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マスター:漆原カイナ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2012/12/03


みんなの思い出



オープニング



 ―― 十一月初旬 13:06 久遠ヶ原学園 教室――
 
「はぁ……」
 とある少年撃退士はため息を吐いた。
 今、彼がいる部屋――文化祭の為に借りた部屋は凄まじく散らかっていた。
 そこかしこに何かの部品や工具類と思しき物が散乱し、何らかの騒動があったのは明らかだ。
 そもそもこの部屋は彼が個人的な出し物の為に借りたものだった。
 
 先日、最終決戦のエピソードである『バグア本星攻略作戦編』を数週間に渡って放送し、爆発的な視聴率を記録したロボットアニメ――『CTS』こと『キャッチザスカイ』。
 放送期間中、ファンたちはかつてない大盛り上がりを見せたのだが、そのアニメが大好きな彼も例外では無かった。
 そして、その盛り上がりの勢いに任せ、彼はもう一つの趣味であるプラモデルと併せて個人的な出し物に踏み切ったのだ。
 
『CTS』に登場するメカを再現したプラモデルをかねてよりコレクションしていた彼は、ここぞとばかりに新たに大量購入し、それを用いて『バグア本星攻略作戦編』のジオラマを作り、それを文化祭というチャンスを活かして大々的に公開しようとしたのだった。
 少しずつではあるが確実に進んでいたジオラマ製作。
 だが、公開直前になってとある問題が発生した。
 
 ことの起こりは数時間前。
 この日も借りた部屋でジオラマの仕上げに彼が勤しんでいた時、謎の集団の襲撃を受けた。
 『バグア団』を名乗るその集団は、「『CTS』の1クール時の裏番組として放送されていた美少女アニメの二期が放送されないのは、『CTS』に視聴率を取られたからである」と逆恨みし、そのファンである彼も逆恨みの対象としたのだ。
 
 結果、その集団によりジオラマは壊され、彼は困り果てていた。
 プラモデル自体は人気商品として今も各地の量販店で大量に売られているおかげで、すぐに買い直すことができる。
 依頼で稼いだ報酬を特に使わず貯金していたおかげで、資金も十分にある。
 だが、ジオラマを作る為には大量のプラモデルを組み立てなくてはならない。
 
 しかも、彼がジオラマに用いている『キャッチ・ザ・スカイ』のキットは『漢シリーズ』と題された通向けのモデルだった。
 ――『最近のヌルいキットに一喝!』というコンセプトで作られた『漢シリーズ』は『作り易さ』や『お手軽』という近年の主流に真っ向から逆行し、接着剤必要、単色成型、内部メカまで再現し、完成すればその完成度はずば抜けて高いものの、生半可な腕では到底完成できないほどの複雑なキットなのだ。
 ミサイルの一発一発は勿論、機銃弾の一発一発までもが別々のパーツとして成型されているほどの再現性たるや凄まじく、弾薬の一発一発に組み立ての行程が発生するほどの細かさである。
 更には、パイプやシャフト、ケーブルといった内部メカに至るまでもパーツ単位で精密に再現されており、もはや普通のキットの域を超えている代物に他ならない。

 これほどのキットを複数同時など、到底彼一人ではすぐに完成できない。
 しかも、既に文化祭期間は始まっているのだ。
 よしんば、思いのほか速く完成できたとして、完成した頃にはちょうど文化祭が終わっていたということにもなりかねないのだ。

 頭を抱えた彼は、ふとあることを思い出した。
 ――以前にもこの『漢シリーズ』を組み立てる依頼が出されたことがある。
 それに気付いた彼は早速、依頼の記録を参照した。
 
 記録によれば、その時はかなり差し迫った状況ではあったが、無事に期日に間に合ったようだ。
 しかし、今回はジオラマの製作。
 そもそも必要な完成キットの数がその時よりも多く、戦場の地形も再現しなければならない。
 難易度はかつての依頼よりも上だろう。
 
 だが、今は撃退士たちに賭けるしかない。
 ――彼等ならきっとやってくれる。
 そう信じ、貯金から取り出した久遠の束が入った封筒を大事そうに持って斡旋所へと走り出した。



 ―― 同日 15:10 久遠ヶ原学園 教室――

「……というのが……今回のいきさつ……」
 教室に集まった学園生たちを前に来栖美里(jz0075)は説明を終えた。
「……依頼してきた……この撃退士さんは……可能な限り早くジオラマを再建したい……みたい……」
 美里は参考までに持って来た『キャッチザスカイ』のプラモデル――漢シリーズの箱を教卓に乗せる。
 作中に登場するメカである『ナイトフォーゲル』の気合いが入ったCGイラストが印刷された蓋の両端に触れた美里がそっと箱を開けると、中からは姿を現したのは大量かつ微細、そして超精密な部品の数々だ。
 既にこのプラモデルを知っている学園生もいるが、彼等ですら現物を前にして圧倒された声を上げた。
 
「……今回は……組み立てるだけじゃなく……キットや……土台用のパーツを買い集める……所からが依頼……」
 箱の蓋を戻すと、美里はタブレット端末を取り出して画像を見せる。
 画面に写っているのは、依頼主である学園生が作成途中に撮っていたジオラマの写真だ。
「……参考までに画像が提供されているけど……別にこの通りにしなくてもいいし……むしろ依頼を受けてくれた人がある程度好きにデザインしてくれていい……依頼主の人はそう言ってる……」
 一通りの参考画像を見せ終えると、美里はタブレット端末を教卓に置いた。

「……受けてくれた人には……キットや土台用パーツの選定から任せる……資金は弁済金があるから……心配しなくていい……らしい……」
 言い終えた美里は、次に教卓に置いてある新聞を手に取った。
 折りたたまれている紙面をそのまま開くと、すぐにテレビ欄が顔を出す。
 学園生たちに見えるようにテレビ欄を向ける美里。
 番組表の下部には緑色のマーカーでなぞられている文字列があった。

「……残りの文化祭の期間中に……『キャッチザスカイ』の放送日が一回ある……。……新章の『エピローグ編』の第一話が放送されるのに間に合えば……見に来る人たちのテンションも上がるから……できればそれに間に合わせてほしい……って言ってた……」
 
 学園生たちが見終えたのを察し、美里は新聞紙を畳んで教卓に置く。
「……『バグア団』はまたきっと妨害してくる……だから……ジオラマを作る人以外にも……『バグア団』からジオラマを守る人が必要……」
 妨害してくる彼等は学園生である以上、撃退士だろう。
 ならば彼等からジオラマを守れるのは撃退士だけだ。

「……私もこのアニメ好きだし……プラモデルも好き……。……だから……この人の気持ち……よくわかる……」
 そう前置きした後、美里は学園生たちを見つめながら、真摯に頼み込んだ。
「……お願い……この依頼を聞き届けて……ジオラマを……再建してあげて……」


リプレイ本文


「最終的な締め切りは六日後……ですが、このジオラマを展示として少しでも多く成功させる為にも、三日後の完成を目指しましょう」
 遠宮 撫子(jb1237)の気合いの入った一言にある者は頷き、ある者は雄叫びのような返事で応えた。
 その光景からは凄まじい気迫が伝わってくる。
「よしっ! バッチリいいモノを作る為にもプラモデル初心者の人たちはこれを読んでね!」
 やる気十分でジオラマ製作に臨もうとしている一護たちに向け、雁久良 霧依(jb0827)は豪快な行書体で表題が書かれたムックを差し出す。
「『漢シリーズ』の制作手引書よ。さっき購入して速読したから、みんなで回し読みしてくれていいわ。それと、時間が無いから要点だけ抜けだせるように、必要そうな所はマーカーペンでなぞっておいたし、注釈もつけといたから」
 ムックは決して薄くはない。だが、実際に紙面には丁寧なマーキングや注釈で一杯であり、その力の入れように長門 一護(jb1011)は素直に感心する。
「すげえな――ここまでやるたァ驚きだぜ」
 すると霧依は笑みを浮かべて一護の言葉に応えた。
「作品への愛があればこそよ。『CTS』大好き♪ 私と同姓同名のキャラがいるの♪ お色気回にしか出てこないけど」
 霧依が楽しそうにそう語ると、榊 十朗太(ja0984)も会話に入って来た。
「奇遇だな。実は俺も同姓のキャラクターがいてな」
 十朗太を振り返った霧依は少し考え込んだ後、何かを思い出したように小刻みに何度も頷く。
「ああ――なるほど。榊さんと同じ苗字といえばあのキャラしかいないわね」
 霧依がそのキャラクターを知っていたのが嬉しかったのか、十朗太は小さく笑って頷いた。
「可能ならば、朱漆色塗装の雷電をジオラマに登場させたい。俺と同姓のKVパイロット――同姓のいぶし銀のエースが駆る機体で名機として有名な機体だからな」


 十数時間後。
 既に夜も遅い時間だと言うのに、未だ教室には明りが点いていた。
 作業を一段落させる気配は七佳たちにはなく、製作担当の面々はまさに修羅の如く姿勢でジオラマを作り続けていた。
 七佳が作っているのは1隻の艦船ユニットだ。
 KVと同一縮尺で作ると大き過ぎる為、スケールは1m程度に抑え、ジオラマ前方に設置する事で遠近感を調整。
 複数必要な部品――エンジンノズルや砲塔等をプラ板、パテ類で作成し、シリコン型を使ったレジン複製を実施。
 砲身は真鍮線及び中空のプラ棒を利用して作成している。
 それだけでも十分凄いが、更に七佳は少しの無駄も無い手際の良さを発揮し、レジンが硬化するまでの時間を利用して同時並行で艦船本体の作成も進めていた。
 装甲分割等のモールドはPカッターを用いて、アニメだと線が簡略化されるので、装甲の継ぎ目、搭乗ハッチ、物資搬入用等用途を想定しながら刻みこんでいく。
 各種マーキングやキット付属のデカール流用やマスキングを用いた塗装で再現。
 映像に忠実にではなく、モールド同様意味を考えながら作業を進めていることもあってか、艦船ユニットは凄まじいリアルさを獲得しつつあった。
 更に七佳は艦橋部分にLEDを用いて照明、及び艦橋上部や先端に衝突防止の点滅灯を設置していく。
「スゲェな……」
 たった一日のうちに艦船ユニットを作り上げてしまいそうな七佳に一護は圧倒されていた。
 つい七佳の手際に見入ってしまった一護は、彼女ができあがったばかりの艦船に早くも工具による傷が付いているのに気付いた思わず声を出した。
「っておい!? 傷、ついちまってる……ぞ?」
 すると七佳は特に慌てた風もなく、穏やかな物腰で答える。
「これはですね、戦闘による損傷を再現する為の演出です。これ単体で飾る場合ならきちんと整備された状態でも良いんですけど、今回は最終決戦シーンのジオラマですからこうしたダメージ痕の加工が必要になってくるんです。他にもウェザリング――汚し塗装なんかもやる予定ですよ」
 喋りながらも七佳の手は迅速かつ正確に動き続けていた。
 艦船本体完成後、ダメージ痕等の加工を終えた七佳は、サーフェイサーを吹き凹みや傷を修正してからエアブラシを用いて塗装を綺麗に仕上げる。 その後、一護に話た通り、ウェザリングやドライブラシそしてスミ入れ等の塗装効果を加えていく。
「まさにこれがプラモの達人って奴か、恐れ入ったぜ」
 手のひらで大げさに顔面を覆い、関心を通り越してもはや唖然とする一護。
 だが、七佳は事も無げに答えた。
「いえ、私はプラモデルは作成経験無しですよ」
「あ?」
 一護は思わず呆けた表情で、同じく呆けた声を出してしまう。
「プラモデル用の工具や材料を使って飛行機の模型は良く作るんですけどね」
 それを聞き、蝶治が微笑しながらツッコミを入れる。
「それはフルスクラッチじゃないの。というかキットより先にフルスクラッチから入るって凄いわね」
「フルスクラッチ?」
 聞き返した一護に蝶治がすかさず答える。
「たとえば今、あたしたちが作ってる『漢シリーズ』は予めパーツがある程度できてるわよね? でも、フルスクラッチっていうのはそれすらもない状態――つまりパーツの作成から始める完全自作のことよ。当然、難易度は遥かに上よ」
 手慣れた所作で工具を使いこなす七佳の手際を改めて見ながら、一護はしみじみと呟く。
「人は見かけによらねェもんだ……」
 そうしている間に霧依は自分のキットを完成させていた。
 作ったのは『CTS』に登場する『霧依』の乗機であるクラーケンだ。
 キットと一緒に筋肉むき出しの腕をもつ怪物の模型を数個と透明レジン液を購入していた霧依はそれを用いて、グロ格好いい機体をコンセプトにキットを仕上げていた。
 機体は多脚モードに組み上げ、多関節アームを蛇の鎌首の様にもたげた攻撃態勢を取らせていた。
 使える時間の都合上、可動は考えずポーズ固定で組み時間短縮を狙っていた。
 特筆すべきは機体下部に荷電粒子砲アンゴラオフィング装着し、それを抱き抱える様に怪物腕を五対ほど取り付けたことだろう。
 腕表面に透明レジンを塗ることで粘液じみた生物的な質感を出し、追加アームフィアラーを表現している。
 塗装は機体はオーソドックス。
 フィアラーはグロテスクに、メインカメラに赤色LEDを仕込み、威嚇色に輝く目の様に表現することも忘れない。
 こうして、霧依カスタムは完成したのだ。
「おお。中々なの出来栄えだな」
 感心したように賛辞を贈る十朗太も『朱漆色塗装の雷電』を完成させていた。
「そっちもかなりの出来じゃないの」
 七佳の艦船や、霧依と十朗太のKVを見て一護はまたも気を良くしたようだった。
「やっぱよぉ、男のロマンってのはいつだって追求しなきゃあな!」
 かう言う彼もキット作りに依頼を忘れて没頭しており、一緒に飾るつもりで合間に携帯電話で制作過程を撮影するのを思い出しては慌ててシャッターを切っている。
「……最近のキットってパねぇ……」
 出来上がったKVの出来の良さに驚きを隠せない一護であった。
「さて、そろそろヘルメットワームの方は仕上がってるころかしらね。出来上がった子からあたしに回してちょうだい」
 蝶治が問いかけたのは更紗と撫子の二人だ。
 プラモデルに関して全くの未経験である更紗たち彼女たちの分担は、比較的原形を留めていた大量のヘルメットワームと、幾つか残ったKVの修理だ。
 必要補充分を用意する為にヘルメットワームの新品キットも購入してあり、漢シリーズにしては部品点数も少なく、構造も単純なこれを更紗たちにあてがったのはひとえに蝶治の采配だ。
「お蝶さん、さっきから幾つも組み立てているこれは何の機体でしょうか? 雁久良さんや榊さんのとは違って、同一のキットが大量に必要なようですが」
 一心不乱かつ真面目一徹にキットを組み上げ続けていた撫子はふと蝶治に問うた。
 とにかくジオラマを全力で頑張ることを目標にし、本当は戦いたくてウズウズしているが、ここはジオラマ完成のために罠とジオラマ制作に欲求不満を全力でぶつけて集中していた撫子だったが、大量に並んだヘルメットワームを見てふと気になったようだった。
「それはヘルメットワームっていうのよ。言わばバグア側――CTSに出てくる敵側の雑兵ね。最終決戦のジオラマを作る以上、ある程度の数が揃った雑兵がいたほうが映えるもの」
 答えながら蝶治は三人が作ったヘルメットワームを受け取ると、全神経を集中して塗りを行い、それを待機していた薊に渡す。
「乾燥よろしくね」
 薊は回って来たヘルメットワームにドライヤーを当て、塗料が乾燥するまでの時短を行う担当だ。
 流れ作業のラインを構築した蝶治は驚く程に効率を上げていた。
 修理だけで塗りに入れるヘルメットワームをすべて処理すると、新造分が上がってくるまで破損したKVの改修に入る。
 破損具合も逆手に取り、一体ずつパテ、エアブラシ、メイク用のカラー素材などを駆使して塗装を行い作中と同じ破損状態に仕立てるなど臨場感を出していく。
 美術系は本職だけあり、作成中の蝶治の顔は職人そのものだ。
順調に流れ作業をしていると、ふいに鈴の音が鳴り響いた。
「来たみたいだね。邪魔するなら、やり返す。これ大事!!! 倍返し熨斗付きでね――」
 それを聞きつけて薊が立ち上がる。
 何を隠そう、この鈴の音は薊が仕掛けたトラップの音だ。
「おうよ」
 続いて一護も立ち上がる。
「どうやら仕置きの時が来たようだ」
「……依頼人が丹精込めて作り上げたモノを一方的な逆恨みで破壊するなど許し難い奴らだ。きちんとその償いはさせてやらないといけないだろうな。俺も出来る有限りの協力をさせて貰おう」
 更紗と十朗太も立ち上がり、四人は静かにジオラマ作成用の教室から出ていった。


「テメェの勝手な言い分で人のもんぶち壊すたぁ筋が通らねェ。キツいお灸を据えられる覚悟は出来てンだろうなァ?」
 教室の外。
 表に出た一護たちは入口前でバグア団と対峙していた。
 予想通り現れた四人を前に一護は臨戦態勢で凄んで見せる。
 当の四人はというと、四人ともが落とし穴に落ちて半ば埋まりかけていた。
 撫子が教室外出入り口の校庭に地面に向かって大剣で一撃くらわせて何個か穴を開けて作った簡易落とし穴が見事に功を奏したようだ。
 穴の中には使い物にならなくなったジオラマの残骸を入れて地味に落ちると痛いダメージもねらっている。
 ろくに動けない状態で一護たちに囲まれ、早くもバグア団はピンチであった。
 しかも、トラップはそれだけではない。
 この教室に来るまでに通り抜けねばならない別の教室の窓に更紗は、四人がファンというアニメのポスターを入手し、窓をあけると破れるように内側から張っておいたのだ。
 それとは知らずに窓を開けてしまった四人に対し、更紗は罵り語彙が続く限り罵り精神的に追い詰めていた。
「その程度の輩がファンを語る、あまつさえ他者の所業を妬み逆恨みか、片腹痛いな」
 そればかりか更紗はそのアニメのコスプレと主要台詞を暗記していた。 
 その台詞と格好で嫌悪感を煽り、ジオラマより自分に対しての攻撃性を刺激させるのが目的だったが、思わぬ効果を及ぼしたようだった。
 思わず見とれてしまった四人は撃退士ならば簡単に脱出できる筈の落とし穴からの脱出が遅れ、致命的な隙を晒す。
 そして、その隙を逃さず一護たちは一気に制圧にかかった。
「依頼の為とは言え女装する羽目になるとは、1人2人は死んで貰う」
 更紗の表情は物凄く恥らっているが、立ち振る舞いは堂々しており、ギャップ萌えあたりをねらって敵の排除を敢行する彼女は躊躇なく落とし穴に嵌った四人をボコボコにしていく。
 薊は薊で予め白衣に赤ペンキをかけ、血まみれにしておき、その上で狂ったように笑いながら四人に襲いかかった。
「あははははッ、来ちゃったぁのぉ? 哀れだねぇ。後悔しながらぁ、這い蹲りなぁ!!」
 終始クルッタ笑みを浮かべながら、薊もやはり四人をボコボコにしていくのを見つつ、十朗太と一護も四人をぶちのめしにかかる。
「……他の作品とは言え、同じアニメだというのに、人の大切なモノに敬意を払うことも出来ないとは見下げ果てた野郎共だな。二度とそんな気が起きないように教育してやろう」
 ――数分後。
 そこにはボロボロにされたバグア団の姿があった。
「テメェらがこのアニメが好きだって気持ちは分かる。だが、だからコイツの作品を壊しても良いって事は絶対に無ェ! お前らも言いたいことがあンならまず同じ土台に立って見るこったな……筋を通したいならジオラマ作り手伝ってみるか?」
 四人のやり方は許せないが制作を優先した依頼主の気持ちを敬い、一護はそう持ちかけた。
「負けたんだし手伝おうよ?」
 薊もそう言われ、バグア団の四人は――。


「「「「本当に申し訳ありませんでした」」」」
 捕縛された四人はジオラマを作成する面々の前で深々と頭を下げた。
「あんたたち、アニメの表層だけ観てるの!? あんたたちの好きなアニメにだって作り手がいるの! 壊していい芸術なんてないのよ!」
 四人を激しく糾弾する蝶治だが、言い終えた後にこう付け加える。
「――解ってくれたならいいのよ。作品は違えど同じアニメ好きなら、手伝ってくれるかしら?」
 一方、霧依は四人の肩を叩きながら、優しく諭すように語りかける。
「私はCTSで希望を捨てず最後まで諦めない事を教わったわ。貴方達もアニメから色んなものを貰った筈。アニメのキャラにとっては貴方達ファンこそが最後の希望……ラストホープなの。やるなら手伝うわセクシーなキャラコスで♪」
 

 その後、一護たちの計らいによって改心したバグア団が加わったことにより、作業効率は更に向上。
 透明なテグス&スタンドでポージング固定。セロファンや手近な空き箱に無数の穴とLEDと組み合わせ、穴から外へさす光が星々や戦闘光に見えるよう工夫。
 暗幕の中で重要な角度を選び、ネイル用ラメ粒子を散らして光を反射させ、宇宙らしさUP――蝶治の設計した土台もすべて仕上がり、二日目の夜にはジオラマ自体が完成、続いて決戦編を編集したダイジェストが完成した。
 その映像をモニターに出し、アニメ主題歌やサントラの音源を流してみると、より一層ジオラマのケレン味が引き立っていく。
 ジオラマやAV演出の完成度は勿論、アニメの放送に間に合ったこともあり、展示は大成功を収めた。
 文化祭中、教室は常に黒山の人だかりでごったがえし、撮影のフラッシュは瞬きっぱなし。
 更には、撮影した写真をアニメの主題歌と合わせた動画がその日のうちに観客の有志によってアップロードされ、動画サイトで凄まじい再生回数を記録し、ランキングの一位に君臨したという。
 そしてこれ以降、バグア団による事件も起こらなくなったそうな。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: Defender of the Society・佐藤 七佳(ja0030)
 群馬の旗を蒼天に掲げ・雁久良 霧依(jb0827)
 ツンデレケンカ番長・長門 一護(jb1011)
重体: −
面白かった!:5人

Defender of the Society・
佐藤 七佳(ja0030)

大学部3年61組 女 ディバインナイト
『榊』を継ぐ者・
榊 十朗太(ja0984)

大学部6年225組 男 阿修羅
屍人を憎悪する者・
蘇芳 更紗(ja8374)

大学部7年163組 女 ディバインナイト
八部衆・マッドドクター・
藤沢薊(ja8947)

中等部1年6組 男 ダアト
群馬の旗を蒼天に掲げ・
雁久良 霧依(jb0827)

卒業 女 アストラルヴァンガード
ツンデレケンカ番長・
長門 一護(jb1011)

大学部3年305組 男 阿修羅
モテ男にも恋をさせたい!・
遠宮 撫子(jb1237)

大学部4年87組 女 ルインズブレイド
撃退士・
八代 蝶治(jb1846)

大学部7年219組 男 ナイトウォーカー