●おじゃりもうせ
「おじゃりもうせ」とは、種子島の方言で「いらっしゃいませ」という意味である。
***
さて、中種子高校の生徒である瀬戸口・真希(と海潮・結)主催のBBQ+海水浴パーティー。
それに招待されて集まった撃退士は八名だった。これには真希も大喜び。一体、どんな一日になるのだろうか。
「もう海で遊べる時期になったんだねー♪」
などと、はしゃいでいる猫野・宮子(
ja0024)の水着は超きわどいオレンジ色のV字水着。
「まさかALくんも来てるとは思わなかったよ。折角だから一緒に遊ぼうね♪」
と、隣に居る少女と見紛うケモミミ美少年に話しかける。
「この度はこのような機会を設けて頂きまして、誠に有難う御座います」
ケモミミ美少年――AL(
jb4583)はまず、主催者である真希と結へ恭しくお辞儀をした。
真希は「いやいや、来てくれて凄く嬉しいよー」などとぶんぶん手を振る。
「そして宮子様、勿論で御座います。一緒に楽しみましょう」
宮子様のほうを向いて言う彼の水着は学園指定の海パン。
「ちょっと大胆かな? この水着、変じゃない……よね?」
自分の身体を見回す宮子。V字水着の隙間から色々チラチラと見えて危ない。
「宮子様の水着姿をお目にするのも去年以来ですね。大変麗しゅう御座いますよ」
宮子の姿は凄まじくきわどかったが、ALは冷静に直視して答えた。
「イヴちゃん。今日は美味しい物、沢山食べれると良いね」
イヴ・クロノフィル(
ja7941)と共に招待を受けた如月 統真(
ja7484)の水着は学園指定の海パン。
彼にとってイヴは可愛く気になる後輩であり、日頃から食事など何かと世話を焼いている。
自分が一人っ子なので今は妹として可愛がりつつ、将来的には交際……なども考えていた。
今回は中種子高校の生徒の二人と交流しながら、イヴとの関係を深める絶好の機会である。
「先輩達、今日は招いてくれて有難う御座います!」
ゆえに統真は上機嫌。にこにこの笑顔で礼を言った。
「バーベキュー、初めてだから……楽しみ、なの」
そんな統真の思惑を知ってか知らずか、無表情系美少女、イヴの水着は学園指定のスクール水着。
しかし! その色は純白! いわゆる『白スク』である。これは「こっちのほうが似合うよ」と統真の陰謀により用意された物であった。
イヴは何も疑わず着用した訳だが……小柄で細身の身体とは不釣り合いな、豊満な胸が圧迫されて少しきつそう。
「ん……お誘い……ありがとう……」
イヴよりも更に小さな少女、愛須・ヴィルヘルミーナ(
ja0506)はまず、誘ってくれた二人にちゃんとお礼を言う。
彼女の水着はイルカが描かれたタンキニ。胸の部分だけサイズが合っておらず、きつそう。
胸の大きさだけならイヴと同等かそれ以上である……。
(種子島の学生さんとの交流だから現地の物食べるのは良いけど、御呼ばれしたんだしこっちからも食材持って行った方が良いかな?)
黒崎 啓音(
jb5974)は気を利かせて無理のない範囲で食材や飲み物を用意。
「本日は宜しくお願い致します」
真希と結にぺこりとお辞儀。彼の水着は学園指定の海パン。
「ばーべきゅーでござるか、良いでござるな! 瀬戸口殿、海潮殿、今回は誘って頂き感謝でござるよー♪」
元気よく挨拶したのは長い黒髪に赤目のはぐれ悪魔、エイネ アクライア (
jb6014)。
「酒は出ないらしいので持ち込もうと思うのでござるが、大丈夫でござろうか? 無論、未成年者に飲ませるような事はしないのでござるよ! そんな酒があったら拙者が飲むのでござる!」
初っ端からハイテンションである。結は「未成年でなければお酒は大丈夫ですよ」と答えた。
「お招きありがとうございます♪ 絶好のBBQ・海水浴日和ですね♪」
黒いビキニの上から大きめのTシャツを着たゆかり(
jb8277)。こちらもテンション高め。
「自分はゆかりと言います♪ よろしくお願いします♪」
そんな彼女は自己紹介。……両手にはビール・芋焼酎の瓶。
「これですか? 単なる芋焼酎ですよ♪ え? 年? ごひゃ……女性に年は聞いちゃ駄目ですよ?」
どうやらゆかりは既にお酒を飲んでいたらしい。
●南国の海
「皆! 今日は来てくれてありがとう! まずは種子島の綺麗な海を堪能してねー!!」
という真希の声を合図に、皆は砂浜へ駆け出す。
宮子はALと海へ。
「海に来たんだし泳がないとね♪ ALくん行こう♪」
「はい、宮子様。丁度暑くなってきましたし、よい機会で御座いました。広い砂浜で遊ぶのも気持ちの良いものですね」
愛須は真希の手を掴んで一緒に海へ。
「ん……一緒に泳ごう……」
折角なので真希はBBQの準備を結に任せ、愛須と遊ぶ事にした。
一緒に海に入り、ゆったりと泳ぐ。
「気持ちいいから……泳ぐの好き……」
その後も愛須は真希から離れなかった。
男性に対しては人見知りな愛須は男性が近くに来ればささっと真希の後ろに隠れる。
「あははー、男の子達も愛須ちゃんと仲良くしたいと思ってる筈だよー」
「そうなの……かな……」
愛須はポッと頬を染める。
統真とイヴは――。
「波打ち際で、水遊び、なの。……統真、一緒に遊ぶの……」
「よし、任せて! 全力でイヴちゃんの相手をするよ!」
「そこまで言ってないの……」
とは言いつつも海水をかけ合ったり砂浜で追いかけっこしたり。
ちなみにその際、海水に濡れて透けた白スク――イヴの幼くも一部成熟した肉体を統真はガン見。
イヴは終始無表情。しかし十分に楽しんでいる様だ。
啓音は……BBQの準備をする結の手伝いをしていたが「君も泳いできなよ」と言われ、折角なので海へ繰り出し皆に混ざって遊んだ。
「たまにはこういうのも良いかな」
「おっと、酒を飲む前に泳ぐのでござる。海に来て泳がぬとか、ありえぬのでござるよ。さて、ではいつものでござる」
エイネの水着はサラシ+褌。……水着?
「では、泳いでくるのでござる!」
ビシッと敬礼すると、海へ向かってダッシュ!
「うぅーみぃーっ!!」
海へどぼーん! と入ると、暫く泳ぎ回り、途中から素潜りに移行。
「海の中からこんにちはー! エイネでござるよー! 大きな魚を見つけたゆえ、捕まえて来たのでござる。これも一緒に食すのでござるよー♪」
なんと、でっかい魚を捕まえて帰還した。
ゆかりはTシャツを脱ぎ、海に浸かってのんびりと泳ぎを楽しむ。
「ふあ〜、この浮遊感がいいですねー。海水も心地よい……」
と、十分に楽しんだ後に戻り、上からまたTシャツを着て、BBQの準備の手伝いに入った。
●ハラが減ったらBBQ!
沢山泳ぎ、遊んだ撃退士達。そうなると当然お腹が空く。
という訳でBBQパーティー開始! 予め用意されていた物と、啓音が持ち込んだ飲み物も合わせて皆で乾杯!
「それにしても、肉も良いでござるがやはり魚介は良いものでござるなぁ」
エイネは……焼き上がった魚をもぐもぐしつつ、開いてきた貝にバターを載せ醤油を垂らす。
「くぅーっ、この匂い、たまらんのでござる!」
などとちょっぴり親父臭い事を言いながら香ばしく焼けた新鮮な魚介類に舌鼓を打つ。
「あ、そこの帆立焼けたのでござるよ」
只管飲み食いしながら、皆と談笑。
宮子は……ALとイチャイチャ。キャッキャウフフ中。
「これも美味しいよ? ALくん、はい♪」
程良く焼けたお肉を箸でつまみALの口元へ。
「宮子様、ありがとうございます。頂きますね」
ALはニコリと微笑み、ぱくり。
「大変おいしうございます」
「あははは……ちょ、ちょっと恥ずかしかったんだよー」
「そうですね……少し、照れますね」
顔を真っ赤にする宮子と、頬をぽりぽりとかくAL。
どう見てもラブラブカップルです。
愛須は引き続き真希と一緒にBBQを楽しんでいた。
「このお魚……美味しいね……」
「そうでしょー! 種子島の魚はさいっこうなんだから!」
真希は誇らしげに笑って仁王立ちしてみせる。
統真は……イヴの為に栄養のバランス考慮しながらせっせと取り分け。
「ほらイヴちゃん、お皿に盛ってあげたからね」
無表情にもくもくと食べるイヴだったが……どこか不満そう。
「どうしたの? 美味しくなかった?」
「……違うの、とっても美味しいの……。でも……統真、イヴの分取ってばかりで、あんまり食べてないの……」
イヴの大きな瞳が統真をじっと見つめる。
「……ん、イヴも、統真に食べさせてあげるの……」
自分の箸で彼のお口へ。イヴによる『あーん』攻撃!!
「え、えぇっ!? いや、僕はその……」
それを前にして統真は硬直してしまう。これは関節キスではないか!?
しかし……人前だが……彼女の好意を無碍には出来ない。出来る筈が無い。
彼女との関係を深めるチャンスだと思っていたのは誰だ? 自分だ! 勇気を見せろよ、男の子!
――という訳で統真は口を開いた。
「えぇっと、い、頂きます。あむっ!」
もぐもぐと咀嚼。
「……美味しい?」
イヴが顔を覗き込んでくる。
「もちろん! 凄く美味しいよ!」
にっこり笑う統真であった。
それからイヴは真希と結の方へとことこ。結は「仲が良さそうだね」と言ってきた。
「統真……? 色々お世話になってるお兄さん、なの」
結は缶ジュースを煽りながら「そうなんだ」と答える。
「イヴの身の回りのお世話、してくれたり……楽しい処、遊びに連れてってくれたり……」
「へえ、随分献身的なんだね、彼は」と結は言う。
「……真希と結は……んと、幼馴染……? 幼馴染って……どんな感じ……?」
イヴにはそういう人が居ないので実感が無い。それに結は「運命共同体って奴かな」と言い、微笑んだ。
ゆかりは積極的に手伝いながら、デジカメで撮影しつつ、BBQをつまみにお酒をぐびぐび。
すっかり出来上がった状態で真希や結に絡む。
「えへへぇ♪ 二人はどんな関係なんですかぁ?」
「だから幼馴染ですよぅ!」
と、真希は少し頬を染めて叫ぶ。
「あの後……どうです?」
啓音はしっかり食べながら、前回の依頼後の経過を結に尋ねてみた。
結の話によると反対派はすっかり大人しくなったそうな。
やはり現実で、血を流して戦っている撃退士の言葉が効いた様だ。
BBQの食材も残りわずかとなった時――海から『ソレら』が出現した。悲鳴が上がる。
「……はっ、ディアボロですか!? いけません、僕とした事が!」
手伝いに夢中になっていたALは反応が遅れる。
●VS蟹+触手
撃退士達はBBQを切り上げ、光纏。戦闘態勢へ。
敵は巨大な蟹数匹。その甲殻には多数の触手が生え、うねっている!
「む、KYな蟹さんはお仕置きだよ! 魔法少女マジカル♪みゃーこが叩き潰すにゃー!」
宮子は張り切り近接戦を仕掛けるも、ジョブチェンジにより戦闘能力その他が低下している事を忘れ苦戦。
隙を突かれてV字水着を鋏でばっつんと切られ、動けなくなった所を触手に捕まる。
「にゃにゃ!? 弱体化してたの忘れてたにゃ、みゃー!?」
「ここって……大きな蟹さんが出るんだね……」
愛須は危機感も無くのんびり。
「蟹さん……こっちだよ……」
とりあえず真希達を逃がす為囮になり、触手に捕まる。
イヴは弓を引いて攻撃。
「頑張って、倒すの……!」
しかし蟹は思ったより素早く――蟹の鋏捌きにより水着をズタズタに切り裂かれ、触手に捕まる。
***
ディアボロの奇襲によりあっという間に撃退士三名が捕まってしまった……。
宮子――ほぼ全裸となった彼女はスレンダーながらも女の子らしい肉体の全身を触手によってにゅるにゅる撫で回される。
「にゃあああ! いやあああ!!」
愛須とイヴ――幼い肉体でありながら豊満な胸を持つ二人は当然、そこを集中的に責められた。
にゅるにゅるとした触手が二人のたわわな果実に巻き付き、谷間にも侵入してくる。
「ひゃあああ……! くすぐったい……!」
「ん……んあ……!! ダメぇ……!!」
ALと統真。互いのパートナーは触手に弄ばれている!
「皆様は既に交戦中の様ですね。なんと、あぁいう物に弱い方、多くいらっしゃる様子です……ふむ」
「わあああ! 見ちゃダメだ見ちゃダメだ」
「宮子様も例外なくピンチの様ですね。では救援に向かいます。統真様も!」
ALは統真の手を引く。
「お二人は下がって下さいっ!」
啓音は真希と結を真っ先に避難させ、阻霊符を使用。
双子のルーン――小さな宝石の欠片を投擲して攻撃。
「物理攻撃の方は甲殻の隙間を狙ったら比較的ダメージあたえられると思いますっ!」
「拙者の、拙者らの食事は邪魔させぬのでござるー!」
エイネは翼を広げて飛翔、滑空と同時に接近して【炎閃】を叩き込む。
「そこへなおれ、焼いて食ってくれるのでござる!!」
一匹が燃え上がり、絶命した。
「え? 飲酒飛行? 大丈夫でござる、拙者全然酔ってないのでござるよ!」
「楽しい時間を邪魔する馬鹿は消えろ……消えろ……」
ゆかりは目元を暗くし、二挺拳銃を具現化させ敵に向け只管連射。
猛烈な射撃に耐え切れず、また一匹が沈黙。
「……そこまでで御座いますッ」
ALは【闇の翼】で海上を飛行し、護符の風刃で蟹の触手を狙う。
触手を断ち切り、宮子を救出。そして間もなくディアボロは全滅した。
ALに助けられた宮子……。
「宮子様、お手を」
「はふ、ALくんありがとうなんだよ……ぁ、きゃ!?」
全裸になっている事を思い出し、咄嗟にALがカバーに入る。
「……水着、切られちゃったし……着替えてくるの……」
イヴは裸体で堂々と歩き出そうとするが統真に止められた。
「って、と、統真……!?」
「そのままじゃダメ! 絶対にダメー!!」
***
静けさを取り戻した所で、ALはBBQの残りの物を片付け。
「僕、まだあまり食べてないのです」
そこへ結がこんがり焼けた魚介大盛りの皿を差し出してきた。取っておいてくれたらしい。ALは目を輝かせる。
ALが食事中、啓音は結とお話。
「なんか、色々大変そうですね」
自分の良く知る人達の同士の関係が結と真希との関係にとても近い様に思えたので、年上と理解しつつ、憐みを含んだ生暖かい眼差しを向ける。
「大変? そんな事ないよ。マキちゃんとは……なんだろな、一心同体みたいな物だから」
そう言って結は啓音としばし砂浜を歩いた。
***
海が夕焼けに染まった頃――
「ほ、本当に大丈夫なんですか?」
「落ちたら洒落にならないよ……」
「いいからいいから、二人とも自分にしっかり掴まってください♪」
ゆかりはそう言って真希と結を抱え、【闇の翼】を広げできる限りの高度まで上昇。
「ふふっ♪ 綺麗ですね♪ 種子島に住んでいる二人も流石にこの高度からの夕焼けは初めてでしょう?」
片目を瞑って見せるゆかり。真希と結は言葉を失い、上空からの景色に見惚れていた。
ゆかりも大きな夕日に目をやり、微笑む。その翼は……茜色に染まっていた。