「えーっと、それじゃあみなさん。最初の飲み物を注文しましょうか」
黒井 明斗(
jb0525)は千里を手伝って、みんなからドリンクのオーダーを取りまとめる。
鍋を見やりつつ、悪魔のルーガ・スレイアー(
jb2600)は、「鍋を食べる」と聞いてワクテカであったが。
「人間は思ったよりも豪快だな……よっぽど歯が強いのだな!」
ルーガは「鍋(自体)を食べる」と勘違いしていた。
そして悪魔のパルプンティ(
jb2761)。
「ヴォーネン会! 私、ちゃんと知ってるのです。『ネンマトゥ』とか『シィワス』と言う時期にナーヴェをつついて蛇を出す、って言うニッポンポンの儀式的なお食事会の事ですよね? 私ってば博識でしょ? ミンメン書房刊『ニッポンポン大百科』でお勉強しているので何でも知ってるです♪」
うきうきのパルプンティに人間の学生たちは肩をすくめる。
そうして最初の乾杯。葛葉は、八尾師 命(
jb1410)に乾杯の音頭を頼んだ。
「えーっと……それでは、今年一年、みなさんお疲れさまでした。今日は楽しくやりましょう〜。乾杯〜!」
「かんぱーい!」
キャロル=C=ライラニア(
jb2601)はオレンジジュースを掲げた。
かくして、忘年会がスタート。学生たちはさっそく鍋をつつき始めた。
きわどいミニスカサンタの服装でやってきたアーレイ・バーグ(
ja0276)。ぺぷちで乾杯すると動き始めた。
「サービスですよ?(たゆん)」
と、豊かな胸を揺らしながら、みなに御酌をして回る。
「お飲物をどうぞー」
アーレイは龍崎海(
ja0565)にむぎゅうと、体を押し付けて密着させる。
「やあ、ありがとうアーレイ」
龍崎はにこにこしてアーレイの御酌を受けた。
「さーて、肉食うぞ」
龍崎は言って、目の前のすき焼きに箸を付けた。
それからアーレイは移動して、黒井 明斗(
jb0525)の頭に胸を乗っけてみた。
「黒井さん飲み物をどうぞー」
「ア、アーレイさん……ありがとうございます」
「ほふー胸重いんですよねー」
むぎゅう、と、アーレイが体を密着させてくるので、黒井はジュースのカップに口許を沈めた。
「最近は天魔の人も新しく入ってきたから、こうやって交流できる場があるのは良いよね」
ソフィア・ヴァレッティ(
ja1133)は、海鮮鍋から魚を取り上げると、はふはふと口許に運んだ。
子供ビールを飲みながら、紅葉 公(
ja2931)はコラーゲン鍋の前にいた。
「どれもおいしそうですけど……!」
紅葉はコラーゲン鍋からだしを取って、野菜をたっぷり入れた。
「ではまず料理から頂きましょうか」
黒井はカレー鍋から肉とキャベツを取り分けた。
「今年一年お疲れさまでした」
鷹司 律(
jb0791)はしゃぶしゃぶの鍋から肉を取って、仲間たちに挨拶する。
「……本日は、このような席にお招きいただき、ありがとう御座いますぅ……。皆様、よろしくお願い致しますぅ……」
月乃宮 恋音(
jb1221)はコラーゲン鍋からしいたけやマイタケを取り分けると、味を確認。
「……ソフィア先輩どうぞぉ……」
恋音はソフィアのために具材を取ってあげる。
「ありがとう恋音ちゃん」
紅 アリカ(
jb1398)は海鮮鍋からぷるぷるのアンコウの皮を取り分けた。
「……ん、美味しいわね。やっぱりこの時期は鍋が一番ね……」
アリカは言って、野菜も食べる。
「……私はどちらかといえば、あっさり風味の方が好みなのよね……」
「アリカさん、鍋も結構良いだししてますよね〜」
「そうね……そんなにしつこくもないし」
命の言葉にアリカは頷き、引き続きアンコウの皮と野菜に箸を伸ばした。
「あ、どうぞ、私が取って差し上げますよ〜」
「……あら、八尾師さん……ありがとう……」
「いえいえ〜」
「ま、折角の宴会なんでパーっといきましょ♪」
天羽 伊都(
jb2199)は、すき焼きから肉をたっぷり取り分けると、豪快に口に運んだ。
「伊都さん、楽しんでますかー」
アーレイがやってきて、御酌をする。
「あ、どうも! アーレイさん綺麗ですね♪」
「あら、ありがとう」
アーレイはにっこり笑って、「このミニスカ、短すぎましたかねー」とスカートを押さえる。
「いや〜いいんじゃないですか〜♪ 嬉しいです!」
アムル・アムリタ・アールマティ(
jb2503)は、カシスオレンジカクテルを飲みながら、コラーゲン鍋をふうふうしながら沢山食べていた。
「コラーゲン、コラーゲン♪ いっぱい食べよぉっと♪ お肌のぷるっぷるを維持しないとだもんねぇ♪ ……確かめてみるぅ?」
アムルは、律に胸を突き出して見せる。
「アムルさんここからでも十分綺麗ですよ」
「あらぁ、律ちゃん可愛い♪」
ルーガも早速料理を口に運んでいた。
「うむ、うまいうまい。うまいじゃないか!」
手当たり次第がつがつ食べて行く。
「ルーガさん、凄い食べっぷりですね〜、お酒もどうぞ〜」
命がビールを注ぐと、ルーガは「おう」と一気に飲み干した。
「おしぼりくださいな〜!」
言ったのはキャロル。おしぼりでテーブルを丁寧に拭いて、キャロルは皿を元に戻した。
「それにしても、たくさんあってえらべないので、おすすめをくださいな♪ おやさいがすきです」
「それじゃあキャロルさん、どうぞ〜」
命は白菜と水菜をたっぷりよそってあげる。
「ありがとうございます命様」
にこりと笑うキャロル。
「それにしても沢山ありますね。どれと言われても、全部面白そうなものだから、少しずつ頂きますね」
ヴェス・ペーラ(
jb2743)はそう言って順番に鍋を回っていく。
パルプンティは何故か小指に箸をもう一本挟み、合計三本の箸を器用に使って食事する。
「このスキスキのナーヴェ、美味しいですー。シャビシャビはどうやって食べるですか?」
「これはですね……こうやって、しゃぶしゃぶっと、軽くお湯にくぐらせるんですよ」
律が教えてあげると、パルプンティはさっそくしゃぶしゃぶ。
「これは何の肉ですか?」
「和牛ですかね」
「え、『ワ・ギュウ』? もちろん知ってますよー。アレですね、ニッポンポン産の高級『ミノタウロス』のお肉ですよねー」
みんなの箸も進んだところで、
「ついかのおーだーはありますか」
キャロルはみんなから意見を聞いて店員に手渡す。それから配膳や下膳も率先して手伝う。
「キャロルさん気が付きますね〜」
「ははさまにしつけられましたの〜♪」
同じように命が別のテーブルからオーダーをとってきて、店員に手渡す。
「ではではみなさん、灰汁の方を取っていきますね〜」
命は各テーブルを回りながら、灰汁を取って、足りない食材の追加も頼んでいく。てきぱきと鍋奉行ぶりを発揮する。
「ぴざとペぷちがあればステイツは100年戦えるのです!」
ぺぷちのグラスを、たん、と置いたアーレイ。
「シングルヘールシングルヘール♪」
歌いだした。
「●●●●が毎年クリスマス中止の告知をしているのに何故クリスマスは中止にならないのですか!」
「はは……アーレイ先輩写真どうですか?」
「黒井さん♪ いいですよ」
「どうもです」
スマホでパチリ。
「ぼっち的なクリスマスの過ごし方、ですね〜」
伊都が言った。
「僕は因みに家族の所に帰るんだよ」
「クリスマスの予定はぁ、ん〜、多分街に出て遊んでるかもぉ?」
アムルは伊都に色っぽい笑みを向ける
「独りっぽいコに声かけてぇ、一緒に色んな場所で遊んでぇ……最後は二人でご一泊ぅ♪ 勿論、その時はしっぽりとぉ……うふふふぅ☆ ……ナニをするのかはぁ、オトナになってからのお楽しみねぇ♪ もっちろぉん、遊びとかに誘ってくれれば一緒にイk……じゃなくて行くよぉ〜♪」
「ぼっちですか? ひとりの方が自由ですのよ? 特に困っていません」
キャロルはにこっと笑った。
律は鍋をつつきながら言った。
「そう言えば、今年一番の思い出として、文化祭の時女装する羽目になり、自分では似合わないと思ってプライドを捨てて給仕役をしていたら、意に反して『似合いすぎている』と言われ、自分のジェンダーアイデンティティに疑問が生じた、何て事がありました。今となっては笑い話ですが」
パルプンティは鍋を移動。
「華麗ナーヴェですか? ををを!? 不思議と食欲をそそる香りのナーヴェですね? でも汁が服についたらおちにくそう。これは上級者向けナーヴェに違いないです」
退避するパルプンティは、カニ鍋へ移動。
「蟹のナーヴェ、超美味しい♪ で、こっちは……!? 毒魚のナーヴェとは仰天! 『毒を喰らわばサラダで』って言うそうですが、ニッポンポンではナーヴェでも食べるですか……」
そこでパルプンティ、ビールを注文。
「私にもアビスビールくださぁい♪ え、年齢? 悪魔には訊いちゃいけない事があるのですよ。クフフフフッ」
「学園生活にはもう慣れた? あっちにも学校みたいのはあったと思うけど、異国交流どころか異界交流だしね」
龍崎は天魔の学生たちに聞いてみる。
「これから神器争奪とかで故郷と争うことが多くなる。それがつらいならちゃんと言ったほうがいいよ。理解しあう為に学園は受け入れたわけで、戦わせる為に受け入れたわけじゃないんだし」
アムルは思案顔で応えた。
「堕天してから結構経つけどぉ、やっぱり人間界って楽しいトコだよねぇ♪ 天界は真面目な人達ばっかりで退屈だったしぃ……こっちでは毎日色んな人に会えて色んなコトができて、とっても楽しいよぉ♪ 悪魔のコ達とも普通にお付き合いできたりするしねぇ〜♪ でもボク戦うのはあんまり好きじゃないしぃ……それよりはぁ、これからもこぉやって色んなコといっぱい仲良くしたいなぁ〜♪」
翼に視線を向ける。翼はかーっと赤くなった・
ルーガはスマホをいじりながら、
「うむ、いろいろな娯楽があって面白いな! これでは人間が退屈する隙もないな! 特に……そーしゃるげーむはいい! 実にいい! 今年はまだ始めたばかりだからランキング上位には行けなかったが……来年は依頼にもびしばし入って金を稼いでだな! そして課金をしまくり、ランキングトップ10入りを目指すぞ! ――ああ、神器争奪戦か? この身体だしな……後方で貴殿らを応援しているぞ、……ソシャゲしながらな!」
「他の人たちはどうなのかな」
ソフィアも話しに乗っかって来た。
「ええと〜」
キャロルは小首を傾げた。
「人と天魔は、視線が痛いときもありますね〜。思想や生きる為に必要なモノは人間同士でも違う。悪いことをする人が悪いのです、人間も犯罪者が悪ですよね? 願わくば犯罪者と一緒にしないで欲しいのです〜」
ヴェスは鍋をつつきながら、
「料理は娯楽として向こうにもあったけど、こちらはこんなに種類が豊富だから、楽しいですよ。もちろん人の社会や学園での生活も、ですけど」
と答え、神器争奪戦については、
「今更戻れるあてもないし、来れば戦いますよ。逆にお伺いしますが、貴方がたは天使や悪魔の下で働く人間、確かシュトラッサーやヴァニタスと戦う覚悟はあるんでしょう? それと同じことです」
ところで、と切り返すヴェス。
「人間の友人の話だと、人の話に耳を傾ける天使や悪魔はそのまま各世界に留まった方がいい事もあるみたいですね。交渉のできる相手が対立する陣営にいないと戦いを一時でも終わらせる事が難しいから、だとか。貴方がたはどう思います?」
「……天魔は人間と交渉するつもりがあるのかしら……?」
アリカが問うと、ヴェスは「今は難しいでしょうね」と肩をすくめた。
「みなさん盛り上がってますね」
黒井がやってきて写真をぱちり。
と、ソフィアが話題を転じて言った。
「今年は、自身の魔術の勉強とか修練については結構できてたんじゃないかなとは思うけど、イベントとかへの参加はもっと積極的にできたんじゃないかなーって思う」
紅葉は「そうですね〜」と頷いた。
「今年も色々依頼に行きましたが、反省も多かったですね〜。まだまだ力不足で……一人で出来ることなんてちっぽけですが、でも、もっともっと強くなりたいです」
「ソフィアさん、紅葉さん、写真お願いしますね。律さん、シャッターお願いできますか」
「いいですよ黒井さん」
律はシャッターをぱちり。
「神器争奪戦ですけど。僕は仲間を無事に帰らせる事しか考えてないです。だって、僕等が誰も死ななかったら負けませんよ?」
黒井は言って、律からスマホを受け取る。
そこで、恋音が口を開いた。
「……その……このような席において、おたずねするようなことではないかもしれませんけれどぉ……。ダアトの心得や技術について、ご教授願えませんでしょうかぁ……?」
「ダアトの戦術ですか……基本的には前衛の後ろでの火力支援ですよね。使い勝手の良いスキルは……射程が短く運用に工夫が求められるけれど、特殊効果が強いスタンエッジ、命中と使用回数に優れるライトニング、高次元でまとまっているマジックスクリュー。範囲攻撃はファイアーブレイクあれば事足りますし……防御は緊急障壁を強化するとかなり安心できますね」
アーレイは言った。
「ダアトに限りませんが、生き残る一番の方法は分不相応な敵と戦わないことですね」
「ダアトは物理方面に弱くて、スキルで補強するにしても限界があるから、『支えあう』のがとても重要だと思ってるかな。前に出てくれるからこっちは攻撃や支援に重点を置くことができて、前に出てくれてる人を助けることができる。だから、攻撃もそうだけど、どういう風に動けば、どういうスキルをどのタイミングで使えば前衛の人の助けになるかっていうのには気を使ってるつもり」
ソフィアの言葉を、恋音はノートにメモしていく。
「みなさんの言葉、参考になりますね。私も後衛から前衛の方の支援をする形が多かったですね」
紅葉も言った。
龍崎は、日向翼の隣に座った。
「翼、大丈夫か。神器争奪で大動員をかけるって話じゃないか。つまらないことで死んでいられないだろ」
「ありがとう……龍崎先輩」
「……あの、アーレイ先輩、龍崎先輩、以前はお世話になりましたぁ……」
恋音はやって来ると、アーレイにピザ、龍崎にマフィンを手渡す。
……かくして宴会も締めに入る。それぞれの鍋に雑炊やうどんが投入される。
それから最後に、恋音がデザートの手作りプリンをみんなに配る。
「……みなさんどうぞぉ……」
「恋音ちゃんの手作りプリンはお土産にテイクアウトぉ♪ 出来れば恋音ちゃんのコトもお持ち帰りしたいなぁ……なぁんてぇ♪」
アムルが言うと、葛葉が「こらこら駄目よ」と恋音を守る。
――最後に全員で記念撮影。黒井がマスターにシャッターを頼んで、写真を撮ってもらう。
「一足す一は――」
パチリ!
「ありがとうございます。それじゃあ、写真送りますので、欲しい方はアドレス交換しましょう」
黒井はみんなとアドレス交換。
忘年会は無事に終了し、学生たちは楽しい思い出を胸に仕舞い込んで解散したのだった。