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マスター:橘 律希
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/12/03


みんなの思い出



オープニング



 権瓦原助作。
 アラサ―の撃退士。そして、アラサーたけど未だ久遠ヶ原の学生。
 丸々と太った身体。ニキビだらけの頬。センスのない服。
 キレイに切り添えられたおかっぱ頭が、朝シャンの甲斐あってサラサラと風に流れる。
 脂ぎった汗が浮かぶ額を小まめにハンカチで拭えば、その手はなぜだか爪だけがキレイに切り揃えられていた。
 そう言えば、いつも以上に身体が丸い様な…?

 前回のシナリオから3カ月あまり。『秋』という季節が丸々過ぎ去りしその間、彼は一体何をしていたかというと……、
「暮れなずむ景色はなんと美しいものだ。あの夕陽に恥じぬ男であらねば…」
 旅に出ておりました。しかも何度も。
 前回、暑さのせいとは言え撃退士として男として、否、人として! あまりにみっともない姿を見せてしまった彼は、流石に自分を見つめ直す時間を持つべきだと考えた様です。
 一時はどうなることかと思いもしたが、何とか軌道修正してくれそうで一安心。
「素晴らしい紅葉ではないか…モグ。この雅な風景を守る為にも…モグモグ…我々撃退士は……ごっくん、ぷはぁ。実りの季節に恥じないように生きねばな…モグモグ」
 ひとあんしん……。
「ふぃ〜、爽やかな秋風が火照った身体に心地いい。これぞ秋の露天温泉の醍醐味。いやはや、日本に生まれてよかったな。ところでオレサマ、何で旅に出ていたんだっけ?」
 ……orz。

 軌道修正どこ行った!?
 別に天の声が彼を導いているわけではない。彼が勝手に動いちゃうんだもの。仕方がない。うん、色々と仕方ないんだ(目逸らし)

 とは言え、旅もいつかは終えるもの。
 彼は幾度目かの旅の最終日。秋田県の山奥にあると言う、とある秘湯に出向いていた。
「ここが旅の最終地か……」
 空を見上げ力強く頷く助作。何だか以前より顔がパンパンになっていて、身体はコロコロとふくよかになり、その割に脂汗滲む肌は艶っぽくもちもちとしている。どうやら彼の旅はとても充実していた様である。羨ましいったらありゃしない。
「ここでオレサマはきっと生まれ変われることだろう」
 紅葉も盛りを過ぎた山中で、雄々しく仁王立ちするその背中では、立札が最後の秋風に揺れてきぃきぃと鳴いていた。




「ここが秘湯か…」
 助作がぐるりと周囲を見渡す。紅葉に敷き詰められた山あいに、ぽっかりと覗く岩肌と湯気。そこは秘湯の名に恥じない、自然そのままの露天温泉であった。当然、屋根や脱衣所など無く、ましてや男女の区別などありはしない。いわゆる混浴で……、
「こ、こここ、混浴なのか!?」
 落ち着け。こんな山奥に女性が来るはずもないだろう。
 それでも助作は服を脱ぎながらも、チラチラと自分が来た方角に視線を送る。うん、まぁ期待をするのは自由だからね。
 と、
「「あの、すみません…」」
「ほぎゃぁっ!?」
 不意にかけられた声。それに驚き豪快に尻もちをつく助作。
 首を巡らせ、声が聞こえた方向へと視線を移せば、そこには美しい女性が二人。
 ちなみにどうでもいいことだが、助作は既にすっぽんぽん。しかし幸いなことに、転んだ拍子に舞いあがった落ち葉が、彼の局部を覆い隠してくれたので女性たちの眼が潰されることは無かった。素晴らしい気遣いを見せる山に乾杯したいところである。
「「驚かせてすみません。実は撃退士であるあなたにお願いしたいことがありまして…」」
「む、お願いだと?」
 女性たちは助作のおかしな叫び声や、尻もちついたまま真っ裸できょとんとする姿に何ら反応を示すことなく、淡々と一糸乱れぬ重唱で言葉を紡いでいた。見れば、二人はそれぞれ薄手の紅と白の着物を身に纏い、足元には草履。とても深い山を歩けるとは思えない。更によく観察すれば、二人の顔は美しくもあまりにも無機質な感じが漂っていることに気づけただろう。そして二人は助作が来たのとは真反対、つまりは温泉を挟んで更なる山奥側に佇んでいる。
 つまり一言でいえば、不自然極まりないのだが……。
「オレサマが撃退士であることをどうして知って……はっ!? 自分を見つめ直す旅の成果が滲み出ているのか!」
 あ、覚えてたんだ、当初の目的。
 まぁ、それはさておき。当然の如く、彼は女性たちの不自然さに気づくことは無く、『女性に頼られる』という状況に舞い上がっていた。
「では、こちらへ来て頂けますか」
 導かれるままに女性たちの後を追う助作。温泉から5分も歩いたところで、女性たちは足を止めた。
「この先、数十mほどのところにこの山を祀る社があります」
「社?」
「「はい。もはやほとんど人など訪れることのない、朽ち寂れた社です」」
 ですが、と。そこで女性たちは初めて人間味のある哀しそうな表情を浮かべる。
「「そんな社が、いまサーバントたちによって占有されているのです」」
「このままでは社が不憫すぎます。どうかサーバントたちを追い払って頂けませんか?」
 物憂げな表情で真正面から二人は助作を見つめる。
「うむうむ。なるほど。事情は理解したぞ」
 理解したの!? 普通に考えれば色々突っ込みどころあるよね!?
「安心してオレサマに任せるがいい」
 ドン! と胸を叩き、鼻息荒くする助作。彼はすぐさま応援を呼ぶ為に、彼は学園へと電話をかけた。もう一人で吶喊しない辺りは、一応成長はしてたんだなぁと何やら感慨深かったりする。
「「ありがとうございます」」
 二人は電話を終えた助作に頭を下げると、その姿をゆっくりと霞の様に消すのだった。
「っ!!!!???」

 ぎゃーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!

 一拍の後、周囲の山々に響いた叫声は、麓にある村で天魔襲来の報を別口で学園に伝える騒ぎになったりもしたのだが、それはまた別の話である。
 


リプレイ本文



「よう! まだ生きてやがったか。一応、助けに来たぜ?」
 到着一番、小田切ルビィ(ja0841)が目にしたのは小刻みに揺れる丸々とした肉だるま、もとい助作であった。どうやら目の前で姿を消した女性二人を『おばけ』と思って取り乱し中の様だ。要は怖がっているのである。「お、おば、おばばば……」
 本人はガタガタと震えているつもりなのだろうが…しかし。辺りに響くのは『ぷるぷるたぷんたぷん』と言う小気味良いリズム♪
「…暫く姿が見えねぇな、とか思ってたら…食い歩きの旅してやがったなー!?」
 違うんだ、ルビィくん! 彼は自分を見つめ直す旅に出てたんだよ! 体重が軽く30kg以上増えたなんて事実は欠片もないんだよ?
「そうだよ! 助作さんはしゅぎょーしてたんだよね!」
 フォローを入れてくれたのはいいんですが、みくず(jb2654)さん。何でそんなにわくわくした瞳で肥えた助作を見てるんですか。
「きっとあと3回位変身できるんだよね…じゅるり」
 なんかもう変身したことになってるっぽいけど、これでも一応人間ですからね? あと何故か助作が震えを大きくしたので、垂れてる涎を拭ってくれませんか?(汗
 そんなこんなで『イヤイヤおばけ怖い』とルビィの腰にしがみつくアラサー男の本気の怖がり方に、ルーガ・スレイアー(jb2600)が残念そうな表情を浮かべた。
「…何だかこいつは動画配信とかできなさそうだぞー、ちぇー( ´∀`)」
 え? 配信しないんですかルーガさん? 全国のSOS動画ファンが首を長くしてお待ちですよ?
 一方、紫鷹(jb0224)は助作を前にキョロキョロと周囲を見渡していた。
「おかしい…権瓦原さんから、連絡があったんだよ、な?」
 いや、前! 前見て! いるでしょ、そこに!
 震える肥満体を見下ろしつつ、彼女は懸命に記憶の糸を手繰り寄せる。やがて辿り着いた結論はこうだ。
「此処は今危ない、早く山へお帰り?」
 ぱーんぱーんっ!
 まさかの威嚇射撃! どうやら眼鏡をかけ忘れた彼女は助作を『冬眠前の熊』として認識したらしい。
 開始早々素晴ら…散々な扱いの助作であるが、彼が立ち直れないと話は進まない。ルビィは助作を宥めようと独自の推測を展開し始めた。
「…その女二人ってのは、恐らく社を根城にしてる狐――冥魔か何かって処だろうぜ」
 え? おばけじゃないの? と少し冷静さを取り戻す助作。そこへ大谷 知夏(ja0041)が言葉を畳み掛ける。
「今回は、助作先輩のスキルが起死回生の一撃になると思うっすよ!」
 ぴくっ。
 止まる震え。間髪入れずに呟く桜花 凛音(ja5414)。
「秘湯のある山ですか…」
 ぴくぴくっ。
 明らかな反応。そこへ放たれる凛音のトドメの一言。
「終わったら皆で寄っt」
「さぁ、皆の者! 戦いの時でござるぞ!」
 興奮しすぎて口調が変なことになってるぞ! それにしても、こうも見事に立ち直らせるとは恐ろしき連携である。しかも、今のやり取りでやる気を出した者は他にもいた。
「流石、助作さんの依頼だ…女子率高しっ! しかも混浴っ!」
 ガッツポーズで喜びを滲ませる藤井 雪彦(jb4731)だ。
「抵抗持たれる方もいるだろうから、こんなん用意しときましたぜ…あ に き☆」
 助作に向かって数々の水着を披露する雪彦。その姿は神々しく輝いている。って言うか、君は一体何しに来たんですか。
 かくして見事に助作を復活させすぎた一行は、サーバントたちの待つ社へと足を運ぶのだった。




「――背中は任せたぜ! …とか格好良くキメたい処だが…」
 社まで僅か数十mの距離を歩きながら、チラッとルビィが背後を振り向く。そこにはぜぇぜぇと息も絶え絶えの肥満アラサー。たかが数十m。されど数十m。今の助作にとってはフルマラソンに匹敵。もはや一般人以下の体力で、よくこんな山奥まで辿り着けたものだ。

 答え:秘湯(混浴)

「まぁ、あんまし無茶すんなよ?」
 そっけないながらも優しさを差し伸べるルビィ。助作の中で好感度が赤丸急上昇中なのは言うまでもない。
「木々に覆われて視界が悪いですね。他にも潜んでいる敵がいるかも…」
「いかにも何かいそうだよね」
 凛音とみくずが周囲を見渡しながら、さり気無く助作に視線を送る。それに合わせて、助作の肩をルーガがぽむと叩いた。
「よかったなスケベ作ー、立派に仕事ができるぞー( ´∀`)ノシ」
 ルーガさんってば、そろそろ名前を覚えてあげて?
 それはさておき。女性陣の視線を受け、ここが見せ場と己を叱咤し、疲弊した身体を奮い立たせる助作。戦闘前なのになんて大げさな。
「む、あちこちの木に何かいるぞ!?」
 生命探知で捉えた反応を自信満々に示せば、あちこちの樹上に響くチュンチュンと囀る声。うん、生命探知使わなくても存在わかるよね、それ。
 ほぼ同時に一行は唐突に山あいの開かれた場所へ到達。まず目に付いたのは寂れた社、続いてそれを護るように立つ二体の狐の石像。そして―――それらの上に佇む鳥たち。すなわち三本足の黒鴉『ヤタガラス』、雷纏う黄鷲。そして、周囲の木々に見える数え切れないほどの紅い嘴を持つ雀。勿論、すべてサーバントだ。
 誰も接近に気を配らなかったので、敵はすでに迎撃態勢に入っている。撃退士たちは素早く光纏、武器を活性化させると、戦闘を開始した。




「キツネのお社に天魔なんて許せないんだから! このキツネ耳にかけて!」
 みくずが耳をぴこーんとさせて、既に発動していた闇の翼で空へと飛翔。ルーガも横に並んで羽ばたけば、そのままヤタガラスの一体へと挑発を仕掛けた。
「ンゴゴゴゴゴwwwお前のかーちゃんでーべーそーなう( ´∀`)m9」
 言葉の意味わからずルーガに引きつけられるヤタガラス。相手が人語を理解していたら脱力効果もあっただろうに。非常に惜しい。ルーガは迫る鋭い嘴を活性化したリブラシールドで防御し、攻撃を凌ぐ。
 地上では雪彦が韋駄天を発動。周囲に立つ仲間たちへ風神の加護を与えた。
「水着だっていいさー☆ うん、マジ頑張れそう☆」
 どこまでも自分に素直な若者の笑顔が眩しい。その純粋なる瞳が、ふと助作の桃色視線と重なる。

 サッサト片付ケルゾ?
 ラジャ☆

 篤い友情、ここに誕生である。
「狐の石像2体の上に2羽の鷲ってか?」
 続いてルビィが黄鷲に向かって挑発を発動。期待通り、ルビィが注目効果で鷲一体の気を引けば、負けじと助作は星の輝きを発動する。
「ふ、注目ならオレサマだって!」
 辺りを照らすキラキラと無駄に神々しい輝き。
 ぷいっ。
 しかし鷲は見向きもしなかった。ぐわわぁーん! とショックを受ける助作。当り前です。このスキルに本来注目効果はありません。
 と、タイミング良く飛んだのは凛音と知夏からの声援。
「先輩、修行の成果期待してます!」
「先輩の活躍が戦局を決めるっすよ!」
「ぐふふ、任せておくがいい。次はもっと輝いてみせるぞ!」
 あっという間に立ち直る助作だったが、期待されてるのは盾としての役割……まぁ知らぬが仏と言う言葉もある。そっとしておこう。
 一方、凛音は異界の呼び手を発動。挑発された黄鷲を宙で束縛する。だが、束縛されても遠距離攻撃は可能だ。黄鷲はルビィ目がけて強烈な雷撃を撃ち放った。
「ちぃっ!」
 ルビィは咄嗟にシールドを活性化するも、魔力を帯びた雷撃は盾の脇をすり抜け直撃。激痛走ったルビィの肉体は麻痺してしまう。
「大丈夫っすか! 助作先輩、援護っすよ!」
 知夏は素早くウサ式・治療術を発動、ルビィの麻痺を瞬く間に取り除いた。そして助作はナース服を纏う巨大な注射器を携えたアウルなウサギに見惚れ中。
「か、かわいいじゃないか…」
「何やってるっすか!」
 知夏のお叱りを受け、慌ててライトヒールをかける助作である。
 その頃、隠密と壁走りを駆使した紫鷹は一人社の裏側へと回り込んでいた。
「逃がすわけには、いかないからな」
 阻霊符を発動し、透過能力を封じた上で撃ち放つサバゲー用の散弾銃。射出されたペイント弾は見事にヤタガラスたちの背を捉え、次々と派手な色で染め上げる。よし、と次の標的へと狙いを定める紫鷹。そこへ一斉に群がる雀たち。
「なっ! お、多すぎ…っ!」
 最初こそ紫鷹は忍軍らしい軽やかな身のこなしで突撃を回避していたが、次から次へと迫る来る雀の波にあっと言う間に飲み込まれてしまう。
 雀たちは紫鷹のあっちをつんつん。こっちをちゅんちゅん。つつく。つつく。つつく。
「わ、ばか、やめ、あは、あはははははっ!」
 犠牲者第一号の高らかな笑い声が山々に響くのでありました。




 背後に響く高らかな笑い声を耳にしながら、ヤタガラスたちが社から離れ始めた隙を狙い、凛音は再び異界の呼び手を発動。
 無数に伸びる腕をヤタガラスは空へ舞い上がり回避。残りの鴉たちもそれに続くと、己の姿を風景へと溶け込ませた。
 その動きに女性陣が反応、助作に声が飛ぶ。
「「「「生命探知っ!」」」」
 見事なハーモニー、ありがとうございます。黄色い声援を糧に張り切った助作の生命探知は、何と隠れたすべての存在を把握することに成功!
「ふっ。幾ら隠してもオレサマには隅から隅まで丸見えなのだっ!」
「微妙な言い回しが流石っすね!」
 助作の情報を元にウサ式・封印術を発動した知夏だが、敵は上空へ舞い上がってしまい地上からでは一体を射程に捉えるのが精一杯だ。
 ならばと、みくずが最上空から塗料をどばーっと撒き散らした。
「ぼはあっ」
 敵の反応を追って空を見上げた助作にも注がれる大量の塗料。決してみくずちゃんのスカートの中を覗こうとしたわけじゃないのだが運が悪い。そんな助作を( ´∀`)な顔で見下ろしながら、ルーガはヤタガラスたち目がけて封砲を撃ち放った。
「ルーガちゃんのドーンといってみよう★なう( ´∀`)」
 みくずもそれに合わせ、やや高度を落とすと呪縛陣を発動。ヤタガラスの他、黄鷲の一体の動きを封じ、更に石縛風で追撃をかける。そして何とか雀の大群から抜け出した紫鷹は、痛む腹筋を押さえながらショットガンで動きを止めたヤタガラスへ攻撃を加える。
「ったく、情けねぇ…」
 ルビィは疲労のあまり朦朧とし始めた助作を横目に捉えると、全力跳躍で華麗に跳躍。
「仕方ねぇからさっさと終わらせてやるぜ!」
 振り抜いた鬼切から放たれた封砲は、宙で動き封じられた二体の黄鷲を捉える。だが倒すには至らず、着地の瞬間を狙って黄鷲が突風で反撃。ルビィは吹き飛び、攻撃範囲にいた助作も為す術無くゴロゴロと大地を転がった。そこへ群がる雀の大群。
「ぎゃははははっ!」
 響く大爆笑は山々に。
 その隙に雪彦は前へと躍り出ると、黄鷲を標的にして地妖精の悪戯を発動。助作が効果範囲に倒れたりしてるが気にしない。だって、助作さんは抵抗力高いアスヴァンですもの☆
「ふふっ、こんな美しい皆さんとの出逢いを授けてくれた神様の社を君らに好き勝手させるワケにはいかないっ! わるいけど…此処はあけてもrぶはっ!」
 黄鷲一体を石化させ、カッコよくセリフを決めていた雪彦だったが、彼の背後から雀たちが不意打ち。ちゅんちゅんと急所をつついていた。
「あははっ、そこはだめだって、あははははっ」
 確かに鴉や鷲の動きは封じた。BSの効果が解ける前に倒せばいいだろう。
 だが! まだ大量の雀たちが残っている! 大したダメージではない(固定ダメージ1)が数は力なり。
「数が多すぎだぜっ!」
 ルビィは命中力の高いゼルクに換装して迎撃を試みるも、大量に迫りくる雀たちを武器一つで押しとどめることは…、
「ぶわははははっ!」
 とてもできなかった。
 呪縛陣を使い果たし、石縛風では背を預けるルーガを危険に晒してしまうみくず。そして封砲を使い切ったルーガ。二人もまた同様に。
「あははははっ!」
「。(゜^Д^゜ )゜。 。゜( ゜^Д^゜)。」
 あっさりと雀の波に飲み込まれていた。ルーガはシールドで防ごうとするが、焼け石に水だ。そんな中、紫鷹は社を傷つけぬ様にと自ら囮となって雀を社から引き離している。
「く、くるなっ! くるなってばっ!」
 ……と言うのは建前で、とにかく必死に逃げていた。そして、雪彦はと言えば、
「い、息がっ…」
 悶絶死寸前であった。
 とまぁ、そんな一幕があったとは言え、所詮はかすり傷を与える程度の雀たちである。
「じゃれついてかわいいっす!」
 知夏は着ぐるみに群がる雀たちを払い落しては、味方のいない場所にウサ式・突撃術を発動。そして凛音がファイヤーブレイクで雀に襲われている人を救助して回る。
 若干数名が笑いすぎて死にかけたりもしたが、数分後には何とかすべての敵を撃破した撃退士たちなのであった。




「いやー、今回も愉快な事になって、楽しかったっすね♪」
 知夏がご満悦で落ち葉を掃いている。戦闘後、一同は社の手入れに精を出していた。
「これでよし。お前達もお疲れ様、だ」
「もっと人に訪れられるよう。秘湯で盛り上げられないかしら」
 キレイになった狐の像を前に紫鷹が満足そうに頷けば、凛音は社に積もった埃を落として思案顔。一方、社の修復を終えたルーガとみくずは社の前へ並び立つ。
「これは、オネガイゴトをしていい場所なんだろ?」
 TVで見た知識を元にルーガが頭を下げれば、みくずも二礼二拍一礼。それぞれに願いを呟く。
(サーバント退治もして、お掃除もした…。そんなえらい私に、ソシャゲガチャでスーパーレアカードが当たるようにしてほしいンゴwww( ´∀`))
(これからも見守っていてください…あと毎日美味しいご飯食べれますように)
 そしてやや離れたところでは、肩を並べ、シンクロした動きでせっせと落ち葉を掃いて回る欲望に実直な少年とアラサー男がいた。
「ぐふふ、いよいよ混よk…汗を流す時間だな」
「戦闘に掃除にと、良い汗かきましたもんね☆」
 二人はまるで生き別れの兄弟の様に心を通い合わせている。
「やっぱり入らなきゃダメでしょうか…」
 困ったような顔を浮かべる凛音だったが、実はワンピースの下に指定水着を着用済み。こうなることを見越して既に準備万端である。
「またひと波乱ありそうっすね!」
 ウキウキな知夏はウサギの着ぐるみのまま入る気だ。改良してると言ってもそれは……魔装Lv13。うん、マグマの中でも大丈夫な気がするよ☆
「お風呂と言えば、牛乳だよね」
 そして持ってきた瓶牛乳を誇らしげに掲げる、みくず。じーっ、ぱかっ、くびっ、ぐびびびーっ。待ち切れずに飲み干しちゃいました。
 そんな光景をカメラに収めながら、ルビィが哀愁漂う表情で散りゆく紅葉を見上げる。
「大自然の中ですべてをさらけ出す……素晴らしい画が撮れそうだぜ」
 力強い頷きに、少年とアラサー男がサムズアップ。
「邪な気配が漂っているな…」
 にこやかに紫鷹さんが刀を抜いてますよ?
 果たして無事に混浴できたのか? それは晩秋の空と狐像だけが知っている。
 


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:10人

癒しのウサたん・
大谷 知夏(ja0041)

大学部1年68組 女 アストラルヴァンガード
戦場ジャーナリスト・
小田切ルビィ(ja0841)

卒業 男 ルインズブレイド
一緒にいればどこでも楽園・
桜花 凛音(ja5414)

高等部3年31組 女 ダアト
天つ彩風『想風』・
紫鷹(jb0224)

大学部3年307組 女 鬼道忍軍
駆逐されそう。なう・
ルーガ・スレイアー(jb2600)

大学部6年174組 女 ルインズブレイド
サバイバル大食い優勝者・
みくず(jb2654)

大学部3年250組 女 陰陽師
君との消えない思い出を・
藤井 雪彦(jb4731)

卒業 男 陰陽師