●相馬 遥(
ja0132)
「超立派な心と、美麗な技を持つ私に足りないモノ、華奢すぎる故の肉体のパワー……つまり、スピンなんとか? を倒せば完璧超人になれる!」
意気揚々と宣言した遥は黄金に輝くアウルを纏い、相棒のハル君――ワイルドハルバードを手に黒球へと突撃した。
だが、そう簡単に敵は接近させてくれはしない。
一歩踏み出す度、重力は加速度的に増していき、油断すれば身体が潰れてしまいそうだ。
「ぬわっ!? これはちょっと……」
重力に弱気になる遥。
だが、遥は持ち前のドM根性で重力のダメージを快感へと脳内変換してしまったのだ。
「ダメよ遥、負けちゃダメ! 痛いのも苦しいのも、心地よいと思うのよっ!!」
その後の遥はダメージを受けた後、それを治療の術で回復、再びダメージを味わう――それを繰り返して楽しみ始める始末だ。
それでも攻撃はちゃんとしていたようで、回転方向に黒球を横から殴り、勢いで回転しつつ連続攻撃を叩き込んでいる。
やがて蓄積したダメージに耐えきれず、黒球は粉砕された。
「完・全・勝・利! 私にかかれば、ちょちょいのちょいよっ! 目指すは超野菜人!!」
仁王立ちし、勝ち誇る遥であった。
●大澤 秀虎(
ja0206)
「今の俺が天魔に勝てるわけがない、この修業クリアさせてもらうか」
大澤秀虎という男。
それは己の剣を高めるためだけでに闘う男である。
互いの事情に興味は示さず、戦いの場を求めている男だ。
過去の依頼で失敗し被害を出したことで、より強い力と戦いの場を求め、彼はこの修行に身を投じたのだ。
(正義などに興味はないが、やはり民間人に被害がでるのは気に食わん、ならばさらなる強さを求めるのみか)
予想以上の重力を受け、身体が砕けそうになるのに必死に耐えながら、秀虎は止まることなく進み続ける。
「ブリーフィングで確認した以上の相手か、まあいい楽しめればな」
愛刀を肩に担ぎつつ敵ににゆっくりと接近し重力に体を鳴らしつつ、突きを中心とした攻撃から、切下ろし、斬り上げや薙ぎ払いを混ぜて攻撃する秀虎。
「流石にこれ以上は刃が持たぬか……ならば全力で行くのみ」
どんなにボロボロになっても、秀虎の闘争心と戦闘意欲には一片の衰えもない。
(限界という言葉にとらわれるな……そこを超えてしまえばいい)
秀虎は重力を利用して刀を全力で打ち下ろし、その後に刀身を∞を描くように操作し、敵のいる空間を薙ぎ払うように斬る。
「同じ撃退士連中や、天魔に使うつもりだったが出し惜しみはせん」
その一太刀を受けて鮮やかに両断された黒球に背を向け、秀虎は言い放った。
「――秘儀・二輪疾り(ふたわばしり)。その身でとくと味わえたようだな」
●古雅 京(
ja0228)
「遠心力を利用した擬似高重力下での訓練というのは経験が有りますが、実際に高重力に晒されるというのは初めてですからね。楽しみです」
落ち着き払った様子で京は黒球へ向け、少しずつ歩みを進めていく。
今回は訓練ということもあり、京は大剣を両手で構え、重さに抗うために少し腰を落とした脇構えにして近付いて行き、敵の回転軸に垂直になる様に攻撃を打ち込んでいく。
単純な攻撃だが、超高重力下という環境にあっては凄まじい負担を強いられる。
それでも京は、筋肉の緊張と弛緩を初に骨の弾性を上乗せして生じた力を余す事無く刃に乗せ、敵の自転によって生じている運動の流れに剣を滑り込ませる様に剣を走らせ一閃させる。
「……か……はっ……!」
遂に内臓が耐えきれず、その場に大きな血塊を吐き出すが、それでも京は一閃毎の精度を乱さぬ様に集中して同一箇所への攻撃を繰り返すことで目標の両断を狙い、ひたすら大剣を撃ち込み続けた。
「これで……終わり……です……!」
口の端から流した血を飛ばしながら絶叫するように声を上げ、京は渾身の力で大剣を振り抜く。
そして黒球は、この一撃を受けて真っ二つになったのであった。
●レイラ(
ja0365)
(普通に戦っても強敵のようですが、これも修行です。修練を積み上げるために敢えて苦難の道を歩みましょう)
胸中で決意を新たにし、レイラは愛用の大剣を抜き放った。
(この手の岩には、尖がったところに脆弱点があるような、なかったような――)
そう考えたレイラはただひたすらに黒球が放出する超高重力の負荷に耐えつつ、真剣で一本足打法を修練するかの如くタイミングを合わせて、脆弱点らしきところに対して思い切り振り抜き続けた。
狙うはぶった切り撃破、ただ一つだ。
「うぅ……」
高重力に身体中の骨という骨を折られ、肉という肉を裂かれながらも、レイラはなおもその痛みに耐え続けた。
もはや喋る余力も残っていないのか、時折口から漏れる声は言葉にならない。
「うぅ……あぁっ……!」
それでも必死に耐えながらレイラはじょじょにタイミングを掴んでいく。
そして、タイミングを掴んだレイラは、全身全霊のアウルを込めた最大最高の一撃を黒球に打ち込んだ。
同じところに打撃を幾度となく叩きつけた末、遂にレイラは黒球をスカッと一刀で両断するのを成し遂げたのだった。
●大炊御門 菫(
ja0436)
――強くなる……一人だけでも天魔を倒せるようにならなければいけない。
――その為にもここで強くならないといけない……!
その決意に突き動かされて超高重力の坩堝へと赴き、菫は全ての力を解放して攻撃を放つが、菫も超高重力に潰され、一気に器官という器官が悲鳴を上げる。
「どうした! その程度か? 悪魔は、こんなものじゃなかったぞ!!』
しかし、それすらも気迫で吹き飛ばし、菫は更に自分を叱咤する。
――この程度、あの時の屈辱と比べたら何ともない!
――自分を超えろ、他人を超えろ、全て超えろ!
――限界を超えなければ限界は押し上げられない!
ただひたすらに菫は力の限り攻撃を繰り返す。
たとえ、身体中がもはや悲鳴を上げることすらできないほどに破壊されても。
――あの時使徒を逃がしたせいで、私の知らない所で誰かが傷付くと想像したら耐えられない……。
――悪魔と遭遇し皆が逃げている時、本当に逃げるべきなのか、ここで戦うべきなんじゃないかと迷い悪魔にぶち飛ばされた私は、今ここで……振り切るッ!
もはや気合と根性だけで身体を動かし、菫は腰を落として十文字槍を構えた。
手首が壊れるのも厭わずに高速で回転を加えながら、全身全霊の力で菫は穂先を繰り出す。
螺旋状に回転する十文字槍は遂に黒球を貫き、巨大な風穴を開ける。
盛大に空いた風穴から見える風景を目に焼き付けた直後、菫はその場に倒れ込んだのだった。
●リチャード エドワーズ(
ja0951)
「正面から打ち破る…必要なのは覚悟のみ。行くぞ……騎士たる誇りに賭けて貴様を倒す!」
己の限界を越えて敵を倒し騎士たる矜持を示すこと――その目的に従い、リチャードは大剣を振り上げて黒球へと斬りかかった。
(全身全霊の一撃が重力により一層加速するのだ、敵とて無事で居られまい)
確信を持ってリチャードは大剣を振りかぶる。
超高重力下ではただ剣を持ち上げるだけでも命が削られる思いだ。
「……ぐっ……まだまだぁっ!」
自分の膝ほどの高さまで持ち上げた時点で、既に彼の骨格や筋肉は所々が破損しているが、彼は止まらない。
騎士たる者の誇りと矜持の前には、かすり傷も同じなのだ。
「貴様が倒れるまで打ち込み続けよう! 我慢比べだ……どちらかが倒れるまでな!」
骨は砕け、筋肉は千切れ、血を吐こうとも彼は大剣で黒球を斬りつける。
必要なのは覚悟だ。
「私は退かぬ……騎士たると己に誓ったのだ!」
既に満身創痍の身体で彼はもう一度大剣を振りかぶる。
高らかな雄叫びとともに振り抜いた大剣の一閃。
その一撃は、遂に黒球を断ち切ったのだった。
●青戸誠士郎(
ja0994)
「『百回の稽古よりも一回の実戦』とはまさに至言。この試練において、必ず次の段階に己を鍛え上げてみせる」
幾度となく地に膝をつき、血を吐きながらも、遂に誠士郎は己が武器の届く距離までたどり着く。
誠士郎の戦法は全開までアウルを溜め、大剣を大上段から振り下ろす。
端的に言えばこれだけだが、重力に負けぬよう足腰を定め、ダメージに耐えつつ的確に相手の脳天に叩きこむとなれば、これは体のみならず精神力と技巧も鍛えられることは間違いない。
だが、黒球はその凄まじい硬さで誠士郎の攻撃を耐えきり、遂には誠士郎のアウルが尽きる。
「俺の心身が屈するのが先か、それとも相手を砕くのが先か……いざ、勝負!」
大剣がアウルを纏わないただの金属になろうとも、彼はひたすら振り下ろし続ける。
「負けぬ。この巌にも俺の限界にもだ!」
何百、あるいは何千何万という斬撃の末、とうとう黒球は砕け散った。
●神棟 星嵐(
ja1019)
「敢えて自分の身を危険に晒し、窮地に立つ事で限界を引き出す、何ていうのは生半可な気持ちでは負けてしまいそうですね」
黒球の重力に身を苛まれながらも、星嵐は着実に標的へと進んでいく。
「とりあえず、自分としては1対1で実戦の中での修行をやらさせて頂きます」
その言葉とともに星嵐はバスタードソードを下段に構えて近付いていく。
自分の間合いに敵を捉えたら袈裟切り・逆袈裟切り・突き・横切りを順々に、ひたすら行う。
「この程度で、朽ち果てる訳には、いきません!」
高重力は形こそ見えないが、凄まじいまでに破壊的な暴力となって星嵐を襲う。
骨を砕かれ、肉を裂かれ、内臓を痛めつけられ、器官という器官を壊されて倒れる星嵐。
重力の鉄槌に叩き潰されながらも、それでも星嵐は屈しなかった。
膝をつこうが、倒れ伏そうが、体の奥から力を引きずり出して立ち上がり、バスターソードに聖火を纏わせる。
「言ったでしょう……この程度で、朽ち果てる訳には、いきません!」
そして、星嵐はバスタードソードで敵を両断したのだった。
●大浦正義(
ja2956)
――あの時、たったの一撃でやられた事が僕は悔しい。
――力に大差があったのはわかってるけど……。
――少しでも『一撃くらいなら、大丈夫なんじゃないか』そうやって甘く考えてた事が悔しい。
――だから、無理にでも鍛えるんだ。どんな攻撃にも耐えるために。
――今度こそ人々の盾となるための覚悟を込めて、中途半端な思いじゃ勝てやしないから。
今、正義は超高重力が渦巻く死の空間に立っている。
撃退士としての意地と覚悟を胸に、しかと刻みながら。
正義がしていることはただ一つ。
真っ直ぐ黒球に向かって進み、剣の攻撃が届く距離まで近づいたら、身体に存在する限りのアウルを込めた刃を叩き込む。
後は、どちらが先に壊れるか意地と覚悟の勝負だ。
既に正義の身体は崩壊寸前だ。
もはや、原型を保っていることが奇跡とすら言える。
それでも彼は刃を握り、一太刀を繰り出す。
「もう……僕は倒れはしない!」
この刃は正義に残ったアウルの全て……それだけではない、残った命の息吹すべてを込めて放たれた一太刀だ。
そして、この一太刀は天上の冴えを持って黒球を断ち切った。
●Lamia Sis(
ja4090)
「か弱い女の子を一人で戦わせるとか……いけずなんだから」
やる気なさそうに文句を言いつつ、ラミアは腰かけていた切り株から立ち上がる。
「やれやれ…男の子は修行とか一対一とか好きで仕方がないのね」
そして、重力を確認しつつ接近する。
「なるほど…体が重く感じるわね。体重が増えているのではないのだけれど……嫌な感じよね」
近付く度に強くなる重力に身を悶えさせながら接近したラミアは、垂直に切り下げる唐竹割を中心に使用し、強化された重力を利用し大太刀で物理攻撃を放つ。
「んっ……身体が締め付けられるこの感覚……悪くないかも」
十分に重力を確かめたのか、ラミアは一度離れる。
「胸が……重いのよ――なんてね?」
おどけたように言った直後、重力を踏まえて大きめの跳躍を開始するラミア。
全体重をかけた一太刀を唐竹に斬り降ろす。
後は、身体が耐えられるまで真正面からの消耗戦だ。
激しい消耗戦の末、遂にラミアは黒球を砕く。
「女の子を重くするだなんて……大罪よ?」
重力がもとに戻った中で、胸を両手で抱き上げるように抱えてラミアは言った。
「垂れたらどうしてくれるのよ?」
●宇高 大智(
ja4262)
――仲間を助けられるように強くなりたい。
その一心で大智はこの修行に参加していた。
既に仲間の何人かは黒球を倒し終えている。
しかし、大智はまだ黒球と戦っていた。
一方でこれだけ長時間、黒球の高重力圏内にいながらも、大智がある程度までは余力を残して戦い続けられているのもまた事実だった。
なるべく長時間、重力圏に身を置くことで、鍛錬になると考えている大智。
自ら敵を倒すよりも守りや回復を好む彼だが、今回は全員で1体ずつ倒したいと思い、粘って倒すつもりだった。
それを示すかのように、彼は自らを絶えず癒しの術で回復し続けていた。
彼がこの殺人的な高重力環境にあって、余力を残したまま長時間戦い続けられているのも、ひとえに癒しの術のおかげである。
――ライフセーバー。
まさにこの称号を背負う宇高大智という男に相応しい戦い方。
十八番である治療術を活かした、『ライフセーバー』の面目躍如である。
愛用する薙刀によって少しずつ攻撃を加えていたおかげだろう。
たとえ一撃一撃のダメージは小さくとも、長時間に渡って少しずつ積み重ねられたそれは、たとえ凄まじい硬さを誇る黒球であっても耐えられはしない。
幾度目かの刺突を受け、彼の戦っていた黒球は木端微塵に破砕された。
●銅月 零瞑(
ja7779)
――修行を積んで心身を鍛え、撃退士の名に恥じない強さを得たい。
それこそが、零瞑がこの修行へと赴いた理由である。
先程から殺人的高重力下に身を置き、彼は愛用の槍を振るい続けていた。
敵の回転方向に武器を流されないように注意しながら全力で跳躍し、回転軸への攻撃を試す。
理に適った効率的な攻撃だ。
しかし、傍目には敵にさしたるダメージがあるようには見えない。
それでも彼は自らを奮い立たせ、何度でも立ち上がる。
もとより簡単に倒せるとは思っていない。
重力の負荷で、自由に武器を振るうことは難しいのは確かだ。
自分にできることは、日頃鍛錬に取り組んできた自分を信じ、敵に致命傷を与え倒せるよう、全力を尽くす――ただそれに尽きる。
揺るがぬその決意で心を支えながら、彼はただひたすらに槍を構え、死力を尽くす。
何度目かの跳躍の後に繰り出した、急降下からの下突き。
それを上部の中心点……ちょうど人間で言えば脳天にあたる部分にくらった瞬間、零瞑の相手にしていた黒球はとうとう砕け散ったのだった。