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 砂浜を清掃し、有志による設営作業が進められていた。
 マリカせんせー(jz0034)の指示で、コンテストの舞台と審査席兼BBQ会場、救急用テントが設置されていく。

「日本三大砂丘と聞きましたのに、これじゃただの砂浜なのですー」
「だが、ウミガメの産卵地は、あっちのほうに残っているらしい」

 ミハイル・エッカート(jb0544)が事前に仕入れた情報メモを見る。せんせーは、ミハイルの示した方向を見つめた。
「そーなんですねー。ウミガメさん、こんな荒れた砂浜にも、まだ来てくれるのでしょうかー?」

 BBQ用の燃料を運びながら、早乙女征嗣(jz0033)は、無言で海を見つめた。


 その頃、早速、浪風 悠人(ja3452)と浪風 威鈴(ja8371)夫妻が、ゴーグル&シュノーケルを借りて、泳ぎの練習をしていた。
 少しずつ奥さんを水に慣れさせながら、手を引いて泳ぎを教える悠人。
 立ち泳ぎをしながら徐々に離れ、しかし威鈴が溺れないように十分配慮しつつ、バタ足を教えていく。
 慣れてきたところで、片手を繋いだまま、潜り始める。

 どどーん、どどーん。
 サーフィンの名所らしく、高い波が音を立てて押し寄せてくる。

「わーっ、い、威鈴っ! シュノーケル全部沈めちゃダメ、吸い込んだら余計ダメだって!!」
「ぶくぶく、ごほっごほっ!」

 早速、救急テントが使用された。海水をたっぷり飲んでしまった威鈴を、悠人が介抱する。 
 威鈴が無事に回復するまでは、2人の宝探しはお預けとなった。





「みなさーん、お昼から水着コンテストをするのです〜♪ ろーにゃくなんにょ問わないのです〜♪」
 拡声器から、マリカせんせーの声が聞こえてくる。

(あれ? 本来の目的は、宝探しじゃなかったかなぁ?)
 疑問符を頭に浮かべながら、龍崎海(ja0565)も、拡声器を片手に、コンテストの宣伝をして回る。
 ついでに、月摘 紫蝶先生(jz0043)の目撃情報について、写真を片手に、聞き込み開始。
(宝探しの始まったタイミングで、このあたりにも来ていそうなんだけど‥‥)

 海は、サーファーらしき人を見つけては声をかけたものの、皆、県外から来た人たちのようで、紫蝶先生の手がかりは全く掴めなかった。
「うーん、ここまできて、宝が見つからなかったとか嫌だし。頑張って泳いで探そう。折角だから自分の手で宝を見つけたいなぁ」
 きっちり準備体操をして、海は浜へ向かった。


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 看板をよく見つめ、ウェットスーツを着用したヴェス・ペーラ(jb2743)が、ゴーグルをかけ直した。
 背負った酸素ボンベがずっしりと重い。

「あら、ヴェス様も、ダイビングでお宝を探されますの? 奇遇ですわね、ご一緒にまいりませんこと?」
 長谷川アレクサンドラみずほ(jb4139)が、同様に借り出した酸素ボンベを背負い、2人は揃ってボートに乗り込んだ。

「これって手漕ぎでしょうか‥‥?」
「お任せ下さいませ! 肘を脇から離さない心構えでやや内側を狙い、えぐり込むようにして、漕ぐべし! 漕ぐべし! 漕ぐべしですの!」

 流石に、普段から鍛えているみずほは違う。2人の乗った手漕ぎボートは、凄い勢いで沖に向かって滑り出した。





 一方、こちらはモーターボート。


「流石に、地形探査システムつきの漁船は借りられなかったか‥‥」
 残念そうに水面を見つめるミハイル。

 そのすぐ横では、恋人同士のぴんくのお〜らが漂い始めている。
 袋井 雅人(jb1469)が、月乃宮 恋音(jb1221)に、釣り道具の扱い方をやさしく教え始めていた。
 今回の餌は、イカである。

「恋音は、釣りは初めてですか? 懇切丁寧に教えますからね、な〜んでも聞いてくださいよ」
「は、はい、えぇと、あのぅ‥‥うぅん‥‥」
 桜色のビキニのでんじゃらすな胸もとを白いカーディガンで押さえ、釣りの基本は知っていると言えずに、もじもじする恋音。

「ああ、そうでした!」
 太陽のように輝く笑顔をミハイルに向ける雅人。
「ミハイルさんもご一緒に、磯釣り、どうですか? BBQの食材が釣れちゃうかもしれませんよー?」


 皆で太い釣り糸を垂らして待っていると、ヴェスとみずほの漕ぐボートが、あり得ない速さで迫ってきていた。

 
「ほほう、そっちはダイビングか。財宝を積んだ沈没船が見つかるかもな! 何でも、150年前に大量の銀を積んだ米国船が沈んだという話もあるみたいだぜ?」

 \ そ れ だ ! /

 ヴェスとみずほは、ミハイルの言葉を信じ、喜々としてボートから水面にダイブする。
 現在地の水深は、およそ100mというところか。
 ヴェスは水中で<闇の翼>を広げ、ペンギン泳法で『飛び』始めた。





(俺もダイビングに混ざるべきだったか‥‥カップルの邪魔をする趣味はないからな)
 ダイバーたちの気配が遠ざかるにつれて、ミハイルが悩み始める。

 その瞬間、強く竿がたわんだ。
 これは‥‥でかい!!

「オオイシナギか!?」

 餌のイカをうまいことしゃくって、泳がせ釣りをしていたミハイル。
 その手応えの重さに、思わず背が仰け反る。
 雅人と恋音も、ミハイルの竿にとりついた。慎重に慎重にリールを巻いていく。

 魚は暴れ、巣穴がある海底に向かって潜ろうとする。だが、2本の孫針とT字型親子サルカンが、がっちりと魚をとらえて放さない。
 暴れる、押さえる、暴れる。たっぷり15分は応戦しただろうか。

 3人がかりで漸くボートに獲物を引きずり上げる。
 まさにその魚は、イシナギであった。全長180cm、胴回り160cm、重さにして150kgはあるだろう。
 オオイシナギ、ゲットである。

「やったな!」
 ミハイルが2人とハイタッチ。すかさずパシャリと3人で記念撮影。

「あのぅ‥‥これだけ大きいお魚ですとぉ、我々では‥‥解体は難しいと思うのですぅ‥‥」
 恋音が、たった1枚で100円玉ほどもある、大きなウロコに触れた。ウロコも硬く、加工してアクセサリーでも作れそうだ。
「‥‥それでぇ‥‥ご相談なのですが、‥‥漁港に持ち込みましてぇ、解体してもらうのは、いかがでしょうかぁ‥‥?」

 天魔を捌ける俺たちに、魚が捌けないはずは無い!
 そう豪語していたミハイルだったが、実物を目の当たりにして、首を縦に振るしか無かった。





 海の中は気持ちがいい。ねっとりと絡みつく濃厚な空気の中を飛んでいるような感触が全身に伝わってくる。
 
(あら、あそこに煌く物体が!‥‥またゴミですのね‥‥)
 みずほは、気がつくと海底のゴミ拾いをしている気分になってきた。お宝を入れるために用意した袋に放り込み、きゅっと口を締める。

(どっちを向いてもゴミだらけ、どこまで行ってもゴミだらけ‥‥全く、人間のマナーは、なっておりませんね)
 ヴェスもみずほと同感である。

 時折ボートに戻り、場所を変えて探索を続ける。
 気づいたら、頭上に見えていた雅人たちの船影が、見えなくなっていた。

 それから暫く海底探索を続けた後。
 ざばあと水面から顔を出し、みずほは周囲を見回した。
(あら? ヴェス様は一体どちらに行かれたのでしょう?)


 ヴェスはというと、沖あいまで流されていた。 
 とは言え、海水を物質透過して『飛んで』ボートまで帰れるのだから、方向さえ見失わなければ問題ではない。
 ちゃんと、スナイパーライフルで、ボートを<マーキング>してある。

(そろそろ帰りませんと、効果が切れてしまいますね‥‥)

 ボートを見失っては大変だ。向きを変えたヴェスの目に、何か――箱めいた影が、海底に見えてきた。





 コンテスト会場近くの審査員席に、姫路 神楽(jb0862)がビデオカメラを設置する。
「始まったら、録画スイッチを入れて、この《録画中》の札を舞台から見えるようにひっくり返してくださいね」
「あ、はい、大丈夫です、やっておきますよ」
 スタッフとして準備を手伝っていた鈴代 征治(ja1305)が、神楽に請け負った。安心して神楽はカメラを託し、自身は男の娘用フィットネス水着で海へ向かっていった。

 恋音が用意し、アリス・シキ(jz0058)に預けていた、おにぎりと、焼きおにぎり。
 木嶋香里(jb7748)が、一晩タレに漬け込んで作った、短めのBBQ串。
 神楽が採ってきた貝類。
 カナリア=ココア(jb7592)の用意した、冷たい飲み物の数々。
 
 征嗣が着火剤に火をつける。
 肉や焼き野菜、焼きおにぎりの香ばしい匂いが周囲を満たし始めたところで、ミハイル&雅人&恋音が登場!

 \ばばーん!/

「!?」
 一瞬、誰もが提供された魚の大きさに、目を剥いた。
「水揚げしたてのオオイシナギだ、遠慮なく食ってくれ。豪快に輪切りにしたかったんだが、ノコギリでも難しくてな‥‥」

 尚、内臓は殆ど抜いてある。
 食品衛生法上、イシナギの肝臓は、ビタミンA中毒を引き起こすことから、除去されることになっているのだ。

「皮は‥‥ウロコを取るために、湯がいてありますがぁ‥‥、噛みちぎれない硬さだそうなのでぇ‥‥煮るのがいいと聞きましたぁ‥‥」
「子持ちイシナギだったようです。卵だけで15kgはありましたよ〜。粒が揃っていないので、成熟卵ではなさそうですねえ」

 恋音と雅人が、刺身と焼き物の準備を始めた。
 人の背骨ほどの太さの中骨の隙間、軟骨部分に、慎重に包丁を入れる。
 そこからとれた魚肉は10kgを超えた。脂がのっていて、スズキのお刺身のような味わいだ。
 魚卵は蛋白でクセがなく、いろいろな調理方法に合いそうだと、香里は思った。

「やっぱり、魚は塩で味をつけるのが一番うまいな」
 ミハイルは満足そうに、皿をマリカせんせーとアリスに差し出した。

「本当、美味しいのです〜。あっさりしていて淡白で、柔らかいとり肉みたいなのですー!」
 びっくりした顔でマリカせんせーが平らげる。
「塩麹のタレでも美味しくいただけそうですの〜、柑橘系も合いそうですわね。甘辛系のタレですと、身の味が負けてしまいそうですわ〜」
 アリスもこくりと頷いた。

 突き出された皿のイシナギを、征嗣も黙々と食べる。
「‥‥美味い‥‥」
「だろ?」
 満足げにそう言うと、ミハイルは豪快にかぶりついた。

「お野菜も食べてくださいね?」
 黒猫のもふもふ着ぐるみ(夏用)を着た、カーディス=キャットフィールド(ja7927)が、征嗣の皿を見てひょいひょいと焼き野菜を盛った。
 渋い顔をして、皿を睨みつける征嗣。箸がぷるぷる震えている。

「あれ、お野菜お嫌いなんですか? 何でも食べないと、元気になれませんよ〜」
「全くだ。何でも食べられないと、生き残れないぞ」
 ミハイルも応援する。

 だが、焼き野菜の中にピーマンを見つけた瞬間、ミハイルの態度が一変した。
「‥‥ピーマンは、だな、うむ、食べなくても生きていける。ムジュン? んー、俺、ガイジンだから難しい日本語分からん」





「では皆さ〜ん、水着コンテストを開始します〜!」
 マリカせんせーの声が高らかに響いた。征治が神楽のビデオのスイッチを入れ、録画を始める。

「ところでこれは、肉体美で判断するのか?」
 Unknown(jb7615)が問うと、マリカせんせーは首を振った。
「そこは皆さんのアピール力にお任せなのです〜」

 ユウ(jb5639)が、席に近づいて、せんせーに声をかけた。
「先生は、水着には着替えないんですか?」

「はいですー。焼けるの嫌なのです〜」
 せんせーは微笑んだ。
「ユウさんもどーですー? パラソルの陰は涼しいですよ〜?」





「では、歌音 テンペスト(jb5186)さん、どうぞ!」
 拡声器から征治の声が響いた。

『水着の完成形をお見せするぴょん‥‥シュコーシュコー』
 現れた歌音は、‥‥ごっつい潜水服だった。
『シュコーシュコー‥‥マリカせんせー、ちゃおちゃおなのん〜!』

 歌音は舞台によっこいせとあがり、皆に演説を始めた。

  水着の本懐は泳ぎの為にあり!
  なれば、潜水服はまさに水着の完成形!

  海よりも深く反省すべく、マリアナ海溝に潜る時にも使えるスグレモノ!
  暴走キャラには欠かせない一品なんだぴょん!!

 全身をクネらせ、セクシーウォークにセクシーポーズ、悩ましげな視線と投げキッスなどなど、もう、大盤振る舞いである。
(うふふ‥‥これで女の子達やマリカせんせーを魅了して、ハーレム状態間違いナシ、皆の注目を全身に浴び、心はスペシャルエモーショ〜ン!)

 傍目には、宇宙服めいたゴテゴテの物体が、ヨタヨタしているように見えます。
 でも大丈夫! 心優しい乙女たちはきっと何も言わないわ!

 ‥‥寧ろ、誰か、教えてあげてください。


 続いて舞台にあがったのは、ユウである。
 白いスポーツタイプの水着が、照りつく太陽光に眩しく輝く。

「皆さん、とっても綺麗ですね。コンテストの結果が楽しみです」
 悪魔らしくない表情でにっこり微笑むと、ユウはツッコミハリセンを取り出した。

「さて、海に潜ってみて感じたのですけれど、漂着ゴミが多かったように思います。海を汚すのはいけないことだと思います」
 この会場を設営する時に、お掃除をしましたよね、と、審査員たち(=参加者全員)の顔を見回す。
「人や海が嫌がることをするのは、良くないと教わりました。ウミガメさんも、近年はなかなか産卵に来ないですとか。ゴミを放置したり、人の嫌がることをする人には、お仕置きが必要ですよね? そういうわけで、練習してみました!」

 ブゥゥゥン!!
 ツッコミハリセンが、凶悪な音をたてて、空を裂いた。


 次は、香里の番である。
 手製のタレに漬け込んだ牛もも肉と半月切りの玉ねぎを、2:1の比率で串に刺して焼き上げた、美味しそうな串焼きが、いい匂いを立てている。

「まず、マリカせんせー、楽しそうなイベント企画、有難うございます♪」
 深々と礼をして、香里は、青系統のパレオを巻いた、翡翠色のビキニ姿で、審査員席にアツアツの焼き串を配って歩く。
 ほっそりとスレンダーながらもバランスのとれたスタイルが、水着姿に映えている。

 ――お客様のハートを射止めるなら、まず胃袋から!
 和風サロン「椿」の女将としても、この勝負には負けられない。

「あ、俺‥‥玉ねぎは‥‥ちょっと」
 野菜嫌いっ子、征嗣がぼそりと呟く。

 ぴくり、香里のこめかみが微かにひくついた。

「お残しは良くないです!」
 ばしーん! 場外乱入したユウが、征嗣をスパーンとハリセンではたいた。
「香里さんが一生懸命作ってくれた焼き串です、しっかり味わって食べてくださいね!」

 じわりと2人(香里と征嗣)の瞳が濡れた。
「ユウさん‥‥ありがとうございます!」
 香里はユウの手を取った。
「こんなことくらいしか応援できなくて、私こそすみません‥‥」

 女性同士の友情が育まれていく中、征嗣は心底、嫌そうに玉ねぎを睨みつけていた。





(彼女さんがあの水着を着たら‥‥うー、きっと可愛くなるだろうな〜)
 時折、力強く頷きながら、征治は舞台上の女性たちに釘づけになっていた。

「やっぱり女性の水着姿は華があるよね」
 (俺も鈴代さんも男だし、まったく興味がないわけじゃないし)
 お腹を空かせて捜索から戻っていた海が、征治に軽く声をかけた。

「あらあら〜、やっぱり鈴代さんも、男の子なのですね〜」
 マリカせんせーがその様子に気づき、にこにこ無邪気に微笑んだ。
 アリスはキョトンと征治を見、そして、彼の視線の先に気がついた。

「‥‥征治? アナウンスが途絶えてございますわよ?」
 刺を含んだアリスの震え声に、征治は慌てふためいた。
「い、いや違うんだよアリス、これはその、見とれていた訳ではなくて‥‥」
「言い訳は見苦しいですの。早くお仕事に取り掛かってくださいませ」

「あらあら〜、青春してますね〜♪」
「‥‥リア充も大変なんだなぁ」
 マリカせんせーと海の言葉が、ひときわ誤解を煽る。

 その後、会場の裏手でアリスに事情を話し、平謝りしている征治の姿があったとか、無かったとか。





 モデル体型に、ホルターネック+ハイレグ気味の白ビキニを着た藍 星露(ja5127)が舞台に上がる。
 中国拳法を嗜んでいる身として、所作も美しく、美貌もあって、サマになっている。
 アピールポイントとして、中国拳法を舞踊にアレンジした技を披露しようとして‥‥。

「ほーれキラキラー☆」
「きゃー!!」

 アンノウンが悪戯心で投げつけた水風船を、咄嗟にハイキックで割り落とす星露。
「な、何するのよ!?」
「我輩は、濡れてる方が夏っぽいし、キラキラして綺麗だと思うのだ」
 
 サイドに金のジッパーがある黒の競泳パンツ姿で、尊大にふんぞり返るアンノウン。
 いつもの褌姿からのイメチェン成功、と内心で親指を立てた時。

「あびゃっ!!」

 星露の踵が頭頂部を痛打し、キラキラと光る星、及び、鼻からの紅い軌跡がアンノウンの視界に散った。

「み‥‥みえ‥‥(がく」
「えっ!? い、いゃぁぁー!!」

 ばっちり食い込んでTバック状態のお尻。ホルターネックからはみ出しそうなバスト。
 星露は悲鳴をあげて体を庇うと、舞台から逃げ出した。

「シオヒガリしたいですせんせー‥‥」
 残されたアンノウンは、遺言のように呟いた。


 アンノウンの身を案じたのか、黒猫忍者着ぐるみ+猫模様のハーフパンツ水着姿のカーディスが、舞台にあがる。
 手当てをする――つもりだったが、《録画中》のビデオに目が留まる。
 もふもふで愛嬌たっぷりの外見を活かし、シッポをピンと立てて猫ウォーク。
 くるんと回って決めポーズ♪ 勿論、カメラ目線は忘れない!

「かわいい〜!!」
 女性陣の歓声が聞こえてきた。
 どやっとアンノウンを見下ろすカーディスに、お魚の焼けるいい匂いが迫ってくる。
 ぐーと彼のお腹が鳴る音で、アンノウンが意識を取り戻した。

「暑そうである! 下半身の毛皮をバリィしたいである!」
「ぎにゃー!? ダメ、ダメですよ!!」

 アンノウンに追われ、舞台からBBQ会場へと逃げていくカーディス。焼きイシナギを頬張りながら、2人の鬼ごっこは続いていた。





 ホルターネックビキニのカナリアと、お揃いで薄いピンクの水着の緋流 美咲(jb8394)が舞台にあがる。
「ふふ‥‥美咲さん、一緒に男性陣をのーさつしましょうね‥‥」
「は、恥ずかしいけど頑張りますぅ‥‥」
 お尻に食い込んだ水着を直す美咲。お互いに塗りあった日焼け止めオイルが、てらてらと2人の肌を光らせている。

「まずはこーんなポーズでどうでしょう?」
 カナリアが美咲を抱き寄せ、胸の谷間をくっつけるようにして、カメラ目線でポージング。
 真っ赤になった美咲の髪を撫で、緊張で動けなくなったところへ、次々と百合っちいポーズを決めていく。
「え、これ、神楽さんが撮影、しているんですかぁ?」
 ふしゅーと頭から湯気を出し、美咲は思わず顔を覆った。

「コンテスト終わったら、お魚食べさせてあげますね」
 神楽が舞台外から声援を送る。
「そうですよ〜‥‥冷たい飲み物もありますからね‥‥」
「は、はいぃ‥‥えっ‥‥」

 せくしー百合百合あぴーるたいむが、更にヒートアップするかと思った瞬間。

 手漕ぎボートから飛び降り、みずほが走り込んできた。





「はぁうぅ‥‥真の肉体美さん登場ですぅ‥‥」
 すっかり頬を上気させ、とろんと美咲がみずほを見る。

「え、何故わたくし達、舞台に連れて行かれているのですか? 出場者だと思ったって、そそ、そんなわけ無いでしょう! ひ、人の言うこと聞きなさい!」
 カナリアと神楽に引っ張り上げられ、みずほとヴェスは舞台の上に立つことに。
「わかりましたわ、美咲さんのようなお美しいかたの後でお目汚しですけれど、重大発表をさせていただこうと思いますの」

 みずほは、ヴェスの抱えているものを示した。

「ほら、お宝がございましたのよ!!」


 Σえっ!!!

 一同、驚きのあまり、静まり返った。
 神楽はビデオカメラを止め、「このビデオ、あとで一緒に見ましょうね」と美咲に囁く。
 恥ずかしすぎて、美咲のお腹が盛大にぐぅと鳴った。

「‥‥錆びた‥‥ジュラルミンケース?」
 ミハイルが顎をかく。
 ほぼ同時に、浜の方から悠人が「おーい」と手を振って走ってきた。威鈴も続く。

「威鈴が宝を見つけた、かもしれないんだ! ボトルメールが浮いていたんだよ!!」


 これは。
 両方、開けてみるしかない。

 ボトルメールは瓶を割り、錆びたジュラルミンケースは、蝶番を狙ってミハイルが撃ち抜くこととなった。

 そして、彼らが見たものは‥‥!!



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【海】九十九里浜  担当マスター:神子月弓MS








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