まずは、参加可能な本来のトラブル喫茶店の生徒から、簡単な説明を受ける。
「うむ、わかったなのだ」
魔王のような威圧的で筋骨隆々のUnknown(
jb7615)が手渡されたマニュアルを一瞥して理解したような……雰囲気だけ醸し出す。
「うむ、主なセッキャク(接客)は貴様らに任せるとしよう」
まあ、分かっている訳ではないようだ。
「任せな!」
そんな自信溢れる表情を浮かべる真龍寺 凱(
ja1625)。目つきの悪さから、少し不安そうな顔をするも、もともとトラブルが発生するような喫茶店をやろうという考えの生徒。ある意味、面白そうだと、急遽参加できなくなった生徒には悪いが、とても楽しそうにするのだった。
そんな説明を聞いていた長谷川アレクサンドラみずほ(
jb4139)だが、実は説明をよく理解していない雰囲気。
「ええっと、接客をすればいいのですわね?」
「うむ、セッキャクするのだ」
そして理解する気があまり無いUnknown。そんな様子を見ている紅葉 公(
ja2931)。
「……まぁ、こういう行事はトラブルありき、ですよね」
のほほんとした対応で一緒にトラブルを解決する仲間たちを見ているのだった。
そして、まずは着替えだ。
「服装はこのままでよかったっけ?」
「用意してありますけど、基本はお任せします」
質問する十三月 風架(
jb4108)だが、どうやら服装は自由のようだが、ウェイトレスの服などは用意されているようだ。
「どうやって着ればいいのね」
そんな支給されたウェイトレスの服をどうやって着たらいいか悩んでいる柘榴姫(
jb7286)。
「あらあら」
紅葉がそんな柘榴を手伝ってウェイトレスの服を着せてあげる。見た目は幼い雰囲気な紅葉だが、以外と大人のようで、丁寧に柘榴にウェイトレスの服を着せていく。
「どうかなの」
そしてくるっと一回転する柘榴。
「良く似合ってますよ」
島原 久遠(
jb5906)が誉める。そんな島原は着慣れた和装だ。そんな中でキッチンの様子を確認する真龍寺。
「楽しい学園祭にしましょうね♪」
そして海城 阿野(
jb1043)のかけ声で開店準備をするのだった。
「いらっしゃいませ!」
そして、始まったトラブル喫茶店。すぐに何かを楽しみにしているある意味酔狂な客が来店する。そして、運ばれるケーキ、それは甘い香り漂う優しい誘惑。
「……」
そんな甘い誘惑に誘われるままに、ケーキに熱い視線を向けるのは、柘榴。
「あとで残っていたら食べられるようですよ」
そんな柘榴に優しい声をかける紅葉。
「ふわふわしているわ」
「そうね、食べるともっとふわふわですね〜」
そんなふわふわな雰囲気のなか、最初のトラブルが来店。
「にゃ〜ん」
「にゃにゃ?」
猫さんご一行の来店です。
「きゃ〜可愛い!」
「おお、猫だ、猫だ!」
客としていた生徒たちからも歓声が上がる。同時にささっと姿を消すUnknown。そしてカウンターの隙間からこっそりと覗き見。
「はぁ……癒しですねぇ」
それを思わずうっとりと見つめる海城。そして用意していたねずみのおもちゃで猫さんを誘導します。そんな仕草にもお客さんから歓声が上がるなか、誘導に従って海城の膝の上に。そして、自分も一緒に椅子に座ります。そして、テーブルの上に置かれる猫用ケーキセット。それを運んできたのは、若干顔がゆるんでいる真龍寺。しかし、それをお客さんには気がつかせる事なく、優雅な動きでテーブルに乗せます。
「どうぞ、貴方専用のメニューです」
そして、猫はそのケーキを美味しそうに食べるのでした。
さて、隣では紅葉たちが別の猫の応対をしています。
「わぁ、猫ですね〜! かわいい! 何か飲みますか??」
「猫さんは抹茶ラテが飲みたいみたいですね」
そんな紅葉に対して、島原が猫の心を代弁します。そして、手際良く抹茶ラテを用意してくる島原。そのラテの表面には可愛い猫のイラストが。
「猫さんには、猫のラッテアートです」
その絵も猫に合わせた柄になっているのが素晴らしい。思わずお客さんから拍手が上がります。
でも、それは猫さんには関係ない様子ですぐにラッテアートの上からぺろぺろ。すぐに崩れちゃったけど、美味しそうな猫に、まあいいかという周囲の雰囲気でした。
「みどころのある、毛玉ね」
他の皆も猫たちを見て一緒に牛乳を飲んでいる柘榴。そして、お客さんの中に猫と遊びたい人に猫じゃらしなどを渡して、一緒に遊ぶように促している十三月。そんな感じで今だけの猫喫茶になったのでした。
そんな感じで最初のトラブルを華麗にそして、お客さんを楽しませながらの解決を披露した皆さんに次のトラブルが準備をしていました。そして、小さな合図で強盗に扮したスタッフが合図を送ります。
「え?」
でも、それに気が付いていない長谷川。それを上手な演技だと思ったスタッフは、狙いを長谷川に定めます。
「お前等動くな!」
そして、タイミングを併せて登場する強盗団。そして、長谷川を人質として銃の玩具を突きつけます。
「キャー強盗よ!」
「た、助けてくれ!」
悲鳴を上げながら逃げ惑うお客さん……に扮したスタッフ。
「おら、お前も人質だぜ!」
もう一人、人質を取ったのは柘榴。そして強盗が銃を振り上げると……その銃に襟がひっかかり、ぷら〜んとする柘榴。
「……」
思わず喫茶店の時間が止まる。そのままぷら〜ん、ぷら〜んと左右に揺れる柘榴。よく見るとその柘榴の手には、我慢出来なかったのかケーキの乗った皿。
ぷら〜ん、ぷら〜んと揺れる柘榴に猫さんたちが集まって、にゃ〜ん、にゃ〜んと楽しそうにその周りをくるくると回ります。
「可愛い……」
時間の止まった喫茶店に響く十三月の声で時間が動き出す。
「ヒャッハー、騒ぐんじゃねぇ!」
頑張って怖さを演出しようと威圧し、銃を向ける強盗に、颯爽と現れる真龍寺。
「お客様、他のお客様のご迷惑となりますので……店内ではお静かにお願いします」
そして、銃を奪い取りトレイで殴打。同時に隙を見て長谷川の鋭い左のジャブで銃を打ち抜き、右拳で手加減してテンプルを打ち抜く、華麗はワンツーパンチ。
「あ、ご、ごめんなさい!」
ちょっと力が入ってしまったようでお客さんに聞こえない声でごめんなさいする長谷川でした。
「ごめんね猫さん、危ないからちょっと離れててね」
猫を膝の上に乗せたままだった海城は、猫を優しく抱っこして、安全な場所へ移動させます。
「猫と遊んでんじゃねえよ!」
そして、猫が安全な場所に移動したのを見計らっての強盗の攻撃。その攻撃をかわし、相手の頭上を飛び越え背中へ肘打ち。
「がはぁ!」
その一撃でよろめく強盗。その隙を逃さずに腕を取り背負い投げ。そして踏みつけまでの淀みのない動作。
「あっ、ごめんなさい! つい癖で……」
ハッと気づき足を退けるが、足下の強盗から聞こえた言葉は「大丈夫、OK」だった。同時にお客さんからは拍手喝采、皆喜んでくれている。だから、多少の痛みなら耐えられるのだろう。
「玩具のオモチャなのだろう?」
強盗に銃を向けられながら表情を変えないUnknown。キョトンとした表情で強盗の横へ移動する。
「てめぇ!」
そして銃をUnknownに向け威圧する。
「お客様、当店ではそのような玩具はもれなく我輩のおやつになりますのでご了承くださぁい……」
そして、悪魔の微笑みを見せる。その笑みを見て……思わずチビりそうな表情になる強盗。そして放心状態の強盗から銃を奪い取り……バリバリと食べてしまう。
「ごちそうさまなのだ」
そして、本当に怯えた表情で逃げていく強盗であった。
「お帰りくださいませ、お客様方」
十三月が意図的に開けていた退路を、弾き飛ばされるように退出していく強盗たち。そして、強盗がすべて出ていったところで十三月がドアを閉じる。そして沸き上がる歓声と拍手。このトラブルは、荒事だから少しは水をこぼしたりというミスもありそうだったが、島原がお客さんへ被害がいかないように立ち回った事もあり、全員無事だった。ちなみにUnknownが食べた銃は、落雁の味がした……。
「さあ、始まった、時代は戦国、喫茶店バトルの開始だ!」
そして、皆のおかげで順調に進んでいくトラブル喫茶店、今度は急に現れたマスクマンがマイクパフォーマンスをしている。そして、手伝いに来ている皆さんにスポットライトが当たる……いや、さっき暴れすぎたからか、Unknownはささっと猫と一緒に奥へ避難。
「喫茶店バトルロイヤルですか……祖父に習ったお手前を披露しろ、という事ですね?」
やる気を見せる島原に大道具係りが道具一式を大切に丁寧に運んでくる。
そんな本格的な様子に盛り上がるお客さん。そして、マスクマンがお客さんから審査員を選ぶ間に、皆さんはお茶の用意です。
「ちっ……。酒じゃねえのかよ……」
と言いながらも、未成年の真龍寺は少し濃いめの珈琲を入れる。少し好みが分かれる味だが、玄人好みだろう。
「ちょっと季節とかイベントとかは外れちゃうけど」
そう言って十三月が用意したのはストロベリーティーに蜂蜜を添えています。
「革命児なのね」
いちごオレを用意した柘榴に気楽に飲んで欲しいという優しい想いを込めた紅茶を用意した紅葉。
「紅茶ならお任せください。とっておきのダージリンセカンドフラッシュを用意しましたわ」
長谷川はイギリス式の紅茶をスコーンと一緒に提供。そして、香るマスカテルフレーバーに思わず笑顔になります。そんな中で静かに急須で緑茶を用意していた海城だった。
お客さんの審査員は、大人から子供まで。子供の人気は香り高いお茶よりも紅葉の優しい紅茶や柘榴のいちごオレ。
でも、やっぱり人気は長谷川、十三月、島原の本格的なお茶。でも、玄人好みの珈琲の真龍寺も人気があった。
そして、出されたお茶を飲んでいく審査員のお客さん。
「これは普通のお茶?」
そんな中で一番反応が難しいのが、海城の出したお茶だった。海城のお茶は急須から入れた緑茶。審査員は皆、普通だという顔。しかし、その中で一人……緑茶ソムリエを自称する審査員が、カッと目を見開く。
「これは……そう、まるで急須で入れたような美味しさ!」
その言葉に満場一致で疑問符を浮かべる人たち。
「そう、選ばれたのは綾鷲でした」
得意満面の顔で綾鷲(市販品のペットボトルのお茶)を見せる海城。
「それがやりたかっただけか!」
観客から声を揃えた突っ込みが響くのでした。
そして、バトルロイヤルに落ちがついたところで、優勝者の選定が始まります。しかし、そんな時に……隣から、なにやら悲鳴のような声や、何かが壊れるような音がこちらに近づいて来た。
そして、ドアを激しく跳ね飛ばし現れたのは……無限軌道型で上部に4本のアームを持つロボット……顔はご丁寧によく暴走する事で有名なロボットアニメの紫な主役機。
「グワァァァァ!」
その拘束装甲が剥がれ、口を開け奇声を上げる。
本当のトラブルの襲来である。
「おお、流石ブンカサイ! こういう戦闘も含まれている祭りなのだな!」
「それは違……!」
突如現れた暴走ロボットに邪悪な笑みを浮かべるUnknownに思わず突っ込みをしたくなる海城だったが、微妙に誤解でない気がして、それを躊躇してしまう。
ともかく、お客さんを守るのが優先だ。そう思い、視線を向けるが逃げようとか、そういう雰囲気ではなく、これもトラブル喫茶店のイベントだと思っているようだ。
「ならば、このままイベントという事にしましょう」
周りに目配せをして、全員の了解を得る。
「おなかがすいているのね」
その中で最初に動いたのは柘榴だった。現れたロボットに、用意したご飯を箸で口に入れる。もちろん、ロボットに食事をする機能なんて無い。しかし、そのロボットは与えられたご飯を口に含み……同時に走る稲妻。
「オイシインダナァ」
感想を叫ぶロボット……食べられるのかよ! 周囲の視線がそう同時に語る。
「ふふふ、こんな事もあろうかと、ロボットに食事の機能を追加しておいたのだ!」
「な、なんだって!!!」
同時に観客が叫ぶ。それよりも、後から現れた白衣姿の……推定カガク部の部員がちょっと憎らしい。
そんなロボットは、ご飯を食べながらもイベントのように見せかけながらの柘榴の攻撃で多少のダメージを負っているが、この程度で止まる様子はない。マニュプレイターを動かしてカッターナイフのような武器を取り出して振り回す。それがお客さんにぶつかりそうになり、それを真龍寺が身を盾にして庇う。
「カガク部コロス……」
思わず本音が漏れる真龍寺。それが聞こえたのか、外では、カガク部が……土下座待機していた。
「申し訳ありません!」
部長らしき人が大きな声で謝罪。
「しゃあねぇか」
そこまで言われるとさすがに怒れない真龍寺。すぐにお客さんに紳士の笑顔で丁寧に声をかける。
「お客様、申し訳ありませんが、大変危険ですので、1メートル以上、お下がり下さい」
「ここまで下がってくださいね」
同時に八卦陣を使用しお客さんを守る島原。そして自然な態度で避難を促す。
「えぇと……。隣で展示していたロボットでしょうか……」
そんなトラブルだけどのほほんと対処する紅葉。そののほほんな態度もあって、お客さんはパニックになるような心配もないのだった。
「今です!」
十三月はチタンワイヤーを展開させロボットを束縛し、教室の中央に移動させる。
そこで待ち受けるのは長谷川。体を沈み込ませてからの強烈なアッパーカットで大きく頭部を揺らす。
「っとと、危ないですね」
その一撃で弾き飛んだ破片をお客さんへ飛ばないように叩き落としながら、海城は、影から作り出した腕でロボットを動けなくする。
「グガガァ!」
そのタイミングで連続攻撃を仕掛ける紅葉と島原。紅葉の雷撃がロボットを貫くと同時に島原が接近し炸裂符を貼る。一瞬の間の後に爆発するロボット。その破片も真龍寺たちが叩き落とす。
そして、拍手喝采の中、トラブル喫茶店は後かたづけのために閉店するのだった。
「今日一日、とても楽しかったですね〜」
すべてを終えた後の紅葉の笑顔。それを見て、少し難しい表情をしていた真龍寺も笑顔になる。
「うむ、ブンカサイいいものだな」
Unknownは満足気な悪魔の笑みで仁王立ち。
「ケーキ、ふわふわだったの」
美味しいケーキを食べて満足そうな柘榴。
「ロボットのトラブルも、いい演出になりましたね」
島原も笑顔を見せる。そんな笑顔を見て、この喫茶店の成功を感じる皆であった。