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マスター:スタジオI
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/10/18


みんなの思い出



オープニング


 久遠ヶ原島の某住宅街。
 ある日曜の昼間、サングラスに帽子姿の怪しい男女二人組が、物影にこそこそ隠れながら誰かを追っていた。
「椿さん、あんまり飛び出すと見つかっちゃいますよ」
「でも、でも、気になるのだわ、もっと近くで見たいのだわ」
 前のめりになっているのは、黒髪ソバージュのアラサー女・四ノ宮 椿。
 普段は、斡旋所の職員をしている。
「じゃあ、これを使って下さい――しかし、あの女性、何者なんでしょう?」
 その椿に、バッグから双眼鏡を取り出して渡したのは堺 臣人。
 椿の後輩の少年だ。」
 椿は、自分たちが尾行している女性の横顔へ、双眼鏡を向けて覗いた。
「――間違いないのだわ」
「やっぱりですか」
「あの女、四ノ宮 椿なのだわ!」
 そう、椿の尾行対象は椿だった。


 事の起こりは、二日前、斡旋所に飛び込んできた情報だった。
「島にドッペルゲンガーが出る?」
 本人の意志と無関係にもう一人自分が現れ、本人と同様に行動する超常現象である。
「はい、ここ数日で何人かの島民のドッペルゲンガーが目撃されています。 本人たちはまだ見ていないようですが」
 斡旋所に送られてきた報告書を読み終えた堺が、説明をした。
「目撃されたドッペルゲンガーらしきものの一人が椿さんだったんです。 目撃該当時刻に、本物の椿さんは僕と二人で斡旋所にいたので、僕がその証人という事になりますね」
 そして、二日後、落ち着かない気分で非番日を過ごしていた椿の携帯に、『ドッペルゲンガー出現』の報告が、堺から届いたのである。
 二人は合流し、ドッペルゲンガーを尾行し始めた。


 ドッペルゲンガーは、住宅街の一角にあるホテルに入っていった。
「あそこは! 私が隔週で出ている、婚活パーティが行われている会場なのだわ!」
「行動パターンまで椿さんと同じとは、これは本物のドッペルゲンガーですかね?」
 ドッペルゲンガーには“対面すると本人が死ぬ”という伝説がある。
 それを椿は恐れて、遠くから眺めている事しか出来ないのだ。
「や、やめて欲しいのだわ、少女のようなこの若さと美しさを保ったまま、死にたくないのだわ」
 ガタガタ震える椿。
「そういう事、恥ずかしげもなく言えちゃう人間が二人になった事が、僕は恐ろしいです」
 椿たちは、気付かれないようホテルに入り、後を追った。
 ドッペルゲンガーは、あるホールの前に着くと、入り口前で立ち止まった。
 そこには受付があり、記名をしてから会場に入るシステムになっている。
 ドッペルゲンガーは受付嬢と会話を少ししてから、記名帳に記名した。
 会場内にドッペルゲンガーが入ったのを見計らい、本物の椿が受付へ飛び出す。
「お疲れなのだわ! ちょいと失礼するのだわ!」
 受付嬢の手から記名帳を奪い、それをバラバラと開く椿。
 同じ人間が二人続けて現れた事に、受付嬢が当惑している。
「あ、あら? ツノミヤ シバキ様ですよね? 今、お入りなられたのでは?」
「ツノミヤ シバキ!?」
 椿が記名帳の最新頁を開くと、そこには“シノミヤ ツバキ”ではなく、確かに“ツノミヤ シバキ”というサインがされていた。
「し、シバキって何なのだわ?」
「ドッペルゲンガーというか、パチモン臭い名前ですね」
 とりあえず、婚活パーティの主催者でもある、ホテル支配人を呼び出して事情を話した。
 椿は、何年間もこのホテルの婚活パーティに毎回出ている。
 いわば“お得様”であるので、支配人も融通を効かせてくれた。


 ホテルスタッフに変装して、会場に潜入する椿と堺。
 会場内では、立食バイキングパーティが始まっていた。
「照明が薄暗くてよく見えませんね、シバキさんどの辺りにいるんですかね?」
 キョロキョロする堺だが、椿は迷わずに歩いていく。
「立食パーティが始まったら、本物の私はまず、味海苔をごっそりと食べるのだわ。 シバキが私と同じ行動をとるなら、味海苔が置いてある辺りにいるはずなのだわ」
「味海苔ごっそりって――それが、婚活失敗の一因な気がしますが」
「なぜなのだわ? 味海苔は世界一美味しい食べ物なのだわ」
 キョトンとする椿。
「あのねえ、椿さん――あ! あそこです、本当にいました!」
 あるテーブルにシバキはいた。
 山盛りに皿に載せた味海苔らしきものを、くちゃくちゃ食べている。
 その様子に、同じテーブルの男たちはドン引きしていた。
「ほら、ひかれているじゃないですか」
「そんな、いつもはあんな反応じゃ――え? うそ!? あれは味海苔じゃないのだわ!」
 シバキが、くちゃくちゃ噛んでいたのは、ただの黒い紙だった。
 テーブルにある紙ナプキンを、マジックで黒く染めては口に運んで食べているのである。
 離れてその様子を見ていた椿が、膝から崩れ落ちる。
「わ、私は山羊さんじゃないのだわ――もうダメなのだわ、他の出席者たちからの評判ガタ落ちなのだわ」
 幼女のように泣きじゃくる椿に、堺が怪訝そうな顔で尋ねる。
「あの、さっきから気になっていたんですけど、このパーティに椿さん、毎回出ているんですか?」
「もうダメなのだわ、山羊女だと思われた以上、退会するしかないのだわ」
「いや、でも婚活パーティにしては男の人しかいないじゃないですか? しかも、心なしか油ギッシュな人が多いような」
「え?」
 椿が辺りを見回してみると、確かにパーティにいるのはメタボな中年男性ばかりだ。
 普段、一緒に出席しているような顔ぶれは一つもない。
 しかも、会場内には何かを揚げる音と、香ばしい匂いが充満している。
「あ! ここ、違うのだわ!」
 椿は天井から釣られている看板に書かれている文字にようやく気付いた。
「このパーティ、“こんかつパーティ“じゃなく、”とんかつパーティ“なのだわ!」
 どうやら、全国から呼び寄せたとんかつの名店の味比べをするパーティだったようだ。
「紛らわしいのだわ、そういえば、婚活パーティの日取りは来週だったのだわ」
「どうもシバキさんの方は、微妙に本物と細部が違うところが何か所かあるみたいですね。
髪型にしたって、ほら」
 椿はソバージュという、軽くパーマネントウエーブをかけた髪型にしている。
 シバキの方は、軽くどころではない。
 いわゆる、ドレッドヘアーなのだ。
「ジャマイカな香りなのだわ……」
「しかし、一体、何者なんでしょうか? 何の目的で偽物を? 椿さん、直接、出ていって尋ねては?」
「い、嫌なのだわ、ドッペルゲンガーだったら死んでしまうのだわ!」
 そう椿があげた声に、シバキが気付いたらしい。
 走って、会場から飛び出していく。
「しまった! 追うのだわ!」
 シバキを追い始める椿たち。
 だが、二人は現在ホテルマンの格好をしている。
 運悪く、客に捕まってしまった。
「係員さーん、この黒豚ヒレカツもっと出してくれよー」
「げ、クレヨー先生!?」
「あれ、椿ちゃん、転職したんだな? いつ、斡旋所クビになったんだな?」
「先生、今、構っているばあいじゃないのだわ!」
「あらら、見失っちゃいましたね……」
 そういうわけで、椿は自分のパチモノを捕える事ができなかった。
 撃退士諸君には、パチモノが出現次第、連絡をする。
 自分のパチモノを尾行して行動調査、その正体と目的を確認して欲しい。 


リプレイ本文


 日曜日の公園。
 赤髪にシルクハットの小柄な少年の周りに、人だかりが出来ていた。
 足元には『奇術師マジックショー』の看板。
 スイカをくりぬいたマスクが、おひねり入れとして置いてある。
「奇術師・ヱイルヅレトラのマジックショーを始めさせていただきますよー」
 群衆から拍手があがる。
 いつもより発音が古風だが、気にはされていないようだ。
「最初は“予知“です、これからお客さんが選ぶトランプは、すでに予知してこの紙切れに書いてあります」
 ヱイルヅは、トランプを裏向きにして客の一人に選ばせた。
 極めてオーソドックスな手品である。
「あなたが選んだトランプは、ズバリこれですね――あっ」
 手が滑ったのかトランプのデックが、ばらけてしまった。
 慌ててそれを拾い集めるヱイルヅ。
 この後もタネを見せてしまったりと、醜態を繰り返している。
 そんな時、群衆の中から、山高帽の男が歩み出てきた。
「下手くそですねえ。 パチモンとはいえ、奇術士の奇術がお粗末なんて許されませんよ」
 山高帽を脱ぎ、サングラスを外すと、そこにもう一つ同じ顔――エイルズレトラ マステリオ(ja2224)の顔が現れた。
 顔色を変え、逃げ出すヱイルヅ。
 それを影分身・ダブル・フェイスで囲むエイルズ
 同じ顔がやたら増えた事に観客は、新しい奇術かと興奮している。
「本人に出会って逃げ出すなんて、おかしいでしょう――ドッペルゲンガーさん」
 包囲され、立ち止まったヱイルヅの前に立ちふさがるエイルズ。
「自分のドッペルゲンガーに出会うと死んでしまう……実に有名な伝説です。 ですが、僕は思うのです。 たまには、ドッペルゲンガーの方が死んでも良いのではないか、と」
 顔を近づけて脅すと、ヱイルヅは追い詰められたかのように叫んだ。
「皆さん、こいつが偽物です! 最近、荒らしまわっている偽物に悩まされているせいで、僕は不調続きなんです!」
「往生際悪くそう来ましたか。 しかし甘いですね」
 足元の『奇術師マジックショー』の看板を指差すエイルズ。
「正しくは“奇術士”なんです。 他にもツッコミどころはありますが、ここは譲れません」
「ふん、国語辞書でも撃退士データベースでも調べてみろ。 正しくは“奇術師”だ!」
「ほう、あなたのいうデータベースとはこれですかね?」
 エイルズがスマホを取り出し、自分の頁にアクセスする。
 そこに『奇術士・エイルズレトラ マステリオ』の文字が出てきた。
「ばかな、前に調べた時は!?」
「ひっかかりましたね? 僕は、この状況を予知して、わざと長らく“奇術師”称号を付けていたのですよ。 あなたは”予知”のマジックに失敗しましたが、僕は成功しました。 どちらが偽物かは明白ですね?」
 奇術師が、ガックリと地に膝をつく。
 奇術士は、イタズラっぽくウィンクした。


 対照的に、恐怖を隠せないのが六道 鈴音(ja4192)だった。
「私のドッペルゲンガー!? 出会ったら死んじゃうって……じゃあ一体どうしたらいいのよ」
 とりあえず、風邪用マスクや安物サングラスで変装して、鈴音そっくりの少女を尾行する。
 少女は鈴音が休日を過ごしているオープンカフェでくつろぎ始めた。
「ヒリュウお願い」
 物陰からヒリュウを飛ばして偵察に行かせる。
 帰ってきたヒリュウはジェスチャーを始めた。
「なになに……コーヒーを飲んでいた? そして? “コーヒー“は置いといて……きーっ、さっぱりわからないわよ!」
 ヒリュウは言葉を使えない上に、鈴音もジョブ適正が合わず視覚共有が出来ないので不自由極まりない。
 仕方なく、双眼鏡を取り出して少女を観察する。
「それにしてもなによ、あの眉毛、私はあんなに眉毛は太くないわよ……」
 段々とムカムカしてきた。
「そもそもよ、私みたいな天才美少女ダアトが二人といるわけないのよ、ドッペル上等! こうなったら、強硬手段よ」
 鈴音は、瞬間移動で少女の背後に廻ると、異界の呼び手でドッペルの体を拘束した。
「いやん、何? 触手プレイかしらぁ?」
 なぜか嬉しそうな少女。
「なんか変態ぽくて気が引けるけど、確認の必要があるわね」
 少女の額に手をあて、近過去を覗く鈴音。
 見えたのは、鈴音のデータを調べ、変装をしている少女のビジョンだった。
 特に眉毛は念入りに、太く太く書いている。
「いったいどういうつもりよ、この眉毛はぁーっ!!」
 少女の眉毛をこする鈴音。
 ドッペルはニマニマしながら、答えた。
「いやいや鈴音さんや、近頃、巷では眉太の方が可愛いと評判なんですよ」
 パァーと顔を輝かせる鈴音。
「え? ホント? 私の時代来た?」
「ホントですよー、その証拠に、世界の果てまで冒険している女性タレントさんも、眉太で大人気じゃないですか」
「何でお笑いの人を引き合いに出すのよ!」
 その後も鈴音は、飄々としたドッペル少女に翻弄され続けるのだった。


 双城 燈真(ja3216)は二重人格者である。
 彼の中には翔也(かけや)という第二人格が存在する。
「ドッペルゲンガーか、信じてないけど一応調査しないとね」
『とか言いながら信じてるんだろ燈真! まぁそっくりさんなんてどこにでも居るって!』
「翔也は本当にポジティブだよね、まぁおかげで今の俺が居るんだけど」
 燈真と翔也は意識の中で会話をしつつ、自分そっくりな少年の背中を追った。
「いつもだとこれから、バイトの時間だよね?」
『代わりに力仕事してくれるのか、こりゃもうけもんだな』
 だが少年は、バイト先を通過し公園に入っていった。
 “ナンパ公園”と綽名されている、そういう公園である。
「何でナンパ? 俺は翔也見たいな軽い男じゃないよ……!」
『お前そんな目で俺を見てたのか――とか言っている場合じゃねえ、何だあれ!?』
 少年は、公園のベンチにいたツナギ姿に短髪のハンサムガイと楽しげに話し込んでいる。
『ネットでいう、“いい男“ってやつだろ、あれ』
 やがて少年と“いい男”は仲睦まじく街を歩きだした。
 どう見ても、男同士のカップルだ。
「あ、あんな姿見られたら、俺が誤解される」
『やばいな、予想外の事態だ』
 もう青ざめるしかない。
 少年は“いい男”に二重人格の話をしているらしい。
 だが、第二人格の“翔也”を“かけや”でなく“しょうや”と呼んでいる。
『なんだよ“しょうや”って! 俺は“かけや”だっつーの!』
「字面だと普通は“しょうや”だからね」
『読み間違いって、本当にドッペルなのかあいつ!』
 少年は燈真行きつけのスーパーに入ると、骨付き肉を買いレジに向かった。
“いい男”と手を繋いだままレジのおばちゃんに“今夜は二人でカレーを作るんですよ、キャッハうふふ”的なお喋りをしている。
「もうだめだ! レジのおばちゃんに誤解された!」
 翔也に人格を切り替えレジの出口に、飛び出してゆく。 
「ドッペルゲンガー伝説が真実だろうと、このままでは社会的に死ぬ! せめて一太刀!」
 少年にボディブローをお見舞いしようとすると、“いい男”が、その前に立ちふさがった。
「やらないでくれないか?」
「な!?」
「俺の彼女がやりすぎたのは謝る」
「彼女?」
 少年が変装を解くと、そこには若い女の子の姿があった。
「ごめんね、こういうわけなの」

 事情を聞いて一応は納得する。
「物真似研究会、なるほどな」
『まあ、反省してくれるんなら』
 拳を降ろすと、“いい男”が耳打ちしてきた。
「彼女に男装させてデートしているうちに、男も悪くないと思えてきた。 お前、やらないか?」
「やりません」


 朝、斡旋所からドッペル出現の電話を受けた時、まだイリス・レイバルド(jb0442)はおねむだった。
「いぁいぁ、ドッペるさんとかマジ勘弁、ボクのような美少女が地球上に2人もいるとかマジ神話クラスのスタンディングオベーション、世界は救われたのである」
 そのまま、グウと二度寝に入ってしまう。
 結局、昼過ぎに姉に揺り起され、ようやく目を覚まして着信履歴を見た時、イリスはようやく事の重大さに気付いた。

「物陰隠れてこっそこそ〜」
 自分と同じツインテールの揺れる背中を追うイリス。
「あははーってかどこいくんだろねー、この方角だといつも飛行訓練してる公園があったかな? イリスちゃんマジ飛行ユニット」
 全部独り言である。
 声のボリュームは抑えているが、寝ていようと、起きていようと、隠密行動していようと、テンションは変わらないのだ。
 もう少し早い時間なら、可愛い女の子たちがいて、イリスにちやほやしてくれるのだが、あいにく寝過ごしたせいで、イリス的ゴールデンタイムは過ぎてしまっている。
「時間的には、イケメンなお兄さんがいるだけー……なッ!?」

 いつものイケメンなお兄さんは確かにいた。
 ツナギ姿で、ベンチに座って誰かを待っている。
 だが問題は、偽イリスがそのお兄さんに声をかけている事である。
「お兄さん、イリスたんをなでなでしてなの」
「いいのかい? 俺はロリっ娘だって平気で喰っちまう男なんだぜ」
 偽イリスの金髪を撫でる“いい男“

 余りの事態に物影でイリスはアワアワと口を開閉させている。
「違うんだよ愛と絆は無節操って意味じゃな、ッッ“イリスたん”ってなに!? 口調が全然違うじゃん! 媚こびなだけじゃん! っていうかなに頭撫でられて喜んでんの!? アイデンティティクライシス!?」
 マジ泣きし始めるイリス。
「マジでやめてボクの髪は特別!特別なんだからぁッ!!」

 “アレはボクじゃない“と繰り返し心の中で唱えながら、心を病んでゆくイリス。 
 やがていい男が、公園の入り口方向に手を振った。
 どうやら知り合いが来たらしい。
 あれは撃退士の双城 燈真という少年だ。
 “いい男”は燈真と手を繋ぎながら、公園の外へ消えてしまった。
 男に敗れた偽イリスは肩を落として、とぼとぼとどこかへ立ち去ろうとしている。
 その肩を後ろからイリスが掴まえた。
「ギルティ」
「な!?」
「ギルティギルティギルティギルティ」
 完全に心を病み、ダークモードになっていた。


 斡旋所から電話を受けたアリス セカンドカラー(jc0210)は、嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ほうほう、ドッペルンゲンガー……うん自分と似た娘を従僕(ペット)にするのもアリね☆」
『会ったら死ぬのだわよ?』
「ふふ、その程度のリスクで欲望に生きるものを止められるとは思わないことね♪」
 そのまま、セリス・アカンゾコレー――ドッペルはそう名乗っているらしい――の位置情報を聞き、三つ編みのおぼこ娘風に変装して尾行に入る。
ドッペル発見は容易かった、普段のアリスと同じ格好をしているからだ。
「わたしにはわかる! わかるわ! あの子は男の娘!これはもうやっぱりペットにするしかないわね☆」
 セリスは町のペットショップに入っていった。
「むむ、これはうーん、わたしが好きなのはペットはペットでも愛玩動物でなく従僕なんだけど? そんな間違いするなんてホントにドッペルなのかしらー?」
 店内で、女子高生らしき女の子を見かけると話しかけ始める。
「姫! そこを行く姫君よ!
「え? なにキミ?」
「私に、運命の縁を感じないのか?」
「なになに? かっわいいー、女の子でしょ、キミ?」
「性別など関係ない、愛あればこそー」
 仕草や言い回しが一々大げさで、芝居ががっている。
「百合=ヅカキャラとか偏見もいいところねー――まぁ、いいわ、調査(ストーキング)はここまで、さぁ、おっもっちかえりー♪ もとい確保の時間よー」
 女子高生にフラれたセリスがうなだれたタイミングを計って痛打の腹パン一閃!
 気絶させて、裏路地に連れ込んだ。
「大丈夫、何も心配する必要はないわ、さぁ、すべてわたしにゆだねなさい☆」
「許して下さい、物真似の練習だったんです」
「ふーん、知ったことじゃないわ、わたしの前で素質を見せたのが運の尽きと思って諦めなさい。 完璧な男の娘になれるように調教(レクチャー)してあ・げ・る♪」
 アリスは路地裏にパチモノを連れ込み、弱みを握ったセリスを、調教して楽しみ始めた。


 身長百八十センチを超える細マッチョな金髪女性が、震え声で呟きながら町を歩いていた。
「見ると死ぬ影、ドッペルゲンガー……そ、そんなもの、本当にいるはずがない!」
 女性の名はラグナ・グラウシード(ja3538)、実際は男性である。
 斡旋所からの報告を受けた彼は、自分そっくりの男を追いながら、内心ガクブルしていた。
 尾行の末、男が入っていったのは盛り場の酒場だった。
 ラグナが休日に、モテない自分を嘆くためにクダを巻いている店だ。
 つまり、男はラグナと同じ行動をしているのだ。
 ビビりMAX状態のラグナは本物のドッペルゲンガーだと判断した。
「わ、我の命運は尽きた」
 漫画のカマセキャラみたいな事を言って、orzするラグナ。
「それ、土下座?」
 そのラグナに後ろから話しかけてきたのはイリスだった。
「土下座なら僕、負っけないよー!」
 なぜか対抗心を燃やしてorzしてくるイリス。
 その傍らには、やはりorzしている同じ顔をした少女がいた。
「お、お前! 横にドッペルゲンガーが!」
「んふふー、違うのさ! この娘はねー、真似研の子なのさ!」
「物真似研究会の花子なの、この度は仲間がご迷惑をおかけしまして……」
 さらに深々とorzする花子。
 かなり酷い目に遭わされたのか、顔が憔悴しきっている。
「花子ちゃん! そんな土下座ノンノン! 世界で二番目にもなれないよ! 僕に近づきたいなら、こう! こうだよ!」
 自称、世界一の土下座を見せるイリス。
 それを真似ようとする花子。
「真似研……? よくわからんけど、とにかくアイツもドッペルじゃないって事だよな」
 ラグナは恐怖から放たれ、強気な笑みを浮かべた。
「我が名はディバインナイト、ラグナ・ラクス・エル・グラウシード! 貴様ッ、一体何者だ?!」
 酒場に飛び込んでゆき、偽物の前に躍り出る。
 正体がわかったとたん、ビビリ翻って堂々たる態度だ。
 男はあっさり謝罪してきた。
 やはり、真似研の人間で田原君だった。

 酒場から外に連れ出すと、ラグナは田原に言った。
「罪を償うチャンスをやろう! あそこにいちゃついているリア充がいるだろう」
 イケメン&ギャルカップルを指さすラグナ。
「貴様は、どう思う?」
「社会のゴミですね」
 即答にラグナ(・∀・)カンゲキ!
「よし! 一緒に滅殺だ!」
 二手に分かれて、カップルを挟撃するラグナと田原。
「リア充粉砕撃プラス!」
「リア充粉砕撃マイナス!」
「「クロスボンバー!」」
 さすがそっくりだけあって息もぴったり、社会のゴミを片づけた!


 迷惑な騒動ではあったものの、あそこまで似せただけあって自分を少しは理解はしてくれている。
 撃退士たちは友達なり、奴隷なり、オモチャなりを手に入れ、割と有意義な日曜日を過ごせたのだった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 奇術士・エイルズレトラ マステリオ(ja2224)
 KILL ALL RIAJU・ラグナ・グラウシード(ja3538)
重体: −
面白かった!:8人

奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
夜に光もたらす者・
双城 燈真(ja3216)

大学部4年192組 男 アカシックレコーダー:タイプB
KILL ALL RIAJU・
ラグナ・グラウシード(ja3538)

大学部5年54組 男 ディバインナイト
闇の戦慄(自称)・
六道 鈴音(ja4192)

大学部5年7組 女 ダアト
ハイテンション小動物・
イリス・レイバルド(jb0442)

大学部2年104組 女 ディバインナイト
腐敗の魔少女・
アリス セカンドカラー(jc0210)

高等部2年8組 女 陰陽師