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マスター:漆原カイナ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:12人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2012/04/22


みんなの思い出



オープニング

●絶妙なる連携! リンクスディアボロ!
「……ディアボロ……出現……した……」
 夢遊病者のような足取りで教室に入ってきた美里は、そこにいた撃退士たちを虚ろな目で見渡しながら、うわ言のような声音で言った。
 自分の言葉に撃退士たちが振り返ったのを見て取った美里は抱えていたラップトップPCを教卓の上に開くとともに、光纏してアウルを練り上げ、『観測球体』を生み出す。
 美里の胸辺りに浮いた『球体』はアウルの細い糸をラップトップPCに向けて伸ばし、アウルの糸が機体に繋がると同時、画面に映像が映し出される。
 その映像は戦闘の場面を観測しているものであるようで、画面の中では山間部の風景の中で武器を構えた撃退士の少年少女たちが油断なく周囲を見回している。
 もっとも、戦闘の映像とはいえ、美里がラップトップを起動してからしばらくはそれほど動きのない映像が続いた。画面の中に広がる風景に大きな変化はなく、画面の中の撃退士たちは木々の間に潜んでいるであろう敵の襲来に備えて時折小さく首を動かすも、それ以外にはこれといった動きはない。
 むしろ、訓練された撃退士たちゆえに無駄な動きがないおかげで、もはや映像というよりは静止画に近いとすら言える。
 教室に集まった撃退士たちが、まるで静止画のような映像をしばらく見続けていると、変化は唐突に起こった。
 突如として木々の一部が揺れるのが早いか、素早い動きで飛び出してきた敵がすれ違い様に撃退士の一人に襲い掛かったのだ。
 だが、その撃退士も負けてはいない。
 手にしていたショートソードで頭上からの奇襲を防御すると同時に、その敵への反撃に転じようとする。
 一瞬の攻防。この時はまだ、仲間の撃退士も、映像を見ている撃退士たちも一様にこう判断したであろう――この勝負、撃退士の勝ちであると。
 現に、襲い掛かってきたネコ科の生物に良く似た姿をした敵は、スピードには長けているものの、身体はそれほど大きくなく、パワーはそれほどあるようには見えない。
 実際、頭上からの奇襲を受け止められたばかりか、相手の撃退士の体勢一つ崩せていないのだ。
 ――勝ったな。教室の誰かが発した言葉か、あるいは現場の誰かが言った声が拾われてスピーカーを震わせたのかは定かではないが、確かにその声は響いた。
 そして、その場の誰もが異を唱えることなどしない。それを裏付けるように、画面の中では軸足をしっかりと固めた撃退士が今まさに反撃に転じようとしている所だ。
 しかしながら、変化は再び起こる。
 今まさに反撃の刃を叩き込もうとした撃退士の横合いから俊敏な動きで別の敵が激突し、脇腹に強烈な一撃を食らった撃退士は思わずよろめく。
 その隙を逃さず、奇襲をかけた敵はすぐさま安全圏へと退避し、それと同時にまたも俊敏な速度で迫る三体目の敵が今度は撃退士の背中に激突し、その衝撃で撃退士は思わず膝をつく。
 そして更に追い打ちをかけるように頭上から俊敏な動作で急降下してきた四体目の敵が撃退士の延髄を直撃し、さしもの撃退士といえども頭部を揺らす強烈な衝撃には耐えられず、その場に昏倒する。
 頭上からの奇襲で敵と撃退士が接触した瞬間から、防御そして反撃に至るまで僅かにコンマ数秒の間。
 その間、一秒未満のズレもラグも見当たらないことからも、敵の連携が一矢乱れぬ完璧な連携であることが伺える。
 昏倒した仲間に駆け寄った撃退士はその事実を理解して戦慄する。
 そんな彼を嘲笑うかのように、彼の背後では別の仲間が別の敵たちの連携によって翻弄され、叩き伏せられていた。
 この時、彼が懸命だったのは、これ以上敵との戦闘を継続しなかったことだろう。
 彼はまだ無事な仲間に声をかけると、仲間たちと協力して倒れたメンバーを担ぎ、全速力で撤退したのだった。
 映像が終わると、教室に集まった撃退士の顔にも戦慄が走っているのが伺える。
 それと見て取った美里はラップトップのディスプレイを倒しながら、光纏を解除して『観測球体』を消す。
 そしてもう一度、教室に集まった撃退士たちの顔を見渡し、語りかけた。
「……数や連携は……脅威……でも……誰かが倒しに……行かないと……だから……お願い……」
 うわ言のような声で言う美里の瞳は相変わらず虚ろではあったが、見た目に反して凄まじいほどの必死さが感じられた。


リプレイ本文

●激闘A班! 破れ! 驚異の連携! 
「ああ……めんどくせぇ……こういったチマチマしたのって嫌いなんだよな」
 先頭に立って山道を歩く御暁 零斗(ja0548)はけだるそうにぼやいた。
 その声はただ山間部に響くのみで、A班の面々の間に重苦しい空気が流れていく。
 もっとも、どこから奇襲してくるかわからない敵を警戒しつつの進軍ゆえに仕方のないことなのだが。
 A班に属する他の面々も警戒に神経をすり減らし、揃って押し黙っているせいで、ますます空気は重苦しくなった。
 このままでは必要以上に神経をすり減らしてしまう――それを危惧した黒瓜 ソラ(ja4311)はふと口を開いた。
「敵は山間部にあり。ならば、ボク達は子を持つ親を見るように行きましょう。【参観日】なだけに」
 しかし、彼女が飛ばしたギャグも零斗のぼやきと同じく、ただ山間部に響いていくのみだ。
「あぁ‥‥ダメですか」
 自分がギャグを外したことを察し、ため息混じりにソラが呟くと、風鳥 暦(ja1672)が思わず吹き出す。
「ごめんなさい。ソラさんがギャグを外したのが面白かったものでついうっかり……って、うっかり失礼なこと言っちゃってごめんなさいっ!」
 ぶんぶんと頭を何度も振りながら謝る暦。だが、その声がやたらと大きく出てしまったのに気づき、彼女は再びはっとなる。
「またうっかり大声出しちゃってごめんなさい。このせいで敵に気づかれでもしたら――」
 そう言いながら深刻な顔をする暦の肩を叩き、安心させるような微笑みとともに言ったのは酒々井 時人(ja0501)だ。
「大丈夫。危機感を持つことは大切なことだけど、心配し過ぎないようにね。それに今、仮に敵が襲ってきても対処できるように僕たちはチームを組んでいるんだから」
 それに同調するように先頭を行く零斗も言う。
「そういうこった。それに、やっこさんがこっちに気づいて襲撃かけてくれた方が手間が省けるしな。さ……て、やっこさんならはどこにいるんだ?」
 零斗がそう口にした瞬間、頭上に広がる木々の枝と枝の間を凄まじい速度で何かが通り過ぎる。
 そして、それと同時に零斗の上着が切り裂かれる。
「お、きたきた。それじゃぁ……ハンティングと行きますか」
 けだるそうな声をじょじょに喜色の混じる声に変えながら、零斗はトンファーを構え、奇襲をかけてきた相手へと連打を繰り出しにかかる。
 だが、零斗が攻撃を繰り出す瞬間を狙うように四方八方から敵の別動隊が零斗へと一斉に襲い掛かった。
 敵を狙った隙を別の敵につかれ、零斗は回避もままならない。
「……マズったか……っ!」
 零斗が焦燥とともに奥歯を噛みしめ、それと同時に三体の敵が零斗へと殺到する。
「僕に出来るのは、盾となり護る事だけだけどね……その分、仲間には傷一つつけさせないよ!」
 しかし、敵の攻撃よりも僅かに早くシールドを構えた時人が零斗と敵との間に割って入り、間一髪の所で奇襲をガードする。
「悪ぃ、助かった」
 時人に続き、暦も武器を手に打って出る。
「……連携ができて、さらに素早い……厄介な敵」
 まるで別人のような淡々とした口調に変わりながら暦は双剣を振りかざす。
 しかし、小柄で素早く懐に入り込んでくる敵は暦の振るう大太刀に対して大きく有利だ。
 敵は難なく暦の攻撃を避けると、彼女の懐に向けて突撃する。
 だが、それも暦の計算のうちだ。
 すぐさま、零斗と時人が暦と敵の間に割って入り暦を庇いにかかる。
 敵も負けじと更に高度な連携を駆使し、暦を庇うことに集中した二人へと、彼等の知覚外から別動隊が襲い掛かった。
「ソラ!」
「黒瓜さん!」
 二人が合図すると同時、
 ソラは躊躇なく二人ごと敵の群れを三点バーストの連射で撃った。
「悪いネコさんは調伏ですよ調伏! ――ネコは寝ころんでればいいんですよっ! ネコらしい悲鳴をあげろ! キャッとね!」
 急襲をもろに受け、敵の別働隊の連携に綻びが生じた。綻びはみるみる、大きな隙となる。
 一方、零斗は敏捷性を活かし流れ弾を避けきり、時人は盾で流れ弾を防ぎ切った。
 互いを信頼していなければとてもできない高度な連携――彼等撃退士の連携はここにきて敵の連携を上回ったのだ。
 暦を攻撃しようとしていた一体が、別動隊がやられたのを見て即座に踵を返す。
 だが、零斗はそれを見逃さなかった。
「させるか!」
 行く手を阻む影手裏剣が、指先から敵めがけて放たれる。背中で一閃した手裏剣は、山猫の息の根を止めた。
「多勢でないと襲えないのならお仲間と一緒にくたばりな!!」
 襲ってきた敵部隊を退けてひとまず安心し、暦が口を開いた。
「厄介な敵でしたがなんとか倒せましたね!」
 
●激戦B班! 倒せ! リンクスディアボロ部隊! 
「個を上回るは絆、か……。こちらも負けていられないわね」
 山林を進みながら東雲 桃華(ja0319)は静かに呟いた。
「ヤマネコね‥‥むしろ、これはいい機会。そう考えましょうか」
 京都における天使との戦線を意識。連携を重視した行動の練習とも考えつつ、暮居 凪(ja0503)も戦闘に向かう。
「冷静に、集中力を切らさずいこう……」
 周囲を警戒しながら、常磐木 万寿(ja4472)も山道を進んでいく。
 B班は彼ら三人に加え、もう一人のメンバーである秋月 玄太郎(ja3789)を含む四人であるが、玄太郎だけは三人から少し離れた場所を歩いていた。
 あえて少しの距離をはさんで歩いていた玄太郎は自分に向かってくる相手の気配を感じ、無駄のない動作で静かに足を止める。
「――来たか」
 自分に向かって飛びかかってきた相手に対し玄太郎はカウンター気味の蹴りを叩き込み、敵の一体は痛烈な靴裏の一撃を受けて吹っ飛んだ。
 玄太郎が敵を攻撃した瞬間、彼に四方八方から敵の別動隊が殺到する。
 それを見越していたかのように凪が彼の前に飛び出すと同時にヒヒイロカネから盾を取り出し緊急防壁を展開、立て続けに襲いくる敵からの突撃を全て引き受けた。
「私は、盾。私は壁。貴方達の攻撃など、通しはしないわ」
 たとえ一体一体の力はそれほどではないとはいえ、連発する突撃が次から次へとクリーンヒットしていくことによるダメージは決して小さくはない。
「……立て続けは、つらいわね。今ので何体?」
 巧みな連係から繰り出される連撃の直撃を許し、何度も崩れ落ちそうになりながら、それでも凪は必死に耐えしのぐ。
 自慢の連携による総攻撃をもってしても倒せない凪に敵も苛立ちを感じ始めたのか、その攻撃は一層激しくなる。
 だが、それが敵の敗因となった――。
「一糸乱れぬ連携ならば、正確すぎてルーチンワークになる。そしてそれは動きのパターン化につながる――それがお前らの敗因だ」
 凪を攻撃することしか頭に無い敵の一体が、突如飛来した孔雀の羽根のような手裏剣によって弾き飛ばされ、そのまま立木に縫いとめられて絶命する。
 玄太郎によって仲間の一体が倒されたのに際して敵はようやく自分たちの浅慮に気付くが、既に勝敗は決したも同然だった。
「そういうことだ。自分一人の力を過信しないのは良かったが、自分たちの力は過信してしまったようだな」
 慌てて敵がフォーメーションを変えるよりも早く、新たに一体が万寿によってピストルで射殺される。
 その敵が死の間際に仲間たちにテレパシーを送ったのようで、残る二体は一目散に踵を返して逃げようとするが、それすらも凪たちの連携によって阻まれた。
 二体の退路を断つように、桃華が飛び出したのだ。
「東雲流古斧術――」
 闘気の高まりを表すかのように黒色の桜の花弁状オーラを周囲に舞い散らせながら桃華は、腰を落とし、横向きに構えた斧を振りかぶる。
 逃げようと全力で跳躍したせいで、今さら急停止など出来そうもない。敵は明らかに直撃の軌道を辿るのを自覚しながらも、そのまま突っ込むしかなかった。
「――桜火薙(おうかなぎ)」
 型の名前を言い放ち、桃華は紫焔を武器に集中して燃え上がらせると同時に全身のアウル力を燃焼させて加速し、舞い散る黒色の桜の花弁とともに、超絶なる速度で大斧を横一閃に振り抜く。
 桃華は二体の敵を一瞬にして一撃のもとに両断した。
 
●激戦C班! 砕け! 恐るべき司令塔! 
「敵は高機動性能を優先した山猫か。狙撃兵を目指す私の印象といえば、山猫は長距離狙撃専門で隠れ潜み、眠らない印象なんだがな」
 チームのメンバーを守れるように周囲に目を配り、奇襲への警戒を高めておきながら、新田原 護(ja0410)は山林を進んでいた。
「もう縄張りの中ですし何時どこから来てもおかしくないですね」
 護の言葉に同調しながら、三神 美佳(ja1395)も上方からの奇襲警戒中心に周囲を警戒しつつ進んでいく。
「しかし山猫型ディアボロですか……参ったな。耳から尻尾から胸毛から腹毛から全身くまなくモフり倒してやりたいと思うのは私だけでしょうか?  猫、好きなんですよね。特にあの毛皮の手触りが」
 苦笑しながら言うのは礎 定俊(ja1684)だ。
「厄介だけど何とかしないと。連携を切り離せたらそれが一番なんだが……次善の策として一体ずつ倒すか全体を弱らせるか……って辺りかな」
 礼野 智美(ja3600)も愛刀の鯉口をいつでも切れるように鍔元に親指を添えて歩きながら言った直後、やおら突撃してきた敵の攻撃を咄嗟に避け、すぐさま戦闘態勢に突入する。
「来たか! 陣形維持! 連携を破られると各個に撃破されるぞ!」
 自分たちが集中攻撃を食らってしまわないように、陣形防御のために声をかけてから、護はヒヒイロカネからショートボウを取り出し、敵に向けて構える。
「ふむ……ショートボウではなく、アサルトライフルを使いたいものだ。貧乏暇なしってな!」
 だが、護が放つ矢はそのことごとくが、身軽さな動きを得意とする敵に避けられてしまう。
 テレパスで視覚情報を交換し合っているのだろう。その回避運動は凄まじく迅速で正確だ。
「厄介だな。だが、狙撃屋を目指すなら、こういう高機動型の相手もしないとな。幸い、当たれば落とせるのが最高だ。連携戦闘能力さえなければ最高の標的なんだがな」
 敵の機動性や連携能力を見て護は悔しそうに呟く。
 護の呼びかけに従って残る三人も陣形を維持するべく一か所に集中しようと駆け出す。
 しかし、整地されていないゆえに歩きにくい山道に足を取られ、美佳が転んでしまう。
「……きゃっ!」
 美佳は慌てて起き上がろうとするも、それより早く敵部隊が彼女へと殺到する。
 やはり得意のテレパスですぐさま標的とそれに伴うフォーメーションを切り替えたのだろう。
 美佳が転んだ瞬間には、既に敵は襲撃の動きへと入っていた。
「三神さんっ!」
 この危機に際し、最も早く動いたのは智美だ。
 無我夢中で山道を駆けて美佳へと接近し、彼女を助け起こすが、すぐに敵は作戦を変更し、美佳を助け起こしている智美を強襲する。
 美佳の前から動くことはもちろん、彼女から手を離すこともできず、ひたすら背中を盾にして智美は敵の攻撃を受け続ける。
 一個一個の攻撃はそれほどでもないが、このままダメージが積もればどうなるかわからない。
 しかも敵は連携の取れた動きを活かし、智美や美佳が射線上に入るようにしながら攻撃を続けている。
 それゆえ、残る二人の仲間も誤射の危険から、おいそれと援護ができない状態だった。
 ショートボウを構え、護が油断なく敵の動きを一つ一つ観察している横で、定俊もまた熟考していた。
(12匹が一糸乱れぬ行動を取る、ということは全体をまとめる司令塔か、数匹をまとめる分隊長あたりの個体が居るはず――でも、一体どの個体が……?)
 定俊も護と同じくじっくりと敵を観察するが、いまひとつ答えは出ない。
「礼野さん、今度は私に任せて……ください……!」
 勇気を振り絞って顔を上げると、美佳は敵が自分たちから一度距離を取ったのを見計らい、魔法を発動する。
 再び美佳たちに突撃してくる敵を、地面から隆起した土の槍が絶妙なタイミングで迎え撃つ。
 突撃してきたところをカウンターでくらったのがよほど効いたのか、敵は再び後退して距離を取ることを余儀なくされる。
「そんな……はずれ……ちゃった……」
 結果的に自分たちへの攻撃を防いだものの、攻撃を避けられて美佳は泣きそうな声で言う。
 だが、それとは対照的に定俊は明るい声で高らかに言った。
「はずれなんてとんでもない! 三神さん、あなたが今放った攻撃こそ、逆転への鍵ですよ!」
 興奮した面持ちでそう言うと、一拍置いてから定俊は落ち着き払った面持ちに戻って美佳に問いかける。
「三神さん、今の攻撃で一番最初に、あるいは一番遠くに逃げた個体はいませんでしたか?」
 そう問いかけられ、美佳は反射的に敵の中の一体を指差した。
 美佳が指差した先にいたのは、見たところ身体も一番小さく、大木の陰に隠れてこっそりと戦況を窺っている個体。
 その体格や行動ゆえに、端的に言えば一番弱そうなのがその個体だった。
「見つけました! その個体が……司令塔です!」
 確信に満ちた表情で声高に叫び、定俊は開いたスクロールから光球を件の個体へ向けて放つ。
 いきなり自分をピンポイントで狙ってきた攻撃に驚いたのか、件の個体は一瞬反応が遅れ、それがもとで光球の直撃を許してしまう。
 そして、その個体が倒れたことで状況は一変した。
 今まで無駄のない俊敏な動きで智美や美佳を攻撃していた連中が、まるで今までの動きが嘘であるかのように動きを止めたのだ。
 どうやら、司令塔をやられて混乱しているようだ。それに加えて、光球の直撃をくらって司令塔が泡を食ったのが、テレパシーによって伝染したのだろう。
 司令塔の精神的ダメージは仲間へと伝染し、その結果として残る仲間たちは、今や皆一様に棒立ちだ。
 その後の展開はもはや戦闘と呼べるものではなく、一方的な殲滅だった。
「作戦終了か? しかし厄介な作戦だった」
 敵を殲滅し、素直に感想を述べる護。その隣で智美が定俊に問いかける。
「しかし……なぜ、奴が司令塔だとわかった? 一番そうは見えない奴だったが……?」
 すると定俊はスクロールを閉じながら智美に向き直る。
「群のリーダーに最も必要とされるのは危険を察知する能力ですからね。それに、自分が倒れることは自身だけでなく群全体にも危険を及ぼすことに繋がる……だからこそ、一見すると一番臆病で逃げ足の早そうな個体がリーダー即ち司令塔の可能性が高い――そう思ったわけですよ」
 定俊がそう言い終えると、それを待っていたかのように美佳が近寄ってくる。
 そして美佳は智美に深々と頭を下げた。
「礼野さん、さっきは……助けてくれて本当に……ありがとうございました」
 智美は穏やかな微笑みを浮かべると、深々と頭を下げる美佳の頭を優しく撫でたのだった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 黒の桜火・東雲 桃華(ja0319)
 安心の安定感・礎 定俊(ja1684)
 撃退士・秋月 玄太郎(ja3789)
 インガオホー!・黒瓜 ソラ(ja4311)
重体: −
面白かった!:13人

黒の桜火・
東雲 桃華(ja0319)

大学部5年68組 女 阿修羅
Drill Instructor・
新田原 護(ja0410)

大学部4年7組 男 インフィルトレイター
闇を裂く御風・
酒々井 時人(ja0501)

大学部7年55組 男 アストラルヴァンガード
Wizard・
暮居 凪(ja0503)

大学部7年72組 女 ルインズブレイド
疾風迅雷・
御暁 零斗(ja0548)

大学部5年279組 男 鬼道忍軍
名参謀・
三神 美佳(ja1395)

高等部1年23組 女 ダアト
撃退士・
風鳥 暦(ja1672)

大学部6年317組 女 阿修羅
安心の安定感・
礎 定俊(ja1684)

大学部7年320組 男 ディバインナイト
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
撃退士・
秋月 玄太郎(ja3789)

大学部5年184組 男 鬼道忍軍
インガオホー!・
黒瓜 ソラ(ja4311)

大学部2年32組 女 インフィルトレイター
落葉なき宿り木となりて・
常磐木 万寿(ja4472)

大学部9年287組 男 インフィルトレイター