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マスター:相沢
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
形態:
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/09/02


みんなの思い出



オープニング

●エンディングまでどれ位?
 まあだだよ。

●×××
 笑い声。怒声。笑い声。
 会話にならなかった。会話しようと思っていなかった。
 弾き飛ばされて、無様に壁に叩き付けられる。
 口から溢れ出す血。彼女の腹から飛び出した色によく似ていた。
「どうしてあんなこと」
 答えは無い、そして、途絶える意識。
 目覚めた時、殺されなかっただけでも僥倖だとひとは言った。
 違う、殺されてしまった。彼女は殺されてしまった。
 救えなかった。救うことが出来なかった。
 俺が戦場からもっと早く戻っていれば、もしかしたら護れたかも知れないのに。
(――一緒に果てられたかも知れないのに?)
 彼女の遺体。散乱する臓腑。
 手を伸ばす。口に運ぶ。指間からぼたぼたと落ちる血。命の源。
 ――ひとつに成れたら変わるんだろうか。ひとつに成れたらまた出逢えるんだろうか。
 嘘だ。そんな夢物語、三流映画ですら有りやしない。

 そこで、あいつは俺の目の前に現れた。
「きみも寂しいんだね、アベル」
 笑う、笑う、笑う。あいつは痛ましそうに笑って俺を見て、それから、意識は途絶えた。

「――もういいよ」
 彼女の声がする。
「――まだ駄目さ」
 兄の声がする。

 笑い声。喧騒。剣戟。弾ける焔。戦場。転がる遺体。血濡れのリング。立っていた兄。蹲る膝。呑み込んだ臓腑。すべてが真白の指に巣食われて、――潰えた。

●悪魔の招待状
「異例の事態パート2。悪魔から招待状が又もや届きました。――今度もお茶会、だそうよ。趣向を変えた、ね」
 場所は斡旋所。キョウコ(jz0239)はため息雑じりに席に腰掛けた。
「罠の可能性――は恐らくないと思う。何でって、前回と同じ、差出人は例の悪魔ルクワート(jz0277)からのものだから。但し、今回注意が必要なのは……お茶会の前に”遊んで”欲しいって奴さんは言ってるわけだよ」
 遊んで。言われた意味を呑み込めない撃退士たちは首を傾げる。
「……つまり、文面から察するに、撃退士と戦闘ゴッコがしたいそうだよ。あくまで戦闘ゴッコで奴は本気じゃあないみたい……だけど、意味不明だよね。お茶会がしたい、仲良くしたい、って言っておきながら今度は戦闘仕掛けて来るなんてさ」
 指し示された文面を見た撃退士らは目を丸くしたり、渋面を浮かべたりと、反応は様々。
 ”手加減はがんばります”――。
 ”いじわるはしあいっこなしだよ”――。
 正直、頭を抱えたくなる内容である。
「ともかく、警戒はしながら、悪魔の招待に再度応えて欲しいと思ってる。ヴァニタス・アベルの情報を含め、ルクワートの情報も未だ未だ不足してる状況だよ。交戦履歴を手に入れられるのは、チャンスだと思っていい。相手を信じるなら、――どうやら本気では向かって来ないみたいだし、ね」
 彼らは一様に沈黙したまま頷くと依頼書――もとい招待状を手に取り、口々に対策会議を始めた。

●みんなで遊ぼうよ
 親愛なる撃退士のみなさまへ!
 今日も、みなさまにお茶会の招待状をお届けにまいりました。
 また、今回のお茶会は趣向をこらしまして
 私と遊んでいただこうと思っています!

 もちろん、手加減はがんばります。
 いじわるはしあいっこなしだよ。

 それにまた、みんなと色んな話をしたり、聴いたりしたいです。
 良ければおさそいあわせの上、ご参加ください!
 楽しい時間を約束します。

 わたしには敵意は一切ありません。
 だからみんなも仲良くしてくれるととっても嬉しいです。

 一緒に遊んでくれたら、もちろんお礼もするよ。

 Lucwart.

●白磁の籠の向こう側
 言っちゃだめって言われたの。
 でも、見せちゃだめなんて、言われてないよね?

 ――うん、そうだ、きっとそう。

 1.少女の遺体。ネグレクトでやせこけた身体。金魚の尾ひれ。
 2.幸福を求め迷い、ディアボロに食われぼろぼろになった二人の子ども。青い鳥。
 3.殻に篭ってすべてを憎み両親と自身の死を望んだ少女。鳥籠。
 4.外の世界を渇望して死の淵に落とされた憐れな少年。赤いずきん。
 5.蝶よ花よと育てられ、老いて乾涸び世を憎んだ女。自ら望んで死を。月の姫。
 6.罪を重ねて両親に再度逢おうとした、灯火の少女。かぼちゃ頭。
 7.母として自らの罪を断じ、自ら命を絶った女。茨の城。
 8.存在意義を失くしてしまった少女。最期は自らの手で。鏡。
 9.深く傷付き、脆い心臓が時を止めてしまった少女。長い長い亜麻色の髪。
 10.似た境遇で死した多くの迷い子たちの亡骸を掬い上げた、白磁の指。
 11.止め処無い殺意。死すことで望みを叶えた少女。縷々。
 12.届かぬ想いに心を痛め、死を望んだ少女。淡雪。
 13.死ぬことで夢を叶え、再度殺されることで夢を叶えた少女。終点。
 14.求められることで存在価値を見出していた少女。自業自得の末死亡。脆い硝子色。
 15.架空の世界に身を置いた男。世界を喪い、自我をも喪う。世界は破滅した。勇者。
 16.御伽噺に夢を見て、御伽噺に救いを望んだ女。叶わぬ儚さを苦に自害。毛糸玉。
 17.硬い錫で身も心も固めた少年。癇癪を起こし、現実から目を逸らし続け、力を求めて自ら望んで死を。ブリキの王子。
 18.自らの生に意味を見い出せず、耐え兼ねて死を望んだ少女。親指姫。
 19.居場所を奪った魔女には死を。そう望んだ少女は魔女になり、ディアボロに食べられ死亡。可愛い妹。

 闘いを終えた撃退士らの視界を、思考を走馬灯のように浚っていくのは、幻覚の中で――ひとびとの命が失われていく姿。ある者は自ら死を求め、ある者はアベルに死を希い、またある者は何らかの切欠で亡くなっていった。
 ずっとその様子を見ていたルクワート。ずっとずっと自らのヴァニタスの動向を見詰め続け、その真意を、意図を知りながらにして止めずにいた彼女。真の救済の意味、理由、すべてを知っていながら尚、待ち続けた彼女。
 ルクワートに対して、アベルに対して、彼らは何を思うだろう。何を問うだろう。

 からからと廻る歯車に人差し指を立てた。
 白磁の指が喰い込んだ歯車は今、時を止めて動かない。
 まるで貴いものを慈しむように優しく、けれど玩具を扱うように残酷に、指は歯車を弄ぶ。

 時を止められた歯車は――今日も救済を求める迷い子の声を捜して、強い切望のまま往く。

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リプレイ本文

●手折る指と絡む糸
 指定された空き地に撃退士らが訪れると、そこにはルクワート(jz0277)がひとりぽつねんと佇んでいた。彼女は八人の姿に気付くと顔を上げ、ぱっと表情に花を咲かせる。それと同時に、スカートの裾が乱れるのも構わず駆け込んで来た。
「アリーチェちゃーんっ!」
「っとと、久しぶり〜★ 元気してたー? 会いたかったー!」
 数人が気付かれない程度に身構えるのも無理はない。無理はないが、飛び込んで来たルクワートは脇目も振らずにアリーチェ・ハーグリーヴス(jb3240)に抱き着き、頬を赤らめていた。まるで数年ぶりに旧友に逢う少女のよう。
「あのねあのね、逢えるの楽しみにしてたの! お友達との約束、嬉しくって――……じつは、朝から待ってたんだよっ」
 ルクワートはテンションも高く、はしゃぎながら言う。
 朝から。今日は天気が良かった、晴天。未だ暑さの拭えぬ季節に、この黒尽くめのドレス姿で朝から昼過ぎまで。聞いただけで眩暈がしそうな状況だ。
「初めまして、時入雪人です」
 アリーチェとルクワートがわいわいと騒ぐ後ろからスマートに顔を覘かせたのは、時入 雪人(jb5998)。口達者ではないと自覚しているけれど、挨拶くらいは済ませて置かねばなるまい。――悪魔は、彼女はこの茶会の主催であるのだから。
「雪人ちゃん? くん? ……初めましてっ! わたしはルクワートだよ、今日はお茶会に来てくれてありがとう。楽しんで行ってくれると嬉しいな!」
 女性と間違われるのも何のその。確りと訂正は入れつつ、更にはしゃぐルクワートとアリーチェに手を引かれながらやれやれと空き地の中まで移動する雪人。その後ろをついて歩くのは、「特殊なお茶会ですね」と曖昧な笑みを浮かべる安瀬地 治翠(jb5992)。
「不思議な子じゃ」
 その一行の様子を眺めながら、鍔崎 美薙(ja0028)はルクワートの楽しげな表情を眼で追い呟く。
「遊びにお茶会のお誘いとだけ聞けば平和ですが……いえ、あちら本人は至って本気なのでしょう」
 傍らで視線を走らせる久遠 冴弥(jb0754)は、どこか落ち着いていた。元々報告書等から伝え聴いていた点も多い。どういった意思をルクワートが抱いていようと、冴弥が取る行動は変わらない。誠実に、迷わず進むのみ。
「遊ぶ……か、以前会うた時も交流に随分と嬉しそうじゃったしの」
「俺らを友達、って言ったりな。ルクワート嬢ちゃんは随分寂しがり屋らしい」
 取り出した紙切れの中身を確認し、改めて懐に仕舞うグィド・ラーメ(jb8434)は肩を竦める。
 悪魔だ。それも本来であれば敵対する存在。それがこうして、友好関係を結ぼうと前のめりになっている。
 ”さみしい。”
 そう全身で訴えかけるような、彼女の態度。
 聴くまでも無く判る。そして、配下であるアベル(jz0254)との関係、執着を見れば尚のこと。ルクワートなり、アベルなりが、何らかの事情を抱えているということは明らかだった。
「――そういう境遇であったり、するのかのう」
 美薙の言葉は夏の終わりを匂わせる涼やかな風にあおられ、舞い上がって消えた。



「再度の御招きを有難う。その礼として、俺達にお前を楽しませて欲しい。――一度任せてみる気はねえか」
「任せる……?」
「友人同士だろ?」
 アラン・カートライト(ja8773)の申し出に対し不思議そうに首を傾げていたルクワートだったが、投げ掛けられた魔法の言葉には頬をぱっと綻ばせて満面の笑みを浮かべた。
「――うん!」
「どんな「遊び」をするかの詳細が無かったから、仲良く遊べる方法を考えたのじゃよ。勿論、いじわるはしあいっこ無しじゃ」
 後を継ぐように言う美薙に対し、ルクワートは幾度も頷いて返す。浮かべている表情は、期待そのもの。友達が何を提案してくれるのだろう、友達が何を用意しているのだろう。そんな沢山の希望に溢れた眼差しを笑って受け止めながら、美薙は続ける。
「まず、ルクワートがどの位動けるかを見せて貰えぬか。なるべくおぬしが力加減をせず、心置きなく楽しめるように力差を確認したいのじゃ」
「どの位……?」
「やはり、遊びはフェアが一番楽しいからの」
 フェア。そう告げられ暫くルクワートは目を丸くしていたが、不意にスカートを翻してずんずんと空き地の奥へと進む。
「ルクワート? どうしたのー?」
「あのねっ、みんなもう少し離れて欲しいな! ちょっとだけ危ないよ」
 心配するていで様子を窺うアリーチェに対し笑って言うと、ルクワートは十分に全員が距離を取った位置で両腕を頭上へ向かい広げる。
「――わたしの力は、これくらい」
 ささやきと共に浮かべられた甘い笑みと、瞬時に手中に浮いた光球の熱量はそぐわない。指輪を中心として収束する光は次第に目映さを増し臨界点を突破すると同時に視界を灼き遮る閃光、弾ける爆音。誰かが危ない、と叫ぶより先にその魔法は完成した。銀の光渦、耳を裂いた音が余韻を残して消えていく最中、煙が晴れるとその中心に、ルクワートは銀糸をなびかせ立っていた。周囲の空き地には広範囲のクレーター。ルクワートの手で放たれた魔法によるものだと、一目見て判る。
 突然何の躊躇いも無く見せ付けられた力に一瞬黙り込む一同だったが、アリーチェが両手をぱんと合わせて歓声を上げた。
「すっごいじゃん♪ ルクワートって、魔法攻撃とかが得意なのかな?」
「ルクワート嬢ちゃんやるな。こりゃ派手な遊びになりそうだ」
 それに追従するようにグィドも頷き、服についた土埃を払って豪快に笑う。
「ふふ、ちょっと出来るだけだよ。それに、魔法は幻覚のほうが得意なんだ」
「幻覚ー? 凄いじゃん、それってアベルの見せる幻覚と一緒だったりするのかな?」
「……あ!」
 探るような問い掛けに対しするりと出た答え。失言。そう気付くと即座に我に返り、口許に手を当てるルクワート。けれどもう遅い。てへへ、と恥じるように頬を掻いた後、その人差し指を口許に宛てて「内緒ね」と笑う。見込み通り、ルクワート単体時に情報を得るのは容易か。
「そう言えば、ルクワートさん。行動不能系の攻撃は、いじわるの範囲に入るんでしょうか?」
「うん? どうして?」
 戦闘前に、と問う治翠に対して不思議そうな眼差しを向けるルクワートに、彼はあくまで下手に出ながら提案を持ち出す。
「私の戦術にありまして……許して頂ければ有り難いのですが」
「OKなら、嬉しい?」
 きょとんとした顔で尋ねるルクワートに、治翠は一瞬の間こそあれど素直に頷いた。
「嬉しいですね」
「じゃ、勿論OKだよっ! わたしたち、友達だもん!」
 はにかみながら快諾するルクワートを眺めながら、雪人は一人思案する。友達だもん、友達だよね、友達だから。そう言いながら悪魔は様々な申し出や願いを受け入れ、喜び、自身が不利になり兼ねない情報をも明かしていく。彼女にとって、友達とは何なのか? ――実際には何を感じ、何を見ているのか。その真相は、この表層を撫でる段階では未だ判らない。判らないからこそ、若干の不安が在った。

 撃退士側からルクワートに対して提示された『遊び』とは、こうだ。

・ルクワートは髪にリボン、両腕に腕章を付ける。リボンを解かれるか、腕章に”傷”が付いた場合はルクワートの負け。
※また、可能であればルクワートには極限まで攻撃力を落として貰う。
・撃退士は被弾箇所に得点を指定し、個人のHPを5として所持。得点は部位によって異なり、HPは減算式で、0になった場合ルクワートの戦力となる。但し撃退士がその状態の撃退士の背中に触れた場合リセットされる。撃退士側戦力0の時点でルクワートの勝ち。

 その『遊び』の説明を最後まで聞き入れたルクワートは暫し首を傾げうんうん唸っていたが、アランの「要は撃退士側を友達に引き込んでいくゲーム。リボンと腕章を護り抜けば勝ち」との短い説明で何やら納得したのか、すごい! と声を上げて目を輝かせ始めた。
「やるやるやる、やるよっ! よく判んないけど、やってみたい!」
「それじゃ、今回も宜しくな。――ゲームで困ったら、これを開け」
 ゲームルールを理解しているのか大層不安が残る発言だったが、それを見越してか、グィドは懐から畳んだ紙を取り出すと、その手に握らせ耳打ちした。
 不思議そうに、けれど何の疑いも無くその紙を受け取ったルクワートは、にこにこと笑みを浮かべたまま頷く。
 それぞれが散開し位置に付き、ルクワートはリボンと腕章を身に付け、ゲームスタートまで、秒読み。
「それじゃっ、今日はみんなで、いーっぱい遊ぼうね!」
「えぇ、一緒に「遊び」ましょう? ルクワート。貴女が勝てば、私が直々に紅茶を淹れて、甘くて美味しいお菓子を提供するわ」
「ほんとう!?」
 矢野 胡桃(ja2617)の言葉に跳ね上がる程喜ぶルクワート。勝ちを疑っていないのか、それとも安直に言葉だけを鵜呑みにしたのか。
 けれどそれに対し気を悪くした様子も見せずに胡桃はにっこり笑って肯き、それから人差し指を真っ直ぐ立ててみせる。
「そのかわり。――私達が貴女を満足させられたなら……教えてくれる? いくつかの、質問への答えを」
「もちろん!」
 嬉しそうに笑って返すルクワートの手に、ふわりと半透明なハートが浮かぶ。それが魔法で作られたものだということは明らか。宙に浮かんだハートが大きく膨らみ、そして渇いた音を起てて弾けた。ぱしゅん。
 それがスタート。――撃退士対悪魔の増え鬼、勝負の開幕となった。



 勝負開始と同時、各自臨戦態勢を取る撃退士と反して、ルクワートは穏やかな動作で数歩と下がり、きらきらとした表情で彼らを見た。――それはただ、期待している目。何を仕掛けて来るのか、何で楽しませてくれるのか、そういった目。
「躍ろうぜ、お姫様。前々回は眺めるだけだっただろ?」
 前々回。いつかの廃ビルでの饗宴を指して言うアランは、その眸を誘うように真っ向から見詰めかえす。
「パーティは始まったばかりだ」
 闘気を纏いながら距離を詰めるアランに対し、ルクワートはくすくすと笑う。
「こうしてみんなと遊ぶの――夢だったの。わたしもいつか遊んで貰えるかなって、アベルに聴いたこともあったっけ」
 少女が夢を語るように甘く、それでいて穏やかに言うルクワート。
 その口振りを耳にしたアリーチェが、不思議そうに問い掛ける。
「ルクワートにとって、遊ぶって、どういうことなのかなー?」
 どういう? 鸚鵡返しにルクワートが返した言葉は、場を裂く音に一瞬遮られる。冴弥が召喚したストレイシオン――天叢雲が鳴き声を上げたのだ。
「わあ、かっこいい! いいなあ!」
 天叢雲の姿を見るなり目を輝かせて素直に羨むルクワートに、冴弥は僅か目許を綻ばせる。
「天叢雲と言います」
「お名前までかっこいい! すごいすごい!」
 どうやら初手での召喚獣の召喚の、つかみは成功。
 意識を逸らすまではいかなくとも、十分興味がそそられたらしい。ならば今回練って来た策は良案か。
 冴弥は天叢雲の鱗を撫でながら、防御効果を使用し場に馴染ませる。
 ルクワートが視線を目前へと戻すと、アリーチェがいつの間にか真正面に立っていた。あくまで攻撃は受けないだろう位置から、不思議そうに小首を傾げた彼女は問う。
「どういうことってー、この前ルクワートは言ってたじゃない? 『アベルにずうっとわたしだけのものになって、遊んで貰うこと』ってさ。でも、今回は遊ぶ=戦闘でしょ? じゃあ、『わたしのもの』っていうのは殺すこと?」
「まさか!」
「それじゃあ相手に傷を刻むことで所有するってこと?」
「そんなわけないない!」
 否定は半ば悲鳴のようだった。とんでもない! と全力で返される否定に、思わず攻撃の手は止まっている。不意を打つのはフェアじゃあない。そう誰もが考えたからだろう。
「じゃあ、どういうこと?」
「……あのね、遊ぶのは、判んない。わたし、あっちで見た遣り方しか知らなくて。だからね、人間界でいう『遊び』を知らないの。いじわるしたり、殺したりするなんて絶対にやだよ」
 あっちとは、言われなくても判る。ルクワートが育った環境だろう。
 成る程、とアリーチェは内心納得した。前回はバカを装っている女だと思い探った。そして、結果的にどこか、根本的な箇所がずれている彼女にアリーチェは気付いた。だからこそ、世間一般の敵意・好意、遊ぶという用語の意味――それらが彼女の中では全く異なっているかもしれない、と考えていた為だ。
「わたしのものに、っていうのは…………ただ、それだけ、そのままのこと」
 言葉を濁し、寂しげにルクワートは笑った。
「アベルに何か言われでもしたんですか?」
 その様子を見た治翠は遠慮がちに問うが、ルクワートは答えなかった。
 そして、黙したまま魔力球を掌に練り上げる。
 ルクワートが腕を前に突き出すと同時、拡散された幾つもの魔力弾が雨霰となって撃退士の元へと向かい来る。避け切れる量ではない。そう判断した範囲内の前衛は、ポイントの低い腕などでの防御を狙う。痛みは、然程無い。どうやら先に頼んだ『威力を抑えてくれ』との意見は採用されているらしい。
 先を読んでのことか、二連攻撃を仕掛けようともう片手にも魔力を貯めているルクワート。それに気付いた美薙は、魔具でその攻撃を弾きながらアウルを手に灯す。
「戦となれば全力を尽くすのが礼儀で流儀じゃ」
 その手から放たれるヴァルキリーナイフはサイドステップで躱されたものの、退避動作と共に魔力球は掻き消え、追撃は来ない。
「意地悪はしないけれど。作戦上狙うのはありかしら? ルクワート」
「うん? 何でもありありだよ!」
 胡桃の問い掛けに返る答えは実にあっけらかんとしている。
 ――何でもありあり。
 その答えに従い、底上げした命中力を生かし、胡桃はルクワートの脚を狙って狙撃する。
「わっ?」
 一瞬慌てた様子を見せた悪魔だったが、「危なかったあ」などと朗らかに笑いながら、小さな魔力障壁を張ってアウルの銃弾を防御していた。
 咄嗟の判断能力が高めであるのか、若しくは元来の戦闘センスによるものか。その判断は未だつかないが、彼女が一筋縄でいく相手ではないということは、その場にいる全員が今理解していた。――が。
「……うーっ、こんがらがってきちゃったよー! どこを狙えばいいの? 誰を狙えばいいの?」
 おつむのほうは圧倒的に足りていないのか、細かなルールに早々に根を上げてしまったルクワート。涙目になりつつ、グィドから先程受け取った紙を取り出す。そして開くと中には――
『ルールが複雑だしな、おっさんをまず狙え。俺が教えながらフォローするから、一緒にゲーム楽しもうぜ』
 との文章。ぱっと顔を上げ表情を明るくさせたルクワートの目の前に、その時を待っていたかのように躍り出るグィド。
「えっと、えーっと、えーっと!」
 対面したグィドに迷いに迷って遠慮がちにルクワートが放ったのは、威力どころかダメージが有るのかも判らない、ほんの小さなハートの魔力球。のろのろとした動きのそれは風に吹かれつつもグィドの腹部にぺちりと当たり、消失する。むしろグィドの方から攻撃に当たりに行ったのは傍からも良く見えた。
「あぁー、胴体で2点やられたー」
「二点!」
 大袈裟に口に出して叫ぶグィドと、喜ぶルクワート。繰り広げられるのは茶番も茶番だが、あくまでルクワートを満足させる、といった目的がある以上誰も口には出さない。
 ぺちんぺちんとぶつかるハートを受け止めたグィドはあっという間に五点失点。
「こうやって5点とっていけば、仲間が増える。一緒に戦うって楽しみ方もあるだろ?」
「うんうん!」
 仲間、の言葉に嬉しげに表情を弛めっ放しのルクワートは、やる気気合共に十分。
「ルクワート嬢ちゃんはリボンと腕章に注意しな。それをやられると負けちまうからな。それから俺は背中をタッチされたら向こうの陣営に戻らなきゃいけねぇ。――ルクワート嬢ちゃんに、俺の背中を預けてもいいか?」
 彼女が付けるリボンと腕章を指差し確認しながら、グィドは悪戯っぽく笑う。
 見る間にルクワートの表情は感極まってゆき、二つの眸は潤んですらいた。この状況を最高に楽しんでいるのは間違い無いだろう。
「……うん! まかせて!」
 かくて、早々にタッグ結成。その御蔭か、ルクワートの士気は上がる一方だ。グィドの背中を何が有っても護る――そんな気概が彼女からは見て取れた。
「人が変わったみたいに強そうだ。俺たちも負けてられないね」
「ふふん! わたしたち、負けないよ!」
 雪人の控えめなあおりに堂々と乗るルクワートはまるで子どものようで、警戒するのが馬鹿らしく思える程。
 その間を縫って疾駆するアランがルクワートに向かって戦斧を振り抜くと、彼女は背後に向かって地を蹴りドレスをなびかせる。次いで響く羽音。――ルクワートは翼を広げ、宙空へと舞っていた。その翼は白、真白。色ひとつ落ちない純白。
「真白の翼なんて、まるで天使みたいだな」
 茶化すでもなく、素直な感想といったていで言ったアランに対しはにかみながら、翼を仕舞い着地したルクワート。その姿勢が整うより先に、治翠が盾を構えながら前に出た。
「そう言えば、アベルはどうしました? お目付け役がいないとは珍しい……寂しいでしょうね」
 たじろぐルクワートだったが、「アベル」の名で目が揺らぐ。寂しい。アベルが? 否、自分が。
 一瞬だが、揺れた。その心の隙を突くかのように治翠のアイビーウィップがルクワートの元に伸びる。――だが、その鞭は命中するより先に前に割り入ったグィドが自身に張った障壁によって遮られてしまう。
「おっと」
「俺の仲間を傷付けさせるわけにはいかねえな」
 にやりと笑うグィドと、苦笑いを浮かべる治翠。
 仲間。その言葉に頬を再度赤らめたルクワートだったが、二人の脇を滑り自身の元へと向かうヴァルキリーナイフに気付くと慌てて避けつつ、美薙に笑顔を向ける。
「美薙ちゃんもこっちへおいでよ! 女の子同士仲間になろう? ねっ」
「えらい誘いじゃのう……まあ待て、未だあたしは4点も残っておるぞ」
 熱心な勧誘に思わず吹き出す美薙だが、ルクワートの眼差しは本気。脚部狙撃を再度狙う胡桃へもその目は向けられており、召喚獣を従える冴弥は勿論、アリーチェも立ち位置さえ近ければそのターゲットに入ったやも知れなかった。
「私はゲームに従うわ。勿論逃げたりしない」
 正々堂々。はっきりと告げられた胡桃の宣言に嬉々として意識を向けた悪魔は、両手を真っ直ぐ前へと――胡桃へと伸ばす。勿論その間彼女に隙はあるが、護りに徹するグィドがあっては攻撃を通すことが出来ない。
 予備動作に警戒する胡桃を尻目に、ルクワートは笑みを浮かべたまま。
「――”つかまえた”」
「?」
 言葉と現象は、ほぼ同時に起こった。
 真白の四角い何かが、突然宙に浮かんだ。それが人を丸ごと呑み込むことの出来るサイズだと、胡桃の姿が消えていると、気付いたのは後になってから。
「何――」
 四角い何かの中で、胡桃は辺りを見回した。けれど白、白、白、白、白、何にも見えない。銃器は確かに手にしている。隔離されてしまった、という錯覚。否、事実だ。突然空間から切り離され囲われてしまった――その現実。
「”BANG!”」
「……っ!」
 ばしゅばしゅばしゅばしゅばしゅばしゅばしゅばしゅばしゅばしゅ。
 ダメージは、ほぼ無い。幾本もの針が肌を、全身を貫いていく。けれど痛みは無い。そこで直ぐにルクワートの魔法であるということに気付くが、それと同時にぞっとする。
 今でこそダメージがほぼ無い、痛みの無い仕様になっているものの、彼女の本当の力――真の実力で放たれていたら、どうなるのか?
 それは、外にいた撃退士らもひしひしと感じていたことだ。
「背中、足、腕、おなか、全部で何点になるのかな?」
「良いわ、捕まったのは確実だもの。私も、ルクワートの仲間よ」
 ルクワートの軽い口調と共に解き放たれた真白の箱から出て来た胡桃は、平静を保ったまま言うとルクワートの肩にそっと触れる。やわらかい。人と変わらない。それでも――能力差が肌で判る。依頼で様々な出逢いを重ねて来たからこそ、判る。強い、と。
 これで悪魔側は三人、撃退士側は六人。
 メンバーが増えてはしゃぐルクワートの隙を縫い、布都御魂――スレイプニルを召喚した冴弥は攪乱を狙い宙から敵陣へと急降下させる。
「次は布都御魂、です」
 冴弥の的確な判断で降り立ったスレイプニルの姿にルクワートは驚き、数歩と下がって目を瞬かせる。
 白磁の悪魔が戸惑っている姿を目に留めると、治翠はアウルを集約し、冷気を帯びる氷結晶を生成する。そして、何の前触れもなく、ルクワートへ向かってそれを投げ渡す。
「ルクワートさん、どうぞ」
「えっ? ふわ! 冷たっ……!?」
 呼び掛けられ漸くと飛来する氷塊に気付いたルクワートは両の眸を瞬かせながらそれを掌で捕まえ、冷たさには目を白黒させる。
 その反応から見て取るに、彼女が戦闘に慣れていない可能性が窺えた。――勿論、素直に額面通り受け取るわけにはいかないが。
「広範囲を一度に攻撃出来る力とか、あれば素敵なのだけど……ルクワートは持っている?」
 撃退士側の攻撃を銃弾で軽くいなした胡桃の探るような問い掛けに、悪魔は笑って大きく頷いた。
「あるよお! でもでもっ、手加減の仕方が判らないの!」
 先に見せられた広範囲の光弾の雨。あれ以外にもどうやら手段は在るらしい。
 注意力散漫。無邪気な表情で言うルクワートの背後から、青い金属糸を構えたアランが薙ぎ払いを仕掛ける。風圧に舞い上がる埃、広がる長い銀髪、払いがぶち当たる寸前――見えない障壁が生み出され、アランの攻撃を弾いた。
「こりゃ手厳しいな。ダンスの誘いも断られちまった」
 アランの攻撃に対抗するかのように生まれた障壁は、ほろほろと宙に融け消えていく。肩越しにアランを見遣ったルクワートは、悪戯っぽい笑みで笑う。
 攻撃と攻撃の間に、隙を与えない。アランの攻撃からは敢えてワンテンポずらしたタイミングで、雪人は側面からリボンを狙って太刀『雪麗』を構え斬撃を奔らせる。
 だが――その目にも止まらぬ一撃も、長い銀糸を幾許か散らせるのみ。
 隙だらけなのに、隙が無い。
 冴弥に召喚されたニニギがリボンを奪おうと宙を舞うも、その行動にさえ目を輝かせルクワートは追い掛けっこを楽しんだ。
 悪魔側は決定的な攻撃を仕掛けては来ず、撃退士側の攻撃は中々当たらない。
 ゲームの勝敗が決するのは難航する――かと思いきや。甘えるように懐っこいニニギの性質に心奪われたルクワートが、自らリボンを解いてそのヒリュウの首許に結わえたことで、簡単に決着が付いた。
「えへへ、取られちゃった」
 ヒリュウを抱きながら満面の笑顔で言い切ったルクワートは、負けたというのに非常に満足そうだった。

●白知のお茶会
 言っちゃだめって言われたの。
 でも、見せちゃだめなんて、言われてないよね?

 ――うん、そうだ、きっとそう。

 ゲームが終わった後、お礼をしたいと彼女は言った。用意された茶菓子を手に、そう告げた白の悪魔は朗らかに笑って言い、撃退士を集めたレジャーシートの上、仰々しく礼をすると両腕を広げて何かの魔法を編み上げた。
 そこに広がるのは、幻覚。
 撃退士らの視界を、思考を走馬灯のように浚っていくのは、幻覚の中で――ひとびとの命が喪われていく姿。ある者は自ら死を求め、ある者はアベルに死を希い、またある者は何らかの切欠で亡くなっていった。
 幻覚は短くないものだったが、それを見終えた美薙は直ぐに思った。これはアベルが口止めしていた内容、そのものであるということ。彼が見せたくないものを勝手に見た、そんな不義。
 眉を寄せ思案する美薙は、言葉を選びルクワートに言う。
「あたし達が知った所為で、おぬしが辛い思いをせねば良いが。……己の事は己で語るのが一番じゃ」
 悪魔はその言葉の意味を理解していないようだった。目を丸くし、きょとんとした表情で美薙を見詰める。
 黙したままのアランは胸中で今見た幻覚を呑み込み、そして僅かに笑う。
(そうだろうと思ってたさ。前回隠す理由に足り得る。――彼奴は、可哀想な奴だな)
 それは皮肉。アベルの動向や言動、腑に落ちない被害者とその周りの人間、それから察するに難くない内容だと考えていた為だ。
「理由や、結末は判りました。何を思いこの幻覚を見せてくださったんでしょう? それと――ルクワートさんは、それでも彼等は死ななければならなかった、と思いますか?」
 治翠は、あくまで丁寧に問い掛ける。
 それに伴い、雪人も頷くとルクワートをじっと見詰めて言った。
「俺は君が何を見て、何を感じているのかは分からない。だから、君の声で聞いてみたい」
 暫し救済のヴァニタスの主たる悪魔はきょとんとした顔で治翠と雪人を見詰めていたが、数秒の間を置いてから、手にしていたお茶菓子を膝の上に置いた。
「前に誰かがアベルに聴こうとしてたでしょ? だから、お礼になるかと思って。それから、死んじゃったこたちについては――」
 胡桃から受け取った紅茶のカップを手に、ルクワートは小首を傾げる。
「どうしてそれをわたしが考えるの? 考えて、なすべきだって思ったのはアベルだもん。アベルがそう思ったから、そうなんだよ」
「そう、ですか」
 あっけらかんと言い退ける彼女に、悪意は見えなかった。ただ、それが当然といった様子で言い切る。純粋な、真っ白な妄信。
「嬢ちゃん。見せてくれて……ありがとな。だが、坊主のいないところで勝手に秘密をバラしたら多分……少し怒ると思う、な」
 見せられた幻覚。それが事実であろうということは、理解していた。だからこそ、グィドは飄々とした態度を改め、まるで娘を見守るような穏やかな表情で言った。
「困ったら、相談に乗るからな」
 懐っこい表情で幾度目か、首を傾げるルクワート。
「アベルの事はこちらも知らない事ばかりですね。……うちの兄はあんな不器用ですが、アベルのお兄さんはどんな方だったので?」
 幻覚から、過去に関わった事件を思い出しながら、冴弥はぽつりと尋ねた。
「そう、ね。ルクワートなら知っているかしら? アベルの兄は、人間として、生きている?」
 胡桃も合わせて尋ねると、ルクワートはひとつ頷いて、人差し指を立てた。
「生きてるのか、とか……今どこにいるのかはやっぱり知らないや。でもね、わたしは少ししか見てないけど、我儘なひとだったよ。お兄ちゃんなのに、アベルのものばっかり欲しがるの!」
「アベルは自分の兄をどう思ってるんだろうな? まさか反抗期の弟は無いだろ」
「嫌いなんじゃないかなあ? お兄ちゃんの話、嫌だったみたいだから」
 アランの問い掛けにも、ルクワートは思案しながら躊躇うことなく返す。
 興が乗っているらしい、手にしたカップの中身はあっという間に空になった。
 繋げて、アランはルクワートに問いを投げた。
「なあ、彼奴が物語に執着する理由を知ってるか。大切で、己の根本だと断言する程の話だ、お前が知らない筈がねえ。――それに関してお前自身はどう思ってる?」
「前も話したかなあ。ヴァニタスってね、生前の欲望に従って動くんだよ。あの子のねっこは、ずうっと変わらない。救いたいって気持ちが誰よりも強くって、でも救えないっていうジレンマをいつだって抱えてる。物語に執着する理由もそう、あの子がアベルになるより前、”生きていた”ときに、大切だったこと。それを大事にし続けてるあの子は真っ直ぐで――だからわたしはあの子が好き。えへへ、アベルって名前もね、わたしが付けてあげたんだよ」
 アベルについて語るルクワートは饒舌で、そしてひどく楽しげだった。お気に入りの所有物について語る声音。
 彼女の隣に座したアリーチェは、お菓子を摘まみながらぴったりくっつき尋ねる。
「あ、そう言えばさー。真の救済って何? 真の救済だと絵本に良い影響が有るの?」
「良く判らないけど、アベルにとってはその子が救われたってことみたい。だから冒涜しちゃいけない、とか……なんだか難しいこと言ってたなあ」
「じゃあじゃあ、絵本が埋まったら何が起こるの?」
 矢次にぶつけられる質問。それに気を悪くした様子を見せないルクワートは、頬を赤く染めた。
「……アベルが、わたしのものになるの。アベルの物語はおしまい、もう怖がることも、哀しむことも、何にもなくなる。すてきなことだよ」
 ぞっとするような甘さを秘めた言葉に誰かが何事かを言うより先に、ルクワートは「このお菓子美味しいね!」と舌鼓を打った。

 次々と投げられる質問に返る言葉はどこか曖昧で、輪郭がぼやけていた。
 だが、悪意を以て濁されているという感覚はない。ただ、ルクワートの感覚がどこかずれていて、底が見えないだけ。
「今度はおぬし自身の話を聴かせて欲しいぞ」
 アベルの隠したがることではなく、彼女自身の意思を。――そういった意味で美薙から掛けられた台詞にも、ルクワートは不思議そうに笑っていた。
 


 他愛無い雑談でお茶会を終え、本当に楽しかった、と言って別れを告げたルクワート。
 彼女の情報や言動がファイリングされる度、開く謎も有れば、深まる謎も有る。特にキョウコは――今回のお茶会で得た情報や、見せられた幻覚について、ひどく戸惑っていたようだった。

 ――また招待状を。

 そう告げたルクワートの言葉を信じるのであれば、きっとそう遠くない先に三度邂逅する機会を得られるだろう。
 撃退士たちは、それぞれの思惑を胸に、悪魔らの動きを待つこととなった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 豪快系ガキメン:79点・グィド・ラーメ(jb8434)
重体: −
面白かった!:5人

命掬びし巫女・
鍔崎 美薙(ja0028)

大学部4年7組 女 アストラルヴァンガード
ヴェズルフェルニルの姫君・
矢野 胡桃(ja2617)

卒業 女 ダアト
微笑むジョーカー・
アラン・カートライト(ja8773)

卒業 男 阿修羅
凍魔竜公の寵を受けし者・
久遠 冴弥(jb0754)

大学部3年15組 女 バハムートテイマー
華悦主義・
アリーチェ・ハーグリーヴス(jb3240)

大学部1年5組 女 ダアト
花咲ませし翠・
安瀬地 治翠(jb5992)

大学部7年183組 男 アカシックレコーダー:タイプA
撃退士・
時入 雪人(jb5998)

大学部4年50組 男 アカシックレコーダー:タイプB
豪快系ガキメン:79点・
グィド・ラーメ(jb8434)

大学部5年134組 男 ダアト