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マスター:悠希ユタカ
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/03/26


みんなの思い出



オープニング

●掛け合い
「ねぇねぇ」
 長い髪を揺らし退屈そうにしている少女が、てきぱきと部屋を片付けている小柄な少女へと声を掛けた。
「なに? くーちゃん。ちょっと私忙しいんだからあんまり変なこと言わないでよ」
「パンはパンでも食べられないフライパンってな〜んだ?」
「……うん、えっと、なにから突っ込めばいいのかな……? まず変なこと言わないでって言ったのになんか変なこと言ってるし、食べられないフライパンってなに? もうそれ答えじゃないの?」
 小柄な女性――冴木八重(さえきやえ)は机にべったりと顔を押し付けだらだらとしている幼馴染みのくーと呼んだ少女、月見里空(やまなしそら)へと疑問をぶつける。
「ぶー、正解は『最後の審判』でしたー」
「え? なにそれ、なんか無駄にかっこいい」
 部屋の掃除を進めながらも空の言葉にしっかりと答える八重。散らかった書類などを丁寧にファイルへとしまっていく。
 空はその八重の姿を眺めながら得意気な顔で言った。
「クイズの答えがフライパンだって? ふっ……飛ばないフライパンなんてただのフライパンさ……」
「……うん、ちょっと意味わかんない。フライパンは普通飛ばないし。まさかフライにかけてるとか?」
「……!」
「なに、その『その手があったか!?』みたいな顔」
 なんだかんだと言って空の他愛もない話に付き合っている八重。姿は幼く見えるが面倒見は非常にいいのだ。
 話を聞いてくれる八重に、空は調子に乗って質問を飛ばした。
「じゃあこれはなんだ?」
 空はひょいと、八重の机の上から豚さん形貯金箱を取り上げ質問する。
「私の貯金箱だけど……」
「ぶー。これは『飢渇たるシュヴァイン』でしたー」
「なにそれ!? 全然貯金しない私への皮肉!? そしてなぜドイツ語!?」
「じゃあ、次これ」
 続けて空が選んだのは、今食べている最中のポテトを薄切りにして油で揚げたお菓子。
「うんと……クリスプス……だよね?」
「ぶー。これは『恵与されし豊穣の賜物』でしたー」
「なんでただのお菓子がそんなに大層な名前なの!?」
「ラストチャ〜ンス! 最後の問題です! これはなんだ!?」
 空がそう言って取り出したのはどこから持ってきたのか、どこからどう見ても『味噌』である。お味噌汁を作るときに使うパックに入った割と大きめの味噌だった。
 それを見た八重はなんとか答えてやろうと頭を捻る。
「それは……『熟成されし穀物の恵み』とか?」
「八重、何言ってんの……? これ味噌じゃん……」
 可哀相な子を見る目で空が八重を見る。その姿に八重はちくしょーと心で叫びながら膝を折った。
 そんな八重に満足しながらも空は口を尖らすと声を大きくして言った。
「なんかさー。面白いことやりたい。もっと刺激のある日々を送りたい。実は私は天使と悪魔のハーフでこの世界の種族との架け橋になる存在で、敬い奉られて、テレビとかに出て大金持ちになって遊んで暮らすとかさー」
「本音! 本音出てる! しかも本音は最後の方だけだよね!? あとなんか重大な存在なはずなのに遊んで暮らしちゃってるし!」
 普段から『あの二人って面白いよね』と噂される二人のやりとりは別に誰かが見ているから発生するものでも決してなく、普段通りの日常を送っているとこうなってしまうという、超自然体によるものだ。
「う〜ん、暇。暇だからちょっと八重、制服脱いで。撮るから」
「なんで!?」
 最早お笑い芸人である。
 空が何かを言う度に反応する八重。そんな姿が面白くて空もちょっかいを出し続ける。微笑ましい空間がその場を支配していた。
 そんな中、部屋の掃除をしていた八重の手からするりと一枚のチラシが床へと落ちた。いつもならば決してそんなものには目もくれずだらだらする空だったが、ちょっとした気まぐれでそれを手に取る。
「……これだ!!」
「ぴゃ! なに、くーちゃん。驚かさないでよ」
 くわっと、いつもはジト目な両眼を見開き叫んだ空の持つチラシへと八重も目を移した。

●テレビ局
「くーちゃん、なんか緊張するよ〜」
「ん〜。別にこんなのどんと構えてればいいんだって」
 二人はとあるテレビ局の個室へと通されていた。
 芸能人に会ってしまうのではと、びくびくしている八重を尻目に空はいつもの調子であっけらかんとしている。
 そこへ待合室の扉がガチャリと音を上げて開かれた。
「お待たせしちゃったわね〜。あら可愛らしい女の子が二人。テレビ映えもしそうね〜」
 そう言って入ってきたのは胡散臭さこてこてのプロデューサー。サングラスを着け、上着の裾を腰で巻いていたりなんかする。女性口調ではあるが、外見はれっきとした男性だった。
「これを見てちょっと応募にきたんですけど」
 空は八重の部屋で見つけたチラシをプロデューサーへと提示する。
「OK、OK。その話はもう聞いてるわ。実はまだその番組の企画どうしようか悩んでいたところだったのよね。応募の枠もまだ空いてるわよ。もう契約する気マンマンだったから貴女たちをここまで通したんだから。撃退士さんとか扱えちゃうなんて、あたし興奮してきちゃう」
 チラシに書かれているのはローカルクイズ番組のプレ放送出演者募集の報せ。
 その出来によって、正式な番組放送が決定するか否かという試験的なものだ。
「それじゃあ、二人以外にも参加できる撃退士さんを何人か連れてきてくれるかしら? わいわいと盛り上げてくれる方たちがいいわね〜。ギャラは結果次第ってところかしら」
「任せてください。撃退士たちはそれぞれ個性的で類型を破るような方たちばかりですから活躍できると思います」
 空が自信を持ってそう答えるとプロデューサーはこれ以上なく目を細めて笑った。
「じゃあ期待しているわ〜」
 こうして、空と八重の二人はクイズバラエティ番組参加者を集めるため学園へと戻っていったのだった。


リプレイ本文

●控え室

「テレビ、TV……♪ とても楽シミなのデス」
 うきうきとはしゃいでいるのは鵜之真似 コルボー(jb3743)。
 見上げるような大きな体躯と仮面から、途中、警備に止められるというアクシデントもあったが無事テレビ局へ。
「テレビなのです♪ テレビなのですー♪ ネジ、アイドルへの階段を着実に登っているのです☆キラッ」
 同じくはしゃぐのはアイドルを目指している螺子巻ネジ(ja9286)。
 大きなネジがトレードマークの彼女は新品のネジか馴染みのネジかを迷いはしたものの、使い慣れたネジを頭に装着して出番を待つ。
「それでは皆さん、よろしくお願いしまーす」
 スタッフが集まっている撃退士たちに声を掛けた。もうすぐ本番が始まる。
「ぐふふ……これは楽しい番組になりそうね……」
「くーちゃん、こわい! 顔がこわいよ!」
 この展開に空はにやりと笑みを溢し、八重は不安で真っ青であった。


●放送開始

 皆がテレビ出演に緊張する中、番組は順調に進行していた。
 参加者は正解すると上がっていくゴンドラに乗せられ、頭上には水風船なんかも用意されていちゃったりする。
『第一問、アウルという能力が発現したのは西暦何年のこと?』
 早速クイズが出されるがこれは歴史的にも有名な出来事であり、難易度は低めのものだ。
 回答ドン!
『西暦で……地球が72万5千回回った年』
 得意気に答えたのは和泉早記(ja8918)だ。
 自分は地味なのではないかと気にしている彼はインパクト重視か、ぐるぐる瓶底眼鏡を着用しての参加だ。
「あ、これ? 賢そうに見えるかなって」
 くいっと眼鏡を押上げ、きらりと光に反射してみせる。真面目そうにみえて箱入りで育った和泉はどこか浮世離れしていたりする。
 この問題の正解は、西暦1987年。自転計算すると確かに合っている。
 次に期末試験かと思うほど勉強してきたという雪室 チルル(ja0220)にカメラが寄り、回答を促す。
「あたいテレビに出てる! おばあちゃん見てるかな?」
 チルルが北国の故郷にいる祖母を思い浮かべるも、この番組はローカル番組なので残念ながら祖母のいる地域では放送されないだろう。
 しかし、祖母のために予習の疲れも見せずチルルは元気に答えた。
「やるからには優勝は頂くんだから! 答えは1987年!」
 フリップボードを堂々と公開する。
 他にも依頼明けの眠い授業もしっかり聞いていた静馬 源一(jb2368)、人間界の文化にも詳しい悪魔、コルボーがこれに正解。
『さて、他の参加者の答えも見てみましょう』
 司会者が他参加者の面白回答を発表していく。
『1500BC頃。最初の覚醒者はエジプトを脱する際に湖を割ったとか』解:フィール・シャンブロウ(ja5883
『2012年なのです♪』解:ネジ
『1995年9月1日なのです。あ、これはお兄ちゃんの生まれた日だったのです!』解:メリー(jb3287
『昨日? わかった! 明日!』解:山城 珠邑(jb4641
 謎の紀元前宣言をしたフィールはそれっぽくも適当に答え、他の撃退士は何かを勘違いしてしまったような回答。
「あひゃひゃひゃひゃ!」
 これに対し、エキストラではなくプロデューサーがなぜか一番大声で笑っていた。
 実に幸せそうである。主に頭の中が。お花畑的な意味で。
『さぁ、どんどん行きましょう!』
 空・八重も順調に正解し、六人のゴンドラが上がる。
 緊張がほぐれてきたのか、徐々に撃退士たちは各々のポテンシャルを解放していった。

『第二問、太郎君がお使いを頼まれて500円持って出掛けました。品物は300円でしたが、途中で400円落としてしまいました。さて、足りなかったのは?』
 この問題、実は引っ掛け問題である。
 200円とまともに答えてしまったのはチルルと静馬。チルルはたどたどしくも遠回りな図解と共に答えを出し、静馬に至っては「簡単すぎるで御座るよ!」と、どや顔である。
「えーと、いっぱい! わかった! 100円!」
 と元気に答える、珠邑。彼女は身体を動かすのは得意だが、頭を使うことは少々苦手らしい。
「拾ってくれる愛犬……かな」と素で答える和泉に、「チャックなのです☆」と答えるネジ。正解ではないものの、ちょっと惜しいところを突いている。
 ここでも平然と珍回答を出してしまっているのはメリーとフィール。
『さぁ、メリーさんの回答です!』
「それは……妹への思いやりなのです。太郎君には妹の花子ちゃんがいるのです。いつも花子ちゃんに意地悪をする太郎君に神様が罰を与えたのです。メリーのお兄ちゃんのように妹にも溢れる愛情を注がないと駄目なのです」
『えーと、さきほどもお兄さんについて答えていましたよね? メリーさんにはお兄さんがいるのですか?』
 司会者のその質問にメリーは早口で答える。
「メリーはお兄ちゃんのことなら得意なのです! 身長から体重、はたまた体脂肪率や筋肉の付き方、胸囲や腕の長さまでわかるのです! 勿論、今何しているかもわかるのです! この時間なら(割愛)で(割愛)してて(中略)な上に(以下略)」
『そ、そうですかー。お兄さんが大好きなのですね』
 司会者は苦笑いを浮かべつつフィールの元へ。
 フィールの回答はこれだ。
「目的地までを1km、途中の0.5km地点で落とし、入店と同時に気付き戻ったと仮定。更に65cmの高さから落としたとする。空気抵抗が無いと0.36秒後に100円玉が地表に届く。行き帰りが等速なら秒速2.8km程度で走れば落ちる前に落下点に戻り掴める。即ち落としたことにならない」
 既に落としてしまったあとの問題なのに真顔でそう答えるフィールには、アンニュイな雰囲気とも相まって異様な説得力があったが、回答は至って常識外のものであった。
 この問題には空と八重もやられたが、唯一の正解者が存在した。
 それはコルボーである。
「ハーイ!」と子供のお手本になるかのような元気な返事をして回答を述べる。
「500円持ってイテ、400円落とすというコトは……100円玉5枚! 4枚も落トシテ気付かないなんて、注意力が足りないのデス!」
『コルボーさん、大正解!』
 そう、正解は『太郎君の注意力が足りない』でした。※反論はお受け付けしません。
 コルボーのゴンドラが更に上がる。
 調子に乗ったコルボーはカメラに向かって叫んだ。
「現場の斎藤サーン」
 映像が切り替わり、一人の男性が映し出された。
「はい、こちら斎藤です。今日の●●は天候がやや優れず……」
 そして、またこのクイズ番組に映像が戻る。
「誰!? 今の誰で御座るの!?」
「斎藤さんデス」
 どや顔で間違ってしまったのを照れつつもつっこむ静馬に、冷静に返すコルボー。
 一体さっきのは誰だったのか……謎である。
 
 それからも番組は大いに盛り上がりを見せた。
 一つの回答ボタンの奪い合いのクイズが出ると「いよっしゃぁー! あたしの時代が来たー!」と、珠邑がその身体能力を活かし回答するも全くの不正解だったり、ネジが「ネジ、このネジを巻かないと動けないのです♪ ネジのネジ、巻いてくれるのです?」と、誰彼構わず頭のネジを巻かせたり、和泉が徐に逆立ちし、「皆様の地球を支える撃退士です」と身体を張ったギャグをすれば、「んな、アホな!」と、静馬が持参した妖刀『張閃』(ただのハリセン)で華麗なつっこみをみせたりとやりたい放題だ。
 ここで沈黙を守っていた空がすっくと立ち上がった。
「暖気運転はできたようだな、諸君。ではここで撃退士物まねしりとりスタート!」
 空が叫ぶと何やら手首をぱたぱたし始める。
 皆が首を傾げる中、八重が恥ずかしそうに補足をした。
「これはクリオネだそうです。『ネ』で始まる物まねお願いします……」
 これを見てフィールが握った手をくいくいと動かす。どうやら『ねこ』か。

 ※ここからは各自予想して読み進め下さい。

 手で頭の上に円をつくり、もそもそする和泉→口をくちゃくちゃしながらゆっくり手で歩く振りをする珠邑→歌って踊りながら手元を指差すネジ→両手を広げ威嚇する静馬→肩を怒らせ手足で歩くコルボー→受話器を耳にしてボタンを押すが、がっかりする振りをするメリー→手を挙げてはしゃぐチルル。

 ※解答は表示されません。多分皆色々勘違いしています。皆がカメラの前でこんな動きをしているのを想像してお楽しみください。

「ハラショー」
 親指を立て、特に意味もなく満足気な顔をすると空は着席する。スタジオはちょっとした大混乱である。
「ああ……くーちゃんが何かするとやっぱりこうなっちゃうんだ……」
 八重も呆然である。
 空気を読んだコルボーはカメラに向かって叫んだ。
「では、ここで一担CMです!」
 気を効かしたスタッフがCMに切り替え、少々の休憩が取られた。
 混乱はあったものの、番組もなんとか軌道修正し、終盤に差し掛かる。
『では最終問題です!』
「ちょっと待ったー! 最後なんだし正解者には3倍ぐらい点数が欲しいわ!」
 ここまで順調に正解しているが、まだトップに立っていないチルルが進言する。
『大丈夫です。今までの問題は一問10点でしたが、最終問題は3億点入ります。まだ誰にもチャンスはあるので頑張ってください。優勝賞品には木星の土地が用意されております!』
「今までのクイズはなんだったので御座る!? と言うかつっこみ役が明らかに足りてないで御座るよ!」
 すかさずつっこむ静馬。参加者どころかスタッフにもつっこまねばならないとは彼も大変だ。
「木星ってガスの星だと思ったけど……土地なんてあるのかしら」
 フィールの呟きもスタジオのテンションに流されていく。
『それでは最終問題! ロシア語では「ハーオス」、アラビア語では「ファウダー」、ではスペイン語では?』
 こちらの正解は『カオス』。日本語で混沌となる。
 では、参加者の回答を一気に公開!

『カオス』解:チルル わからないがかっこいいスペイン語っぽいものを書いてみた。
『ネズミ王国のネズミのこと』解:フィール (適当)
『那由多の流星(メテオ)に秘されし楽園(エリュシオン)から湧き出づる混沌(カオス)』解:和泉 (真顔)
『ワッカランヌ』解:ネジ ネ、ネジはまだ中学生なのですー!
『か、かおす!?』解:静馬 あわわわ、わからないので適当で御座る! 久遠ヶ原と言えば……かおす!?
『Caosなのです』解:メリー これくらいはわかるのです。
『トフー・ヴァボーフ!!』解:コルボー (ヘブライ語)
『パエリア! いや……生ハム! と見せ掛けてカオス! ……な建築物!!』解:珠邑 自信あり気

 ここまで全問不正解のメリーが正解したり、適当に答えた者が正解するという大波乱が起きた。
 惜しかったのはコルボー。『トフー・ヴァボーフ』は確かにヘブライ語で混沌のことだが、なぜその言語をチョイスしてしまったのか。
 珠邑に至っては、最後に大正解かと思われたのに、蛇足を付け足し不正解になってしまったりしている。
『おっと〜! 全問不正解者が出てしまいました〜! 残念ながらそちらの方々には罰ゲームが用意されております!』
「ひゃっほー! 待ってましたー!」
「いやっほー! 待ってましたー!」
 罰ゲームにテンションの上がる空とプロデューサー。
 この場にいる皆が、
(駄目だこいつら……早くなんとかしないと……)
 と、思ったとかなんとか。


●結果的に

 全問不正解のフィール、ネジ、珠邑の頭上にある水風船が割れる。
「うひゃあ! びしょ濡れなのですー!」
「仕方ない、脱ぐか」
 こんなこともあろうかと事前に水着を着用していたネジと珠邑。キュートなスク水のネジとセクシーな黒ビキニの珠邑に会場にいる男性陣から歓声が上がった。
「よし、あんたたちのユニットを『ベイシングビューティー』に命名」
 空が二人に勝手な名前をつけた。
 ちなみにフィールはしれっと水を回避していたが、それを見逃さなかった空がパイでフィールの顔を狙う。それも回避したフィール。その後ろには「罰ゲームだけは受けずに済みますように……」と立派なフラグを立てたお祈りをしていた静馬の姿があった。見事彼の顔はパイに塗れる。
 それだけでは飽き足らず、空は罰ゲーム用に用意されていた激マズ飲料を濃縮還元し和泉に手渡す。
「確かこれは『おいしい場面』とやら」
 本や動画でお笑いを学習してきた和泉は、ここは攻め時とその飲料を口にするが、空の手によって悪魔の飲料と化したそれは和泉の意識を奪う。
「あ、深淵の向こうで祖母が手を振っ……」
 バタリコス! という音を立てて和泉はその場に撃沈。
「まだまだー!」
 最早罰ゲームとか関係なく空は参加者を襲い、最終問題の如く混沌の坩堝へと誘っていく。
「あらあらあら……これはちょっとやり過ぎじゃないかしら……」
 徐々にプロデューサーの顔色も変化してきていたが、空は止まらない。
「む、アレ気になるな……おっと手が滑ったー! そいやっ!」
 空は手に持っていたパイをコルボーの仮面に向けて炸裂させた。
(そいやって言った。くーちゃん、そいやって言った。絶対、手滑ってない)
 もういろいろ怖くてスタジオの隅っこで丸くなっている八重。
「オヨヨ……仮面にクリームが。帽子やコートはいいですがコレだけは駄目ですヨ」
「チャーンス!」
 視界の悪くなったコルボーの仮面を空が下から突き上げ仮面が外れる!
 が、
「駄目なのですー! 阻止なのです!」
 頭のネジに共感するものがあるのか、ネジがカメラに移りそうなコルボーの顔をさっとタオルで隠した。
 そこで歓声。
 どうやらスタイル抜群である水着の珠邑が熱湯風呂に挑戦しているようで、男性カメラマンはすぐにそちらへカメラを合わせた。
 カメラがコルボーに戻った時には仮面は元通り付けられており、彼の素顔を写すには至らなかった。この日、大柄なそこそこのイケメンが目撃されたらしいが、それが誰なのかは未だ謎だったりする。
「ふはははは! 逃げ惑うがいい! このスタジオは私がジャックした! ピーでピーなピーーがピーーー! ピーーーー!!」
「あー! ストップ、ストップ!」
 暴れ回りながら自主規制満載な空の絶叫と共に顔の引きつったプロデューサーは番組を終わらせたのだった。


●後日談

 一応参加者たちはそれぞれの活躍に見合ったギャラとスポーツドリンクを支給され、帰路についた。
『残念ながらクイズ番組はレギュラー番組になるには至りませんでした。ご了承ください』というテレビ局からの連絡が各自に届く。
 その報せを見て空は言う。
「盛り上がったのにな……反省はしている。反省はしているが、後悔はしていない」
 そう断言する空に、
(後悔してないの!? 私の苦労はいつ終わるんだろう……)
 そう思い悩む八重であった。

 END


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: めざせアイドル☆・螺子巻ネジ(ja9286)
 異界のエンターテイナー・鵜之真似 コルボー(jb3743)
重体: −
面白かった!:4人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
みさと城の制覇者・
フィール・シャンブロウ(ja5883)

大学部9年24組 女 ダアト
撃退士・
和泉早記(ja8918)

大学部2年49組 男 ダアト
めざせアイドル☆・
螺子巻ネジ(ja9286)

大学部2年213組 女 アストラルヴァンガード
正義の忍者・
静馬 源一(jb2368)

高等部2年30組 男 鬼道忍軍
蒼閃霆公の心を継ぎし者・
メリー(jb3287)

高等部3年26組 女 ディバインナイト
異界のエンターテイナー・
鵜之真似 コルボー(jb3743)

高等部3年11組 男 ナイトウォーカー
華麗なるトレーサー・
山城 珠邑(jb4641)

大学部4年300組 女 鬼道忍軍