.


マスター:てぃーつー
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/03/01


みんなの思い出



オープニング

●希望は散った……
 時計の針が無上にも真上を指す。
 2月14日は終わり、一縷の希望を抱いていた男たちの胸中を深い悲しみが覆った。
 たとえ、自作チョコでもらったフリをしようともこれから逃れることは出来ない。
 嗚呼……どうして義理チョコすらもらえないのだ!
 男たちの怨嗟の声はやがて嫉妬の炎へと変わっていく――

●潜入依頼
「ごめんね。ちょっと表では話しにくいことなのよ」
 と言って、斡旋所のお姉さんは、霧切 新(jz0137)を伴って別室にやってきた。
 部屋の中には今回の依頼を受けるであろう撃退士の姿がキミの他にもある。他の者もキミと同様で詳しい依頼内容を知らないのか、お姉さんに注意を向けている。
「実はね……困ったちゃんが大量に出始めてるみたいなのよ」
 要約するとこうだ。
 バレンタインデーにチョコをもらえなかった男たちが虚無感に囚われ、嫉妬に狂い始めているのだという。
「チョコを渡して恋人関係になった人もこの時期は増えるから、ね」
 そう、チョコをもらったばかり恋人まで!
 嫉妬に狂った男たちは負の感情を集め、暴発しようとしている。
「というわけで実際に問題を起こす前に大規模な取り締まりを行うことになったわけなの」
 学園側としては、まあ当然の行動だ。
「みんなにはホワイトリベリオンRという組織に潜入して、全員が集まる日取りと場所を調べてきて欲しいの」
 そして、そのまま取り締まりにも参加して欲しいというのが、今回の依頼だ。
「なるほど…そのホワイト何たらとかいう嫉妬団にはどうやって接触したらいいですか?」
「大丈夫。ここに現、ホワイトリベリオンRのメンバーがいるわ」
「「えっ?」」
 一同が意表を突かれるなか、お姉さんが指差したのは、新であった。
「うむ、リア充は敵だ」
「……なんでもチョコをもらえなかったから、ホワイトリベリオンRのメンバーに勧誘されたらしいわ」
「ああ、彼らとは深い友情で結ばれている」
「「………」」
 どうなんだ、それ?
 というか、だったら何でここにいるんだ!?
「妙なことを色々と教え込まれてきたらしいけど、情報には間違いなさそうよ」
「……本当ですか? 嘘を言っている可能性は?」
「大丈夫よ、カップラーメン10個で取引は成立したわ」
「「安っーーーーー!」」
「っていうか友情はどこへ行った!?」
「残念だが、人は生きるために食べ物が必要だ。許してくれ、ジョニー」
「「………」」
 貧乏苦学生にしてバイト戦士の新には友情よりも食べ物なのであった。
「まあ、こんなだけど情報は確かよ。で、ホワイトリベリオンRのことなんだけど」

 ・小規模なグループに分かれていて、指令は各グループのリーダーに届いている。
 ・白い三角の覆面に白いマントを着けて、正体がばれないようにしている。
 ・それぞれに真名(マナ)と呼ばれる名前で呼び合っている。
 ・接触が可能なのは、ジョニー、サルマン、ミト、セプターの4人。
 ・4人の活動場所はとある空き教室だ(カーテンで窓は塞いでいる)。

「こういうことが分かっているわ」
「…というか、友情を結んでいるんだから、そのまま彼に調べてきてもらえばいいのでは?」
「……悲しいことだけど、裏切る人はまた裏切るのよ」
 お姉さんはゆっくりと首を横に振る。
 ですよね、とうなずく撃退士たち。
「信用してくれないのか、残念だ」
「「誰が信用するかーーーー!」」
 強烈なツッコミを入れて、仕切り直し。
「とりあえず、みんなが頼りよ。判明している四人に接触してメンバーの全員が集まる場所と時間を調べきて」
 そして、それが分かればあとは取り締まりだ。
 風紀委員たちと一緒に捕まえる仕事が待っている。
「面倒な依頼だけど、放っておくと本当に暴走しかねないわ。学園の秩序を守るためにも頼んだわよ」


リプレイ本文


 目的の空き教室は寂れた木造校舎の中にあった。
「…困った方々ですね。被害が出ないうちに何とか致しましょう」
「ええ、頑張りましょう」
 氷雨 静(ja4221)と、龍仙 樹(jb0212)はそう言ってお手洗いに入っていく。
 ホワイトリベリオンR(以下WRR)の正装ともいうべき、白い三角の覆面に白いマントを着用するためだ。
 ちなみにそんな二人の後ろを、綿貫 由太郎(ja3564)がいささか複雑な気分で歩いていた。
(しっと団体って結構多いよな。おっさんも一応同類に所属はしてるんだが、今回はお仕事って事で勘弁して貰おう)
 心の中で言い訳しながら、由太郎も着替えに向かう。
(アー、ドウシヲウルナンテココロガイタムナー)
 うん、全然痛めてませんね。

 で、白ずくめになった三人は目的の空き教室の前にやってきた。
「…いるか? 同志たちよ」
 由太郎が扉を開くと、中には例の白ずくめが四人。
 彼らは一様に驚き、そして安堵の息をはく。
「霧切さんに紹介されてきたんですけど」
 静がそう言うと四人は気さくに話しかけてきた。
「同志、新の紹介か」
「はい…リア充に天誅を加える為に協力させてください!」
「いい心掛けだ」
 同志よ、と樹の手をがっしりと握る。
「チョコを貰えなかった悲しみ…目の前でいちゃつくカップル共…絶対に許せません!」
 だめ押しを加えると、四人から熱い涙がこぼれ落ちた。
「「その通りだ、友よ!」」
 魂が共感したと『勘違い』した瞬間である……ああ、無常。
「なるほど、見どころはあるようだな」
「……?」
 言葉に反応して、四人が由太郎へと視線を向ける。 
「君たちが思うよりも多いのだよ、しっとの心を胸に抱く反逆者達はな。かくいう私もその一人だ。詳しくは明かせぬが、とある反逆組織の一員だ」
「何と、別のしっと団の方なのですか?」
「その通り。君たちの活動を耳にして今日は様子を見にきた」
「「おおっ!」」
 沸き起こる感嘆。
 覆面からのぞく目には深い敬意が篭っていた。

 ガラガラ――

 と、ここで扉が勢いよく開いた。
 そして、またも新たな白ずくめが入ってきた……が、何やら様子がおかしい。
「お主らがジョニー、サルマン、ミト、セプターであるか?」
「……私がジョニーだが」
「俺がサルマンだ」
 順に真名(マナ)を告げ、ひと通り終わると入ってきた白ずくめも真名を言う。
「我輩はマク……マックスと呼ぶが良いのである」
 入ってきた瞬間から何となく思っていたが、事情を知る者はマクセル・オールウェル(jb2672)であると確信した。何せ、身振り(ポージング)とか、特徴的なもので……。
 まあ、当人はそんなことは気にもせず、
「孤児を救う為にここに来た、愛の天使の遣いである!」
 えっ、と一同が目を見張る中、マクセルはサイドチェストのポージングをとる。
「お主らを哀れに思った、とある者が作ったチョコを、お主らに届けに来たのが、このマックスである! さあ、孤児の元へ案内するがよい!」
「「えっええええええ!?」
 四人は目を見張った。
 次いでタイミングがタイミングだっただけに由太郎へと目を向ける。
「違う違う、おっさんは関係ない」
「うむ、こやつらは関係ないのである。先ほども言った通り、我輩はとある者が作ったチョコを、お主らに届けに来たのだ」
 そう言われても怪しさ全開だ。
「安心するがいい。これを作った者は心優しく美しき者である」
「……と言われても」
 ねえ?


 マクセルの騒ぎがあったため、潜入捜査は翌日に延びていた。
「僕、背も小さいし声もこんなだし女子扱いされるんです。女子からは貰えず逆に男子からは迫られる始末…」
 わなわなと身体を震わす演技をして、静が訴える。
「こんなイベント滅びればいい!」
「その通りだ!」
「リア充どもめ!」
 四人も普段は大人しくしているせいか、この手の話が出てくると止まらない。
「思えば幼いあの日から既にリア充どもと我らの差別はすでに始まっていた。一縷の望みを抱いて何も変わらぬ下駄箱や机の中を覗何事もなく登下校時の校門を潜りきった後の敗北感、それに比べて…比べてぇぇぇぇ!!」
 由太郎が更に火をくべると、四人は周りに集まって泣きながら同意する。
「……分かるぞ。お前の苦しみが」
「僕もだ……」
 ひしっと抱きついて、ネガティブオーラを周りに発散。
 樹はそれが収まるのを待ってから彼らの肩に手を置いた。
「皆さんはやはりこの間違った世の中を正す為の正義の活動をなさるのでしょうか?」
 四人が気を取られているうちに使った紳士的対応のスキルもあって、秘密のことがポロリと漏れる。
「もちろんだ。リア充どもに天誅をくだすべく、近く有名なデートスポットで活動を行うことになっている」
「それは……」
 何ともはた迷惑なと、続けそうになって樹は口をつぐみ。代わりに、
「わかりました。行動に出る際は是非私も一緒に戦わせてください、同士よ!」
「うむ、共に戦おうではないか」
 がっちりと握手。
 また、魂が共感したと『勘違い』した瞬間である。
「ちなみに同志は他にもいるぞ。決起前には集会を行うことになっている」
「すると同志の方々が集まるのはいつどこでですか?」
 遂に核心情報へと近づいて、静が少し身を乗り出した。
「安心しろ、3日後だ。お前たちも連れて行ってやる」
「その日が楽しみです」

 こうして日時が、次いで場所も判明した。
 風紀委員では、高峰 彩香(ja5000)や、アルクトゥルス(jb2305)といった、その日に取り締まりに回る人物が地図を前にして、それぞれの担当する場所や手順を決めようとしている。
「念入りに打ち合わせしておくとしようか」
「さて、どうしようかしらね」
 もうじき狩りが始まる――


 夜もだいぶ深けてきた。
 由太郎が時計を確認すると21時まであと少し。
 今頃、共に依頼を受けた者たちは決起集会が行われるという倉庫を取り囲んでいることだろう。
(自分の所属団体を考えると少し罪悪感がなくも無いかもしれないと言い切れない事も無きにしも非ず、かな?)
 時計を見つめながらちょっとだけ悶々する。
(まあうちん所はちーっとばかし色物要素が強いけどな、ここもそうだってんならそんなにムキになって取り締まる事もねえ気がしないでもないが、マジで洒落にならない被害が出るようじゃ拙いからなあ)
 暴走しないとも限らないのが、集団心理の怖さ。
 加えて、
(マクシスのあれを見るのもちょっとな)
 ふぅと深い溜め息をひとつ。
 さて、そろそろ地獄の釜の蓋が開く頃合いだ――

 同時刻。
 件の倉庫を見張っている風紀委員たちと共に、シェリア・ロウ・ド・ロンド(jb3671)たちの姿があった。
「バレンタインという素敵なイベントを良しとしない者がいるなんて……残念でなりません」
 憐れみはあれども同情は無い。
 嫉妬するだけならともかく、嫉妬の果てに人に迷惑をかけるなどシェリアは断じて許さないのだ。
「そうだね。カップルを狙った暴挙なんて許すわけには行かないよ」
 後の調査でWRRの計画はデートスポットを練り歩いてカップルを見つけ、周りを取り囲んで呪詛を浴びせるという……何とも恐ろしく、残念なものであった。
(チョコを貰えなかったくらいでそこまでしますか。そんなだから駄目なんでしょうに)
 アンナ・ファウスト(jb0012)が深く溜め息をつく。
 で、肝心のWRRはというと倉庫なの中で絶賛揉めていた。
「これはどいうことだ!?」
「罠だ、罠に決まっている!」
「そう言って俺たちを騙していたんだろう!」
 もう外に丸聞こえだ。
「そろそろ所定の位置につこうか」
 作戦が順調に進んでいるのを聞いて、彩香が声をかけると、
「ようやく出番ね」
 アルクトゥルスが待っていたとばかりに声を上げ、それぞれが所定の位置へと散っていく。

 倉庫の中では怒号が飛び交っていた。
 先頭の白ずくめの手には可愛くラッピングされた小箱とラブレターのようなものが握られている。
「ここには『以前から貴方をお慕い申し上げておりました。どうかこれを受け取って』と書いてあるではないか!?」
「だから身に覚えがないんだ!」
「白々しいぞ、ジョニー。恥を知れ、恥を!」
 必死に身の潔白を訴えているが、他の面々はシェリアの放った奸計にはまって聞く耳すらもたない。
「見損なったぞ、ジョニー」
「…うん、今の声は霧切さんか?」
「おや、その声は龍仙樹だな」
「どうして、こんなところに来ているんですか?」
「別のメンバーに誘われたんだ」
「…そういえば」
 小規模な集りごとにリーダーを置いて分散している組織だったと思い当たる。
「それにしてもまた誘われるなんて……」
「どうかしたのか?」
 それ以上、樹は何も言わなかった。
 彼なりの優しさであった。


「そこまでよ!」
 突如、倉庫に響き渡る声。
「何か問題を起こす前に、大人しくお縄についてもらうよ!」
「げっ! 風紀委員だ!!」
 彩香が声をかけたときには出入り可能な場所はすべて押さえられていた。
 逃げ場を探してWRRの面々は視線をさまよわせるが、逃げ場がないことが時間と共に明らかになっていく。
「しまった。今日が襲撃の日だったのか!?」
 新の上げた声に、静がすぐさま反応した。
「汝、緋なる者。其は焼き払う力。立ち塞りし者全てを貫け。ブリリアントレッドレイ」
 眩い光は一瞬にして倉庫の中を駆け抜け、新を一撃でノックアウトした。
 後に残ったのはぷすぷすと焼け焦げた哀れな姿だ。
「皆様もこうなりたくなければ大人しく捕まって下さいましね♪」
「「ひ、ひぃ……!」」
 何という魔法攻撃力!
「そういうことです。抵抗しても勝ち目はありませんよ」
 樹が白ずくめの衣装を脱ぎ去り、タウント使用して自分に注意を向ける。
「う、裏切者か!?」
「いえ、潜入していただけです」
 答えながら小天使の翼で飛び上がる。その手には捕縛用の網が持たれていて、一網打尽にするつもりだ。
 それでなくとも周囲にはまったく隙がなく、突破は不可能に見える。
「大人しく捕まって下さればこちらを差し上げます。ハッピーバレンタインv(義理でございますが…)」
「「おおっ!」」
 静が取り出した生チョコにWRRの面々は感嘆の声を上げた。
 チョコだ!
 チョコがある!
「そう、チョコが欲しくば大人しくせよ」
 アルクトゥルスが進み出て紙袋いっぱいに詰まったチョコを披露する。
「大人しく投降してくれればそれでよし、抵抗がやまない場合は仕方がない、このチョコが詰まった紙袋は購買部の買取所に持ち込むことにしよう」
「「ぬぅうううううう!」」
 激しい葛藤がWRRの面々を襲う。
 そんな中、ひとりの白ずくめが万感の思いを持ってチョコを受け取った。
「……許せ、友よ!」
「そうそう、それでいいのよ。あと、日本では貰ったら3倍返しが基本なのだっけ?」
 ぴく。
 葛藤していたWRRの面々が動きを止めた。
 もう活動を止めたんじゃないかっていうぐらいにぴくりとも動かない。
「「ぬぉおおおおおおおおお!!」」
 流れ落ちる血涙(イメージです)。
「ふざけるなぁああああ! 俺たちが欲しかったのはそんな物欲の篭ったものじゃない。少しでも少しでも俺たちへの思いが篭められていれば、篭められていれば……うぉおおおおおおお!!」
 WRRの面々は立ち上がった。
 本能のままに目の前の敵へと突き進んでいく。
「逃げてもいいことは……きゃあああ」
「危ない!」
 静に怒涛の如く群がってきたWRRの面々に、樹が網を投げる。
 形勢は何とも怪しい状況になってきたが、
「そのエネルギーを自分磨きやまっとうな交流に使ったりすれば多少はマシになるだろうにね」
 ようやく張り合いが出たと、彩香は少し嬉しそうだ。
 剣の腹で向かってきたのを一撃。
「げほっ…!」
「この程度? 嫉妬に狂った割には中途半端だねえ」
「何をっ!」
「嫉妬してても困難な状況になるとあっさり諦めちゃうような軟弱なのに女の子が惹かれると思ってんの!?」
 更に煽る煽る。
 そんな混沌の中に、アンナが慈愛に満ちた『ような』言葉を投げ込んだ。
「誰からもチョコを貰えず、逆恨みしか能のない哀れな非リア充諸君。慈悲深い私が可哀そうな貴方達にチョコを恵んであげる。だから私の胸に飛び込んでおいで。優しく抱きしめてあげるから」
 ぴたっと一部の者が動きを止めた。
 次いで、
「「ぜひぃいいいいいいいい!」」
 HENTAIたちがその姿を現した。
 すぐさま魔法を発射。
「ぶほぉおおお!」
「ぶひぃいいいい!」
「ロリコンな人にはご褒美でしたね、これ」
 やれやれと蔑みの視線を向けながら矢継ぎ早に魔法を撃ってこれを迎撃。
 ちなみにその近くではシェリアも奮戦中。
「あなたにわたくしを突き飛ばせるかしら?」
 退路を断つように立ち塞がって、白ずくめを正面から見据える。
 たじろいだところに渾身の蹴りを股間へと叩き込んだ。
「ぐぁああ……!」
「油断は大敵ですわ」
 にこりと笑って、そのまま異界から無数の腕を呼び出して束縛する。
「はい、確保完了……とはいえ、たくさんいますわね」
「そろそろ、オールウェルさんが皆に慈悲を与えてくれるはずですよ」
 と、アンナが言ったところで、おおとりを飾るようにモヒカンマッチョの天使マクセルが2階の窓から現れた。
「待たせたのである、孤児(みなしご:義理チョコも貰えないーズ)達よ」
 翼を広げ、大胆にポージングを決めながらWRRの面々を睥睨する。
「さあ、愛を受け取るのである」
 次いで、ばら撒かれるチョコの箱。
 拾った者たちは茫然としながらも、ついつい習性のように中身を確認してしまう。
「ぐあっ…!」
「なんだこれは!」
「我輩を象ったものである。素晴らしい意匠であろう」
 そう、チョコはいずれもポージングしたマクセルの形をしていた。計9種類(シークレットを含む)。
 恐るべきインパクトの前に次々と戦意を喪失していくWRRの面々。
「これぞ愛の力である」
「ええと……そうかな?」
 まあ、何はともあれ全員を捕縛。
「Mな人も満足ですね。おめでとうございます」
「ありがとうございます……ぐはっ!」
 ただ、アンナの周りでは蔑みの視線と義理チョコを受け取りつつ、しばき倒される者が絶えない。
 ……HENTAIって多いな!
 それはともかくとして、
「その情熱を想う人に向けようと思わないのですか?」
 彼らを更生させるようと、樹が話しかけた。
「その行動力があるなら、自分を磨いて、来年は自分が主役になれるように頑張れば良いではないですか」
「…と言われても」
 口ごもるWRRの面々を見て、樹が、
「…私も、勇気を出して行動したから、今こうして恋人がいるのです」
 静を抱き寄せて頭を撫でた。

「「………リ、リア充爆発しろ!!」」

「おや……?」
 説得できると思ったらまた噴火した。
「馬鹿ばっかりですね」
 アンナのつぶやきは怒声に消える。
 さあ、第2ラウンド――ファイト!


依頼結果