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フリー依頼『部室前案内役争奪戦!?』

(担当マスター:十三番)


 明日が今日と全て同じである保証など
 どこにもなく、誰にもできない。



●進級試験お疲れ様でした

 文化祭に沸く学園内を、その目標(ターゲット)はぶらぶらと歩いていた。足取りは一見軽やかそうでもあったが、立ち止まることを拒否しているようにも見て取れる。情報のとおりだ。小等部の男子生徒は襟を正して背筋を伸ばして密かに近づいた。

「元気ありませんね」

 周囲には人通りが多く、名前を添えなかったにも関わらず、目標は振り向いた。

「やあ、こんにちはっ。ここは――って、あはは、ごめん。昔のクセが抜けなくってっ」
「いえいえ、気になさらないでください」
「ありがとっ。キミは?」
「あなたにいい話を持ってきました。絶好の相手がいるんですよ」
「……どういうこと?」
「ふふふ、ただの親切心ですよ」

 元気になってほしくて、と添える。
 首を傾げる目標。うつろに見開かれていたその双眸は、次の、男子生徒が放ったとどめのような一言で一気に光を取り戻した。

「それに――この上なく、いい『訓練』になると思いますよ」
「訓練っ!?」

 すかさず駆け込み、5W1Hを根掘り葉掘り聞いてくる目標。
 双肩を掴まれ前後にがっくんがっくん揺らされながら、それでも男子生徒は仄暗い笑みを浮かべていた。

「はい、訓練です。それも、あなたがとびきり本気になれる訓練です」



●2分後

 すっかり指定席となったその位置で、彼は、組んだあぐらを野良猫のベッドに見立て、得物の手入れをしていた。風は少し冷たかったが日差しは春宛らの陽気を含んでいる。
 ひとつ大きなあくびをついたとき、遠くに誰かの姿が見えた。お、と口の中で呟き、背筋を伸ばして備える。

「よぉ、お疲れさん。ここは部室(クラブ)だ」

 何百回と繰り返した挨拶は喉を昇らない。
 彼の臀部が感じる、微かな、しかし確かに、次第に大きくなってくる地響きに引きとめられてしまっていた。
 何事だ、と目を見張る。
 こちらに駆けてくる集団、その先頭を走っていた翠髪の女生徒が加速した。

「ちょ――ッ!?」

 野良猫を逃がして立ち上がる。背後でにゃあ、と鳴かれるのと、女生徒が踏み切るのは同時だった。
 掲げられた鈍色に秋の遠い日差しが反射する。
 振り降ろされた斧槍の先端は、一瞬前まで彼が腰を降ろしていた芝生に突き刺さった。
 防衛本能から遮二無二射撃を行う。喉元を狙って放たれたそれは、しかしハルバードにホームランされてしまう。

「何なんだよ……!」

 当然口を突いて出た猫目夏久(jz0004)の疑問に、


「 こ  こ  は  部  室  ( ク  ラ  ブ )  だ  よ  っ  !  !  ! 」


 大山恵(jz0002)は何百万回と繰り返した挨拶を叫んだ。

「知ってるっつの!」
「ここは部室(クラブ)だよっ!!」
「だから何なんだよ!」
「ここは部室(クラブ)だよっ!!」
「だからそれは俺も言っただろ!?」
「部室(クラブ)なんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


 突然鳴り渡った戦闘音と怒号の応酬に、なんだなんだと部室棟の窓が次々開いていく。
 その殆どに『?』が浮かんだ瞬間を見計らい、小等部の男子生徒は極めて安全な位置で拡声器のスイッチを握った。



「えーそれでは只今より、

 久遠ヶ原学園文化祭2014裏プログラム、


 『 部  室  前  案  内  役  争  奪  戦 』


 を行いまーす」



「 は  あ  !  ? 」
「安心してください。職員の方から許可は取っています。存分にやってくださいー」
「全然俺の疑問が伝わってないッ!! っつか、そんなこと突然言われても――!!」
「その点もご安心ください、条件は大山さんも同じです」
「とてもそうは見えないけどな!?」
「ふふふ、確かに」

 もう始まっていますからね。
 男子生徒が指し示した先、恵はがっつり光纏を顕現させ、重量感のある得物をぶんぶんとぶん回している。

「ッ……冗談じゃねえっての……!!」

 脚をもつれさせながら部室棟に駆け込んだ夏久を生徒らが取り囲み、奥へ誘っていく。
 恵は両手で握ったハルバードを頭上に持ち上げると、


「こおおおこおおおはあああ……――部室(クラブ)だよおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 と、もう一度叫んでから、彼女に倣い、勝鬨を上げた生徒らと共に侵攻を開始した。





 明日が今日と全て同じである保証など
 どこにもなく、誰にもできない。


 しかし、抗うことはできる。


 時は晩秋の候。なれど今、この場は灼熱。
 決して学園の歴史に残る事のない、未曾有の大乱闘の火蓋が切って落とされた。


●解説

とある部室棟を舞台に行われる(オブ)訓練(ラート)に参加して(≒巻き込まれて)いただきます。

●状況
天候は晴れ、時間帯は昼過ぎ、絶賛文化祭中とします。
全てのアイテム、スキルの使用を許可します。


●班分け
訓練に積極的に参加する場合は、猫目夏久(jz0004)属する猫目軍(タグ:【猫】)、
或いは大山恵(jz0002)属する大山軍(タグ:【恵】)に分かれてください。
どちらの軍も、明確に所属を判別できる腕章を装着しているものとします。
もちろん無所属のプレイングも歓迎します。


●場所
プレイングには必ずいずれかを明記してください。

【ロビー】
憩いの場として使われている、入口からすぐの位置に存在するロビーです。
大小さまざまな机と椅子が配置されている他、飲料や軽食を扱う自販機が設置されています。

【中庭】
中央に巨大な噴水を湛える広大な中庭です。地面には一面芝生が生え揃っています。
日当たりと風通しが良く、休憩や昼寝などに適しています。

【屋上】
中庭を囲むように続いている屋上は常に出入り自由となっています。
障害物らしきものもなく、縁沿いに設置されているフェンスも目の粗い、1メートル程度のものです。

【通路】
片側に部室が、もう片側に中庭が臨める窓が並ぶ通路です。横幅4sq程度。

窓ガラスくらいまでであれば破壊してもドンマイで済ませます。
床、壁、天井は破壊不可とします。
猫目と大山は全ての場所を訪れます。順番は不明とし、静止と常時同行は不可とします。


●判定
戦闘に突入した場合は非常に大きなプレイング補正を掛けて判定を行います。
作戦、編成、行動内容を重視します。また、重体以上の判定は行われません。
必ず戦闘に特化した内容である必要はありませんし、歓迎します。


●ようするに
文化祭と訓練で賑わう部室棟を舞台としたフリースタイルのシナリオです。
皆様ののびのびとしたプレイングをお待ちしております。


●マスターより

お世話になっております。十三番です。
さ  あ  踊  ろ  う  か  !
ご検討のほどよろしくお願いいたします。



フリー依頼『星の舞踏会への招待状』

(担当マスター:水綺ゆら)


 星屑が踊れば、地球も廻る。
 地球のちっぽけな僕らと、そんな僕らが紡ぐ沢山の御伽噺を

 さぁ、一緒に頁を捲ろう。
 白紙に刻む、僕らの物語をさぁ、始めよう。


●舞踏会への招待状

「演劇系サークルと料理研究系サークル合同の出し物で、立食パーティー形式の出し物をするそうなんだ」

 ――名前は『童話・星の舞踏会(ステラワルツ)』。

 生徒に教師・伽藍 桔梗 (jz0263)は切り出した。彼女の手には一枚のチラシがある。
 まるで絵本に出てきそうな可愛らしい姫と王子のイラストが描かれた紙には『陽が沈めば物語の始まり。終わりの鐘が鳴るまで童話を紡ごう』なんて、小洒落たことが書いてある。

「星空の下で、着飾って舞踏会だなんて……中々お洒落だよね。面白そうだから声を掛けたんだ」

 自分達の活動を知って貰う目的もあるらしい。
 普段、自分達が制作し身につけ演技をしている衣装と趣向を凝らした料理達。
 両サークルのリーダー同士の仲が良く、今回の合同企画になったらしい。

「流石普段からやっているとうだけあって、大道具も衣装も料理もかなり本格的みたいだよ」

 学園内のとある一画の屋外を飾り付けて丸ごと舞台にしている。大道具の技術も活かし、宛ら童話世界の城とその周辺のような光景らしい。
 余り遠くに行かなければ、周辺を散策することも自由らしい。

「折角の祭りだものね。目一杯楽しんで、大切な人との絆を深めるのも新たに縁を探すのも、良い機会なんじゃないかな?」

 そういうと、桔梗は手に持っていたチラシを差し出した。

「良い思い出になることを祈っているよ」
 教師の柔らかな微笑みに見送られ、生徒達の少しだけ変わった日常が始まった。


●解説

進級試験を終えた後は、いつもと違う服装で非日常を楽しんでみませんか?

●概要
久遠ヶ原島の屋外のとある一角を借りて仮装パーティーに参加してみませんか?
衣装はドレス、勇者風の服など定番のものから着ぐるみやコスプレ類など変わり種のものまで借りられます。
テーマが童話である為、あまり物騒な格好は置いていないようです。


【舞踏】
 メインとなる会場で舞踏会を楽しみます。
 大切な人と、楽しい仲間と、初めましての人。

【立食】
 少し踊り疲れたら、こちらで休憩など如何でしょう?
 こちらのメニューはサンドイッチやクッキー等手軽に食べられる軽食やお菓子ばかりです。

【食事】
 立食パーティー会場とは少し離れた場所には星空レストランがあります。
 テーブルと椅子がセットされており、かなり本格的な料理が出てきます。
 少し忙しいようなので、手伝ってあげると喜ばれるかもしれません。

【散策】
 立食パーティー会場とはやや離れた場所で散策をします。


●マスターより

ご機嫌よう、水綺ゆらです。
皆様、試験お疲れ様です! ……進級、出来そうですか?

第一回進級試験に引き続き大規模リプレイを担当させて頂くことになりました。よろしくお願いしますね。
今回お送りするのは、仮装舞踏会。
いつもと違う姿で、日常を過ごしてみてはいかがでしょう?
それでは、プレイング楽しみにお待ちしておりますねー。



フリー依頼『ゾンビは招くよ』

(担当マスター:樹シロカ)



 今年の進級試験も思い出の一コマへと(ほとんどの者にとっては)なりつつある頃。
 戦い続ける一部の者に追い討ちをかけるかのように、久遠ヶ原学園は文化祭へと雪崩れ込んでいた。
 準備に勤しむ学生達の中を、ヒールの音を響かせて通り過ぎるひとりの女。
 久遠ヶ原学園大学部教授、星徹子をある者は『マッドサイテンティスト』『早すぎた天災』と呼ぶ。
 眉唾物の『撃退士の能力を高める画期的な方策』を次々と生み出しては、各方面に迷惑をかけているからだ。
 だが星はへこたれない。
 創造の前には破壊が必要であり、進歩には必ず痛みが伴うからだ。
 ……大体痛いのは自分じゃないし。

 そして星は文化祭に乗じて、またもや怪しい企みを思いついたのだ。
 名付けて『極限状態からの能力開花システム』。
 早い話が。
「究極のホラーハウスよ」
 チラシを張りつつ、自信ありげに微笑む。
「V兵器やスキルに頼ることなく、如何にして自分の肉体だけで生き残るか。挑戦者を待っているわ」
 星は高笑いで教室を出て行った。


 ホラーハウスは、大学部の一角にある研究棟の地下にあった。
 1階から細いコンクリートの階段を降りると、闇の中に怪しい光景が広がる。
 灌木の茂みや崩れた柵に挟まれた、ふたりがどうにか並んで通れるほどの幅の道が続き、建物を回り込んだ先で幅2m程の橋に辿りつく。
 その下には何やら生臭いどろどろしたピンク色のゲル状の物が溜まっていた。
 橋を渡り、墓場を抜けると、ようやく出口である。

「ふ、完璧ね。流石は私……と言いたいところだけど」
 足りないモノがあるのだ。それも、致命的に。
「ま、当日までにはなんとかなるでしょ」
 星はこういう場面によく似合う懐かしいアメリカンポップスの鼻歌を歌いながら、最後の仕上げに取り掛かった。


 来たれ、学生達。
 ゾンビが君達を待っている! ……かもしれない。


●解説

●この選択肢ですること
 大きく分けて二種類になります。それぞれプレイングで指定をお願いします。

 A.ホラーハウスに挑戦する(挑戦者)
  PCはOPのホラーハウスについては現地に到着するまで分かりません。
  ホラーハウスでの出来事を楽しんでください。

 B.スタッフとして参加する(スタッフ)
  PCはゾンビとして、挑戦者を脅かす役になります。
  これがOP中の「致命的に足りないモノ」です。希望者がおられない場合は、モブが担当します。


●ホラーハウスの仕様

・通信機器の使用不可(通じません)。
・V兵器、スキルなど、大ダメージを与える行為は原則禁止です。同行者との打ち合わせの範囲なら可能です。
・LEDのカンテラ(およそ直径2m程度を球形に照らす)の貸し出しがあります。

【以下PL情報】
入口からの階段:
 古典的にコンニャクが襲ってきます。但し板だけではなく、白滝だったり短冊だったりします。

室内:
 かなり広い部屋に、廃墟や墓地のセットがあります。ゾンビが潜んでいます。真っ暗です。
 挑戦者はこの室内を、決まった順路に沿って脱出して頂きます。
 ゲル沼の深さはおよそ1m、橋の長さは10m程度です。

出口への階段:
 幅は1人分程。星は特に仕掛けは作っていません。光を目指して駆けあがってください。
 但しスタッフが何かを仕掛けるのは自由です。


●星教授について
 常軌を逸した人ですが、撃退士ではなく一般人です。
 別室でモニタリングしています。(原則としてリプレイには登場しません)


●PL向けのお願い
 他の方と同行を希望される場合などは、タグの使用が可能です。
 タグは3文字までで、プレイングの最初に書き、 】で閉じてください(先頭の【 は不要です)。
 尚、行動はプレイング内での記述をお願いします。(部活などは参照できません)


●マスターより

進級試験お疲れ様でした!
今回は文化祭のフリーシナリオを担当致します、樹 シロカです。

大規模形式の場合は皆様が一団となって行動することが多いと思いますが、今回は敵同士かもしれません。
判定の要素はプレイングのみ。レベルは関係ありません。
試験の打ち上げも兼ねておりますので、思い切り楽しんでいただけましたら幸いです。
皆様のご参加お待ちしております!








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