.


マスター:凸一
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/08/12


みんなの思い出



オープニング


「いち、に、さん、し、にぃ、にっ、さん、し」
 ポニーテールに髪を結んだ女の子たちが白い項を見せている。短パンの体操服から大胆に露出した白い太ももが実に健康的だ。
 学園近くの放課後の河原のグラウンドでテニス同好会がランニングしていた。さすがテニス部だけあって皆一様に可愛らしい容姿をしている。
 だが、その様子を木陰から眺めている怪しい男たちがいた……。
「絶対に許せない!! なぜ、ブルマーじゃないんだ! 機能美、そして見た目の形状のあの美しさ! 短パンなんて邪道だ! ブルマーこそ女子体操服の王道である」
 アフロに爆発した髪をしきりにいじりながら文句をいう若林正。彼はれっきとした高等部に所属する撃退士だった……。
 双眼鏡を片手に女子たちを観察しながら罵詈雑言を浴びせている。
 手には何処からか持ってきたのか、赤いブルマーを持参していた。ぎゅっと握りしめながら短パンへの怨みを念仏のように延々と唱え続けている。
 彼は「ブルマリヲン」のメンバーだった。ブルマリヲンとは、「短パンを撲滅して、ブルマーを女子体操服に再興させるファンクラブ」の愛称である。
 若林がリーダーを務めるブルマー愛好会は、熱狂的な学園のブルマーファンの集まりだ。
 彼らは憂いていた。ブルマーが廃止されて短パンが勢力を拡大している現状に。このままでは彼らの大好きなブルマーが世界から消えてしまう。
 ついにメンバーは立ち上がった。まずは身近な学園からブルマー革命を起こそう。若林達はついにブルマーを広めるために蜂起したのである。
 彼らは持参した色取り取りのブルマーを片手に女子生徒たちに迫っていく。
「君たち、短パンをやめて、このブルマーを履かないか!?」
 若林たちは鬼のような形相でブルマーを頭に被りながら突進した。その光景をみた女の子たちはあまりのヘンタイ振りにぎゃあああああと逃げ出す。
「お願いだからブルマーを履いてくれ! ブルマーがないと俺たちは死んでしまうんだ!」
 ヘンタイにやられると勘違いした女子たちは若林の必死の説得もむなしく、一目散に逃げ出して行ってしまったのだった……。



「ブルマーを頭に被ったヘンタイの撃退士達がいるから、なんとかしてほしいという依頼がきています……」
 斡旋所の女性職員はこめかみを押さえながらやっとのことでそう言った。どうして学園にはこういう輩がいつも湧いて出てくるのだろう……と頭痛がした。
 不幸中の幸いは今回、外の被害者がいなかったことだろうか……。
 依頼主は女子テニス同好会のメンバーからである。放課後河原の傍で練習していると、「ブルマリヲン」と名乗るブルマー愛好会の若林正らがしつこくつきまとってくるそうだ。
 彼らの要求はここで活動したければ、ブルマーを履け、さもなくば頭に被れという突拍子もないものである。あまりの彼らのヘンタイぶりに女の子たちは当然のように拒絶した。
 しかし、彼らは諦めなかった。毎日のようにストーカーのごとくメンバーの帰りを付き纏ってカバンの中にブルマーを入れてこようとしたのである。
 これにはさすがの女の子たちも手を焼いた。しまいにはその場で短パンを脱がせてブルマーを無理やり頭に履かせようとしてくる始末である。
「ブルマーへの熱が高じて文字通り彼らはブルマーを履き違えている。彼らを何とか説得してこれ以上の暴挙をとめてきてほしい。彼らは興奮して見境がなくなっているから、まずはブルマーの良さを語ったり、貴方達もブルマーが好きだということをアピールしてそれから説得するのがいいと思うわ。それではよろしく頼んだわよ」


リプレイ本文


「パンチラの次はブルマー? この学校はどうしてこういう輩ばかり……」
 長身で背の高いモデルのような遠石 一千風(jb3845)が溜息を吐いた。テニス部のウェアを着こんでいてとてもよく似合っている。
 先日、学園のパンチラ同好会を討伐した所だった。
 今度はブルマー愛好会である。
 一千風は破廉恥な者は大嫌いだった。
 しかし、一千風は一抹の不安に駆られていた。今回の依頼の仲間をみてなぜか頼もしさが全く感じられない。本当にこのメンツで大丈夫なのだろうか……。
 一千風はすでに仲間である撃退士達を疑い始めていた。
「この学園は本当に撃退士を育成しているのでしょうか?」
 雫(ja1894)も頭を抱えながら疑問を口にする。次々に湧いて出てくるヘンタイの撃退士達を見て自分も同じ学園生だと思うと頭が痛くなってきた。
「ブルマへの思いはさておき、自分たちで被ったら早速変態でしかないね……」
 冷や汗を掻きながら猫野・宮子(ja0024)も同意する。しかし、宮子は口でそう言いながらも体操服の下にブルマーを履いてきていたのだった。
 体操服の裾が出て紺色のブルマーを覆い隠している。まるで大きいTシャツの下に紺色の下着がちらっと見え隠れしているようだ。
「嗚呼、ブルマー……なぜ、学園の制服にないんだ!?」
 ぶつぶつ喚きながら何 静花(jb4794)が文句を誰かに言っている。なぜかあらぬ方向に向かって血走った表情で何かを訴えている。
 もはや不審者だった……。一千風が不安に思ったのも無理はない。
 不意にその時、土手の方で悲鳴が聞こえた。
 視線の先にはテニスコートで体操服姿の女子生徒たちがランニングしている。
 女の子たちが何かに気がついて絶叫したのだった。木陰からいきなり飛び出してきた撃退士達――しかし、頭には色とりどりのブルマー。
「我々は、正義と愛のヒーロー! ブルマリヲン、参上!!」
 リーダーの若林が女子学生の前に颯爽と躍り出る。頭には赤いブルマーを装着していた。他のメンバーもピンクやブラックなどのブルマーを被っている。
 何処からどう見てもヘンタイそのものだった……。
「君たちは短パンウィルスに犯されている! このままでは悪の短パンに世界を支配され、洗脳されてしまうぞ! そうなる前に俺たちが助けてやる。いいから早くこのブルマーに履きかえるんだ!!」
 猛ダッシュで仲間を引き連れて若林達が突っ込んできた。
 悲鳴をあげながら女子達は逃げ惑う。ブルマリヲンのメンバーがブルマーを片手に無理やり女子学生達の頭に履かせようとしたその時だった。


「ちょっと待ったぁ!」
 不意に若林の手が止まった。せっかくいい所を邪魔されて怒りが募る。
 鬼のような形相で邪魔した相手を睨みつけようと首を後ろに向ける。
「だれだ、せっかくのいい所を邪魔しやがって!」
 若林達が振り返るとそこにいたのは六道 鈴音(ja4192)。スタイルの良い気の強そうな美少女が体操服にジャージを着て仁王立ちしていた。
「そこまでにゃ! どんな思いがあろうと、嫌がる相手への無理強い行為は……この魔法少女マジカル♪ みゃーこ(ブルマver)が許さないにゃ!」
 同じく頭に猫耳と尻に尻尾を付けたブルマーみゃーこが登場する。しかし、さらに怪しいスパッツ女がやってきて唐突に独り言をぶつぶつと言い始めた。
「女児の体操着としては壊滅状況にあるかもしれないブルマーは滅びの道に無いのはご存知だろうか。ブルマーがスポーツにおけるユニフォームとして有用であると言うのは大会を見れば直に分かる事である。その為、ブルマーを作るメーカーは多いのだ」
 なぜか突然、誰かに解説を始める静花。
 まだ戦闘や説得も始まっていないのに――いったい誰に向けての解説なのか。
「実はブルマという装備はここ久遠ヶ原では公開されたことが無い。活動として真っ当なものはこれを不当と主張することではないだろうか。
早く活動しろ!」
 静花は突然その場で暴れ出した。
 あまりの光景にブルマリヲンは茫然とあいた口がふさがらない。
 なんだ……俺達と仲間か?
 なぜか知らない内に同類だと思われる鈴音と宮子、静花。
 その姿をみて思わず仲間であるはずの一千風も頭を抱える……。
 逃げ惑う女子生徒達の前に割って入り宮子たちは手を広げてゆく手を阻んだ。
「俺達のブルマー補完計画を邪魔する奴は許さんぞ」
 鼻息の荒い若林達は興奮して鈴音の容姿の素晴らしさに気づいていなかった。すでに頭の中はブルマーでいっぱいになっており、というか――頭にブルマーを被っているので前が良く見えていなかったのだった……。
 若林達がそれでも無理やり女子生徒に襲いかかろうとする。猛烈な足のスピードで傍にいる女子生徒に突進しようとした時、突然大声が辺りに響いた。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!
悪を倒せと、我輩を呼ぶ!  聞くのである!  悪人ども!!」
 不気味な野太い声が辺りに響き渡る。だが、どこにも見当たらない。
 若林が不意に気がついて頭上を見上げた時だった。
「我輩はブルマと正義の戦士! ブルマクセル!!」
 高い木の上から姿を露わしたのはマクセル・オールウェル(jb2672)。その登場にブルマリヲンはまだしも同じ仲間の一千風の撃退士達も度肝抜かれた。
 上半身裸、下半身は銀色のブルマー、顔も金色のブルマーを被っている。
 どこからどうみてもブルマリヲンと区別がつかない……。
 いや、それ以上のヘンタイぶりだった。
「わ、我輩はマクセル・オールウェルなどというどこにでもいるごく普通の天使ではないのである。ブルマと正義の戦士、ブルマクセルである!!」
 フオオオオオオオオッ!!、もとい、とうっ!!、と飛降りる。
「こいつらはいったい……お前の仲間か?」
 若林が目の前にいる一千風に訊いたが、彼女は首を横に振った。
 同じ仲間だと思われたくない……と必死に彼女は顔を真っ赤にして否定したのは言うまでもない。



「まずは自己紹介からね。私は大学部の六道鈴音。みての通り、私もブルマーを愛用しているの――」
 鈴音はリーダーの名前を聞いて何故か唸った。
「あぁ、なんだ。若『林』か。『杉』だったら消し炭にしちゃう所だったわ。……うぅん、なんでもない。コッチの話よ」
 誰か向こうで大きなくしゃみをしたような気がしたが気のせいだ。
 鈴音は早速、ジャージのチャックを開けて中身を見せつける。黒色のブルマーがピチピチに弾け飛んでいた。一回転してお尻も見せつける。
 サイズが小さくて股と尻のラインにブルマーが食い込んでいた。あまりの光景に若林が鼻血を噴き出して盛大に倒れこむ。
 ようやく鈴音の美少女ぶりに気が付いたブルマリヲンのメンバーが感嘆の吐息を漏らした。ここまで見事にブルマーを履きこなす者はめったにいない。
「……まるで、ブルマーを履いた天使のようだ」
 うわ言のように若林が呻く。だが、すぐに部下がやってきて若林を何とか引き起そうとする。こんな所で倒れていたのではブルマーによる世界征服が達成できない。
「貴様! よくもうちの若林を! 許さないぞ」
 部下の男たちが喚き始めた。その時、一千風が恥ずかしそうに前に出てくる。
「これで大人しくするなら……貸しなさい」
 ブルマーを無理やり若林から奪い取るとなんとその場でブルマーを履いて見せた。テニスウェア&ブルマーの絶妙な組み合わせに再び若林がぶっ倒れる。
 恥ずかしそうに顔を真っ赤にした一千風のスタイル抜群のブルマー姿もかなり強烈な破壊力を持っていた。初めての格好と突き刺さる視線が赤くなる程恥ずかしい。
「後ろを向いて……そう、膝をぐっと曲げて前かがみになって」
 若林がポーズを要求する。一千風は健気に要求に最初答えていた。しかしだんだん要求がエスカレートしてくる。そのポーズを取ろうとすると、皆の前にお尻を突き出す格好をさせられることに一千風はようやく気が付いた。
「いやああああああ、恥ずかしい!!」
 ついに一千風は怒りの鉄拳を若林の顔面に炸裂させる。
 怒った若林たちはついにブルマーを一千風から脱がせようと近づいた。
「貴方達のブルマへの拘りは理解は出来ませんが、怨念めいた物は判りました」
 神妙な顔で雫が間に止めに割って入る。
「そんな貴方達に疑問なのですが、ブルマを履いた時に上着の裾は出して置くのとブルマの中に入れて置くのとどちらが正しい姿なのですか?」
 その瞬間、若林たちが互いに顔を見合わせた。
 当然、裾は出すべきだだろうと若林が答えたが、すぐに部下が裾は入れた方がいい、なぜならピチピチのブルマーがより強調されるからだと反論する。
 いや、チラリズムだ。あの下着のように見えるブルマーがいいんだと若林が反論して内輪でもめ始めた。そこへブルマクセルが乱入してくる。
「さて、ブルマリヲンとやら。そんな些細なことは問題でないのである。
お主等の行いは断じてブルマ愛などでは無いのである!
ブルマを無理矢理穿かせて何とするである。
自ら望んで穿かねば、そこに求める健康美は生まれぬのである。
それを忘れた所業は、単なる『ブルマを穿いた姿』のみを求める、邪道の所業である」
 黄金のブルマスクと銀のブルマーを付けたブルマクセルが高説を語り始めた。
あまりの凄いブルマー姿に怖気づいてしまいそうになった。あまりのヘンタイぶりに敵はおろか味方でさえうかつに近づけなかった。



「一千風さんのブルマーはブルマクセル、お前には渡さない!」
 若林は勘違いした。マクセルが一千風のブルマーを狙っていると。その誤解も無理なからぬことだった。見た目は全くの同類に見えるからである……。
 剣を抜いて邪魔する奴はぶった切るとばかりに若林たちは実力行使に躍り出る。
「変態さん、あなたの相手は僕にゃよ! こっちに来るにゃ! ……あ、やっぱり来ないでもいいかもにゃ(汗)」
 血走った目つきで突進してくる若林を間一髪の所で宮子は避ける。あまりに不気味な顔を見てさすがの宮子も背筋が寒くなったのだった。
 自分のブルマーを執拗に狙っているように思えたのである。
「そこで、止まりなさい変態共。貴方達の要求は全て却下、そんなにブルマ姿が見たいのならいまの自身の姿を撮影して個人でじっくり眺めなさい」
 直ぐさま反応したのは雫だった。
 抜刀して思いっきり怒りの炎を燃やした剣で振り払う。ブルマリヲンの被っているブルマーを叩き斬ろうと物凄い勢いで懐に飛び込んで大剣を振るう。
「ブルマを愛好しているのなら誰が履いても良い筈。しかし、自分の好みの女子に無理やり履かせて悦に浸るのは、ブルマ自体では無くブルマを履いた女子を愛好している証拠」
「――黙れ、貴様にブルマーの何がわかる!」
「ゆえに貴方達にブルマ愛好会を名乗る資格はなし! 
変態性フェチ部とでも改名しなさい」
 ぐあああ、と斬られて部下の一人がぐったりと倒れた。自慢のブルマーを叩き斬られて力を失ったようにその場に倒れ込んでいる。
 怖ろしいまでに強い雫の剣の力に部下たちは舌打ちする。
「無理やり押し付けるのはやめなさいっ」
 それでもなかなか抵抗をやめないブルマリヲンに対して、一千風が近接で思いっきりタックルを試みる。倒れ込んだ部下の腕を背中にまわして関節を固めた。
「……腕へし折るわよ」
 さっきのお返しとばかりに一千風が低い声でドスを利かせる。ついにブルマリヲンたちはあまりに強い撃退士達に根をあげた。



「そもそも、いくら自分が好きだからって他人に無理矢理履かせるのが間違ってるよっ。後は……履くのは顔じゃないしっ」
 捕まったブルマリヲンのメンバーは一人残らず宮子によって束縛された。なぜか束縛されて喜んでいる部下も中にはいたが、さすがに気持ち悪過ぎて宮子は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「後、迷惑な活動が耳に入ったら何度でも潰しにくるからそのつもりで」
 一千風は強くブルマリヲンに言い聞かせた。しかし、若林の口から他にも「悪臭ストッキング同好会」や「MOKKORI KINOKO CLUB」、「鬼畜眼鏡男子愛好会」なる部が活動していることを知って「他にもいるの……」と顔を真っ赤にして去って行った。
 入れ違いに若林の元へ今度はブルマー天使がやってくる。
「貴方達のやり方じゃ、かえってブルマーの印象を悪くするだけよ。
つまり、逆効果なのよ。まず、ブルマーを頭にかぶるのは禁止。あと、女の子の短パンを脱がすのはもはや犯罪よ。やめなさい」
 鈴音の説教に大人しく若林達が耳を傾けていた。なぜか説教中、彼らはずっと鈴音のブルマーを凝視していたが、ちゃんと耳に入っていたのだろうか……。
 悪事を止める代わりに名誉会員になってあげる、との言葉にブルマリヲンのメンバーは鈴音を勝手にブルマー・ピンクとして後日名簿に付けたした。
「つーかどこにも無いからブルマくれ。実用と保存用と布教用で最低3つな!!
絶対報酬に入れるんだぞ!!! 無かったら呪う」
 静花はずっとあらぬ方向に顔を向けて怒鳴っていた。
「いや、大人の事情でそれは無理では――」
 雫が冷静に突っ込みを入れていた。とうとう静花はいまだ手に入らぬブルマーへの怨念を燃やして学園の方へ猛ダッシュして消えて行った。
 一方、ブルマクセルは……。
「わ、我輩はマクセル・オールウェル。どこにでもいるごく普通の天使である。
ブルマクセルだなどという、ブルマと正義の戦士など知らぬのである!!」
 恥ずかしい、とかではなく、変身ヒーローは正体を隠すもの、の為と言い訳をしてブルマクセルは身を再び隠して今は何処に居るのかわからない、らしい。


依頼結果