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マスター:燕乃
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
形態:
参加人数:14名
サポート:0
報酬:通常
リプレイ完成日時:2011/12/6


オープニング

●佐賀県のとある山奥の森、夜
 夜の森は暗く、月すら厚い雲の中で眠っている。
 それを呼び覚ますような、甲高い銃声。二発、三発目と繰り返されるそれは古い猟銃のものだ。
――ハッ、ハッ、ハッ
 それを嘲笑うかのように、木々の間から獣の呼吸が漏れる。
 時折、青い影のように走り回り、それを撃とうと男は猟銃を構えるが、銃口がソレを捉える事などない。
 繰り返されるのは的を射ぬ銃声。男の悪態。
 樹の密集し場所では高速で動くものを銃では捉えきれず、また暗闇というものも標的を見辛くしている。
「くそっ、くそっ、くそっ!」
 男は思う。ここは元々、山の神の眠る森だ。後から来た神の使いだと言う獣の言う事など断じて聞けない。この村を好いていた。この森を愛していた。それを後から来たモノに蹂躙されたくはない。それは憎悪にまで達した敵意。
 その感情が正しいと証明するように、眼の前にいる獣は異形だった。神の使いというに正しく美しいが、また異形である。
 姿は犬、いや、狼‥‥だろうか。青い毛皮は暗闇の中でも濡れたような光沢を放ち、強靭さを感じさせる四肢も無駄はない。
 だが、その前脚にはアームブレイドのように、或いは翼のように鋭い刃が映えている。自然の、少なくとも人の世界に属するものではない。
 人はこう呼んでいる。サーバントだと。
「何が神の使いだ」
 弄ぶのに飽きたのか、五匹のうちの一匹、中でも大きく群れのリーダー格の一匹がぴたりと男の前で止まる。
「昔から、この森には神がいるんだ! お前らの飼い主は、ただの侵略者だろうが!」
 己の信じる言葉とも共に弾丸を放つ。けれど、サーバントには通じない。弾丸は毛皮を打ち抜き、肉を抉る事なく、文字通り傷一つつけられずに後方へと通り過ぎる。
――物質透過能力。
 ただの人間では相手出来るモノではないのだ。サーバントとは。
 それでもと新たな弾丸を放とうとした男へ、狼のサーバントが飛びかかる。
 ただ黙して立つだけの木に、鮮血が飛び散った。


●久遠ヶ原学園、斡旋所
「この中で暇と力が余っている方はいませんか?」
 久遠ヶ原学園に国家所属の撃退士が訪れていた。内容は仕事の手伝い、というよりも斡旋だという。
 といっても、彼は別の地区を担当するので、完全にこの件は久遠ヶ原学園の生徒任せとなる。危険な仕事ばかりが回ってくる国家所属の撃退士は数が少なく、常に手が足りないのだ。
「とある村にサーバントの群れが襲いかかっているようです。とはいっても、本気で村を滅ぼすつもりではなく、力の弱いモノを使っての先遣隊でしょうが」
 つまり、威力偵察。抵抗するようなら自分達の力を示して屈服させた上で支配する。先遣隊である以上、もし撃退士などに滅ぼされても構わない。そうなれば、そこに『敵がいる』のだと解るのだから。
 問題なのは。
「陣取っているのがどうもその村にとっての『神域』という場所らしく、どうも村の総力を上げてでも排除したいようですね。沽券というか、村の伝統を守るというべきか」
 古い村にありがちな傾向だ。だかこそ、今回は厄介なのだが。
 先日、サーバントへと向かった男性が一人殺されている。それで折れるどころか、報復にと村人達は蜂起しようとしている。無駄という事を知りつつも、もしかしたら‥‥と。
 素早く撃退するか、或いは説得してから向かわなければ、村人たちも戦闘に参加しようとするかもしれない。特に殺された男性の妻と子供の憤りは凄まじいものだという。
「任務としてはサーバント全ての撃退ですが、出来るだけ被害を出さないようにお願いします。敵は然程強くありませんが、戦闘に関して幾つか注意が」
 一つは山奥にある森に陣取り、しかも活動時間の夜にならないと現れないという。当然のように視界は悪く、地理を全く知らない状態では不意打ちをかけられるかもしれない。
 とはいっても、地図や森の様子を聞こうと村に寄れば村人がついてくるかもしれない訳だが‥‥。
 二つ目は、サーバントの習性。俊敏に動き、攻撃を一体が集中して攻撃を受けないよう、連携して移動しながら攻撃を加え続けるという。逆に言えばこちらも集中した被害を受けないという事だが、恐らく、長期戦となる。
「不慣れな土地と、村人の説得。面倒な仕事ですが、出来れば受けて頂きたいですね」
 受けるも受けないも自由。だが、もしも受けなければ公務員仕事宜しく、撃退士の派遣が遅れ、村人に更なる被害が出るかもしれない。
 そうなっては、後味が悪いだろう。青春に嫌な写真の記録など挟みたくないものだ。


解説

・まずは手堅く、シリアスな説得及び戦闘の依頼です。
・戦闘に関してはサーバントは五体。然程強くありません。が、夜の森という視界の悪い状態での戦闘となります。逆にサーバントは灯りなどなくともしっかりと見えるようです。
・木々は密集していますが、障害物にはならないと思って下さい。
・見知らぬ森に入る訳ですから、案内や地図がなければ当然迷う事もあるでしょう。迷っている最中に不意打ちをかけられる可能性もあります。
・そういった二つの対策を取る事も可能で、それが戦闘面では重要になります。
・また、村に立ち寄った場合は説得しなければ確実に村人がついてきます。その対策も必要でしょう。
・村に立ち寄らない場合でも、戦闘中に村人が乱入してくる可能性もあるのでご注意を。
・OPで出てきた国家公務員の撃退士は他の地区を優先して行動するらしく、依頼には一切関係・関与しませんので、そのつもりで。

●マスターより

初めまして、エリュシオンからMSとならせて頂きました燕之(つばめの)です。

初依頼としては純粋戦闘より、複数のギミックのある依頼の方が良いかと思いまして、説得及びに視界の悪い暗闇という状態での戦闘を用意させて頂きました。
後味の良いシナリオを目指すのでしたら、説得という事が重要となるシナリオです。が、成功自体はサーバントの撃破という事もお忘れなく。
解説でも言いましたが、国家所属の撃退士は数が少なく、手が足りないのでopに出てくる撃退士は戦闘や説得に参加しません。別の地域にいきます。

見事、サーバントを撃退し、これ以上の被害の出ない成功を遂げられる事を祈っています。


現在の参加キャラクター


プレイング

撃退士・狼ヶ峰 翼(ja0077)
阿修羅
今回が初任務だが、神様からの罰かこりゃ。
親の敵討ちか、俺は考えた事もなかった。
交渉事は苦手だから、説得は他の生徒に任せる。
ランタンを購入申請し、山に入った時は常に点けておく。

戦闘時。
A班を担当。
ランタンは腰に固定。
周囲の仲間と離れすぎないように敵の攻撃を回避、受けつつ反撃の隙を見つける。
獅子道、姫川、逢染をカバーしながら連携を意識。
班員の背中、頭上を跳び交う敵を撃ち、確実に敵の数と速度を削ぎ、戦いやすい環境を作る。
「好きに暴れろ!舞台は俺が組んでやる!!」
タイミングは敵が高く跳んだ時、武器の無い胴体に銃を撃ち込む。

親玉戦は回避を最優先。
攻撃に関しては足を優先的に狙い機動力を削ぐ。
ショートレンジに入られたら即身を引き、膝蹴りで抵抗。
噛み付こうと来た時は、こっちも突進し口の中に銃身を突っ込み撃つ。

撃退士・天羽 マヤ(ja0134)
鬼道忍軍
*準備
電気ランタンを購入し、腰に提げて使います

*行動
まずは村に行って挨拶と説得ですねっ。説得には参加しませんが、挨拶はしておきますよー
探索中は、奇襲に備えて側面と背面には常に気を配っておきます。また、探索にはペンライトとランタンを使いますが、戦闘中はペンライトを捨て、両手を使えるようにしますっ
戦闘が始まったら、紫園路 一輝(ja3602)さん、鳳・美空(ja2032)さんと班を作り、班員の行動に合わせて後方からのサポート・撹乱を行います
余裕があればですけど、リーダー格の動きを観察して、強打の事前動作などがないか調べますっ

*戦闘
味方の隙を埋めるようにピストルで援護射撃をしていきます。もちろん、味方が射線にはいらないよう、誤射に気を付けた立ち回りを意識します
敵に狙われた時は敵の攻撃を引きつけてから回避、攻撃後の隙を狙って反撃ですっ
戦闘中の味方や村人さんを狙っている敵に牽制射撃をして、意識をこちらに向けさせます

撃退士・巌瀬 紘司(ja0207)
アストラルヴァンガード
撃退士は、力なき者を護る存在であるべきだ。…生命だけでなく、心や生活そのものも。


戦闘はA班所属。

情報共有の為、確認できた敵について報告し合うことを薦めたい。
どの班寄りにいるか、又は向かったかについて『(●班から)▲班に(へ)■体』、のように簡潔に。
断片的な情報でも、継続的に行えば現在位置を予測する助けになるだろう。

相手の移動速度は観察し、頭に入れておく。
無理のない程度に引き付け、相手の進行方向から後方に向け薙ぎ払う。
攻撃直後は、反撃や後続に備え受けの構えを。
他の者を狙った相手には、対峙者の行動を阻害しないよう突きで攻撃補助を行う。

回復も限りある故、重傷者や一般人を優先することになる。本人や周囲の者から申告を頼みたい。
本当に必要な時に備え、1回は温存しておきたいが…。

経費でペンライトを使用。
左手首に固定し、暗がりを指し示す際にも利用する。


撃退後、犠牲者の遺品などがないか軽く調べてみるか。

撃退士・姫川 翔(ja0277)
ルインズブレイド
◆目的
敵の殲滅

◆出発→村
山に入る許可と、地図等の情報を得る為、村に立ち寄る。
「…こんにちは」
自分達の素性や目的はきちんと説明。

>村人へ
…立ち向かっても敵わないのは…先日、奴等に挑んだ彼が教えてくれた、筈。

サーバントは、僕達に任せて。
…此処で、彼が守ろうとしたものを。守る戦いを…して、下さいませんか?

この村も、あの森も。守りたい、大切なものは…皆、同じ…です、よね。
僕達は、天魔を倒す事はできる、けれど。
山神様や、森。この村を、守る事ができるのは…貴方達にしか、できない事。だから。
…亡くなった彼を弔い、墓を守るのも…貴方達、で。

「…奴等は、僕らが必ず仕留めます、から」
紘司と共に頭下げ。
村の事情に…想いに踏み込んでしまって、ごめんなさい。
でも。どうか…生きて。

◆森→戦闘
A班

他班を攻撃に回り易くさせる為。敵が其方側に回避するよう、攻撃にて誘導。
当たらなくていい。奴等の足並みを、少しでも…乱したい。

撃退士・東雲 桃華(ja0319)
阿修羅
台詞のアドリブ大歓迎

【心情】
「勇気と無謀は別物よ、貴方達は少し頭を冷やした方がいいわ。無駄に犠牲を出したくなければ、ね」
(神様、か…八百万を信仰するのは自由だけれど、これじゃまるで妄信…いえ、狂信者ね)

【護衛】
光源として腰に提げても阻害されない小型の電気ランタンを用意

班分けは護衛担当
「半奈先輩が一緒で心強いわ、頼りにしてますよ…先輩?」『からかうように微笑み掛け』

護衛対象の有無で行動を変更
○護衛対象有り
基本は対象を中央に据えたボックス陣形
警戒は他班に任せ護衛を最優先

護衛対象の動きも要警戒
飛び出す等の危険行動を察知次第、組伏し制止する

○護衛無しの場合
行動中の最優先事項は村人の乱入の警戒、阻止
仲間以外の光源を見つけた際は問答無用で確保し護衛対象として組み込む

【戦闘】
得物のリーチを生かした牽制メインの立ち回り
敵の攻撃は極力槍で受け、後ろに通さないようにする

半奈先輩が崩した敵に追撃を掛け撃破を狙う

撃退士・エシュリー アロール(ja0387)
鬼道忍軍
◆説得
村人が危険に身を晒さないようにする
最も納得しなさそうな遺族の説得に、他の村人の協力が得られるようにする

まずは半奈について村長等に挨拶。以後村内で立ち回りやすく
その後、地図や地形についての情報収集を行いながら、同時に遺族への説得に協力してもらえる人がいないかを探す。その際は、こちらの事情・状況もきっちり説明し、その上で出来る限り安全にこの事件を解決したいのだと思っていることをしっかりと伝える

◆戦闘
配置はB班
電気ランタンを手に持つ

道中は死角をカバーしつつ村で得た情報を頼りに怪しそうな場所を重点的に警戒
音や周辺の痕跡なども頼りにしつつ敵を捜索

敵が仕掛けてきたら他のB班の人と互いに死角をカバー
攻撃を待って見極めて回避しつつ動きが判りやすくなっているところへ攻撃を叩き込んでいく

移動はA班を中心に可能な限り他班にすぐにフォローにいける範囲で
他の人が攻撃された時にも敵に隙があれば見逃さずに狙っていく

撃退士・柳津半奈(ja0535)
ルインズブレイド
◆説得
戦闘前に村へ立ち寄ります
村の方々には話を通し
納得した上で村に残って頂きたく思います

私は村の神事を司る方にお会いし
私達を正式な神域の祓い役に任じて頂けないか伺います

宗教的に必要な儀式があれば従い、仲間にもそれを要請します
また神域の祓い役は撃退士が務める旨、祭司さんからも村の皆様に説明して頂きます

仲間の説得も含め失敗した場合に限り
最後に『一名のみ同行を受け入れる代わりに他の者は村に残る』譲歩案を示します

◆戦闘
東雲さん達と共に村人同行時の護衛班として行動
A班を中心に仲間と離れぬ様動き
互いに守り合います

東雲さんの言葉に微かに苦笑し
「あら…これはいよいよもって、無様な戦は出来ませんね」

護衛対象が居る場合は班員で囲み、身を盾にする覚悟で守ります
他の村人が乱入した場合も、近づき護衛しつつ戦わぬ様説得します
戦いを見て参戦が逆効果であると悟って貰えればと

護衛時は自分から攻撃は仕掛けず、迎撃に専念します

撃退士・冴牙 蒼士(ja1278)
ルインズブレイド
基本的に周囲に合わせて行動。【B班所属】
説得には参加せず、戦闘のみに参加。出発前にランタンを申請。戦闘中は腰につるしておく。

<戦闘>
小柄な体格を活かして回避重視で肉薄、からのファルシオンで攻撃
相手の攻撃をかわせなかった場合は飛ばされた方向に跳び、わずかでも威力を殺す。
回避時に縦の跳躍を利用したり、180度縦回転などアクロバティックな機動を織り交ぜる。

勝てそうならそのまま、押されるようなら、回避は軽くいなす程度で多少当たろうとも足を止め、重いいちげきを叩き込む。

<終了後>
帰還時間ギリギリまで残り、『学園側』の人間には気づかれないように旅団【カラード】の存在を伝える。
これが、依頼に入った目的でもある

カラードの名前は伏せておいてください

撃退士・獅子堂虎鉄(ja1375)
ルインズブレイド
参加者全員で村へ訪れ、神域に足を踏み入れる事を踏まえた上で挨拶をするぞ
村人の説得は説得班に任せるからな

<作戦>
全員で神域へ向かう
説得の結果次第では村人1人を同行させる
神域までは全員で死角をカバーする形で移動
敵の奇襲が予想されるので予め警戒しておく

班分けは戦闘班ABCと村人の護衛と不意の事態の対処をする護衛班に分かれるぞ
おいらはA班所属

戦闘はA班を中心に班内互いの死角のカバーと攻撃時のフォロー及びグループ同士の援護が行える距離で動く事を前提とする
各自の即時判断を活かすため固まり過ぎない
出過ぎた班を抑止
襲われている班をフォロー

戦闘時は刀での迎撃を優先
同行者がいる場合は、護衛班に近づく敵に弓での攻撃を最優先
光源にLED電気ランタンを購入
移動時は手で提げる
戦闘時は腰にさげておく
敵の数残り3匹で逃がさないようにすぐ包囲
敵の掃討を第一に動く
残HP3割程度で巌瀬殿に回復を要求
討伐後は村へ戻って報告するぞ

撃退士・逢染 シズク(ja1624)
ルインズブレイド
>説得後も同行を希望される方がいたら
力の有無を問わず、仇を討ちたい気持ちは燻っているはず
ただ「護衛する」だけでは、村の方もご自身が「ただの負担」と感じて心苦しいかもしれない
だから…
「共に往きましょう。私達には地の利がありません」
「彼らを撃退する為に…どうか、お力を貸して下さい」
一緒に目的を遂げましょうと告げ
助力頂く代わりに守る、という形で護衛に
※戦闘は任せて頂くようお願い

>森の入口
所持してきた花束を捧げ、手を合わせます
「どうか、見ていて下さい」
必ず、撃退してみせます
村の人達に、これ以上の苦しみが降りかからないようにする為に。
残されることの絶望は…十分、知りすぎているから

>戦闘
【護衛】
村人の傍から離れません
戦闘は他班に任せ、村人を護衛班で囲んで守ります
スキル感知を活かして敵の気配や周辺を警戒
剣を構え牽制&敵の攻撃は剣で受けるか身を盾にしてでも抑える
「私は…もう、誰にも傷ついてほしくない…!」

撃退士・鳳・美空(ja2032)
ルインズブレイド
まずは村に赴いて説得を行いたいと思います。

かの村の崇める神様がどういった神様でいらっしゃるのかを知りたいですが、そんな時間は無いですよね…
村に行ったらお話を聞いていただきたい旨を、自分なりの礼儀がどれだけ伝わるか判らないと言う事を念頭に置いて、それでも自分なりに精一杯の誠意を込めて伝えたいと思います。

「礼儀を弁えぬ無礼をお許し下さい。私達は決して皆様の神様を冒涜に来た訳では無い事を解って欲しいのです」
相手にとって何が大切なのか、焦らずに話して掴んでいき補足しながら、神様を汚す敵を討滅に来た事を告げます。
そして敵は危険である為に任せて欲しい、と。

戦闘班としてはC班に所属します。
前衛の1人として近づいてきた敵に腰に吊るした刀の柄に手をかけて足で境界線を引きます。
それを一歩でも敵が越えた瞬間に居合いで抜き放ち斬撃を行い切り伏せます。
「鳳流の太刀、貴方達サーヴァントに遅れをとるものではありません」

撃退士・フィア(ja2035)
阿修羅
戦闘班としてはB班に入って、近づく敵に対応。
迷わない様に人についていく。

足音と気配を常に消しながら行き、村人に対しては「危険…付いて来ない方がいい…です」と一度だけ言って後は気にしない。
危ないけれど、その分迅速に敵を倒してしまおうと思いながら、後は何も言わない。
襲われていたりしたらクナイを投げて助けるようにはする。

B班で前衛を努めクナイで牽制し挑発、近づいてくるなら間合いを詰め急所目掛け攻撃。
地形次第で障害物を利用する様に移動しながら、自身への攻撃はなるべく回避してその分敵に踏み込んで、小柄な身体を懐にもぐりこませながら密着するような位置でクナイを振るい攻撃をかける。

単独での戦闘を好むけれど、敵の数も多い事から効率を無視せずに、B班の中で連携して戦う。
自分の得意手は撹乱と攻撃と考えて、ステップを踏んで左右に動いて撹乱、近づいて手数を多くして畳み掛ける。

敵ボスには死角に回りクナイを投げる。

撃退士・アレクシア・エンフィールド(ja3291)
鬼道忍軍
・事前準備
安物の電池式LEDランタン持ち込み。

・行動
B班所属、アロールと組。説得には不干渉。護衛に関してもそれ専用の班に一任。
(基本的な行動は他と同様なのでそちらを参照の事)

戦闘時はA班を軸(囮)に戦闘を展開。囲む様に、また逃さぬ様に。
ランタンは極力邪魔にならない、剣を持つ右手とは逆の左腰に取り付け。


「獣風情が。貴様等は此処で散れ」

「この身で天魔と争うは初めてだが――成程、悪くない」

・心情
弱者の保護もまた騎士道にはあれど、己から危険へと踏み込むのなら護る道理も無しだ。
身より心に重きを置くなら、心に殉じて死ねば良い。
そして――そうした魂の在り様でなければ護る価値さえない塵だ。
故に易く説得に絆されないでくれ。手前勝手な頼る言葉など吐いてくれるなよ。
…その場で、殺したくなるではないか。

余り人間を甘やかすなよと、私は思うがね。

撃退士・紫園路 一輝(ja3602)
阿修羅
説得の際はうる覚えの佐賀弁を使って交渉します
どう講義されても日が明けるまでは自分達の好きな様にさせてくれと頼みます。
それが出来なければ勝手に動いてくださいと。
「そいぎ!(それなら)日が明けるまでは大人しくしていて下さい、今日中に終わらせてみせるので」

戦闘では常に後手に回っていると教室の時から考えています。
敵は山の地形を完全に把握していてそれも夜。いくらこちらが地形を理解しても細かな所は分からない把握はしていない、それに敵の型が狼なら尚悪い野生と同じ習性を持つなら常に僕らは監視されていて奇襲の機会を覗っていると思っているので一輝だけは皆と違い後手に回っての戦闘に考えていた。不安を振り払う様に最悪の事態の事を考え一つ一つの対応策を一人で考えて、頭の中で整理の戦闘/自費で行けるなら早朝から現場に入り山の地形を体で無理やり覚える/明かりは携帯電話のライト機能蹴りが主なので戦闘に問題なし。



リプレイ本文

 ひっそりと佇むような村だった。
 交渉役の撃退士達は好奇と奇異の視線に晒されながら、自分達の意見を貫いていた。
 初めての任務。
 緊張を覚えながら、それでもと。
 新たな被害者を出したくはない。
 それは撃退士の皆の共通した思いだったのだろう。サーバントの脅威を伝えた所で、交渉相手が口を開く。
「さて、久遠ヶ原学園の学生‥‥といいましたかな」
 交渉にあたるに向け、柳津半奈(ja0535)は神事を司る人を、エシュリー アロール(ja0387)は村の長という立場ある人間を交渉相手と想定していた。
 それが功をそうした。この村では村長が神事を司るのが習わしだったらしく、交渉に対して最も重要な位置にある相手との話し合いに持ち込む事が出来たのだ。複数の相手を説得するより、力のある一人を説得した方が容易いケースはある。今回はまさにそれだった。
 不満を持つものは、村人にもやはり多くいたけれども。
 巌瀬 紘司(ja0207)は思うのだ。弱き人の命だけではなく、生活も護るのが撃退士だろうと。このような爆発しそうな敵意で狭く感じる村は、正常な日々ではない。だからだろうか。片膝を付き、頭を下げるその姿には誠意しか感じられなかった。
「お願いします。サーバント撃退の為、神域へと立ち入る事と、貴方がたの知識、預けて頂けませんでしょうか?」
「‥‥…‥」
 村長の反応は鈍く、そして苦さを感じさせるものだった。けれども、それが皮切りとなる。続けたのは、鳳・美空(ja2032)だ。
「礼儀を弁えぬ無礼をお許し下さい。私達は決して皆様の神様を冒涜に来た訳では無い事を解って欲しいのです」
 焦らず、何が大切であるのか。自分たちは神を穢すものではないと、美空は言葉に込めていく。本当に大切なのは。
「氏子が徒らに争い命を散らす事を、あの山に御座す神様は望むでしょうか」
「この村も、あの森も守りたい‥‥大切なものはみんな同じで、でも、一番大切なのは命で‥‥生きる事、ですよね?」
 継がれていく柳津と姫川 翔(ja0277)の声。
 もっとも大切なものは、人の命であろうと。
 学生でありながら、命を懸ける事にもなる撃退士を目指すものだからこその、生命の重さを知る声色だった。
「‥‥だが、お前たちは余所者だ。余所者をこの村の神域へ入れる事は、許されない」
 それでも、村長の対応は堅い。
 風習に縛られて、それで生きてきたものでもあるのだろう。咄嗟に人を、部外者を頼り信じる事が出来ないのかもしれない。苦しそうな顔をしている。
 実際、外のものを排除しよう、或いは絶対に受け入れないというのが古い村の習慣には強く根付いているものだ。
 村長が悩み、葛藤している最中に、美空が切り込んだ。
「皆さんの神様は犠牲を快く思わない筈です。だって皆さんはその神様を慕ってここにいるんですよね? そんな思われている方が失う事を悲しまない事はないと思うのです」
 失う、という事。死んだ男の事を思ったのか、村長の顔が陰る。その視線の先には、逢染 シズク(ja1624)の手にした花束。――死んだ男への手向けの花。
「‥‥きっと、暗い森で敵に囲まれ、傷つけられ、怖かったと思います。その思いは私では解らないでしょうが、同じ思いをこれ以上、誰かに味わってほしくないんです」
「絶対に、これ以上の被害は出させませんから‥‥奴らは、僕らが仕留めますから」
 優しくも強い思いで逢染は言い、誰も死なせないと、天魔への敵意とともに強く姫川が続けた。
 そして決定打となる、美空の一言。
「私達は必ず貴方方の敵を、誰一人失わずに倒します。ここはお任せ願えませんか?」
「私も」
 村長がぽつりと言葉を零した。
「村の誰かが、これ以上犠牲となるのは好まないよ‥…」
 例え信仰があったとしても、知っている誰かを失うのは辛い事。辛かったからこそ、怒り、蜂起しようと村人はしていたのかもしれない。
 逢染の呼吸に合わせて、手向けの花が揺れる。それを村長はじっとみつめていた。その花束の中に、死んだ男の顔が見えたかのように。
「これは無礼な発言かもしれませんが、どうかお許し下さい。私たちを正式な聖域の祓い人に任命しては頂けませんか? 必要な儀式などがあればそれに従います」
 その柳津の提案に驚愕の表情を浮かべる村長。
「ええ。神域ついて知らぬ者が立ち入るのが許せないのでしたら、時間は限られますが話は聞きましょう」
 続けた巌瀬の言葉に僅かな怒りを村長は浮かべた。交渉で出してはいけいない台詞だったかと、冷や汗が落ちる。
「それはできない‥‥だが、正式ではなく、臨時の使いの役としてはお願いするとしよう。その方が村人も納得するだろう。ただし、条件がある」
 来たか、と肩を強張らせる。何かしら条件をつけられるだろう、というのは皆の予想だった。村人の同伴、もしかしたら祭司でもあるこの村長が同伴するのだろうか。そう思っている間に、指が三つ立てられる。
「一つは、聖域にある祠の近くにある石碑は決して読まない事。君たちは私たちを救ってくれるかもしれないが、部外者には知られたくない『秘』がこの村にはあるのだ。二つは、聖域を穢し荒らされたものとして、その祠に酒と米を奉納して貰いたい」
 そして最後の一つをいう前に、村長は深くため息をついた。長い、疲れのこもったもの。
「‥…殺された男を、村に戻してやってくれないか。まだ、葬儀すらまともにしてやれてないのだ。あれの妻が、遺体もないのだと、悲しんでいる」
「‥‥ええ。私達に出来る事でしたら」
 元より譲歩案を受け入れる姿勢であり、相手の土地に踏み入る意識と、誠意の籠った説得だった事が幸いしたのだろう。荒事はなく、ただ、これ以上の犠牲を出さない為の話し合いとなった。もしも、これが交渉のターゲットを絞らなかった場合、人数の多さで感情論になっていたかもしれない。
 村長はこうべを垂れる。無力感と心的疲労から解放されたように。
「村人には、私から話をしよう。神社からも、氏子達へという形で伝わるようにする」
「そいぎ! 日が明けるまでは大人しくしていて下さい、今日中に終わらせてみせるので」
 僅かに佐賀の方言の混じった紫園路 一輝(ja3602)の言葉に、苦笑しながら村長は頼む、と付け加えた。
 その花を、あの男の妻にも見せてやってくれとも。

 交渉は纏り、一晩だけ神域へと入る事が決まった。
 夕暮れまで神域の地理について聞き込みを行ったエシュリー アロール、天羽 マヤ(ja0134)は村人から渡された地図と睨むように見つめながら、何処か対照的な雰囲気だった。エシュリーは山奥に現れたサーバントに興味津々といった様子だったが、マヤは逆に「出来ればこの土地の歴史や伝承を調べたかったのに」と肩を落としている。初めての任務でも、気負いはない様子だ。
 丹念に武器や持ち込むLEDランタンをチェックするアレクシア・エンフィールド(ja3291)は孤高の姿で、近寄りがたい何かを感じさせている。が、彼女を見つめる一人のまだ幼い少年。
「どうした、お前も聖域に入るのは反対か? 騎士道精神こそ持つが、私は自ら危険へ踏み込むのなら、守る道理はないと考えているが」
 鋭い声にも動じず、じっ、としている少年。ふと、狼ヶ峰 翼(ja0077)が気付いたのか、声をかける。
「お前、もしかして‥…犠牲者の、子供か?」
 こくりと頷く目には、暗く、けれどはっきりとして怒りと敵意があった。仇を討ちたい、できるのならこの手でと。
「そうか。すげぇよ、お前は」
 狼ヶ峰はその少年の頭を、くしゃくしゃと撫でながら口にする。
「逃げ出した俺とは違う。でも、今の俺にはこの力があるんだ。奴らと戦うためには、この力が必要なんだよ」
 熱の籠った息と共に、狼ヶ峰が光纏を発動させる。瞬間、村人の視線が彼に向かう。
「そうね。槍は普段使わないから、鈍ってなければ良いのだけれど」
 同様に道具の点検をしていた東雲 桃華(ja0319)がアウルを発動。黒い花びら状の光纏を散らしながら繰り出されるのは隙のない演武。常人の身体能力を超え始めた、新米とはいえ撃退士の技だった。
 これが、天魔と戦う力。だから。
「お前ら、無茶は許さないぞっ。命を粗末にするのは絶対にダメだ。ここは、俺たち撃退士に任せてくれ!」
 不信感を払拭するような光と、獅子堂虎鉄(ja1375)の一声。
 覇気を込めた響き。村人達の反応に敵意はなく、どうやら、今晩だけは確実に大人しくしてくれるだろう。地理を教わった際にも、余所余所しさはあっても反発まではなかった。
 乱入も、ないだろう。護衛も必要なく、十分に戦える。
 日はもうすぐ暮れる。反して、不安の闇は薄れていく。そんな気がしていた。
 



 神域への侵入は予定通り夜となった。
 自分で用意した花を逢染は入り口にそっと添え、祈る。これからの無事を、そして犠牲となった彼が迷わずに良き場所へと逝けるように。
 考えていた通り、厳しい道のりだった。
 が、想定していた護衛はおらず、ほぼ全員が照明を用意していた為、夜に閉ざされた暗い視界でも、然程の問題はなかった。これがなければ、と思うとぞっとするが。
 木の根が張り巡らされた、不慣れな山の道を歩いていく。夜闇に、ばさばさと風に揺れて音を立てる木の葉の音に神経を削られながら。何処からサーバントは来る。感知能力を持つメンバーは気を張り詰めさせ、周囲の気配を探ろうとしていた。
 冴牙 蒼士(ja1278)もそんな一人だった。儀礼用の制服を着こみ、腰にランタンを吊るして気配を探っていた。
 まだ、か。
 何時襲われるだろうか。それに対応出来るだろうか。地理は教わり、照明も用意し、班は念の為に三つに分けた。それでも、緊張は続いていた。
 それが終わったのは、ふとした瞬間。
 自分達とへ向かってくる、木の葉を踏みしめる音。獣の息遣い。しじまの降りる中で、それらははっきりと感じ取れた。
「来た」
 表情は乏しくも、呟いて苦無を構えるフィア(ja2035)。他のメンバーもそれぞれ武器を構え、正確な音の位置と距離を測ろうとする。
「あっちかっ。向こうは固まっている、こっちも固まるぞ!」
 獅子堂の叫びに応じて陣形を展開する撃退士達。照明を各々固定し、己の武器を構え、迎撃の姿勢を取る。想定していた護衛対象はいない。その動きはスムーズであり、無駄がなかった。
「半奈先輩が一緒で心強いわ、頼りにしてますよ‥‥先輩?」
「あら‥‥これはいよいよもって、無様な戦は出来ませんね」
 東雲と柳津の会話がそんな言葉を発せられたのは、思っていたよりも余裕かできた為か、或いは緊張の裏返しか。
「うーん、骨を投げたらそっちに夢中になるとか、だったら楽なんですけどねー」
「任務了解‥‥交戦、開始‥‥」
 感情の籠らない、冷たい冴牙の言葉が戦闘の開始を告げる。


「機先を、制します」
 照明の照らす橙の輪の中にサーバントが入った瞬間、メンバーで最も早いフィアの苦無が投擲される。狙いは違わずサーパントの腹部へと刺さり、先頭を走っていた一匹の動きが鈍り、他のサーバントの動きも乱れた。
「続くぞ!」
「人間の積み重ねた歴史をわがもの顔で乗っ取ろうとするのは、ちょっと感心しないですねー」
 天使への敵意を強く抱く狼ヶ峰と、今はっきりと人類の敵を認識したマヤのビストルが火を吹く。二つの弾丸は動きの止まった狼の肉を穿ち、甲高い悲鳴が山に響いた。
「そこだ!」
 三連撃で瀕死となったサーバントに突き刺さった獅子堂の弓矢がトドメとなり、まず一匹を仕留める。文字通り、奇襲され不意打ちを受けるどころか、機先を制した、のだが。
「残り、七体か‥‥っ‥」
 今のがボスであれば楽だった、などとは甘い考えだとアレクシアは自らを制し、浮かれる事なくファルシオンを構える。油断は微塵もなかったつもりだ。
 だが
「は、早いっ!?」
 狼型のサーバントは紫園路の言葉通り、速力に優れ、二度目の射撃を許す事なく撃退士達に接近。気が付けば、擦れ違い様に前足のアームブレードで斬り付けられていた。
 刃の光は七閃。続いて走った血も七筋。
 ただ早いだけではなく、自らの属性がカオス寄りであるものが多い構成は、撃退士達へ、そのまま受けるダメージへと繋がる。
 尤も。
「可愛くないわんちゃん達ね。でも、そちらの攻撃が柳津というのは、元からわかっているわよ。それに!」
 東雲の手繰る槍が刺突を繰り出し、確実な手応えと共にサーバントを貫く。
「私達が避けづらいって事は、わんちゃん達も避け辛いのでしょう?」
 本来は牽制のつもりだった一撃が、確実な一撃となって相手を捉えている。互いに避け辛い攻撃が交わされるというのなら、それはつまり。
「削りあい、ですかっ‥‥」
 傷のせいか、震える身体に喝を入れ、胴回し蹴りをサーバントの顔面に叩き込む紫園路。各々初手で一撃を受けたものの、即座へと接近攻撃組も反撃へと移る。
「回数に限りはあるが、回復が必要になったものは言ってくれ!」
 削り合いとなってしまう戦場で、傷を癒す事の出来る巌瀬の存在は心強い。彼はショートスピアを薙ぎ払うと、受けの姿勢へと回る。攻防共に、味方を支援しようする構えだ。
「鳳流の太刀、貴方達サーバントに遅れをとるものではありません」
「この身で天魔と争うは初めてだが――成程、悪くない」
 共に裂傷を負いながらも、より一層の闘志を燃やして反撃の刃を繰り出すアレクシオと美空。鋭い連撃を仕掛けるものの、それぞれ対象とするものが高速で動く為、最初の一匹からは的を絞れていない。
「となると、死角のフォローだ」
「ふふ、言われなくても解っているわよ?」
 獅子堂が指示を飛ばすまでもなく、エシュリーは他のメンバーの死角をフォローするように足を滑らせると、そのまま姫川へと回り込もうとしていたサーバントに迎撃の一撃を見舞う。この動きエシュリーの動きで、簡単に背後を取られる事はなくなり。
「絶対に、仕留めるって‥‥約束、したから」
 姫川も他のメンバーのフォローとなるよう、ツーハンデッドソードを薙ぎ払い、敵の動きを誘導しようとする。巨大な剣を躱すには大きな動作が必要となり、サーバントが体勢を崩した所に、逆手に持たれたフイアの苦無の刃が奔る。
 牽制と迎撃。フォローと連携。的を絞れず、走り廻るサーバントのアームブレードに身を斬られながらも、撃退士達は己の武器を振い続ける。光源は完全に確保され、視界は十分。それでも的を絞り、連続して集中攻撃出来ないのは、純粋な速さだけではサーバント達が上という事なのかもしれない。
 消耗はどちらが大きい?
 どちらが、先に倒れる?
 単純な数では十四名という撃退士達が多い。が、サーバントの一撃一撃の鋭さは、肉を通して背筋が凍えるものがある。それでも止まらない。誰一人、刃を振う手も、トリガーを絞る指も、回避の足捌きも、止めはしない。
「好きに暴れろ! 舞台は俺が組んでやる!!」
 狼ヶ峰が連続して絞るトリガー。マズルフラッシュ。マヤも射線に気をつけながら、連続して援護射撃を放ち続ける。
 連携は見事に働き続けていた。ボス格のサーバントの力を貯めて繰り出された刃を避けきれず、負傷した東雲も即座に巌瀬に治療される。
 そして、ついに。
「ラァァァァァァァァ!!!!」
 冴牙が気合いと共に飛び上がり、サーバントの一撃を回避。そのままカウンターで叩き込まれたフォルシオンがサーバントの首を跳ねて、二体目を仕留める。残り、六。
 回りを巡るように走り続けるサーバントとの攻防は、刃同士の激しい舞踏のようにも見えた。血の雫は無数に飛び散り続け、刃で裂かれた大気の悲鳴も止まらない。だが。
「‥っ‥…よ、よしっ。相手の動きも鈍ってきました!」
 敵の、特にボス格となるサーバントの動きを見切ろうとしていたマヤの一声で、全員の士気が上がる。傷を負い、血に塗れた身体も、再び軽くなる。勝てる、その意思が疲労で鈍り始めていた美空の居合に鋭さを戻させた。
「三体目!」
 居合からの袈裟斬りで、どぅっ、と三体目のサーバントが地に沈む。
「競うものではないが、私も首級を上げさせて貰おう」
 冷淡な声とは裏腹に、苛烈なまでの連撃を繰り出したアレシクア。速度と手数を重視した連閃が静まった時には、なます切りにされたサーバントが転がっている。
「一気に楽になってきましたね!」
 ボスらしき一体へと蹴りを叩き込みながらの紫園路。元々、護衛の為に迎撃を主として戦法を立てていたのがよい方向へと転がっていたのだ。的を絞れないのなら、攻撃してきたものを順次削っていけば良い。ましてや、こちらは回復能力を持つものもいるのだ。
更に、個人で戦うのではなく、互いが互いの援護やフォローを優先する戦法を取っていた。他人の隙を埋め、敵の動きを誘導することで守り、そして他人が作った隙を迎撃の姿勢で貫いていく。
 各自がフォローと牽制をしあうチームワークがあれば、均衡は少しずつ撃退士達へと傾いていく。
「気を、抜かないで」
 淡々としたまま左右へとステップを踏み、苦無を滑らせるフィア。
「まだまだ、気を抜かないで下さい」
「もちろん、半奈先輩」
「隙だらけだぞ!」
「…一匹も、逃がさない。よ」
 柳津が迎撃で崩した一体を東雲が槍で芯ごと貫けば、獅子堂の居合斬りと姫川の上段からの斬りおろしが別の一体を両断する。
 これで、残り三体。つまり。
「逃がすなっ、包囲しろ!」
 獅子堂の声と共に、今まで固まって迎撃に回っていたメンバーが、今度は残る三体を包囲する。浅くない傷は痛み、熱を帯びている。だが、一匹たりとも逃がすわけにはいかないのだ。
 逃走の機を逃し、躊躇した一匹の腹部へと狼ヶ峰の弾丸が撃ち込まれる。
「腹にも刃が必要だったな‥‥生やしてみるか? いや、もう遅いか」
 紫煙を上げる銃を構えたまま、告げる。
「はぁぁっ!」
 続いたのは紫園路の蹴撃。下から蹴り上げるようなローキックは、サーバントの顎を打ち抜き、吹き飛ばす。宙に浮いた身を、逢染のツーハンデッドソードの剣先が捉えた。
「‥‥どうか、見ていて下さい」
 その呟きは、誰に、そして何を願って囁かれたのだろう。
 最後に自分だけになったボス格のサーバントは、それでも消沈しない凶暴性を以て、勢いよくエシュリーの喉笛へと噛み付こうとする。だが、それを遮ったのはマヤの連続発砲による援護射撃。面として撃ち込まれた弾丸の雨の前に怯んだ、最後の一匹。
「さすがに、これだけ見れば強打を止めるタイミングだって見えてきますよー」
 見切った事が誇らしいのか、軽やかにピストルの弾倉を入れ替えるマヤ。
 その姿を睨みつけようとした瞬間、サーバントの体勢が揺らいだ。フィアがいつの間にかボスの死角へと回り込み、苦無を投げつけたのだ。元より傷だらけだった身体が、力を失う。
「‥‥……これで、終わり」
 絶好の好機を作ったにも関わらず、淡々とした間々に呟くフィア。
「好機は逃さない、これで沈みなさいっ!」
「逃がさないと‥‥言った」
「獣風情が。貴様等は此処で散れ」
「その悪虐非道、断じて許せません。故に、ここに討ちます」
 四方から迫る刃。恐怖で動けず、最後のサーバントが散る。かつて殺した男と同じように、木の幹に血を吹き掛け。理不尽に。無慈悲に。
 それが、長い闘いの最後だった。




「私達は、村の期待に応える事は出来たのでしょうか」
 頼まれていた米と酒を祠に奉納し、男の遺体と遺留品を大きな袋の中に回収した後、逢染はぽつりと呟いた。
 誰にも傷ついて欲しくないと願い、そして男の死を悼んだ少女の零した何かだったのかもしれない。それに応じたのは。
「これ以上犠牲を出したくなかった。そして、私達は無事にそれが出来たわ」
 戦闘の疲れを滲ませながら、エシュリー。それに続くのは姫川。
「森も、できるだけ荒らさないように、したし‥‥」
 ふ、と柳津は一息を入れる。
「国家より賜った撃退士の名と責にかけて、村人の皆様を護る事は、出来ましたね」
「勇気と無謀は違うわ。それをはき違えていた村人もいたようだけれど、無事に済んで良かったわね」
 口にした後に東雲は思う。八百万の神を信仰している地域、だが、あの熱は狂信の類だったのではないか。そんな事を思いながら、空を見上げた。空はなかった。枝葉が茂り、すべてを隠している。
 この村にあったのは、何なのだろう。
 けれど確実なのはただ一つ。新たな犠牲者を出す事なく、この事件を収める事が出来たという事。
「被害を出さない為の、組織でもある」
 冴牙は何かを残したそうにしながら、口にした。
「少なくとも、私達が神を穢すものではないとわかってもらえたでしょうし」
「そうだな。あれは威力偵察なのだから、次があるかもしれない。次は、被害が出る前に報告して欲しい、そう願い、帰りに村人達に言っておこう」
 巌瀬が言葉を受け取る。確かに犠牲となった男の思いは狂信ではあったのかもしれない。それに続く蜂起の熱もそうなのかもしれない。
 それでも、助けられるものを助けないのは、間違っている。
 山は、再び静けさを取り戻していた。


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天羽 マヤ(ja0134)|高等部2年2組|女|鬼道
最終発言日時:2011年11月24日 22:42
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宝井正博(jz0036)|教師0組|男|一般
最終発言日時:2011年11月19日 08:47








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