.


マスター:黒兎そよ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/03/16


みんなの思い出



オープニング

●そこは温泉地

 訪れた山里は一面真っ白な雪に閉ざされていた。

 この辺りでは珍しい事ではないのだが、しばらく“外界”の人目に触れてなかった場所だ。そのためか、あたりを覆う真っ白な山々の風景は、見る人に神秘的な何かを思わせる。
 そんな小さな集落は、白い煙で覆われていた。

 火事……ではない。

 その煙はほんのりと暖かく、僅かに硫黄の香りがする。
 そう、それは湯煙。
 かつては日本の名湯とも詠われた温泉地がそこには隠されていたのだ。

 風呂桶に入浴セットを居れた志方 優沙(jz0125)は曇る眼鏡にあくせくしながら温泉地を歩いていた。
 彼女は先日の撃退士たちのお仕事の報告でその温泉を知ったのだ。

 曰く、戦いの疲れが吹き飛ぶ。
 曰く、温泉饅頭や温泉卵が美味い。
 曰く、湯上り卵肌になったとかなんとか……。

 報告に来た生徒たちが口々に言うものだから、気になって仕方なくなった。
 そんなわけで数名の久遠ヶ原生徒でやって来たのだった。

 湯川の上を渡る橋。
 温泉ならではの味覚、温泉饅頭や温泉卵。
 そこは温泉村として発展してきたのであろう山里。
 もしも、この地が天魔によって“隠されて”いなければ、もっとメジャーな観光温泉になっていたであろう……。などと感慨に耽っている場合では無かった。

 志方の目的はさらに奥の秘湯なのだ。撃退士たちが言っていた、湯上り卵肌になれるという美人の湯へと雪深い山道を意を決して登っていった。


●秘湯だよ

「まさか本当にあるなんて……」
 志方は白く曇った眼鏡を外し、眼鏡クリーナーで拭いた。
 指に触れた湯は思ったよりも熱く、咄嗟に手を引く。
「意外と熱いですね。でも雪を入れれば調整できるでしょうか……」

 天然の露天風呂。
 山の中腹から見下ろした雪景色は美しく、それだけでも苦労して登って来た甲斐があると言うものだ。

 早速とばかりに、眼鏡を外し近くの石の上へ置くと志方はささっと物影で服を脱ぎ、体が冷える前に掛け湯する。
 雪を桶に居れ、少しぬるめた後に露天風呂へと足先をつけ、ゆっくりと沈んでいく。
「っ……はぁ、あぁ〜」
 はじめは熱いかと思っていたお湯もなれてくると心地よく。
 志方はめずらしく緩んだ顔で声を漏らした。

 そんな時だった。
 志方の視界の端で何かが動いたのは。
 こげ茶色の毛むくじゃらな何か……。
 眼鏡をはずしていたため最初は何かわからなかったがあれはまさしく「猿」だ。

「……お猿さんも入りにくるんでしょうか……」
 志方は眼鏡を置いた石の上へと手を伸ばす。
「……あれ?」
 手に触れたのは何やら柔らかい毛並みの猿だった。
「キキッ〜?」
 くびをかしげた猿はキラキラ光る大きな目を持っていた。
「……えっと、もしかして私の眼鏡ですか」
 志方が眉を顰めると、猿はそのまま走り去ってしまった。
「ちょっと、待ってくださ……あ〜!!」


リプレイ本文

●湯煙の夕暮れ

 湯畑から立ち上る煙がいっそう色濃くなる冬。
 寒さが増すほどに、温泉郷の情緒ある風景が際立つとも言える。
 北條 茉祐子(jb9584)は湯河原の上を渡す橋に立ち、その景色を眺めていた。
 湯河原を見下ろすと、人々が何やら手にしている。良く見れば温泉卵だとすぐ分かった。

 (卵だけじゃなくて温泉でお野菜をゆでたり、蒸したりするのもいいかもしれない)
 茉祐子は自分の想像に小さく笑う。

「……綺麗……それに美味しい」
 声の方に振り向くともぐもぐと何かを食べながら橋下を眺める斉藤 茜(jb0810)がいた。
「茜さん、それ温泉饅頭?」
「……クインさん……買ってたから」
 茜は頷き、そして茉祐子の後ろを指差す。

「おや、茉祐子と茜(もぐもぐ)じゃないか」
 そこにやって来たのは、茶色いふわっとした温泉饅頭を持ったクインV・リヒテンシュタイン(ja8087)だった。
「クインさん、お買い物ですか?」
「そうだ、至高の温泉饅頭をもとめてな」
 クインの眼鏡がキラリッと光る。
「ここの温泉饅頭は、皮と餡のバランスが素晴らしい。そして、地元の食材である花豆を餡としている所も興味深い」
「はぁ……」
 と茉祐子は生返事。

「お、向こうにいるのは……」
 クインの視線の先には千葉 真一(ja0070)と黄昏ひりょ(jb3452)が見えた。
 露天風呂からの帰りなのか、牛乳瓶片手に歩いている。
「それじゃぁな」
 あっけに取られていた茉祐子を気にもせず、クインは饅頭を食べつつ、千葉たちの方へと歩いていった。

(私も、皆さんに買っていこうかしら……温泉饅頭)
 そんな事を思いながら、茉祐子はクインの背を見送った。


 ここは山間の温泉地。
 人々は日々の疲れを忘れ、その湯に浸かり極楽へと誘われる。
「うーん、温泉気持ちいいねー。やっぱり温泉入ると幸せになって疲れが取れるんだよー」
「本当だね〜、疲れも吹き飛ぶよね、陽花さん」
 彩咲・陽花(jb1871)と葛城 縁(jb1826)の楽しげな声が響く。
「ええ、本当ですね」
 体が温まっているのか、タオルを巻きつけた夜姫(jb2550)は足だけ浸かっている。
「それにしても、大変だったね志方さん」
「はい……本当に」
 陽花の言葉に、志方は眼鏡を曇らせたまま頷く。

 大変。
 そう、大変だったのだ。この眼鏡を取り返すまでが……。


●朝もやの秘湯にて

「異常はないな……」
 ひりょは周囲にくまなく視線を送る。
 その頭上ではケセランがふわふわと浮かんでいた。
「ははっ、お前の事を『ふわふわ浮いてるぬいぐるみ』みたいに思って様子見に来てくれたらいいが……」
 フッとひりょの顔に笑みが浮かぶ。

(あの時の志方さんには焦ったよなぁ)

 ひりょが叫び声を聞きつけ行ってみると、露天風呂でおろおろとしている志方に会ったのだ。
 話を聞いてみると、なんと猿に眼鏡を取られてしまったと言うのだから驚きだ。

「さて、皆の方の囮はどうなったかなぁ」
 と通信機に手を掛けた。


 その頃、陽花たちは露天風呂の周囲を歩いていた。
「それで、フルーツなのね?」
「……囮があれば……来るでしょう」
 疑問系の陽花に、茜はフルーツの盛り合わせを掲げてみせる。
「他にも色々と用意したんですけど、だめでしょうか?」
 茉祐子は持ってきた飲物やパンなどを広げた。
「あ、美味しそうだねー」
「それで、陽花さんは?」
 今度は茉祐子が聞いた。

「私はね。とりあえずお猿さんが好きそうなものもって歩けばくるかなって」
 と、鏡や伊達眼鏡を取り出して見せる。
「……陽花さん……囮?」
「えっ? 実はもう色々と光り物を仕掛けてきたのよ。ほら……」
 と、湯煙の向こうを指差した。
「えっと、すごいですね」
「……眼鏡の……木?」
 湯煙の隙間から現れたのは眼鏡がつるされた木々。
「……あれ?」
 陽花は首をかしげた。

「ふふふ、沢山の眼鏡に囲まれて浸かる温泉。すばらしいだろう?」
 と露天風呂に浸かったクインが曇った眼鏡を指で押し上げる。
 そして、湯煙は晴れ……。

「あ」
「あ」


 温泉の周囲で警戒に当っていた真一と夜姫は
「きゃぁ〜!」
 と言う山間を響く誰かの悲鳴に、露天風呂へと走った。
「どうした! 出たのか!」
 駆けつけた真一に、
「ん〜、いや。そのあれだ」
 とポンチョを羽織ったクインと女子三人は言葉を濁す。
「?」と首をかしげた真一だったが、
「光る物の方が注意は引けると思うが、持ち帰るところまで行くかどうかだな」
 と周囲につるされた眼鏡に目を向けた。

「ウキッ?」

 真一は再びクインに向き直り、
「流石にそれだと寒いだろう。早く着替えた方がいいぞ」
 と声をかけた。
「あの……」
 後ろにいた夜姫が、おずおずと声をかける。
「なんだ?」
「あ、いえ。あれ……」
 と夜姫が指差す。
 丁度、そのタイミングで周囲の警戒に当っていたひりょが戻ってきて声を上げた。
「皆さん、猿ですよ! そこっ!」
 ひりょの声に、夜姫の指差す方へ皆の視線が集まった。
 そこには今まさに陽花の伊達眼鏡と茜と茉祐子の果物を持ち去ろうとする猿が居たのだった。

「いたーっ!」

 皆の声が響き渡り、猿はウキキっと雪山へと逃げ込んだ。


●熱き湯の昼下がり

 熱い湯煙。
 寒いくらいの空気。
 立ち上る白い白いもやの中、人影が湯船へと沈んでゆく。

「なるほど、疲れが吹き飛ぶってのも大袈裟じゃないかもな」
 腕組みしたまま、真一は体が赤くなるほどの湯に浸かっている。
 ここは、この温泉地でも一番熱いと言われる秘湯だ。
 周囲が雪に囲まれた山奥だが、つま先から頭のてっぺんまで、熱く熱く滾る。

「本当ですね。汗をかいたから気持ちがいいや」
 タオルを頭にのせ、ひりょが手足を伸ばす。
 こちらはのびのびと湯船に浸かっているようだが、それは自分の周囲の湯を桶に入れた雪で適温までぬるめているためだ。
 ちなみに、この熱々の湯に入る際はこれが正しい。

「それにしても、あの猿中々厄介だったな」
 真一はザバァッと湯を押しのけ立ち上がる。もちろん腕組みをしたまま、前は隠さずにだ!

 だが、安心して欲しい。
 色々と大切な所は湯気さんが隠してくれている。
「えぇ、本当ですね」

 露天風呂から上がった真一とひりょは浴衣に着替えた。
 この姿になると、温泉街に来ているという雰囲気がよく出る。
「いやぁ、いい湯でしたね……って千葉さん?」
「んんんんっ……っはぁ。やはり、風呂上りはフルーツ牛乳だな」
 ひりょの横で、真一はおきまりのあのポーズで牛乳瓶をあおる。
 もちろん、腰に手を当ててだ。
「さて、すこし温泉街をぶらつくかな」
「あ、俺もお供しますよ。猿のせいであんまり見て回れませんでしたし……」

 ひりょの言う通り、猿を追いかけるのがこれまた大変だったのだ。


●猿追う朝の風

 (山は馴染みの場所だが、猿を追跡となると中々骨だな)

 山へと入った真一は、枝を伝う猿を追う。
 小さな動物だ。
 小さな穴を通り抜けたり、細い木々の枝を登られると追うのは難しくなる。
 しかも、かなり人間に慣れている動きで厄介だ。
 真一は猿を追い詰めるも雪と湯煙に視界を制限されて行く手を遮られた。

「夜姫さん、そっちに行きました!」
 真一の後ろを走っていた、ひりょが猿の動きを視線で追いながら叫ぶ。

 細い枝を高い位置まで上っていく猿を追い、夜姫がその翼を広げた。
 普段は物質化していないが、この翼こそ彼女が悪魔である証。
(流石に動物に力を向けるのは気がひけるな……)
 と、空高く羽ばたいた夜姫は枝先の猿へと手を伸ばす。

 しかし、その一瞬の隙をつくように猿は茂みの方へと飛び下りた。

「こら、待て」
 と、ひりょも茂みの方へと突っ込む。多少の擦り傷は厭わないという事だろうが、猿はすり抜けられるが、人はそうも行かなかったようだ。
「すまない」
「に、逃げられました」
 と夜姫とひりょは肩を落とす。
「あいつ逃げ方を分かってるなぁ……」
 と、腕を組んで真一が呟いた。

 さて、猿はと言うと果物を頬張りねぐらへと走る。
 そして頭には陽花が持って来ていた伊達眼鏡。
 木につるされたキラキラにも興味を引かれていたのだが、紐で縛られていたためにそちらは諦めたのだ。
 幾度かの経験則で、猿は人間が持っている方へ標的を定めたわけだ。

 野生恐るべし。

「すまない。逃げられた」
 雪山の物影で縁は、ひりょからの連絡を受けた。
「わぅわぅ、それでお猿さんの居場所は分かるんですか?」
「今、彩咲さんたちが追っている」
「わかりましたー」
 縁は通信を切る。
(はやく、捕まえて陽花さんと温泉を満喫したいなぁ)

 その頃――。

「待ちなさーい、と言うか待って〜」
 陽花が困り顔で猿を追っていた。
「こうなれば、しかたないっ!」
 クイン(流石に着替えた)は猿の動きを封じようと風の渦を巻き起こす。
「キィーッ」
 しかし、曇った眼鏡が凍ったままだったためか、目標から反れ、猿を捕らえる事無く雪を舞わせるだけだった。
「……そっちに行った」
 茜は逃げ延びた猿を指差す。
「待ってお猿さん」
 それを追って茉祐子が走る。
 普段の穏やかな姿と打って変わって、激しい力を瞳に宿しているのが分かる。
 凄まじい勢いで迫る追っ手に、猿は慌てて小さな穴ぐらに飛び込んだ。
「駄目、逃げられてしまいましたね」
 と、茉祐子は立ち止まった。
 流石に、小さな穴の中までは追う事は出来なかったのだ。

 猿は穴を通り抜け、自分のねぐら目指して走り出し、追っ手が居ないかと後ろを振り返る。

 気配は無い。

 どうやら撒いたようだと、前を向いた時――。


 突如現れた影に猿は襲われた!

「わぅんっ! 逃がさないんだよー」
 と、縁が突如現れた。

 そう、縁は仲間達からの連絡を頼りに猿を待ち伏せていたのだ。
 追っ手にばかり気を取られていた猿は、隠れていた縁に気がつくことが出来ず、ついにお縄に着いたのである。



「ふぅ、やっと捕まったか」
 真一が猿の前で屈むと、猿は身体をよじるように暴れる。
「何も取って喰おうって訳じゃない。大人しく、な」
 と言い聞かせるが、中々大人しくはしてくれない。
「まったく困った猿でしたね」
 夜姫がため息をついた。

「あら、でも志方さんの眼鏡はどこでしょう?」
 と、茉祐子があたりを見回す。
「猿に直接聞いてみるか」
 眼鏡を光らせクインが猿に詰め寄っていく。

「それなら、向こうにあったよ」
 ひりょが、眼鏡を持ってきた。猿のねぐらを見つけたのだ。
「……終ったの……?」
「あぁ、何はともあれ事件解決だな」
 ねぎらうように茜の肩に真一は手を置いた。

「陽花さん、お疲れ様。此れで温泉に入れるね!」
「ん、問題も解決したんだし温泉に入るんだよー。秘湯もいくつかあるみたいだし出来るだけ入ってみたいよね」
 縁と陽花はもう温泉の事で頭が一杯のようだった。



●お疲れ様の昼下がり

「ふぅ、露天風呂と言うのも良いものですね」
 静かな温泉に浸りながら一人、夜姫は持参したお茶を飲んでいる。

「あ、すみませんお邪魔でしたか」
 と、姿を現したのは志方 優沙だった。
「いや、平気ですよ。今度は眼鏡をしたままなんですね」
「……はい」
 と、志方の眼鏡が湯気で曇る。
 流石にあの騒動の後だ、眼鏡を外す気にはならなかった。

 そこに騒がしい声が響いてきた。
「はやく、はやく」
「縁、温泉入る前に綺麗に洗って上げるんだよ。ちゃんと隅々まで、ね♪」
「はぅん」
 タオルで前を隠しただけの女性の姿があらわれた。
 縁と陽花だ。

「あ、夜姫さん、優沙さんもこんにちは」
「……お二人も秘湯めぐりですか?」
「そうだよ」
「でも、その……格好で?」
 志方が顔を赤くしながら眉に皺を寄せる。
「ささっと移動すれば大丈夫かなって。この辺りは人もいないだろうし」
「えっと……」
 さらりと言ってのけた陽花に、志方の眼鏡はますます曇った。

「そんな事より、縁。ほら頭洗ってあげるよ」
「わうわう。髪の毛長いと、洗うのも大変だよね〜」
「そうそう」

 志方は二人の長い髪を見る。彼女の髪はそれほど長く無いので、長い髪に憧れがあるようだ。
 縁と陽花は髪を洗い終えると、今度は互いの体に手を伸ばし、
「相変らず縁、おっきいね」
「陽花さんも、少しは大きく……ううん、な、何でも無いんだヨ?」
 などと話しながら女子二人は楽しそうに体を洗いあっていた。

 猿のせいで楽しめていなかったが、本来は温泉で羽を伸ばすのが目的だったのだ。
 ここにきて漸く、目的が果たせ、志方は湯船の中で手足を伸ばした。
 同じように寛いでいる夜姫に視線が向かう。
 長い手足と引き締まった体。
「あ、いやすみません」
 ふとその脇に傷跡を見つけてしまう。
「何、昔の傷ですから」
 と夜姫は静かに答えた。

「はふぅ、やっぱり温泉は気持ちいいんだよー。疲れが取れるし……ここは美容にもいいみたいだし、私達にぴったりなんだよー」
 と、陽花がお湯に入ってきた。
「本当だね〜幸せ」
 至福の表情を浮かべ縁も湯船の中へ。
 暖かい湯に身を沈めて、女子達は極楽な表情を浮かべた。

 猿を追い掛け回していた疲れも、さっぱりと落ちていくようだった。

「ねぇ、いくつか秘湯をめぐってみない?」
「賛成!」
「……良いですよ」
 と連れ立って、秘湯巡りをする事にしたのだった。


●夕暮れお風呂のあとは

「はぁ、いいお湯だったね」
「わぅわぅ、本当だね〜」
 と旅館へと帰ってきた縁たち女子グループ。
 心なしか、お肌もつるつるになっているような気もする。
「あれ、斉藤は?」
 と夜姫は姿が見えなくなった茜を探す。
「斉藤さんなら、先ほどお饅頭屋さんへ歩いていきましたよ……食いしん坊?」
 志方が答えた。

「お饅頭、いいですね」
「私も食べたいな」
「そうですねぇ」
 とお饅頭に心を躍らせる女子達。

「あら、皆さんこんにちは」
「あ、茉祐子さんお帰りですか?」
 旅館へとやって来た茉祐子に、志方は声をかける。

「はい、少し街中を歩いてみました。皆さんは?」
「私たちは秘湯巡りをしてたんだよ♪」
「そうなんだよ」
 陽花と縁が答えた。

「良いですね。あ、でも露天風呂ではなくて旅館のお風呂にします」
 と茉祐子は微笑む。
「所で皆さん。お土産買ってきましたけど召し上がります?」
「あ、茉祐子さんのそれお饅頭!」
 陽花が茉祐子の持つ紙袋に気がつく。
「わぅ、丁度、皆で食べたいなって話てたんです」
 と縁が目を輝かせた。

「じゃぁ、皆で食べましょうか」
 と、茉祐子は袋から温泉饅頭の箱を取り出した。
 

「賛成!」

 と、温泉街に女子達の声が響き渡ったのだった。


依頼結果