「さーて始まったねヤナギさん!」
鈴木悠司(
ja0226)の言葉に、ヤナギ・エリューナク(
ja0006)が肩をすくめる。
「ああ……だが、何が悲しくてオトコとニューイヤーを迎えにゃいかんのかは考えたくもねェケドな」
「そんなこと言って、ヤナギさん、どうせカウントダウンも寂しく独りだろうから一緒に過ごしてあげようっていう、俺の粋な計らいだよ」
超笑顔の鈴木にあきれ顔のヤナギ。
「言ってろよテメエ……。ま、悠司がそんなに寂しいンなら付きやってやってもイイゼ?」
「ま、何にせよ、どかーんと楽しもー! あ、ほらほらお酒もあるし、俺はビールっ♪ ヤナギさん何飲むー?」
「あ、俺はハイボールな〜」
「はい♪ じゃあ先ずは今年お疲れ様ーって事で、乾杯ー!!」
「かうんとだうん会場なう」
ソシャゲ厨ルーガ・スレイアー(
jb2600)、パーティにやってきた。
「うむ、楽しげなのはよいことだ、うんうん」
「やっほー! 大晦日だけど元気? あたいは元気よ!」
雪室 チルル(
ja0220)は早速料理を取って来て、会場の仲間たちに話し掛けて行く。
「京都での戦いも色々あったよね。あたいも何とか生き残れて何よりよ」
チルルが話し掛けたのは鈴野アイラ(
ja0360)とキャロル=C=ライラニア(
jb2601)。
「あら、京都も激戦だったようでしてね」
「キャロもはなしにはきいていますの〜」
「うん! あの天使達に負けないようにもっと強くなりたいわ! 聖槍だっけ? 結局現物はまだ見てないんだけど回収できたわね」
ヴェス・ペーラ(
jb2743)がメロンソーダのグラスを片手にやって来た。
「聖槍を手に入れて久遠ヶ原が一歩リードでしょうか」
「みんな楽しんでる? 学生の鴉乃宮だよ」
ネコミミネコシッポメイド服、ツインテールの鴉乃宮 歌音(
ja0427)がトレイにお酒を持ってくるりとターンして来た。
「こんばんは給仕さん」
(人間ってのはよくわからんが……こんなことするんだな。一年の終わりってのがめでてェのかわからんが乗っとくか)
悪魔のヴァルディア(
jb2575)は鴉乃宮のトレイから酒を取ると、「よお」と仲間たちに声を掛けた。
「学園に来て、面白いことはあったかヴェス」
「面白いことですか……早速天魔大戦がありましたし。楽しかったですよ」
そこでルーガは人間の参加者に質問してみる。
「ところで、人間に聞きたいのだが、としあけというが、じゃあ年が閉まるのはいつなんだ? 日が暮れてまた日が昇るのはいつも通りだろう、なぜこれがめでたいのだ?」
「それは、人間には時間の概念があるからじゃない?」
「ふむ……ところでお前たちは、私のような『天魔』を見ると、やはり殺したくなるのか?」
「人間はこれで色々順応しまして。仲間を殺したりしませんの」
「ほう……」
それからルーガは天魔の学生にも聞いてみる。
「貴殿は発信機をどこにつける派だ? 私はペンダントにしてみたが、どう思う?」
「あら〜おしゃれですの〜」
「……人間たちとはうまくやれているか?」
「まあまあですね。人界は広い」
「ところで貴殿もどうだ、私のやっているソシャゲをやらないか? 今ならキャンペーン中でレアアイテムが(以下略」
と、そこで、チルルが「決めた!」と叫ぶ。
「来年はあたいは天才って呼ばれるようになるわ!」
「具体的には何の天才なんだ」
「具体的に? ……えっと、数学頑張ったりとか?」
胸を張るチルル。
「さあさキャロルさん、行きまして。無くなる前に高そうなデザートを食べに行きましょう!」
「はい〜あいらちゃん」
会場の一角に、真紅のパーティドレスにコートを羽織った女性がいた。紅 アリカ(
jb1398)である。
「……さて、今年はここで年越しね……」
アリカはジンジャーソーダを飲みながら、適当に食事を取り、会場に目を向けていた。
と、肩を叩かれた。振り返ると、ヤナギがいた。
「よお、アリカ」
「……エリューナク君……こんばんは……」
「楽しんでる?」
「……ええ……エリューナク君は……」
「悪友と悲しく年越しですわ。ははっ」
「……そう……いいじゃない……悪友でも……」
アリカの口許が微かに緩む。
その様子を見ていた鴉乃宮。
「うん? 良い雰囲気? ちょっと邪魔したくなるな」
鴉乃宮はぺろりと舌を出した。
「よーしおいらは全皿制覇を目指す! リミッター解除、王虎雷纏!」
獅子堂虎鉄(
ja1375)は光纏した。
「かははは! 矢野隊士と雫隊士! 二人共、天魔大戦ではよく頑張ってくれた! 今宵は目一杯楽しもうな!」
「獅子堂さんも、お疲れさまでした。今年は色々な事がありましたが、来年は良い事があると願いましょう。先の作戦では、皆さん無事で良かったです。獅子堂さんも組の事は一旦忘れて楽しみましょう」
雫(
ja1894)が言うと、矢野 古代(
jb1679)が応じた。
「二人ともお疲れ様。俺の微力が役に立ったのならば、幸いだ。雫さんにはこうして話すのは初めてだな。矢野古代と言う」
「初めまして」
「二人とも食べたいものあるか? 良ければ取ってくるぞ。……虎鉄さんは充分そうだな」
すでに獅子堂の皿には料理が山盛りだ。
「武人は健啖家であれ! 強くなりたきゃもっと食べろ! スゲー美味いぞ!」
獅子堂はローストビーフを頬張りドヤ顔。
「雫さんはどうだ……て、あれ? どこかに行ってしまった」
「さて、おいらはおかわりに行くかな」
豪快に笑って、獅子堂は肉を取りにいた。
……が、そこには、雫が先回りしていた。
「お、雫隊士もおかわり――か! と!」
獅子堂のフォークの先から肉が消えた。雫が素早く奪い去ったのだ。
「残りも少なくなっていましたから……獅子堂さんは目上なのですから、年下の私に譲るのが道理と言う物でしょう」
「いや、目上なんだから……敬おう、な?」
と、雫は光纏すると、フォークを構えた。
「この皿は渡しません……!」
ここに肉争奪戦争勃発。
獅子堂と雫は、フォークを武器に、皿を盾に、肉の確保を目指して激しくバトル。
カキン! カキン! と打ち合う二人。
矢野は吐息。ふと思う。
「……そう言えば俺だけが天魔が居なかった時代を経験した人間か。随分になるな。もう……」
カキン! カキン――!
「甘いですよ! そんな大振りな一撃でお肉を取れると思わないで下さい」
雫は獅子堂のフォークを払って肉を奪い取る。
「私は育ち盛りなのですから、栄養が必要なのです。主に肉成分が!」
フォークを武器に、皿を盾に肉が舞う。超高速空中戦が展開。
「もらったぁぁぁぁぁっ!!」
雫と獅子堂のフォークが交錯する、その瞬間――。
「……ん。バイキングは。弱肉強食。早い者勝ち。そんな。遅い。動きでは。生き残れない」
残りの肉を奪い去っていったのは最上 憐(
jb1522)。
「……ん。バイキングは。戦場。あらゆる。手段で。食べ物を。奪う」
最上は奪い去った肉を瞬く間に平らげた。
「何ですって……!」
「伏兵にしてやられたあ!」
「……ん。皿に。乗せたからと。言って。安心するのは。甘い。胃に収めるまでが。バイキング。頂いて行く」
と、鴉乃宮が料理の皿を追加していく。
「ほいな。肉追加だ。肉争奪戦か……?」
「……ん。無くなった。おかわり。おかわり。大盛りで」
「賑やかでござるな〜。肉を奪い合うのに盛り上がっているようでござるな」
立夏 乙巳(
jb2955)は言って、肉を皿に取り分けていく。
「しかしこんな時は、やっぱりお酒が楽しみでござるね。こういう席には隠れた銘酒が出ているに違いないでござるよ」
立夏は並んでいる酒を見て回る。と、銘酒コーナーを発見。
「これは……各地の銘酒でござるね! 早速頂くでござるよ!」
とくとくとくとく……と、酒を次々と味わっていく立夏。
「ん〜ぷはあ! パーティはこれに限るでござるね」
「次は年越し蕎麦だな! だが北京ダックも捨てがたい……。うむ、両方行くか!」
「ってまだ食べるのか虎鉄さん!? せめて野菜も食べるんだぞ!?」
「かはははは!」
矢野は二人のためにプレミアムアイスを確保。
「プレミアムアイスか……雪室殿に教えてあげよう」
「え? 何々?」
「おいしそうなアイスがあるのだ。行ってみないか?」
そうして、無事に濃厚なアイスを堪能する獅子堂、雫、矢野、チルル。
最上はカレーに突進。みんながびっくりしているのを横目に、ルーを飲み干す。
「……ん。カレーは。飲み物。飲む物。飲料」
……やがてステージが解放されると、チルルはすぐさま上がった。
「さあ、あたいのかっこよさにしびれなさい!」
ステージ中央でバク天。
「やった! バク天が完璧に決まったわね! ……ちょっとー! なんでみんなニヤニヤしてるのよ!」
何ででしょう?
獅子堂も舞う。
「おりゃー! ダンスは得意だ! 空中三回転!(どや!」
「虎鉄さんは元気ですね」
矢野は、ダンスをしている人のために飲み物を手配していた。
ほろ酔い気分で立夏はステージに繰り出す。
「拙者はダンスを踊るのは初めてかもしれないでござる。周りの皆様に遅れをとらない様にしっかりしぇけなべいべーするでござるよ」
立夏は腰を振ってしっかりダンス。
「しぇけなべいべー♪」
「ふーむ……そういや、向こうにもパーティーとかやってそうな奴もいた気がするが、基本的に俺らには関係なかったしな。戦えればそれで満足って感じかね? 今でも変わらんが、多少は興味が出てきたな、人間ってもんに」
ヴァルディアが言うと、アイラがやってきた。お皿にはアイスとミートパイが沢山乗っていた。
「あれ? キャロルはどうしたんだ?」
「誘われてステージでして」
勇気が無いと言っていたキャロルは歌いながらくるくる踊っていた。
ルーガはソシャゲに夢中。スマホをいじり倒している。
「こういうのは見ている方が楽しいですね」
ヴェスもスパークリングアップルを飲みながら微笑んだ。
「しかしロックバンドのステージ、か。俺も此処へ来る前まではインディーズでカウントダウンライブとかしてたな。あそこで演奏出来ンのがちょっと羨ましいゼ」
「じゃあ行ってみるヤナギさん?」
「あ? 悠司何言ってんだ?」
「参加できないか交渉するんだよ」
「ておい! 参加? 交渉?? 良く言った……っ! ダブルベースとか超うきうきしねェ? あー交渉成功すりゃいいのに」
「じゃあちょっと行って来るね!」
鈴木はステージに上がってバンマスと交渉する。
……やがて戻って来た鈴木は笑顔。
「ヤナギさん、オッケーだって!」
「やり〜!」
「二人とも頑張って」
光は、楽しそうに二人に言った。
「光さん見てて。あ、良かったら、これ、飲む?」(笑顔)
と、鈴木はカクテルを取って差し出す。
「あ、ありがとう」
ヤナギも声を掛け、言った。
「俺らのステージ、其処で見てな(ウィンク」
二人は光が少し元気が無いことを察していたようだ。
ヤナギと鈴木はステージに上がると、鈴木がボーカルに入り、ヤナギがベースに入った。
「やあ二人とも、一緒させてもらっていいかな?」
鴉乃宮も上がって来るとマイクを取った。
「よし……行くか! 疾走感のあるヤツ、かますゼ! お前ェら、付いて来いよーーーッ(客煽り」
ヤナギは叫んだ。
「今年のカウントダウン、盛り上がってるねみんな最高ー!」
鈴木もマイクを一回転させてシャウトした。
鴉乃宮もギターをエア演奏で客席を盛り上げる。
「はい! JUMP!×8」
疾走感のあるリズムに音楽が変わると、ヤナギもそれにならってベースを弾いた。ロックが弾ける。
「みんなの元気はどこですかー! 明日の元気はどこですかー! 今ここにある! 俺たちの学園に!」
鈴木が歌いながら叫んで、ヤナギと目を合わせる。ヤナギは笑って、ベースを弾いた。客席に向かって歩き出すと、ステージの上からみんなを盛り上げるようにリズムを取る。ライブの一体感が湧き起こって会場を熱気に包みこむ……。
「……5! 4! 3! 2! 1! ハッピーニューイヤー!」
カウントダウン。数百発の花火が打ち上がる。
ルーガは「闇の翼」を使い飛翔! 花火を見届け速攻ソーシャルメディアで呟く。
――年明けの瞬間? 地球上にいませんでしたが何か問題でも? おなかいっぱいなう。パーティ楽しかったなう(*´∀`)。
呟きからルーガの感情が溢れ出す。
「新年よー! あたいの時代よー!」
チルルは花火に向かって叫んだ。
獅子堂は一閃組で新年を祝う。
「あけましておめでとう! 今年もよろしく頼む! かははは!」
矢野と雫も「おめでとうございます」と。
「今年はここに入学して色々考えて、まだ今後も悩むのだろうけれど、今年は良い年だった。来年も、よろしくお願いするぞ二人とも」
「飛んだらあのお花、とることできますでしょうか〜?」
キャロルの言葉に、アイラは微笑んだ。
「今年もよろしくお願いしましてキャロルさん」
「よおアリカ。おめでとさん」
ヤナギは、近くにいたアリカに声を掛けた。
「……おめでとうエリューナク君……」
アリカは微笑んだ。
ヤナギは乾杯。
「良い1年になるとイイな。楽しく……か。ま。何だかんだ言って楽しいと言えなくもねェ(笑」
「乾杯してばっかとか、気のせいだよ。うん。 今年も? 楽しく過ごせると良いよね。あ、ヤナギさん、ビールのおかわり持ってきてー」
「って、悠司こそ、ハイボールのお代り持って来いっつーの! ……はぁ、来年こそはオンナとニューイヤーを迎えたいモンだゼ(苦笑」
ステージでは、鴉乃宮がマイクを持っていた。
「はい! それでは一言どうぞ!」
まずはチルル。
「来年はあたいは天才になるわ! もちろん全てにおいてよ! 勉強も依頼も完璧になるんだからね! よろしくね!」
続いて最上。
「カレーは飲み物」
続いてヴァルディア――。
「えー、来年の展望? 敢えて言うなら……上級天魔と闘ってみたい? 別に勝てなくてもいいんだよ、戦いたいだけだから。きっとボロボロになるだろうが……面白そうだからな。やってみたいってもんだ。あとは……人間てのももうチョイ知りたいな。そんなこと覚えているかは疑問だが」
続いて獅子堂。
「ここにおいら達がいられるのは多くの犠牲があったことを忘れてはならない。犠牲を無駄にしないためにも護り、勝ち続ける!」
続いて立夏。
「早く連れ合いが欲しいー……でござる」
ヴェスはステージを見物していた、
「一人一人は面白い。集団は楽しい。そしてその中間は、見飽きないです」
それから、仲間達に年初めの挨拶をして回る。
「新年明けましておめでとうございます。去年は皆さんと一緒にいる時間は短かったですが、今年はよろしくお願いします」
降りて来た立夏は吐息した。
「はぁ……初詣も多分、一人なんでござろうねぇ」
「立夏さん! よかったらみんなで初詣行きませんか!」
立夏は振り返った。多くの仲間たちがいた。
……今年は、いいことあるかも?
(了)