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「がんばれ! ファイヤー! ボンバーズーッ☆」
応援席でボンボンを振りながら笑顔で声援を送る草薙 タマモ(
jb4234)。物凄いミニスカートが風に捲れるたびに地鳴りのような歓声が巻き起こる。
たまもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
大きいお兄さん達の野太い声援に流石のタマモンも若干引き気味である。友達に出来た(サッカーPV)んだから、「私だって負けてられないよ!」とそれでも張り切る。
「なんだ、なんだあの娘は!! あんなおっぱい見たことないぞ」
しかし、注目を集めていたのはタマモだけではなかった。
ボンバーズのチア服で飛び跳ねる月乃宮 恋音(
jb1221)と玉笹 優祢(
jc1751)。信じがたいその光景を目の当たりにした観客が驚きの叫び声をあげた。
「胸が激しく上下に飛び跳ねている!? アア、アンビリバボー!!
まるで、おっぱいがバスケボー!!」
興奮しすぎて解説の男は自分でも何を言っているのかわからない。年齢に合わない妙な色気が漂っていて大きいお兄さん達は次々に鼻血を吹いて倒れた。
「まだ、可能性があるとは言え心穏やかとは行かない物ですね……」
傍らでボンボンを振っている雫(
ja1894)の表情が硬かった。キャラにあっていない慣れないブリブリの可愛い衣装がどうしても似合っていないように思えた。
「注目はでっぱい人達に集まっている様ですし……なんかムカムカして来ました」
さらにその洗濯板のような自分の胸を二人と比べて複雑な心境である。
とにかく会場は異様な熱気に包まれていた。万年最下位だったボンバーズの応援席はすでに埋まりつくしていて興奮が徐々に高まっていこうとしていた。
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「画面の向こうの皆、元気!? 雁鉄 静寂です! ここでルールを説明するわ☆ ボールは必ず手で扱わなければなりません。ボールを保持したまま3歩以上歩いてはいけません。移動したければプレーヤーがドリブルでボールを運びます」
雁鉄 静寂(
jb3365)がいきなりマイクを奪っていきなりルールを説明し始める。なぜかあらぬ方向を見て喋りはじめていた。ハイテンションである。
一体彼女は誰なのだろうか……? 画面の向こうの人は疑問に思ったに違いない。
試合開始前になって両者がコートに出てきた。ボンバーズの赤いホーム用のユニフォームを着た撃退士チームが一際大きい歓声を浴びている。
中でも一際体がでかくて目立っていたのが仁良井 叶伊(
ja0618)。
「俺がリバウンド王、ニライだ。お前らまとめて全員ぶっ飛ばす」
栄光の十一番を付けてドヤ顔を決めるリバウンド王、ニライ。なぜかいつものキャラと違う気がするが、一体誰の真似をしているのだろうか……。
しかし、それ以上にもまして異様な雰囲気を漂わせている男がいた……。
「さぁさぁさぁ! コート亡霊捕まれるなら捕まえてみろ!」
敵を挑発しまくる謎の男。ファントムの仮面を纏った十番のゼロ=シュバイツァー(
jb7501)だった。ボールを思いっきりド派手に回してカッコつけている。
な、なんだこの男は!?
あまりの速さに敵も茫然としていた。
白いユニフォームのボンバーズ達も撃退士達に興味津津だった。すぐに両者はコートの上に散らばった。試合開始のホイッスルとともにボールが高くあげられる。
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「うおおおおおおおおおおおおおお!」
リバウンド王、ニライの雄叫びが場内に響いた。驚異的なジャンプ力によって空高く上がったボールを自分の陣地へと叩いた。
落ちてきたボールを受け取ったのは雫である。
見た目は小さい小学生に敵のボンバーズも思わずニヤリと不敵に笑う。周りを囲めばすぐにボールを奪い返せそうだった。
敵は可愛らしい容姿をしている雫に怪しく両手を広げて近づいていく。
みんな危険な顔をしている。
果たしてちゃんとバスケをしているつもりはあるのだろうか……?
まるで大きいお兄さんが小さい娘を取り囲むような危ない図ができあがる。
「私の背ではシュートを決めるのは不利でしょうけど、相手を掻い潜ってパスを繋ぐのには有利な筈――」
みんながそう不安に思った時だった。
雫の目の色が一瞬にして変わった。態勢を低くした雫が、ボールを短く叩きつけながら、敵の股を物凄いスピードで抜いていったのである。
「す、すごい、敵の股を一瞬にして抜き去ったああああああ!!」
会場の誰もが度肝抜かれる。華麗な雫の個人技に敵も困惑を隠せなかった。慌てて敵は戻って守備を行おうとするが、雫は敵の動きを見て高くボールを放つ。
乱れ雪月花を使用して軌跡を輝かせたボールが――ゴールネットを揺らす。
あまりの出来事に敵は度肝抜かれた。
開始直後、敵からボールを奪ったのは静寂だった。
華麗な身のこなしでワンタッチで雫にボールを戻す。
素早いパス回しに敵も付いていくことができない。縮地とサイドステップを駆使して敵に反応させる暇を与えない。
流石は経験者の静寂だ。敵の動きを一瞬で読んで態勢を崩す。
鋭い身のこなしからボールを貰って飛び上がるとダンクシュートを決めつける。
うおおおおおと、歓声が会場をこだました。
「――綺麗に決まると気持ちがいいものですね」
笑顔で声援に手を振る静寂の表情には余裕が感じられた。
ボール回しは静寂を中心に組み立てられ、続け様にスリーポイントが決まる。
これには敵も開いた口がふさがらない。
「練習すればこんな芸当も出来るんですよ」
幸先よく先制した撃退士チームはさらに攻めに出る。ゴール前でゼロが放ったボールがリバウンドして跳ね返ってきた時だった。
「リバンドを制する者がコートを制す!!」
うおおおおおおと手を伸ばしながらボールを叩いて一旦、ゼロにパス。
戻ってきたボールをニライは受け取って全力で反転跳躍する。
ニライは跳躍しながら強引にダンクを狙う!
しかし、敵が二人がかりで止めに入った。
絶対止められるぞ、誰もがそう思った時だ。
ニライは、一瞬、空中で動きを止めた。敵が交差するその隙間を狙って――。
クワドラブルクラッチでディフェンスを振り切る。
変則アリウープだ!
そのままバアンンと、強引に片手で叩きつけた。
「すす、スラムダアアアアアアアンンンンクウう!! 決まったああ! リバウンド王、ニライのスーパーゴーーーーーール!! なんかゴールがひび割れてるぞ!?」
あまりの凄まじさにゴールが割れている……おそるべし、リバウンド王ニライ。
ボールを持った雫は狙い澄ましてボールを放とうとした。
「また、す、スリーポイントか!?」
しかし、それはフェイントだった。
パスをするとみせかけて雫は怒涛のドリブルでゴール前に迫る。
堪らずに敵が両手を広げて止めに入るが、横から擦り抜けるようにタマモンがジャンプしていた。 空中でボールを貰ってなんと月面宙返り!!
そのまま強引に上からダンクシュート!!
「やったぁー」
シュートが決まって無邪気に飛び跳ねて喜ぶタマモ。
なぜか守備側のファイヤーボンバーズのメンバーともハイタッチをして、喜びを分かち合う。カメラの前に言ってさらに流し目線でウィンク☆
「ギョオオオオオオオオオオオオーーーーール! ところで視聴者のみなさん、今一瞬見えませんでしたか? スカートが翻り、私の目にはクマさ――ぐはっ!?」
解説の男がバスケボールを顔面に食らって突っ伏した。ひきつった顔のタマモが「オホホホホホ」と不気味に笑い声をあげている。
果たしてスカートの中身はいったい何だったのだろうか?
スローVTRが待たれるところである。
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ボールを持ったのは恋音だった。
その瞬間、会場誰もが彼女の胸に釘づけになる。
走るだけで、ばいいんんんんん、ばいんんんんんんと揺れまくっていたからだ。
あまりの光景に敵のボンバーズも困惑する。
これではどれが本物のバスケットボールか区別がつかない。
そんな錯覚を起させる程の強烈な視覚効果だった。
「ここから……狙いますぅ……」
わざわざ前置きして恋音はコートの端からゴールを狙った。
ボールはふわりと見当違いの方へと飛んで行く。誰もが失敗シュートだと思った時、なぜか星の鎖によって方向が変わった。
ボールが急に角度を変えてゴールに突き刺さる!
「あ、ありえない。なんだ、あのおっぱい、いや、あのゴール……」
思わず解説も言い間違えてしまうほどのゴール。
華麗なゴールを次々に撃退士達に決められてボンバーズもムキに成り始めていた。ボールを持って大きなドリブルで一気に撃退士の方へと近づいてきた時だった。
不意に、風の如く一瞬でなにかが横を駆け抜けた。
まるで時が止まったような早業だった。
ボールを奪い取ったのは優祢である。
「そんな、バカな! 敵が動きを止めたように見えたぞ!?」
解説も唾を飛ばしながら叫んで驚きを隠せない。いつの間にかヒリュウと一緒に並走しておりあまりの迫力に敵も引き気味になっていた。
優祢は不意にコートの上に立ち止まる。
まだ距離はあるがその場所から空高くボールをシュートする。
ぼい〜〜〜〜〜んんんん。
おっぱいが、激しく上下運動した。
あまりに距離があって入らない。誰もがそう思った時だった――。
ヒリュウが空中で飛び上がってヘディングするとそのままゴールに飛び込んだ。
「オーマイガ!! なんとすごい、おっぱい……いやシュートだ。まさに、まさにこれがインクレディブル、おっぱいギョオオオオオオオオオオオオオーーーール!!」
あまりの凄いおっぱい、いやシュートについに解説が鼻血を出して倒れてしまう。
止まることの知らない撃退士チームはさらに動きを速める。謎の仮面を被ったコート上のファントムが敵を翻弄し始めたのだ。
ゼロは倒れた解説者からマイクを奪うとそのまま解説しながらプレーを続行する。
「舞うボールは幽鬼のごとく。お楽しみあれ」
不可視の矢によって軌道を変えたパス回しに敵は茫然とするのみ。ボールに超回転をかけバウンドを操作しながらのパスに敵は面白いように翻弄された。
ファントムが駆けた軌跡には無駄に光でレインボーや各種光が残像を残す。ド派手なパフォーマンスを見せつけられて敵も困惑を隠せない。
謎のファントム、おそるべし……。
いったい、これは本当にバスケなのだろうか……。
「これで止めや! 流星! ダイナマイッ!」
突然、空高く舞い上がったファントムは星降る隕石と共に落下してきた。コートにボールを叩きつけコメット降り注ぐ隕石と一緒にダンクシュート!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
その瞬間、会場の熱気は最高潮に達した。
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割れんばかりの拍手の中で撃退士チームは応援席に拍手を送っていた。PVを撮影していたカメラマンからOKサインが出て一同は安堵の笑みを浮かべる。
「お疲れ様です」と言って静寂はスポーツドリンクを1人1人に手渡す。恋音も檸檬のはちみつ漬けを差し入れて、皆を喜ばせた。
ボンバーズと撃退士達はお礼を述べて試合後の健闘を互いに讃えあう。
恋音と優祢は一緒に「頑張ってください」と応援メッセージと一礼をして、ボンバーズのメンバーは感動の涙で握手をした。
絶対に残りの試合は残力で戦って最下位を脱出することを願って。正直、内心ではかなり緊張していが喜んでもらえてよかったと優祢は控えめに笑顔を見せた。
「しかし、皆さんあれだけ揺れて……と言うより暴れられて痛くないのでしょうか?」
雫は疑問に首をかしげていたが、当人たちは全く大丈夫なそぶりを見せている。一体どうなっているんだあの胸は……と、雫は終始、ぶつぶつと繰り返し呟いていた。
ヒーローインタビューは謎のファントムだった。
ファンになった若い女の子たちが一斉に駆け寄ってきた。
しかし、彼はなぜかインタビューを嫌がる。
「本日のショーはここまで! また皆様が望むのなら黄泉返って出てきましょう」
仮面を脱ぎ捨てるが、その瞬間にマジシャンのように消え去る。
いったいあれは誰だったのか……?
後日、PVは大絶賛のうちに放映され、ボンバーズもよやく調子を取り戻してきた。
謎のプレイヤーのまま、ファントムは未だに女の子にモテまくっているとのことである……。