ラブコメ推進部の二人、月乃宮 恋音(
jb1221)と袋井 雅人(
jb1469)が教室に姿を見せた。
サンタコスの宮部ヒナ(jz0062)は、振り返った。
「先輩方、どうされたんですか?」
「……ヒナさんが愛を届ける活動をぉ……されていると聞きましてぇ……ラブコメ推進部の宣伝もさせて頂けないかなぁと思いましてぇ……」
「ラブコメ推進部の活動とは大いに共感するところがあります! 宮部さんの企画はとても良いと思います!」
「それは嬉しいですね♪」
ヒナは二人を教室に招き入れた。
それから十分後……。
サンタコスをした月乃宮と袋井が姿を見せた。
「……ちょっと……きついですかねぇ……」
姿を見せた月乃宮。サンタコスがきっつきつ。胸元に太もも、煩悩を刺激するには十分な姿だった。
「よく似合ってますよ恋音!」
袋井は嬉しそうだった。
「……雅人さんにそう言って貰えると……嬉しいですねぇ……」
「はいは〜い。ラブコメ推進部のお二人が来て下さいました〜☆ 心強いですね!」
「ヒナさん素敵な企画だね〜。参加できてうれしいよ」
ソフィア・ヴァレッティ(
ja1133)が笑顔を見せた。ぎりぎりのヘソ出しミニスカサンタコスをしている。
「先輩〜☆ 可愛いですね! サンタコス似合ってますよ!」
「ありがとう〜♪ でもちょっと恥ずかしいかな」
日向翼がソフィアを案内する。
「ソフィア、これなんかどう? ……君のツインのロケットだって! あいつ〜まじだよ〜!」
「駄目だよ翼さん。翼さんだって好きな子の一人や二人いるでしょう?」
「ちょっとちょっと先輩方〜、恋の話しは後にして、今は文化祭に専念しましょう〜♪」
「ヒナさんも混じりたいんじゃないの?」
「てへ、ばれちゃいました〜?」
「しかし……大挙して押し寄せた男子生徒たちと言うのは気がかりだな……」
言ったのは鳳 静矢(
ja3856)。今は普通のサンタコスをしている。
「鳳先輩……サンタコスでもかっこいいですねえ……」
ヒナが見とれていると、ソフィアが突っ込んだ。
「鳳さんには奥さんがいるんだよ〜☆」
「でも……かっこいいのはかっこいいです! 鳳先輩〜、写真撮ってもらっていいですか〜。ソフィア先輩! シャッターお願いします!」
ヒナはソフィアにスマホを渡すと、鳳と並んで、ピースサインをした。
「宮部も調子のいい奴だな」
「鳳先輩のファンクラブがいたら、殺されそうですけど〜、これも記念ですよ♪」
パチリ。
ヒナはサンタコスの記念写真に御満悦。
「うわ〜、やったー! 歴戦の勇者とツーショット!」
「なんつーミーハーな……」
ハイテンションのヒナに翼が呆れている。
「そうだ! せっかくみんな集まったんだし、記念撮影しておきましょうよ! 何かこの後ばらばらになっちゃいそうだし!」
ヒナは、セレス・ダリエ(
ja0189)とユウ(
jb5639)にも呼び掛けて、記念撮影をしておく。
ユウキがヒナのスマホを預かって、一同記念撮影。――パチリ!
「ところでこれはどう思います先輩〜?」
宮部ヒナ(jz0062)は、セレスに指輪の入った箱を見せた。セレスも今や完全にサンタコスしている。
「……これは……咲森先生へのプレゼントですね……大事そうな感じではありますが……私は他の方の……主に手紙などを届けますね……」
セレスは言って、事務方のユウキに歩み寄った。
「…………」
セレスがユウキの前にやってくると、彼は面白そうな目でセレスを見た。
「セレスちゃん行ってみるかい〜? 何が良い? 男から男へ、女から女へ、男から女へ、女から男へ……選択は自由自在」
「別にどれでも良いのですが……」
「よし! じゃあこれだ! 男から男へ!」
「分かりました……行ってきます……」
セレスは手紙を受け取ると、教室を後にした。
「ほんとに行っちゃったよセレスちゃん……断っても良かったんだよ〜」
「私は、咲森先生へのプレゼントをお届けしましょうか」
ユウがやってきた。
「ユウ先輩もありがとうございます! サンタコス似合ってますよ!」
ユウはにこりと微笑んだ。ユウのサンタコスも十分色っぽくてセクシーだった。綺麗な足に美しい脚線が表れている。
「咲森先生へのプレゼントは、大変な量ですね。これは届けるのが大変そうですね」
「いや〜はは……これは邪悪な贈り物ですよ〜」
「邪悪? プレゼントがですか?」
「雪村先生から咲森先生へのプレゼントを、うやむやにしてしまおうと言う悪意のある、ダミー攻撃だな」
鳳が言うと、ユウは「はて」と首を傾げた。
「悪意のあるプレゼントというものがあるのですか?」
「もてない男たちの執念がこもっている可能性がないとは言えんからな……」
鳳はプレゼントの山を見上げた。
「思いは思い。こんな沢山の思いがあるなんて、咲森先生は生徒から慕われているのですね」
ユウはぽんと手を打った。
雪室 チルル(
ja0220)は、文化祭を満喫しながら、サンタコス倶楽部の近くを通っていた。
「ん? 何あれ?」
チルルは、教室の壁に耳を当てているブラックサンタたちに近づいて行った。
「あんたたち何してんの?」
「うわ!」
「おお!?」
チルルは身構えた。
「ま、待て! 落ち着け! 俺たちの話を聞け!」
「聞いてやるから言ってみな」
「実は、雪村先生が咲森先生をストーカーしている。先刻、雪村先生が、ここのサンタコス倶楽部の生徒達に……ゆ、ゆ、指輪のプレゼントを託したのだ! 咲森先生へ!」
「…………」
チルルは少し考えて、「えー!」と大声を上げそうになって、ブラックサンタ達に口をふさがれた。
「分かっただろう? 今この中で起こっていることが。このままでは咲森先生は大変なことになってしまう。そのために咲森先生に気が付かれない様に悪の野望を打ち砕かなくてはならない!」
かくして、チルルは黒いサンタに落ちた。悪を滅ぼすために。
「状況は分かったわ。私に出来ることなら何でもするわ!」
チルルはブラックサンタと作戦を打ち合わせると、かつらとカラーコンタクトを付けて変装し、サンタコス倶楽部へ入って行った。
「はーい♪ 中等部の夏室チロロよ♪ ちょっと、友人からの代理で、プレゼントを預かって来たの。宮部、預かってくれない?」
「あんた雪室じゃないの?」
「な、何言ってんの! はい! いいからこれ!」
チルルは、プレゼントの袋をヒナに預けた。
「な〜んか怪しいわね〜?」
ヒナは言いながら、袋を開けた。その瞬間、袋の中に入っていた発煙手榴弾が起動し煙を吹き出した。
「きゃああああああ!?」
「何だ!?」
そこへガスマスクをしたブラックサンタたちがなだれ込んで来る。
「ふーはははー! 宮部ヒナ! 貴様の思惑! 我らブラックサンタが叩き潰す! 貴様の思い通りにはさせん! 愛は死んだ!」
ブラックサンタ達はみんなの本物のプレゼントを強奪していく。
「ちょ……! 待てこの!」
飛びかかったヒナが投げ飛ばされる。
「おっと」
鳳がキャッチした。
ブラックサンタたちは暴風のように逃げて行った。
やがて煙が晴れて来る。
「ちょっと! あんた!」
宮部は、気絶している振りをしているチルルを揺さぶった。
「あ……う……」
「あ、う、じゃない!」
「ああ……! あ!? プレゼントをブラックサンタにすり替えられた! 宮部! あんたのせいだからね! プレゼントを取り返してよ!」
「言われなくても取り返すわ! おのれブラックサンタ……! やってくれるわね! ただで済むと思うなよ!」
さて、目的の教室へ到着したセレスは、男子生徒を見つけると近づいていく。
「……すみません、サンタコス倶楽部です」
「ん? サンタコスさんですか? 何か用ですか?」
振り返ったのは、きらきらした顔の美少年だった。
「……これを、……さんから預かっています」
セレスは手紙を差し出した。
その時――!
教室にブラックサンタがなだれ込んできた。
「ふははー! 待てサンタコス! その手紙、無事に届けるわけにはいかん!」
「……あなた方は……ブラックサンタ……妨害するつもりですか?」
セレスは首を傾げたが、瞬時に状況は理解した。
「話しは早い! もらったあ!」
ブラックサンタは加速した。
と、セレスは、ぴっ、とブラックサンタに手紙を差し出した。
「ブラックサンタの皆様へも……愛をお届けします。私からのラブレターをどうぞ。ただし、内容は無いよう」
「む、むう!」
「家内安全だと?」
「やったー、サンタコスからラブレターもらっちゃった」
「喜ぶな! む? 待てサンタコス!」
セレスは足を止めて、お辞儀した。
「みな様お忙しいようですから……これで失礼いたします。私も忙しいので――」
「何とか全部は奪われずに済んだね」
「……仕方ありませんねぇ……これが無事で良かったですねぇ……」
月乃宮は雪村先生のプレゼントを持ち上げた。
「無事でしたか。恋音、それだけは何としても届けましょう」
「ブラックサンタの方々も、報われぬ思いに、身を焼かれる思いなのでしょう……悲しいですね」
ユウはそっと眼がしらを押さえた。
「なんか違う気がするけど……あれ? 鳳先輩は?」
鳳はいつの間にかいなくなっていた。どこに行ったのだろう……。
そして、一行は残りのプレゼントを持って、教室を出発した。
「文化祭だってのにねえ……歪んだ思いで行動することしかできないなんて、幸せを分けてあげたいよ」
ソフィアはそんなことを言いながら、プレゼントを手渡していく。
「あいた!」
と、宮部はすてーんと転んで、ひっくり返った。プレゼントが転がり落ちる。
「何よこれー」
廊下にビー玉がばら撒かれている。
「ひっひっひ♪ 邪魔成功やな!」
出現したのは、ブラックサンタの木瀬 陽愛(
jb7790)。
「あ、あんたー!」
宮部が前に出る。
「おっと! そうはいかんで!」
木瀬は発煙筒を次々に投げると、煙を充満させていく。
「ウィンドウォール!」
ソフィアが風を巻き起こす。煙が巻く。
「うわ!」
宮部の顔面に木瀬が投げつけたパイが命中する。
「そーれそれそれ! パイ攻撃はいかが〜!」
木瀬は次々とパイを投げて来る。
「Fiamma Solare!」
「そうはさせません!」
ソフィアとユウはパイを叩き落として行く。
「きゃあ!」
チルルの顔面にもパイが命中する。
「こらー! 何すんじゃい!」
「ひっひっひ♪ まだまだあ! ブラックサンタのみなさ〜ん!」
木瀬が言うと、布をかぶって壁に擬態していたブラックサンタ達が姿を見せる。
「ぬはははは! ブラックサンタクロースキング見参!」
「食らえ! ビー玉&パイ攻撃連弾!」
木瀬ら、ブラックサンタが最大限の攻撃に転じる。それらは宮部と、なぜかチルルに向かって投げつけられた。
「きゃあ!」
「わわー!」
宮部とチルルはパイに埋もれた。
「Catene di fiori! スリープミスト!」
「やむを得ません……薙ぎ払いっ」
ソフィアとユウが反撃。ブラックサンタを無力化する。
「これ以上先へは行かせん!」
キングが立ちはだかる。
と、月乃宮が進み出て、ぱらぱらと自作の悪魔の手帳をめくっていく。
「……えと、あなたはラブコメ推進反対の……さん、ですよねぇ……彼女いない歴……実年齢……誕生日は19××年、×月×日……大好きな人は……」
「待て待て! それ以上言うな! やめろ!」
「……止めて欲しければ手を引いて下さいねぇ……」
「おのれ……」
「構うことは無い! 部長の正体などどうでもいい! 行けー!」
他のブラックサンタたちが突撃した。
直後――!
「とおうっ!」
正体不明の紫サンタ――鳳のパープルサンタクロースが出現! ブライトチェーンをひと振りして、ブラックサンタ達を縛り上げた。
「文化祭を機会にメッセンジャーに託して普段伝えられない愛を伝えようとする慎ましやかな心を踏みにじるお前達を許さない! お前達の悪巧みは既にお見通しだ……! このパープルサンタがお相手しよう」
「ぬわあああ!」
「今だ! 行け! 愛のサンタクロース! ここはパープルサンタが引き受けた!」
「あ、ありがとう!」
宮部達は脱出したが。
「そう簡単に逃がせへんで〜!」
木瀬ら、まだ残党がパイを持って追撃してくる。
ソフィアと月乃宮が殿を務める。
「物を贈られるって嬉しいでしょ? だから、邪魔しないで貰えると嬉しいな」
「……雅人さん……後は任せて下さい……ここは死守しますねぇ……」
チルルも含めた四人は、追撃を振り切って走った。
「くっ、ごめんなさい、恋音!! この指輪だけはなんとしてでも咲森先生に届けて見せます」
袋井はきらめく涙をぬぐった。
鳳パープルサンタは発煙手榴弾で離脱する。
そうして――。
宮部、ユウ、袋井、チルルらは、咲森光(jz0159)のところへやってきた。
ユウが、事情を説明して、プレゼントの山を置いた。
「光先生、先生を慕う人達からの想いを届けにきました。この中の全てが、とは言いません。けれどこんな機会でなければ本当に想いを伝えられない人もいると思います。私が出来ることなら何でも手伝いますので、できれば一つ一つ目を通してあげて下さい」
「あなたたちは良い子ねえ。文化祭を楽しんでね。ま、プレゼントは目を通しておくわねー」
「咲森先生、雪村先生からのプレゼントです」
袋井が進み出た。雪村先生からのプレゼントを差し出す。光は箱を開けてびっくりしたように指輪を見たが――。
「ブラックサンタ見参!」
変装を解除したチルルがブラックサンタに変身。
「その指輪! もらったあ!」
チルルは指輪をひったくると、逃走した。
「何を〜! まだいたのか! 待てえ!」
袋井が追撃する。
「やれやれ……」
光は吐息した。
「雪村先生とは飲み友達だからねえ……て言うか、いきなり指輪渡されてもさあ……ちょっとねえ……どうしよっかな」
「先生、それじゃあ、私たちは、失礼しますね」
ユウと宮部は、職員室を後にする。
「何だってー!」
チルルは袋井からきちんと事情を説明されて、目を覚ました。
「じゃああたしは……ブラックサンタに騙されたの!?」
「そう言うことですよ!」
「ちくしょー! あいつらー!」
チルルは袋井とともに、ソフィアと月乃宮が相手をしていたブラックサンタ群のところへ戻った。
「おい! あんたらー! 騙したなー!」
チルルは突撃した。
「恋音!」
泣き崩れている月乃宮を見て、袋井が燃え上がる。
「おのれブラックサンタ軍団め許すマジ……、ひとり残らずこの私が昇天させて差し上げますよー!!」
愛のサンタの逆襲が始まる。
と、宮部のところへ、普段着の鳳が姿を見せる。
「先輩?」
「……あー……ちょっとこの手紙を届けて欲しいのだが……届け先は……私の妻だよ」
宮部は手紙を受け取ると、「了解!」と笑うのだった。
愛は勝ちました?