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マスター:漆原カイナ
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:12人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/08/16


みんなの思い出



オープニング

●海水浴場の恐怖! 逆襲のサックサックサーバント!
 
 ――真夏某日 午前十一時四十五分 茅ヶ崎市 海水浴場――
 
 夏と海と太陽。この三つが揃った海水浴場の賑わいは今や最高潮に達していた。
 初々しい少女から妙齢の大人の女性まで、水着姿の美女の姿がそこかしこに見られる。
 たとえば今まさにスイカ柄のビーチボールで遊んでいる少女などは青いタンキニだった。決して露出度も多くなく、デザインに扇情さもそれほどないが、かえってそれが女子高生と思しき歳の頃にマッチし、飾り気の無い健康的な色気という魅力を十分に引き出していた。
 その少女に限ったことではない。
 今やこの浜辺には魅力的な水着美女の姿が溢れている。
 そのおかげで少年から若い兄ちゃん、果ては良い歳したオッサンまで男たちは皆一様に上機嫌で大興奮だ。
 これでは海水浴場というより海水欲じ……いや、もはやもう何も言うまい。

 そんな中、唐突にサイレンが響き渡った。
 ほどなくして蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく海水浴客に代わって浜辺を支配したのは巨大な巾着袋の群れだった。
 
 我々はこの袋を知っているッ!
 この巾着袋こそ、かつて関東地方の某市街地に出現し、その能力によって人々を恐怖に陥れた敵ッ!
 その名も――『サックサックサーバント』ッ!

 天魔相手に戦う術を持たない一般人である海水浴客の誰もが一目散に裸足で逃げ出していく。
 もっとも、海水浴客だから最初から裸足なのだが、それはそれということで。

 一目散に逃げ出す海水浴客の中、一人の少女が砂浜に足を取られて転倒する。
 見れば、その少女は先程のスイカ柄のビーチボールで遊んでいた少女だ。
 転んだせいで彼女は後ろから迫っていたサックサックサーバントの一体に追い付かれてしまう。
 そして、追い付かれた彼女は凄まじい吸引力によって袋の内部へと吸い込まれてしまった。
 
 袋の中から聞こえるせいでくぐもった悲鳴と、袋の中でもぞもぞと動く音の大合唱の末、彼女は唐突に吐き出された。
 サックサックサーバントの口から飛び出し、凄まじい勢いで砂浜を転がる彼女。
 ややあって彼女が泣きながら立ちあがった瞬間、今まさに助け起こしに行こうとしていた男たちは一斉に硬直した。
 
 なんと、今の今までタンキニだった彼女の水着デザインが、もはや原形を留めないほどの変化していたのだ。
 青いタンキニは白い貝殻を繋ぎ合わせたものへと変化していた。
 
「きゃああああああああああ! みないでええええええええええ!」

 そして彼女は貝殻(!)でできた水着を着たまま、明後日の方向へと泣きながら駆け出していったのだった。

●恐怖の魔改造! 大進撃! 量産型サックサックサーバントMk-?!
「……量産化……だけ……じゃ……ない……敵の能力……にも……改良が……加え……られ……てる……」

 休み時間の教室に現れた来栖美里(jz0075)は映像を見せながら撃退士たちに説明していた。
 
 吸い込まれた撃退士は魔装を剥がされて裸の状態で放り出されるのではなく、着衣を纏ったまま放り出されるのだ。
 ただし、原形を留めないまでに変化した着衣は、そのいずれもが露出度が高かったり、やたらと扇情的だったり、そして――とびきり卑猥だったりする、なんとも言えないデザインなのだった。
 そんな中、一人の撃退士が恐怖におののきながら呟いた。

「まるで魔改造だ……」

 その一言に頷く美里。
 ややあって映像が終わると、美里は一旦教室の外へと出ていく。
 ほどなくして戻って来た彼女は台車を引いており、淡々とした動作で彼女はそれを教室へと引っ張り込む。

「……魔装……だけ……じゃ……ない……魔具も……組成……変換……される……」

 そう告げて撃退士たちの前に押し出した台車には、長さも大きさも様々な『何か』がたくさん乗っている。
 美里の言葉から察するに、台車に乗っているのは組成変換された魔具ということになるが……?
 
 だが、それが魔具だと言われても、それを信じられる者はそれほど多くはないだろう。
 なにせ魔装と同じく、全く原形を留めていないのだ。
 そして、やはり組成変換された魔具のデザインはとびきり卑猥なデザインだった。

「……変換……されても……最低限……武器……としての……機能は……ある……でも……変換後の……デザイン……次第で……威力や……耐久性は……少し……ダウン……する……場合も……ある……」

 台車に乗った魔具の一つを掴み、例として掲げてみせる美里。
 たまたま手に取った魔具が特に卑猥なデザインのものだった為、真顔でそれを掴みながら美里が喋る光景はかなりシュールだった。
 その光景は女子生徒たちに悲鳴を上げさせるには十分な破壊力があったようで、あちこちから涙声に近い悲鳴が上がる。

「……変換後……デザイン……には……一部……例外も……ある……」

 女子生徒たちの悲鳴の理由を察し、美里は卑猥な形状に変化した魔具を置くと、別の魔具を取り上げた。
 美里が新たに掴んだ魔具は見た所、刀剣の一種のようだ。
 刃渡りはロングソードとショートソードの中間ほどである。

 そして、その刀剣において特に目を引くのはそのデザインだ。
 刃はデフォルメされた鋭角で未来的なフォルムの戦闘機、鍔は同じくデフォルメされたタコ、そして柄はやはりデフォルメされたペンギンというデザインに変化していた。

 先程まで悲鳴を上げていた女子生徒も、そして、悲鳴を上げる女子生徒とシュールな光景で喋る美里を見て興奮していた男子生徒たちも、皆一様にぽかんとした表情になる。
 しばらく奇妙な刀剣を掲げていた美里は、撃退士たちの表情から彼等の疑問を察したのか、ゆっくりと口を開いた。

「……先生……たちの……推測……では……変換……前の……剣が……グラディウス……だから……みたい……」
 
 その一言を聞いて何人かの表情が大きく変化する。
 どうやら得心がいったようだ。
 一方、意味が解らなかったのか、表情により一層疑問の色を濃くした者たちもいた。
 撃退士たちが落ち着くのをしばらく待った後、美里は説明を再開する。

「……戦闘力は……以前出現した……個体よりも……強化されてる……前回の個体の……戦闘力は……撃退士が……十二人……がかりで……一体倒せる……レベル……」

 それを聞いて撃退士たちは再び戦慄する。
 戦慄する撃退士たちを前に、美里はなおも言った。

「……ただし……変換中は……内部が……無防備……になる……のが……判明……した……だから……わざと……吸われて……中から……攻撃すれば……楽に……倒せる……でも……その為には……魔改造……されるか……変換中に……着衣を脱ぎ捨てて……裸になる……必要がある……」

 美里の解説を聞き終えた撃退士たちは大きくため息を吐くと、苦笑しながら立ち上がり、依頼へと向かったのだった。


リプレイ本文

●驚異の新機能! ドキドキ魔改造!
「攻略方法は見えていますので、後は実行する覚悟だけですね……ええ…………覚悟だけですね」
 再来した強敵を撃破するべく、古雅 京(ja0228)は今回、最初から虎穴に入る事を前提で挑むつもりだった。
 既に現場の更衣室で赤いフリルのビキニに着替えた京はクレイモアを構え、敵の一体へと突撃する。
 吸い込まれた数秒後、袋を切り裂いて現れる京。
 そして、京の恰好は実にあられもないものとなっていた。
 ビキニの上下は真っ白い泡状の物質――ホイップクリームとなり、その付着部位もきわどい部分を隠すような箇所だけ。
 京の豊かなバストに至っては中央を隠すようにホイップクリームが盛られている為、まるで飾り付けられたプリンのようだ。
 魔改造された自分の恰好を見下ろし、京はふと胸中に自問する。
(先日の一件も今回の事も衝動に身を任せる事以外の心地良さが有ったなんて。淑女に有るまじき事ですが背徳は甘い毒という事でしょうか?)
 
「……青い空……白い雲……眩しい太陽……焼ける砂浜……そんな場所になんで天魔……許せない」
 一方、ステラ・七星・G(ja0523)も敵の一体に向けて突撃を敢行し、自ら服の内部へと飛び込んでいた。
 ステラも水着に着替えており、今は白地にコバルトブルーの水玉模様というデザインのビキニ姿だ。
「12人がかりで倒したのが12体ならとる方法はただ1つ! わざと飲み込まれて変換中に攻撃するのみ!」
 既に残骸となった袋から這い出してきたステラの衣服もまた、あられもない姿に魔改造されていた。
 形状自体はビキニの原型を留めてはいるが、材質はタイトなビニル製となり、柄は未成年者に配慮した映像加工をする為のぼかし――即ちモザイクになっている。
 決していたずらな露出をしているわけでもなく、かえって水着の被覆面積は増えているにも関わらず、傍目にはけしからんことこの上ないから実に不思議だ。
 当のステラはというと、女の子同士なら恥ずかしくないので魔改造されても気にせず、むしろ一夏の思い出な丁度良い笑い話になると思ったのか、デジカメを取り出していたのだった。

「……物理を小馬鹿にしたような引力と、斥力の使い方。許さない……ギメルみたいな、脂ぎったエロ顔の天使が造ったに、違いない……」
 白と黒の縞柄のタンキニを着て、敵の一体を見つめながらぶつぶつと呟く樋渡・沙耶(ja0770)は憤懣やるかたない様子だった。
 予定通り自ら吸い込まれ、内部から破壊する作戦は成功し、それ自体には何の問題もなかった。
 ただ沙耶にとって計算外だったのは、変換中に内部から攻撃されてパニックを起こした敵が激しく動き回り、その末に、着て帰る用に置いておいた白衣の置き場所まで来てしまったこと。
 そして、慌てた敵が見境なく吸い込んだ周囲の物品の中に白衣も入っていたことだ。
 袋を内部から破って出てきた沙耶は、すぐ近くに吐き出されている白衣、もとい数秒前まで白衣だったものを見て絶句した。
 白衣は極限までタイトにしたブラックレザーのジャンプスーツに変換されており、胸には大きく「Squeeze this!」と書かれ、あまつさえ下腹部から股にかけての部分には「Pierce Here!」と書かれている。
 良い子のみんなは英文の意味が気になったからって検索するなよ! 絶対にするなよ!
 ため息を一つ吐いて仕方なくジャンプスーツに袖を通し、直に着る沙耶。
 ちなみに着ていたタンキニも同じデザインのものに魔改造されていたんだから仕方ないったら仕方ない。

「また脱ぐんですか……ハァ……」
 かつて同じようにけしからん攻撃を仕掛けてくる敵と戦った依頼のことを思い出してため息を吐きながらも、水着を着たソリテア(ja4139)は意を決して敵の内部へと飛び込み、中から破壊すると同時に脱出する。
 一連の動作は実に鮮やかな手際だ。
 ただ、偶然にもソリテアは千載一遇のタイミング――変換を行う際に、素材となる物質を一度分解した瞬間に敵を倒してしまったせいで……。
 袋から出てきてソリテアが立ち上がった時、分解された水着は粒子となって崩れ、次の瞬間には風に吹き散らされていった。ソリテアの日頃の行いのおかげか藏倫故か、胸元とビキニラインだけにかろうじて、布のかけらが残っている。
 裸に限りなく近い状態で外気に触れた瞬間、これまでのストレスをトリガーに第二人格が覚醒したソリテアは他のサーバントにも襲い掛かった。
「許さない。不埒の代償、きっちり払え。失せろ」
 ただならぬ何かを感じ取った他の敵個体は、かつて海水浴客がそうしたように、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
 だが、ソリテアは凄まじい殺気を垂れ流しながら、敵を追い回すのだった。

「……報酬のためだ、仕方ない。死ぬわけじゃないんだから、まぁ問題はないだろうね」
 御巫 黎那(ja6230)は淡々と呟き、そして敵の内部へと突っ込んだ。
 袋を切り裂いて出てきた黎那はそう一人ごちて立ち上がろうとした時、不意に背中にのしかかる重さに驚愕する。
「……!」
 驚いて振り返った黎那の背中には、立派な鬣が特徴的な巨大な猿がしがみついていた。
 実に黎那の身の丈以上もある為、傍目には大猿をおぶっているように見える。
「一体何がどうしてこうなった?」
 困惑顔で再び一人ごちる黎那は、出発前に見せられた『変換の例外』――グラディウスの件を思い出す。
「なるほど……『ヒヒ』違いか……」
 ため息を吐くと、黎那は色々と事情を理解した。
「となると、服を取り出すには口から手を突っ込まなければならないのか……難儀なことだ……。それ以前に、私はこれを背負って帰らないといけないんだろうか……」
 帰りの面倒事を考え、黎那はもう一度大きなため息を吐いた。

 その頃、連携を取って動くアストリット・シュリング(ja7718)とジーナ・アンドレーエフ(ja7885)は色々な意味で敵を圧倒していた。
「ほぉ……今回の敵は猥褻物がお好みか。良かろう! 汝の程度の程、試させてもらう!」
 臆面もなく言い放つアストリット。
「やぁねぇ。もうちょっと情緒のある魔改造にしてくれればいいと思うのよぅ」
 そして、『いいえがお』で語りかけるジーナ。
 二人は他の仲間たちと同じく自ら敵の内部へと突撃した。
 だが、内部からの突きがあまりにも激しすぎたせいで、敵はすぐに吐き出してしまったのだ。
 二人とも既にアレでソレでピーでバキューンな格好だが、何一つ気にしてはいなかった。
 そればかりか、二人は自分を吐き出したのと同じ敵を嬉々として追いかけ回し、力任せに捕獲すると、逃げようとする敵を抑えつけ、自分から再び中に入ろうとする。
 二人がそれぞれの標的の内部へと強引に入り込んだ直後、やたらと興奮気味な声が熱い吐息とともに袋の中から聞こえてきた。
 きっと二人は術や武器を駆使して敵を内部から攻撃しているのだろう。
 その激しさを物語るように、袋が先ほどからひっきりなしに上下運動を続けている。
 だが、袋の内部ということもあって、その様子は外部からはうかがい知れない。

 ※注:袋の内部は見えない為、音声のみでお楽しみください。

「汝の中は柔くて暖かいなぁ! そこが弱いのか! ならば攻め抜いてやろう! 遠慮するでない! 汝の全てを我に晒すが良い!!」
「ほらほらほらほらぁこの程度じゃないでしょう? 逃げなさい抗いなさい戸惑いなさい打ちひしがれなさい! いい子にしてたらご褒美をあげるわぁ」
「どうした? 随分と敏感だなぁ! そんなにここが弱いのか! それとも、もしかしてここが良いのか? 遠慮するでないと言っただろう! ここか! ここが良いのか! 敏感な場所を隠そうとするとは、このいやしんぼめ!」
「穿って穿って穿って穿って穿ってあげるわぁ! いいわぁ! すごく! すごくっ! すごくびくびく反応してるぅ!」
「この程度でへたってしまうとは情けない! まだ楽しみは始まったばかりだぞ! もっと我を楽しませろ! もっと我を満足させろ!」
「こらえ性がないわねぇ……逝くまで私に遊ばれる度量も無いのかい?」

 ※注:これは戦闘シーンです。
 
 数分後、二人はそれぞれの敵を倒した。
 二人に攻撃された敵は、他の個体よりもひどくぐったりしている。
 しおれたように脱力するその姿が、ひどく哀愁を誘っていた。

 一方その頃。
「敵を倒すために、飲み込まれる必要があるなら、あたし頑張ります!  裸にはなりません! 裸になる方が変な服着るより恥ずかしいですし!  そ、そんな変な服といっても、着てるだけで恥ずかしい凄い服なんて、そうそうないですよね……?  怖いですけど、が、頑張ります! 」
 戦闘前、日比谷陸(ja8528)はそう言った。
 そして、陸は犠牲になったのだ。
 量産型サックサックサーバントMk-2の犠牲に。
「ふぇ……何……この恰好……ぁぅぅ……」
 あまりの恥ずかしさに陸の顔は真っ赤だ。
 身体の温度や心拍数は急上昇しているらしく、今にも倒れそうである。
 動きやすさ重視で競泳用の紺の水着に上に裾をしぼったTシャツを着込んできた陸の服装は見事に魔改造されていた。
 トップスは革ベルトを思わせる拘束具に。
 ボトムスも革素材で鍵付きのものへと変化していた。何で鍵がついてるのかって? さあ、何故だろう……。
 変換中に内部からパンチパンチ、キックキックしまくったおかげで敵は倒せたが、とてつもなく恥ずかしい目に遭った陸であった。

(こんな変な袋でも、生ゴミ処理機とか粗大ゴミのリサイクルには使えそうなのに。何のためにこんなのが居るのか知らないけれど、人を泣かせる物なら仕方なし)
 倒した敵の一体を見つめながら恵夢・S・インファネス(ja8446)は胸中に呟いた。
 砂浜での戦闘は砂を被って後で洗うのは面倒なので、横っツラをリジルで思いっきりホームランして海辺まで押し戻し。
 なるべく横を取って吸い込み範囲回避という手段を取ったものの、敵の奮闘を前に恵夢は吸い込まれてしまい、やむなく最後の手段である内部からの攻撃を使う羽目になった。
 着ていたレザースーツは濡れた白ワイシャツに変化し、今の恵夢が纏うのはそれ一着のみだが、恵夢本人としてはあまり気にならないようだった。
 なにせ本人にしてみれば「二人のお母さんに授かって育てられたこの体に、恥ずかしい所なんて無いッ!」と言い切れるレベルだからだ。
 むしろ精神的ダメージを受けていない恵夢は、恥じらいの勉強として、女の子らしい恥じらいや羞恥心とかリアクションの勉強をさせてもらうべく、吸い込まれて魔改造を施された仲間たちを凝視するのだった。

「何でこんな迷惑で危険なのが海水浴場に? ……人に迷惑をかけるコレらをのさばらせておく訳にはいきませんね」
 そう意気込み、敵の一体に戦いを挑んだ森部エイミー(ja6516)は魔改造されてしまった装備を纏う恥ずかしさに打ち震えていた。
 覚悟を決めて自ら吸い込まれ、内部からの攻撃によって敵は既に撃破している。
 ――吸い込まれて装備が魔改造されて恥ずかしい恰好になっても戦闘中は堪える。
 そう決めていたこともあり、戦闘中は何とか耐え抜くことができた。
 だが……。
(はぅぅ……もうダメ……ですっ)
 顔を真っ赤にして目をぎゅっとつむって立っていたエイミーは魔改造された装備――ごく普通の白ビキニを上下ともに脱ぎ捨てて海に飛び込む。
 エイミーが着ていた白ビキニは露出度も常識的で、むしろこの場においては比較対象がアレなだけに、かなり健全な格好だ。
 一見すると、あそこまで恥ずかしがる要素があるようには思えない。
 一方、脱ぎ捨てられたビキニはまるでカニ歩きをするように、ひとりでにどこかへと移動していく。
 エイミーのただならぬ様子を心配して駆け寄ってきた恵夢が、移動していくビキニをひょいと拾い上げたことで一連の理由は明らかになった。
「なるほど」
 エイミーの手の中で件の白ビキニは上下ともに高速で微細に振動していたのだ。
「確かにこれは恥ずかしいかもしれないわね」
 冷静に分析する恵夢の手の中で、ヴィブロビキニ(!)はなおも小刻みに震えていた。

 海水浴場を荒らす敵を前に、ニオ・ハスラー(ja9093)は義憤に燃えていた。
「楽しい海水浴を邪魔する悪い奴はあたしが相手っすよー! あたしの正義の拳を受けるっす!」

 ※注:『拳』と言っていますが、ニオの装備はマグナムです。
 
「敵の倒し方がわかっているのならそれをやらないわけがないっす! ということでがんがんいくっすよー!」
 そう叫ぶや否や、ニオは躊躇なく敵の内部へと飛び込み、自ら吸い込まれにいく。
 敵がニオを完全に吸い込んだ直後、轟音のような銃声とともに袋の表面に大穴が開く。
 立て続けに六発の銃声。
 シリンダーに装填された全弾を内部から撃ち込まれ、敵は六つの大穴を盛大に開けられたとあっては機能停止を免れない。
 果敢な戦法によって瞬く間に敵を無力化したニオだが、服装は案の定、魔改造されていた。
 だが、ニオは服装の変異は気にしていないようだった。
 学園へ来るまでに世捨て人的な暮らしをしていたので羞恥心がいまいち無いせいだろうか。
 たとえそれが、ほとんど加工していない動物の毛皮でできたビキニだったとしても。
 まるでステレオタイプな原始人のような格好だが、むしろニオとしては気に入ったらしい。
「おお!なんすかこれー! 面白いっす! どうっすかー? 似合うっすかー?」
 その上機嫌ぶりたるや、くるくる回るポーズを取ってみせるほどだった。
 
「……なんかめいわくなサーヴァントなの。きちんと退治して楽しい海水浴場を取り戻すの! ……愛ちゃんもれっきとしたブレイカーなの。だから、怖くてもここは一人で何とかしてみるの」
 そう決意を語った周 愛奈(ja9363)は吸い込まれた状態から果敢に内部を攻撃し、見事サーバントを退治した。
 その代償として服装は魔改造されてしまったが。
 ただし、愛奈自身は学校指定のスクール水着がどんな風に変化するかちょっと興味を持っていたのだが、それは内緒である。
 愛奈の着ていたスクール水着は形状こそ変わらないものの、材質が薄い紙製に変化していた。
 このまま水にはいれば溶けることウケアイである。
 お子様なので羞恥心は低めなのか、愛奈は人数分用意していた大きなバスタオルを持って仲間たちのもとへ歩み寄る。
「う〜んとね。愛ちゃんはお子様だから、あんまり恥ずかしくないけど、姉様達は綺麗な人が多いから、きちんと隠さないといけないと思うの」
 小さいながらけなげに頑張っている。
 実に微笑ましい光景である。
 ただし、服装が魔改造されてなければな!

 こうして、少女たちの奮闘により海水浴場の平和は保たれた。
 我々は記憶しよう――少女たちの戦いと、そのあられもない恰好を。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

撃退士・
古雅 京(ja0228)

大学部4年125組 女 阿修羅
撃退士・
ステラ・七星・G(ja0523)

高等部1年17組 女 ディバインナイト
無音の探求者・
樋渡・沙耶(ja0770)

大学部2年315組 女 阿修羅
撃退士・
星乃 滴(ja4139)

卒業 女 ダアト
金言の語り手・
御巫 黎那(ja6230)

大学部6年226組 女 ルインズブレイド
『封都』参加撃退士・
森部エイミー(ja6516)

大学部2年129組 女 ダアト
猛☆攻!肉弾魔女・
アストリット・シュリング(ja7718)

大学部5年213組 女 ダアト
おまえだけは絶対許さない・
ジーナ・アンドレーエフ(ja7885)

大学部8年40組 女 アストラルヴァンガード
妖艶なる三変化!・
恵夢・S・インファネス(ja8446)

卒業 女 ルインズブレイド
撃退士・
日比谷陸(ja8528)

大学部1年56組 女 阿修羅
闇鍋に身を捧げし者・
ニオ・ハスラー(ja9093)

大学部1年74組 女 アストラルヴァンガード
ウェンランと一緒(夢)・
周 愛奈(ja9363)

中等部1年6組 女 ダアト