.


マスター:螺子巻ゼンマイ
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
形態:
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2017/02/14


みんなの思い出



オープニング

※ここに至るまでの事情については、特設ノベルをご覧ください


●四国

 愛媛・石鎚山。
 雪に覆われた霊峰の頭上には、巨大ゲート・ツインバベルがそびえている。
 ”焔劫の騎士団”現団長《白焔》アセナス(jz0331)は、集まった団員に向けて口を開いた。
「既にウリエル様から話は聞いていると思うが、俺達は撃退士と共に、天界へ乗り込むことになった」
 ついにという想いと、やらなくてはという使命感。
「……ここまで来た以上、やり遂げるだけっすよね」
 深翠の瞳に強い意志を宿すのは、《紫迅天翔》リネリア(jz0333)。首に巻いた群青のマフラーに、そっと触れ。
「バルから託された未来のためにも、私は前に進むっす」
 二年前の高知戦で最愛の存在を喪い、一時は己を見失うほどに心をすり減らした。けれど託された願い、誓いを繋ぐためには、目を逸らさないと決めた。
「ああ。俺も覚悟はできている」
 淡々と頷く《一矢確命》ハントレイ(jz0332)は、クールな口調の中に熱きものを秘める。
 同朋と戦うことに躊躇がないと言えば嘘になる。いずれ勝つつもりでいた撃退士との共闘にも、複雑な心情がないわけではない。
 けれど護るべきものを護るためには必要なことだと理解しているし、何より団長となったアセナスを強く信頼しているから。
「頼りにしてるぞ、団長」
「お互い様だ、ハントレイ」
 アセナスの言葉に、同期三人は互いに頷き合った。
 かつての団長を敬愛し、亡き先輩達の背を追っていた彼らは今――新しい世代を導く存在に至ったのだ。

「ご安心ください、アセナス様は私が必ずお守りします」
 彼の従士であるキアーラ(jz0372)が、口元を凛々しく引き結んだ。アセナスはありがとうと呟いて。
「だがお前には重要な任務を頼みたい。俺達がエネルギー集積庫を奇襲する隙に、ハミエル様をお救いしてほしいんだ」
 そう説明してから、実はな、と切り出す。
「この作戦が成功した暁には、お前を騎士に推薦したいと思っている」
「わ、私が騎士に……ですか? ですがそれではアセナス様にお仕えすることが……」
「騎士となって俺を支えてくれ。それだけの力が、お前にはあるはずだ」
 キアーラのやる気が天井突破した隣で、アセナスは先日騎士に昇格したばかりのシス=カルセドナ(jz0360)へ告げた。
「シス、お前は撃退士と最も親交が深い。アドヴェンティの件を頼んでもいいか」
「承知した。任せておくがいい」
 はっきりと頷いた弟分を見て、アセナスは頼もしさと共に懐かしさを覚える。
 育ての親である皓獅子公にそっくりだ――と。

 新しき騎士団長は、同志を見渡すと改めて宣言する。
「この任務は今なお各地で闘っている同朋だけでなく、手を結んだ人間たちをも護るものだ」
 開かれつつある新時代を、潰えさせないために。

「我ら誉れ高き『焔劫の騎士団』、誓いの灯を未来へ繋がん!」


●天界

「……まさか、人間と戻ることになるとはな」

 青い空の下。穢れなき白の建物が、低い太陽に照らされて輝く。
 ハントレイはその輝きに目を細めながら……何処か不服そうに、呟いた。

 そう。文句があるわけでは、ないのだ。
 実力はある。信用も出来る。必要な事だと理解している。

 それでも……と、共にここへ来た学園生を見て、思う。
 俺は、こいつらと並び立ちたかったのではなく――

(――いや。いつまでこだわっているつもりだ、俺は)

 ハントレイはその考えを振り払い、仲間たちと共に目的の場所まで辿り着く。
「ここは任せて、先へ行け」
 見据えるは、固く閉じられた一つの門。
 求むエネルギー源、『ラピスヴィーテ』の眠る集積倉庫である。
「頼んだっすよ」
「任せる。お前の判断で動いてくれ」
 リネリアとアセナスは短く答え、学園生と共にその場を後にする。

「……俺達の目的は、陽動だ」

 分かっていると思うが。
 それを目の端で見届けて、ハントレイは残った学園生に告げる。
 まずは見張りを叩き、中の戦力を引きずり出す。
 あとはそれらがアセナスやリネリアの邪魔にならぬよう、注意を引く。

「お前達はお前達で、好きにやれ」

 ぶっきらぼうに呟いた言葉は、まるで突き放すかのようであったが……
 ……その実、学園生達への信頼の証であった。


リプレイ本文


「私は巫 聖羅。貴方の班の一員として一緒に戦わせて貰うわ」

 戦いの前。
 炎條に案内され、撃退士達はその騎士と顔を合わせた。
「今回は宜しくね、ハントレイさん」
 巫 聖羅(ja3916)はそう言って、騎士へと右手を差し出した。
「……、ああ」
 騎士は一瞬固まってから、握手に応じる。
 手の皮は固く、けれど指は細い。
 これが幾度も刃を交えた……そしてこれから共に闘う、天使の手か。
 巫はその手を握り締めながら、感慨を抱く。この数年、彼らと並び立つまでに至った、三つの世界の状況に。

 けれどその時、対する騎士の胸中に浮かんでいたものは――



 時は戻り、天界。

「好きにやれと言われましたらば!」

 騎士の言葉を聞いたルドルフ・ストゥルルソン(ja0051)は、軽やかな足取りで彼の隣に駆けてゆく。
「そりゃあもう、俺とあんたでやることなんざ……一つしかないよねぇ」
「なに……?」
 問い返すハントレイ。ルドルフは、にこりと笑みを浮かべて彼の肩を叩く。
「互いに全力を尽くし心ゆくまでやりあう、これしかないっしょ!」
 だから、とルドルフは敵を見据えて、続ける。
「さっさと終わらせて、あんたの矢にまた挑ませてよ。あれけっこう楽しいんだから」
 たぶんあんたも同じ思いだと思うんだけど、違う?
 ルドルフの呼び掛けに、騎士は黙って目を見開く。

 ――図星、だったのだ。

 彼にとって、撃退士は……並び立つのでなく、戦いたい相手。
 その為にも。もう一度心置きなく刃をぶつける為に、邪魔になる敵をこれからぶっ飛ばす。
 考えることは、その戦術だけでいい。
「……その他の難しいことはさ、別段今悩まなくてもいいと思うよ、俺はね」
 余所見しながら戦うのって、危ないし?
 ルドルフはそう言って、真っ直ぐ前を見ながら両脚へアウルを集中させていく。

「生き残れば幾らでもやり合える機会はある、ってことだね」

 砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)は、ハントレイの顔を横目にルドルフの言葉に頷く。
 撃退士と書いてライバルと読む……といったような彼の顔に、砂原はつい先日の事を思い出していた。
「現に僕は共闘する事になった冥魔空挺団の子と、本気で殴り合ったばかりだ」
 手を取り合う、なんて言っても、そう簡単に気持ちの整理は付けられないだろう。
「彼も、君と同じような気持ちだったらしい」
 撃退士に勝ちたい。負けたままじゃいられない。
 敵でなくなってしまうとしても、もう一度――
「死ななきゃ、そして諦めなきゃ、未来なんて何とでもなるもんさ」
 それはきっと、不可能なことじゃない。『今』を切り抜けられるなら、掴める『その日』もあるだろう。
「……。ああ、そうだな」
 ハントレイは頷いて、はぁぁ、と長い息を吐いた。
「諦めてなど、やるものか」

 やがて響く、狼の咆哮。
 天と繋ぐ戦いの幕は、開かれた。

「さぁ……制圧させてもらうぞ」

 フェンリルの咆哮と共に、鳳 静矢(ja3856)は駆け出した。
 敵のサーヴァント……特にハウンドドッグは既に警戒を強めている。
 けれどその他の多くはまだ、現状を認識してはいない。……阻霊符を発動しながら、鳳は敵の配置を確かめる。
「――そこ!」
 群れる敵の中、『その線』が最も効果的だと判断し、鳳は刀を振るった。
 と、振り抜いたその刃からは、紫の鳥が飛び立ち、敵を薙ぎ払いながら突き進む。
 開いた。攻撃を喰らったハウンドドッグとファルコンが、痛烈な一撃に悲鳴を上げた。
 敵襲だ、と門を守る天使の一人が叫ぶ。
 その声とほとんど同時に、更なる封砲の黒光が戦場を貫き、サーバントの群れに穴を空けた。

「そら、撫でてやるから来いよ!!」

 撃ち放ったのは、鈴代 征治(ja1305)。
 手にしたランスを高く掲げ、彼は周囲の犬を挑発しつつ敵陣へと突入する。
 言葉を、理解したかどうかは分からない。だがその言葉と行動に、サーバント達の視線は鈴代へと向かう。
『ガルァッ!』
 複数のハウンドが、同時に鈴代へと食らいつく。咄嗟にワイヤーを敵の顎に絡めるが、しかし……
「ぐっ……」
 糸の防御を無理やり突破して、鋭い牙が、脚へと突き刺さった。
 威力は十分に抑えたが、服の下で、皮膚が小さく裂かれる痛みを感じる。
 大した問題じゃない。そんなことは。
 敵を、痛みを引き付けてこその陽動だ。命を削るからこその戦いだ。
 鈴代は、久方ぶりの戦場の空気に高揚した。戦士とは、こうでなくては。
(……、そう。こうでなくては、意味がない)
 槍を逆手に持ち替え、喰らいつくその犬を刺し貫く。
「……退けッ!」
 雑魚は十分に引き付けた。後は仲間に任せていい。
 鈴代が無表情に目を付けるのは、その奥。天使と共に入口を守る、ゴーレムだ。
(見るからにタフそうなこいつなら……)
 倒すにも、他より時間が掛かるだろう。それはしかし、こちらの意図とも重なる。
「Oh、なんだかFaceがDreadfulだぜ?」
「……怖い、かな」
 炎條が、彼を狙う犬を斬りつつ声を掛ける。
 鈴代はしかし、戦場だから、と短く返してすぐに敵へと意識を戻す。
「炎條ちゃんはそのまま犬と鷹をお願いね」
「All right! 回復は頼んだぜ!」
 砂原の指示に炎條は頷き、次の敵へと狙いを定める。
「根性とか苦手なんだけど……」
 そして砂原は、引き絞った弓矢の先を天使へと向け、撃ち放つ。
 ひゅん! と風を切り飛んだ矢は、寸での所で天使の剣に弾かれ、頬を裂くのみ。
「……“生きる”為に、役目は果たそうか」
 だが、その小さなダメージで、敵はこちらを向いた。続けざまに、黒い霧を纏う二本の矢が天使を追撃し、一本は肩へと突き刺さって消える。

「ハントレイさんをお見かけしたのは……四国の初手、北東突破戦の時」

 着弾を確かめつつ、かつての戦場を思い起こす草摩 京(jb9670)。
 騎士団と、撃退士。その運命を大きく変えた戦の、初戦。
「私達はキアーラさんと刃を交えていましたが。これも縁ですね」
「……そうだな」
 あの時はまだ、命を奪い合う関係だった。
 たとえ実力を認め合ったとして、共に生きる事は出来なかった。
「ハントレイ……貴方と共に戦う日が来るとは思わなかったけれど……」
 それはお互い様みたいね、と斉凛(ja6571)は微笑む。
「想像出来る筈がないだろう? ……あの人だって、ここまでは」
「想定は、していなかったかもしれないな」
 戸蔵 悠市 (jb5251)が、ハントレイの言葉を継ぐ。
「いいか、しっかり1号についていくんだぞ」
 銀のフェンリル、ルドルフ2号にしっかりと言い含めて、戸蔵は戦線へと送り出す。
 既に『1号』は戦場を突っ切り、目的の位置にはあと一手というところか。
 大事な者達の背を見つめながら、戸蔵は「奇妙な縁だな」と、繰返す。
 騎士と刃を重ねた多くが、今日のこの日を想像していなかっただろう。理想としては求めていても、それが今、こうして結実するとまでは。
「……託された物は、見つかったか?」
 ハントレイの言う『あの人』から。そして散っていった仲間たちから。
 最後に彼と相見えた時、彼はまだ、迷いの中にいた。
 けれど、今の彼の表情は違う。戸蔵がそう感じた時、彼は静かに頷いた。
「俺の弓は、アセナス達を……仲間を、護るためのものだ」
 短い返答は、戸蔵の問いへの、直接の答えではない。
 けれど、十分だった。彼は己の力が、何の為にあるのか自覚している。
「戦いは水の流れのようなもの。場所によって姿を変え、様々な交わりを繰り返す」
 草摩は、この繋がりを水に喩える。天使とも、悪魔とも、人間は交わることが出来た。
 だが或いは反対に……今は交われていても、いつか離れることもあるかもしれない。
「残念ながらハントレイさんほどの腕前は持ち合わせませんが――」
 なればこそ、今この時は、繋がった縁に魂を込めて。
「――この天鹿児弓を持って轡を並べると致しましょう!」
 凛とした彼女の声に、「ええ、私も」と斉は改めて弓を構える。
「心はホットに頭はクールに、今は共に敵を討ちましょうですわ」
 二人の撃退士の呼び掛けに、ハントレイの口角は無意識の内に、持ち上がる。
「ああ、いいだろう!」
 メイドと巫女に騎士は応え、幾重もの矢が戦場に降り注いだ。

 正門前へは前衛の撃退士達が辿り着き、各々の敵へと狙いを定めていた。
「さて、この手を試させてもらおう」
 鳳は、手にした札から無数の棒を射出しゴーレムへと降り注がせる。
 棒には、彼のアウルが強く練り込まれている。目論見が成功すれば、恐らく――
『ッ!』
 黒い棒の弾丸は、ゴーレムの身体に突き刺さり、表面の岩石に罅を作り出す。
 瞬間、弾丸に込められたアウルが岩巨人の体表に反応し、爆ぜた。
(通るか。ならば……!)
 鳳は一挙に距離を詰めながら、札を曼殊沙華の刀に持ち替え、もう一撃。傷跡から切っ先を叩き込む。
「これはそこそこ痛いぞ」
 ギン、と刀が鳴ると共に、刀身に秘められたアウルが追撃を与える。
『……!』
 ゴーレムはしかし、まだ倒れない。お返しとばかりに、重厚なその腕を鳳の身体に叩き込む。
 天界の魔力を持つ一撃は、特殊な力は持たないが、単純に重い。
 無論、その一撃で倒れる程度の柔な鍛え方をしているつもりも……ない。
「堅かろうが厚かろうが……押し切らせてもらう!」
 更に一太刀。とどめの刃は己の腕力のみで、彼はゴーレムを落とす。
「仲間はもう壊されたぞ」
 一方で、鈴代もランスを手に他の岩巨人へと突撃する。
 ダンッ、と強く地面を蹴り、右腕を前に両手で握った槍に、己の全ての体重を懸ける。
 お前も、壊す。黒いアウルと共に突き込まれた一撃で、岩巨人はその胴体に大きな風穴を開けた。
『ガ……』
「……まだ、立ってるのか」
 見た目通りのタフさだ。鈴代は無感動に考えながら、傷に響くように、槍で敵の身体を打つ。
 ゴーレムの拳は糸で絡めて、受ける。極限まで消された勢いでは、痛みはそれほど響かない。
 この程度なら、動きが遅い分むしろ犬共よりやりやすい。すぐにでも仲間と同じ石榑に変えてやる。
(その辺に転がって、呆然と成り行きを見てればいい)
 傷口から穂先を突き刺し、捻じって、砕く。あとは時間の問題だ。

 最後の一体であるゴーレムは、後方からの射撃を受けていた。
 天使達が、警戒し壁として使っているのだ。

「後ろで隠れるだけの臆病者は、素早く討伐して差し上げますわ」

 斉は敢えて相手にも聞こえる様な声量で、彼らを挑発する。
 だが天使たちは憎らし気に射撃を返してくるだけで、出てこようとはしない。
「包囲されない様、確実に減らして行かないと……!」
 その間にも、サーバント達は数体で撃退士に飛び掛かっていく。
 巫は、魔導書の刃で鷹を撃ち落としつつも、現状を確認する。
(出来るだけ長く戦い続ける事。それが私達に課せられた任務……)
 敵の注意を引け、かつ敵の数を減らす事には成功している。
 正門から動かないのも、自分たちに突破されるのを恐れてのことだろう。
 であるなら、そろそろ……?
「……来た!」
 接近する鷹を糸で縊りながら、ルドルフは仲間に合図する。
 敵の、増援だ。
 無数の手下を連れた3人の天使が、慌てた顔で戦場に飛び込んでくる。
 それを合図として、今まで消極的だった天使たちが前へ飛び出していく。
「成程、それを待ってたわけね」
 砂原は軽く溜め息を吐きながら、本を閉じ天へと祈りを捧げる。
「射程圏に標的が何体か入り次第、範囲魔法で纏めて叩くわ」
 騎士と忍者に告げ、巫は火炎で鷹と犬を焼き払う。
「ここからが本番、という所ですわね……」
 天使が戦場に出たなら、こちらからも狙いやすくなる。
「お京さん、共に戦場の華と咲き、舞踊りましょうですの」
「ええ、参りましょう」
 斉と草摩は一瞬だけアイコンタクトを交わし、1人の天使に狙いを絞る。
 ふむ、とハントレイは草摩の顔を横目に、呟いた。
 波の一つもない、穏やかな瞳と、所作。彼女の動きは、騎士に月を映す水面を想像させる。
「っ痛たた……はい一旦撤収!」
 前方では、鷹の攻撃を受けたルドルフが、砂原の射程内まで退避しようとしていた。
 無論、その背を犬が狙うが、銀狼がその首元に喰らいつき、砕く。
「よーしよしいい子だ2号、って誰が1号じゃい!」
 1号のノリツッコミに、2号はわふんと何かを答える。
「元気なのは良いけど無理しないでね、ストゥルルソンちゃん」
 砂原は彼を回復しながら、苦笑い。冥魔の力は敵に有効だが、リスクも大きい。
 炎條ちゃんもだけど、と言いつつ、彼は上空から飛来する鷹の攻撃に気付く。
「させないよ」
 ギン、と風の刃は盾を鳴らし、消滅する。
(スキルも消耗してきたかな。交換含めたらあと……)
 どの程度戦えるか。常に頭に入れながら、砂原は仲間を回復し続ける。
 やがて味方の攻撃スキルも減り、互いに苦しくなってきた頃に――

 ――敵の一部が、撤退を始めた。

「何処へ行くんだい。僕ら放っておくわけ?」
 退こうとする天使に、魔導書の槍が差し向けられる。
「今が好機だな……此方の後続が支障無く倉庫内に突入出来る様に更に少しでも敵を減らすぞ!」
 恐らく、他班の動きに気付いたのだ。鳳は可能な限り響く声で、敵の攪乱を狙う。
 同時に突入を狙う撃退士の動きに、敵の撤退も鈍った。
 その隙に銀狼が入口前に陣取ると、その一撃で敵軍を弾き飛ばす。
 そこで、1号の蹴りが追撃し、天使の動きを止めた。
「まだメインディッシュには早いですわ。お戻りなさいませですの」
 なおも足を止めぬ者には、斉の黒い矢が降り注ぐ。

「お京さん。いつもの様に背中はわたくしに任せて、過激に行くわよ」
「ええ、凛……咲き誇るとしましょうか。貴方達にこの白と黒の華を散らせるかしら」

 そして更に門へと歩を進め、草摩の黒腕と斉の白盾が、戦場の真ん中で舞い踊る。
 多くの敵はそれで足を止められ、完全にとまではいかないが、かなりの増援は阻止出来た筈だ。

 あとは、残る敵との根競べである。

「不変の者より、好ましい方向へと変化を遂げる者、その努力を怠らぬ者こそがより遠くへ行ける……」
 そうは思わないか、と戸蔵はハントレイに問い掛ける。
「君の強さは敵としてよく知っている。今、味方としてそれを頼りに出来る事を嬉しく思う」
「……ああ。俺もだ」
 共に傷だらけになりながらも、彼らは微笑んだ。

「あともう少し、もう少しだけ……!」

 撃退士達の力は、既に限界を超えつつあった。
 何度か倒れ、それでも立ち上がる者もいた。

(――皆が居るから、私達には仲間がいるから……! 戦い続けられる……!!)

 ここにいる仲間達に。後を託した者達に。
 背中を預けたから。背中を、預けられたから。
 体力・魔力の最後の一滴まで振り絞り、戦い続けられる。きっと――



「――……作戦完了だ!!」

 そして、誰かの声がした。
 瞬間、意識あるものは理解した。自分達が――勝利を、手にしたのだと。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: ついに本気出した・砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)
重体: 銀閃・ルドルフ・ストゥルルソン(ja0051)
   <限界を超え、なおも立ち上がり続けたため>という理由により『重体』となる
面白かった!:7人

銀閃・
ルドルフ・ストゥルルソン(ja0051)

大学部6年145組 男 鬼道忍軍
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
新たなる平和な世界で・
巫 聖羅(ja3916)

大学部4年6組 女 ダアト
紅茶神・
斉凛(ja6571)

卒業 女 インフィルトレイター
剣想を伝えし者・
戸蔵 悠市 (jb5251)

卒業 男 バハムートテイマー
ついに本気出した・
砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)

卒業 男 アストラルヴァンガード
『楽園』華茶会・
草摩 京(jb9670)

大学部5年144組 女 阿修羅