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マスター:黒兎そよ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/03/31


みんなの思い出



オープニング

●トンネルをぬけて


 群馬県某所――。

 夜の山道を大型のトレーラが走っていく。
 山道とは言え、道幅も広い地域高規格道路だ。交通の便を良くする為に作られたものなのだから、道のりは意外と快適である。

「ふんふんふふふ〜ん」
 ハンドルを握る男は、ラジオから流れる音楽とともに鼻唄をうたう。
 意外とわりの良い仕事だと男は思っていた。
 初めて走る道路で夜間運送なのは良くある事だ。だた危険手当付きと言うのは少し気になったが……。

 群馬県は少し前までアバドンら悪魔たちが支配していた地域である。
 このトレーラも群馬の山村への物資支給のためのものだった。
 それならば危険手当も当たり前かと、男は納得した。

 とは言え、悪魔たちから群馬を奪還してから数ヶ月。……まだ、すべてを取り戻したわけではないが。
 それほど脅威は残っていないだろうと楽観していたのもある。そして、群馬復興に自分も関わっているのだという満足感も男の恐怖を打ち消す役割を果たしていた。
 群馬の一部ではまだまだ傷跡が癒えない。人々が安定した生活を取り戻すためには時間が必要だろう。


「お、トンネルかぁ。結構長いんだな……」
 前方の看板――2.4kmのトンネルの表記を確認する。

 トンネルの中にはオレンジ色の世界が広がっていた。

 ――ラジオはいつの間にか音が途絶えていた。

 天井につけられた明かりがオレンジ色に染め上げているからだ。
 只でさえ、圧迫感のあるトンネルが、この色のせいで一層不気味に感じる。

 男は一応のため速度を落としてトンネルを進んだ。



    ザザザザザザザザザザザザザザァァァァアアアアアアア――ッ!!


 途絶えていたラジオから、けたたましいノイズ音が溢れ出した。
 そして、次の瞬間。
 トレーラは見えない何かで押しつぶされた。


 全身の痛みで目を覚ました男は、エアバッグのお陰で一命を取り留めたのだと気が付く。
 何とか外に出ようとするが、ひしゃげたドアは開かない。
 男は割れたフロントガラスを手で払い、そこから這い出した。

 トレーラは波打つように潰されていた。

 衝突するような物は、何もなかったはずだ。
 あまりの事に考えがまとまらない男は、ふらふらとトンネルの壁際まで歩いていき、もたれかかる。

 ……トンネル内で事故。

(物資の運搬もまま成らないまま、事故を起こしてしまったのか……)
 男は情けなさに泣きたい気分だった。
 膝を着いて、身を屈める。

    ザザザザザザザザザザザザザザァァァァアアアアアアア――ッ!!

 また、ラジオからノイズ音が響く。
 男は耳を塞ぎうずくまる。

 体が。――空気が。――トンネルが震えた。
 そして、トレーラのコンテナはひしゃげ、破裂した。

 男は幸運だった。
 運転席に残っていたら。いや、あと少しでもトレーラの傍に居たら、あの破壊の波に呑み込まれていたのだから。
 男は目の前で起きた事が信じられなかったが、ひとつだけ理解した。
 見えなかった何かは、この目の前の”それ”らがやったのだと。

 その黒いディアボロたちは穴の開いたコンテナの中に群がっていく。
 まるで、死んだ動物に群がっているようだった。

 自分の番ももうじき来るのだろう。そう諦めかけた男だったが、ここでも彼は幸運だった。
 トンネルの壁際には待避所があったのだ。
 蝙蝠たちは気づいていたのか。気づかなかったのか。
 なんとか、男はその非常口から逃げ延び、痛む体を引きずり生還した。


 後日、久遠ヶ原学園の依頼斡旋所のオペレータ。――志方 優沙(jz0125)は、舞い込んできたディアボロ退治依頼を携え、撃退士たちの前に立った。



 敵は巨大な蝙蝠。
 多くの小さな蝙蝠を従えた。

    群れなす魔の残響(ディアボリック・エコー)――。



リプレイ本文

●踏み入れた異次元

 トンネルに入ったとたんに、身の回りの全てがオレンジに染め上げられる。
 一面が黄昏色の世界に変わり、まるで異次元のような気になる。

 閉ざされ、隔離された、別の世界。

 つい最近まで、この群馬県は悪魔たちの手で、閉ざされた世界となっていた。
 人類は戦い。
 そして、奪い返した。
 もちろん、すべてが元通りというわけには行かなかったが、それでも撃退士たちは勝利を手にした。

 そして、これからも……。


 群馬県某所のトンネル内に踏み入れた撃退士たち――。

 鈴木悠司(ja0226)
 陽波 透次(ja0280)
 下妻笹緒(ja0544)
 水屋 優多(ja7279)
 牙撃鉄鳴(jb5667)
 ロジー・ビィ(jb6232)
 砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)
 緋勇 理人(jb9062)

 の八名は、ディアボロを目指してトンネル中間地点へと進んでいた。
 トンネルという異次元じみた空間に少々、不安を覚えるものもいたが、そもそもオレンジ色の灯にも意味はあるのだ。わざわざオレンジにしている理由――。
 
 高速で走る自動車は前方の見通しがはっきりしている必要がある。とくに暗いトンネルの中では、その距離感がくるいがちである。
 そこで、一種類の光の灯をつけて影がはっきり見えるようにするのだ。
 オレンジ色が選ばれたのは、光の波長が長く、霧や煙が出たときにも、遠くまで光が届くからと言われる。

 そんな訳で、別にオレンジ色の空間に恐れをいだく必要は無いのだ。
 とは言え、
「暗いとやっぱりちょっと不気味ですね」
 と水屋は苦笑いを浮かべた。理論で分かっても感情ではそうも行かない事も多い。
「確かに……」
 と、同意はしたが、鈴木の言葉に反して怯えは無い。
「大丈夫っすよ。光源の準備もあるっすから〜」
 と緋勇は自らのペンライトをくるくると回す。
「不安がることはないさ。寧ろ楽しみなくらいだよ私は」
 水屋の後ろで巨体が笑う。
 人間離れした外見……というかファンシーな外見のパンダ。下妻だ。
「実に興味深い。ディアボロが元となった動物の習性を鑑みて、この戦場を選択したことが! これは本能なのか。それともまた別の要因なのか……」
 思考を巡らせるパンダ。
 下からライトが当たり、顔に陰影ができて面白いことになっている。

「ロジーちゃん、足元暗いけど大丈夫〜。何なら腕組んでく?」
「いいですわよ……あら? でもそれじゃぁ、いざという時に戦えませんわね」
 ロジーは重大な欠点に気がついたとばかりに笑う。砂原の誘いを意図せずにひらりとかわす辺りがロジーらしい。
「そっかなー、名案だと思ったのに」

「いつまで無駄口を叩いているんだお前達」
 携帯ラジオを弄っていた牙撃は、その手を止めた。
「まぁまぁ、変に緊張してこの場に飲まれてしまうよりいいですよね」
 と、陽波は手にしたライトで天井を照らし、周囲の警戒する。
「だが、敵は近いはず……」
 鈴木は無表情に答えた。
 その雰囲気に違和感を覚えた陽波は、
「鈴木先輩……あの、何かあったんですか?」
 と声を掛けた。
「……何でもない。大丈夫だよ」
 その鈴木の少し悲しそうな微笑に、陽波は息を飲む。

 トンネルのオレンジ色の灯りが所々故障し明滅している。
 ここは闇と光の狭間なのかもしれない。
 陽波は、今。その心の闇というべき部分にふれようとしているのかもしれない。
「っ――」
 響いているのはかすかなラジオのノイズ音……。
 陽波が口を開きかけた時。

    ザザザザザザザザザザザザザザァァァァアアアアアアア――ッ!!

 突如、そのノイズは訪れた。


●襲い来る魔の残響

「敵! 鈴木先輩大丈夫ですか?」
「あぁ……」
 周囲を警戒していた撃退士たちは、その直撃を辛うじて回避した。
 しかし、被害が皆無というわけには行かない。
 開幕初手が奇襲攻撃とは、敵も中々侮れない……。

「……っ光りよっ!」
 と、砂原がアウルの輝きをトンネルの天井へ向けて放つ。
 闇が光で祓われる。
 突然の明かりに、蝙蝠たちは散っていく。
「砂原さん、ナイスっす!」
 
 散った蝙蝠たちは黒いカーテンのように群れて飛びまわる。
 その背後には、巨大な蝙蝠が天井からぶら下がっていた――!

「おでましっすね」
「そうね、それじゃぁ。お相手してもらおうかしら」
「なぁに、急いては事を仕損じる。まずはあの邪魔な群れを排除しようか」
 下妻が緋勇とロジーの肩に手を置いて、留まるように制す。
 無闇に突撃するよりも、先に邪魔な小物を片付けるのが先決だ。

「来ます!」
 水屋が叫んだ。
「……っ!」
 鈴木は体内の闘気を爆発させる。アウルの輝きがその身を包む。そして、そのまま小蝙蝠の群れに突っ込んだ。
 その顔から表情は消え、敵を倒すために剣を振るう。
「……」
 その一太刀、一太刀が蝙蝠を切り裂いた。迫る魔の群れは切り裂かれ塵となって消えてゆく……。
 しかし、蝙蝠たちは尽きる事無く現れる。
 一度鳴った音が反響し、何度も何度も鳴り響くかのように……。


「悠司君、逸りすぎだろう。まったく……」
 鈴木を囲むように飛ぶ蝙蝠の群れへ、下妻は紅色の炎の玉を放った。炎は蝙蝠を焼き尽くす。
 ここぞとばかりにロジーもそれに続いて、武器に込めたアウルを放つ。黒い光の刃と化した衝撃波が蝙蝠たちを薙ぎ払った。
 纏わりついてきた蝙蝠たちが散る中、鈴木はバックステップで距離をとり体勢を整える。

 それと入れ替わるように、今度は緋勇が蝙蝠の群れへと詰め寄った。
「断ち切るっ!」
 アウルの力で加速したまま、散り散りになった蝙蝠たちを追う様に太刀が軌跡を描く。太刀が振り抜かれた後、蝙蝠は真っ二つに切断された。

 どんなに数が多くとも、その一つ一つは問題にならない程度の敵なのだ。
 そう、それよりも、警戒しなければならないのは――。

「こっちだ!」
 陽波の放つアウルの気配は、巨大な蝙蝠を襲う。この得も知れぬ威圧感に、巨大蝙蝠は陽波を無視する事が出来なかった。その巨体を宙に投げ出し、天井から陽波の頭上へと飛来する。
 上空から襲い来る爪の斬撃を、陽波は後方へ宙返りしてひらりと避けた。
 
 大物が陽波に釘付けになっている間に、撃退士たちは蝙蝠の群れを追い詰める。

 再び陽波を目指して襲い来る大蝙蝠。
 砂原は近づいて来た大蝙蝠目掛けて、アウルの鎖を放つ。 冥魔を縛る聖なる鎖だ。
 大蝙蝠は鎖をかわそうと、滑空していた軌道をずらす。

 さらに、そこに弾丸を放つ牙撃。小蝙蝠の群れを相手にしていた牙撃だったが、大蝙蝠の動きもその目で追っていた。

 放たれた弾玉――。
 しかし、大蝙蝠の速度は思いの外、速く。小蝙蝠が視界を遮った。
 射線を邪魔された弾丸は、大蝙蝠の横を通り過ぎ、トンネルの明かりを砕く。割れたガラスがはらはらと落ち、光を反射して煌く。
「……やはり、先にこの群れを何とかしないとか」
 必中のつもりで放った弾丸が外れ牙撃は内心、舌打ちする。

 危険を察知したのか、大蝙蝠は陽波の頭上を通り過ぎ、宙で旋回しはじめた。
 その動きに合わせ、小蝙蝠たちの動きが変化した――っ!


●闇と光の世界の狭間

「これは一体……?」
 離れていく蝙蝠を見上げ鈴木が呟く。
 小蝙蝠たちは、撃退士たちを襲うのをやめ、トンネル天井付近で小さな黒い球体を作りながら編隊飛行する。
「今がチャンスかしら?」
 ロジーは蝙蝠たち目掛けて、再び黒い刃の衝撃波を放つ。その刃は蝙蝠たちを捕らえるが……。
 同時に、天井の明かりも砕いた。
 それでも、いくつもの黒い蝙蝠の球体があちらこちらに出来上がる。

「……しまったっ! 奴らの狙いはっ――」
 下妻の叫びとほぼ同時に、大蝙蝠は超音波を発した。
 その衝撃波は小蝙蝠たちの球体に達すると、そこで増幅される。
 直線的な指向性のある音波が、そこで円形に広がる衝撃へと変化していく。

 結果。

 その衝撃波はトンネルの天井と道路のアスファルトに反響した。
 閉ざされた空間でのみ有効な。

 ――音の結界。

「……っ」
 その音の波に曝された撃退士たちが、思わず耳を押さえ膝をつく。
 身体に響く音は、聴覚だけでなく、撃退士たちの視覚をも阻害する。
 いかに光があろうとも、それを認識できなければそこは暗闇と変わりないのだ。
 音の結界の中、黒く小さな蝙蝠の群れが羽ばたく。只でさえ、潜むのが得意なディアボロたちだ。この機を逃すはずも無い!

 危険――。
 撃退士たちは直感する――来る! と。

 群れなす魔は残響の中襲い掛かる。

 周辺状況の察知が困難になった今、あたかも闇の中に居るかのように感じる撃退士たちは、格好の的となってしまうではないか!?

 苦悶の中。声が響いた。
「――――顕現せよ銀閣、世界を白で染め上げよッ!」
 攻撃に耐え忍んだ下妻は周囲へアウルの力を解き放つ。下妻が構築した幻影風景の中、白銀の魔力の光線は一直線に小蝙蝠を消し飛ばした。

「くっ、ここっす!」
 感覚を研ぎ澄まし、緋勇は纏わりついていた蝙蝠たちを切り落とす。
「えいっ」
 水屋も敵がいると思われる場所へ、範囲をなぎ払うように炎の魔法を放った。

 自分達の領域で、反撃を受けた蝙蝠たちは、数に任せた特攻を切り止める。
 しかし、逃げたのでは無い。
 奴らは大きな渦を描きながら、一点に集中して編隊飛行を始める。
 それは黒い蝙蝠の球体――巨大な巨大な超音波の爆心地――を作り上げているのだ。


●闇に響く魔の絶叫

「一塊になるのなら、そこを狙うだけですわっ!」
 ロジーが大剣をかまえる。
「!?」
 咄嗟に気がついたのは鈴木だった。
 群れの奥で大きく口を開く大蝙蝠の姿に。それは先ほど見せた蝙蝠たちの超音波増幅。
 球体となった群れが、その超音波を周囲に増幅すれば、連鎖的に強化された衝撃で撃退士たちは引き裂かれるだろう!
 鈴木はロジーを追い越し、球体の群れへ盾を構えて突っ込む――。
 大蝙蝠はそれを狙い済ましたかのように、超音波を放った。

 衝撃。

「鈴木先輩っ!?」
「悠司っ!?」

 しかし、鈴木を襲う衝撃波は届かなかった。
 衝撃波は牙撃の弾丸によって僅かに右へとそらされたのだ。

「……今度は、こっちの番だ」
 静かに、鈴木は闘気を解放した。
 群れの内部から引き裂かれるように、蝙蝠たちは霧散する。

「先輩、加勢しますっ」
 陽波が逃げていく蝙蝠たちに鋭い一撃を与える。その直線状にいた蝙蝠は痙攣しながら地面へと落ちた。
 それに続くように、

 下妻が。水屋が。牙撃が。ロジーが。砂原が。――小蝙蝠を撃退する!
 撃退士たちの追い討ちでもはや、小蝙蝠の群れは数えるほどにしか残っていない。

 大蝙蝠は逃げ出した。
 自らの分身たる小蝙蝠は魔力が回復すれば作り出す事ができるのだ。
 今は、個体として存続させるべきは自身だと、本能から判断した。

 アウルの光源から抜け出し、照明を砕き闇の中を全力で飛ぶ。
「逃がさないわよ!」
 ロジーはその背の翼をはためかせ、それを追う。
 銀の髪が風に靡く。

 大蝙蝠はトンネルの天井へと透過しようとするが……。

「残念、阻霊符よ」「残念、阻霊符だ」
 ロジーと砂原が同時に告げる。
 大蝙蝠は透過できず、押し戻された。

 しかし、それでもロジーは追いつけない。
 大蝙蝠は逃げる。

「俺の目から逃れられると思うなよ」
 銃をリロード。
 アウルで出来た空の薬莢がアスファルトへと、スローモーションで落ちて行く。
 その薬莢がアスファルトに跳ねて光の粒になるとほぼ同時に、弾丸は装填される。
 牙撃は構え。狙いを定め。次の一撃に集中した――。

 放たれた弾丸は、大蝙蝠の羽の付け根を打ち抜いた。空中でバランスを崩した大蝙蝠は滑空しながらアスファルトへと墜落する。

 光の翼をはためかせ、
「これで最後ですわ!」
 とロジーは大蝙蝠へと迫る。
 再び飛立とうと、アスファルト上でもがく大蝙蝠へ、飛来したロジーは渾身の力で大剣を振り下ろした。


 ディアボロの最後の断末魔がトンネル内に響く。
 群れなす魔の残響(ディアボリック・エコー)――は消え、そしてディアボロの身体も塵へと還った。
 後には何も残らない……。


「あら、出口ですわ……」
 立ち上がり、出口から差し込んで来た外の光りに、ロジーは眼を細めた。


●トンネルをぬけた先

 ディアボロを討ち果たしたロジーの背に声が掛かる。
 振り返れば、トンネルの闇の中から皆が駆け寄ってくる所だった。
「はぁ、はぁ、……大丈夫っすかロジーさん?」
 息を切らた緋勇に、
「えぇ、大丈夫ですわよ」
 ロジーは光の中、銀の髪を煌かせて笑った。

「良かったです。一人で行ってしまうから心配しましたよ」
 水屋が安堵のため息を漏らす。
「僕にも翼があれば、キミを一人ではいかせなかったのにね」
 と、砂原。

 ノソノソと歩いて来た下妻は、
「実に興味深いディアボロだった。闇の尖兵、静かに夜を舞う吸血獣かと思えば、闇の中鳴り響く狂気の演奏家であったなぁ」
 と、なにやらご満悦だった。

「助かったよ牙撃さん」
「……俺は俺の仕事をしたまでだ」
 鈴木の言葉に、軽く手を挙げて制すと、牙撃もロジーの元へと歩いていく。
 自らの力不足をまた感じた鈴木は、一人天井を仰ぐ。

 仄かな灯の中、鈴木が握り締めた拳が見え、
「先輩……どうしてあんな無茶を?」
 と、聞きたい気持ちを抑え、陽波はその言葉を呑み込んだ。

 もし、あの時、牙撃の弾丸が放たれなければ、鈴木は大きなダメージを負ったかもしれない。
 ロジーを庇ったのだとしても、自分が傷つく事も厭わない、ある種無謀ともいえる戦い方。
 それに、一抹の不安を覚えずには居られない陽波だった。


 しかし、今はこの勝利に酔いしれよう。




 後日、このトンネルは再び整備工事が始まった。
 今は片道通行で物資を運ぶトラックや、他の土地へ避難したいと言う人を移動する車だけが通る事ができるようになっている。
 しかし、まだ安心は出来ない。
 トンネルが完全に復旧したわけではないし、まだ群馬に残る魔の存在は居るのだろうから。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 未来へ・陽波 透次(ja0280)
 撃退士・ロジー・ビィ(jb6232)
重体: −
面白かった!:4人

撃退士・
鈴木悠司(ja0226)

大学部9年3組 男 阿修羅
未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
パンダヶ原学園長・
下妻笹緒(ja0544)

卒業 男 ダアト
希望の守り人・
水屋 優多(ja7279)

大学部2年5組 男 ダアト
総てを焼き尽くす、黒・
牙撃鉄鳴(jb5667)

卒業 男 インフィルトレイター
撃退士・
ロジー・ビィ(jb6232)

大学部8年6組 女 ルインズブレイド
ついに本気出した・
砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)

卒業 男 アストラルヴァンガード
未来へ繋ぐ虹・
緋勇 理人(jb9062)

大学部1年64組 男 阿修羅