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マスター:漆原カイナ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:12人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/08/13


みんなの思い出



オープニング

●難攻不落の巨城! みさと城築城!
 六月某日。
 都内のとある会議室。
 久遠ヶ原学園の教師たち、そして久遠ヶ原学園を後援する有力者たちは喧々諤々と意見を戦わせていた。
 教師たち以外に集まっているのは、政界や財界の大物ばかり。中には撃退庁の重鎮もいる。
 まさに錚々たる面々である。
 
 この会議の議題は学園生たちの強化。
 世間的には夏休みにあたるこの季節だからこそ、更なる強化に励まねばならない。
 折しも、封都の事件に続き、何やら新たな事件が起こりつつある様子。
 このことからも、学園生たちの強化は急務であった。

 しかし、目的がはっきりしている一方で、会議は紛糾に紛糾を重ね、難航に難航を重ねていた。
 修行用の施設を建造する案や、試練となる相手として適任な敵を使った修行などは既に実行され、一定の成果を上げている。
 この会議ではそれらの手段以外が模索されている最中だが、なまじ既に実行された二案が有効な手段であった為、それらと同等かそれ以上の効果を期待できる案となるとなかなか出てこない。
 
 加えて、撃退士の能力に見られる独特の成長性も、修行方法の考案を難しくしていた。
 たとえば軍隊式訓練のような強化訓練を行えば良いかというと、そういうわけでもない。
 ある程度の自主性や自由度――所謂、『のびのびとした』やり方の方が結果的に高い能力を発現させた例もあり、現に久遠ヶ原学園という撃退士の養成機関が『学園』という形を取っているのもそうした一因があるからなのだ。
 
 もはや幾度目かわからない堂々巡りを経た後、会議に参加していた教師の一人が静かな咳払いとともに手を挙げた。
 彼が手を挙げたことでしんと静まり返った会議室で、彼はゆっくりと口を開く。
 そして、彼は案じた一計を提案したのだ。

 曰く、ここは強化の当事者たる学園生の意見も取り入れるべきではないか。
 曰く、実際に戦いに直面している学園生ならではの意見は有用であると思われる。
 曰く、ある程度の『のびのびした』要素が求められる以上、それを実現させる為の工夫も必要となってくるだろう。

 その意見を言い終えた彼が着席した途端、方々から賛成や反対の声が一斉に上がり、会議室はしばし騒然となる。
 ややあって会議室が再び静粛さを取り戻すと、彼の意見は承認された。

 意見を出した彼は立ち上がって会議の参加者たちに礼を言うと、更にもう一つの提案をする。
 
 曰く、オペレーターとして数々の戦いを見届けた結果、経験を蓄積しつつあり、現在も成長を続けている学園生に心当たりがある。
 曰く、その学園生を参考人として招致することを提案する。
 曰く、その学園生ならば、現場をよく知っている分、有用な意見を出してくれる可能性が高い。

 そして、彼のもう一つの提案も承認されたのであった。



●みさと城を攻略せよ! 攻撃軍! 一斉出陣!
 数日後、都内の空き地には大量の重機や建材が運び込まれていた。
 突如始まった物々しい工事に周囲を行く通行人は誰もがぎょっとした顔で足を止め、一様にまじまじと見入っている。
 通行人たちの中には思わず二度見している者や、あやうく腰を抜かしかけている者すらいた。
 見る者すべてを圧倒し、驚愕せしめる大規模な工事。
 その工事がそれほどまでに強烈な印象を放っているのは、唐突に始まったせいや、あまりにも物々しいせいだけではなかった。
 何せ、建造されている物自体があまりにも強烈過ぎるのだ。
 それはあまりにも異様で、巨大で、場違いで、まさに常軌を逸していた。
 
 なんと、戦国時代に建っていたような和風の城が建造されつつあったのだ。
 さすがに本物の城ではなくセットではあるが、それでもかなりのリアリティとボリューム、そしてそれに伴う存在感である。
 既に概ねの部分ができあがっているおかげで、都内の一角にはビル街の中に城がそびえ立つという不思議な風景が広がっていた。
 
 ちょうど休日を利用して都内へと買い物に来ていた撃退士たちも、その光景を前に唖然とする。
 そんな彼等に向けて、一緒に買い物に来ていた如月佳耶(jz0057)は屈託なく笑いながら言った。

「あれ、あたしたち撃退士向けの修行施設っスよ。結構大きいスポンサーがついて、六月頃から急ピッチで工事してたおかげで、もうすぐ完成するらしいっス」

 佳耶の口から事実を聞かされて更に驚く撃退士たちに、彼女はなおも告げた。

「あたしと、それに美里ちゃんも協力してるっスから、完成したら是非参加してほしいっス! 参加者には修行施設のテスト協力費として報酬も出るっスから! それに、クリアした人には賞金も出るっスよ!」

 賞金という言葉に撃退士たちは俄然やる気になったようだ。
 先ほどはただ唖然としていた彼等も次々と興味津々な表情に変わっていく。
 だが、その一方で全員がどこか腑に落ちないような顔をしていた。
 そして、彼等全員はまるで申し合わせたように揃ったタイミングで佳耶へと異口同音に問いかける。

「ど う し て こ う な っ た ?」

 すると佳耶は口に手を当てて思い出し笑いした後、その問いかけに答えるべく口を開いた。
 口を開く佳耶の笑顔は心なしか、どこか苦笑のようにも見える。

「実はあの施設を作るのにあたって会議した時、美里ちゃんが呼ばれて意見を出したっス。美里ちゃん、この前あたしと一緒に昔流行ったテレビ番組をケーブルTVで見てたっス。それで、その時がキッカケで、ここ最近はかなりハマってたみたいだから多分それで……」
 
 佳耶の口から事実が語られた途端、撃退士たちは盛大にズッコケた。

 
 そして、更に数日後。
 来栖美里(jz0075)を城主とする『みさと城』、もとい撃退士たちの新たな修行施設の建築が完了した。
 後は、難攻不落の『みさと城』を攻略せんと挑む攻撃軍、もといこの修行に挑戦する撃退士を待つばかりである。


リプレイ本文

●第一の難関! 国・境・突・破!
「諸君!あーれい隊長に従ってみさと城を落城させるのだ!……ああ、一応建前は訓練施設でしたか、皆訓練頑張って下さい」
 アーレイ・バーグ(ja0276)は豊満な胸をぷるんと張って隊員に訓示すると、出撃前のお約束も忘れない。
「この修行が終わったらステイツの恋人と結婚するんです……」
 アーレイの恋人は日本で入院中だが、決してツッコんではいけない。

「あの番組やってみたいって思ってたんだよね〜」
 余裕の様子で先陣を切るのは要 忍(ja7795)だ。
 持ち込みは禁止されてないという点に気付いた忍はフック付きロープを持参していた。
 壁に助走をつけてダッシュで近付き、跳躍して壁を蹴る様にして一気に登ると、忍はロープ引っ掛けて強度確認して壁から吊るしておく。
 その後には控える池の方は一気に駆け抜けるのみだ。
「あれは板に体重かけると沈むだけだから。地面を踏み込んで飛ぶのではなく股関節を動かして駆け抜ける感じで……一気に駆け抜ける!」
 後に続く仲間にアドバイスするかのように気合の入った声を出しながら忍は難なく第一の難関を超えていく。
 そして、ロープの端を置いて置くことも忘れない。

 一方、攻撃隊長アーレイは池を見ておもむろに一言。
「困りましたね……ブラ付けてないので落ちたら透け透けで大変なことに……」
 真顔で冗談をいうアーレイ。
 そもそもブラ体操着の下に見えてないかというのは禁句である。
 とかなんとか言いながらアーレイは得意分野ではないといえ正攻法で乗り切ろうと、苦心しつつロープを伝って垂直壁をよじ登り、危なっかしいながらも池に浮いた板を跳んでいく。

「何か面白そうなことやってたから参加してみたけど……え〜と、結構ハードな内容ね〜。美里さんがケーブルTVで見たという番組を見て予習をしてきたけど……コレって確か、海外にこのノウハウを売り出して各国で同じようなのやってるって聞いたわね〜」
 そう言いながら大曽根香流(ja0082)もスタートを切る。
 香流自身はパワー重視の能力適正を持つが、『できるだけ特徴のある色合いを見極めて登ったり飛んだりする』という攻略法を用意してきたこともあり、スピード重視の能力適正が求められるこの難関を何とかクリアしていく。
 香流の一言に同調するように呟くと、隣に立っていたフィール・シャンブロウ(ja5883)もスタートを切った。

「まーた古いネタね。ピッチピチのナウなヤング発案とは思えないレベルなんだけど」
 フィールは20代欧米人だが、やはりこれも決してツッコんではいけない。
 
「ダアトに運動神経を求めるとは。ここは少しでも突破確率が上がるようにしたいところね」
 そう呟くフィールには一つの策があった。
(板の浮いた池なんか、先に行った得意な人の進んだ道を見て、明らかに沈みやすい板とかわからないかしら?)
 そう考えたフィールは、自ら用意した攻略法で見事難関をクリアした香流の辿ったルートを見逃さず、そっくりそのままそれを通る。
 能力適正の関係から垂直壁をよじ登る際に苦戦はしたものの、何とか池の板渡りはクリアしたようだ。

 一方、彼女たちと違い、この難関に適した能力適正を持つ挑戦者は易々とクリアしていく。
 
 たとえばcicero・catfield(ja6953)はまるで遊び半分でやっているかのように余裕で垂直壁の上に垂直跳びで乗り、池の板渡りに至ってはまるで整地された歩道上のように安定と速度で歩いていく。
「なんだか面白そうだな。よっし、気合い入れて頑張るとしますか♪」
 その一言とともにスタートしたciceroはあっという間に第一の難関をクリアしてしまった。

 スピード重視の能力適正ではないが、全体的にバランスの取れた能力適正を持つ皇 夜空(ja7624)も中々の好成績だ。
 忍によるロープ設置というサポートがあるおかげか、垂直壁もそれほど時間をかからず超え、池の板も割と速いペースで超えていく。

 だがそれら以上に特筆すべき参加者がいた。
「……」
 防護マスクを着用し、脚部の視認性を低下させる術――端的に言えば足が無いように見える術に、壁走りの術、そして水上歩行の術を使用し、幽霊の如くふよふよと浮いていく。
 どこからどう見ても怪しい。
 しかし、そのクリアタイムは全員の中で文句なしに最速だ。
 その挑戦者こそが鷺谷 明(ja0776)である。

「せっかくだから、クリアはしたいねぇ。出来れば皆が満足できるといいな☆」
 続いてジェラルド&ブラックパレード(ja9284)もスタートを切った。
 能力適正はパワー重視だが、ロープを掴んだ際はそのパワーを活かして自らの身体を滞りなく押し上げていく。
 垂直壁の上に登ったジェラルド。
 池へと進もうとした彼は、あることに気付くと、咄嗟の反応で下に向けて手を伸ばした。
「……ッとォ!」
 ジェラルドは伸ばした手で自分の後に続く挑戦者――フィン・スターニス(ja9308)の腕を掴む。
 魔力重視の能力適正であるフィンはロープを登りきるまで握力がもたず、途中でずり落ちかけていたのだ。
「……ありがとう、助かるわ」
 礼を言われながらジェラルドは、そのままフィンを持ち上げる。
「別に気にしなくていいよ。さっき言った通りだし」
 するとフィンも微笑みながら手足に力を入れて壁を登りきる。
「そうね……やるからには徹底的に。勝ちたいわ」
 何とか無事に登り切った二人だが、制限時間はタイトだ。
 すぐに壁を超えると、二人は池の板を渡りだす。
「目標は当然クリアだけど、その為に元ネタの動画を見て復習してきたの。少しはヒントがあるかもしれないし」
 と、池を渡りながらフィン。
「んで、何かわかった?」
 ジェラルドが問い返すと、フィンは苦笑とも微笑ともつかない微笑みを浮かべる。
「わかったことは、元ネタでは、アウルでもないのに…凄いことをやっていたのね――ということかしら」
 それがおかしかったのか、ジェラルドはくすくすと笑い出す。
「違いないねぇ」
 忍のアドバイスや香流の攻略法を参考に、二人も何とか難関を突破する。

「足は引っ張らねーよーにしないと、ですよ」
 次々スタートを切っていく仲間たちの背を見ながら、逆城 鈴音(ja9725)もスタートを切る。
 撃退士として半端な自分でも出来る事があると証明する――鈴音はその為にみさと城攻略に全力を尽くすつもりだった。
 小さな体を目一杯動かして臨む鈴音だが、服装がいつもの着物なので、激しい動きがしづらいようだ。
 焦った鈴音は必要以上に力んだ歩調で池の板へと足をかけ、その結果、ゴール寸前で危うく沈みそうになる。
 だが、絶妙のタイミングで横から伸びた手によって沈みかけた所を救われた。
 鈴音を救ったのは、一足先にスタートを切り、ゴール地点に到達していた更科 雪(ja0636)だ。
【大丈夫?】  
 スピード重視の能力適正を持つ雪にとってはここは得意な場所なのだろう。
 右手で鈴音を掴みつつ、左手でプラカードを出す余裕さえある。
「助かりました。ありがとうごぜーます」
 雪は鈴音を完全に引っ張り上げると、やはり余裕の様子でプラカードを出しながらスキップして次の難関へと進んでいく。
【ごーごーごー!】
 
「面白そうというか危険そうというか、な、なんでしょうね? でも協力して何かを成す……いいことです、頑張りましょう!」
 次々とクリアしていく仲間たちを見送った成宮 雫雲(ja8474)は、ようやく自分も動き出す。
 雫雲は基本団体の崩れがないかどうか確かめながら行動し、助けられる所は自ら助けにいくことを念頭に置いていた。
 特に、鬼道忍軍が得意とするこの難関では皆を見送ってから最後に自分がいくと決めている。
 得意なタイプの難関だけあって、雫雲は容易く垂直壁や池の板渡りを超えていく。

 こうして一人の脱落者も出さず、第一の難関は突破された。

●第二の難関! 巨・岩・登・攀!
「あーれい箸より重い物持ったことがないんです〜♪」
 巨岩を前に女子力を無意味にアピールしてみる攻撃隊長アーレイ。
 とはいえ、ただ媚態を晒すだけではなく、修行は正攻法だけでは厳しそうなので力の入れ方を工夫してみるなど、実は真面目に修行に取り組んでいるのだった。
「力の入れ方次第では一般人でも一人で冷蔵庫持てたりしますしね」

 その隣では雪が淡々と巨岩を押し上げていく。
 流石に両手を使わないと無理なのか、この時ばかりはプラカードは襟首から差し込んで立てている。
【うんしょうんしょ】

「個人的には余り力があるとは思えないんだけど、コレも修行だしね〜上手く動かしてと」
 見た目とは裏腹に頼もしいパワーを発揮したのは香流だ。
 自分の身体よりも大きな巨岩をそれほど苦も無く転がしていく。
 余りにもスムーズなそのプレーは、まるで巨岩が発泡スチロール製ではないかと疑ってしまうほどだった。

「……!」
 特筆すべき参加者――明はここでも凄まじいプレーを見せていた。
 嬉々としてウォーハンマーという名の鉄塊を振るい、巨岩をゴール地点まで打ち上げている。
 攻略法自体は荒っぽいものの正攻法だが、やはり傍目は非常に怪しい。

「ここは任せてよ☆」
 ここに来て大活躍なのがジェラルドだ。
 常人には視認できないほどの速度で放たれる蹴りを巨岩をリズム良く蹴り上げている。
 彼の蹴りはスピードだけでなくパワーも一級品のようで、巨岩を一気にゴール地点まで蹴り上げるほどの威力を発揮していた。
 それを活かし、彼は自分の分はもとより、パワー重視の難関に苦戦している仲間の分まで次々と巨岩を蹴り上げていく。
 
 こうして、ジェラルドの大活躍により、またも攻撃軍は全員突破を果たしたのだった。

●第三の難関! 光・球・運・搬!
「ここは……流石に……」
 新入生一……かどうかはともかく屈指の魔法攻撃と防御を誇るアーレイにとってこの訓練はクリアできないと恥ずかしい。
 少なくとも、魔力面で優秀なアーレイならば、油断さえしなければ何とかなるはずだ。
 それを自分でも理解しているアーレイはかなりの速さで光球を生成すると、安定した光球保持を見せつけ、難なくクリアしてみせる。

「さっきのお礼。ここは得意分野だから」
 フィンは自分と同じタイミングでスタートしたジェラルドを庇いながら進んでいた。
 魔力防御に関して高い力を持つフィンは自分だけでなく、ジェラルドに向けて飛んでくる光球も併せて受け止めながらゴールまで進む。
「こちらこそありがとう。今度はこっちが助かったよ☆」

 そして、特筆すべき参加者である明はまたも凄まじいプレーを見せる。
「……!?」
 光球はを胸中に抱え込み落とさないよう注意しながら、壁走りの術で橋の側面、背面を駆け抜け敵を撹乱する明。
 プレー自体は絶技だが、やっぱり傍目の印象は怪しかった。

「やっと本領発揮かしらね」
 相変わらず気だるげな雰囲気は変わらないが、心なしかやる気になっているのはフィールだ。
 自分の分の光球を生成した後、フィールはまだ残っている仲間――魔力の面で苦戦している者たちを先に行かせ、しんがりを務める。
 その足取りもやはり気だるげだが、それとは裏腹にフィールの術は冴えわたっていた。
 先を行く仲間に迫る光球を魔力による緊急障壁でことごとくガードしていく。
 残る仲間たちを全て行かせたフィールは、やがて自分の番とばかりに動き出す。
 先程と同様に緊急障壁を駆使したフィールは難なく第三の難関を突破したのだった。

 遂に誰一人脱落することなく最終難関まで辿り着いた攻撃軍。
 果たして最終難関の行方は――。

●最後の難関! 城・主・決・戦!
「よくぞ生き残った我が精鋭たちよ!」
 天守閣に到達した攻撃軍の先頭に立ち、アーレイは仲間たちに向けて高らかに言う。
「ここまで着たら何も言うことはありません。全軍突撃!」
 アーレイの号令で攻撃軍が一斉に動き出す。
 対するは陣羽織を着た城主――来栖美里(jz0075)。
 そして、同じく陣羽織を着た重臣――如月佳耶(jz0057)である。
「一人も脱落しなかったのはちょっと予想外っス……でも、そう簡単にはクリアさせないっスよ!」
 元気の良い声で言うと佳耶は愛銃を抜くが、それより早く攻撃軍が一斉に動き出す。
 佳耶が攻撃する前に畳みかける――全員の意思は一致していた。
 最初に攻撃を開始したのは忍だ。
 狙いを下半身に集中させて文字通りの足止めを狙う。
「足腰立たなくなるまでヒイヒイ言わせてあげるよ〜!」
 やたらとエロ物騒な台詞で攻め込んでいく忍に負けじと、フィンも佳耶に向けて光の矢を放つ。
 二人からの牽制に佳耶が気を取られた一瞬の隙をつき、夜空が放った鋼糸が佳耶の愛銃に巻き付き、その動きを封じる。
「蒼と知り合っているか……同じ存在と……」
 自分にだけ聞こえるような小さな声で、夜空は佳耶に向けて何事かを呟く。
 その横で特筆すべき参加者の明が動いた。 
「……蒸れた」
 遂にガスマスクを脱いだ明は、ウォーハンマーを大きく振りかぶる。
「実を言うとこれが私の武器のお披露目でねえ。盛大に吹っ飛んでくれたまえ」
 放たれる大ぶりな一撃。
 愛銃を捕縛されながらも佳耶はできる限りの体捌きで必死に避け、ウォーハンマーの直撃だけは避ける。
 だが、かすっただけでもかなりのダメージがあったようだ。
 そして、雫雲はその機を見逃さなかった。
 雫雲はすかさず放った成宮流九方手裏剣で動けなくなった佳耶に、二挺の銃を突きつけながら雫雲は降参するよう勧告する。
「降参してください」
 佳耶のピンチに美里が動こうとした時、鈴音が美里の前に立ちはだかった。
「おめーの相手は自分ですよ! うぐぉば!?」
 だが、着物の裾を踏んでしまい盛大に転倒する鈴音。
 しかしそれが、結果的に効果的な奇襲の布石となった。
 鈴音の身体の陰にいた雪は、射線が開けた瞬間にアサルトライフルを連射する。
 予想外のタイミングで射線が開き、銃撃がきた美里はそれを避けられずクリーンヒットを許した。
 そして、その攻撃が決め手となって美里はダウンし、攻撃軍の勝利が確定したのだ。
 次々と上がる歓声の中、佳耶に助け起こされた美里によって、アーレイにA4サイズの御祝儀袋が手渡される。
「……クリア……おめで……とう……みんなに……賞金……」
 受け取った賞金を掲げるアーレイの横でフィンは皆の健闘を讃えて、アシストに感謝する。
「……バラエティって、こんなに辛く厳しい物だったなんて……いい経験にはなったわ」
 そして、フィールは相変わらず気だるそうに、だがどこか楽しそうに、美里の座っていた場所を見ながら呟いた。
「……城主、やってみたいわねぇ。 スペシャルだと現城主が追い落とされることもあったし、一度どう?」
 
 こうして、みさと城は攻略された。
 この勝利は、撃退士たちの結束の勝利だったことに疑いの余地はなかった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 己が魂を貫く者・アーレイ・バーグ(ja0276)
 みさと城の制覇者・フィール・シャンブロウ(ja5883)
 神々廻寮の住人・要 忍(ja7795)
 夏宵の姫は薔薇を抱く・逆城 鈴音(ja9725)
重体: −
面白かった!:6人

笑顔が可愛いパン屋の娘・
大曽根香流(ja0082)

卒業 女 阿修羅
己が魂を貫く者・
アーレイ・バーグ(ja0276)

大学部4年168組 女 ダアト
Silent Candy Girl・
更科 雪(ja0636)

中等部1年12組 女 インフィルトレイター
紫水晶に魅入り魅入られし・
鷺谷 明(ja0776)

大学部5年116組 男 鬼道忍軍
みさと城の制覇者・
フィール・シャンブロウ(ja5883)

大学部9年24組 女 ダアト
クオングレープ・
cicero・catfield(ja6953)

大学部4年229組 男 インフィルトレイター
神との対話者・
皇 夜空(ja7624)

大学部9年5組 男 ルインズブレイド
神々廻寮の住人・
要 忍(ja7795)

大学部4年230組 女 インフィルトレイター
縁の下で支えてくれる人・
成宮 雫雲(ja8474)

大学部7年20組 女 鬼道忍軍
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
マイネ・リーベ・
フィン・スターニス(ja9308)

大学部5年216組 女 ダアト
夏宵の姫は薔薇を抱く・
逆城 鈴音(ja9725)

中等部3年3組 女 アストラルヴァンガード