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マスター:悠希ユタカ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/03/03


みんなの思い出



オープニング



 にゃーん。
(よくぞ集まってくれた、皆の衆。本日は決起集会を行う。心して聞くように)

 にゅあーん。
(はい! 長老!)

 にょいーん。
(最近、人間どもの界隈では『ちよこれいと』なるものが大量に出回っているそうじゃ。それはこの世のものとは思えないほどに甘く、愛しく、狂おしいものだとワシの祖父が言っておった)

 にゅるあー。
(そんなものを自分たちだけで楽しむなんて人間めー! がやがや)

 なーお!
(静まれい! そこでじゃ。今年行われる『ちよこれいとのまつり』の日、我らは一念発起の志のもと、人間どもからちよこれいとを奪い、皆でその至極の境地を味わうのじゃ!)

 うー! にゃー!
(おー!)

 ぐるにゅふふ。
(あれは悪魔の食べ物だ、決して口にしてはならぬ、誘惑に負けてはならぬと幼き頃より祖父より言いつけられておったが、新しい時代を築くには新しい風を吹かせねばならぬ! 今年を猫の年にしようぞ!)

 うー! にゃー!
(おー!)

 斯くして、今年のバレンタインデーには猫たちが街中のチョコレートを人間から奪うという事件が発生。チョコレートを奪われた少女たちは嘆き悲しみ、泣く泣く財布を握り締めチョコレートを買うために店に並ぶこととなったのだった。

 しかし、本当に嘆き悲しんでいるのは少女たちではなかった。街中に響き渡る慟哭。
 それは、猫の飼い主たちや愛猫家の者たちによるものだ。

「このままではこの街の猫たちは……!」
「うちのミィちゃんが……!」
「どうか……どうか気持ちを入れ替えてくれ!」

 この者たちは猫が泥棒猫になってしまったことを悲しんでいるのではない。猫たちの身を案じて声を上げているのだ。
 チョコレートにはテオブロミンと呼ばれる成分が多量に含まれており、人間にとってはなんということもないこの成分も代謝速度が遅い動物たちにとっては驚異的な毒となる。猫や犬を愛し、ペットにしている者たちにとっては常識というほど有名な話だ。だが、猫たちはそんなことを知らない。
 もし、猫たちがチョコレートを口にするようなことがあれば凄惨な未来が待っているだろう。

「保健所……いや、だめだ! とてもではないが一般の人間にはこの状況を打破できるだけの力はない……! 撃退士に……撃退士に連絡を!!」

人々の想いは電波に乗り、久遠ヶ原学園事務へと届けられた。




「これより『猫・チョコレート泥棒特別対策班』による緊急会議を開始する」
 会議室では物々しい雰囲気の中、着々と今回の事件への対策案が講じられていく。
「今回の事件に参加している猫の数は少なく見積もっても600匹以上。いつ彼らの口にチョコレートが入ってしまってもおかしくない状況です。事態は一刻を争います。この界隈のリーダー猫である『ココア』を探し出すことが事件解決の糸口になるのではと考えています」
「うちでも猫を飼っているのですが聞いてみたところそんな集会には参加したことがないと……」
「まずはココアの片腕であるコテツを懐柔したほうがよろしいかと……! 奴は3丁目の『魚八』によく魚をせびりに来るようです」
「しかし、コテツは飼い主にも懐かず、話では山口さんの所のキナコの言うことしか聞かないと悪い評判が……」
「しかし、山口さんは最近外飼いの危険性を懸念してキナコを外に出さない方針らしい。コテツともしばらく会っていないのではないか? こんな状況では……」
「一体どうすれば……」
 皆、真剣な表情で作戦会議が進んでいく。
 何も知らない者がこの会議室を覗いたら『何いい年した大人たちがファンタジーなことを』と思うかも知れないが本人たちは至って真面目であり、実際にこの事件は大変なことなのだ。

 会議ですぐに『特務猫救出班』【キャット・ザ・キャッチ】、通称【キャッキャ隊】が結成され街へと飛び出していく。
 にゃんこたちの未来は彼らの手に託されたのだった。




 にゃーん。
(ボス! たくさんのちよこれいとが手に入りました!)

 ぐるるるる。
(よくやった! さぁ、皆の者! 宴じゃ! その箱を開封するのじゃ!)

 ぶにゃー!
(あっ! 開かない! ボス、これ開かない! かりかりかりかり……)

 タイムリミットはあと僅か……


リプレイ本文



(猫が……ねこ……ね、猫が……!)
 普段冷静なパウリーネ(jb8709)だったが心中焦りを見せていた。どうやらもふもふは好きらしい。小柄なその姿の脇にはまたまた小柄な二人組。
「「キャッキャたい、しゅつじーん! <(`・ω・´)/☆\(・ω・´)> なのっ!」」
 華麗にポージングを決めるのはキョウカ(jb8351)と天駆 翔(jb8432)。
 三人はもふもふのために街を駆ける。
 それを見送り、
「まぁ、あれですね。猫がチョコを狙うのも驚きですが……対策班の方々が猫の事情に精通していることの方が私は驚きですね」
 そんなことを笑顔で言っていたのは石田 神楽(ja4485)だ。
「せやな。普段猫と一緒にいるから自然とわかるもんなんやろか、えぇもんやね」
 相槌を打つのは神楽の隣を歩く宇田川 千鶴(ja1613)。
 二人はまずコテツ、キナコを味方にするため山口家へと向かう予定だ。猫たちの危機ではあるものの、訪問のお土産を買うために商店街へ出向く二人はどことなく楽しそうだった。

 キャッキャ隊に配属されたもう一人の撃退士は積極的に猫救出へ向け音頭を取っていた。しかし、そんな相談卓(メタ)の振る舞いは仮の姿。
「ネコたちにチョコは渡しませんよ! 全てのチョコは自分のものです」
 そう淡々と言い放ち、黒いオーラを立ち上らせる秋嵐 緑(jc1162)の姿は、一波乱起こすのに十分な様相を呈していた。




 先日のバレンタインデーには酷い目にあったライアー・ハングマン(jb2704)だったが、この日は待ち合わせ通り藤谷 観月(jz0161)に逢うことができた。
「そろそろ行こうか、埋め合わせも兼ねて今日はどこまでも付き合うぜ?」
 笑みを見せるライアーであったが、この男、どうにも不幸体質な嫌いがあったりする。
「では、今日はライアーさんの服を買いに行きましょう……」
 歩き出した瞬間だった。
「何か騒がしいな? ……あ、こら! 観月さん、大丈夫か!?」
 当日渡しそびれたチョコを持っていたせいか、猫に好かれる質なのか、猫に集られる観月。若干観月は幸せそうだがライアーは慌てて猫を追い払う。
「怪我はないかね? 毛だらけになっちまったなぁ。落し物とかは……なさそうだな」
 と、見渡すライアーだが異変に気づいた。観月が持っていたチョコ入りの袋が見当たらない。やはり不運はやってくるらしい。
「……これはお仕置きが必要だな、色んな意味で」
 ニヤァと、ここぞとばかりに悪魔的笑みを浮かべるライアーであった。


「にーたがねこたんにチョコはダメってゆってたからたべさせない、なのっ」
 街中で見つけたチョコの箱を開けようとする猫たちにキョウカは召喚獣のケセランである『キー』を飛ばす。
「きーた、がんばれ、なのっ」
 実はふよふよ浮いてるだけのケセランを自らの春一番で飛ばしているのでキー本人(?)はあんまり頑張ってはいなかったりする。
 キーに猫が気を取られている隙に翔は食べても安全な猫用チョコへすり替えを行い、ヒリュウを召喚。
「よーし、ついせきだー!」
 チョコを咥えて逃げた猫たちの後を追いヒリュウは空を飛んでいった。
 それを店から出てきた神楽、千鶴が見ていた。
「子供は元気ですねぇ」
 二人の手には銘菓である焼き菓子と猫籠。
「さて、そろそろ山口さんの家へ向かいコテツの説得も行わないと。……自分でこう言うのもなんですが、猫に説得とはこれ如何に?」
「猫は案外頭えぇんやで? あざといし、そこがかわいい」
 空を仰ぎ呟く神楽に千鶴は言うと、自然と猫を探すように視線を漂わせる。
 二人での買い物を楽しんだ神楽たちは目的地へ歩みを進めた。


 翔のヒリュウを監視している青い鳥がいた。
 丸っこいフォルムでぱたぱたと飛ぶと、飼い主である緑の元へと戻ってくる。
「Pちゃん、お疲れ様です。なるほど……あそこに倉庫が。その前にもう一仕事です」
 そう言うと彼女は区役所に向かうのだった。


 パウリーネが倉庫に着くのとヒリュウが来るのは同時だった。キョウカ、翔たちと別に独自の調査を進めていたパウリーネはもふもふへの愛とか希望とか根性とかその辺をごった煮にした力で猫の集会所である倉庫を突き止めていたのだ。
 彼女が倉庫の扉を開いてみれば、猫、ねこ、ネコ。
 みんなして『うー! にゃー!』とか言っている。
 パウリーネはすぐにボス猫であるココアに狙いを定め、意思疎通を図る。
(チョコレート菓子というものは人間でも体重の一割以上の量を摂取すれば危険なのだ。ましてや犬猫はテオブロミンという成分が身体に溜まる。これは中枢神経に働いて心臓毒となり……いわゆるチョコレート中毒を引き起こす。そこで今回ご紹介するのがコチラ)
「うな?」
 猫相手に通販番組のようにカカオの入っていない猫用チョコを薦めるパウリーネ。その声は届いているのかいないのか。
 開け放たれた倉庫の扉から中を眺めていた近所のおじさんたちは、猫相手に必死に何かを語りかけている幼女をなにごとかと見守っていたりした。

 そこへ、キョウカと翔が飛んできた翼を収め着地。
「「とうちゃく! \(ω・)人(・ω)/ なのっ!」」
 なかなか意思が伝わらず苦戦するパウリーネと猫の闘いに参戦するのだった。

 しばらくして街中の防災スピーカーが鳴り響いた。
『至るところにピンク色を形成するモノ共よ、心して聞け! 貴様らの愛のイベントであるバレンタインとやらのチョコは全て我のものである。我の為だけにチョコを用意しろ。決して『意中の相手に渡す』とか『彼女に逆チョコを』などと浅はかなことを考えるでないぞ。考えた者から無限チョコ地獄の刑だ! さぁ、今から回収しに出向きますのでちゃんと用意していてくださいね』
 何を隠そうこれは緑によるバレンタインを楽しむ者たちへの宣戦布告であった。区役所の緊急用放送を乗っ取ったのだ。これには猫、人間、例外はない。
 ちなみに無限チョコ地獄とは椅子に拘束し、液体チョコを無理やりお腹に流し込まれる計らしい。
 ここにまた一つ、チョコをめぐる問題が勃発していた。


 山口家へと着いた神楽、千鶴は早速交渉。
「今、巷では猫のチョコ窃盗事件が多発しております。これを治めるためにもキナコの力が必要なんです」
「わかりました。そこまで仰るのなら……」
 山口さんからキナコを借り入れた二人。キナコの好物だというチーズを与え、地図を見せる。
「にゃっ!」
 たし、と地図の一点に肉球を合わせるキナコ。
 神楽と千鶴はお互いに顔を見合わせこくりと頷くとキナコを籠に入れ揺らさぬよう走った。




「ククク……さぁ、返してもらおうか」
 じりじりと悪人顔で猫に迫るライアー。
 どんな非道な行為が行われるかと思いきや、彼のポケットから出てきたのはマタタビや キャットニップなどの猫が好むハーブ入り玩具。そして、ねこじゃらし。
「猫好きが隣にいるもんで猫対策は万全だぜぇ?」
 盗まれたチョコを猫が口にしたら危険だ。
 何より、
「観月さんの俺へのチョコを食われるわけにはいかん!」
 こっちが本音というのもある。
 ライアーはねこじゃらしを観月に持たせ、自身は物質透過も駆使し猫を追い詰め低く唸る。それに怯えチョコを手放し涙目で観月にあやしてもらう猫たち。
「くっ……俺もあそこに混ざりたい……悔しくない、悔しくないぞ!」
 そう呟き、次々猫からチョコを取り上げるライアーであった。


 倉庫では猫たちの説得が続く。
「ねこたん! うっってなってばたーんってなるからチョコをたべたらめーっ! なのー!」
 キョウカがジェスチャー付きで猫たちに危険を訴え、翔はヒリュウにマタタビを散布させて和気藹々と皆で和むことによって猫たちの緊張を和らげる。
「ココアはかっこいいねー! もふもふもふもふ!」
「にゃ、にゃふん……!(あ、そこは……!)」
 だらしなくもふられるがままになっているココア。
「でも、ひとのものをぬすむのはよくないことなんだよー!」
 説教も交えココアをたしなめる。パウリーネもここぞとばかりに猫たちをもふった。一説ではもふもふジャンキーらしい。
「ふ……真打ち登場! ネコ如きがチョコを欲すとは笑止千万」
 そこへ現れたのは緑。
 彼女はあの放送の後、道行くカップルや猫のチョコを奪いながらここに到着。倉庫内のチョコも奪おうとマタタビエキスと催涙エキスをいい感じに調合した弾を放った。
「ねこたんにわるいことめーっ! なのー!」
 充満する煙。それをキョウカの春一番が吹き飛ばした。ついでに盗まれたチョコも吹き飛ぶ。
「む、弾は不発に終わりましたが目的は達しました。行きますよ、Pちゃん!」
 チョコを回収し、緑は撤収する。猫がチョコを口にできなくなり結果オーライというところだろうか。
「にゃふっ!」
 しかし、勢い余ってチョコを口にしてしまった猫がいた。猫はパタリと倒れ動かなくなる。
「たいへんだー! ぼくがびょういんにつれていくよー!」
「キョーカもいく、なのー!」
 二人はすぐに猫を連れ飛び立つ。
「……うなぁ」
 それを見たココアは猫たちに何やら指示を出していた。


 所変わってこちらは『魚八』。
 神楽と千鶴がそこへ訪れると近くで猫の争う声が。
「こっちやな」
 そこでキナコが籠から飛び出した。
「あっ!」
 すぐに自慢の足でキナコを捉えようとした千鶴だが、神楽がそれを制止した。
「待ってください。これは……」
 そこでは額に傷のある猫にキナコが寄り添っていた。コテツだ。
「やっぱり想う相手には逢いたいもんなんやなぁ」
 千鶴は「とっておきやで」と猫用チョコをキナコに渡すと、キナコはそれをコテツに渡し二匹で仲睦まじく食べる。
「コテツ、今の街の状況はわかっていますか? 君の力が必要なんです」
 神楽が語りかけるとコテツは神楽に向かいこくりと頷いたのだった。




 猫たちが街を駆ける。
 チョコの危険性を感じ取ったココアは倉庫にいた猫たちにチョコを食べないよう伝令。それでも街全体に行き渡らせるのは難しい。
 他の撃退士から連絡を受けた神楽と千鶴は緑が利用していた区役所に目を付け、マイクの前にコテツを座らせた。
「頼んだで」
 千鶴が声を掛けると、街中にその声が木霊した。
『な〜お』
 街中の猫や人間は、そのアナウンスに『今日はおかしな日だ』と空を見上げた。


 街中ではもうチョコを人から奪おうという猫はいなくなっていた。
「おっ……大人しくなったな。……やれやれ今日はとんだ一日になっちまったな」
 猫とひたすら追いかけっこをしていたライアーはなんとか観月のチョコを取り戻していた。
「……まだ時間はありますよ」
 そう言ってみょんみょんと目の前で振られたねこじゃらしにとりあえずちょいちょいと手を出してみたりするライアー。ああ、幸せな時間。
「Pちゃん、あのピンク色を破壊するのです」
 ライアーから出ていたハートをつんつんして割っていく青い鳥。まだまだ緑は絶好調のようである。
「あ、やめろ、こら!」
「さぁ、次です!」
 緑が去っていく。
「ぐぬぬ、あの鳥め」
「……甘いもので落ち着いてください」
 観月の手からチョコがライアーの口へと入れられる。想いが報われてから初めてのバレンタインチョコ。しかも手作り。その甘さにライアーはまだまだハートを出し続けていたとさ。


「これ以上、好き勝手にはさせない」
 もふもふを思う存分堪能したパウリーネは人々からチョコを奪う緑を追ってきていた。
 愛を崇高なものと考えているパウリーネにとって緑の行為は許し難いものだったのだ。
「刃向かうものは全てチョコ地獄の刑に処す!」
 闘いを始める二人だったが、力は拮抗していた。
 長い時間が流れる。
「む、今日はこのくらいにしておいてあげるのです」
 闘い疲れ去ろうとする緑にパウリーネは人も食べられる猫用チョコを手渡す。
「これを差し上げよう。だから人からチョコを取り上げるのはやめていただきたい」
「……行きますよ。Pちゃん」
 緑は無表情だったが、チョコを受け取った。その後、街行く人がチョコを奪われるという被害はなかったという。
「脅威は去ったか……」
 逸早く倉庫に辿り着き、ココアに説得を試みていたパウリーネはどうやらココアの信頼を勝ち取ったらしい。コテツの放送を聞き、チョコの危険性、食べられるチョコと食べられないチョコの違い、この事件のために尽力した撃退士たちの存在を知った猫たちは安心して身を寄せてくる。
 もふもふし放題の環境に静かに笑みを浮かべるパウリーネだった。


 動物病院に着いた翔はすぐに猫を医者に見せるが、実はこの猫、初めて食べたチョコのあまりの美味しさに『くてり』としただけで、健康に問題はないとのこと。個体差にもよるがほんの数口で危機的状況になることもないと言われほっとした。
「よかったー……」
「よかったなのー」
 二人は帰る道すがら、キョウカが寄りたいという学校の本部へ。
 帰ってきたキョウカの手にはチョコレート。
「もうねこたんたちはだいじょーぶみたいだから、これしょーたにあげるなのっ!」
 取られないよう厳重に学校へ置いておいたキョーカのチョコレート。
 それを貰えたことに翔は驚くが、すぐに屈託のない笑顔を見せ、
「ありがとうー」
 と、礼を言う。
 小さな二人の微笑ましいバレンタインが青春の一ページを刻んでいった。


 しばらく歩き続けていた二人に区役所から帰ってきた神楽と千鶴が合流。四人は確認のためにも今一度倉庫へ向かう。
 すっかり懐いた猫たちに、
「ねこたんかぁいいなのー♪」
 とキョウカは上機嫌だ。
「そういえば今回はあまり猫もふもふできんかった……」
 寂しげな千鶴に翔は、
「ちづるおねえちゃんがまんはからだにどくだよ?」
 と、人懐っこい猫をもふりと手渡す。
「かぐらおにいちゃんもだよ」
 純粋な目で見つめられ、神楽も「参りましたね」と、猫を二人でもふった。
 もふもふしながら二人はコテツについて話し合う。
「……もういっそ、このままコテツを山口さんに差し出しますか」
「コテツも一緒に飼ってくれそうなら提案してもえぇかもね」
 やはり想い合う二人は一緒が一番だと二人は結論付ける。
「あぁー、んん、コテツたちにとっておきのチョコ渡したけどな、神楽さんにも『とっておき』ちゃんとあるから楽しみにしときや。市販じゃないやつやで」
 普段冷静な千鶴が照れながら言い、
「それは良かったです。コテツたちに嫉妬するところでしたよ」
 と、神楽がおどけてみせる。
「もう、アホぉ」
 と照れ隠しに口を窄める千鶴を神楽はにこやかにいつまでも眺めていた。




 その後、静かになった倉庫でココアは呟いた。
「にゃーん」
(食べて良いチョコレートとダメなチョコレート。新しき風が吹いたな。次は……『ネギ』じゃ!)

 勿論ネギも猫にとって非常に危険な食べ物だ。まだまだ、この街の猫の好奇心は衰えることはない。なかなか懲りないココアであった。ちゃんちゃん。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 娘の親友・キョウカ(jb8351)
 もふもふヒーロー★・天駆 翔(jb8432)
重体: −
面白かった!:6人

黄金の愛娘・
宇田川 千鶴(ja1613)

卒業 女 鬼道忍軍
黒の微笑・
石田 神楽(ja4485)

卒業 男 インフィルトレイター
絶望の中に光る希望・
ライアー・ハングマン(jb2704)

大学部5年8組 男 ナイトウォーカー
娘の親友・
キョウカ(jb8351)

小等部5年1組 女 アカシックレコーダー:タイプA
もふもふヒーロー★・
天駆 翔(jb8432)

小等部5年3組 男 バハムートテイマー
大切な思い出を紡ぐ・
パウリーネ(jb8709)

卒業 女 ナイトウォーカー
こそこそ団・
秋嵐 緑(jc1162)

大学部4年291組 女 インフィルトレイター