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マスター:スタジオI
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/02/12


みんなの思い出



オープニング


 久遠ヶ原の某斡旋所に勤める、独身アラサー女子所員・四ノ宮椿の友人には、はぐれ冥魔の美人姉妹がいる。
 このうち、次女のメルと、三女のレイは頻繁に同人誌即売会に通うレベルのオタクである。
 人間界での生きがいを見つけようとしたあげく、この島の撃退士たちの影響でこうなってしまったのだが、その経緯は、今回置いておいて良い。
 人間界に来て数か月が経ち、漫画の腕もコスプレもそこそこ上達した二人。
 その様子を見て、唯一その世界に染まっていない長女のリズは、妹たちに尋ねた。
「お前たちが夢中になっている同人誌即売会とやらはそんなにもうかるザマスか?」
 変な口調だが、リズはハリウッド女優ばりの美女である。
 口調が変なのは“漫画に出てくるお金持ちみたいな喋り方をしていれば、金持ちになれる気がする“からだ。
 この時点で頭の中身は、お察しというより他ない。
「主催者の方の事ですか? どうなんでしょう? ただ同人誌が物凄い売れ方をするのは事実です、お姉さま」
 次女のメルが応えた。
 金髪ポニテのこの娘は、三姉妹の中で唯一、賢い。
「ふむ、儲かる見込みはあるザマスね」
 三姉妹は、ある冒険で財宝を見つけた事により、今の所お金に不自由していない。
 だが、はぐれ天魔の寿命は長い。
 半永久的に収入を得る手段を見つけないと、いつか生活を維持出来なくなるのも事実だった。
「試しに、島内で小規模な即売会を開いてみるザマス」
「ミニ同人イベントですね」
 メルは少し考えてから答えた。
「だったら、テーマを決めた方が良いかと思いますが」
「テーマ?」
「小規模で何でもアリにすると“来たのはいいけど、欲しい本やグッズがなくてガッカリ”な来場客が増えるおそれがあるんです。 テーマを決めれば、売り手側がそのテーマに興味のある物を中心に出品してくれます。 来客側もそのテーマに興味のある方が来られますので失望させることが、少なくなるかと」
「なるほど、なら何をテーマにするザマス?」
「難しいですね、人気のある作品は島外の即売会と競合になる恐れもありますから、久遠ヶ原島内でのローカル人気のあるものがベストだとは思います。 ただ、何が良いかと言われますと」
 メルが悩んでいると、今まで趣味のコスプレを縫っていた金髪ツインテの幼女――三女のレイが口を開いた。
「アイサツおじさんは?」
 聞き覚えのある単語に、首を傾げるリズ。
「なんザマしたっけそれ? 幼女用のゲーム機を占領して顰蹙買っている中年男性、みたいな記事が時々、掲示板に乗っているあれザマスか?」
「レイ、あの方たちは、あまりそそりません。 テーマには向かないかと」
 メルは賢くて美少女だが、腐女子である。
「違う違う、アイサツおじさんだよ! みんなが依頼に入った時に“依頼に参加したら、まずはこちらで挨拶をしてくれたまえ。 これからともに問題を解決する仲間だ、自由な校風とはいえ、そこは礼儀としてよろしく頼むぞ”っていつも言っているおじさんの事」
 レイの似ていない物真似に、リズはようやくピンときた。
「学園長の事ザマスか!」
 宝井正博(jz0036)、この島の“顔“といってもいい男性である。
「確かに人気はあるみたいザマスが、おじさんザマスよ? もっと若い――」
 リズは三女の意見を一蹴しようとしたが、次女のメルが声をあげた。
 碧い瞳が、欲情を帯びた歓喜に潤み輝いている。
「いいです! 学園長、とってもそそります! お姉さま、久遠ヶ原ミニイベントは学園長祭でいきましょう!」
「えぇ……腐女子の趣向はわからんザマス」
 というわけで、久遠ヶ原ミニイベント学園長祭の開催が決定した。
 蔵倫に消されぬよう、キミたちの創意工夫に期待したい!


リプレイ本文


 久遠ヶ原島の片隅に建つイベントホール。
 その入り口に、来場客が悶絶しそうなものが待ち受けていた。
 学園長の顔を象った巨大な門である。
 あんぐりと開けた学園長の口を潜らない限り、会場に入る事は出来ない。
「つまり、エイルズさんは学園長に食べられちゃいたいという事ですね、素敵です!」
 金髪美少女・メルが、目をハートにしながらその作成者を眺めた。
 エイルズレトラ マステリオ(ja2224)。
 いかにも腐女子受けがよさそうな、S系ショタっ子である。
「違いますよ! こうした方が何のイベントをやっているかわかりやすいじゃないですか」
 エイルズの反論などメルは聞いちゃいない。
「エイルズさんの潜在的な願望の顕れに違いありません! 次のイベントではエイルズ×学園長本を作りますね! ああでも、エイルズさんはSっぽいですから誘い受け風味にしたほうがいいのかしら」
 美しい頬を残念な色に赤らめ、妄想を始めるメル。
「とても付き合い切れません」
 すたこらと学園長の口に入って行くエイルズ。
 その背姿を、パシャパシャ写真に撮るメル。
 写真を元に、薄い本の中でどんな描写をされるのかと背筋が凍るエイルズだった。

「あの姉妹とは以前から縁があるので依頼に付き合いましたが、本当に学園長好きなんかいるんですかねえ?」
 疑い眼で会場内を見回すエイルズ。
 確かに客は入っているが、
「ネタなのか本気なのか判別しがたいところです」
 会場を歩いていると、
「学園長……好きです……このようなイベントに……参加できて光栄です……名誉会員の何恥じぬように……頑張ります……」
 恍惚とした顔で立ち、誰に聞かせるともなく呟いている少女が、あるブースに立っていた。
 胸のスタッフ証に学園長FC名誉会員、グリモワール(jb8423)とある。
 エイルズより年下の十歳くらいに見える少女だ。
「幼いのになんと業の深い」
 憐れに思いながらもブースに近づくエイルズ。
 並べられた商品はしっかり作られている。
 ペンダント、キーホルダー、ブロマイド。 
 キーホルダーやペンダントは顔写真のものと、そして名前ロゴのもの。
「“MASAHIRO TAKARAI♪って、アイドルですか!?」
 コクリとうなずくグルモワール。
 自分の中ではアイドルだと言いたいらしい。
「グリモワールさんは、学園長のどこが好きなんですか?」
 グルモワールはしばしもじもじしていたが、やがて堰を切ったかのように、秘めたるその想いを放流し出した。
「……雰囲気が……なんか……温かそう……きっとボクにも優しくしてくれる気がする……」
「ボク?」
 嫌な予感がするエイルズ。
 最初は女の子だと思っていたが、この島では外見で性別を判断してはならない。
“女の子を見たら男の娘と疑え”という格言すらあるのだ。
「失礼ですが、グリモワールさん、学生証を確認させていただけますか?」
 グリモワールはあっさりと学生証を出した。
「失敬、どれどれ」
「女の子ですか、残念です」
 耳元から聞こえた声に驚いて見ると、学生証を横から覗きこむメルの顔がそこにあった。
 BLの香りがしたので、飛んできたらしい。
 女の子とわかって失望したらしく、トボトボ去っていく。
「なんなんですかね、この島は……」
 なんだか急に疲れが出るエイルズ。
 会場全てが、歩くごとにHPを奪う毒の沼地に見えてくる。
「グルモワールさん、会場は見て回りましたか?」
 首を横に振るグルモワール。
 明らかに戦利品用の紙袋が置いてあるのだが、店員が自分一人なので店を置いてはいけないらしい。
「じゃあ、僕がしばらく店番していましょう。 その間にイベントを楽しんでください」
「……いいんですか?」
「その代わりに会場のどこかで、今現れた腐女子に良く似た小さい女の子――メルさんというんですが――を、見付けたらここに来るように言って下さい、久々に会いたいので」
 エイルズの提案を受け入れ、グリモワールは戦利品袋を両手に会場を廻り始めた。


『やあおはよう、さわやかな朝だね。 今日も学業に依頼にと励んでくれたまえ』
「……買います」
 “学園長おはようCD“を視聴したグリモワールは即買いをした。
 築田多紀(jb9792)のブースでの事である。
「まいどあり、最初は無難におやすみCDにしようとも思ったが、学園長のテンションでは、眠れなくなるのでね、むしろ朝の活力として聞いてもらうCDにしたのだよ」
 うむうむと頷く、多紀。
 重々しい態度をとっているが、少なくとも外見はグリモワールよりさらに年下の幼女である。
「……よく録らせてくれましたね、学園長」
「実はだね、盗撮なのだよ」
「……え?」
「最初は正面からお願いしようと思ったが、グッズ作りの話などしたら、この即売会の存在が知られてしまう可能性があるからな。 仕方なく、彼女に頼んで、盗撮してきてもらったのだ」
 多紀が視線を送ったのは、赤ずきん少女、若松 匁(jb7995)だ。
 ブースの品出しを忙しそうにやっている。
「学園長とお話されたんですか?」
 グリモワールに尋ねられると、匁は気まずそうに笑顔を引きつらせた。
「校門の前で張っていて毎朝、こちらから挨拶をしたんですよ。 その返事を隠しマイクで収録したわけで」
 匁の目の下にはクマが出来ている。
 教職員の登校時間は、当然、生徒よりも早いので毎日、早起きしたらしい。
「……苦心作ですね」
 よく聞くと、“おはようCD”には朝チュンの音まで入っている。
 雑音なのだが、逆にそれが臨場感を醸し出していた。
「……この抱き枕も盗撮なんですか?」
 グリモワールが、次に目を付けたのは等身大学園長抱き枕だった。
「やはりそれが気になるか、泣きたい夜もこれがあれば誰にも気付かれず、さながら父のたくましい胸板にしがみつくようにして眠れるぞ」
 うむうむと、頷く多紀。
「いえ……私が不思議なのは」
 抱き枕の学園長は白のYシャツ姿。
 前ボタンを、セクスィにはだけている。
 この寒い季節に、熟年男性が外でする格好ではとうていない。
「その写真についてはだな、彼に協力を仰いだのだ」
「……彼?」
 多紀が示したのは、足元に大人しく座っている柴犬だった。
「僕の友人で柴丸という。 彼に頼んで学園長に飛びついてもらい、スーツにおしっこを失敬してもらったのだ」
「……それでスーツを脱いだんですね」
「さすがに申し訳ないので、クリーニング代の支払いを申し出たのだが、笑顔で許してくれてな、さすがは人の上に立つ男、器が違う」
 犬のおしっこをひっかけられても、こんなに爽やかな笑顔を浮かべているだなんて――ますます感激し、学園長に惚れこんでしまうグリモワール。

「ありがとう、これで抱き枕は完売だ」
 メイン商品の抱き枕をグリモワールが買占め、多紀のブースにはスペースが出来てきた。
「これで少し客足が落ち着くと思います、多紀さん、他のお店を見てきたらどうですか?」
 匁に言われ、うなずく多紀。
「そうさせてもらおう、皆がどんなものを作ったのか興味がある」


「多紀さん、いらっしゃいですぅ〜♪」
 多紀が訪れたのは、猫耳人妻幼女半天使という、何だか複雑な属性を持つ神ヶ島 鈴歌(jb9935)のブースだった。
「鈴歌くんは何を作ったんだ?」
 売り場を見ると二頭身化された学園長の絵が表紙に書かれた冊子が並んでいる。
 題名は“ちみっこ学園長”
 内容は“学園長レモネードと出会う”学園長レモネードテロ始めました“などの癒し系ほのぼの漫画である。
「ふむ、同人誌か」
「どーじんし?……が何かはわかりませんが……学園長とレモネードの為に頑張るのですぅ〜♪」
 笑顔の鈴歌。
「こういう薄い本の事を同人誌という。 不健全なイメージが強いが、このように健全のようなものも実は多い」
 “ちみっこ学園長”を眺める多紀。
「そうなんですかぁ〜♪ 私の作品で皆さんが笑顔になるなら嬉しいのですぅ〜♪」
「ところでこれは?」
 漫画の隣に置いてあったのは、レモネードを持った学園長のマスコットに気付く多紀。
「羊毛素材のマスコットですぅ〜♪」
「羊毛……」
 なぜか自分の頭を抑える多紀。
「どうしたんですかぁ?」
「いや気にしないでくれ、正月に自分が羊になる夢を見てな。 多少、ナイーブになっているのだ」
「そうなんですかぁ〜? そんな時は、レモネードを飲めば気分がスッキリするのですぅ〜♪」
 笑顔でレモネードを渡す鈴歌。
 多紀がレモネードを飲んでいると、一組の男女がブースを訪れた。
「ぁ♪ 椿さんと堺さん♪ちみっこ学園長はいかがですぅ〜?」
「鈴歌さん、多紀さん、お疲れ様です」
「頑張ってる? 一人ブースの子は休憩がとれないってリズに聞いたから、応援に来たのだわ」
「本当ですかぁ〜♪ なら皆にレモネードを差し入れてくるですぅ〜♪」
 ブースを椿と堺に任せ、鈴歌はレモネードテロに出撃した。


「狩野さ〜ん、レモネードどうぞですぅ〜♪」
「おお、お嬢ちゃんありがとよ」
 鈴歌はレジに座っている狩野 峰雪(ja0345)にレモネードを渡した。
「こんなイベントに出品するだなんて、お若いのですぅ〜♪」
 狩野はこの島ではマイノリティな、外見年令ベースでの年配者である。
 高齢と呼ぶにはまだ間があるが、学園長よりも年上だ。
「はははっ、ビジネスになるかと思って勉強したんだよ」
 狩野のブースにはラミカ、ポストカード、フォトカード、シール等が置いてある。
「いかに安く作って、在庫の出ないように売り捌くか……オリジナリティと、あとはやっぱり希少性も大事だと思うんだよね」
「さすがですぅ〜♪」
「といっても泥縄だからね、本当の売れ筋はああいう同人誌らしいけど、理解出来ないんだよ」
 狩野が視線を送ったのは、向かいにあるメルのブースである。
 “学園長×クレヨー先生 夜の大一番”というポスターが張っており、元力士のクレヨー先生が褌一丁で学園長と組み合い、汗だくになっている姿が、悩ましげなタッチで描かれている。
 そのブースに腐女子と呼ばれる人種が、列をなして群がっていた。
「あれは私も理解できないのですぅ」
 そんな事を言っていると、グリモワールがレジにやってきた。
「……籤、いいですか?」
「はい五百久遠だよ、当たるといいね」
 籤箱を出す狩野。
 グリモワールは真剣な顔で、一等賞品の“学園長サイン入り色紙”を凝視している。
「グルモワールさんガンバですぅ〜♪」
 ファイト!と応援する鈴歌。
 そんな若い二人の姿を見て、狩野は腹中ほくそ笑んでいる。
(ふふっ、残念だけど、まだ大当たりは入れていないんだよね〜、サインは一つしか貰えなかったんだ、最初の方で持って行かれたら商売にならないからね)

 実は一等の色紙は狩野が学園長に、
「実は、うちの娘があなたのファンで……」
 と嘘八百を並べ、サインしてもらったものなのである。
 ついでに撮らせてもらった生写真も、二等の賞品にしてある。
 つまり元手は無料。
 生写真の焼き増し代が、多少かかったくらいである。

「はい、残念外れ〜、また挑戦してね」
 ハズレ籤を手にトボトボと肩を落として帰って行くグリモワール
「ふふふ〜、皆さん学園長が好きなのですねぇ〜♪
 目の前で大人の汚い陰謀が繰り広げられた事に気付かず、鈴歌が微笑んでいると、
近くのブースから妙な歌声が聞こえてきた。


「いけいけゴーゴー!学・園・長〜♪ いけいけゴーゴー!学・園・長〜♪ ス〜パ〜ロ〜ボ〜♪ 学園長ロボ〜♪」
 五月七日 雨夏(jc0183)がマイク片手に歌っている。
「そりゃなんだい、お嬢ちゃん?」
 狩野が店番を鈴歌に任せ、怪訝な顔で様子を見に行った。
「よってらしゃい見てらっしゃい! 学園長ロボのご紹介よ〜☆」
 雨夏のブースにはプラスチックダンボールで作られた、メカニカルな学園長人形が並べられていた。
「手の横のボタンを押すとロケットパンチするの☆ 凄いでしょ〜」
 狩野が押してみると確かに、学園長ロボの拳が飛び出した。
 この手の玩具、伝統のギミックである。
「背中のボタンはなんだい?」
「喋るのよ〜☆ 押してみて」
 背中のボタンを押す狩野。 
『どうも! アイサツおじさんです!』
「……今、お嬢ちゃんが喋ったように見えたよ?」
「気のせいよ〜☆」
「お嬢ちゃんの口が動いていたよ」
「腹話術なの、動くわけないの」
 うっかりネタばらししてしまう雨夏。
「インチキじゃないか!」
「あう〜、だってコストが」
 人の事は言えないはずの狩野が、雨夏を問い詰めていると、
『学園長接近! 学園長接近!』
 ブースに並ぶ学園長ロボの目が、一斉に光り出した。
「なんだ?」
「いけない! 学園長センサーが反応したわ、このロボには本物の学園長を察知する機能がついているのよ!」
「コストを気にしているなら、なぜそんな機能を?」
 狩野のツッコミなど無視し、自分の召喚獣二匹を飛ばす雨夏。
「スーくん、ガーくん、学園長を足止めして!」


その頃、エイルズは金髪美幼女・レイと再会していた。
「レイさんもすっかりコスプレが板につきましたねえ……でも、一人のレディとして、パンツを見せるのはどうかと思いますよ」
「このキャラなら本物の学園長が見てもわかってくれるって、メル姉の御推薦なんだよー」
「そりゃまあ四十年以上に渡って日曜夕方の顔をやっているアニメですからねえ。 あなたのパンツを見て喜ぶ人は、ろくなものではないと思います……おっと、失敬」
 などと言いながら、パンモロキャラコスプレをしたレイを相手していると、入口ゲートに、カオスなオーラが輝き始めた。

「やあ学生諸君、なかなか楽しそうなイベントをしているそうじゃないか」
「ええ! 学園長!」
 お約束のご本人様、登場である。
 足止めに行ったはずの雨夏の召喚獣は、すっかり学園長に懐いてしまっている。
 流石は某資料で、召喚獣と一緒に描かれている男だった。
「エイルズくん、私の顔をしたこの門は、キミが作ったものと聞いたが?」
「はい、すみません」
 珍しく汗ダラダラのエイルズ。
「いいねえ、一つ欲しい」
「マジですか? 一応、売り物ですが」
 百久遠でエイルズから門を買って学園長、ご満悦。
 一体、何に使うつもりか、謎の人である。
 学園長は両腕を広げ、本人登場に動揺している会場内に言った。
「学生たちの自主的な創作活動多いに結構! これからも大いにやってくれたまえ!」
 ほっと空気が緩む会場内。
 だが、次の瞬間、
「ただし、インチキはいかん! 狩野くん、雨夏くん、生徒指導室にきたまえ、ゆっくりとお話しようじゃないか」
 顔を真っ青にする狩野と雨夏。
「なんでばれた」
「あう〜、もっと腹話術を練習しておけば」
 その二人を羨ましそうに見るグリモワール。
「学園長に叱っていただける……ボクもインチキしておけばよかった……」
 こうしてカオスを振りまく男・宝井 正博のイベントは、カオスな展開にさらなる盛り上がりをみせるのだった。


依頼結果