●島津・陸刀(
ja0031)
「さァてと…試させて貰うぜ」
陸刀は自分の拳と拳を打ち合わせ、敵――甲冑兵と正対する。
先制攻撃は甲冑兵のストレートパンチ。
迫りくる手甲をギリギリまで引きつけ、炸裂する寸前で陸刀はそれを避ける。
そのまま、ストレートパンチを繰り出してきた敵の勢いを利用し、自らも拳を叩き込む。
「行くぜ! 紅咬牙!」
――『紅咬牙』。
アウルの力を拳に圧縮に圧縮を重ねて集め、相手に叩き込む技。
『溜め』が必要な為隙が大きいが、その分威力は絶大だ。
今回は敵の動きの勢いも乗せた高等技術――クロスカウンターで放たれた分、更に威力は増大しているだろう。
「―爆ぜろッッッ!!」
クロスカウンターの拳を受け、さしもの甲冑兵の装甲も耐えきれず破られた。
「力任せっぽいが、技っちゃ技だな!」
胸板の板金が破れ、倒れた敵を見下ろしながら陸刀は一人ごちた。
●ステラ・七星・G(
ja0523)
「硬い相手の柔らかい所を狙う、それは色々な作品のお約束。お約束にチャレンジ」
そう言ってブロンズ製の盾を構えるステラの前に甲冑兵が立ちはだかる。
脚甲に覆われた脚を勢い良く突き出し、豪快な蹴りを放つ甲冑兵。
ステラは正面から蹴りを受けることはせず、傾斜させるように持った盾で受け流す。
真正面から甲冑兵の蹴りを受ければ、たとえ蹴りは防げたとしても、その衝撃で小柄なステラは吹っ飛ばされていたかもしれない。
受け流したことでステラが受ける衝撃は遥かに減衰されたのだ。
伸ばした脚を払われる形となり、前向きに転ぶ甲冑兵に向けて、今度はステラが蹴りを繰り出した。
銀の脚甲に覆われたステラの爪先は、上手い具合に甲冑兵の胸板と腰の間にある繋ぎ目へと吸い込まれていく。
そして、ステラの蹴りは見事に甲冑兵の弱点を蹴り抜き、無力化したのであった。
●鳳 覚羅(
ja0562)
「さて僕の番だね……」
ハルバードを構え、次々と飛んでくる拳や蹴りを、半身に引いた姿勢で避けながら、覚羅は胸中で独白する。
(天魔を屠る術はいつも磨いている…けどそれを想像以上に上回るのが天魔……戦いは激化しているもっと技を磨かないと……)
大振りな右フックを避けた直後、覚羅は一気に反撃へと転じた。
間合いの長さを活かし、斬撃、刺突、殴打、払う、等の武具としての能力を最大限活用し、無数の攻撃を矢継ぎ早に繰り出す。
敵サーバントの眼、喉、脇、胴、脚への刺突、斬撃、足元を払い転倒を狙うなどの攻撃駆使し、的確にダメージを重ねていくが、それでもまだ、甲冑兵は倒れない。
「この装甲の厚み……生半可な一撃ではビクともしないか……」
落ち着き払った様子で周囲を見渡した覚羅は、すぐに必勝を呼び込む存在を見つけた。
「先輩!」
自分の戦いを終え、覚羅の戦いを見ていた陸刀に声をかけながら、ハルバードを突き出す覚羅。
「お兄さん乗っかっちゃうぜェ!!」
阿吽の呼吸で動いた陸刀は、覚羅の試みに乗り合図に合わせて槍の石突に拳を叩き込んだ。
絶妙のタイミングで陸刀の拳によって加速された槍は、その倍加した威力で正面から甲冑兵の胸板を貫き、絶命させた。
「流石先輩お見事」
ハイタッチしながら覚羅は更に語る。
「僕の力を……そして、想像の範囲すらもはるかに越える天魔は無数に存在する……一人で倒せなくとも力を併せて敵を屠る術……こういうのもアリじゃないか? と思ってね」
●仁良井 叶伊(
ja0618)
両手にそれぞれ持った双剣で叶伊は甲冑兵のラッシュパンチを捌いていた。
まずは間合いを調整しながら双剣で小技を捌く。
次に大技を捌き、その隙に反撃へと転じる。
それが叶伊の立てた作戦だ。
叶伊は危なげなく小技のラッシュを捌ききり、更には大技のハイキックも捌いてみせ、更にはその隙を利用して遂に反撃に転じた。
敵のキックを透かした直後、戻り際に踏み込んだ叶伊は、可動域が必要ゆえに一番空きが大きい両脇へとツインエッジを下から捻じ込み、抉るようにして引き抜いた。
倒れる甲冑兵を見下ろし、叶伊は語りかけるように言った。
「以前も似た様な鎧の化け物とやっているのでね。その経験が役に立ったようです」
●コニー・アシュバートン(
ja0710)
「ん、しゅぎょー、頑張る」
――命懸けの戦いの中、強くなるための『何か』を得る。
――力はそんなに強くないけど、せんせーの教えてくれたボクシングなら、負けない。
その固い決意を胸に、コニーはボクサー特有の卓越したフットワークで動き回り、甲冑兵が繰り出す何発ものジャブをことごとく避ける。
更には甲冑兵の周囲を周り続けることによって翻弄していた。
「頑丈で大きい分、にぶちん?」
一発でももらえば即座に戦闘不能になりかねない剛腕のストレートパンチを執拗に繰り出す甲冑兵。
対するコニーは上半身を反らしての回避――スウェーバックで次々と攻撃をかわしていく。
左右や後方に上半身を反らして避け続けるコニーに業を煮やしたのか、甲冑兵はコニーの周囲を丸ごと刈り取るようにフックを放つ。
それをしゃがんで避けるコニー。
だが、それが甲冑兵の狙いだった。
頭上からヘヴィブロウを振り下ろす甲冑兵。
それでもコニーは意を決し、正面から立ち向かった。
紙一重で相手のパンチをかわしつつ、コニーはしゃがみ状態から立ち上がった勢いを利用してアッパーカットを放ち、その一撃は甲冑兵の顎とその近くにあった首部分の繋ぎ目へと見事に炸裂した。
アッパーが決め手となり、甲冑兵をKOしたコニー。
倒れた甲冑兵が立てた音が、まるでゴングのように鳴り響くのであった。
●ソフィア・ヴァレッティ(
ja1133)
「危険ではあるけど、思い切って行ってみようか!」
ソフィアは鎧の隙間に狙いを定める。
本来、直線移動する火球で攻撃する魔具である召炎霊符。
今回の目的はそれをコントロールし、火球を薄い刃状にした飛ばせるかどうかを試す目的がある。
「行くよ!」
光纏と同時にソフィアは形状変化をイメージしながらアウルを魔具へと流し込む。
だが、生成された火球は形状こそ真球ではないが、涙滴型や紡錘形などになるのがせいぜいだ。
どれもが鎧の隙間に入るには厚過ぎ、そのせいで甲冑兵に有効打をなかなか与えられない。
慌てて武器を百科事典に持ち替え、風の刃で敵の繋ぎ目を攻撃するが、威力が足りないのか、機能停止させるには至らない。
甲冑兵の進撃を阻めなかったソフィアは、腹部に強烈なボディブロウをくらい、後方へと吹っ飛ばされて立木に激突する。
(火の玉は入らない……風の刃じゃ威力が足りない……あたし、ここで死ぬのかな――)
吐血した後に顔を上げたソフィアは、一歩一歩迫ってくる甲冑兵を見ながら独白する。
そこからのソフィアは無我夢中で動いていた。
右手に持った召炎霊符から火球を発射し、それより0コンマ数秒の差で左手の百科事典から風の刃を放つ。
繋ぎ目部分に炸裂したものの、装甲に阻まれて止まる火球。
直後、それに追いついた風の刃が火球を切削する。
そして、炎の刃は完成した。
炎の極薄刃は繋ぎ目から入り込み、鎧の内部という密閉空間で爆破炎上を起こし、甲冑兵を体内から焼殺したのだった。
●若菜 白兎(
ja2109)
「実戦ではありますけど、修行の一環ですから、ただ一生懸命……では無く、きちんと考えて動けるよう頑張るの」
自分に言い聞かせながら、白兎はフランベルジェを構えた。
対する甲冑兵は白兎が極めて小柄ということもあって、ローキックを多用してくる。
大剣を盾のように使い、白兎はローキックのすべてを腹で受け止めようとする。
何度もそうしてきたように、吹き飛ばされないよう、切っ先を地面に突立て――ようとして、白兎ははたと気付いた。
「力任せに防御するだけじゃなく、きちんと『技』を身に着けられるよう頑張るの」
そう呟き、白兎は大剣の切っ先を突き立てないように構え直す。
次々と繰り出されるローキックを白兎は大剣の腹に角度や傾斜をつけることによって巧みに受け流していく。
そして、何度目かの防御の末、僅かな隙を見逃さずに白兎は身をかわすように敵の背後へ回り込み、水平に薙ぎ払うようにして全力で大剣を振り抜いた。
その一撃で膝裏の繋ぎ目を叩き斬られ、甲冑兵はその場に倒れる。
「断頭台すらっしゅ」
その言葉とともに白兎は、首を狙って大剣を振り下ろし、敵にとどめを刺したのだった。
●秋月 玄太郎(
ja3789)
苦無を投げつけて牽制しながら甲冑兵へと近づいた玄太郎は、スキルの力で生成した毒素を忍刀に吹き付け、その刃を繰り出した。
毒の刃は甲冑兵の胴にあった繋ぎ目へと突き刺さる。
牽制に織り交ぜた本命。
まさに完璧な戦技だ。
だが、計算外だったのは、敵が恐怖も苦痛も厭わない戦闘マシーンだったということだろう。
甲冑兵は、玄太郎が忍刀を刺した瞬間、柄を握る彼の腕をしっかりと掴み、自分へのダメージを顧みずに捕縛したのだ。
動けない玄太郎のこめかみを、甲冑兵は強烈な右フックで殴り飛ばす。
どうやら打ちどころが悪かったらしく、手足に力が入らない。
敵も毒を受けているが、まだ動けるうちに玄太郎を始末しようと歩いてくる。
今の状況ではまともに戦っても勝ち目はない――そう判断した玄太郎は目を閉じ、すべての力を抜いた。
勝機は一瞬にして一度きり。
その勝機を掴む為、敵を完璧に欺かなくてはならない。
敵の前で完全な無防備を晒す玄太郎。
そして、敵は玄太郎がもはや虫の息と判断した。
とどめを刺すべく踏み潰そうと、玄太郎のすぐ近くまでやってくる甲冑兵。
その足が振り下ろされる瞬間――玄太郎は目を開き、最後の力を振り絞って跳ね起きると同時に隠し持っていたダガーで甲冑兵の首を掻っ切った。
「切り札は……最後の一撃に使うから切り札なんだ」
そう言い放つと、玄太郎は絶命した甲冑兵の隣に倒れ込んだ。
●レダ・ファクト(
ja5833)
「さあさ、鬼さんこちら、っと♪」
鎧にヨーヨーぶつけて音を立て、挑発することで誘き出した甲冑兵の一体とレダは相対していたが、甲冑兵の激しい攻めに手を焼いていた。
「うわっとと」
レダは至近距離のキックを太腿を蹴って回避しようとするが、パワー負けしてその場に尻餅をついてしまう。
ここぞとばかりに甲冑兵はレダとの距離を詰めにかかった。
敵を近づけまいと、レダは至近距離から可能な限りの影手裏剣を投げつけ続ける。
しかしそれも甲冑兵を止めるには至らず、遂にレダは敵に超至近距離まで接近される。
彼女の頭を砕かんと鉄拳が振り下ろされるその瞬間、不意に甲冑兵の動きが停止した。
まるで油が切れた蝶番のような鈍い音が身体から響き、動きも唐突にぎこちなくなる。
それを見てレダはほくそ笑む。
レダの視線の先では、投げつけられた影手裏剣の数々が甲冑兵の関節に詰まっていた。
「ふ……っ! 悪いね、このまま訓練に付き合ってもらうよっ?」
鉤爪を構え、敵の懐に突撃するレダ。
「せー……のっ!」
懐に飛び込んだ瞬間に脚を引っ掛け、体重を乗せて相手を押し倒したレダはそのまま鉤爪で敵の急所を突き、とどめを刺した。
●高瀬 颯真(
ja6220)
誘導した甲冑兵の一体に向けて颯真は言い放った。
「さぁウスノロ鎧野郎、俺と殺りあおうぜ!」
敵と正対しながら、彼は短剣を二刀流に構える。
(俺はすぐ突っ込んでいって怪我してばっかりだからなぁ……。技を磨いて効率よく敵を倒せるようにしないと、これからキツイよね〜。頑張ろう〜っと。だから、力任せは禁止)
彼は果敢に敵と至近距離まで踏み込む。
「やぁ〜っと攻撃できるなぁ! うずうずしてたんだ!」
颯真は短剣で敵の鎧の隙間を突き、腕を落とすことでパンチを出来なくする。
キックは注意して回避するも、爪先部分を避けきれず、胴体に強烈な衝撃を受ける颯真。
だが、彼は相手の攻撃が自分に当たっても、怯まずカウンター攻撃を叩き込む。
「っ痛ぇな! このクズ鉄野郎! 今すぐブチ殺して工場に売っ払ってやる!」
ダメージも厭わない果敢なカウンターで遂に颯真は敵の首を落とした。
「ケッ! 缶だのボルトだのにでもなって社会貢献しやがれ!」
倒した敵に向け、颯真は吐き捨てるように言った。
●黒葛 純(
ja6601)
「『技』を鍛える試練、ね。俺がどこまでやれるか楽しみじゃん。前みたいな失敗はしたくないからな……装備は……よし」
純はサバイバルナイフを構えて甲冑兵と睨み合う。
(目的はこの戦いの中で『技』を磨くことだ。1対1の戦いはこの先の為にもちょっと欲しかった内容だしな)
甲冑兵のパンチやキックを危ない所で何とか避け続けながら、純は胸中に独白する。
彼女が避ける度、甲冑兵の拳や蹴りが周囲の立木を叩き折っていくのを見てヒヤリとしながらも、純はどこか愉しそうだ。
(一発もらえば終わりなんだ、集中して慎重なくらいで行かせてもらうぜ。とりあえずキックは難しいから、狙うとしたらパンチだな)
純は一気に反撃へと転じた。
甲冑兵のパンチから、技の出に合わせてかわしながら潜り込み、間接が伸びきった瞬間を狙って繋ぎ目をサバイバルナイフで切り裂く純。
更に純は苛烈に攻め込んでいく。
反撃の暇を与えず、ひたすら切りつけまくった末に敵は絶命し、戦闘が終わると同時に純は、倒れた甲冑の横で腰を抜かしたようにへたり込んだ。
「ははッ、けっこーキツいなぁこれ!」
愉しそうに戦っていたようでも、終わるころには慣れない危険な間合いに、純はすっかり消耗していたようだった。
●赤坂白秋(
ja7030)
「こんにちはイケメンです! 追いかけてきてもいいんだぜ!」
胸板を銃撃し、自分を追ってこさせた甲冑兵の一体に向けて白秋は不敵な笑みとともに言い放った。
「遠くから撃ってりゃ、終わる話なんだがね……!」
拳が来るか足が来るか、右が来るか左が来るか見極め、紙一重で回避し密着。
腕の継ぎ目を主に狙って攻撃、離脱――白秋はそのコンボを繰り返す。
「今までみたく、思うままに引き金を引いてるだけじゃ駄目だ」
しかし、今一つ有効打は入らず、それが白秋を焦らせ、更にそれが弱気を呼んでしまう。
「くそ、だが慣れねえ!」
それでも試行錯誤しながら繰り返す白秋。
不意に彼の心に京都で抱いた感情が蘇る。
「何か出来たかよ……クソッ!」
京都の作戦で己の非力さを実感し悔い、その怒りが白秋の心を覆おうとしていた弱気を振り払った。
敵の爪先が尖っている事に目を付けた白秋は、樹を背に戦いキックを回避。
直後、爪先が幹に刺さった軸足の継ぎ目に攻撃を加える。
敵を転倒させた白秋は、首の継ぎ目に銃口を突き付けてトリガーを引き、トドメを刺す。
そして、倒れた敵を踏みつけて喧嘩を売るように、白秋は宣言した。
「――取り返してやるよ、京都ッ!」