●驚異の新機能! ドキドキ魔改造!
「攻略方法は見えていますので、後は実行する覚悟だけですね……ええ…………覚悟だけですね」
再来した強敵を撃破するべく、古雅 京(
ja0228)は今回、最初から虎穴に入る事を前提で挑むつもりだった。
既に現場の更衣室で赤いフリルのビキニに着替えた京はクレイモアを構え、敵の一体へと突撃する。
吸い込まれた数秒後、袋を切り裂いて現れる京。
そして、京の恰好は実にあられもないものとなっていた。
ビキニの上下は真っ白い泡状の物質――ホイップクリームとなり、その付着部位もきわどい部分を隠すような箇所だけ。
京の豊かなバストに至っては中央を隠すようにホイップクリームが盛られている為、まるで飾り付けられたプリンのようだ。
魔改造された自分の恰好を見下ろし、京はふと胸中に自問する。
(先日の一件も今回の事も衝動に身を任せる事以外の心地良さが有ったなんて。淑女に有るまじき事ですが背徳は甘い毒という事でしょうか?)
「……青い空……白い雲……眩しい太陽……焼ける砂浜……そんな場所になんで天魔……許せない」
一方、ステラ・七星・G(
ja0523)も敵の一体に向けて突撃を敢行し、自ら服の内部へと飛び込んでいた。
ステラも水着に着替えており、今は白地にコバルトブルーの水玉模様というデザインのビキニ姿だ。
「12人がかりで倒したのが12体ならとる方法はただ1つ! わざと飲み込まれて変換中に攻撃するのみ!」
既に残骸となった袋から這い出してきたステラの衣服もまた、あられもない姿に魔改造されていた。
形状自体はビキニの原型を留めてはいるが、材質はタイトなビニル製となり、柄は未成年者に配慮した映像加工をする為のぼかし――即ちモザイクになっている。
決していたずらな露出をしているわけでもなく、かえって水着の被覆面積は増えているにも関わらず、傍目にはけしからんことこの上ないから実に不思議だ。
当のステラはというと、女の子同士なら恥ずかしくないので魔改造されても気にせず、むしろ一夏の思い出な丁度良い笑い話になると思ったのか、デジカメを取り出していたのだった。
「……物理を小馬鹿にしたような引力と、斥力の使い方。許さない……ギメルみたいな、脂ぎったエロ顔の天使が造ったに、違いない……」
白と黒の縞柄のタンキニを着て、敵の一体を見つめながらぶつぶつと呟く樋渡・沙耶(
ja0770)は憤懣やるかたない様子だった。
予定通り自ら吸い込まれ、内部から破壊する作戦は成功し、それ自体には何の問題もなかった。
ただ沙耶にとって計算外だったのは、変換中に内部から攻撃されてパニックを起こした敵が激しく動き回り、その末に、着て帰る用に置いておいた白衣の置き場所まで来てしまったこと。
そして、慌てた敵が見境なく吸い込んだ周囲の物品の中に白衣も入っていたことだ。
袋を内部から破って出てきた沙耶は、すぐ近くに吐き出されている白衣、もとい数秒前まで白衣だったものを見て絶句した。
白衣は極限までタイトにしたブラックレザーのジャンプスーツに変換されており、胸には大きく「Squeeze this!」と書かれ、あまつさえ下腹部から股にかけての部分には「Pierce Here!」と書かれている。
良い子のみんなは英文の意味が気になったからって検索するなよ! 絶対にするなよ!
ため息を一つ吐いて仕方なくジャンプスーツに袖を通し、直に着る沙耶。
ちなみに着ていたタンキニも同じデザインのものに魔改造されていたんだから仕方ないったら仕方ない。
「また脱ぐんですか……ハァ……」
かつて同じようにけしからん攻撃を仕掛けてくる敵と戦った依頼のことを思い出してため息を吐きながらも、水着を着たソリテア(
ja4139)は意を決して敵の内部へと飛び込み、中から破壊すると同時に脱出する。
一連の動作は実に鮮やかな手際だ。
ただ、偶然にもソリテアは千載一遇のタイミング――変換を行う際に、素材となる物質を一度分解した瞬間に敵を倒してしまったせいで……。
袋から出てきてソリテアが立ち上がった時、分解された水着は粒子となって崩れ、次の瞬間には風に吹き散らされていった。ソリテアの日頃の行いのおかげか藏倫故か、胸元とビキニラインだけにかろうじて、布のかけらが残っている。
裸に限りなく近い状態で外気に触れた瞬間、これまでのストレスをトリガーに第二人格が覚醒したソリテアは他のサーバントにも襲い掛かった。
「許さない。不埒の代償、きっちり払え。失せろ」
ただならぬ何かを感じ取った他の敵個体は、かつて海水浴客がそうしたように、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
だが、ソリテアは凄まじい殺気を垂れ流しながら、敵を追い回すのだった。
「……報酬のためだ、仕方ない。死ぬわけじゃないんだから、まぁ問題はないだろうね」
御巫 黎那(
ja6230)は淡々と呟き、そして敵の内部へと突っ込んだ。
袋を切り裂いて出てきた黎那はそう一人ごちて立ち上がろうとした時、不意に背中にのしかかる重さに驚愕する。
「……!」
驚いて振り返った黎那の背中には、立派な鬣が特徴的な巨大な猿がしがみついていた。
実に黎那の身の丈以上もある為、傍目には大猿をおぶっているように見える。
「一体何がどうしてこうなった?」
困惑顔で再び一人ごちる黎那は、出発前に見せられた『変換の例外』――グラディウスの件を思い出す。
「なるほど……『ヒヒ』違いか……」
ため息を吐くと、黎那は色々と事情を理解した。
「となると、服を取り出すには口から手を突っ込まなければならないのか……難儀なことだ……。それ以前に、私はこれを背負って帰らないといけないんだろうか……」
帰りの面倒事を考え、黎那はもう一度大きなため息を吐いた。
その頃、連携を取って動くアストリット・シュリング(
ja7718)とジーナ・アンドレーエフ(
ja7885)は色々な意味で敵を圧倒していた。
「ほぉ……今回の敵は猥褻物がお好みか。良かろう! 汝の程度の程、試させてもらう!」
臆面もなく言い放つアストリット。
「やぁねぇ。もうちょっと情緒のある魔改造にしてくれればいいと思うのよぅ」
そして、『いいえがお』で語りかけるジーナ。
二人は他の仲間たちと同じく自ら敵の内部へと突撃した。
だが、内部からの突きがあまりにも激しすぎたせいで、敵はすぐに吐き出してしまったのだ。
二人とも既にアレでソレでピーでバキューンな格好だが、何一つ気にしてはいなかった。
そればかりか、二人は自分を吐き出したのと同じ敵を嬉々として追いかけ回し、力任せに捕獲すると、逃げようとする敵を抑えつけ、自分から再び中に入ろうとする。
二人がそれぞれの標的の内部へと強引に入り込んだ直後、やたらと興奮気味な声が熱い吐息とともに袋の中から聞こえてきた。
きっと二人は術や武器を駆使して敵を内部から攻撃しているのだろう。
その激しさを物語るように、袋が先ほどからひっきりなしに上下運動を続けている。
だが、袋の内部ということもあって、その様子は外部からはうかがい知れない。
※注:袋の内部は見えない為、音声のみでお楽しみください。
「汝の中は柔くて暖かいなぁ! そこが弱いのか! ならば攻め抜いてやろう! 遠慮するでない! 汝の全てを我に晒すが良い!!」
「ほらほらほらほらぁこの程度じゃないでしょう? 逃げなさい抗いなさい戸惑いなさい打ちひしがれなさい! いい子にしてたらご褒美をあげるわぁ」
「どうした? 随分と敏感だなぁ! そんなにここが弱いのか! それとも、もしかしてここが良いのか? 遠慮するでないと言っただろう! ここか! ここが良いのか! 敏感な場所を隠そうとするとは、このいやしんぼめ!」
「穿って穿って穿って穿って穿ってあげるわぁ! いいわぁ! すごく! すごくっ! すごくびくびく反応してるぅ!」
「この程度でへたってしまうとは情けない! まだ楽しみは始まったばかりだぞ! もっと我を楽しませろ! もっと我を満足させろ!」
「こらえ性がないわねぇ……逝くまで私に遊ばれる度量も無いのかい?」
※注:これは戦闘シーンです。
数分後、二人はそれぞれの敵を倒した。
二人に攻撃された敵は、他の個体よりもひどくぐったりしている。
しおれたように脱力するその姿が、ひどく哀愁を誘っていた。
一方その頃。
「敵を倒すために、飲み込まれる必要があるなら、あたし頑張ります! 裸にはなりません! 裸になる方が変な服着るより恥ずかしいですし! そ、そんな変な服といっても、着てるだけで恥ずかしい凄い服なんて、そうそうないですよね……? 怖いですけど、が、頑張ります! 」
戦闘前、日比谷陸(
ja8528)はそう言った。
そして、陸は犠牲になったのだ。
量産型サックサックサーバントMk-2の犠牲に。
「ふぇ……何……この恰好……ぁぅぅ……」
あまりの恥ずかしさに陸の顔は真っ赤だ。
身体の温度や心拍数は急上昇しているらしく、今にも倒れそうである。
動きやすさ重視で競泳用の紺の水着に上に裾をしぼったTシャツを着込んできた陸の服装は見事に魔改造されていた。
トップスは革ベルトを思わせる拘束具に。
ボトムスも革素材で鍵付きのものへと変化していた。何で鍵がついてるのかって? さあ、何故だろう……。
変換中に内部からパンチパンチ、キックキックしまくったおかげで敵は倒せたが、とてつもなく恥ずかしい目に遭った陸であった。
(こんな変な袋でも、生ゴミ処理機とか粗大ゴミのリサイクルには使えそうなのに。何のためにこんなのが居るのか知らないけれど、人を泣かせる物なら仕方なし)
倒した敵の一体を見つめながら恵夢・S・インファネス(
ja8446)は胸中に呟いた。
砂浜での戦闘は砂を被って後で洗うのは面倒なので、横っツラをリジルで思いっきりホームランして海辺まで押し戻し。
なるべく横を取って吸い込み範囲回避という手段を取ったものの、敵の奮闘を前に恵夢は吸い込まれてしまい、やむなく最後の手段である内部からの攻撃を使う羽目になった。
着ていたレザースーツは濡れた白ワイシャツに変化し、今の恵夢が纏うのはそれ一着のみだが、恵夢本人としてはあまり気にならないようだった。
なにせ本人にしてみれば「二人のお母さんに授かって育てられたこの体に、恥ずかしい所なんて無いッ!」と言い切れるレベルだからだ。
むしろ精神的ダメージを受けていない恵夢は、恥じらいの勉強として、女の子らしい恥じらいや羞恥心とかリアクションの勉強をさせてもらうべく、吸い込まれて魔改造を施された仲間たちを凝視するのだった。
「何でこんな迷惑で危険なのが海水浴場に? ……人に迷惑をかけるコレらをのさばらせておく訳にはいきませんね」
そう意気込み、敵の一体に戦いを挑んだ森部エイミー(
ja6516)は魔改造されてしまった装備を纏う恥ずかしさに打ち震えていた。
覚悟を決めて自ら吸い込まれ、内部からの攻撃によって敵は既に撃破している。
――吸い込まれて装備が魔改造されて恥ずかしい恰好になっても戦闘中は堪える。
そう決めていたこともあり、戦闘中は何とか耐え抜くことができた。
だが……。
(はぅぅ……もうダメ……ですっ)
顔を真っ赤にして目をぎゅっとつむって立っていたエイミーは魔改造された装備――ごく普通の白ビキニを上下ともに脱ぎ捨てて海に飛び込む。
エイミーが着ていた白ビキニは露出度も常識的で、むしろこの場においては比較対象がアレなだけに、かなり健全な格好だ。
一見すると、あそこまで恥ずかしがる要素があるようには思えない。
一方、脱ぎ捨てられたビキニはまるでカニ歩きをするように、ひとりでにどこかへと移動していく。
エイミーのただならぬ様子を心配して駆け寄ってきた恵夢が、移動していくビキニをひょいと拾い上げたことで一連の理由は明らかになった。
「なるほど」
エイミーの手の中で件の白ビキニは上下ともに高速で微細に振動していたのだ。
「確かにこれは恥ずかしいかもしれないわね」
冷静に分析する恵夢の手の中で、ヴィブロビキニ(!)はなおも小刻みに震えていた。
海水浴場を荒らす敵を前に、ニオ・ハスラー(
ja9093)は義憤に燃えていた。
「楽しい海水浴を邪魔する悪い奴はあたしが相手っすよー! あたしの正義の拳を受けるっす!」
※注:『拳』と言っていますが、ニオの装備はマグナムです。
「敵の倒し方がわかっているのならそれをやらないわけがないっす! ということでがんがんいくっすよー!」
そう叫ぶや否や、ニオは躊躇なく敵の内部へと飛び込み、自ら吸い込まれにいく。
敵がニオを完全に吸い込んだ直後、轟音のような銃声とともに袋の表面に大穴が開く。
立て続けに六発の銃声。
シリンダーに装填された全弾を内部から撃ち込まれ、敵は六つの大穴を盛大に開けられたとあっては機能停止を免れない。
果敢な戦法によって瞬く間に敵を無力化したニオだが、服装は案の定、魔改造されていた。
だが、ニオは服装の変異は気にしていないようだった。
学園へ来るまでに世捨て人的な暮らしをしていたので羞恥心がいまいち無いせいだろうか。
たとえそれが、ほとんど加工していない動物の毛皮でできたビキニだったとしても。
まるでステレオタイプな原始人のような格好だが、むしろニオとしては気に入ったらしい。
「おお!なんすかこれー! 面白いっす! どうっすかー? 似合うっすかー?」
その上機嫌ぶりたるや、くるくる回るポーズを取ってみせるほどだった。
「……なんかめいわくなサーヴァントなの。きちんと退治して楽しい海水浴場を取り戻すの! ……愛ちゃんもれっきとしたブレイカーなの。だから、怖くてもここは一人で何とかしてみるの」
そう決意を語った周 愛奈(
ja9363)は吸い込まれた状態から果敢に内部を攻撃し、見事サーバントを退治した。
その代償として服装は魔改造されてしまったが。
ただし、愛奈自身は学校指定のスクール水着がどんな風に変化するかちょっと興味を持っていたのだが、それは内緒である。
愛奈の着ていたスクール水着は形状こそ変わらないものの、材質が薄い紙製に変化していた。
このまま水にはいれば溶けることウケアイである。
お子様なので羞恥心は低めなのか、愛奈は人数分用意していた大きなバスタオルを持って仲間たちのもとへ歩み寄る。
「う〜んとね。愛ちゃんはお子様だから、あんまり恥ずかしくないけど、姉様達は綺麗な人が多いから、きちんと隠さないといけないと思うの」
小さいながらけなげに頑張っている。
実に微笑ましい光景である。
ただし、服装が魔改造されてなければな!
こうして、少女たちの奮闘により海水浴場の平和は保たれた。
我々は記憶しよう――少女たちの戦いと、そのあられもない恰好を。