんのその笑って見せる小野に兄弟は何度も頷く。
「ぴかーって光ってすごいのがいた!」
「いたいのいたいのとんでけーね」
 口々に熱く感想を述べるのに、ユリウスは相変わらず少し距離をとっており、エステルは柔らかな笑顔でいちいち相手をしてやっている。
「こりゃ、まぁ安心か。父親の気持ちも分かってんだろうなぁ」
「母ちゃんを俺たちが助けるまでしっかり守ってやらなきゃダメだぜ」
 笹鳴とカルムに、先程より落ちついた表情で父親は返す。
「僕たちは戦えませんが、信じることはできる。京都に大事な人を残した者は、少なくないはずだ。
 彼らが焦らないよう伝えます。そして、子供達と一緒に貴方がたを信じます」
 住民の不信は不用意な行動を生み、撃退士の足を引っ張りかねない。だが、ここで伝えた希望はじわじわと人々に伝わり、変わるものがあるだろう。
 父親の言葉を聞いてか、勇気が改めて皆に向き直る。
「……助けて、母ちゃんや皆、を」
 お願いします、と頭を下げる。
「もちろんですわ」
 華やかに、そして整った肢体を誇示するようフランシスカが胸を張る。この身体で、生き様で彼女は希望を背負うことに躊躇いはない。
「それから……ちゃと、帰ってきてな」
 訥々と言う勇気に、腕を広げて堂々とレオナルドは笑う。怪我など、無かったかのように。
「撃退士とは何かと問われれば!それは、皆の未来と大切な者を守るヒーロー!!
 我らを信じる心ある限り!決して折れぬ正義の刃なり!!」
 太陽の如く真っ直ぐさは、子供達の心を直に打つ。
「――時には敵を討ち、時には人々を護りみんなが安心して生活できるように努力し、そして結果を求められる者」
 寄り添う音はジネットのもの。柔らかく。
「だから、これからも私達を頼ってね?」
 そう締められた台詞に、頷く子供達。信じる、とかありがとう、とか、それらは全部上手く言葉にはならなかったけど。
 確かに、伝わった。
「ヒーロー、かー。うし、頑張るぞー」
 以前の経験を思い出し、噛み締めるように小野は言う。最後、自分の頬をぱん、と叩いて気合いを入れ。
「ヒーローを名乗るのならば、それに相応しき役目を果たさねば、ですわね」
 呟いたフランシスカの、皆の視線の先は京都の中心。
 二度と会うことがあるかもわからない、彼等の母親を直に救える訳ではないかもしれない。
 けれど、彼等は京都に行く。

 その背中の眩しさは絶望に塞ぐ世を確かに強く、照らし続ける。


依頼結果