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マスター:燕乃
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2012/10/02


みんなの思い出



オープニング

●歌は泡沫、命消す祈り


 廃墟となった街で、一人の少女が歌う。
 風が舞い、深い茶色の長髪を巻き上げてははらはらと落ちていた。
 空は満天の月。白い光を受け、少女は歌う。
 けれど、それは果たして少女だったのだろうか。
 繊細な容姿だ。細い手足に、白い肌。
 触れれば砕けそうな硝子細工のような印象を覚えつつ、けれど違和感がある。
 それは闇の中でも失せない美しさか、それとも。
 喉を震わせ、詠われるナニカか。
 事実、その歌は祝詞だった。美しい一節を詠む毎に、少女を中心にして風が踊り、彼女の肌が薄く光る。
 怪奇現象であり、まるで綺麗な幽霊。
 超常の現象とでも言うべき風を操る歌声を響かせて、少女は歌う。薄らと光りながら。
 空は月。
 夏の過ぎた夜。
 天魔の少女は、その場で瞼を伏せ、詠い続ける。
 地は荒れ果て、昔は子供たちが遊んでいたであろう公園もただの荒野のよう。
 荒地に吹く風。
 荒んだ、そして寂しい秋の匂いと共に。
 鎌鼬が走り、周囲に残っていた瓦礫を一閃する。
 ばらばらと真空の刃で裂かれ、衝撃で崩れていく遊園地具。
 それを引き起こした少女は、けれど何もみず、ただ歌い続ける。
 ただ歌いつつ付ける。この風が、彼女の枷であるように。


●久遠ヶ原依頼斡旋所



「さて、集まってくれてありがとう。今回は、実は緊急の依頼、ではないんだよね」
 そう告げるのはミリサ・ラングナー。この学園の教師であり、厄介な依頼を持ち込む事である種、有名かもしれない存在だ。
 彼女曰く、難問に直接ぶつかることこそ成長で、実戦はそれに丁度いい機会だと。
 そして、それを持ってきて説明するのもこの久遠ヶ原の教師としてやるべき事だとミリサは思うから。
「実戦経験には丁度良いかな。けれど、気を引き締めていってね」
 そういって広げた地図にあるのは、かつて天魔に襲撃され、放置が決定されたある街。今は廃墟となってしまった旧支配エリア。
「此処に一体のサーバントが出現するようだね。カテゴリ分けをするならサーバントのエインフェリア。ただ、ちょっと毛色の違う、のかな。この個体は」
 本来なら廃墟にいるだけのサーバントなど放置していても良い。特にこの個体は移動する事なく、ただ元々公園だった場所に佇み、歌を歌うだけの存在。
 かつての主にそう命じられたのか。それとも、何か理由があるのかは定かではない。
 そしてそれを知る方法も、やはりない。
「ただ、たった一体でいるっていうのは本当に経験を積むには丁度良いね。……そのまま放置して、いきなりふらっと市街地に出てこられても困るし」
 それなりに強力な個体でもあるらしい。少なくとも一体で行動し続けて、撃退士を八人も派遣させる事になる程には。
「能力は身体能力より、声を使っての風や真空の刃の操作だね。魔術、ダアトに近い能力かな」
 エインフェリアといえば物理型の傾向があるのだが、これはどうも違うらしい。
「単体への強力な旋風の刃、直線状の対象を纏めて薙ぎ払う真空の刃に、使用回数は極端に少ないけれど、周囲を大嵐で包んで広範囲を纏めて斬り裂く……と、現在解っているだけでこれだけの技を使うようだね」
 全て魔力系列。純粋な前衛は魔に弱いという事を考えると少し厳しいかもしれないが。
 それこそ消耗が当然で、負傷も覚悟の上になるだろうが。
「相手は一体だけだよ。みんなの連携で、一気に倒していこう?」
 独りではない。だから勝てるのだと、ミリサは全員の肩を叩き、送り出す。
 新学期まで、もう少し。
 それまでに、去年とは違う自分達になる為に。立ち止まってなど、いないのだと。


リプレイ本文






 冴え冴えと、白い月が浮かんでいた。
 真円を描くその姿は、確かに昨日とは僅かに違う。
 けれど、人の眼では一月前のそれと何処が違うのは解らない。
 あの時、夜空に浮かんでいたのは、満天の月だった筈。
 風が吹いた。夏が過ぎ、秋の到来を告げる肌寒い夜風だ。枯れ始めた草の匂いが、僅かに混じっている。
 終わりゆく季節に感じる切なさ。それも、この感触も、去年感じた気がする。
 何が、変わったのだろうか。
 去年と何処を変える事が出来たのだろうか。
「変わりたいと思っても、中々、思うようにはいかないんですよね」
 過ぎ行く風に靡く髪を抑えながら、胸の奥に広がった苦さを抑えるように呟く牧野 穂鳥(ja2029)。
 望む姿に、理想の自分を目指しても、手は届かず指は掛からない。
まるで久遠の先にある月面へと歩こうとしているかのようだ。決して終わらない、長き道のり。
「月は日々、その姿を変えられるのにですね」
 自分達は、本当にゆっくりとしか変わる事が出来ない。
「けれど、変わりたいと思う気持ちこそ、変わっている証かもしれないね」
 そう言って廃墟となった公園へと足を踏み入れるのは桐原 雅(ja1822)だ。表情は変わらず淡々としていて、その奥にある想いを覗かせる事はない。
 だが、桐原もまた想いと、そのあり方は変わっているのだろう。だからこそ、言葉は紡がれた。
 では、今こうして遠くから聞こえる歌は、どうして途切れないのだろうか。
 月光の下、風を巻き上げ、己の枷のように纏う少女の幻影。
 在りし日より変わらず、ずっと同じ歌詞を詠い続けるエインフェリア。
「……どうして、風の名を冠しているのに、貴女は動かないの?」
 まるで地に囚われたかのように、瞼を閉じて歌う姿へと問いかける雪成 藤花(ja0292)。
 雪成の脚は震えている。戦いに怯え、流血に恐怖し、この一年立たなかった戦場へと向かう姿は頼りない。
 それでも確かに、瓦礫を踏みしめ、身を強張らせながらも歩を進めるのだ。
「……私は変わったでしょうか。変われるでしょうか。少しずつでも、この脚で先へと向かいたい」
 その想いの元となった人に触れるよう、イヤーカフスを指先でなぞる。
 此処にいる多くの撃退士。彼ら彼女らが今の間々では駄目だと、変わりたいと思うのは、そう。
「風は枷じゃない。風なら自由に、何処にでも行けて……仲間や友といれただろうに」
 月居 愁也(ja6837)の言葉のように、久遠ヶ原で多くの友や仲間を得たから。大切な人々が増えて行ったから。
 共に居たくて、その為に先へ先へと進みたいのだ。
 留まる風はただの淀み。想いが枷となれば、その身はただ朽ちて崩れる。
「まさか……本当に死に場所を望んでいるのか?」
 孤立し、戻る事も行く事もなく佇むサーバントを見て、思わず翡翠 龍斗(ja7594)は漏らした。射程圏内ではないとは言え、姿を目視出来て、纏う風を感じる程の距離。それでもエインフェリアは動かない。
 戦いも傷つく事も恐れずに、ただ立つ。その姿はまるで昔の自分のようだと、翡翠の胸を刺した。
 どうして。
「……あれは、殿を務めるという意味か? それともそこに何か思い入れがあるのか……?」
 故に新田原 護(ja0410)も思考を巡らせてしまう。けれどそれが迷いになると、一瞬で斬り捨てる。
「いや、よそうか。任務に感情を入れてはいかんな」
 敵に感情移入する訳にはいかない。天魔と人は敵であり、今はただ戦うしかないのだから。その為の任務なのだからと。
 敵で、危険なのだ。討つしかない。
 もしも、あのエインフェリアが風のように主の元へと共にいけば違ったかもしれない。
 だが、残ってしまった故にもう避けようのない戦いとなる。
 淀む風は、やはり崩れて落ちる。形ないものも、永遠ではないのだ。
 それが救いか、それとも悲劇かは解らない。心や想いが変じるというのは、惨劇であって喜劇でも あって、そして慈悲でもあるのだから。
「…………」
 溜息を付くネピカ(jb0614)。しおしおと、けれど皆に従おうと拳銃を抜き放つ。
 他人と比較して、自分がどうあるかと確認し続けなければ立てないのが人間なのだろうか。押し付けと比較、それは人を傷つける行為だというのに。
 そう思う心は傲慢か、それとも本当の安らぎを求めているのだろうか。
「さて、何時も通りいきましょう」
 そんな中、発した言葉の通り、ライフルを構えるのは石田 神楽(ja4485)。
 にこにこと笑みを浮かべ、胸の中に湧き上がる熱は飲み込む。
 同時に全身に走る激痛と、赤く染まる瞳。発動させたアウルの術。纏うのは人の世には有り得ざる黒き光。
 そう、これは幻想だ。神楽の嫌い、厭う幻想の中にあるもの。アウルは人の世界に、現実にあっていいものではなかった筈だ。争いの中で産まれた、争いの為の幻想など。
 だからこの力は嫌いで、ああ、だから石田が発動させれば拒絶反応のように激痛が走るのかもしれない。
 鼓動と共に胸に走る痛みは、肉体だけではなく、きっと心の軋み。
 けれど、止まらないし止めない。時に感謝され、逆に恨まれ、命の危機となっても。
「隣にいる人が走っているのに、私だけ止まる事はありえませんよ」
 これはきっと我儘であり、現実の波に呑まれて消え失せる泡沫だろう。
 それでも、銃を取るのだ。
 これより風は歌い、舞い散る。
 消え去るその様、ひと時の夢の如く儚かった。





 そして風の領域へと踏み込むのは牧野だ。
 風の音色を伴奏に、物悲しい旋律が響き渡るその中へと身を躍らせる。
 一瞬、耳に聞こえたのは、余りにも悲しいフレーズ。

――消えた貴方が安らかに眠る為、この地は誰にも渡さずに。風の歌う、楽土の墓として――

 身を切るような切なさと悲しさ。
 想いを込め、それで人を引き込み魅了するのが歌の真価ならば、風さえも引き込むこれは素晴らしいものだろう。
 けれど、歌は傷つける為にあるものではない。
「美しい歌です。けれど、今生で聴くには些か相応しくないようですね。……申し訳ありませんが、退場願います」
 肌で感じる、風斬詩。踏み込むものを斬り捨てる風の刃を誘うそれ。
 違うのだ。本当に護りたいなら、傷つけるのではなく。
「癒し、守る力こみが大事です」
 牧野もまた傷つける為の力しか持っていない。絞り出すような声は羨望と悲しみに塗れ、けれど細められた瞳は迫る風の刃を捉える。
――狙われていたのは、首。
 斬首し、その首をも手向けの花とせんとばかりに奔る風刃。
「……だから、この悲しい歌を止めましょう」
 収束させ、障壁と化す牧野の魔力。衝突する風の霊力と盾の魔力は拮抗し、僅かな血を散らして風は消え去る。
 迎撃の第一撃目。それを見事止める。
 故にこの機を逃がすまいと全力で駆ける撃退士達。
 エインフェリアの射程が恐ろしく長いせいで距離は開き過ぎており、一気に攻め込まねば第二撃が来る。
 その仲間の姿を、顔を、赤く染まった瞳で一瞬だけ見る神楽。
 そこにあるのは大切なもの。決して失ってはいけない、絶対の現実。
 牧野が仲間を守ろうとした想いも、それに応えようとする皆の感情も、決して譲れない宝石なのだ。
 故に。
「有難う御座います」
 告げて引かれる引き金。幻想を纏い、現実を穿つ弾丸。
 例え嫌悪する幻想であっても、大切な人々のいる世界を守る為には絶対に必要なのだと、銃口から放たれる轟音が告げている。
 着弾と同時に、エインフェリアへと無数の黒い蔦が絡みつき、その衣服を侵蝕していく。
「有難うは、どっちだろうね」
 間髪を入れずに間合いへと踏み込んだのは桐原。繰り出す蹴撃はまさに二連の疾風。十字を切るような残像を残し、風の娘の芯を打ち据える。
――寂しいよね。
 桐原は蹴撃の感触を覚えつつ、瞼を伏せた。
 辺りは廃墟。誰もいない。そんな場所で独り歌い続け、誰か来ても傷つけるだけ。
 学園で友達を、隣にいたい大切な人を得た自分達とは違う。孤独で、そして報われない戦いを永遠と続けるだけだ。
「だから……その魂、救うよ」
 誰にも聞こえないように呟く桐原。
 今は倒すしかない。そのやるせなさを胸に、せめて一瞬でも早く安らぎをと祈り、飛びのく。
 追撃はネピカの銃撃。この戦いに不安と嫌気、そして違和感と罪悪感を感じながらも引き金を引く。
 それは、決して動こうとしないサーバントへの同情だったのかもしれない。
 同様に。
「本当に動かないのか……すまない」
 掠めるように放った筈の月居の槍の一閃が、エインフェリアの少女の肩を捉え、突き刺さる。
 が、神楽の銃撃で侵蝕され防御力が低下した筈なのに、確かな手応えは得られない。動かずとも、この個体は十分に強いのだ。
「目標確認! 狙い撃つ!」
 故、加減など出来ないと鋭い銃撃を放つ新田原。スキルの併用は出来ず、ならばと威力の高い方を選んだのだが。
「貴方、か」
 それが主か、それとも主にとって『貴方』か。それは解らない。
「……主を求める犬か。失ったのか……。忠義心というべきか。いや、忠義なんぞ求める必要ないか。こいつらは……敵だ」
 全てはその一言で終ってしまう。先の一撃は問答無用で萩野を傷つけた。ならば敵、殲滅すべし。軍人として当然の思考の元、銃を握り直す新田原。
 魔力障壁の上から斬り裂かれた萩野の傷口を祝福で癒し、加護を与える雪成も解る。
 怖い。これは止めどなく血と涙を流させる、旋風の刃。人として、撃退士として、存在させてはいけないものだと。
 撃退士として、これ以上の流血を繰り返させては駄目なのだと。震える指を握り締めて。
「……皆、下がってくれ。危険方法だが、試したい事がある」
 元よりそのつもりだった。全力移動と共に死活を発動させ、間合いに踏み込む翡翠。
 負傷を、己の血が流れる事を厭わない精神はこの強敵の最大の技を、己が身を持って受け止めると誓っている。
 それが他の皆の負傷を減らす事になれば良い。護りたい人がいて、共に時間を過ごしたいと願う日々の為ならばこそ。
「囮は俺が引きうけよう」
 もと止まらないし、止められない。死に場所を求めるお前とは違うのだと、真正面から睨みつける。
 そして繰り出される第二撃。直線に走る真空波は、桐原と神楽を何度も切り裂いて通り過ぎる。が、これも作戦内だ。
――もっと強くなりたい。守る為に。
――死を穿とう。喜怒哀楽、移ろう想いの輝きを放つ大切な人の為に。
 傷つき、けれどだから何だと怯まぬ二人。
 そして嵐の歌を誘発する為、後退する面々。けれど。
「接近戦を挑み続ける仲間を捨てて後退など出来ない」
「お前が離脱する隙を作る奴がいるだろう?」
 冷静に告げる新田原、そして笑いながら共にいこうと口にする月居。
「それに、盾もいりますよね? ……私だって、人を守りたいんです。その為の力があると、変わったと信じさせて下さい」
 さらには牧野も後退を否としていた。
 守れる人がいるなら、守りたいのだと。
 嵐に向かうというのに気負いはなく、責任ではなく、ただ戦友を捨て置けないのだと。
 いや、嵐に向かうなら、どうして一人にしておける?
「……全く」
 被害の効率を考えていない。自分が傷つくのを恐れていないのか。
 そんな優しさを、熱を、魂の輝きを感じるから思うのだ。言葉が勝手に紡がれていくのだ。
「みんなで『ただいま』というぞ。告げたい人ぐらいいるよな?」
 一瞬だけ笑う翡翠。ああ、お前のような淀み、朽ちていく風とは違うのだと。
 昔は、そうだったかもしれない。
 でも、今はこんな誇らしい仲間がいるのだ。
 お前とは違う。万感の想いを込め、繰り出す大鎌の薙ぎ払い。
「天魔、お前という悪夢を終わらせる!」
 醒めない夢はない。終わらない歌はない。薙ぎ払われた刃はエインフェリアの脇腹を捉え、歌を止める。
 故に、荒れ狂う歌を、風が紡いだ。
 今まで歌ってくれたお返しにと、この地に眠るものが口ずさむように。
 それはあまりにも激しく、狂気に満ちたリフレイン。
 四人の身体を幾度もなく打ち据え切り刻む








「今、癒しを……!」
 地面へと叩き付けられた四人へと駆け寄ろうとする雪成。発動させるのは治癒を齎す癒しの風。
 切り刻み打ち据える嵐へと対抗するように巻き上がる治癒のアウル。だが、距離の離れた前衛と後衛を同時に癒せる筈もなく、癒せたのは翡翠と月居だけだ。
 死活を使用した翡翠はもう戦闘続行不可能。癒されても間に合わない。
 先の真空波も合わせると、無傷なのは癒し手である雪成と、ネピカだけ。
 作戦が癒しが間に合わない程の大人数の被害を前提にした以上、仕方ない被害。信念故に受けた、大きすぎる被害だ。
 それでも雪成は少しでも癒そうと走る。
 これが第一歩なのだと。
 何よりも大切な人を守り、共に行く為に。
 一滴でも、流れる血を止めたくて、ただ祈るように癒しのアウルを送る。
「藤花さんが頑張っているのに、私が下がる訳にはいきませんね」
 新田原の援護射撃を受けて後退する翡翠とは逆に前進する牧野。その指が紡いだのは、椿の木と蕾の幻影。
 その裡に秘められていたのは灼熱。エインフェリアへと落下し、開花すると爆散する炎。一重の深き赤。儚きものを送る焔の手向け花。
 そして再び神楽の銃撃の援護を受け、再び間合いへと飛び込む桐原。首へと薙ぎ払うように胴回し蹴りを叩き込む。
 再び意識を失う風の娘。そこネピカもまた突っ込み、電光石化の早業で頭突きを繰り出す。
 その前に『すまんかった』と、一瞬だけ視線を送って。
 届いたかどうかは、解らない。けれど。
 そうやって突き進む姿に、己もそうありたいと月居は願う。
 学園に来て半年。
 ずっと背ばかりを見ていた。その人の背を導にしていた。
 憧れていて、けれど、それだけてはいられない。共にあるならば、横に、傍に並び立つ為に走り続けるしかないのだ。
 今度は、自分が他の人の導になれるように。 
 願わくば、道を照らす光となれるよう。
「…悪いな、女の子の顔攻撃すんのは心苦しいんだけどさ」
 スネークバイトに武器を持ち変え、決して回避しようとしないサーバントへと薙ぎ払いを繰り出す。
 その、細い喉へと。
「その歌は……人の道を断つだけだ。留まる事を選んでも」
 貫く刃、延々と歌われた歌は、これで終わりだと刃が告げている。
「人を傷つけるだけの歌じゃ、幸せじゃないだろう?」
 問うまでもない、月居の声。
 応えるものは、誰もいない。


 ただ、ただ満天の月が白い光を落としている。
 もう何も残っていない。
 変われば元のものは残らない。
 ただ変わった今があるだけ。過去は、泡のように薄く、淡く、消えていく。
 残ったのは、記憶にある風景だけ。きっと、白い光に照らされたある夜の、ある廃墟での戦い。
 忘れるような、些細な事だっだろうか。
 ただのよくある事件として、誰も彼も忘れるだろうか。
 いや、きっと――。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:9人

思い繋ぎし紫光の藤姫・
星杜 藤花(ja0292)

卒業 女 アストラルヴァンガード
Drill Instructor・
新田原 護(ja0410)

大学部4年7組 男 インフィルトレイター
戦場を駆けし光翼の戦乙女・
桐原 雅(ja1822)

大学部3年286組 女 阿修羅
喪色の沙羅双樹・
牧野 穂鳥(ja2029)

大学部4年145組 女 ダアト
黒の微笑・
石田 神楽(ja4485)

卒業 男 インフィルトレイター
輝く未来を月夜は渡る・
月居 愁也(ja6837)

卒業 男 阿修羅
盾と歩む修羅・
翡翠 龍斗(ja7594)

卒業 男 阿修羅
残念系天才・
ネピカ(jb0614)

大学部4年75組 女 阿修羅