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大型掲示板をキャプ画像を背景に、ナレーションが流れる。
『週末、ネット上で久遠ヶ原島民を震撼させる情報が流れた、それは――』
<雪室 チルル中古疑惑>
幼げな顔の雪室 チルル(
ja0220)がお城を象ったラブホテルから、複数の男性と共に出てくる写真が映し出される。
『騒動の源は、ラブホテル前で撮影されたこの写真。 公開されるやいなや、ネット上には悲鳴にも似た書き込みが殺到した』
339名無しさん
チルルちゃんが中古だったなんて――失望しました、ファンやめます
650名無しさん
お前ら馬鹿か? 無邪気でおバカな天使だって信じてたのか?
あんなの最初から、作られたキャラなんだよ!
ところで、壁って硬いんだな――拳が血塗れだぜ
760名無しさん
知ってた速報
999名無しさん
1000なら画像は捏造!
1000名無しさん
1000ならエッチルル
『取材班は真相を確認すべく、チルル本人の家に向かった』
インターホンを押すと、部屋の玄関から、チルルが無警戒に出てくる。
「なに? あ! これ、TVカメラでしょ! あたいったら、さすがゆーめー人ね!」
田舎の子供のようにカメラの前でv(><) (><)vするチルル
レポーターが件の写真を見せると、悪びれもせずに事実を認めた。
「うん、これあたいよ! このホテル、面白かったわー、夜になるとネオンが灯って遊園地みたいになるの!」
ホテルに入ったのかを、尋ねるレポーター。
周りから見学していて、たまたま写真に撮られただけとか、ありそうなオチである。
だが――。
「中もよかったわー、バスルームがすっごく広いのよ! あと、ベッドが廻って楽しいの!」
もはや、誤解ではありえない。
「一晩中寝ないで、みんなで遊んでいたの! とっても気持ちよかったわ! あたい、またみんなと一緒に行ってみたい!」
この日、久遠ヶ原島で、十数か所の壁が砕け散った。
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可愛らしい少女が、自分と全く同じ顔立ち、同じ服装の少女に首輪を付け散歩させている怪写真が映し出される。
『様々な珍事件が頻発する久遠ヶ原島で、またも怪現象が目撃された』
<もう一人の自分を、飼っている少女!?>
この映像の謎を突き止めるべく、分析を急ぐスタッフ。
そして、やがて少女の正体を撃退士・アリス セカンドカラー(
jc0210)だと突き止めた。
翌朝、カフェにいたアリスの元へ取材に訪れるレポーター。
「何か言う必要を感じないわね」
マイクを向けられても、椅子にふんぞりかえったままのアリス。
カメラ的第一印象、最悪である。
レポーターが、番組独自の調査結果をぶつけてみる。
実はアリスが連れていた、アリスそっくりの少女、学園の物真似研究会の部員で、セリス・アカンゾコレー。
アリスの物真似芸をしていた“少年”なのである。
その少年をアリスが調教し、ペットにして、お散歩させていたのではないのか?
そんなレポーターの憶測をぶつけられても、アリスは動じなかった。
「よく調べてるわー。 恥ずかしくないんですかって? 訓練された変態であるわたしがこの程度で動じるわけがないじゃない」
くすくす笑うアリス。
「そ・れ・よ・り・も、知ってる? 私のペットは一匹じゃないのよ?」
突然、画面が大きくぶれ、レポーターの悲鳴だけが残る。
取材班の二人が、周囲に潜んでいた謎の集団に捕えられたらしい。
まだ開始二日目、番組はどうなってしまうのか?
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不祥事を起こした企業が謝罪会見をしている映像が、連続で流れる。
「誠に申し訳ありません」
「誠に遺憾であります」
ナレ『相次ぐ企業不祥事、管理責任が取りざたされる中、今度は“姉”の“妹”に対する管理責任問題が浮上した』
斡旋所ロビーに設けられた記者会見場で、貧乳系軍人少女・雨宮アカリ(
ja4010)が銀髪の頭を深々と下げて謝罪している。
アカリの双子の妹であるリリィ・マーティン(
ja5014)が、ある任務で狙撃を行っていたのだが、ミスをして重体を負ってしまったのである。
「えー、近年の細分化する狙撃手の役割を考慮した上で、今回の彼女の行動を全く以って見当はずれであると断言するのはいかがなものかと考える次第であります」
一人のレポーターがくすくす笑いながらマイクを突き付ける。
「妹の失態じゃなく、あなたのコーチング不足じゃないのー?」
実はこのレポーターは昨日、騒動を起こしたアリスである。
番組スタッフをペット化し、番組ジャックをしてしまったのだ。
「結果として彼女が重体となったのは誠に遺憾であり、姉といたしましては再発の防止に努めることを前向きに検討させていただく次第でございます」
「責任はどう取るの?」
「その件も踏まえて、前向きに検討させていただきます」
「つまり、今のとこ何の考えもないってことよねー」
傷口をつつかれたアカリは顔を背け、小声で呟いた。
「チッ……うるわいわねぇ」
「今、何か言わなかった?」
「反省してまーす」
「なにあんた、スノボやってんの!?」
「うるさいわねぇ! というか、私関係ないじゃないのよぉ! むしろ狙撃に関しては私の指導者よぉ! 私はリリィを信頼してるし、リリィの判断で行動した結果、重症になったんだから本人も名誉の負傷とか思っているでしょう!」
『泥沼化する記者会見。 そこで別のレポーターが、入院しているリリィの病室に赴いた』
ベッドに上体を起こしながら、カメラに笑顔を浮かべるリリィ。
「あー、リリィだ 随分と心配をかけてしまったようだ。 大事になっていると聞いて病室からではあるが釈明をしておく。 重体になったのは私の判断であり、そして私は判断ミスだとは思っていない。 誰かがやらねばならなかった。それが私だっただけだ。 アカリ、私はお前の妹ではあるが部下ではない。 私を部下にしたければもっと訓練する事だな! HAHAHA! ……だから責任を感じる事は無いのだぞ?」
そのビデオレターを見て、目に涙を浮かべるアカリ。
カメラから、涙を隠すかのように、会見場から走り去る。
妹の心の温かさに姉も、いたたまれなくなったようだ。
「あっ、待ちなさいよ! もっといじめてから調教しようと思ったのに!」
獲物を逃がしたアリス。
その目が狙う、次の獲物は誰か?
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黒髪の女性が、濡れた布団の前で幼女のお尻を叩いている映像が流れる。
『未だ消えやらぬ児童虐待問題は、久遠ヶ原島でも起こっていた。 白昼堂々、幼い女の子を叩く若い女性――ネット上に公開された盗撮映像の真相を究明すべく、女性の自宅を直撃した』
渦中の人、雁久良 霧依(
jb0827)の邸宅を訪れる取材班。
そこには霧依と共同生活を営む、たくさんの幼児たちがいた。
件の映像を見せると、霧依は笑顔で答えた。
「おねしょのお仕置きしてるところね♪ うちの子達は全員納得した上で罰を受けてるわ、お仕置きの後はたっぷり甘えさせてるし、虐待じゃないわよ♪」
「はい、霧依お姉さまの言う通りです」
お尻を叩かれていた少女・ルミニア・ピサレット(
jb3170)が、子供たちを代表して返事をした。
だが、虐待者が子供に虐待を隠蔽するよう強いるのは常である。
帰局後、取材班がさらに調査を進めると、ネット上に驚愕の動画を発見した。
深夜、ルミニアの部屋に、濡れ布団を持って、こそこそと入る霧依。
十数秒後、部屋から出てきた時には、濡れてない布団を手にしている。
即ち、すり替え。
おねしょをしたのは霧依であり、濡れ布団という名の濡れ衣をルミニアに押し付けていたことになる。
取材班は再び、雁久良を訪れた。
「実は前日ちょっと飲み過ぎちゃって、お布団に地図を……小さな子に擦り付けたのは悪いと思ってるわ……」
謝罪する霧依。
だが、公開された二つの動画が、共に霧依のアカウントでアップされたものである事は、すでに解析されていた。
つまりは、霧依による自演である可能性がある。
追及された霧依は、神妙な面持ちで語った。
「そうよ……私の仕業よ、私は幼女を愛でるのが大好きよ、でも…それ以上に自分自身が幼女として愛されたい、甘えてみたい、お仕置きされたいって願望があるの。 私は幼女になりたいのよ!……無理なのは分かってる! だからせめて幼女のように…って思ったのよ、お騒がせしたわね……」
淋しげに笑みを浮かべる霧依。
大人の憂いを垣間見せているが、実際、ただの変態である。
そこに、ルミニアが聖母の微笑みを浮かべて現れた。
「そうだったのです……気付かなくてごめんなさいなのです……」
水色スモックに、黄色い帽子、ピンクのスカートを取り出すルミニア。
「……これに着替えてきてほしいです♪」
超エロボディを持つ、児ポ法推進園児の誕生である。
「幼女として扱ってくれるのね……嬉しいわ」
涙ぐむ霧依。
「……これから週に一日はお姉様を私達の小さな妹として扱うです♪ ……お仕置きなのです! 覚悟しなさいです!」
「うん、いっぱい叱ってね、ルミニアお姉ちゃん♪」
手を繋いでカメラ前から去る二人。
放送後、こんなの放送していいのかという苦情で、局の電話がパンクした。
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「どーも、我龍転成リュウセイガーです。」
画面に向かい、雪ノ下・正太郎(
ja0343)が現れ、生真面目に挨拶した。
今日の放送は、今までのようなスキャンダルではない。
頑張っている青少年を紹介するという健全な内容である。
中央のワイドショーでも時々ある“爽やか企画”だ。
普段、人を貶める事で成り立っている番組なりの禊のようなものだ。
「我・龍・転・成っ!! リュウセイガー!!」
変身するリュウセイガー。
プールの飛び込み台の上から必殺キック、ドラゴンストライクの練習をしてみせる。
プールからあがると、今度はバイクの事に付いて尋ねられる。
ヒーローの乗るマシンのデザイン画がネット上に流出しているのだが、雪ノ下のものではないかという推測が流れているのである。
「はい、僕のです」
あっさり認める雪ノ下。
「ヒーローには専用マシンがお約束だと思って、まずはデザインだけ頼みました。 作ってくれる方やスポンサー様、出演依頼などリュウセイガーは随時受け付けております」
カメラに向かって、白い歯を輝かせる雪ノ下。
「なにそれ、ステマ?」
突然、脚本にはない事をレポーターに言われ、戸惑う雪ノ下。
「いや、そういうわけでは――」
雪ノ下の前で、レポーターがベリっと顔の皮を剥いだ。
変装マスクに隠れていたアリスの顔が露わになる。
「くすくす、まあ今回はいいわ、でも覚えておきなさい。 事故やら暴行やら、スキャンダルに塗れて汚れた特撮ヒーローの先輩はいくらだっているのよ。 貴方はそうならないよう気を付けることね。 でもなったらなったで、その時は、私が奴隷にして、あ・げ・る」
それだけ言うと、ピュウと逃げ出すアリス。
「なんなんだ、あの子供は――」
ヒーローは、子供のために戦うもの。
久遠ヶ原には変な子供もたくさんいる。
頑張れリュウセイガー!
変な子供の期待にも応えられるよう、身辺を綺麗にしながら戦うのだ!
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ヘリウムガス声でのインタビューが始まる。
【医療関係者Aさん】
「いやー、もう驚いちゃいましたよ! 大の男でも涙を流す人のいる、あの胃カメラをですよ! 女子高生が飲みたいっていうんです。 無論、健康な人には必要ないって断りましたよ! そしたら、暴飲暴食して、わざと胃を壊してから、病院に来たんです! もう驚いちゃいました! 医者って何の為の仕事なのか、わけがわかんなくなってきちゃいましたよ!」
『その女子高生とは緋流 美咲(
jb8394)。 ドMではないかと一部に囁かれる少女である。 帰宅中の彼女に我々がマイクを向けると――』
自分からマイクに頬をグイグイ当ててくる美咲。
新ジャンル・アグレッシブMである。
「ぁぅぅ……こ、答えますから…許して下さい……」
言いつつも、中々、答えずにマイクに頬を食いこませ続ける。
この状況に興奮しているらしい。
「たまたま受けた胃カメラ検査が、私的にドストライクだったんです……口を閉じることが出来ないように器具をはめられて、無理矢理カメラを入れられ、涙目であの苦痛の時間を耐える…されるがままの、まるで虐げられたような感覚がたまらなくて……はぁぅ……」
“お医者さんに、迷惑かけて平気なんですか?”
レポーターに冷たく言葉責めされ、嬉しそうに頬を赤らめる美咲。
「やだぁ……それ以上言わないで下さいぃ……はぅぅ……」
続いて、レポーターが尋ねたのは、美咲が抱えているコンビニ袋の事である。
中身を見るとブラックコーヒー、コーラ、サキイカ、超辛カレーなど、胃に厳しそうな食べ物がたくさん詰まっている。
また暴食して、胃カメラを飲むつもりなのだ。
「……あの苦痛を受ける為なら……ごふっ!」
ハバネロ肉まんを食べようとして、胃に拒否られ、吐血する美咲。
こうなるとゴシップ記者は基本、ドSである。
次々に、質問をぶつけ始める。
“そんな変態で、お父さんやお母さんに申し訳ないと思わないんですか?”
“何万という目が、美咲さんを蔑んだ目で見ていますよ。“
“どうしてまだ外を歩けるんですか? 恥ずかしくないんですか?”
「ぁぅぅ……もっと、もっと言って下さい! 全国放送の面白地方TV特番とかにも、この部分使って下さい!」
レポーターたちに尋ねられ、カメラの前でハァハァ身悶えする美咲。
決して全国放送出来ない、久遠ヶ原の病みだった。
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ワイドショースタジオ。
「と、いう一週間、振り返っていかがでしょうか、クレヨー先生?」
司会者が尋ねると、コメンテーターのクレヨー先生は眉間に皺を寄せて答えた。
「M率高すぎなんだな、美咲ちゃんは完成されすぎ、霧依ちゃんも全方位変態平常運航だけど、アカリちゃんだってあんな会見開くなんて自主的に叩かれに来たように見えるんだな、雪ノ下くんもステマが叩かれる時代に明確なステマするとか、潜在的Mに違いないんだな。 ドSのアリスちゃんが付け込むのも当然なんだな」
「厳しいご指摘です」
「それよりキミたち、捏造報道を取り消すんだな! チルルちゃんは“お風呂がとっても気持ちよかったわ!”って言ったのに“お風呂が”の部分だけカットして流すとか、編集に悪意あり過ぎなんだな!」
チルルは、依頼先で宿を見つけられずに、やむなく一部屋だけ開いていたラブホテルに泊まっただけだったのだ。
ラブホの観念すら理解出来ず、遊園ちっくなホテルだと思い込んでしまった結果がアレだったらしい。
ネットでは、もう知れ渡っている事であるが、番組はそれを報じなかった。
「その通りでございます。 我々は誤報をいたしました、罵って下さい、お叱りの電話をたくさん下さい、むしろこんな番組もう見ないで下さい」
嬉しそうに土下座する司会者。
「この番組自体が、真性のドMだったんだな……」