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マスター:神無月ゆうめ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/07/31


みんなの思い出



オープニング


「闇の武器商人?」
「うん、聞いた話なんだけどね」

 斡旋所で、鈴木さくらと遊びに来た娘のすみれが話していた。
 話題は、すみれが耳にしたという闇の武器商人。

「闇の、ってことは、何か違法な武器を売ってるとか?呪いの武器とか?」
「んー、凄い武器を手に入れた!っていう噂もあるんだけど……その割には誰も何も言わないらしいのよ。そんないい武器を手に入れたら、自慢して言いふらしたっておかしくないと思うんだけど……」

 高LV強化に成功したら知り合いに話すなど、そのへん割とあけっぴろげな生徒は多い(マイページを見ればばれるというのは言ってはいけない)。知り合いも、妬むどころかお祝いを言うものが殆どだ。
 そんな根明な生徒が多い久遠ヶ原。実際に強い武器が手に入ったなら、口を閉ざすのはおかしい。
 誰かが適当に流した噂なのではないか、そう結論付けようとした時。

「すいませーん、依頼お願いしていいすか?」
「はいはい、何かしら」

 話しかけてきたのは、高等部の制服を着た少年だった。
 茶髪で制服を着崩したちゃらい印象の格好ではあったが、その顔色は暗い。

「ええっと、闇の武器商人って知ってます?」

 少年の口から出たその言葉。今正にその話をしていたので、びっくりする。

「聞いた事はあるわ。でも、ただの噂じゃないの?」
「先輩、まさか武器が欲しいからその商人を探して欲しいとかなの?」

 二人の言葉に、少年は首を振る。

「その……実は、その武器商人、詐欺らしいんす」
「詐欺?」

 思っても居なかった不穏な言葉。その少年も自然と声を落とす。

「俺の友達、その武器商人から買い物したらしいんすよ。伝説級の武器だって触れ込みで、すげえ高額だったらしいんす。でも実際に買ってみたら特殊能力どころかステータスもゴミだったみたいですげえへこんでるんすよ」
「その場で気付かなかったの?」
「強力な武器は負担がかかるから、装備したいなら部屋に戻ってから確認しろって言われてその通りにして判明したらしいっす。負担どころか何にも感じなかったらしいっす」

 確かに身に余る強力な魔具をつけると、その間生命力が減るのは周知の事実だ。事実なだけに、まるで親切のように言われたらそうなってしまうかもしれない。

「その商人に文句言いに行かなかったの?」
「その後すぐ戻ったらもういなくて、何日か探したけど見つからなかったらしいっす。で、よっぽどショックだったのか誰にも言えずにうじうじしてたんで俺が部屋まで様子見に行ってやったらようやく話してくれたんすよ」

 高額なゴミを売りつけた後行方をくらます。確かに詐欺としか言いようが無い。

「ってゆーわけで、そいつを見つけて法的社会的にやっちゃってくれって依頼っす。友達はスカンピンだから依頼料は俺がたてかえることになってるっすけど、もし闇の武器商人からお金が戻ってきたら、直接友達が払うらしいっす!」

 言葉がいちいちちゃらいが、根はいい少年のようだ。

「なるほどね……。でも、闇の武器商人がただの噂じゃないってことは、多分その友達だけが被害者じゃないわよね?どうして他の被害者達は泣き寝入りしてるのかしら」
「あー……なんか恥ずかしいからみたいっすよ」
「恥ずかしい?どういうこと?」

 きょとんとするすみれに、少年はぽりぽりと頬をかく。

「なんか、これを買えば君もヒーローに!とか、今買わないと後悔するぞ、とか、限定品だから二度と手に入らないぞ、とか、なんか乗せられてその気になって買っちゃったらしいんす。で、思い返したみたらこんな言葉で乗せられるとかバカじゃねーのって、恥ずかしくなって誰にもいえなかったらしいっす」
「確かに、思い返して恥ずかしくなることってあるけれど……。でも、そういう生徒を狙っている可能性もあるかもしれないわね」
「バカそうな人ってこと?」
「すみれ」

 短いさくらの叱責に、すみれがはっと口を手で塞ぐ。
 少年は別にいいっすよ、と笑った。

「確かに噂になる程度に被害が出てて、今まで解決しようとしなかったってことは、俺の友達みたいにバカそうな奴とか、押しに弱そうで泣き寝入りしそうな奴とか、客を選んでる可能性はあるっすね!」
「商人を探す手がかりにはなりそうね。ちなみに……そのお友達が買わされたのは何ていう武器なの?」

 さくらの問いに、少年は何とも言えない渋い顔で答えた。

「エクズカリバーっす」


リプレイ本文


「詐欺!それは酷イ、商人の風上にも置けませんねェ」
『えっ』

 見るからに怪しい格好をした四十万 臣杜(ja2080)の言葉に思わず依頼人が声をあげた。
 そんな面妖な外見の上に、参加時の称号が闇の転売商人である。……いや、あまり触れてはいけないのだろう。

「バカそうな人を狙うらしいので、残念ながら私のような人界知識豊富なはぐれ悪魔さんでは囮になれませんねー♪」
『えっ』

 落ちこぼれ系どじっ子悪魔パルプンティ(jb2761)の言葉に再び声をあげるが、ここもやはりつっこんだら負けである。

「ウチのコノちゃんなんて純粋無垢だし何時被害にあっちゃうかわかんないよね、さっさと捕まえなきゃ!!」
「雪お兄ちゃん、恥ずかしいのですぅ……」

 藤井 雪彦(jb4731)はいつもの軟派な雰囲気はどこへ行ったのか同行者の深森 木葉(jb1711)にべったりくっついている。木葉は雪彦と同行出来ることが嬉しいながらも、恥ずかしいといったところか。

『頼んどいてなんすけど……、大丈夫すか?』
「とりあえず、面倒な状況になってるのは理解した」
「ふふ、悪徳な商人さんはこらしめてあげないとね」

 不安そうな依頼人。恙祓 篝(jb7851)は若干目を逸らしつつ、紅 貴子(jb9730)は妖艶な笑みを浮かべながら答える。

「まずは調査だねぇ。被害者の証言を聞きたいところかな」

 ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)が被害者からの聞き込みを提案する。商人の出現場所や時間が解らなければ捕まえようがないのだから当然だろう。

『じゃあとりま俺の友達紹介するっす。詳しい話とかは俺じゃ解らないんで』
「うん、よろしく」

 こうして、件のエクズカリバーを買ったという友達の所へ向かうことになった。


 エクズカリバーな友達に話を聞きに行ったが、確定的な情報は無かった。だが被害にあっただろう人には心当たりがあるということで、その人達の名前を教えてもらうことが出来た。

「ところで気になっていたのだけれど……、武器の名前聞いて偽物だって気付かなかったのかしら?」

 貴子がもっともな質問をする。

『なんか「最近は著作権が厳しい。武器の名前もいつ規制されるか解らないから濁してるんだよ」って言ってました』
「……それを信じましたの?」
『はい!』
「疑えよ!」

 勢いの良い返事を聞いて、頭を押さえる貴子と思わず突っ込んでしまう篝。

「……騙されやすそうな人を狙ってる可能性大、ですわね……」
「問題は、どこでそれを判断しているかだねぇ」

 ジェラルドが苦笑した後、声を潜める。

「もし学園内の様子を観察して声をかけているとしたら……学園関係者の可能性もあるね。聞き込みは少し慎重にいこう」
「だな。なら俺は武器が欲しいからって理由つけて商人のこと聞いてくる。これならそんなに怪しくないだろ」
「ボクはこのまま被害者っぽい人をあたろう。何か解ったら連絡するよ」

 そのまま調査へと旅立っていく二人。貴子は友人の部屋を去ると、笑んだ。

「聞き込みは任せて、こちらは囮役の準備でもしましょうか」


「ふむふむ、購買に寄った日に会ったんだねぇ〜」
『はい……籤で良い物が出なくて冷静さを欠いてたのかも。嫌になっちゃう。返品したくてもどこにもいないし』
「あー、あるよねぇ。そんなに気落ちしないで」

 被害にあった女の子の話を聞くジェラルド。既に何人かに聞いたが、その容姿と性格故か女の子の方が反応が良い。気を悪くすることなく教えてくれた。

「お願いがあるんだ。犯人が捕まったら被害者として名乗り出て欲しい。皆の証言が欲しいんだ。勇気が要るかもしれないけど、協力してくれないかな?」
『わ、私でよければ喜んで』
「ありがとう☆」

 女の子が顔を赤らめながら頷く。もはや口説いているのか聞き込みなのか。
 その女の子にスマイルをプレゼントして別れると、今までの証言と照らし合わせる。

「全員購買か科学室に寄った後、か……。偶然じゃあないよねえ」

 被害者の前に二度と姿を見せないということは、ただ学園の外で待ち伏せをしているわけではないだろう。更に被害者のクラスも学年もバラバラとなれば購買か科学室が怪しいとしか思えない。
 ジェラルドは素早くメールを送信すると、残りの被害者にも話を聞くべく移動した。


「お前さ、闇の武器商人って奴知ってるか?何かすげえ武器売ってくれるって話なんだけど」
『あ、俺会った事あるわ。買わなかったけど』
「本当か!?俺武器欲しいから探してるんだよ」

 まさか被害にあっていない目撃者がいるとは思わなかった。
 クラスメイト曰く、この武器は伝説級の武器だ、これを買って戦えば誰でも強くなれると言われ、実際、見た目は格好良くかなり心惹かれたが、名前が変なのとあまりに高額だったので買わなかったのだという。

「本当にそんな凄い武器があるのか?」
『さあ。いかにも怪しかったしなー』

 話を聞いて、少し興味を抱いてしまった篝。今度はそのへんを歩いていた先生を適当につかまえて話を聞く。

「魔具の製造に興味あるんすけど、これって一人で作れるんすか?」
『ん?無理無理。専門機関で作成してるんだから。個人での製造は不可能だよ』

 先生は軽く答えるとそのまま去っていった。

「個人で製造は無理、か……」


 ジェラルドの報告メールを受けた一行。
 その中でパルプンティは一人こそこそと動き出した。出現条件と見られる、購買と科学室に寄って帰路についたのだ。バカそうな人という条件には当てはまらないと本人は信じきっていたが、何と出会えてしまった。

『やあお嬢さん。素晴らしい武器を買っていきませんか?』

 人気がないのを見計らって茂みから出てきた商人。
 全身を包む茶色いローブ。背格好は全く解らないが声の感じは男性だろうとは思う。

「(ふ、口八丁でクズの武器を高値で買わそうとするのは知っているのです)」

 騙される筈が無いと思ったその時、電撃が走る。

「これは……ロンギヌヌの槍!」

 「ヌヌ」ですよ「ヌヌ!」

「何この絶妙な騙し加減、面白すぎるですよーっ。買っちゃいますよーぅ♪」
『気に入ってくれたようで嬉しいよ。毎度ありー』

 購入してうきうき気分でロンギヌヌを撫で回しじろじろ見ていると、ふと気がついた。値札と共に書いてある商品名。

「ロンギヌ……フ、?」

 ロンギヌスの偽物のロンギヌヌかと思いきや偽者のロンギヌフ、だった。何を言っているのか解らないかもしれないが、多分誰にもわからない。

「騙しましたね?!」

 謎の怒りポイントに触れてしまったらしく、商人が居た筈の場所を睨む。だが、既に商人の姿は無い。

 慌てて、捕獲しようと商人がいた茂みの奥へダッシュしようとする。
 が、何故か突然パンツが脱げ落ちて、それに足をとられてこけて、思い切り茂みにダイブする羽目になったのだった。


 次の日。

「購買か科学室で犯人が見てる、ってのは確定かな」

 予想外のパルプンティの行動だったが、結果的に接触しようと思えば接触出来ることが解った。

「コノちゃん、囮役なんて本当に大丈夫?心配だよ〜」

 男性陣は喰えそうにない人材が多いし、パルプンティは既に被害に合っている。となれば、木葉が囮役になるのは自然だろう。

「大丈夫なのです!雪お兄ちゃんもいるんだから平気ですぅ」

 作戦としては、購買へ寄って帰り商人と接触。武器を購入した直後に雪彦が乱入、兄弟喧嘩に見せかけて装備し、効果が無い事をその場で問いただし、捕獲。その間の事はボイスレコーダーで保存して証拠物品行きだ。

「失敗した時は私も囮をするわね。一度被害に会うと姿を見せないみたいだし」

 そう言ったのは貴子なのだが、いつもの色っぽい貴子はおらず、そこにはおさげ髪にゆるふわ森ガールっぽい化粧と変装の貴子の姿。

「女の子は凄いねぇー」
「女性ハ、天然ノ詐欺師かもしれませんねェ」
「褒め言葉と受け取っておきますわ」

 格好はゆるふわなのだが、そうにこりと笑った姿は何となく怖かった。


 夕方、作戦通り木葉と雪彦は購買へ来ていた。視線を交わし、演技を開始する。

「お給料貰っちゃいましたー。新しい符が欲しいですぅ」
「コノちゃん?この間、装備新調してなかったっけ?無駄遣いはダメだよぉ〜?」
「無駄遣いじゃないですぅ〜!雪お兄ちゃんの意地悪!」

 装備が欲しいことを主張しつつ、軽く喧嘩をしてみせる。演技だが雪彦は結構傷ついていた。
 木葉が一人で駆け出す。

「あっ、コノちゃん!」

 追いかけながらも、本気で嫌われないかが気になってしまう雪彦。至急、明鏡止水を活性化し、木葉をストーキ……もとい、見守る事にする。

 とぼとぼと人気の無い所を歩く木葉。そこにすっと影が差した。


『やあお嬢さん。武器が欲しくないですか?』

 来た。
 木葉はこっそりとレコーダーを起動し、話を合わせる。

「つよ〜い呪符が欲しいのですよぉ〜」
『それは丁度良い、伝説級の符があるのですよ。これを買って戦えば誰でも強くなれます。お嬢さんに特別に売ってあげましょう』

 商人が懐から呪符らしき物を取り出した。キラキラと光るような紋様が描かれている。

「おおぉカッコいいのですぅ〜。でも兄ちゃんに、無駄遣いはダメって怒られちゃうのですぅ……」
『大丈夫、誰にも言いません』
「黙っててくれるのですかぁ。じゃあ買うのですぅ〜」
『毎度あり。そうそう、この場で装備はしちゃいけませんよ。強い装備は体に負担がかかりますからね』
「わかりましたぁ」

 商人の口がにやりと歪む。
 大金と引き換えにキラキラな符を手に入れた丁度その時。

「ちょぉぉぉぉっと待てぇぇぇぇい!!」

 木葉をストーキ…見守っていた雪彦が草葉の影から飛び出した。

「貴様どういうつもりだぁ!!そんな強い魔具持ったら、ウチのコノちゃんが危険な戦場に出ちゃうじゃないか!!」
『な、何だ貴様!イチャモンつけやがって!』

 実際イチャモンである。
 演技とは思えぬ迫力で商人に詰め寄る雪彦に、木葉が怒り出す。

「もぅ〜。お兄ちゃんはうるさいのですぅ!ばかぁ〜!!」
『あ、こらっ』

 買ったばかりの呪符を装備し、雪彦に攻撃を仕掛ける。が、ダメージは無い。

「あれ?つよ〜い呪符だって言ったのにぃ〜どういうことなのですかぁ〜!!」

 素早く商人の服の袖を握りぐいっと詰め寄る。商人が悪びれた様子もなく笑った。

『嫌だなあ、強い呪符なんて一言も言ってないよ?戦ってる内に経験値が入って強くなるよ、って助言してあげただけ』
「うん、覚悟はいいかなっ♪」

 商人の言い訳に、笑顔のままぶち切れる。
 だが商人は開き直り気味に鼻で笑った。

『何、詐欺とでも言いたいの?証拠はあるわけ?』

 証拠は現在進行形で絶賛録音中だが、まだ足りない。
 そこでするりと臣杜が現れた。

「おヤ、何事ですカ?」

 騒ぎを聞きつけた野次馬の振りをして近づく。商人はまたも人が増えた事に舌打ちした。

『何でもないから帰れ』
「ひどいのですよぉ!詐欺なのですぅ!」

 今現れた設定の臣杜に簡単に説明してやると、臣杜はケラケラと笑った。

「嫌ですねェ、こんナ見え透いタ宣伝ニ?引っかかる方モ悪いんじゃなイですかねェ」
『そ、そうだっ。騙される方が悪いんだよ』

 商人の同意の言葉に、臣杜が満足げに頷く。まるで、釣りで魚がかかったかのような感覚。

「あたくしモ商いをする身ですガ、厄介なお客様の相手は大変ですよねェ」
『全くだ。勝手に勘違いして買っているのはそっちだろうに』
「えェ、流石学園と言いますカ、学生は騙しやすイ」

 自分の味方が現れた安心感なのだろうか。商人の口が軽くなっていく。

「宜しければ売捌くコツなど教えて頂けれバ?あたくしどうにモ、警戒されやすくっテ」
『ちょっと自尊心をくすぐってやれば、多少怪しくても買っちまうさ。馬鹿な奴らだぜ』
「そうですカ。まァこんなところでしょうねェ」
『は?』

 臣杜の右手には、録音中のレコーダー。それを見た商人の顔色がサッと変わる。

『お前っ』
「いえいエ、申し訳ございませんねェ。でもほら?あたくし善良な一般市民ですシ」

 謀られた。
 ようやくそれに気付いた商人は、臣杜のレコーダーを奪い一目散に逃げようとする。そこに、今までずっと隠れていたジェラルドが相手を弾き飛ばすようにHit Thatを放った。
 商人が痛さに喘ぎながらそのまま地面に転がる。

「逃がさないよ♪」
「あっけなかったですわね」

 同じく身を潜め様子を伺っていた貴子が現れ、動けない商人のローブを脱がせた。ローブの下には、学園の制服。

「学生……。概ね予想通りですわね」

 逃げられないよう、手錠をかける。
 臣杜のレコーダーは止められていたが、その間も木葉のレコーダーは回っていた。犯行の記録が残っており、今までの被害者で名乗り出てくれるという人も多数いる。ここまでやれば充分詐欺の罪状にもっていけるだろう。

『……ちっ、ヘマしたなあ』

 スタンから立ち直った商人は、今までの往生際の悪さが嘘のように大人しかった。

「ウチのコノちゃんを狙うからこんな事になるんだよっ。まあ可愛いくてつい声をかけちゃうのは解るけどねっ。ウチの妹が一番可愛いからねっ♪」

 喧嘩の演技の必要が無くなった途端、兄馬鹿に戻る雪彦。
 学園に突き出す前に、と、篝が商人に声をかける。

「なぁ。こんなことして、お前にとって魔具ってなんだ?俺たちにとって、こいつらは命を預ける相棒だろ」
『は、ただの稼ぐための道具だろ』

 そう言いながらも、そのままぽつぽつと勝手に語りだす。
 曰く、天魔退治に失敗し学園に馴染めずぷらぷらとしていたら、ヤクザ紛いの連中に声をかけられたらしい。天魔と戦うより楽に稼げる方法に味を占めて、詐欺行為を繰り返していたようだ。つまりただの下っ端である。

「……偽武器売る根性があるならさ、真っ当な、そして強力な魔具を作ってくれよ。俺たちは、それで誰かを救ってみせるからさ」

 商人は黙ったまま顔を背ける。篝の言葉が届いたかどうかは、この後の彼の生き方でしか解らないだろう。


 学園に商人とレコーダーを突き出し、依頼完遂の報告をする。無論、囮の際に使った資金は全額返してもらった。

「変装は無駄になっちゃったわね。まあ、もしもなんていつだってない方がいいのだけれど」
「その格好も可愛いよ?」
「ほえー、ほんとですか〜?……って、無理。自分でも誰だお前って感じだわ……」

 ジェラルドの言葉に苦笑しながら、おさげをほどく貴子。結果的には使わなかった『念のため』だったが、ゆるふわ姿が可愛かったので良し。

「疲れた、何か食って帰る!…腹ペコキャラじゃないぞ?!」

 フリですよね?解ります。
 まあ実際、もう日も暮れて夜になっていた。晩御飯時である。

「コノちゃん、何か食べて帰ろっか?」
「わぁ、雪お兄ちゃんと一緒のお食事嬉しいのですぅ」

 仲良く手を繋いで帰る二人。
 何はともあれ、闇の武器商人事件は終わったのだった。

END



依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:5人

闇の転売商人・
四十万 臣杜(ja2080)

大学部6年204組 男 インフィルトレイター
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
ねこのは・
深森 木葉(jb1711)

小等部1年1組 女 陰陽師
不思議な撃退士・
パルプンティ(jb2761)

大学部3年275組 女 ナイトウォーカー
君との消えない思い出を・
藤井 雪彦(jb4731)

卒業 男 陰陽師
炎刀を秘める者・
恙祓 篝(jb7851)

大学部2年35組 男 ナイトウォーカー
ゆるふわ森ガール?・
紅 貴子(jb9730)

大学部6年308組 女 ルインズブレイド