●
「祭りだーッ!」
神輿の最前列で雪室 チルル(
ja0220)が叫んだ。
大きな団扇を扇ぎながら熱気を伝えていく。
前方には誰もいなくて気持がいい。チルルは気分よくその場で立ち上がる。
立ち上がりながらふんどし姿を見せつけた。
サラシにふんどし。すばらしい光景だと、主催者の源三は車椅子で主催社席から満員御礼となった商店街の活気に涙する。
ふんどし祭りは危機に瀕していた。
今年から後継者もいなくて廃絶することになっていた。
もう若い子のふんどしは見られないと思っていた。
積年のうれし涙に源三は思わずふんどしで涙を拭いている。
「ふんどし祭りだわっしょい〜! ガーくん、フワッチョよろしくね〜♪
わっしょい〜! わっしょい〜!」
法被を着た五月七日 雨夏(
jc0183)も大きな声で張り上げる。
すぐ傍でヒリュウのガーくんも褌をしめて興奮している様子だった。
何故かお姉さんの後ろばかり見ているが……。
ガーくんとケセランのフワッチョに御神輿の上で扇子を持って貰って、リズムに合わせて扇子を振る。
活気あふれる商店街にはツアー客が押し寄せてきて賑わう。
目立たぬように雑用していた月乃宮 恋音(
jb1221)の御蔭だった。
「撃退士と行く! ふんどし祭りツアー」と書かれた旗を持って歩いていた。。
次々に乗り入れるバスのお客さんを商店街へ案内する。
「ふんどし祭り」の為にパンフレットや企画ツアーを立ち上げた。丹念に作ったふんどし祭りを紹介する記事に誘われて大勢のふんどしマニアが訪れたのである。
そんなのいるのか思っていたが、どうやら一杯いたらしい。
なぜか皆一様に自分の方へカメラを向けているのが気になったが……。
目立たぬようにしているつもりがその大きな胸に皆の視線が釘付けになっている。
恋音は彼らから逃げるように裏で機材運びなどしてステージの準備を始めた。
神輿はすでに神社を出発して商店街に入り込んできている。
「あそこに、幼女がいるぞ!!」
その時だった。一斉に客の間からカメラのフラッシュが瞬いた。
「えううぅ……。届かないのですよぉ……。しょぼ〜ん……」
幼い容姿をした深森 木葉(
jb1711)が飛び跳ねていた。背が届かずに神輿が担げずに何度もその場で飛び跳ねては溜息を吐いていた。
木葉が跳ぶ度に褌が揺れる。その光景に大きいお兄さんたちの目が充血する。傍で一緒に担いでいたはずの東風谷映姫(
jb4067)も何故か妖しい笑みを浮かべていた。
ふんどしを締める時になぜか体が近い。
「あ、あまりジロジロ見ないでくださいねぇ……。結構恥ずかしいのですぅ……」
木葉は恥ずかしそうにそっぽを向こうとする。
「つるつるすべすべでいいね〜♪ じゅるり」
ふと見ると映姫が妖しげに近寄ってきた。
木葉達のふんどしを締めながら映姫は楽しそうに笑う。
着替えの時を思い出して映姫は叫んだ。
「あぁ〜女の子に生まれてきて本当に良かった……!」
映姫がさらに体を密着させようと迫る。
その様子を見ていた大きなお兄さん達がロープを越えてきた。
何やら頬を紅潮させていた。カメラのフラッシュがより激しさを増す。
暴徒と化して木葉たちを御障りしようと乱入してきた。
「ふおおおおおおおっ、悪い子はオシオキですよ!!」
頭に褌を履いた変態が現れて大きな御兄さんを吹き飛ばす。監視していた雨夏のがーくんも一緒に褌仮面と一緒に噛みついて撃退に成功する。
袋井 雅人(
jb1469)は恋人の赤い褌を被ったスーパーヒーローに変身していた。
傍らで恋人の熱い眼差しを受けて雅人は気持ちが高ぶる。
どうだ、このかっこいい姿……!
誰もが絶句していた。こいつ自体が究極のヘンタイだと。
こんなヘンタイに襲われたら一溜まりもない。
暴徒と化していた群衆は一斉に背を向ける。
大きいお兄さん達はあまりの雅人のヘンタイさに恐れをなして逃げ去った。
●
「どうして僕はここにいるのかな?
うー、でも参加した以上は頑張るんだよ!
ふ、褌姿ってやっぱりちょっと恥ずかしいけど、多分みんなそうだから参加者減ってるんだろうし……」
モジモジしながら猫野・宮子(
ja0024)はステージの上に立っていた。
純白の褌をこれでもかと捻じ込んでいる。
飛んだり跳ねたりする度に大丈夫かと冷や汗を掻く。
ひとしきり踊るとついに宮子は本性を露わす。
頭に猫耳、お尻に尻尾を生やした褌姿でこれでもかと踊りまくる。
「どうせならもう一つ踊るにゃ♪
魔法少女・マジカル♪ みゃーこ、褌バージョンで参上にゃ♪」
宮子は突然褌を観客に向けて激しいブレイクダンスを踊り始めた。
観客の声がどよめいた。
「フォー!」
横で爆乳を揺らすのは雁久良 霧依(
jb0827)だった。
宮子に負けじとブレイクダンスを始める……。
強烈な真っ白の忍褌……。
首からかけて股間を通し、後ろの紐を腰で結ぶタイプの褌である。
さらしや法被などは邪道である。
これが私の生きる道――フォオオオオオオオオー!!!
ジュリアナテクノに合わせ、羽扇を振って体を揺らす。後ろでは急にどこからか現れたヘンタイ褌仮面が現れてギターを鳴らす。
「HEY! 私も得意の楽器演奏でみんなのダンスを盛り上げますよー」
ギュインンンンンンンンンンンンン――
爆音がアンプから鳴り響いて客たちが一様に魂消た。
アップテンポで激しいBGMに乗せて、 チルルも負けじと撃退士ならではの宙返りとか派手なアクションを見せつつ、スタイリッシュな動きで褌姿をアピールしていく。
宙返りしながら白い褌をこれでもかと見せつける。
「みんなすごいです。折角なので、楽しくいきましょう〜」
木葉も見よう見まねながら激しくダンスを披露する。
幼女姿の褌ダンスは大喝采を受けた。
ものすごいステージだった。
いや、もの凄い褌努士たちだった。
次々に大きいお兄さんが卒倒し、源三までがついに倒れる。
「あのぉ……お怪我はありませんか……」
すかさず裏方に徹していた恋音がステージに行って源三の介抱に努める。
源三が目を開けた時にそこにあったのは破裂しそうな双瓜。
「苦しい、ああああ」
源三はあやうく窒息しそうになってもがく。
恋音はまさか窒息させているとは気づかず、さらに密着して介抱を努めようとする。その様子を見た褌仮面が恋音に「窒息させてるよ!」と注意する。
危うく源三を圧迫死させる所だった恋音は失礼したというように離れる。
後ろを向いたその瞬間だった。
今度はものすごい褌の姿が見えていた。
胸に劣らず可憐で魅力的な大きな桃尻。
「お、お尻も、凄かった……」
源三はその恋音を見るなり再び倒れ込む。
何故か至福の笑みを浮かべながら恋音に担架で運ばれていった……。
「褌女子の持つ青竹でお尻を叩かれると厄払いになり、
逆に褌女子のお尻を青竹で叩くと幸運が訪れるのヨホホホホホ」
霧依はついに青竹を取り出してステージ上で木葉や映姫、雨夏を追いかける。
「幼い容姿の女の子の褌姿が楽しみ♪ ハァハァ」
木葉や雨夏がうまく逃げる中で映姫が捕まって、鞭を打とうと迫る。
お返しとばかりに映姫も霧依を叩こうと組み合いになった。
「ひゃあん、やったわね!」
お互いに激しい格闘でダンスの曲を盛り上げ始めた。
「ふんどし大好きメーター、500ですって?!
1000……2500……6000……まだまだ上がるですって!!」
すかさず雨夏が手を叩きながら相槌を入れていく。
「よかったら皆も一緒に踊ってにゃ♪ それと、よさそうだと思ったら褌を着て見ないかにゃ? 皆でやれば恥ずかしくないのにゃ♪」
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
大きいお兄さん達は絶叫する。
宮子の言葉に反応するようにズボンを脱ぎ棄てた。
皆一様にすでに褌姿だった。なぜか宮子に向かってやってくる。
「あれ、みんななんでこっちにくるのかにゃ、ってひゃあああああああああああ」
宮子は逃げようとしたが遅かった。
「ワッショイ! ワッショイイ!! ワッショイイイイ!!」
宮子は大きい褌のお兄さん達にどこかへと担がれていった……。
●
……ふんどし祭りは無事に終了した。
「来年も絶対に見に来てね!」
チルルがツアー客に元気に手を振って見送った。
一部大きなお兄さんの暴動があったが、ヘンタイ仮面が成敗した。
「おなかいっぱいです、ごちそうさまでした」
地元の特産品の野菜を使った料理を食べて木葉達は満足そうに笑う。
一時はどうなるかと思ったが、若者にはアピールできたようだ。
もっとも女性が少なくカメラを持ったお兄さんたちが多いのは気になったが。
恋音は改善点を考えていた。もっと女性客を多くしなければ……。
客が残して行ったゴミ等の片付けに戸惑ったが、恋音と雅人は居力して片づけた。
雅人はずっと恋音の褌を頭に被ったままだ。
「流石に変態をこらしめるのも楽じゃない。けれどこの褌の御蔭で生き返る」
雅人は息を大きく吸って褌の匂いを確かめる。
すごくいい匂いだった。疲れも一気にとれる気がする。
それを見ていた他の撃退士達は雅人こそが変態だと思ったが口にしない。
「あのぉ……私のお尻ってそんなに……?」
恋音は戸惑いつつも雅人を手伝いながら呟く。
無事に終わったが、来年はどうしようかと悩みつつ、帰ったら早速家で報告書とレポートを作成して提出するつもりだ。
「恋音、来年もお祭りということで気合入れて頑張りましょうね!」
「……えっ、来年も……?」
終わったというのに未だにハイテンションの褌仮面。
恋音はそんな姿の雅人をみて優しく微笑む。
「緩んでるから締め直してあげる♪
食い込み過ぎてるから直すわね♪」
霧依は激しい運動の後で緩んでいる褌達を見つけた。
傍にいた木葉や映姫の褌を直そうと迫る。
映姫はたまらずにその場を逃げ出した。
「もう、遠慮しなくていいんだから、ね?」
霧依は標的を変えて今度は恋音の方へ後ろから迫ろうとしていた。
あまりの妖しい笑みに堪らず恋音も逃げ出す。
「ふふふふふふっふふふふ」
チルルは終始不敵な笑みを浮かべていた。
終了後に関係者から渡された秘蔵のビデオテープ。
中には今日一日の「ふんどし祭り」の様子が映っていた。
「あたいのかっこいい姿をみんなに見せるのもいいよね!」
チルルは帰ったら早速動画をネットにアップするつもりだった。
その反響の結果、どうなるかは想像もせずに――