さて、スノーマンをさくっと倒した撃退士たち。平和が戻ったゲレンデで、営業と授業が再開。
「とんだ雪ダルマ騒動だったわね」
「ああ……そうだな。まったく空気を読まない天魔だ」
レストランにて、藍沢 葵(
ja5059)の言葉に相槌を打つ伊達 時詠(
ja5246)。二人はビーフシチューをオーダーしていた。
「でも、来て良かったな、葵。こうして余計なことを考えずに葵といられるだけで嬉しいよ。スノーボード、楽しもう」
「ええ」
伊達の言葉に笑顔を浮かべる藍沢。
それからゲレンデに戻ると、二人で雪だるまを作る。
「雪だるまを作らないとね。まずこれを作らないといけない気がするの」
「動き出すなよ、雪だるま」
「まさか」
藍沢は伊達の言葉に笑った。
フラッペ・ブルーハワイ(
ja0022)は、コテージの近くに雪だるまを作っていた。
「ふう……まあ手ごわかったけど、何処か可愛かったスノーマンへのちょっとした供養なのだ」
スキー実習に参加したブルーハワイであったが、インストラクターの指導をすぐに習得して逃げてしまう。
「やれやれ……久遠ヶ原の学生さんは……」
「雪だ! 山だ! ゲレンデだー!!」
夏木 夕乃(
ja9092)はゲレンデに飛びだした。
「ふむふむ。正しい板の乗り方は斜面と体が垂直になるように……そして後ろに体重を……かけちゃ、ダメ!?(気づくのが遅かった)」
初心者にありがちでがあるが。
「わっ、わっ、わっ、アーーーーーーーーーーーー……!」
斜面をペンギンのように爆走していく夏木。
「スキーは初めてで……少し怖いですね……」
海城 阿野(
jb1043)はゆっくりと滑っていく。初めてのスキーに緊張。
「ハの字で止まる……ハの字……!? ええ!?」
「どいてどいてー!」
夏木のオレンジ色のスキーウェアが突進してくる。
「う……わあああああああ!」
「きゃああああああ!」
激突。二人ともひっくり返って雪にまみれた。
「す、すみません、っす」
「あはは……びっくりしましたねえ……大丈夫ですか夏木さん」
「いや〜、雪山は危険がいっぱいでござるねえ」
ぱちりと、スマホで二人の写真を撮っておく静馬 源一(
jb2368)。
「それにしても、この雪は凄いでござるねえ。こんな雪山に行けるのは依頼だけでござるねえ」
初級者コースを滑り下りていくと、静馬は地元の子供たちと交流。撃退士と言うこともあって、子供たちから手荒い洗礼を受ける。それから雪合戦をしたり雪ダルマを作ったり。
アッシュ・エイリアス(
jb2704)がゆっくりと滑走していく。一通りコースや広場を安全確認を兼ねてのんびり巡る。
「ガキ共が怪我しちゃ、寝覚め悪りぃからな。おぃ、こらそこ! あぶねぇぞ!」
実年齢130歳前後の悪魔エイリアス、人間は子供みたいなものだ。
無事に滑り降りてきた楊 礼信(
jb3855)。
(……父さんも母さんも忙しいから、遠出してのスキーなんて夢のまた夢だったけど、こうやってスキーを楽しめるなんてちょっとラッキーかも。次に来た時に姉様達に自慢出来るように頑張らないと)
「楊さん、慣れたっすか?」
「はは……もう大変でしたよ。ストックや板が飛んじゃって」
夏木と海城がやって来る。
「あはは……何か大変だったみたいですね! でもすぐに慣れますよ! 天魔と戦うよりは安心安全ですしね!」
「それは言えてるっすね」
「ちょっとドリンク買いに行きませんか」
三人は売店でエイリアスと遭遇。
「いいですねえエイリアスさんは。凄く上手いじゃないですか」
「まあ無駄に長く生きてるとなあ」
そこで、静馬がまたスマホでパチリ。
「自分も少しは上達しないとでござる!」
「写真後で下さいっす――」
「そうそう、上手上手。良くなってきたな葵」
「うん。不安だったけど、少し滑れるようになってきたかしら」
藍沢は一勝懸命伊達に着いて行く。二人はスノーボード。
「よし、ちょっと休憩しよう、俺は隣に座っているので」
「うん……何か飲む?」
「いいよ。座ってろ、何か買って来るよ」
伊達は売店に向かった。
「イオ(
jb2517)、どうだ。滑れるようになってきたか」
水鏡(
jb2485)はイオの横に滑って来た。
「うむ……知識としては知っておったが、実際に滑ってみるのは練習が必要じゃな」
イオは強がって言って、白い息を吐き出した。
「習うより慣れろ、と言うらしいからな」
「うむ……ところで、林間コースは見晴らしが良くないじゃろう? そっちにサーバントが潜んでおるやもしれんしの。偵察を兼ねるのじゃ」
「イオ……お前角を隠して……」
「仕方あるまい」
二人は林間コースへと向かう。
「ふう……今回は残念だったなあ……重体でなかったら……」
鈴木悠司(
ja0226)は下の方で滑り降りて来るみんなを見つめていた。
そこへスキーウェアに身を包んだ咲森がやって来た。
「やほ、鈴木君。体の方は……て、みんな治りは早いかしらね」
咲森がホットココアを差し出すと、鈴木は「ありがとう」と受け取る。
「言い忘れてたけど、カウントダウンの熱唱、決まってたわね」
「あはは……まあ、相棒がいたからね。うーん、でもほんと残念だなあ。体が元気だったらなあ。上級者コースもOKなんだけどね」
「あら、私も若いころはゲレンデのマドンナだったのよん」
「誰がマドンナなの」
「今のは減点ね。レポート書く?」
「咲森さんそれ勘弁」
「いいいいいい……やっほうー! なのだー!」
上級者コースの坂から飛び出してきたのはスノーボードを着けたブルーハワイ。
「目指せ! ゲレンデの『最速』! なのだー!」
ぐんぐん風を切って加速していくブルーハワイ。スキル「ストライド」を使用して物凄い速さで加速していく。
「ほう!」
ボードを操りジャンプ、高速状態でトリックを決めつつ、みんなを追い越していく。
「さよならなのだー!」
「あらあら、ブルーハワイさん、凄い速さですねえ……さすが。さて、私は日焼けするのです!」
アーレイ・バーグ(
ja0276)は去年もスキー講習を受けているので上級者である。服装は白いマイクロビキニの上に防寒(日焼け)用の透明なスノーウェア着用。……凄い。
たゆんぷるん♪ と弾ける胸。ゲレンデの視線をくぎ付けにしながら滑っていく。
「んー♪ 良い気持ちなのですー」
サガ=リーヴァレスト(
jb0805)も過去の経験を生かし上級者コースを滑走していく。
「……そういえば、雪山でバカンス中の要人を処理した事もあったな……」
色々と過去の暗殺の思い出を思い出しながらも、それを振り切るように颯爽と滑り降りていく。サガはゲレンデに追憶を見る。
エイリアスはスノーボードで上級者コースを滑走していく。
「ま、昔取った杵柄って奴だな。そういや雪見ると血が騒ぐ感じがするんだが、何でだろうな?」
なぜかは分からないが血が騒ぐ……。
軽やかにゲレンデを滑っていく藤谷。かなり上達して来た。
「…………」
滑り降りてゴーグルを持ち上げる。すっかり賑わいを取り戻し立たゲレンデを見渡す。
「よぅ、一緒に滑らねぇか?」
「え……?」
エイリアスがいた。
「随分滑れるみたいだな」
「まだ……そんなに滑れないけど……」
「上級者コース行ってみないか」
「……うん、いいよ……」
二人はリフトに向かう。
そんなこんなで一日が終わり、学生たちは温泉へ。
鈴木は露天風呂へ向かう。
「やっぱり露天風呂だね! 日頃の疲れが癒える〜って言うか、別に疲れてないけど。でも温泉って格別だよね」
「葵、身の危険を感じたら呼ぶように」
「はい」
伊達の言葉に、藍沢が女湯から答える。
かぽーん……。
如月 敦志(
ja0941)も湯船につかって、今晩に思いを巡らせる。
「やあ」
サガがやってくると、湯につかる。
「やはり温泉は良いな……身体が休まる。大浴場もいいが」
「どうもです」
海城が手拭いで上半身を隠しながらやって来る。
「景色いいですね……課外授業……受けてよかった……この景色を目に焼き付けておこう」
「ふぅ……癒される。雪山の月も……絵になるねぇ」
エイリアスはまったりのんびり。
「温泉温泉! そーれ!」
静馬と楊は飛び込んだ。
――女湯では
「ほふぅ……温泉は良いですねぇ……胸が浮いてくれるので肩凝りが緩和されます……」
絶壁な人相手にそんなことを言ってしまう天然アーレイ。
「いい景色だね、夏木さん」
「ほんとっすねえ」
栗原 ひなこ(
ja3001)と夏木は月を眺めていた。
と、水鏡の肢体が湯煙に浮かび上がる。
「露天風呂だ、イオ」
「うむ。温泉じゃ」
二人は湯船に入っていく。
「よーし泳ぐぞよ」
イオは背泳ぎでざぶざぶと泳ぎ始めた。
「ふう……」
雪山を眺めていた水鏡だが、イオが通り過ぎていくのに、こっそり接近して身体をくすぐってやる。
「きゃあ! 水鏡!」
「こういうのも、湯に浸かりながらするコミュニケーションの1つだろう(クスッと)」
夕食の時。学生たちは歓談しながら食事に舌鼓を打つ。
「やっぱり風呂上りはビールが美味しいっ! いや、そうでなくても美味しいけど!」
鈴木はこれが楽しみ。
「美味しいですー日本は食事に関しては世界一だと思うのですよー!」
はもはもはもと大量に食べるアーレイ。
「ん〜美味し〜♪」
海城が食べる横で、エイリアスは山菜の天ぷらに刺身、土鍋で焼かれる富山牛を食す。
「地元の食材ってのは侮れん、気分の問題も多分にありそうだが(ケラケラ)」
そして夕食後……。
「ん……メール」
ひなこは携帯の着信を見た。敦志からだった。
『ちょっと話がある、温かい格好をして宿の外まで来てくれないか』
「あれ? 外にってどこか行くのかな?」
突然の呼び出しに???と、上着を着込んでホテルの外に出た。
「よおひなこ、呼び出したりして悪かったな」
「ううん。どうしたの」
「ちょっと歩かないか」
敦志はトワイライトを灯すと歩き始めた。ひなこは後を歩いて行った。
「ここらへんでいいかな」
ふっとトワイライトを解除し、敦志はひなこに空の星を見せる。雪山の夜空は綺麗だった。
「冬はさ、空気が綺麗なんだって。だから雪山から見る星は格段と綺麗らしいぜ。俺はこの星空って奴が結構好きでな。出来ればずっと、俺の一番大切な人と見上げて居たいんだ」
「わぁ〜っ! すっごい綺麗だねっ! 寒いけど来てよかった♪ 連れてきてくれてありがと〜! 素敵だねっ」
うんうんと敦志の言葉に耳を傾けながら星空を楽しんでいたひなこ――。
敦志は一拍置いてから。
「だからひなこ、俺と一緒に又星を見てくれないか? お前のことが好きなんだ」
星空の下で告白。
「うん、あたしで良ければよろこn…ぇえぇぇっ!?」
突然の告白に驚いて徐々に意味を理解して真っ赤になって挙動不審になるひなこ。
「えっと……あ、あのね…/// あたしも、ね……敦志くんと一緒にいると、凄く自然にいられていつも笑っていられるんだ……なんだかすーって入ってきて、隣にいるのが当たり前になっちゃったというか……いつの間にかね……す、好きになってた、んだと思う……だから、敦志くんの気持ち……嬉しい……な……」
真っ赤になりつつ精一杯の気持ちを伝えて頷き、服をきゅっと掴んで見上げる。
「あとね……好きな人が出来たら、手を繋いで歩きたいなって……いぃ……かな?」
「ふぃー……断られたらどうしようかと思ってたぜ……」
敦志は流石に緊張が解けたようで、笑いながらそういってひなこの頭を撫でる。
「それじゃ、風邪を引く前に帰ろう? 手、つなごうか」
にこっと微笑んで手を差し出し帰路に。ひなこは大好きな敦志の手を握り返して、歩きだした。忘れられない星だった。
「ん……? あの二人は……?」
ブルーハワイは二人をちらりと見て笑みをこぼす。
「まあいいか」
ブルーハワイは、雪や月が見える場所に陣取って台所からシロップを頂戴して雪にかけていた。
「……こうしたらフラッペになるのかな……?」
味は保証しません。
夜……。
「……かーっ! 仕事終わりの一杯は最高ね!」
咲森は、ホテルのバーで飲んでいた……。
「こんばんは。良かったら一緒に飲んでも良い?」
「あ? あら鈴木君じゃないの。いらっしゃいらっしゃい」
「一人で静かに飲みたいなら、可愛そうだと思って、一杯だけつき合ってね。静かに飲むのも、一人で居るのも、別に嫌いじゃないんだよ。ってまあ、そんな事より、飲もー!」
「飲もー!」
と、アーレイも姿を見せた。黒主体のきわどいイブニングドレス。コンセプトは脚線美だが胸もアピール。ゆったりとカウンターに腰掛けて。
「こんばんはお二人とも。あ、私は未成年なのでジンジャーエール下さい!」
琥珀色の液体を持ちながら大人気分を楽しんでみる。
「光さん、まま、私の奢りですから好きなだけ飲んで下さいな♪」
「あらあ? 私を潰す作戦? そうはいかないわよ」
咲森は笑った。
「盛り上がっているようだな」
サガがやってきた。
「富山ならではの酒は無いだろうか?」
地酒を注文。
「咲森先生は、なかなか酒が強そうだな……一緒にどうだろうか?」
「おー、受けて立つ?」
サガは笑って、外の雪を見る。
「雪見酒……か」
微笑んだ。
翌日――。
ゲレンデに出た学生たちは、上達していて中級者コースから上級者コースへと向かう。
「みんないってらっしゃーい」
鈴木は仲間たちを送り出す。
「中々面白くなってきたのだ」
「そうですねえ」
「しかしアーレイは凄い服なのだ」
「ほに」
「特注だな」
サガの言葉に、アーレイは「そんなことないですよ」と。
敦志はひなこと一緒。二人でスノーボード。
「やっぱ雪山は最高だな! ひなこもすこし慣れてきたかい?」
ゴーグルを外して笑う。
「一応これも滑れるようになったけど、ブレーキまだちょっと自信ないよぉ!」
ひなこは敦志の胸に飛び込んだ。
「ご、ごめーん」
「練習しないとな」
伊達と藍沢はスノーボードで初級者コースに。頑張って伊達についていく藍沢。
「大丈夫か葵」
「はい」
夏木と海城は中級者コースへ。
「今日は上の方へ行ってみるっす」
「そうですね」
「静馬さんも楊さんもどうっすか」
「あ、じゃあ、行ってみるでござる!」
「はい! 行きましょう! みんなで行けば怖くないです!」
イオと水鏡も一緒に。
そして、エイリアスと藤谷も上級者コースへ向かった……。
――その後トラブルも無く授業は終了。あっという間の三日間。
前日にアーレイが作った校長先生の雪像を前に記念撮影。
「校長先生の雪像作りは2回目ですねぇ……」
「撃退士にもこういう時間は必要だろう。来年も又来ようぜ、勿論一緒にさ」
敦志はにこっと笑ってひなこの頭を撫でる。
「楽しかったね♪ えっと……うん」
藍沢の荷物も富山のお菓子で一杯。
「久遠ヶ原へ送っておいたら」
「そうね。沢山買っちゃった」
伊達の言葉に、微笑む藍沢。
そして学生たちは久遠ヶ原への帰路に着く。富山の雪景色を胸にしまいこんで。