北に展開した四人、楊 玲花(
ja0249)、黒百合(
ja0422)、翡翠 龍斗(
ja7594)、和泉 恭也(
jb2581)らは、早速ペガサスナイトの撃破に向かう。
「……一刻も早く食い止めないとどれほどの被害が出るか分かりません。全力で敵に当たることとしましょう!」
「さてェ、天馬狩りのお時間だわァ、その白を真っ赤に染めてアゲルゥ……♪」
「それにしても、依頼で地元に還ることになるとは思ってなかったな……」
「シュトラッサーがいるようですが……このような無差別攻撃を行うとは……許せません!」
ペガサスナイトが民を蹂躙している。逃げ惑う人々を斬り殺している。サーバントはディアボロのように人を捕食することは無いが、ひとたび命令されれば苛烈な攻撃を開始する。
「それじゃあ私はビルの上から狙撃を開始するわァ……」
黒百合は言って、壁走りで上って配置に付く。スナイパーライフルSR45を構える。
玲花、龍斗、和泉は加速した。
「まずは最初の一撃ですね――はっ!」
玲花は目隠で蝶扇、棒手裏剣を投擲する。ペガサスナイトは切り裂かれて認識障害に陥る。玲花は壁に身を潜め、また移動する。
「さて……さっさと始末させてもらうか……」
龍斗は闘気解放、スナイパーライフルで狙いを定めると、ペガサスナイトの射程外から銃撃を叩き込む。ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! と銃撃を撃ち込めば、ペガサスナイトの上体が跳ね上がる。サーバントは怒りの咆哮を上げたが、龍斗は続けて無機的な動作で正確にライフルを叩き込んだ。
和泉はペガサスナイトの側面から打ち掛かり、スタンプハンマーを叩き込んだ。
「サーバントたちよ……退きなさい! さもなくば……打ち倒すまでです!」
ハンマーでペガサスナイトの肉体をぶん殴る。サーバントは咆哮して剣を振り下ろしてきたが認識障害で方向感覚が無い。和泉はかわすと、ペガサスナイトの足にフルスイングでハンマーを撃ち込んだ。バキイ! とその足がへし折れた。
――ガオオオオオオオ! サーバントはいったん後退すると、ソニックブームをでたらめに叩き込んで来る。和泉は転がるように避けた。
と、黒百合がスナイパーライフルSR45の銃撃を開始する。ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! と、長射程の銃撃が捕える。
「天馬狩りは撃退士の娯楽だわァ……♪ あら、痛かったかしらァ……?」
照準に捕えると、黒百合はペガサスナイトの翼を狙う。
「まずはペガサスナイトAちゃん、あなたからあの世に送ってあげるわねェ……」
正確に照準に捕えると、ペガサスナイトの翼を撃ち貫く。
ペガサスナイトは連続攻撃を繰り出して来るが、玲花と和泉は弾いて回避した。
「こちらから行きます!」
玲花はフォトンクローとシルバーレガースで交互に攻撃し、有効な武器は魔砲系と確信した。フォトンクローに持ち替える。
和泉は引き続きスタンプハンマーを撃ち込み、黒百合と龍斗はライフルでサーバントを
打ちのめしていく。
翼をもがれたペガサスナイトはもがきながら、剣を振り回して加速してくる。
玲花と和泉は打ち合い、黒百合と龍斗が銃撃を叩き込んでいく。
「てやああ!」
玲花はペガサスナイトの背中に回り込んで、胴体に飛び上がると、強引に頭を掴んで後頭部から爪を叩き込んだ。びくん! とペガサスナイトは痙攣したが、力無く武器を振り回した。
和泉がハンマーを叩き込み、黒百合と龍斗の銃撃にペガサスナイトは撃ち殺された。
もう一体のペガサスナイトは怒りの咆哮を上げて反撃してくるが、和泉と玲花から挟み撃ちを受け、玲花の影縛で束縛されて黒百合と龍斗の集中砲火の前に崩れ落ちた。
「ふう……終りましたね」
「サーバントも天使から生み出されたとはいえ、天界の生物……彼らの痛みが救われますように」
「よし、和泉行くぞ」
龍斗は和泉を持ち上げると、縮地でシュトラッサーへ向かう。
「少々、荒い方法だが……時間が惜しいのでな」
「はい、完了ねェ♪ ではシュトラッサーへ参りましょうかァ」
黒百合もライフルを撤収すると移動を開始する。携帯を見ると、浪風 威鈴(
ja8371)からの着信が入っていた。
「私は日常の守り手。街の平穏を乱すのは許せません。何としても追い払って見せます」
氷雨 静(
ja4221) の言葉にキャロライン・ベルナール(
jb3415)が応じる。
「サーバントなど下僕……前衛は任せておけ。静と威鈴は私が守る」
威鈴は頷いて弓を構えた。
「行こうキャロライン、静……シュトラッサーの暴挙から……町を守らなきゃ……」
「よし! 行くぞ!」
三人は加速した。
ペガサスナイトは今まさに、母子を手に掛けようとしていた。
「そうはさせません!」
氷雨はフェアリーテイルに手をかざしてパープルライトニングを解き放った。アウルの力を集中させ、紫色の電光に変えて敵を貫く。高速の雷がペガサスナイトを貫通する。サーバントは激痛に吹き飛んだ。
吹き飛び、壁に激突する。
威鈴は地形把握で射程ぎりぎりの距離を読み取り、ラップドボウを叩き込む。ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! と矢が貫通する。
サーバントが咆哮して威鈴のいた方向に向かってソニックを叩き込む。衝撃波が地を駆け抜け、家屋を破壊した。
「残念だね……当たらないよ……あんたの攻撃なんか……遅い……」
するすると移動していく威鈴。
キャロラインは前に出て、ペガサスナイトの注意を引く。
「お前の相手はこちらだ。もう誰も傷つけさせない」
(私は静と威鈴を守れるよう力を尽くすと言った。その役目を果たす為にも常に二人の位置に気を配らないとだな。勿論他の仲間も逃げ遅れた人々も守り抜く。皆との相談の時、極論を口にしたが……私も人を助けたい)
キャロラインはツヴァイハンダーDを構えた。
ペガサスナイトは突進してくると、ガオオオオオオオ! とキャロラインに切り掛かって来た。
「むう――」
キイインンンン! と受け止め、押し返す。
「下僕が……これ以上手出しはさせんぞ」
一撃、二撃と打ち合う。
静と威鈴はタイミングを図ってキャロラインを見守っていた。
「せい!」
キャロラインは剣を逆袈裟に持ち上げた。ギュウン! と刀身が飛び、ペガサスナイトの腕を切り飛ばした。
悲鳴を上げて後退するサーバント。
「行きますよ! 紫――光――雷――パープルライトニング!」
氷雨は再びフェアリーテイルに手をかざして念じた。紫の雷光が連続して飛ぶ。
バリバリバリバリバリバリ! と、雷撃がペガサスナイトを撃ち貫く。痙攣するペガサスナイトに、さらに威鈴が連続攻撃を浴びせかける。
屋根の上から、ペガサスナイトの背後に回り込み、矢を連発する。ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! と矢が貫通して、ペガサスナイトの口からごぼっと血が溢れる。
崩れ落ちたペガサスナイトの首を、キャロラインがはねた。
「ふん……」
キャロラインは剣を収めると、二人の仲間を見やる。
「お疲れさまでした」
「とにかく……終ったね……? シュトラッサーへ急ごう……か」
威鈴は言ってから、北の仲間に携帯でワンコール入れておく。
神喰 朔桜(
ja2099) 、赤坂白秋(
ja7030)、ルーノ(
jb2812)らはサーバントへ加速する。
「さーてそれじゃあ始めようか。ペガサスにはさっさと退場願おうね」
「よし、朔桜と俺で叩き落とすから、近接はルーノよろしくな」
「了解した」
ペガサスナイトは上空を飛行していて、地上の人々に向かって光線を吐き出していた。
「サーバント……させん」
まずはルーノが光の翼で上空へ。サーバントに突進する。アールシェピースを繰り出す。――キイイイイイイン! と弾かれるが、ルーノは続く一撃でペガサスナイトの腕を貫いた。
ペガサスナイトは咆哮して、羽ばたくと、チャージアタックでぶつかって来る。
「むう――」
ルーノは受け止めつつ後退し、朔桜と白秋の射程内へ誘導する。ペガサスナイトが追撃してくるのを、ルーノは弾き返し、 「来い! 下僕生物!」と挑発し、さらに後退するが。と見せかけそこで反転、サーバントの側面から翼の付け根へ槍を突き入れ羽ばたきを止める。
「創造≪Briah≫『至高天・奇蹟の模倣者』……エンピレオ・プラエスティギアトレス」
神喰は影の書装備――書を現さず無手で無動作無詠唱する。師より賜った「秘術」より紡がれし魔術。彼女の真の意味での『創造』。魔力放出量を一時引き上げ、本来持つ力の一部を制限的ながら解放する。そも彼女の全力は、他者所か己が身さえも耐え切れる代物ではないが故に。口許には余裕の笑み。黄金の焔が揺れる。
ペガサスナイトはルーノへの対応に注意を引かれている。神喰は詠唱を続けた。
「創造≪Briah≫『轟き穿つ神威の雷槍』……ブリューナク」
こちらも師より賜った「秘術」より紡がれし魔術。黒焔を伴う五つの黒い雷槍を自己周囲に展開し、ペガサスナイトに射出する。五つの黒い雷槍がサーバント目がけて飛ぶ。――ズバアアアアアアアア! と、雷槍がサーバントを貫通する。ぱりぱり……と、黒い雷に覆われ、ペガサスナイトは絶叫した。
白秋は朔桜とは逆方向から銃撃を仕掛ける。
「こいつを食らえよサーバント! おい!」
白秋はヒポグリフォK46を連射した。ドウ! ドウ! ドウ! ドウ! とダークショット。カオスレートの変動で大ダメージを与える。
「グ……ガアアアアア!」
ペガサスナイトは白秋に向きを変えると、光線を撃ち放ってくる。
「来やがれ!」
白秋はタイミングを図って光線を転がるように避けた。
――ガアアアアアア! サーバントが着地して突進してくる。
「待ってましたってね! ダークショット!」
バン! バン! バン! バン! と再び銃撃を叩き込めば、ペガサスナイトの上体が跳ね上がり、勢いが止まる。
「今だ! 行け!」
「白秋さんもやるじゃないの」
神喰は言って、再び無動作詠唱。ブリューナクを叩き込む。
今度は五本の黒い雷槍が束ねられて巨大な一本になり、ペガサスナイトを貫通する。バリバリバリバリ! と、雷がサーバントを穿つ。
「行くぞ――」
ルーノは上空から加速し、アールシェピースを繰り出した。ズン! と槍が貫通する。
白秋は続いて精密殺撃を撃ち込む。ドゴオオオオオオオ! と爆音が鳴り響いて、ヒポグリフォK46から爆炎が放たれた。ごう! と、ペガサスナイトの頭部が吹き飛ぶ。
ぐらり……と、ペガサスナイトが崩れる。サーバントはそのまま倒れて動かなくなった。
「ふう……終ったか。さて、それじゃ南へ向かうか」
仲間たちと連絡を取り合う。仲間たちもシュトラッサーへ向かっていた。
……倒れ伏す母親の前に、少年が立ち塞がっていた。
「やめろ化け物! 何が面白いんだよ!」
勇敢な少年を見おろす神月。銃を取りだすと、少年に向けた。
「何が楽しいかって? 無力な奉仕種族が少し殺されたくらいで、ぎゃあぎゃあ喚くなよ」
神月は、引き金を引いた。パン! と、少年は撃ち殺された。
「随分楽しそうだね」
「ん?」
神月は、声がした方向を見やる。
撃退士たちが展開していた。
「何だ貴様ら……撃退士か……? くくく……またぞろ現れたな。だが無駄なことだ。俺はシュトラッサー、神月。人間を遥かに越える力を得た。お前たちなど、木の葉のように蹴散らせる力をな! くははは……!」
「楽しそうなのは結構だけど。だけど――あぁ、何て言うかな。愛が足りないかな。力を得て嬉しいのは解るけど、滑稽だよ。自分は生まれ変わった、お前等とは違うんだ――ってさ。狂った様に楽しそうで何より。じゃ、少し遊ぼうか」
朔桜は言った。
「随分自信家だな。貴様はどうなんだ?」
「私? 私は元から、皆と一緒だなんて思った事はないよ。生まれた時から、皆とはズレている。そう知っている」
「貴方も元人間でしょう! 人間が奉仕種族などとよく仰えますね!」
氷雨は怒りをあらわにした。
「天使に従属して得た力でよくそんなことが仰えますね! 私達人間は奉仕種族などではございません! 天界のモノなどではありません! 人の力見せて差し上げましょう!」
「くくく……ほざくがいい……! 選ばれた者にだけシュトラッサーへの道が開かれるのだ! 俺は選ばれし者!」
「天使にも守るべき規律や誇りがあります。貴方は落第ですね」
和泉が言った。
「使命を言い訳に振るいたいように力を振るう貴方の姿は我々が最も忌むべきものだ! 正義無き力に意味が無いように愛無き心に意味はありません。貴方ももう少し愛を学ぶべきですね」
「ほう、そうか。では、その愛とやらで人が救えたのか? 愛など……たわごとに過ぎん! 力こそが全てよ!」
「力に狂ったか……」
ルーノは呟いた。天界に居た頃はシュトラッサーに対して何かを感じた事は無かった。しかし、今、天使に与えられた力に狂わされた人間を見て、なぜか心がざわついた。
(何だ、これは……?)
「ぇ……人……なのに……元……でも……同じ……なのに……」
と呟く威鈴。自分の肩を強く引っ掻く。そして俯いた。
「狂う……って……なんなの……?……ボク……知りたく……ない……」
「くはははは……! 死ね! 撃退士ども!」
神月は、かっ、と目を開いた。直後、見えない衝撃波が飛び、撃退士たちを吹き飛ばした。
「おやぁ……今のは何かしらァ……?」
黒百合はスナイパーライフルのスコープから神月を見やり、闇遁・闇影陣で連撃を放った。凄絶な銃撃が神月を貫く。
「に……!」
神月の体から銃弾が零れ落ちる。そして、玲花の影縛が神月を束縛する。
「おのれ……! 雑魚が!」
「やらせません!」
「汝、黒き者。其は溢れ来る力。我に力与えしめ給え。ブラックエレベイション!」
続いて、
「クリアースクリューウィンド!」
「雷槍ブリューナク」
神喰と氷雨の魔術が撃ち込まれ、威鈴が精密狙撃を叩き込む。突進した白秋、龍斗、和泉、ルーノ、キャロラインらが連打を浴びせる。
「これは通行人Aの分、これは通行人Bの分、――以下略だ、クソシュトラッサー」
「むうう……あああああ!」
神月は影縛を解くと、自分の手に光を生み出し、それを爆発させた。閃光が神月もろとも撃退士たちを薙ぎ倒す。
(撃退士たちども……この借りは返すぞ! 貴様等の心に入り込み、いずれずたずたにしてやる!)
逃げる神月の念話が撃退士たちの頭にはっきりと響いた。
閃光が晴れて、神月は姿を消していた。
黒百合も閉じていた目を開いて、「あらァ……逃げられましたかァ……」とライフルを引いた。
――静寂が訪れた。
「後は公的機関に引き継ぎましょうか」
氷雨は言って吐息した。
「彼女……愛しい人と一閃組の皆にお土産買っていかなきゃな」
帰ろう。龍斗は彼女の顔を思い浮かべるのだった。