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マスター:由貴 珪花
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
形態:
サポート:0
報酬:通常
リプレイ完成日時:2011/12/27


オープニング

●日常の目覚めと、非日常の訪れ
 その日、猫目夏久は、ねこぱんちで目が覚めた。

「‥‥よ、おはようナナコ」
 猫屋敷と化した彼の寮室では、割と日常茶飯事な朝。
 彼の部屋は学生の一人暮らしながら8畳程度と広めだが、いかんせん大量の猫でその殆どを占められている。
 その数、12匹。
「今日のベッドはクロとちぃとブチさんか。‥ふぁぁ、寒くなってきたから争奪戦激しいなぁ」
 コタツで丸々主人をチラ、と見やりながら猫たちはフカフカの布団を楽しんでいる。
 ――猫目がベッドで寝ることは殆どない。
 それもまた、割と日常茶飯事の朝。

 一通り猫達に挨拶を済ませ、支度を始めた。今日は午後から護衛任務で家を空けることになる。
 猫の世話は寮母が快諾してくれたし、あとは何か忘れ物はなかっただろうか――。
「ねーこーめー。おーい、起きてるかー?」

 ドンドン。

 と、朝も早よから寮室のドアが叩かれた。はて、何事だろうか。
 護衛任務の準備も途中にハテナ顔でドアを開けると、見慣れた寮友の顔、と、ダンボールに入った、色とりどりの毛玉達。
「おはよう‥‥どうしたんだ、これ」
「おはようさん。どうしたも何も、おまえ宛ての可愛い荷物達だよ」

 にゃあ。みーみー、にー。
 小さな口で、小さな声で、可愛らしく鳴く色とりどりの毛玉‥‥もとい、仔猫達。
「猫目様宛、って寮の前に置いてあったんだよ。‥‥まぁ、あとは頑張れ」

●苦渋の決断
「ウチにはこれ以上ネコさんを増やす余裕はないんだ‥‥ッ!」
 同日、学園の一室にて。
 教壇に立ち、ガチ涙を流し、拳を強く握りしめながら。猫目夏久は、集まった生徒達に訴えかけた。

「どうやらウチが猫屋敷だという噂を聞いて、仔猫を捨てていったらしいんだ。
 ‥‥まぁ噂は間違ってないが、そこはそこ、これはこれ。俺も学生だしお金もないし、無尽蔵に飼えるわけないだろ?」
 ただでさえ猫の飯代を稼ぐために任務を受けてるのに、これ以上増えたら猫目自身の飯がなくなってしまう。
 しかし、この仔猫達を再び無責任に放り出すことも、猫目には出来なかった。
 教壇の上に置かれたダンボールには、疲れて眠る仔猫達。
 丸まったり、くっついたり。箱の中で思い思いに転がりながら。人も猫も、寝るのは子供の仕事なのだ。
 きっと捨てられたとは思ってもいないのだろう。そして、今後もそんな目には遭わせたくない。
「俺は今日の午後から任務で一週間くらい久遠ヶ原を離れないといけない‥‥。
 けど、この子たちを一週間も放ってはおけない―――頼む、力を貸してくれ!」


解説

一週間程度、仔猫を保護しつつ里親を探してあげて下さい。
期間中は、猫目が用意した部室棟の一室が使えます。許可を得てるため、期間中は泊り込みもOKです。気分は合宿。
部屋の設備は何もなく、がらんどう状態。わりと寒い。
最低限必要な物として、猫トイレと猫用食器類が置いてあります。消耗品はドライフードと猫砂があります。

【猫情報】
各仔猫は、生後1ヶ月程度のチビたち15匹です。毛色は茶トラあり黒あり三毛ありで様々。
現在ダンボール+猫目が敷いた小さな毛布が寝床。
朝、少し世話した時点でじゃれてきたため、人見知りもなく人懐っこい性格のようです。
ただし猫たちは寒空の下に放置されたせいで、少し弱っています。3〜4日は世話を見て、回復させてあげましょう。

【里親探し】
里親探しの方法は問いません。情報戦でも人海戦術でも、ご自由に奔走してください。
とはいえ、探し始めてすぐに見つかるものでもありませんので、時間の使い方は大切に、ですね。
PCさんが引き取っても構いませんが、お一人様1匹までです。

仔猫達が末永く幸せに暮らせるように、ご協力お願いします。

●マスターより

猫屋敷に憧れつつ、ただいまリアルに猫犬の里子探し中! こんにちわ、由貴です。
由貴さんは猫派ですが、家人の好みで犬になりそう。うぐぐ。

今回の猫目君のお願いですが、現実にも結構あるあるな問題ですね。
捨て猫や捨て犬を善意で保護してる方のところに勝手に押し付けていく、なんて話は珍しくありません。
そんな時、押し付けられた側が出来ることは、暖かく迎えてくれる家族を探してあげるくらい…。
この依頼には特別な力は必要ありません。その分、学生として人としての『優しさ』を持って、依頼に臨んでくださいね。

それでは、にゃんこ派の方も、わんこ派の方も、ご一緒にお楽しみいただければ幸いです。


現在の参加キャラクター


プレイング

撃退士・荘崎六助(ja0195)
ルインズブレイド
【メルアド】(【メルアド】=参加者全員とメルアド交換をすること)

*自身も仔猫の里親候補で里親探し班所属。
二人称は同学年なら名字呼び捨て(年上は名字+先輩)

<里親探し>
〜学園外〜
・動物病院やペットショップを中心に街中にポスターを貼る
・図書館のパソコンで里親探し専用のホームページや掲示板への書き込み&自分のブログやツィッターに仔猫の写真や状況などを掲載


〜学園内〜
・学園外と同じように学園内にある掲示板にポスターを貼る
・放送部に掛け合って仔猫の引き取り手を募る校内放送をしてもらう(最後に「詳細を知りたい方は中等部3年1組の荘崎にご一報ください」という一文を忘れずに)
・猫目先輩と親しい間柄にある人物から校内に居る猫好きな生徒を何人か教えてもらい、直接話に行く

<仔猫>
・世話係の誰かに何度かメールをして仔猫の状態を随時確認したり必要な物は無いかと尋ねる
・里親探しの合間を縫って仔猫達とのスキンシップをはかる

撃退士・浅間・咲耶(ja0247)
ディバインナイト
「浅間・朔耶です。よろしくね(ニコ)」
猫ちゃんの里親探しだね。頑張るよ。

○行動
ボクは里親探しに回るね。
僕自身も一匹については里親になろうと思う。
白猫がいいかな?
「フフ、可愛いね。他の子も優しい人を見つけてあげたいよね」
青柳さん(ja2524)、天風さん(ja0373)、荘崎君(ja0195)、一緒に里親探し頑張ろう。
他の人はお世話をお願いするね。

準備として子猫達の携帯で写真を撮っておく事にするよ。
であった人に見せて回る事ができるしね。

人の多い所を手分けして、広告にあたる事にするよ。
ポスターは青柳さんから作ってもらった物をありがたく使う事にしようと思う。
許可を得て、駅や商店街等の人通りの多い場所に。
得意としてる手品の応用で人の目を引き付ける様に、持っている写真などを使って誘導する。
「どなたかこの子を引き取ってくれる人、居ませんか?」
可愛いでしょう?と写真を見せて誠意を込めて尋ねてみる。
ダメでも足を止めて聞いてくれた人にはありがとうと感謝します。名簿を借り、学園の人を訪ねてお願いにも行こう。

引き取った猫には名前をつけておくよ。
女の子だったら『サクラ』、男の子なら『レン』にしよう。
「これから宜しくね」
って寒くない様にそっと抱きしめながらつけた名前を呼びかける。

【メルアド】
全員とアドレスを交換しておく。

撃退士・凪澤 小紅(ja0266)
阿修羅
【目的】
猫の里親を見つける。

【準備】
里親探しを中心とする者、子猫の世話を中心とする者に分ける。
自分は世話係。
タグ【メルアド】

【行動】
予算の許す範囲で以下の物を用意する。
・湯たんぽ
・使い捨てカイロ
・毛布
・子猫用ミルクと哺乳瓶

まずはネットで子猫の世話の方法を調べる。
床が冷たいので、床にダンボールを敷く。これは、学園の資材梱包に使った物を借りる。
子猫は、昼間は湯たんぽで保温。休み時間の度に湯をチェック、冷えたら交換。
湯は学食や宿直室で確保。この際、学食のおばちゃんに事情を説明し、学食に来る教師や学生に里親探しの話題を振ってくれるよう頼んでおく。口コミは馬鹿にできないからな。
夜は湯が確保できないだろうから使い捨てカイロで子猫を保温。猫に直接触れないようにしておく。自分は毛布で寝る。

気をつけるのは、まず子猫が自力排泄できるかどうか。できない子猫は、濡れたティッシュでお尻を刺激して排泄させる。

猫の体調管理のため、お世話ノートをつける。
餌は、離乳食の時期なのでドライフードをミルクに混ぜて食べさせる。
里親が見つかるまでしっかりお世話するぞ。

撃退士・天風 静流(ja0373)
阿修羅
参加者との連絡は携帯で行い、メールのアドレスなどは予め交換しておく。

里親を募る為、ポスターの作成を行う。
作成にパソコンを使う場合は教師に掛け合い、使用許可を貰う。
子猫達の写真などの画像があれば、ポスターに使用。

ポスターを貼る場所は学園の掲示板や外の量販店などの人の多い場所、動物病院やペットショップなどの動物関連の場所。
または住宅地の掲示物が張れる場所などに貼る。
貼る際は責任者の方に予め了承を貰い、許可を取る。
手当たり次第に貼るのではなく、きちんと人目に触れる場所に貼っていきます。
ただ貼るだけだと意味が薄い上に、見栄えがあまり悪い為。

授業は余裕のある場合はなるべく出席しておく。
単位は依頼で出ると思われるが、勉強の遅れを自習や補習で取り戻す必要がある為。

ポスター貼りや授業後に人から猫の里親に関しての質問があれば快く話を聞きます。
指定された先の連絡だけでは尻込みする方がいる可能性があるので。

余裕がある時は猫達の様子を見に行く。
待機して連絡を待ったり、猫を愛でたり。
「・・良い引取り手が来ると良いな」

撃退士・青柳 七緒(ja2524)
鬼道忍軍
良いご主人に出会えると良いね

□目的
里親探し

□行動
携帯のサブアドを取得
【メルアド】随時連絡・情報共有
携帯で猫達の写真撮影

◎駅前やデパート等にある『○○譲ります』掲示板をリサーチ、使用に申請がいるなら済ませる
◎ペットショップや動物関連の店にポスターを貼って貰える様に携帯で打診
◎学園内で猫に関わる部活にもポスターを貼れないか打診

ネカフェでポスターを作りコンビニでネットプリント増産
◎の場所で許可の出た・フリーの場所に貼りに行く

里親希望者から連絡が来たら「久遠ヶ原学園正門前」で待ち合わせをし、保護部屋まで案内

□ポスター
ネカフェのパソコンで作成・写真転送にはネカフェで借りたUSBケーブルを使用
上部に大きく『里親さまを募集してます』中央に写真を配置
写真の下に『生後一ヶ月程度である事・猫達の毛色・それぞれの大まかな性格・保護された経緯・里親候補への希望・一時面会後に自宅へ届ける』旨を記載し、最下部にサブアドを
全体的にカラフルかつファンシーに
完成したら下記へ転送

□ネットプリント
ネット上で画像を転送する事で、コンビニで24時間印刷が出来るシステム

撃退士・ルーネ(ja3012)
ルインズブレイド
世話係班。
各自持って行くのは携帯。【メルアド】
学園内で余ってる段ボールを沢山集める。
みんなで用意するものは、
・毛布(数枚)
・使い捨てカイロ沢山
・湯たんぽ(複数)
・1〜4ヶ月の子猫用フード
・子猫用のミルクとその哺乳瓶
・ノート
・ボールペン
・固い下敷き

部屋に泊まり込んで子猫の世話をする。
最初に部屋の掃除。糸などが落ちてないようにしてから段ボールを敷く。
子猫の寝床は、暖かいところとあまり暖かくないところを作るようにする。
猫の保温、自力排泄については小紅さんのプレイングに準ずる。
暖めながら子猫一匹一匹の首の後ろをつまんでみて、すぐ元に戻るかチェック(脱水症状チェック)
もしも元に戻らなかったら、すぐに体温程の温度の子猫用ミルクを作って煮沸した哺乳瓶であげる。
お腹は下向けでハイハイの格好で膝に乗せて、優しく哺乳瓶を口に入れる。
無理なようなら、2、3滴、子猫の口にミルクをたらす。
飲んでくれたら、最後に背中をさすってゲップをさせる。
常に新鮮な水を用意しておく。
食事は離乳がまだなら、子猫用フードとミルクを交互に与えて離乳させる。
毎日お世話ノートに一匹一匹の様子を書く。
里親は家族構成、住居環境、すでに飼っている動物との相性を審査する。
保護部屋で里親の子猫予約を行い、お宅拝見を兼ねて子猫配達。
子猫配達の際、留守番をする。
最後に一匹子猫を貰う。

矛盾や足りない行動は他の世話係のプレイングを優先。

撃退士・望月 忍(ja3942)
ダアト
【目的】
・世話係班として仔猫たちを回復させる
・仔猫を家族として受入れてくれる里親に引渡す
・自分も里親希望

【準備】
・電気ストーブ設置申請
・携帯
・古新聞とダンボール(学園内で余っているもの)
・湯たんぽ
・使い捨てカイロ
・毛布
・子猫用ミルク、哺乳瓶
・ノート、ボールペン
・タオル
・ねこじゃらし
・手指消毒液
・ビニール袋
・電池式ランタン
・懐中電灯
※みんなで協力して用意

【メルアド】

【行動】
・他の世話係が授業など不在の間は留守番(自分は自主休講考慮)
・学食や買出しで食事
・合宿気分を楽しみつつ世話を忘れない

【仔猫の世話】
・手洗い(または消毒)
・4〜5匹ずつ分け、ダンボール箱のベッドに入れる
・体温が上がらない時はビニール袋を使い濡れないよう温かいお湯に入れてやる
・食事は日に2〜3回
・様子を見てフードをミルクで軟らかくするか、別々に与え、げっぷさせる
・脱走防止、戸締り注意
・特徴のわかる名前をつける
・お世話ノートに日時、記入者名、食事や排泄の様子を記録、情報共有
・回復しない時は動物病院へ

【里親】
・実際に仔猫を見て予約してもらい、後日お宅訪問し仔猫を届ける(全員分担)
・かわいいだけで連れ帰ろうとしたり、訪問を嫌がる場合は断る
・家族の意見を聞き取り、飼育環境が良いなら引き渡す



リプレイ本文

●序幕
「うわぁ、仔猫さん達、すごくちっちゃいのね〜!」
 早速ダンボール箱を渡された望月 忍(ja3942)は、目をキラキラと輝かせて顔を綻ばせた。
 箱の中で転がる白、茶、黒。縞に三毛にポイントカラー。
 どんな組み合わせの親で生まれたかも判らないバリエーションだが、考えたら負けなのだろう。
「‥‥大丈夫だ、私達が何とかするぞ」
 凪澤 小紅(ja0266)仔猫を優しく撫でた。その柔らかさと暖かさを手のひらに感じる。
 儚げで頼りない小さな毛玉は寒さにふるふると小さく震え、兄弟猫達に寄り添って暖を求めていた。

 動物の世話をするという事は、それ自体が戦いだ。
 そして戦いは、世話の前から始まるのである。
「最初はやる事が多いな、各自分担し準備に当たろう」
 ぴゃあぴゃあと鳴き出した仔猫を横目に、冷静に対応を始めたのは天風 静流(ja0373)。
 可愛い仔猫達を眺めているだけで時間はあっという間に過ぎてしまう。この仔猫達にそんな猶予はないのだ。
「よーし、私は掃除掃除っ!」
「ボクは写真からかな。飛び切り可愛く写してあげないとね!」
 武器の代わりに掃除用具を構えるルーネ(ja3012)は、糸の一本すらも見逃さないと大張り切り。
 一方で浅間・咲耶(ja0247)は携帯を取り出し、撮影の準備を始めた。
 ポスターや出先で、可愛い写真を見せて回れば効果は抜群。可愛いは正義なのだから。
 色んな角度から撮っては次の仔猫と入替え、嬉々として写真を増やしていく。‥‥恐らく半分は、趣味だけど。
「じゃ、俺がWeb担当でー…」
 皆の様子見ながら呟いた荘崎六助(ja0195)に一つ頷き、青柳 七緒(ja2524)がニッコリと微笑む。
「あたしが可愛いポスター作るね」

 意思疎通ばっちり。
 流れる様な作業分担に、ふつふつと意欲が湧き上がる。
「よーっし、がんばりまっしょー!!」
 牡丹色の豊かな髪を靡かせて、ルーネが大きく拳を振り上げた。
 『ぴゃっ?!』という仔猫の鳴き声に、全員から『しーっ!』とされたのは言うまでもない。


●1ページ目
 記念すべき1日目の担当はルーネです!‥‥なんだか、最初ってドキドキするね。
 このノートは猫の様子とお世話の内容、今日の活動を纏めていこうと思います。

 ええと、まずはお世話。
 私が掃除してる間に、小紅さんが湯たんぽ、忍さんが古ダンボールいっぱい持ってきてくれました。
 お陰で猫達を待たせる事無く、広くて快適な猫ハウスが完成!
 それにしてもやっぱ寒いんだね。湯たんぽ置いたら周りに集まっていくの。
 本当に可愛いなぁ、見てるこっちまで暖かくな――っくしょん!
 ‥‥いや、寒いものは寒いよね。
 あ、自力排泄は皆できるみたい。でも気になる子が何匹かいるから最後に書いておくね。
 世話の事は小紅さんがネットで色々調べてきてくれたから、参考にしながら頑張ろうっと。

 里親探し班も順調に動き出したみたい。
 七緒さんのポスターが凄いポップなデザインで可愛くて、忍さんと2人で盛り上がっちゃった!

『わぁ、このポスターすごい可愛いのね〜! これなら皆見てくれると思うの〜♪』
『ポスターの写真がまた最高! 咲耶さん写真撮るの上手いですねー!』

 ‥‥撮影中の咲耶さんのキラキラした笑顔が忘れられない、とは言えなかったけど。
 うーん、焼き増しお願いしようかなぁ。

 そういや六助さんが、明日皆を驚かせるって言ってたけど、なんだろ?


●5ページ目
 浅間です。今日のノートはボクが担当するね。

 お昼休みにボクと凪澤さん、天風さんの3人でお昼食べながら世話してたら‥‥。

『こんにちは、中等部3年1組の荘崎です。只今俺達は生後約1ヶ月の仔猫の里親を探しています――』

 教室のスピーカーから流れる荘崎君の声。一瞬、3人で目が点になっちゃったよ。
 きっと聞いてた人は吃驚したんだろうなぁ。猫の里親募集、だもんね。
 昨日は里親募集のサイトにも書き込みしてたし、荘崎君の宣伝効果ってすごい。

『荘崎君に負けないよう、ボク達も頑張らないとね』

 日向で転がる仔猫達を軽く撫でてから、天風さんと2人でポスター貼りに出かけてきました。

 あ、里親探しの皆に連絡!
 駅と動物関係の施設には許可を貰って貼ってきたよ。
 あとは校内と商店街と‥‥天風さんが住宅地の掲示板にも貼ったらどうか、って話してました。

 仔猫は、大分元気が出てきたのかな? カリカリのまま食べられる子もいるみたいだね。
 手から直接食べてくれたのは嬉しかったなぁ。

 明日は天気が崩れるそうだから、少し暖かめの準備をしたほうがよさそうだよ。


●8ページ目
 凪澤だ。ええと‥‥何かこういうのは気恥ずかしいぞ。
 とりあえず今日で3日目だ。猫達もほぼ元気になってきた‥‥例外を除いて。

『ん‥‥。茶ちび、動いてないぞ』

 気づいたのは朝、目を覚ました時だった。
 お湯を貰いに行く前に仔猫の様子を見たんだが、1匹震えたまま動かなくて‥‥。
 体が小さいせいか食が細く、猫達の湯たんぽ争奪戦にも負けっ放しのちびっ子だ。
 今朝は随分と冷え込んだから、体を冷やしたのか――。

『急いでお湯を貰ってくる! ルーネ、忍、この子を見てやっててくれ』

 大急ぎでお湯を貰ってきて、湯たんぽの側に寝かせたり、ビニール袋越しにお風呂に入れてみたり。
 しかし午後になっても回復しなかったから、取り急ぎ動物病院に預けてきた。
 明日、もう一度訪ねてみようと思う。

 里親探しは待ちの段階だな。
 ああ、私もお湯を貰いに行く時、食堂のおばちゃんに宣伝をお願いしているぞ。
 口コミは馬鹿に出来ないからな。

 既に噂は随分広まったようだし、そろそろ見学者が来るかもしれない。


●12ページ目
 今日は俺の番?うーん、アナログは面倒だけど仕方ないか。
 あ、名前書き忘れた。荘崎だ。

 初日に登録したサイトから数件問い合わせが来てたよ。
 一応メールで住居環境とかは聞いてみたけど‥‥とりあえず、まだ返事待ち。
 俺のSNSやブログにも随時掲載してるし、少しは手応えがあるといいんだけど。

 ‥‥っと、その間に足を動かしておかないとな。
 今日は浅間先輩と2人でポスター貼りしてたんだが、浅間先輩って手品上手いんだぜ!
 猫の写真を使って手品してたら、どんどん人が集まって驚いたよ。

『どなたかこの子を引き取ってくれる人、居ませんか?』 

 ポスターは大体目につく所全部貼り終わったけど、あれ、余り過ぎじゃないか?
 青柳、一体何枚刷ったんだろ‥‥。

 しかし流石に猫達も随分元気になったなー。
 遊びに行ったら、3匹くらい俺の服にくっついて離れなくて困ったよ。剥がそうとしたら爪立てるし。
 自然に離れるの待ってたけど、軽く1時間半はかかったね。
 本当、人懐っこいよなぁ。それとも寂しいのかな?
 あの3匹の中の1匹を貰っていこうかなぁ、と思ってるけど、今の所は里親優先。

 凪澤先輩の話だと、昨日病院に連れていった子はもう1日病院で経過を見るらしい。 
 一応名目上は様子見ってことだけど、心配だな。

 そういえば、昨日のページに猫の落書きが一杯あったけど‥‥凪澤先輩って結構お茶目?



●幕間
 冬の雨は冷たい。
 一層冷え込んだその日、小紅とルーネは急ぎ足で学園を飛び出した。
 動物病院の先生から連絡があったのだ。――話したい事がある、と。

「先生っ!茶ちびに何か!?」
 開口一番、小紅は獣医に詰め寄った。いつもは表情に乏しい小紅だが、その顔には明らかに『憔悴』だ。
 茶ちびと呼ばれるその仔猫は、小紅が常々心配していたから無理もない。
「ちびちゃん‥‥ダメだったんですか?」
「いえいえ。そうではなくてですね」
 2人の気迫に圧されていた獣医は、柔和な笑みでケージを抱き上げた。
 すると、ぴゃあ!と元気な声を出して茶ちびが顔を覗かせたのだから、2人は目が点だ。
「回復はしましたが、どうも貧血症の疑いがあってね‥‥里子に出すのは難しいと思う」
 衝撃が走る。そう、全員が五体満足とは勿論決まってないのだ。
 そもそも何処で生まれた子かすら、自分達には知る由もない。
 貧血症――。それは予防法もなく、完全に駆除することもできない感染症の一種。
「‥‥わ、私が面倒を――」
「費用がかかりますし、何より君達は撃退士だ。元気な子ならともかく、病気の子の世話は難しいでしょう?」
 衝動的にルーネは言葉を繰り出すが、獣医は笑顔でやんわりと制する。
 生半可な気持ちで里親になって欲しくないと、自分でもそう思っていた。しかし見捨てることもできない――。
 逡巡する2人に、獣医は言葉を続ける。
「なので、私が引き取ってあげましょう」
 茶ちびを片手に持ち上げた獣医の顔は、この上なく優しい笑顔だった。



●16ページ目
 12月15日、晴れ。記入者、天風。
 早いものでもう5日目、私達の保護期間も終盤だ。
 里親との面会や審査も必要だろうし、スムーズに事が進むように準備を進めないとな。

 今日は世話班から朗報があった。
 茶ちびは無事回復した上に、例の動物病院の医師が快く受け入れてくれたそうだ。
 他の仔猫達も玩具に飛びつき走り回る程だから、もう十分元気だろう。
 ‥‥猫じゃらし振ってみたら10匹くらいに飛びつかれて参ったよ。
 元気になった反面、無茶をする子もいるから、皆も気をつけてくれ。

 校内放送を聞いていたという女子生徒が荘崎を訪ねてきたんだが‥‥どうも半信半疑だったようだな。
 事情を説明したら即面会していったよ。寮で飼育を検討してから、明日また来ると言っていた。
 ポスター経由の問い合わせも3件程入っているし、私達が蒔いた種はしっかりと実を結びつつある。
 また一気に忙しくなりそうだ。

 ‥‥それにしても、イレギュラーとはいえ世話班が真っ先に里親見つけるとは思わなかったぞ。
 まぁ、こちらも進展があったし、よしとしよう。
 明日はよい引き取り手が来ると良いな‥‥。


●19ページ目
 望月です〜。
 皆色々書いてくれるから、ノート読むだけでも面白いのね〜♪

 世話班は夜もわいわいやってて楽しいの〜。
 昨日は青柳さんが差し入れ持ってきてくれたから、ちょっとしたお茶会になってたのよ〜。
 そしたら、寝ぼけた猫ちゃんがルーネさんに寄ってきて〜、口元に指を近づけたら吸ってくれたの〜♪
 つい皆で和んじゃった〜。
 青柳さんが写真撮ってくれたから、後で皆にも見せてあげられたらいいな〜。

 今日は面会が6組もきたのよ〜!
 里親探しの皆が頑張ってくれたお陰だね〜。

『一先ず住居環境とか収入とか教えて貰えません?‥‥こちらも無責任に引き渡す訳にはいかないので』

 荘崎さんに気圧されてる人もいたけど〜、幸い面会に来た人はバッチリ合格ないい人達だったね〜。
 結局、昨日の女の子の寮に2匹、商店街の本屋さんに1匹、ペットショップのお姉さんに2匹で〜。
 昨日の茶ちびちゃんも入れて、6匹分の里親が見つかったの〜。
 家族が出来てよかったの〜、幸せになるのね〜♪

 世話の方は、一番心配だった茶ちびちゃんを無事送り出せたから大丈夫なの〜。
 凪澤さんが辛抱強く世話してくれたお陰で、食が細くて心配だった子も皆回復したのね〜!

 あ、もう知ってると思うけど連絡なの〜。
 残りの3組さんは前向きに検討中で〜、引取り先が決まった子は明日一遍に配達して回るのよ〜。
 最終日、頑張ろうね〜!



●終幕
 猫目夏久が学園に帰ったのは、夜遅く。
 我ながら、大変なお願いをしたと思っていた。
 普通、1匹の猫を里子に出すだけでも1週間はかかるものなのだから。
 何匹かでも貰い手が付けば上々。最悪今回の護衛任務の報酬を使って仔猫達を保護しよう、と。
 そうめん生活を覚悟していたというのに。
「全員、里親見つかったって‥‥!?」
「ああ。無事良い家族が見つかったぞ」
 静流が差し出したのは、里親を審査する際のメモやらアンケートやら。
 更に小紅がお世話ノートを、七緒がポスターを見せてにっこり笑った。
「お、俺なんかよりずっと丁寧でしっかりしてるなぁ。‥‥あれ、でも数が合わない?」
 確かに計算上はそうだろうとも。
 何故なら残りの里親は――。
「えへへ‥‥私達が頂きましたなの〜♪」
 忍が幸せそうな笑顔で小さなダンボールを抱え上げると、『にゃーん』と元気な声で中から返事がした。
 そして次々と、ダンボールに残っていた仔猫達が抱き上げられる。
「ボクも。女の子だからサクラって名前にしたよ」
「あー、名前かぁ‥‥ま、俺は後で決めるかね」
「あたしも悩み中。折角だから可愛い名前がいいもんね!」

 なんて暖かいのか。
 偶然猫目が出向する日に届いた捨て猫を、偶然集まったメンバーがこんなにも愛してくれるなんて。
 じわ、と湧き上がる涙を抑えながら、猫目は後片付けを手伝って、最後に全員で写真を撮って。

 長くて短い1週間を過ごした教室は、再び冷たくひっそりと静まり返っていった。


●後日届けられたノート、24ページ目以降
 12月17日。今日は青柳が書きますね。
 といっても、もうこのノートは使わないと思うし、あたしの日記みたいなものかな。

 まずは改めて結果!
 午前中は望月さんと凪澤さんがが学園に残って、他全員で5匹配達完了!
 あたしが行ったのはペットショップ。
 おっとりしたお姉さんなのに、選んだのはやんちゃな三毛くんだからちょっと心配。
 でも、大丈夫だよね。ペットショップの子達、すごい大切に育てられてたし。

『フフ、猫くん動いちゃダメだよ?』

 これがお姉さんと三毛くんの写真です。ちっちゃいくせに、おすまし顔!
 三毛くん、お姉さんに似て美人になったらいいなぁ。

 午後は荘崎くんのブログから問い合わせてくれた、若いご夫婦が面会に。
 なんと香川県から!意気込みがすごいね。
 審査をした後、猫くん2匹をお持ち帰り頂きました。流石に香川まで宅配は無理だよね…。
 後は昨日面会に来てた人達。
 不動産屋さん、学園の事務員さん、それからなんと現役バリバリ撃退庁の撃退士さん!
 女の人だったけど、凄くしゃんとしててカッコ良かったです。あんな風になりたいね。
 皆さん引取りを決めたようなので、猫くんを選んで貰って宅配に。

 猫くん達との生活も今日で終わりなんだね。
 何か凄く長かったように感じたけど、あっという間だったな。
 あんな一杯の仔猫くんに囲まれるなんて滅多にないから、楽しかったです。


 あ、最後に。

 依頼中に撮った、皆と猫くんの写真をノートに貼っておくね。記念になればと思って、一杯撮ってたんだ。
 あと、新居での猫くんの写メも一緒に。
 欲しい人は遠慮なく青柳までご連絡を!


――大量の写真に溢れてたのは、沢山の笑顔。そして、最後に撮った集合写真。


 また、どこかの依頼で会えたらいいね。


依頼相談掲示板

相談テーブル
青柳 七緒(ja2524)|中等部3年8組|女|鬼道
最終発言日時:2011年12月10日 15:31
挨拶表明テーブル
宝井正博(jz0036)|教師0組|男|一般
最終発言日時:2011年12月09日 09:02








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