――久遠ヶ原学園
秋も終わりを告げる頃。
外に出ると肌寒い風が頬をなでる時期だが、久遠ヶ原学園からは今日も賑やかな声が聞こえていた。
※※※
それは、窓越しに温かな日差しをうける中、ある教室での一幕。
「それじゃあ、これから温水プールで有名な施設の警備を兼ねたリゾート地観光の計画に入るぞー」
教卓の横に立ち、目の前の生徒達に声高に話す女性職員が1人。昼食も食べ終わり、本来なら眠気も襲ってくる頃だが、机に座る生徒達は女職員の一言にピクリと耳を傾けた。
(『リゾート‥‥?』)
確かに聞こえた単語を頭の中で重複しながら、職員から配られた資料に目を通す生徒。
さっと上から下に目線を流し終える僅かな間――その後、そこには数十分前の昼休み時の活気が取り戻されていた。
「みんなで温水プール!? マジかよ、先生ありがとーー!」
「水着‥‥買いに行かなきゃ」
春だろうと秋だろうと、撃退士である以上、忙しさは常に付き纏うものだ。特訓に励む毎日、休息らしい休息もとれない撃退士も少なくはない状況の中、それは予想外のプレゼントだったのか誰もが目を輝かせて資料に釘づけになっていた。
「ほら、静かに静かに。観光つっても遊びじゃないんだ」
予想通りとはいえ、無邪気にはしゃぐ生徒達を鎮めながら、特に表情を変えず女職員は話を続ける。男勝りの口調で解説を始める教員は、今回の観光はあくまで任務であるということを強調し、その目的はリゾート施設の警備にあることを伝えた。
――警備。ここでいう警備とは、主にデビルやその眷族に対してのものである。
近頃、デビルの眷族らによって襲撃された施設が存在した。夏は終わりを告げていたものの、広い温水プールで有名なその施設は1年を通して客が多かった為、それがデビルの目に付いたのか、或いはデビルによる周辺エリア侵略の兆しか‥‥あちら側の目的は不明であったが、少なからずとも一般の観光客に被害が出ていたのも事実だった。
とりあえずの撃退には成功していたが、何時再びデビルによる進攻が分からない以上、ある程度の戦力を予め配置しておくにこしたことはない。
「集客効果の為かな‥‥」
「‥‥ふ」
説明をうけながら、ポツリと呟く生徒。勘が鋭いな、そう思いながら女職員は少し口元を緩めた。
ある程度の戦力の配置。これは何も敵の進攻時、迅速な対応を行う為だけでない。
予め撃退士がいること、この事実が何よりも重要だったのだ。そう、一般の観光客達にとって。
「前回の襲撃による被害が少なかったとは言え、けが人も多数出た。これは、観光街を含め、施設の経営そのものに対しての打撃となったわけだ」
生徒達を見渡しながら、何かを諭すような口調で話す職員。
「皆も知っての通り、我々はディメンションサークルによる移動で、距離の離れた地域へのワープは容易だ。しかし、それはあくまで連絡を受けてからの行動、となる」
如何に迅速な移動であれど、連絡を受けてからでは後手に回っているも同然。移動までの僅かな間に、観光地など人の多い場所では、相応の被害が出る可能性も否めない。その結果が、前回のリゾート地襲撃だったのだ。
そこで、予め撃退士の配置をすることで、より観光客の安心な時間を確保するというものが今回の任務内容であった。
勿論、このことを予め宣伝することは直接の集客効果が期待されると同時に、警備に当たる撃退士にもリゾート地の経営グループによる報酬が期待され、経営グループと撃退士、双方にとって悪い話ではない。
おまけに‥‥
「警備は交代制なので、自由時間は好きに使って大丈夫だ。あまり問題は起こすなよー」
こんな特典までついていたのだから。
●概要
本依頼は温水プールで有名な施設の警備が主任務であり、基本は撃退士自身もプールを楽しみながらの警備です。
本依頼におけるリプレイは、大まかに『戦闘シーン』と『遊びのシーン』から成ります。
(警備自体は交代制としていますが、実際は戦闘シーン以外は好きに遊んで頂いて構いません。とりあえず周囲に注意を払いつつ、せっかくの観光を楽しもう、という依頼です)
●戦闘&敵対情報
『PL情報となりますが、敵の進攻および戦闘は発生し、登場する敵はディアブロ(狼型)となります。』
敵出現のタイミングは不明。また、過去の経緯から、ディアブロは1、2体の可能性が高いです。
●プール施設について
海を模した疑似海岸(波を表現出来るプールに人工砂浜)、そして本物の太陽に負けず燦燦と輝く人工太陽が特徴です。
ドーナッツプールやウォータースライダーなど、種々の設備も完備しており、同施設内には温泉も存在します。
人口砂浜自体の面積も広く、道具の貸出を希望すれば浮き輪の使用やビーチバレーなどある程度の対応は可能です。
ボインボインのお姉さんにムキムキな兄貴もいます。覗きやセクハラをしたい時は、バレないようにやりましょう。バレた時はきっと何らかの制裁が下されます。絵的には面白いと思いますがげふんげふん。
プールおよび温泉に関しては、各々が想像し得る範囲内でご自由に活用下さい。
MSとしても、極力皆様の発想を第一に優先いたします。
●時間帯に関して
本依頼における時間帯は、大よそ正午〜夜にかけてです。夜には周囲が暗くなり、イルミネーションの鮮やかな時間帯もありますので、必要であれば飲み物でも飲んで楽しんだりとエンジョイしてください。
飲み物代などは特に必要ありません。
●マスターより
はじめまして、またはお久しぶりの羽月です。
滝にうたれ精神を清めた後、もっと斬新な発想力を求め、修行の旅に出ていました。その成果も実感出来たため、再び舞い戻って来た次第です。
‥‥ごめんなさい、過剰表現しました許して下さい。
私のリプレイですが、アドリブが好きなMSの為、皆さんのキャラっぽさを出したうえで、色々とリプレイにアレンジを加えることになると思います。
ただプレイングを反映するだけの仕事なら、それは誰にでも出来ることです。
羽月渚としての特色を出しながら、極力、PL様方が参加して良かった思えるようなリプレイ創りに務めますので、機会がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
【心情】
初仕事、か…まあ勉強とかよりはよっぽど楽そう
この季節に泳ぐのもだるいから俺は警備だけしとこうかな
【作戦】
各施設に撃退士を配置し警備
施設間の情報伝達に内線や館内放送を利用
【配置】
警備室で監視カメラのチェック
【準備】
施設側には事前に今回の警備の作戦を伝え警備室の監視カメラ、内線、館内放送を使えるよう要請しておく
機材の使い方等はスタッフに教えてもらう
【行動】
各施設の監視カメラを見て異変があれば館内放送や内線を使い他のメンバーに伝える
スタッフの仕事の邪魔はしないよう気をつける
館内放送で一般人の避難誘導支援
戦闘が行われている場所、安全な場所、避難用の非常口等あればそちらへ誘導
内線で応援要請があれば敵が出現していない施設の警備をしてるメンバーに館内放送で伝達
明らかな戦力不足等その施設の担当メンバーだけでは対応出来ないと判断した場合は応援要請がなくとも他の施設のメンバーに応援に向かうよう指示
おーっほっほっほ♪最初の依頼地がリゾート‥‥素晴らしいですわ!
邪魔者が出たら速やかに排除して、楽しむ時間を増やしませんと♪
【行動】
リゾート地で初仕事なので爛々と輝かせて依頼に参戦
別部活の部長である一方、水泳部員でもある為に余計に楽しみにして来た
部員であり後輩のアトリ、また同じ水泳部仲間で後輩の沙耶を特に気にかける
「皆、くれぐれも油断なさりませんように」
担当場所は温水プール方面(人工海岸とは別施設)
同エリア内の仲間達と、交代で休憩しつつ警備に
服装は当然ながら自前購入のゴージャスな感じのする水着姿
白と青基調のワンピースタイプ。胸元がメッシュ仕様で深い谷間部分が透け見える物
戦闘時は相手の突進に攻撃を合わせるカウンター型
同じエリア内の仲間達との相互支援を念頭に入れて行動
仲間達が負傷したら回復スクロールを速やかに使用(仲間を最優先)
「おーっほっほっほ♪ 無粋な輩は、速やかに御消えなさいな!」【続く】
施設内の警備。自身は温水プールを担当。
他のメンバーはペルセス、櫻井、古島、神喰。
プールに到着後は施設マップを確認し、予めどこでも行動出来る様どこに何があるかを頭に入れておく。解散後はそれぞれ各個の判断に任せて警備。変わった事があれば報告をする。
尚、迷子の子供などの案内なども行いつつ施設内の見回りも兼ねて行動。
因みに警備の合間に他の面子や利用客の楽しんでいる様子を観察したり、戯れてる様子を見て自身も楽しむ。無論、誰かしらから何かコンタクトがあった場合はそれなりに応じる。
もしディアブロ出現を発見・報告が来た場合は利用客へ退避・避難を促し戦闘態勢へ。
自身は前衛を担当。敵の動きを見つつ堅実に防御、敵の頭部や心臓部の急所を打撃で攻撃。
積極的に前に出つつ、味方と協力・連携して早期の撃破を狙う。特に後衛への被害を出さないよう、必要ならば援護攻撃・防御を行う。
撃破後、必要ならば別エリアへ増援へ向かう。
俺は温水プールを見回る班だな。
見回りする時は是非ともお目見え麗しい美少女か美女……げふんげふん……まあとりあえず誰かと一緒がいいな!
注意するのはやっぱ外から入ってこれそうな場所やろな。壁際の方を歩いて窓とか扉なんか外に繋がる場所には要注意や。
警備室とはトランシーバーなんか使って定期的に情報確認やな。
プールにディアブロが現れたら即行で向かわず一般人の安全確保からやな。
他の仲間に当たって貰いつつ避難誘導と逃げ遅れを救助するぜ。
ディアブロの数が多すぎるんなら加勢に行くが、他の奴等でなんとかなりそうならそのまま護衛やなー。
安心させる為にも軽くおちゃらけておくぜ。
「安心してくださいお嬢さん。ディアブロなんてすぐに倒してしまいますよ。ところでこの後お茶でもいかがっすか!」
もしこっちまで来た時は体張るしかないわな。叫んで注意を引きつつ遅延戦闘で仲間が来るまで待つわ。
「ぬわー! こっちくんじゃねー!?」
【班分け】
海岸班。
遊びながらの警備をする。
【娯楽】
「ひゃっはー!それじゃあ早速泳ぐぞーっ」
初めての海(人工だけど)を思いっきり満喫。
普通に泳いだり潜ったり。
砂浜でだらっと日焼けなども。
【戦闘】
(アストラルヴァンガードだけど)肉弾系戦闘専門。
武器のナックルダスターは、袋とかに入れておき、
使う時に取り出して使う。
小型〜中型程度の敵ならば、(背負い投げみたいな感じで)掴んでおもいっきり地面に叩きつけたり。
「うおりゃぁっ!」
殴りを主体に、様々な肉弾系の技を使って戦闘する。
【戦闘後】
回復のスクロールαの使用を試みる。
が、ちゃんと読めるかどうかが疑問。(アホの子)
「…で、これって何て書いてあるの?とりあえずこんな感じで使えばいいのかなっ」
折角なんで俺ぁ温泉に入らせてもらうな。胸のせいか最近肩がこって仕方ねぇんだ。
ちなみに水着着用の場合は上がサラシで下が褌……仕方ねぇだろ、俺に合うサイズの水着だと胸がきついんだから。
まったく、胸はもう要らんからも少し背が欲しいぜ。
打たせ湯で修行ごっことかよくやってる奴いるよな(うずうず)……お、俺はそんなガキ臭い真似しないぞ!
そう、正しく温泉を味わうのが大人ってもんよ。こう、手拭いを頭に乗っけてだな……あ〜、極楽。
なんてのんびりくつろぎながらも警戒は怠らない。
いざディアブロが現れた際に一般客を避難させるルートや戦闘の障害物が少ない場所の確認。特に水場は足元が悪いからな。
運良くか悪くかディアブロが出現したら攻撃を引き付けながら避難を促す。
「ちょいと派手なアトラクションだ、危ないから離れてな!!」
戦闘ではバリバリ前衛、体格とスピードを活かして接近戦を挑むぜ!
終わったら水風呂で身体冷ますかな。
初のお仕事が…
まぁ、水泳部らしくて、いいかな。折角の機会だし、楽しみながら無事不安を解決…。
私は、温水プール周辺の警護に当たります。
得物は小型化収納して場の雰囲気を優先させ、なるべく利用客に不安を与えないように…。
最初に館内の案内図のパンフレットに目を通して、警備室、固定電話、各施設の場所を頭に叩き込んでおきます。
後は、警備がてら、敵が来るまで楽しもうかな…。
偶然、頼もしい先輩も、一緒……(桜井瑞穂先輩を見つつ)
と、影野先輩に1つ頼み事。
化物以外に、もう1つ指示を欲しい対象があります。
女の子の敵、しつこいナンパ男…。
監視カメラで見付けたら、最寄の固定電話を鳴らして貰えれば…
出来るだけ穏便に、助けたい…。
それと、飽きたら、監視、変わります…。影野先輩も、遊んで下さい…。
戦闘は、槍。
前衛として、濡れた足場に気を使いながら体を張って相手を…。
皆との連携を重視して、避けた先を狙うような波状攻撃を。
依頼を受けた全員で施設の警備を行いつつ、楽しみたいと思います。
施設を擬似海岸、温水プール、温泉、警備室の4つに大別して各自の持ち場で警備を行います。
魔具は常時ヒヒイロカネに収納してアクセサリとしておけば、有事の際にも動きやすいです。
敵が出現したら、その地域の警備担当の人が敵を相手取り、警備室から館内放送で一般客に避難誘導の指示及び別エリアのメンバーへ連絡。
他エリアの人は同時出現を警戒します。まぁ、その辺りは臨機応変にいきましょう。
私の担当は温水プール。
遊ぶ際は泳ぎますから、携帯電話は外すしかありませんが……有事の際は施設の内線を利用することにしましょう。
警備のとき、あらかじめ内線の位置を確認しておきます。
敵が現れた際は、接近戦を挑みます。
基本は槍でレンジを保ちつつ接近戦。相手がディアブロなら私は光属性の魔法を撃てるスクロール持ってますし、チャンスがあれば零距離での魔術行使をトライします。
会議で決められた担当エリア『海岸』を巡回しながら遊ぶ。友達の鳥海月花と行動を共にして敵と遭遇した時には巡回中の味方への連絡を任せて、一般人に被害がでないよう突撃。援軍がくるまで敵を引き付ける事を目的とした専守防衛で足止めする。もし、一般人へ敵が攻撃するような事があれば庇う。優先順位は施設より一般人優先。援軍の到着、若しくは今の戦力で逃さず倒せると判断したら斧の威力に任せた一撃で排除しようとする。撃退士としてのオーラは白色で、武器だけが発光する。
『…おまえの相手はボク、なの。…かかってくる』
遊ぶ方は、二人で海岸をぐるっと散歩する。海岸にあるであろう海の家など、食べ物が買える所で購入して食べ歩きをする。特に甘い物を好みかき氷やアイスなどを選ぼうとする。その最中、同じエリアを巡回している仲間に遊ぶ誘いを受けたら、鳥海月花も一緒に遊ぶ場合のみ誘いを受ける。
『月花が遊ぶなら、ボクも遊ぶ、の』
敵出現前:担当場所は海岸エリア。服装は黒ビキニにパーカーとパレオ、ビーチサンダル、白い日傘。
所持品は携帯、弁当、お茶、ヒヒイロカネ(銃入り)、タオル、日焼け止め。
基本的に敵が来るまで依頼のことは頭の片隅程度。主にアトリアーナ(ja1403)と一緒に行動。2人で散歩したり、ビーチバレーは参加で、対戦なら同チームなど楽しめるだけ楽しむ。
敵が出現して騒ぎが起きたら即座に周囲に目を向け、敵を捜索。一般人の避難誘導は放送に任せ、その間の安全確保や一般人から注意を逸らすこと最優先で行動し、避難がほぼ完了したら戦闘に積極的に参加。
戦闘中は援護射撃でのサポートがメイン。常にこちらの数が敵より多い状態で戦い、自分たちの方が有利でも気を抜かないで冷静に攻撃を行う。
戦闘終了後は、2度目の襲撃があるかもしれないとは思いながらも、出現前同様に弱警戒で閉館時間まで遊ぶ。
【心情】
「天魔との戦闘があれば失った記憶を取り戻せるかもしれない」
【目的】
依頼を解決する為に敵の迎撃、利用者の安全を目的として参加する。
PC自身は誰も自分と同じ境遇に遇わせない事を目的に参加している。
【準備】
複数エリアに敵が出現に備えて、各施設に設置してある内線の位置を把握
【行動】
温泉エリアを担当して警備
戦闘では利用者守る為に敵を迎撃する。
敵を発見したら警備室に連絡、殲滅が出来そうにないなら警備室に応援の要請して他エリアで近くの人達に連絡してもらう。
休憩時では、武器をヒヒイロカネに格納して湯浴み着をきて温泉巡り、温泉の合間にコ−ヒー牛乳 を飲んだり、マッサ−ジ機でコリをほぐしたりして楽しむ。
携帯、園内施設を駆使し、情報の食い違いや共有の失敗に注意して戦う。
・格好
白のビキニ姿。但し白のパーカー(フード被り)&パレオで露出は控えめ。
項で髪を結って横から前に流して。
肩から制服等を入れたバッグをぶら下げ。
(スクロールもバッグの中で、基本的にバッグは開口して中のスクロールに触れつつ)
「…流石にこの中を制服姿でとか、無理」
・行動
フィラエッハ先輩、瑞穂ちゃん、忠人君、拳士狼君と組で温水プール方面を担当。
※詳細は同担当を参照。
遊びと依頼は区別しつつ。総てが終わってから目一杯遊ぶ予定。
と言う訳で何か他に目が行きそうな忠人君にはちょっかい出しつつ(←)
「忠人君、鼻の下伸びてるよー?」
・戦闘
「――Yetzirah――」
アウルの発現。力の具現、形を成す言葉。
後方で自然体。バッグ内のスクロールに触れるだけ触れて、視線のみで魔法攻撃を行使。
「先輩と拳士狼君は頑張ってね〜、ほらほら忠人君も! 瑞穂ちゃんは回復よろしくっ!」
【警備】
温水プール方面を巡回警備
敵発見時、一般人の避難及び仲間への連絡最優先し
敵の注意をひきつけ防御重視で応援を待つ
【休憩】
緑色のバミューダパンツ、滑り難いスニーカー着用
あまり泳ぐことはせず、通信機器を身につけ受け持ち以外の区域も
適宜休憩を取りながらぶらつく
仲間に何か誘われたら応える
甘いものが好きでよく買い食いをする
【共通】
施設を巡回中、敵が侵入しそうな場所、避難経路、
各区域の客層や人口密度、不審物がないか等を観察
手品、感知、隠密スキルを活用し、何かの発見に努める
気付いたことは随時報告
警備計画に改善すべき点があれば進言する
気晴らしも兼ねるが、兎に角積極的に他者に話しかける
利用客に話しかけ、不審者の発見や利用者目線の情報収集
施設職員に話しかけ、施設設備の把握及び異常の有無を確認
仲間にも積極的に話しかけ、連携強化と情報伝達を図る
襲撃察知時は全力で駆けつける
●心情
初依頼が自由時間付きのリゾート施設。幸先がいいですね
●目的
仲間と一般人を護る事と、温泉で寛ぐ事を目的として参加します
●準備
温泉用にブーメランタイプの黒い水着を準備しておきます
事前に仲間と打ち合わせて、協力して警備に参加します
施設の職員にも協力して頂くようお願いします
●行動
休憩は温泉で疲れを癒し、警備は温泉を中心に巡回します
襲撃に対しては敵の数を警備室に連絡し、3匹以上いたら援軍を要請します
戦闘では一般人と仲間を護り、敵の移動を妨害する様に立ち回ります
別の場所に襲撃があった際は、近くの仲間が援護に行かなければ自分で行きます
襲撃後は今回の襲撃を『天界のリゾート地に溢れる感情の採取に対する、魔界の妨害工作だった』と仮定して施設内で天魔に関連するものがないか、敵の進行ルートを参照に個人的に調査します
従業員用の通路を使用しますので、意図せずに女湯に入ってしまうかもしれません
警戒
担当の海エリアで水遊びしながら周囲の利用客に騒ぎがないか気に留めておく
敵出現時
利用客の避難誘導は予め職員にお願いし放送でも促してもらう
海エリアの仲間と敵を撃退する
他エリア出現時
館内放送電話からの連絡を意識し応援要請があり次第走り急行する
トラブル等で放送がなく海エリアに敵出現がない場合
騒ぎの大きい方に耳を澄まし利用客の多いエリアの応援に向かう
戦闘
ヒヒイロカネに収納したカトラスを抜き自分の命を優先し
敵の数が味方より多い場合や危険な場合は防御に徹する
味方の盾となるため一番前に行き敵を僕に引きつけカトラスで攻撃する
傷をおったの際はフューリさんに声をかける
遊び
可能な限り海エリアの仲間を誘い海岸エリアでビーチバレー等をし自分から交友を広める
できれば依頼仲間の女性と話したい
一人の時はビーチチェアで寝そべりジュースを楽しみ擬似海岸を眺める
擬似海岸で釣りをしようとする
水着に着替えて擬似海岸の波を楽しむ
仕事かと思ったらバカンスとは良いねえ、こんな事ばっかならおっさん張り切っちゃうんだがなあ。
温泉でのんびりと湯船につかってよう。いざって時に動きやすいように水着着用で混浴の所が良いかな。
「ん〜、極楽極楽♪日頃の疲れが溶け出して行くかのようだ、さりげなく眺めも良いしな。」
「これで仕事じゃなきゃぁ熱燗の一本も呑みたい所だ。」
あ、一応他の連中との連絡用の電話等の位置は確認しとくか。
敵が出てきたら仕方なく、名残惜しそうに湯船から出て魔具とか取り出す。
「もっとのんびりしかかったんだがなあ。」
「武器と・・・防具も取り出せるんだったか?」
銃撃で相手の足元に牽制を行いつつ距離を開けて遠距離戦でケリをつける、物理弾と魔法弾を交互に使い有効そうな方を使用。
敵の数が多い場合は足止めに徹して味方の援護を待つ。
出来ればだれか前衛がいてくれると安全に援護出来るんだがなあ。
「湯冷めしちまった、もう一っ風呂浴びてくるか。」
・参加人数が多いので、ここはあえて班分け等の大きな流れから離脱して単独行動。
・生命優先なので戦闘が発生した時は個人的な主義主張をこえて協力。
●巨大プール施設にて
「プールか……少し昔を思い出しちゃうな」
秋も終わりを告げ、肌寒い風が舞い始める頃。
ひんやりとした空気に包まれながら、そこには美しい金髪が目を引く七海 マナ(ja3521)が佇んでいた。
一見女性に見紛うほどの美しい容姿を持つ七海。金色の長髪に金糸装飾パイレーツコートと、周囲と比較しても目立ちやすい恰好の彼であったが、その目の前には彼の存在感に負けじと建つ巨大な建物が。
「巨大プール施設、ウォーターランドへようこそ……」
でかでかと目立つ看板に視線を向けながら、ポツリと七海は言葉を放つ。
「水辺に現れる天魔……。今日は気を引き締めていかないとね!」
自分に言い聞かせるかのように。グッと拳を握り、施設の中に七海は入っていく。その頭の中には、少なくとも過去の父の姿があったのかもしれない。髪が風に靡く度、すれ違う人は皆振り返る。しかしその中性的な顔立ちとは裏腹に、瞳にはどこか強い力が感じられた。
――プールや温泉などの各種レジャー施設を完備したリゾート施設、ウォーターランド。
それが、今回の戦場の舞台である。季節に関係なく、1年中熱気にあふれる場所。
そんな施設にて今、撃退士達の熱い戦いが始まるのだった。
※※※
「おーっほっほっほ♪ 最初の依頼地がリゾート……これは新しい水着を買った甲斐がありましたわね♪」
と、シリアスな雰囲気で始まった本依頼だが、七海が施設に入ると、そこには先に目的地に着いていた久遠ヶ原学園生徒達の姿があった。
「さ、桜井先輩、あまり騒ぐと従業員の方に怒られますよ」
「あら、せっかくのリゾート。これを楽しまない手はないですわ。しかもこのわたくしに相応しい水着まであるとなると……邪魔者が出たら速やかに排除して、楽しむ時間を増やしませんと♪」
やたらと周囲に響く高笑いをあげながら、早速案内板に目を配りつつ施設内の設備を確認しているのは、艶やかな黒髪とそこから覗く白い肌が映える桜井・L・瑞穂(ja0027)だ。
その横には、小さい声で瑞穂に話しかける少女、樋渡・沙耶(ja0770)の姿も。
「初のお仕事……まぁ、水泳部らしくて、いいかな」
少し不安そうながらも、どこか楽しみな様子が見て取れる沙耶。隣の瑞穂と同じく水泳部の彼女にとっては、比較的慣れたプール施設での警備ということもあり、心にゆとりはあったのかもしれない。ましてや、
「偶然、頼もしい先輩も、一緒……」
そう言って視線を傾ける先には、沙耶曰く、頼もしい味方もいたのだから。
「おーっほっほっほ♪ フロントだけで大分目立ってしまいましたわね。ささ、早く更衣室に行きますわよ、沙耶。プールがこのわたくしを呼んでいますわ♪」
……多分、頼もしい……味方が。
――場所は変わって男性更衣室。
「プールっ、プールっ。いやープールと言えば水着、綺麗なお姉さん! 楽しみやなー!」
「あまり周囲に気を取られて油断するなよ」
そこには、意気揚々と服を脱ぎ捨て水着に着替える古島 忠人(ja0071)の姿があった。水着姿になりつつも、トレードマークのバンダナは外さない彼だが、そのテンションは高く、どうやら天魔討伐よりも別の意味でこの依頼に臨んでいそうだ。
そんな彼を見て、表情を崩さず注意を促すのは玄武院 拳士狼(ja0053)。普段着でも太い腕が目を引く彼だが、いざ水着に着替えようと服を脱げば、そこにあったのは正しく精悍の一言が似合う肉体。
「無事に終わると良いんだがな……」
高校生という枠で見れば、明らかに他とは一線を画する肉体美。筋肥大の顕著な腕や胸のせいか隣の忠人が子供に見えてしまうぐらいだが、その実、優しい心の持ち主でもある。警備を前に呟いた拳士狼の一言は、雄々しい体とは反対に、どこか穏やかで優しいものであった。
「勉強より楽そうだと思ったけど……この季節に泳ぐのもだるいな」
一方、忠人がはしゃぐ中、拳士狼同様、淡々と警備の準備に入る人物が1人いた。
「ま、適当に警備だけやっとけばいいか」
風船ガムを噛みながら、あまりやる気のなさそうに言葉を放つ影野 恭弥(ja0018)だ。
「またまたーそんなこと言っちゃって。何ならナンパの天才児、この俺が美女の口説き方を伝授してやろか?」
そんな恭弥を見て、彼の肩をガシッと掴み、俺に任せなと何故か自信気な顔で忠人は笑いかける。
「……」
「無視っすか!」
が、飛ばされたボケも華麗にスルーしたかと思えば、そのまま荷物をロッカーに入れると、必要なものだけ持ってスタスタと警備室へ歩いていく恭弥。
やれやれと気を落とした不利をする忠人だが、それには目もくれず恭弥は忠人の視界から消えていく。クール、正にこの言葉がピッタリの少年である。
「遊ぶのも良いですが、何時敵が襲ってくるか分からないですし、古島先輩も油断しないで下さい」
「わ、分かってるって、ははは……」
そんな恭弥達のやり取りを横目で伺いつつ、着替えの終わったエイルズレトラ マステリオ(ja2224)は忠人の様子に不安そうに言う。
中学生ながら、実はこの依頼に誰よりも慎重な考えを持っていた彼。警備の成功に尽力する。依頼を受けた以上、そう考えるのは至極同然。しかし、その想いには程度がある。まだ幼いながらも、いや、それ故にだろうか。未だ自分たちが新米であることを誰よりも理解していたエイルズレトラ。そう、敵が何であれ、緊張感は必要だ。幼さの残る顔立ちはポーカーフェイスながらも、どこかピリピリとした雰囲気を持つ彼は、その気持ちを抑える為か、無意識に手持ちの手品用の小道具――トランプをもてあそびながら、温水プールへと向かうのだった。
●穏やかな時間
――プール施設内。
今回の任務に挑戦する撃退士達も着替えを終え、続々と配置に着きだしていた。
「人工太陽とはいえ……随分と本物に近いですね」
眩き人工太陽と、水しぶき飛び交う人工海岸が売りのひとつである本施設だが、本物さながらの太陽に目を細めながら、白い日傘を片手に黒ビキニ、パーカーとパレオ、ビーチサンダルといった姿で周囲を散歩するのは鳥海 月花(ja1538)だ。比較的肌の露出は少ないといえ、日焼け止めで太陽光からのガードはバッチリ。しかしながら、太陽が眩しいから細めていた目は、徐々に別の理由で閉じかけていく。
「月花、大丈夫、なの?」
「……え、あ、大丈夫ですよ」
実は、暑いと眠くなってしまうという月花。普段からボーっとしていることが多いとはいえ、今は任務中だ。そのまま意識が飛んでしまっては困るのだが、幸いにも一緒に歩いていたアトリアーナ(ja1403)に話しかけられ目を覚ます。
「ノドがかわいた、の。月花も何か飲む、の」
「そうですね、この辺りでゆっくりしましょうか」
警備がてら施設内を歩き始めてから15分ほどだろうか。ちょうど木陰の場所に屋台を見つけたアトリアーナは、月花のパーカーの袖を引っ張りながら飲み物を買おうと提案。暑い場所が苦手な月花のことを知ってか知らずか、海岸のエリアを大体把握した2人はそのまま一休み。
「アトリさん、何か食べたいものはありますか?」
「ボク、かき氷とかアイスが食べたい、の」
「じゃああとで買いに行きましょうか。海岸で待機して貰っているフューリさんもあれだけ動けばお腹を空かしているかもしれませんし」
月花の問いかけに、少しだけ顔を上にそらしながら考えたかと思うと、あまり表情は変えずに好物の甘いものを言うアトリアーナ。その返答に微笑みながら月花は返すと、コップを静かに口へと持っていきながらチラッと視線を傾けた。
「うおおっ、この波、なかなかやるな! 次は負けないよ!」
「フューリさん、それにしても元気ですねぇ」
と、月花の視線の先にいたのは、同じく海岸の警備を担当しているフューリ=ツヴァイル=ヴァラハ(ja0380)だ。
「ぐああっ、ま、またやられた―――!」
どうやら波と闘っているのか、泳いだり潜ったりと無邪気に海水浴を楽しんでいる様子の彼女。月花やアトリアーナは比較的体まったりと過ごしていたが、フューリの場合はかなりアクティブなようで、じっとしてはいられないといった感じだ。
「ふぅ、結構泳げたかな、満足満足。よし、次は日焼けでもしようかなっ」
敵と戦う前から全力投球なフューリだが、泳ぎは落ち着いたのか、次はだらっと浜辺に寝て日焼けタイムへ。しかし、本人は全く意識していないものの、はち切れんばかりの胸をこれでもかと押し出したまま仰向けで寝転がったため、周囲の男性客は気が気でなかったり。
――温泉ゾーン。
さて、場面は変わってこちらは温水プールの隣に位置する、温泉ゾーン。
「初依頼が自由時間付きのリゾート施設。幸先がいいですね」
ここウォーターランドの目玉はプールだけではない。湯気が辺りを包む温泉では、楯清十郎(ja2990)達温泉の警備班がそれぞれ警戒に当たっていた。黒のブーメランタイプの水着とシンプルな恰好の清十郎だが、比較的少年っぽさが残るため可愛らしい印象を受ける。
「警備が終わったら、ゆっくりと温泉に浸かりたいですね」
微かな温泉独特のにおいが漂う中、休憩の時間を楽しみに待つ清十郎。しかし、彼は知らなかった。後に彼に降りかかる災難を。
「しかしまぁ、きみも若いのに仕事とは大変だねぇ」
「そうですか……?」
さて、休憩を楽しみにしている清十郎の横では、今回のメンバーで最年長であろう綿貫 由太郎(ja3564)が何やらけだるそうに清十郎に話しかける。
「ま、仕事と言っても半分はバカンスだからねぇ。こんな事ばっかならおっさん張り切っちゃうんだがなあ」
どこか苦労を重ねてきたような雰囲気を醸し出す話し方の由太郎は、とりあえず衣食住の確保の為、学園へと訪れたらしい。なんだか、神妙な雰囲気を持つ彼……。油断ならない気もするが――
「ん〜、これで仕事じゃなきゃぁ熱燗の一本も呑みたい所だ」
何てことない、ただのおっさん発言も魅力的である。
「しかし、温泉だけでこれだけ広いと警備も大変ですね」
一方、男性陣がまったりと警備する男湯と違い、女湯では雫(ja1894)が周囲に目を光らせていた。
(「天魔との戦闘があれば失った記憶を取り戻せるかもしれない」)
撃退士には様々な過去を持つ者も多いが、当然、中にはつらい過去を背負っている者もいる。過去に天魔に襲われ、その際に感情を少し奪われてしまった雫もその1人だ。
(「まずは利用者の退路を確認しておかないと」)
口数は少ないものの、その行動は全て他人のことを第一に考えられている。辛い経緯があったからこそ、人の痛みが分かり、それを防ごうと尽力出来るのかもしれない。そう思わせる健気さが彼女には見て取れた。
「さっさと片付けてゆっくりしたいもんだ」
雫の横でこった肩に手を当てる桂木 桜(ja0479)に対し、静かに少女は頷くのであった。
※※※
さて、まったりとした雰囲気が漂う温泉ゾーンであったが、その隣の温水プールでは、何やら賑やかなことになっているようなので覗いてみよう。
「おっねぇさーん、僕と一緒に流れるプールをエンジョイしませんか!」
「え、あ……ごめんなさい」
そこでは、どうやら忠人がすれ違うお姉さん全員に声をかけているようであった。
「ちくしょう……一体何がダメなんや! これで4連敗か……」
「違う違う、これで5連敗目だよ」
「うぅ……」
アピールする度に玉砕している忠人に、笑いながらトドメを刺す神喰 朔桜(ja2099)。
「もうこうなったら泳いで何もかも忘れてやる! 河童の忠ちゃんと呼ばれた俺の泳力を見よ!」
結局諦めたのか、半ば自暴自棄気味になった忠人は、そのままドーナッツプールへと飛び込む。しかし河童の忠ちゃんなのに何故かビート板を使っているのが切ない。
「あ〜あ、完全に自棄になってる」
「これで懲りただろう」
巧みなビート板技術を駆使してパシャパシャ泳ぐ忠人を遠目で見ながら、苦笑しつつ呟く朔桜に拳士狼もやれやれといった口調で言う。
「……」
「……なんだ?」
とその時、不思議そうな眼差しで自分を見ている朔桜に拳士狼は気づく。
「拳士狼君はナンパしたりはしないの?」
「俺は別にそういうことは」
唐突に投げかれられた質問。
拳士狼からしてみれば、女性に興味がない訳ではないものの、それは綺麗に咲いている花のような感覚である。愛ではするが、摘むつもりはない模様の彼にとって、ナンパなどはあまり考えたことがなかったのかもしれない。
「へぇ〜」
拳士狼が興味なさそうに向きを変えるのを見て、何やら言葉数の減る朔桜。少し考え込んだかと思うと、何を思ったのか急に
――ガバッ
「……何のつもりだ」
「いや〜。忠人君みたいにえっちぃのは引くけど、逆に無関心ってのも魅力がないって言われてるみたいでね〜?」
逞しい拳士狼の首に手を回し、そのまま背後から抱き付くことで背に胸を押し付け、ぶら下がった状態で笑いかけるではないか。若干リアクションに困る拳士狼を知ってから知らずか、朔桜本人は楽しむようにうりうりと胸を押し付ける。
と、そんな数秒のやり取りだったのだが……
「な、なんてことですの!? このわたくしより目立つなんて……!」
突如として、自らの横で何故か悔しがる瑞穂の存在に朔桜は気づいた。
「え、なに……!?」
何事かと思い、拳士狼から離れて辺りを見回す朔桜。するとどういうことか、周囲の客が羨ましそうな視線でこちらを見ているではないか。
「あんなきれいな人と……昼間からやってくれるな」
「やはり男は筋肉か、筋肉が必要なのか!」
聞こえてくる一般客の声。その中に混じって瑞穂がハンカチを噛んでいるが、それはともかくとしてやっと自分に向けられた視線の意味を朔桜は理解する。
「な、こ、これは。そ、そういう意味じゃないんだから!」
頬を染めつつ慌ててその場から退散する朔桜。何だかんだで、あんなシーンを人に見られるのには慣れてない初心な娘だったのだ。
「……結局何だったんだ」
しかし、一番の被害者は拳士狼だったかもしれないが。
「くぅ〜、このわたくしを置いてあんなに目立つなんて。これは負けてられませんわね」
さて、予期せぬハプニングに見舞われた朔桜と拳士狼であったが、こちらは先ほどの光景を見て朔桜以上にショックを受けていた瑞穂。
「桜井先輩、プール周辺は特に異常ありませんでした」
「あら、ご苦労様ですわ」
そんな彼女のもとに、警備から戻ってきたばかりの沙耶が歩いてくる。
「随分と平和ですね。このまま敵がやっと来ないと良いんですけど……」
「そうですわね…………はっ!?」
と、その時。周囲を見渡しながら、このまま1日が終わってくれることを願う沙耶に相槌をうちつつ、休憩しようとスポーツドリンクを瑞穂が手に取った瞬間、彼女の頭にある考えが浮かんだ。
「桜井先輩どうかしましたか?」
「これですわ……!?」
「え?」
スポーツドリンクを見ながらワナワナと震える瑞穂。そして、数分後――
…
……
………
「結構泳げましたね。次はどなたか警備班の方と一緒に泳ぎたいのですが。……あら、あれは?」
浮き輪を片手にプールからあがり、近場のデッキチェアで休憩しようとしたペルセス・フィエラッハ(ja0798)。その際、ふと周囲に人だかりが出来ていることに彼女は気づく。
――そして、その人だかりをかき分けた視線の先には
「はぁ〜これこれ♪ やはり、注目を集めませんと♪」
ドリンクを飲みながらそれを体にもかけ熱い体を冷ましつつ、身体を横向けて胸が潰れ歪むようにすることで周囲の客の視線を一斉に集め、体の底から込み上げるナニかに身悶えする瑞穂の姿があった。
「随分と元気なことだ」
一方、周囲ではしゃぐ撃退士達を見ながら、1人警備に勤しんでいたのは魔界将軍 ネヴァン・マーハ(ja4114)。群れるのは苦手、という彼女は、周囲の賑やかな雰囲気とは距離を置き、休憩時も1人プールサイドにてドリンクを飲みながら待機するのであった。
一般客に混じり撃退士達も各自がそれぞれ自由に楽しんでいる様子の施設内。
しかしその実、皆敵への警戒心は忘れていない。とはいえ、傍から見ればその光景は穏やかなものだ。願わくば、何時までも続いてほしい平和な時間がウォーターランドには流れていた。
●招かれざる客
「しかしまぁ、平和だな。めんどくさいしこのまま終わってくれねえかな」
――監視室。前回ディアボロによる襲撃を受けた本施設では、可能な限り警備システムを充実させるための処置が取られていた。
無数の監視カメラから送られてくる映像を逐一チェックする恭弥。特に変化もない光景の連続は退屈なものだが、面倒くさがり屋な彼にとっては別段苦な作業というわけではなかったのだろうか。飴を舐めながら音楽を聴きつつ、まったりと拳銃の手入れをしている様子は、表情こそ変わらないものの特に辛そうには感じられない。
と、撃退士達が施設に入ってから数時間ほど経った時だった。
「……ん」
温泉へと至る人気のない裏口。
普通なら気づかないかもしれない僅かな変化。黒い物体が一瞬だけ映像を過ったのだ。
しかし、恭弥はその瞬間を見落とさなかった。そして、改めて他のカメラを彼は確認する。
「1、2、3……4体か」
高速で動く物体を追いながら静かに呟く恭弥。彼の目に映っていたものは、紛れもない、災厄をもたらす訪問者であった。
※※※
恭弥がディアボロの確認を終えると同時に、敵の出現は無線にて即座に撃退士に情報が送られた。
その次は、勿論一般人への連絡だ。若干面倒くさそうな表情をしつつも、館内のマップを手元に広げた恭弥は、そのまま静かにマイクを手に取り……
『あーあー。聞こえてる? えーと、ディアボロが館内に侵入したんで、一般人の皆は避難よろしく』
この子やる気ないよ! 思わずそう突っ込みたくなるが、館内放送にてだるそうに一般人へ避難の指示を出す。
『現在確認出来た敵はディアボロが4体。1体は人工海岸、残り3体は温水プールと温泉に向かってる。もうそろそろ着く頃かな』
緊張感ぶち壊しのやる気なさそうな声のおかげで、一瞬理解するのに時間がかかった一般客らだが、今の状況を把握するや否や、賑やかだった施設内は瞬く間に修羅場へと変わり果てていた。
悲鳴。そして、我先にと出口へ向かう客達。すれ違い様にぶつかり、子供が倒れ込む。しかし、子供の泣き声は混乱の中へと溶け込み親の耳には入らない。
そんな様子を見ながら、やれやれといった表情でマイク越しに放送を続ける恭弥。
「安全な退路は今から俺が連絡する。大丈夫、あんたらは助かるよ。今日は俺達撃退士がいるんだ。あの程度の敵、俺達に負ける要素がねえもの」
相変わらず声こそだるそうだが、どこかその声には、人々の耳を通して不思議と安心を届けるものがあったのかもしれない。
「大丈夫か、怪我はないな。走って逃げられるか?」
先ほどの倒れた子供に拳士狼は手を差し伸べる。恭弥の館内放送だけでなく、そこに撃退士達の直接的な誘導が組み合わさることで、比較的スムーズに一般人の批難は行われ始めていた。
「拳士狼君、あの子大丈夫だった?」
「ああ、問題ない」
「それじゃ、いよいよだね」
ありがとう、そう言葉を発した後、人ごみの中で待つであろう親の元へと走っていく子供の様を見ながら、拳士狼は静かに拳を握りしめる。同時に、
「――Yetzirah――」
言葉を放つ朔桜。瞬間、彼女の身体は黄金の焔に似たオーラを纏った――オーラドレスト――撃退士が有するアウルの力。
彼女の目の前には、2体のディアボロが今にも飛びかかりそうに身構えている。
「おーっほっほっほ♪ 粋な輩は、速やかに御消えなさいな!」
迎撃態勢に入る撃退士達。穏やかな時間を切り裂いて……今、戦いが幕を開けた。
※※※
「お客さんの避難、完了したよ」
「こっちも終わった、の」
場所は変わり海岸エリア。
こちらでも、既に侵入してきたディアボロとの臨戦態勢に入っていた。
避難誘導を終えた七海達の前に現れた敵は1体。
「本当に来るとは……空気を読んでほしいものです」
銃・携帯以外の荷物を置いた軽装で、表情は崩さないものの静かな怒りを感じさせるように月花はため息をつく。
「後衛からの援護射撃に入ります、宜しいですか?」
「うん、前衛は任せて」
「了解、なの」
月花がリボルバー、七海とアトリアーナはそれぞれカットラス、ハンドアックスを構える。
「フューリさん、回復お願いするね」
「う、回復やったことないんだけど大丈夫かな」
七海のお願いに対し、今まで格闘戦オンリーだったフューリは眉をひそめる。
「――来ます」
「!?」
と、その時だった。先制を切ったのはディアボロ。自慢の脚力をいかしまずはアトリアーナ目がけて突進!
「……っ」
鈍い音。敵もおそらく知能はあるのだろう。まずは小柄なアトリアーナを標的にしたディアボロは、鋭い牙で彼女のアクスに噛み付くと、そのまま脚の爪にて引き裂いてくる。
「させません」
「グギャァ」
瞬間、後退するアトリアーナに合わせ、3歩下がった月花は自らのエネルギー体を弾として発射。その衝撃にディアボロの動きが止まった。
「背中が空いてるよ!」
着弾と同時に、月花に気を取られたディアボロ。その隙を七海は見逃さなかった。振りかぶった一撃。カットラスによる重い漸撃がディアボロの背中に襲い掛かる――が、当たらない。寸前で身をくねらせ跳躍することで攻撃を回避したディアボロは、着地と同時に再び地を一蹴。黒く輝く眼光が七海を捉える。
「これぐらい……!」
しかし、牙を湾曲刃で受け止めた七海は、そのまま攻撃を受け流しつつ反転し痛烈なカウンター。
「グガ」
切り裂かれた敵の左脚。その痛みに思わず後ずさろうとするディアボロ。だが――
「うおりゃぁっ!」
踏込、頭上から脳天目がけロッドによるフューリの強烈な一撃!
ズドンと音をたてディアボロが地面に叩き付けられる。
「次はボクの番、なの」
そこに追い打ちをかけたのはアトリアーナ。白いオーラに包まれた彼女の攻撃を必死でディアボロは避けつつ、何とか態勢を整えようとする。
「させない!」
しかし、勿論そうはさせまいと七海とフューリも加勢する。
分が悪い。そう悟ったのか、3人の攻撃をくぐり抜けることだけに集中したディアボロは、何とか隙間を抜けることに成功したのだが……
「おや、そんなに苛めてほしいんですか? ならご期待に添わなければいけませんねぇ」
抜けた先にいたのは月花だった。彼女を視認すると同時に額に打ち込まれた弾丸。悶えたその刹那、
「偽物とはいえ……海と名のつく場所での騒ぎは許さない!」
七海の刃がディアボロの背後より煌めいた――。
――同時刻。
海岸での戦いが繰り広げられているなか、こちら温水プールでも同様に戦闘が開始されていた。
「敵は2体……まずは1体を集中的に叩くべきかと」
まず、敵に対して先制したのはエイルズレトラ、忠人の2人だ。
「こっちくんじゃねー!」
今にも飛び込んできそうなディアボロに対し、2人して苦無による牽制攻撃を行う。
「前に出るぞ」
次に攻撃に出たのは拳士狼。エイルズレトラらの攻撃に敵がひるんでいるのを視認後、ファイティングポーズのまま敵に急接近。
「天武四神拳の真髄、見せてやろう」
彼のジョブは阿修羅――あらゆる物理近接戦のエキスパートである。瞬く間に敵との距離をつめた彼は、零距離からのナックルダスターによる激しい打撃を打ち込む。狙う部位は頭部や心臓部といった急所。絶え間ない攻撃に敵も反撃のチャンスを失う。しかし!
「ぐ……」
腕にはしる鈍痛。気づけば、拳士狼の右腕から血が噴き出していた。
「尻尾も凶器というわけですか」
その様子を後ろから見ていたエイルズレトラは冷静に言う。彼の眼には、拳士狼の攻撃をかわすと同時に尻尾による攻撃を繰り出すディアボロの姿が映っていた。
「直ぐに回復してさしあげますわ」
「攻撃してくる方向が掴めんのは痛いな……すまん」
拳士狼の傷を確認後、それを速やかに回復した瑞穂。同時に、ショートスピアを武器とする沙耶とペルセスが挟み込む形で攻撃を繰り出す。
まずペルセスによる薙ぎ払い。足元目がけ放たれた一振りが敵1匹に跳躍による回避を強制する。
「私達が敵の動きを封じます」
その瞬間、回避する術を持たぬ敵に沙耶が追い打ちを仕掛ける。被弾は必至。彼女の槍を捌けないと判断したのか、そのまま敵はなんと槍を体で受け止め、尻尾を巻き付けることで彼女の動きを止めに入るではないか。
「この……っ」
槍を引き抜こうと後退する沙耶。しかし想像以上に敵の力が強い。ほぼ硬直状態のまま、お互いの動きが封じられる状態に。
「グギャァ!!」
瞬間、その様子を好機と見たもう1体が沙耶に迫る!
「く、抑えきれねぇ!」
それを何とか止めようとする忠人とエイルズレトラ。だが決定打には至らない。
「……!」
一撃を覚悟する沙耶。と、その刹那――
「このわたくしに目を向けないとは……お仕置きが必要ですわね!」
突。周囲に風を巻き起こす踏込とともに、体重を乗せた瑞穂の痛烈な刺突がディアボロの肉を抉った。
「ギャア」
苦痛に身をくねらす敵。しかし彼女の攻撃は止まらない。刀身を引き抜いた瑞穂は、再度レイピアにより肉を断つ。
「今ですわ! 今回だけはトドメを譲ってあげましてよ」
「任せてっ!」
そして……朔桜による詠唱。その言葉に呼応するように彼女の周囲に現れた光の玉が、敵目がけて放たれた。
「あっちにだけ良い所は持っていかせられないわな!」
「別に僕はトドメに興味はありません」
朔桜の攻撃の数秒後、敵が崩れ落ちていくのを横目に、忠人とエイルズレトラは未だ硬直状態の沙耶と敵対するディアボロに目標を変えた。
「残るは1体……私も敵の動きを抑えます。その隙に!」
そして、ペルセスの接近とともに、全員が残るディアボロへと照準を向けるのだった――。
※※※
さて、時はさかのぼること数分ほど。温泉ゾーンでは、敵出現に伴い避難誘導が行われていた。
「ちょいと派手なアトラクションだ、危ないから離れてな!!」
「はやくこっちに」
運の悪いことに敵の侵入経路の関係上、避難誘導が完了する前に敵の侵入を許していたのがここ温泉ゾーンであった。
敵の攻撃を桜が身を挺して受け止めなるなか、一般客を護衛しつつ出口へと誘導する雫。温泉では男湯と女湯が区切られていたため、男性陣の到着に多少の時間差があるのもネックだった。
「清十郎達への連絡は!?」
「完了しています」
「それじゃもうちょいコイツと遊ばないといけねぇな!」
両手のトンファーで攻めと守りを同時に行う桜。更に、敵の隙を見つけては
「くらいな、トンファーキック!」
と、強烈な蹴りを叩き込み、正に四肢をフル稼働した戦闘スタイルで戦う。が、やはり中々有効打を与えられない。
「トンファーキックを凌ぐとは……やるな」
しかし、そんな状況においても不敵に笑みを浮かべる辺り、戦いを楽しんでいるようにも見て取れた。
「了解しました。錦貫さん、どうやら敵は女湯に出た模様です」
「そうか〜。もっとのんびりしたかったんだがなあ」
一方、こちらは男湯にて警備を行っていた清十郎と、偶々休憩中だった由太郎の2人。
敵の知らせを受けた彼らは、早速女湯へと急いでいた。が、由太郎より一足早く女湯の更衣室に到着した清十郎だったのだが……
「!? きゃーーー!」
「え、あ、ぼ、僕は撃退士でして。け、けしてワザとでは痛たたっ!」
なんということだろうか。まだ避難途中であった女湯にほぼ裸で飛び込んでしまった清十郎。ディアボロよりも先に、一般人から精神的に手痛い攻撃をくらってしまう。
「どうしたんだ、浮かない顔して」
「いえ、いろいろあったんです……」
その後、合流した由太郎となんとか敵の出現ポイントに向かう清十郎だが、心なしか顔色に元気がないのは触れないでおこう。
「お待たせしました、周囲に施設利用者はもういません」
「へ、もう少しタイマンといきたかったんだがな。仕方ねぇか」
さて、一般人の避難を確認した雫は、清十郎、由太郎と共に敵を食い止めていた桜に加勢する。
「そいじゃ、本番といきますかね」
まず、敵の側面に回り込んだ清十郎は、そのまま牽制射撃による簡単な挨拶。
その後、ふわりと敵に接近した雫は、湯浴み着を靡かせながらショートスピアによる突きを繰り出した。
「意外と速いですね」
しかし、それを後退し避ける敵を見て、雫は一度槍を手元に引く。
「多対一ってのは相手さんも厄介だろうねぇ」
その様子を見ていた由太郎は、落ち着いた口調でピストルによる射撃を繰り返す。威力も低く命中精度もあまり高くはないが、それでも牽制としては十分だ。
「敵の動きは僕が止めます!」
と、その時だった。敵に向かって清十郎が飛び出したのだ!
「グルァ!」
「っ!?」
ショートソードによる斬り込み。しかし敵も接近戦は得意とするところ。一撃必殺とは言い難い攻撃は、敵の皮膚を少し切り裂く程度に留まり、そのまま敵の反撃により右腕に牙が食い込んでしまう清十郎。
激しい痛みが全身を駆け巡るが、そのまま倒れるわけにはいかない。
「今のうちにトドメをっ!」
瞬間、敵を左腕で掴み清十郎が叫ぶ。自身のダメージと引き換えではあるが、敵の動きは確実に制限されている。
「おいおい、若いもんがそんな頑張っちゃうとおっさんの立場がなくなるじゃないか」
「感謝します……」
そして――対象の動きが止まることで確実に対象を捉える由太郎の射撃に加え、雫の槍が風を裂いた。
「グ……ガ」
小さな身体から放たれた、自身の身長の倍近い槍による一撃。周囲にディアボロの体液が舞った瞬間でもあった。
●平穏再び
無事ディアボロ撃退の報が恭弥による館内放送から流れると、館内には再び活気が舞い戻っていた。
ディアボロの襲撃を受けたにも関わらず、当日に営業が再開される……通常では、考えられないことである。しかし、それを成し得たのは、他でもない撃退士による迅速な敵の処理と、適切な避難の指示があったからこそであろう。
また、営業を開始した理由には、もうひとつ大きな要因があった。それは……
「影野様、お疲れ様でした。一般の方で、どうしても避難指示を出された放送主に感謝したいという方がいらっしゃるのですが……」
「あーごめん、俺そういうの苦手だから……パスで」
監視室。一仕事終えた後も、遊ぶことはせず任務の時間が終わるまで監視室に待機していた恭弥。
そんな彼の元には、どうしても感謝を伝えたいという客が面会を願っていた。
そう、施設が営業を当日に再開した理由。それは、多数の一般客から是非とも撃退士に会いたいという要望が出たからなのだ。
しかし、そうした状況の中でも、彼はそういうのは苦手だからと最後まで監視室から出る様子はない。
「ま、無事終わったんだし、あとは俺の好きにさせてくれよな」
そう一言係員に告げ、恭弥は銃の手入れを始める。
しかし、きっと誰もが思っていたのかもしれない。館内放送から響く少年の声には、どこか優しさが感じられたことを。
「おーっほっほっほ♪ このわたくしの美しい滑りに酔いしれなさいですわ」
一方、こちらはウォータースライダー前。ディアボロを見事撃退した撃退士の1人ということで、その容姿の美しさもあり周囲の視線を独り占めしていた瑞穂は、完全にテンションマックスで舞い上がっていた。
「桜井先輩、いってらっしゃいです。あ、その前に……背中にゴミがついてますよ」
「あら、感謝ですわ」
自分の順番が回ってくると、瑞穂は背後の沙耶から肩についたゴミを取ってもらい、ウォータースライダーへ。
想像以上のスピード。受ける風と巡る光景、そして今もなお続いているのであろう周囲からの注目に満足しながら、大きな水しぶきと同時に着水。
「はぁ〜、中々に豪快なスライダーでしたわね……あら」
が、滑り終わったあと、彼女は異変に気付く。
突き刺さるほどの周囲からの視線。しかし、何故かおかしい。その視線の行きつく先が、皆同じなのだ。そう、その先にあるのは自分の胸……
「え、こ、これは!? み、見てはダメですわーーー!」
そして、彼女はその理由に気づく。そこには、『何故か』肩紐が解けたことで、ワンピ状の水着が悲惨なことになっている自身の姿があったのだ。
元々胸元がメッシュの為、深い谷間部分が透けて見える仕様だったのだが、透けるのと完全に丸見えなのとでは話が違ってくる。
(「め、目立てている。しかし、何ですの、この少し違う感覚はーー」)
目立ててはいるが、その高揚感よりも恥ずかしさが先行する瑞穂。必至でズレた肩紐を戻すのだが……
「桜井先輩、目立てて良かったですね」
彼女は気づいていなかった。あたふたするお嬢様を上から眺めながら微笑む沙耶の姿があることに。
「ねぇ、皆でビーチバレーしようよ」
「あら、良いですね」
「月花が遊ぶなら、ボクも遊ぶ、の」
さて、ウォータースライダーが賑やかになっている頃、海岸にも多くの人が集っていた。
七海の提案で、月花やアトリアーナ、フューリ達は一般人を交えてビーチバレーを楽しんでいたのだ。
「あ、あの、ビーチバレーの後、良かったら一緒にご飯食べませんか!?」
が、なぜか男性陣から次々とナンパされる月花達。
「じゃああたしに勝ったやつ限定な!」
とフューリは本気かどうかはさておき、ナンパする男性を相手に次々と飛ばしまくっているが、元々大人しい月花あたりは完全に困っている様子。
「月花はボクと遊ぶ、の」
しかし、そこは小さなナイトの登場である。アトリアーナのガードにより男達は次々と退散していく。
「バレーの続きする、の」
「そうですね、アトリさんありがとうございます」
そんな少女と男達のやりとりを見つつ、月花は静かに微笑むのだった。
しかし……
「だ、だからボクは男、なんだけど……」
「この際性別は関係ないと思うんだ」
「マナ君って言うのね? ここのレストランおいしいんだけど、後であたし達と一緒しない?」
「え、ええと……」
何より大変だったであろう人物は、何故か男性と女性の両方からアプローチを受けていた七海だったりしたのは内緒だ。
「湯冷めしちまったあとのもう一っ風呂ってのも、中々なもんだねぇ」
「ふは〜ごくらくごくらく」
一方、プールの方の賑やかさとは反対に、こちらは温泉でまったりとくつろぐ由太郎と清十郎。色々と慌ただしかった1日だ。今はゆっくりと休んでほしい。
「記憶を取り戻すためにも……これから先険しくなりそうですね」
雫は女湯横のリラクゼーションルームにてコーヒー牛乳片手に疲れを癒す。記憶を取り戻す為の戦いは、まだ始まったばかりだ。
「あの、一緒に遊びませんか?」
「勿論! じゃあとりあえずドーナッツプールに行こうか。エイルズ君も一緒いこー!」
「いいですよ」
ペルセスの提案に無邪気に笑って返答する朔桜は、隣のエイルズレトラの手を引く。
朔桜に笑顔を向ける少年は、辺りを見渡し、改めて任務が完全に終わったことを実感した。そして、誰にも聞こえない小さな声で呟く。
「なーんだ、意外とたいした事なかったな」
人間の世界を脅かす存在、天魔。そして、天魔に立ち向かう存在、撃退士。
戦いの幕は開けた。覚悟した者たちは剣を握り引鉄を引くのだろう。
これは、これから成長を遂げていくのであろう撃退士の、戦いの始まりを綴った記録である――。