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マスター:凸一
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/01/29


みんなの思い出



オープニング

●視覚的惨劇
 女子生徒は帰宅するために急いでいた。陽は暮れて辺りは暗くなり始めている。周りには誰もいなかった。住宅街を抜けると急に人影がなくなって急に心細くなる。
 最近この辺りで変質者が現れるという噂を耳にしていた。
 なるべく早歩きになって通りすぎようとした時、目の前に人影が見えた。
 一瞬女子生徒は身を強張らせた。変質者かもしれないと警戒しながら近づいていくと、そこにいたのは女子高生たちだった。
 純白のセーラー服やブレザーの制服を着ている。背の高いすらりとした女子高生の後ろ姿だった。可愛らしい縫いぐるみやアクセサリーをカバンに身につけている。
 女子生徒は他に人を見つけて安心した。
 もし変質者が現れても大声で叫べば必ず彼女たちが気がついて助けてくれるだろう。女子生徒は前を行く女子高生たちと間合いを詰めながら足早に近寄っていった。
 あと少しで追いつくという時だった。女子高生たちは不意に足を止めた。そして何気なく後ろを振り返るとやってきた女子生徒に笑みを浮かべた。
 その瞬間、女子生徒は恐怖に身が凍った。
 振り返った女子高生は紛れも無く中年のオジサンの顔をしていた。
 メガネを掛けていて顔に油ぎった汗が滲み出ている。
 ごつい胸板がセーラー服のボタンを弾き飛ばさんとするかのように盛り上がっている。限界にまで短く切り詰められたミニスカートからは厚い太腿が覗いていた。
 毛むくじゃらのすね毛が伸び放題になっている。
 女子高生オジサンがくるりと回転すると風にスカートがめくれ上がった。
 視覚的惨劇目の当たりにして女子生徒は絶叫した。

●恐怖の見返り美人
「放課後の学園の通学路に――人型のディアボロが現れました」
 困惑気味に若い女性職員は声をようやく絞り出した。上手く説明しようと言葉を探すのに時間がかかってしまっていた。
「ディアボロは女子高生の姿に扮した中年男性の姿をしています。奴らは放課後の通学路のどこかに潜んでいて通りすがりの生徒たちを襲います。白くてベタベタした液体をぶっかけてくるからくれぐれも注意してください」
 聞いていた撃退士達も絶句した。どうしてこんなディアボロが現れるのか考えただけでもおそろしかった。想像を絶する敵の容姿に撃退士達も困惑を隠せない。
 ディアボロは後ろ姿を見る限りスレンダーの美しい女子高生だ。だが、振り返るとそこには年若い女子高生とは似ても似つかないディアボロが顔を見せる。
「短いスカートを翻して敵はこちらを怯ませてきます。その中身を見てしまうと、恐怖に絶叫して戦闘どころではなくなります。これ以上、犠牲が出ないようにこのヘンタイのディアボロたちを早く退治してきて頂戴」
 女子職員はそれだけを言い残して足早に立ち去った。残された撃退士たちはしばらく沈黙しながら渡された情報を手にしばらく沈黙していた。


リプレイ本文


 日が暮れて辺りは暗くなり始めていた。周りは鬱蒼とした木々や公園に囲まれていて人通りの少ない場所だ。通学路になっているがあまりこの道は使われていない。
 まさに何かが出そうな薄気味悪い雰囲気が漂っている。死角が多くて変質者が隠れるのには絶好の場所である。不意に誰か人の声が聞こえてきた。
 制服に身を包んだ女子高生が現れる。長い髪に短いミニスカートを履いている。
 遠くから見る限り二人は何処にでもいる女子学生にしか見えない。
 だが、近づいてきた二人の顔は紛れも無く女装をした久遠ヶ原学園の男子学生だった。
「女装……? その程度で女装? 僕が本物をみせてあげるよ」
 本城 猛(jb8327)は不敵に嗤う。白地に紺の襟の冬物のセーラー服を纏った姿は疑いなく女子高生そのものだ。紺のハイソックスとローファが細い脚によく似合っている。
 金髪に白い肌がマッチしていてとても男子高生には見えない。猛はその辺の女子高生よりも可愛らしく着飾っていた。
「お前、良く平気で女装できるよな……」
 向坂 玲治(ja6214)は思わず呟いた。玲治自身も長髪のウィッグに女物のコートを着込んでそれらしく整えていた。ポケットにボールまで忍び込ませて胸を形作っている。猛に比べて無理矢理感が半端無く痛々しい。玲治は心の中で「……正直、これを作った奴の良識を疑うレベルだ。いつかきっと〆てやる」と愚痴を零す。
「ん、囮ならちゃんとしないとね。中途半端にするとどっちが敵なんだかわからなくなってもいけないし」
 後ろから可愛らしい出で立ちで付いてきたのは猫野・宮子(ja0024)だ。今回二人に女装のメイクや髪のセットを手伝ったのは彼女である。
 そんな宮子でさえ二人の出来栄えを見て思わず額に汗を浮かべた。
「に……似合っていると思う、のだ……ぞ」
 顔を引き攣らせて酒井・瑞樹(ja0375)は褒めた。二人の姿形をきちんと確認する。闘いの最中に敵と間違って攻撃してしまったら目も当てられない。瑞樹は二人に同情して一応自分も男子の学ランを着込んで男前な雰囲気を醸し出している。
「後ろ姿と前からの見た目が違うって、どうなってるのかしら……」
 蓮城 真緋呂(jb6120)と緋野 慎(ja8541)は来るべき戦闘に備えて気配を殺して近くの木々の影に身を隠す。周囲に気を配りながらいつでも攻撃出来る体勢を整える。
 不意に後ろから誰かがやってくる気配がしてエイネ アクライア(jb6014)は翼をはためかせて上に飛び上がった。すると白のセーラー服と紺と緑色のブレザーを着た女子高生オジサン達がミニスカを翻して走ってくる所だった。
「色んな意味で最悪ね。 ほんと、作った悪魔の頭の中を覗いてみたくなるわ」
 現れたその強烈な姿を目にして月臣 朔羅(ja0820)が吐き捨てる。


「何が嬉しくておっさんに群がられにゃならんのか……」
 玲治と猛に惹きつけられて女子高生オジサン達が喜々として迫ってきた。恐らく同類と思われたのだろう。頬を緩ませながら激しく抱きつこうとして来た。
 その瞬間に玲治は着ていたウィッグとコートをディアボロに投げつける。
 不意を突かれた敵は目隠しをされて前が見えなくなった。
「緋の光よ、全てを飲み込め。見よ、この腕は焔の腕! 緋炎閃!」
 木の影に隠れていた慎が奇襲攻撃を仕掛けた。全身に炎を纏って腕に集中させて一気に振りぬく。ディアボロ達は一直線に並んだ所に鋭い一撃を同時に食らった。
 我に帰った白のセーラー服が目の色を変えた。鉄の入った通学カバンを振り回して体当りしてくる。すぐに慎はその場を離脱したが代わりに玲治が狙われる。
 すぐに身体を反転させてシールドでカバンを受け切った。
 あまりの力強さに吹き飛ばされそうになるが、ぐっと下半身に力を貯めて堪えきる。
「と、とにかく、魔法少女・まじかる♪ みゃーこ参上にゃ♪ 世界の平和を乱す変態ディアボロは全力全壊でお仕置き撃滅にゃー!!」
 服を脱いで猫耳と尻尾を装備した宮子が叫んだ。攻撃が玲治達に行かないように自分にディアボロに注意を惹きつける。すると白のセーラー服が振り返った。
「うに、そこの白い変態ディアボロの相手は僕にゃ! こっち向くにゃ! あ、やっぱりあまり向かないでもいいかもにゃ」
 焦った宮子はこっちに来ないでと祈った。
 だが、白のセーラー服は不敵に笑いながら白くてべたべたした液体を宮子とエイネに向かってぶっかけてくる。
「にやぁぁぁぁぁああああぁぁあああああ――――」
「いやあぁぁぁあああああ―――」
 その瞬間、宮子とエイネが絶叫した。
 体中にべとべとした液体をかけられる。
 液体はなぜかすえた臭いがした。思わず鼻がもげそうになる。
 色々と見た目が危険になってしまった宮子とエイネはあまりの羞恥さに身を捩らせた。
 宮子が恐怖のあまりゼロ距離射程から猫パンチを食らわした。お腹を抉られた白のセーラー服は苦痛にこらえて後退した。
 ゴーグルを付けていた真緋呂は取り敢えず無事だった。
 後頭部に目掛けて雷状になった剣を突き立てる。
 白のディアボロは悍ましいうめき声を上げた。
「何というか……貴方が一番下品よね。処すわよ?」
 美しい銀髪を翻して朔羅は死角から思いっきり跳躍する。
 頭に強烈な一撃を叩き込む。敵は激しく涎を垂らしながらもがき苦しんだ。
 朔羅はもう一度手に力を込めると敵の股間を横に切り裂く。白のブレザー服は美しい朔羅にお仕置きされて嬉々の声を上げながら地面に突っ伏した。


「なんなの馬鹿なの? 持って生まれたもの過信してたら女の人どころか同性の年下にも敵わないんだよ?  だいたい無駄毛の処理もしない、オイリー肌もどうにかしない?  愛され続ける為にはほんのちょっとの妥協でも許されないんだから!」
 女装したままの猛はついに我慢ならずに勢い良く前に出た。これには攻撃していた女子高生オジサンも驚いて一瞬手を止める。
 まさか説教されると思っていなかった敵は互いに眉を顰めあった。
 まるで自分の自慢のすね毛を侮辱されたといった表情だ。
「あと少しだからあげる。せめてその皮脂だけでもどうにかしなよね!」
 猛に油とり紙を渡されたが、怒ったオジサン達はその場で破り捨てた。
 紺のブレザー服はついに立ち上がって身体を激しく回転させる。
 すると巻き起こった風によってスカートが盛大にめくれ上がった。
 スカートの中身を見てしまった玲治は一瞬何が起きたのか分からなかった。
「目が……目がぁ!!」
 両目を抑えてその場でもがき苦しむ。その瞬間に、大根のような太い足を振り上げて玲治の股間を思いっきり蹴りあげた。あまりの痛みに玲治は言葉を失って崩れる。
 辛うじて視覚的惨劇を免れたエイネは紫電を纏った刀で斬りつける。
 油断していた紺のブレザーは頭をやられて後退した。
「潰していいのは、潰される覚悟が出来ている人だけよ。OK?」
 朔羅が倒れた白のセーラ服で斜線を防ぎながら股間を狙う。
 瑞樹も敵を逃がすまいと反対側から迫る。すると紺のブレザーももう一度身体を回転させて短いそのスカートの中身を見せつけようとしてきた。
 スカートの中身がまさに見えるという瞬間だった。
 瑞樹は股間に狙いを済まして痛烈な一撃で敵を吹き飛ばした。
 絶叫しながら紺のブレザーは苦悶してついに果てた。
 残ったのは緑のブレザー服だった。丸太のように太い足からはまるでジャングルのようにすね毛がすっげえぼうぼうに生えている。その短いスカートと相まってあまりに見るに耐えない代物だ。
 これには思わず対峙した慎も顔を顰める。
「お前の相手は俺だ!」
 慎は挑発しつつ、緑のブレザーから距離を置いて体勢を整えた。
「お前のそのすね毛、全部削ぎ取ってやる!」
 慎が不敵に笑うと今度は敵がおもむろにすね毛を毟ってきた。
 まっすぐに伸ばした鋭いすね毛の針を飛ばして威嚇してくる。
 あまりの量の多さに慎は苦虫を潰した。
 辛うじてかわし切るが、今度は緑のブレザーが決死の形相で慎に体当りしてくる。
「あぁあああ! すね毛がじょりじょりするううあああ」
 身体を掻きむしるような痛みに襲われて慎が叫んだ。
 下半身を密着させて慎の股間に毛むくじゃらの足を挟み込んでじょりじょり擦りつけてくる。
 だが、慎は歯を食いしばって耐え忍んだ。
 敵が下半身に注意を向けている隙に、慎は自慢の胸にセラフィエルクローを突き立てる。
 緑のブレザー服は慎に逆に力強く抱きしめられた。
「この距離じゃ外す方が難しいよなっ」
 気がついた時は遅かった。慎が腕に力を思いっきり入れると、緑のブレザー服の胸に得物が深々と突き刺さる。盛大に血飛沫をまき散らして慎の腕の中で崩れ落ちた。


 朔羅はまだ息の根を止めていない紺のブレザー制服の背後から掴んで持ち上げた。
「変態の祭典も、遂に貴方で終わりのようね。派手に散りなさいな」
 ジャーマン・スープレックスの形で思いっきりぶん投げる。
 地面に派手に叩きつけられた紺のブレザー服は首の骨を折られた。
 泡を噴いてついに動かなくなる。
「全く、目の毒とはこの事ね。始末する身にもなって欲しいわ」
 朔羅は長い髪を掻きあげてようやく安堵の息を吐くと傍らいた仲間の撃退士達も互いに顔を合わせて頷いた。皆それぞれ疲れきったひどい格好をしている。
「刀は武士の魂……終わったら速攻で洗浄消毒なのだ」
 瑞樹は汚れてしまった愛刀を見て嘆いた。
 まるで心までディアボロに汚染されてしまったようで耐え難かった。
 今すぐにでも飛んで帰りたいところだ。
「お肌を維持するために毎日二時間フェイスパックとコラーゲンドリンクお供に半身浴してるし、 ボディラインを崩さずに撃退士的に必要な筋肉を鍛えなきゃならないし、月一のエステも欠かせないし無駄毛の処理も言わずもがな。シャンプートリートメントリンスヘアパック基礎化粧品全部特注だし。 ここまでやったってまだ足りないんだよ? 基本女装だって邪道なんだから!」
 猛はまだ先程から文句を垂れ流していた。
 ディアボロはすでに聞く耳を持たないが、猛は足で踏んづけながらマシンガントークを浴びせる。
 玲治は批判の矛先が自分に向かう前にさっさと帰り支度を始めていた。
 もし猛に捕まったら永遠に説教をされ続けてしまう。ただでさえ先ほど見た女子高生オジサンのスカートの中身はトラウマになのにこれ以上災難は被りたくない。
「よくも、よくも……」
 エイネも執拗に死んだディアボロをざくざく切り裂いていた。
 濡れタオルで拭いたが、まだ白くてべたべたした液体が服にこびり付いて取れない。
 猫耳尻尾ブルマの宮子と一緒にその危険な格好のままで銭湯に走る。
「はあ……」
 真緋呂は深い溜息を吐いて見送った。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 封影百手・月臣 朔羅(ja0820)
 駆けし風・緋野 慎(ja8541)
重体: −
面白かった!:1人

無念の褌大名・
猫野・宮子(ja0024)

大学部2年5組 女 鬼道忍軍
武士道邁進・
酒井・瑞樹(ja0375)

大学部3年259組 女 ルインズブレイド
封影百手・
月臣 朔羅(ja0820)

卒業 女 鬼道忍軍
崩れずの光翼・
向坂 玲治(ja6214)

卒業 男 ディバインナイト
駆けし風・
緋野 慎(ja8541)

高等部2年12組 男 鬼道忍軍
撃退士・
エイネ アクライア (jb6014)

大学部8年5組 女 アカシックレコーダー:タイプB
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
遥かな高みを目指す者・
本城 猛(jb8327)

大学部2年286組 男 鬼道忍軍